JP2012118395A - 電子写真用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの発生の抑制に優れる、トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる、数平均分子量が1000〜2400である非晶質ポリエステルと、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを70〜100モル%含有するアルコール成分と炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる結晶性ポリエステルとを含有してなる、トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有する電子写真用トナー。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有する電子写真用トナーに関する。
特許文献1には、スミア性に優れ、低温定着性が良好であり、高画質な画像が得られるトナーを提供することを課題として、水系媒体中にて造粒してなるトナーであって、ポリエステル系樹脂である第一の樹脂と、該第一の樹脂よりも外側に存在し、そのガラス転移温度(℃)が前記第一の樹脂のガラス転移温度(℃)よりも高い第二の樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを少なくとも含有してなることを特徴とするトナーであって、前記第一の樹脂としてアジピン酸を用いた樹脂が記載されている。
特許文献2には、高温高湿条件下においても、低温定着性を維持しつつ、高濃度画像が得られ、かぶりを抑制することを課題として、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤を少なくとも含有し、30℃90%RHにおける0.1Hz、500Vでの誘電損失率ε”が、0.1以下であることを特徴とする静電荷現像用トナーであって、結晶性ポリエステルとして、炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分を用いた樹脂が記載されている。
特開2010−170151号公報 特開2009−75342号公報
本発明の課題は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの発生の抑制に優れる、トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供することにある。
本発明は、
〔1〕 アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる、数平均分子量が1000〜2400である非晶質ポリエステルと、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを70〜100モル%含有するアルコール成分と炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる結晶性ポリエステルとを含有してなる、トナー用結着樹脂、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー
に関する。
本発明の結着樹脂を含有した電子写真用トナーは、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの発生の抑制に優れた効果を奏する。
炭素数2〜12の脂肪族ジオールを70〜100モル%含むアルコール成分と炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステルは、低融点であるため、印字物同士が融着し易く、印字物の保存性が低い。また、予想されたほど、優れた低温定着性を示すものではない。
この原因として、前記結晶性ポリエステルが、非晶質ポリエステルと親和性が低く、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとの溶融混練後、結晶性ポリエステルが再凝集を起こし、結晶性ポリエステルの結晶粒径が大きくなったためと考えられる。
そこで、本発明者らは、アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる非晶質ポリエステルであって、数平均分子量が1000〜2400である、低分子量の非晶質ポリエステルを前記結晶性ポリエステルと併用することで、印字物の保存性を高めるとともに、印刷物のカールを抑制することができることを見出した。
低分子量の非晶質ポリエステルを用いることで前記結晶性ポリエステルの分散性を良くすることはできるが、同時に結晶性ポリエステルの結晶性を阻害する。結晶性ポリエステルが十分に結晶化されないと、非晶質ポリエステルのガラス転移点が下がってしまい、印字物の保存性が低下する。特に前記結晶性ポリエステルは、低融点であるため、印字物の保存性が顕著に低下する。
これに対し、非晶質ポリエステルのカルボン酸成分にアジピン酸を一定量用いることで、前記結晶性ポリエステルを用いていても、非晶質ポリエステルのガラス転移点以上の温度においても、印字物の保存が可能となった。これは、非晶質ポリエステル中に微分散しているアジピン酸部位を核として前記結晶性ポリエステルの結晶化が促進されたため、非晶質ポリエステルのガラス転移点の低下が抑えられたためではないかと推定される。
さらに、本発明にかかる非晶質ポリエステルを用いることで、印刷物のカールの発生を抑制することができる。一般に、カールは、紙中の水分量が多い場合、トナーの定着工程で紙中の水分が蒸発するとカールしやすい。また、カールは、トナーが溶融状態にある定着時よりも、定着後において固化状態にある定着後において体積が小さくなる場合に起こり易い。結晶性ポリエステルは、一般に前記二つの状態で体積変化が大きいため、カールを引き起こしやすいが、本発明の結着樹脂を用いたトナーは、カールの発生が少ない。これは、印字、定着後に生成する結晶性ポリエステルの結晶が非常に小さく、かつ微分散していることによるものと考えられる。
本発明の結着樹脂は、それぞれ特定の原料モノマーを用いて得られる結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルを含むものである。
ここで、ポリエステル等の樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.9〜1.2、さらに好ましくは1.0〜1.2であるポリエステルをいい、「非晶質ポリエステル」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満のポリエステルをいう。
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質ポリエステルのガラス転移に起因するピークとする。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
非晶質ポリエステルのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、アジピン酸化合物を含有する。
