JP2012112063A - 上着 - Google Patents

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Abstract

【課題】 セット・イン・スリーブタイプの上着において、肩パッドを使用しなくとも、抱き皺が生じず、背中のシルエットの崩れを軽減した上着を提供する。
【解決手段】 セット・イン・スリーブタイプの上着において、身頃と袖とを縫合せた状態のアームホール部4において、袖付けの縫い代21、51に肩先から背中側のアームホール中央付近までシャーリングテープ7を長さ方向に10〜25%引き伸ばしてテンションを掛かけた状態で縫着し、そのシャーリングテープが縫着後に収縮していることを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、上着に関する。より詳しくは、本発明は、ジャージー(ニット地)からなる上着に適した、アームホール部分を有する上着に関するものである。
従来、背広やジャケット等のセット・イン・スリーブタイプの肩部には、略半円形状の不織布や綿などを積層して立体的に成形した肩パッドが使用されている。
従来の背広やジャケット等のセット・イン・スリーブタイプ(普通袖タイプ)の上着は、人体の肩甲骨による膨らみに沿わせるため、および、腕を動かし易くするために、前身頃の肩線の長さよりも後身頃の肩線の長さを長くして、後身頃の肩部をいせ込みながら、前身頃の肩線と後身頃の肩線とを縫合せる。一方、後身頃はその肩先から袖付けの脇にかけて縦にゆとりを持たせている。
図1(a)は上着の前身頃1、後身頃2および細腹3を縫合せた状態の側面図で、(b)はその背面図を示しており、点線の〇で囲った部分がゆとりとなる箇所で、図1(b)に示したように肩甲骨部分の高さがアームホール4に向かってフレアー状の余り2aとなり、その余り2aは図1(a)に斜線で示したように、アームホール4より浮き上がっている。
この状態の身頃と袖とを縫製する場合、後身頃2のアームホール部をいせ込むようにして袖5と後身頃2とを縫合わせている。縫合わせた状態を図2に示しており、ゆとりとなる箇所を点線の〇で囲って示した。このゆとりとなる箇所には、所謂「抱き皺(だきじわ)」または「だき落ち」といわれる斜めの皺2bが肩から袖にかけて形成されてしまう。
この皺を消すために、従来の背広やジャケット等の上着では、立体的に成形された肩パッドを入れて、シルエットを美しく整えている。
しかし、従来の肩パッドでは、縫製後に仕上げのプレスをした際に肩パッドを構成する素材がプレスにより伸びて、肩パッドの形がくずれたり、或いは、洗濯によって肩パッドの形がくずれたりして、その結果、衣服の肩部の形くずれが生じたりしている。
肩パッドの形くずれを防ぐために、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許第3569610号公報(特許文献1)では、形状記憶合金や形状記憶樹脂を肩パッド内に使用して、肩パッドの形くずれを防止することが提案されている。
また、実用新案登録第3061225号公報(特許文献2)においては、肩パッドの素材よりも剛い布製芯を肩パッドに用いて肩パッドの形くずれを防止することが提案されている。
特開平11−12830号公報(特許文献3)および実公平5−43047号公報(特許文献4)には、肩パッドの肩先側の縁に垂れ綿とともに形状記憶部材を縫着して、肩部のシルエットラインを良好に保つことが提案されている。
また、特許第4150444号公報には、肩口の垂れ綿内に肩口の湾曲に略相似な円弧状弾性片(金属繊維またはテグス)を収納し、この円弧状弾性片の一端のみを垂れ綿に止着することにより、円弧状弾性片が肩口の動きに追随し、その端部を出っ張らせることなく保形力を発揮できるという上着の肩口構造が提案されている。
特許第3569610号公報 実用新案登録第3061225号公報 特開平11−12830号公報 実公平5−43047号公報 特許第4150444号公報
前述した特許文献に開示された上着は肩パッドを使用して、抱き皺を解消するものである。しかし、