なお、本発明においては、カルボン酸並びにその酸無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等を、カルボン酸化合物と総称する。また、カルボン酸化合物がアルキルエステルの場合、カルボン酸化合物の炭素数として記載している炭素数に、アルキルエステルのアルキル基の炭素数は含まれない。従って、アジピン酸化合物の場合は、アジピン酸とそのアルキルエステルが含まれる。
アジピン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルであり、7〜23モルが好ましく、10〜20モルがより好ましい。アジピン酸化合物の含有量が、アルコール成分100モルに対して5モル未満では印字物の保存性が低下するが、これは結晶性ポリエステルの結晶化が促進されにくくなるためと推定される。また、アジピン酸化合物の含有量が25モルを超えても印字物の保存性が低下するが、これは結晶が小さくなりすぎるため、結晶性が低下するのではないかと推定される。
また、カルボン酸成分中のアジピン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、6〜30モル%が好ましく、9〜28モル%がより好ましく、10〜20モル%がさらに好ましい。
カルボン酸成分には、アジピン酸化合物以外に、ジカルボン酸化合物や3価以上の多価カルボン酸化合物が含有されていてもよい。
ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
カルボン酸成分は、トナーの帯電性向上の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。カルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び帯電性向上の観点から、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは40〜90モル%、さらに好ましくは50〜85モル%である。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
その他のカルボン酸化合物として、ロジン及びフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等も挙げられる。
本発明において、カルボン酸成分は、樹脂の分子量を調製し、トナーの耐キャリア汚染性及び保存性を高める観点から、3価以上の多価カルボン酸化合物、好ましくはトリメリット酸化合物、より好ましくは無水トリメリット酸を含有していることが好ましい。3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、0.1〜30モル%が好ましく、1〜25モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルのアルコール成分は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等を含む下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオールが好ましく、アルコール成分中、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がよりさらに好ましい。
Figure 2012118395
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物と2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物とは、印字物の保存性の観点から併用することが好ましく、モル比(2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物/2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物)は、50/50〜10/90が好ましく、40/60〜10/90がより好ましい。
その他のアルコール成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中では、トナーの低温定着性の観点から、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
炭素数2〜12の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、アルコール成分中、0〜70モル%が好ましく、0〜50モル%がより好ましく、0〜30モル%がさらに好ましい。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、樹脂の分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、印字物の保存性、及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは0.70〜1.10であり、より好ましくは0.70〜1.00、さらに好ましくは0.73〜0.90である。
本発明において、上記の非晶質ポリエステルは、ポリエステルのみならず、その変性樹脂も含まれる。
変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分を含む2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂等が挙げられる。
ポリエステル成分とビニル系樹脂成分とを有するハイブリッド樹脂は、それぞれの樹脂を必要に応じて開始剤等の存在下に溶融混練する方法、それぞれの樹脂を溶剤に溶解させ混合する方法、それぞれの樹脂の原料モノマー混合物を重合させる方法等の、いずれの方法により製造されたものでもよい。好ましくは、前記ポリエステル成分の原料モノマー及びビニル系樹脂成分の原料モノマーを用いて、縮重合反応と付加重合反応とを行う方法により得られる樹脂(特開平7−98518号公報)である。
ビニル系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。スチレン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸メチルが好ましく、スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが、ビニル系樹脂成分中、50重量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは80〜100重量%である。
なお、ビニル系樹脂成分の原料モノマーを重合させる際には、重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。
ビニル系樹脂成分の原料モノマーに対するポリエステル成分の原料モノマーの重量比(ポリエステル成分の原料モノマー/ビニル系樹脂成分の原料モノマー)は、ポリエステル成分により連続相を形成する観点から、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10である。
非晶質ポリエステルの数平均分子量は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、1000〜2400であり、1100〜2000が好ましく、1200〜1800がより好ましい。また、重量平均分子量は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、3000〜7000が好ましく、3500〜6000がより好ましく、3500〜5500がさらに好ましい。なお、非晶質ポリエステルの数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもテトラヒドロフラン可溶分を測定した値をいう。非晶質ポリエステルの数平均分子量が、1000未満では、印字物の保存性が低下するが、これはガラス転移点が低下するためと推定される。また、2400を超えると、トナーの低温定着性や印刷物のカール抑制が低下するが、これは、結晶性ポリエステルとの混合性が低下するため、結晶性ポリエステルが微分散化し難くなるためと推定される。
非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性、結晶性ポリエステルの分散性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは68〜120℃、より好ましくは68〜100℃、さらに好ましくは68〜90℃、よりさらに好ましくは68〜85℃である。
本発明には、トナーの低温定着性及びホットオフセット性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、低軟化点の非晶質ポリエステルと高軟化点の非晶質ポリエステルとを用いることが好ましい。
アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる非晶質ポリエステルであって、数平均分子量が1000〜2400である、前記非晶質ポリエステルを前記低軟化点の非晶質ポリエステルとして用いることが好ましい。前記高軟化点のポリエステルの好ましいカルボン酸成分及びアルコール成分は、低軟化点のポリエステルと同じものを用いることができる。
低軟化点の非晶質ポリエステルの軟化点は、68〜120℃が好ましく、68〜100℃がより好ましく、68〜88℃がさらに好ましく、高軟化点の非晶質ポリエステルの軟化点は、120℃を超えて、160℃が好ましく、125〜160℃がより好ましく、125〜155℃がより好ましい。低軟化点の非晶質ポリエステルと高軟化点の非晶質ポリエステルとの軟化点の差は、10〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。低軟化点の非晶質ポリエステルと高軟化点の非晶質ポリエステルの重量比(低軟化点の非晶質ポリエステル/高軟化点の非晶質ポリエステル)は、90/10〜50/50が好ましく、85/15〜70/30がより好ましい。
非晶質ポリエステルの酸価は、トナーの低温定着性の観点から、5〜50mgKOH/gが好ましく、10〜40mgKOH/gがより好ましく、15〜35mgKOH/gがさらに好ましい。水酸基価は、トナーの低温定着性の観点から、5〜50mgKOH/gが好ましく、10〜40mgKOH/gがより好ましく、15〜35mgKOH/gがさらに好ましい。
非晶質ポリエステルのガラス転移点は、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは35〜45℃、より好ましくは37〜43℃である。
なお、軟化点、数平均分子量、重量平均分子量、酸価、水酸基基及びガラス転移点は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により調整することができる。
非晶質ポリエステルの製造において、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等の後述するエステル化触媒等の存在下で行うことができ、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非晶質ポリエステルの製造における昇温後の最終到達温度としては、180〜250℃が好ましく、190〜230℃がより好ましい。
非晶質ポリエステルのエステル化触媒としては、印刷物のカール抑制の観点から、式(IIa)又(IIb):
Ti(X)m(OH)n (IIa)
O=Ti(X)p(OY)q (IIb)
(式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個の水酸基から水素原子を除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他の水酸基は同一のチタン原子に直接結合した水酸基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のチタン原子に直接結合した水酸基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。Yは水素原子又は1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4、好ましくは2〜4の整数、nは0〜3、好ましくは0〜2の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。m又はpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される少なくとも1種のチタン含有触媒が好ましい。
Xとしては、モノアルカノールアミン(とくにエタノールアミン)の残基、ジアルカノールアミン(とくにジエタノールアミン)の残基、及びトリアルカノールアミン(とくにトリエタノールアミン)の残基が好ましい。モノアルカノールアミンとしては、エタノールアミンが、ジアルカノールアミンとしては、ジエタノールアミンが、トリアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミンが好ましく、印刷物のカール抑制の観点から、トリエタノールアミンがより好ましい。
Yにおいて、1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、β-メトキシエチル基、β−エトキシエチル基等が挙げられる。
Yとしては、印刷物のカール抑制の観点から、水素原子及びエーテル結合を含まない炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子、エチル基、及びイソプロピル基がより好ましい。
式(IIa)で表されるチタン含有触媒の具体例としては、チタニウムテトラキス(モノエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノプロパノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−メチルジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−ブチルジエタノールアミネート)、テトラヒドロキシチタンとN,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンとの反応生成物、これらの分子内又は分子間重縮合物等が挙げられる。
また、式(IIb)で表されるチタン含有触媒の具体例としては、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(ジエタノールアミネート)、チタニルビス(モノエタノールアミネート)、チタニルヒドロキシエタノールアミネート、チタニルヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニルエトキシトリエタノールアミネート、チタニルイソプロポキシトリエタノールアミネート、これらの分子内又は分子間重縮合物等が挙げられる。
結晶性ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分は、ポリエステルの結晶性を高める観点から、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを含有する。
本発明における炭素数6〜12の脂肪族ジオールとしては、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,4-ブテンジオール等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、印字物の保存安定性、及び印刷物のカール抑制の抑制の観点からは、アルコール成分は、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを含有することが好ましく、炭素数6〜8の脂肪族ジオールを含有することがより好ましく、また、結晶性の観点からは、炭素数6〜12のα,ω−直鎖アルカンジオールを含有することが好ましく、炭素数6〜8のα,ω−直鎖アルカンジオールを含有することがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールを含有することがさらに好ましい。
上記炭素数6〜12の脂肪族ジオールの含有量は、結晶性ポリエステルの結晶性をより高める観点から、アルコール成分中、70〜100モル%であり、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。1種類の炭素数6〜12のα,ω−直鎖アルカンジオールのアルコール成分中における含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%であり、1,6-ヘキサンジオールのアルコール成分中における含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。
炭素数6〜12の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等の炭素数が6〜12以外の脂肪族ジオール、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等を含む下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
Figure 2012118395
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分は、トナーの低温定着性、印字物の保存安定性、及び印刷物のカール抑制の観点から、少なくとも炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有する。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、印字物の保存安定性、及び印刷物のカール抑制の観点から、カルボン酸成分は、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましく、セバシン酸を含有することがより好ましい。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは実質的に100モル%である。当該含有量が、カルボン酸成分中、70モル%未満であると、トナーの低温定着性が低下する。トナーの低温定着性、印字物の保存安定性、及び印刷物のカール抑制の観点から、セバシン酸の含有量は、カルボン酸成分中、70〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましい。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の芳香族多価カルボン酸化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルが好ましく挙げられる。
炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸等;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、樹脂の分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性、印字物の保存性、及び印刷物のカールの抑制の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜120℃がより好ましく、60〜100℃がさらに好ましく、60〜90℃がよりさらに好ましい。
結晶性ポリエステルの融点は、トナーの低温定着性、印字物の保存性、及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは60〜130℃、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃である。
結晶性ポリエステルの数平均分子量は、トナーの低温定着性、印字物の保存性、及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。ただし、結晶性ポリエステルの生産性を考慮すると、数平均分子量は6000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、4500以下がさらに好ましい。上記観点から、結晶性ポリエステルの数平均分子量は、1000〜6000が好ましく、1000〜5000がより好ましく、1500〜4500がさらに好ましい。
また、重量平均分子量も、数平均分子量と同様の観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは8,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下、よりさらに好ましくは20,000以下である。上記観点から、結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましく、8,000〜20,000がよりさらに好ましい。
なお、本発明において、結晶性ポリエステルの数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもクロロホルム可溶分を測定した値をいう。数平均分子量及び重量平均分子量は、縮重合の反応温度を高めたり、触媒量を増加させたり、助触媒を併用したり、反応時間を長くすることで大きくすることができる。
結晶性ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分との原料モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、ポリエステルの末端をカルボキシ基が主とし、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、好ましくは1.03〜1.20、より好ましくは1.03〜1.15、さらに好ましくは1.04〜1.12、よりさらに好ましくは1.05〜1.10である。モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03以上であれば、水酸基末端割合が少なくなり、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制が向上する。モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.20以下であれば、結晶性ポリエステルの低分子量成分の量が増えすぎることなく、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制が向上する。
結晶性ポリエステルの製造における温度条件は、130〜250℃が好ましく、昇温後の最終到達温度としては、180〜250℃が好ましく、190〜230℃がより好ましい。
結晶性ポリエステルの製造では、トナーの低温定着性、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から、130〜160℃、好ましくは130〜150℃の温度範囲で、理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から求められる縮重合反応の反応率が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上になるまで縮重合反応させることが好ましい。
130〜160℃の比較的低い温度を考慮すると反応率は、好ましくは80%以下、より好ましくは40〜80%、さらに好ましくは50〜80%、よりさらに好ましくは60〜80%になるまで、前記温度範囲で縮重合反応させることが好ましい。
すなわち、アルコール成分とカルボン酸成分との混合物を、昇温して縮重合反応を行なう過程において、130〜160℃の比較的低い温度範囲で、反応率が40%以上になるまで縮重合反応を進めることで、結晶性ポリエステルの低分子量成分の量を減らすことができ、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制を向上させることができる。これは、高温で短時間に反応させた場合に比べ、モノマー成分が十分に反応するため低分子量成分が減少するためと考えられる。
縮重合の反応率が40%以上になるまで130〜160℃の温度範囲を保持する必要は必ずしもなく、本発明の効果を損なわない限り、一時的に範囲外であってもよいが、最終的に反応率が40%以上のいずれかの地点で130〜160℃の温度範囲であることが好ましい。
具体的には、好ましくは3〜12時間、より好ましくは3〜10時間、さらに好ましくは3〜8時間前記の温度範囲で保持して反応させることで反応率を40%以上にすることが好ましい。
また、触媒は、縮重合反応の反応率(理論反応水量の排出時を反応率100%とした場合に、排出された反応水量から計算された縮重合反応の反応率。以下同じ。)が70%以上になった時点で反応系内に添加することが印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から好ましい。触媒は反応水により失活することがあり、反応初期から使用している触媒が失活したものは、反応後期に加える触媒の作用を阻害したり、結晶性ポリエステルの結晶性を低下させたりすることがあるため、反応初期に使用する触媒量は抑えることが好ましい。
縮重合反応の反応率70%以上、好ましくは縮重合反応の反応率70〜90%の時点で添加する触媒量は、好ましくは触媒全量の50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
さらに、縮重合反応の反応率90%以上で、減圧度12kPa以下で、好ましくは減圧時間1時間以上、より好ましくは1〜10時間、さらに好ましくは1〜5時間縮重合反応させることが、印字物の保存性及び印刷物のカールの抑制の観点から好ましい。
縮重合反応の終点は、撹拌装置を用いない反応槽中で終了する場合は、反応槽から結晶性ポリエステルを取り出した時であり、撹拌装置を用いる反応槽中で終了する場合は、撹拌を実質上停止した時である。なお、縮重合反応の終点は、求められる樹脂の性能に依存するが通常縮重合反応の反応率が90%以上であることが好ましい。
結晶性ポリエステルのエステル化触媒としては、トナーの保存性を向上させる観点から、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、触媒能の点から、(R2COO)2Sn(ここでR2は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R3O)2Sn(ここでR3は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R2COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル及び結晶性ポリエステルの製造に用いられる他の触媒としては、Ti-O結合を有するチタン化合物が好ましく、具体的には、総炭素数1〜28のアルコキシ基、総炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は総炭素数1〜28のアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
上記チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができ、又は、ニッソー社等の市販品としても入手できる。
エステル化触媒は、1種又は2種以上を併せて使用することができる。
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。
本発明において、互いに隣接する3個の炭素原子に結合した水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物をエステル化触媒とともに助触媒として用いることもできる。
ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。
ピロガロール化合物とエステル化触媒の重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、トナーの保存性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。
本発明の結着樹脂において、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの重量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリエステル)は、トナーの低温定着性の向上の観点から、95/5〜50/50が好ましく、95/5〜60/40がより好ましく、93/7〜70/30がさらに好ましい。
本発明の結着樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル以外の公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、前記結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの総含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
本発明のトナーは、トナーの保存性を向上させる観点から、アミド化合物を含有していることが好ましい。
アミド化合物としては、ポリアミド、脂肪酸アミド、芳香族アミド化合物等が挙げられるが、これらの中では、触媒との親和性の観点から脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸アミドとしては、ポリエステルとの相溶性の観点から、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましい。本発明において好適な脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、メタクリル酸アミド、ニコチン酸アミドフェニル酢酸アミド、n-酪酸アミド、イソ酪酸アミド、プロピオンアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N-エチレンビスオクタドアミド等が挙げられ、熱的安定性の高さから、ステアリン酸アミド及びエチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。
アミド化合物の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、結着樹脂中への分散性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(ヘキスト社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(ヘキスト社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電立ち上がり性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましく、0.3〜3重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部がよりさらに好ましく、1〜2重量部がよりさらに好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、無機微粒子を外添剤として用いるのが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられ、これらの中では、シリカが好ましく、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが含有されているのがより好ましい。
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、そのピーク温度を融点とする。
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-20)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法により測定する。
〔樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量及び数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料を、クロロホルム(結晶性ポリエステル)又はテトラヒドロフラン(非晶質ポリエステル)に、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25JP)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルム(結晶性ポリエステル)又はテトラヒドロフラン(非晶質ポリエステル)を、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
非晶質ポリエステルの製造例1〔樹脂AA〜AL〕
表1、2に示す配合量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)40g及び没食子酸1gを添加し、230℃にて10時間反応を行った。反応後、190℃に温度を下げ、アジピン酸を添加し、常圧で2時間反応させた。さらに無水トリメリット酸を加え、表1、2に記載の軟化点になるまで反応させて、非晶質ポリエステルを得た。
非晶質ポリエステルの製造例2〔樹脂AM〕
チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)の代わりに、2-エチルヘキサン酸錫(II)40gを用いた以外は、製造例1と同様にして、非晶質ポリエステルを得た。
非晶質ポリエステルの製造例3〔樹脂B〕
表2に示す配合量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)40g及び没食子酸2gを添加し、230℃にて10時間反応を行った。反応後、190℃に温度を下げ、アジピン酸及び無水トリメリット酸を加え、1時間反応させた後、210℃に昇温し、さらに1時間反応させた。その後、30Kpaにて、表2に記載の軟化点になるまで反応させて、非晶質ポリエステルを得た。
Figure 2012118395
Figure 2012118395
結晶性ポリエステルの製造例〔樹脂A−1、C−1〕
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表3に示す配合量の原料モノマーを入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率65%)、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、2-エチルヘキサン酸錫(II)20gを加えて、さらに200℃にて2時間反応を行った。さらに8kPaにて2時間反応を行い、結晶性ポリエステルを得た。
結晶性ポリエステルの製造例〔樹脂B−1〕
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表3に示す配合量の原料モノマーとともに、2-エチルヘキサン酸錫(II)40gを入れ、200℃まで4時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃にて反応率90%まで反応させた後、8kPaにて1時間反応を行い、結晶性ポリエステルを得た。
Figure 2012118395
実施例1〜10及び比較例1〜6
表4に示す結着樹脂100重量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6重量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1重量部、エチレンビスステアリン酸アミド「カオーワックスEB-P」(花王株式会社製)2重量部及び離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:80℃)4重量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100重量部に対し、外添剤として「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、個数平均粒子径:16nm)1.5重量部及び「SI-Y」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、個数平均粒子径:40nm)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
試験例1〔最低定着温度評価〕
複写機「AR-505」(シャープ社製)にトナーを実装し、未定着で再生紙(リサイクルカット判 G80A4W、トッパン・フォームズ製)に画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.6mg/cm2)。前記複写機の定着機をオフラインで、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、600mm/secで用紙に定着させた。
500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴム(Lion ER-502R Ink&Ballpen)で、定着機を通して定着させた画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(商品名、マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に80%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:最低定着温度が110℃未満である。
B:最低定着温度が110℃以上、115℃未満である。
C:最低定着温度が115℃以上、120℃未満である。
D:最低定着温度が120℃以上、130℃未満である。
E:最低定着温度が130℃以上である。
試験例2〔印字物保存性〕
試験例1の複写機を用い、試験例1と同様にして、前記リサイクルカット判G80A4Wの用紙に未定着で画像を出し(19cm×26cm、付着量:0.6mg/cm2)、試験例1で求めた最低定着温度+20℃の温度において定着を行いテスト紙(印字物)を得た。新品の前記用紙(G80A4W)の上に印字面を下にして前記テスト紙を置き、さらにその上に50枚の新品の紙(G80A4W)を重ねた。その状態で、50℃、湿度60%の恒温恒湿槽に8時間入れた後、取り出し、25℃で状態を確認した。以下の評価基準に従って、印字物保存性を評価した。結果を表4に示す。
<評価基準>
A:全く融着がない。
B:はがす時に若干の融着はわずかにあるが、はがした後の画像欠損は確認されない。
C:はがす時に融着があり、はがした後の画像欠損がわずかにある。
D:はがす時に融着があり、はがした後の画像欠損が明らかにある。
E:完全に融着しており、はがれない。
試験例3〔印刷物のカール抑制評価〕
試験例2のテスト紙(印字物)を、机等の平行な板の上に印字面を上にして置き(25℃)、端部の机との離れ(距離)を4箇所測定し、最大の離れ値を求めた。以下の評価基準に従って、カールを評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:端部の反り返りの最大値が1mm以下
B:端部の反り返りの最大値が1mmを超えて、3mm以下
C:端部の反り返りの最大値が3mmを超えて、5mm以下
D:端部の反り返りの最大値が5mmを超えて、10mm以下
E:端部の反り返りの最大値が10mmを超える
Figure 2012118395
以上の結果から、比較例1〜6に比べて、実施例1〜10のトナーは、低温定着性と印字物保存性が良好であり、カールの発生も抑制されていることが分かる。
本発明のトナー用結着樹脂は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーに好適に用いられる。

Claims (6)

  1. アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる、数平均分子量が1000〜2400である非晶質ポリエステルと、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを70〜100モル%含有するアルコール成分と炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる結晶性ポリエステルとを含有してなる、トナー用結着樹脂。
  2. 非晶質ポリエステルのガラス転移点が35〜45℃である、請求項1記載のトナー用結着樹脂。
  3. 非晶質ポリエステルの軟化点が68〜120℃である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂。
  4. 結晶性ポリエステルのアルコール成分とカルボン酸成分との原料モル比(カルボン酸成分/アルコール成分)が1.03〜1.20である、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  5. 非晶質ポリエステルが、式(IIa)又(IIb):
    Ti(X)m(OH)n (IIa)
    O=Ti(X)p(OY)q (IIb)
    (式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個の水酸基から水素原子を除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他の水酸基は同一のチタン原子に直接結合した水酸基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のチタン原子に直接結合した水酸基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。Yは水素原子又は1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。m又はpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。)
    で表される少なくとも1種のチタン含有触媒の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステルである、請求項1〜5いずれか記載のトナー用結着樹脂。
  6. 請求項1〜5いずれか記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー。
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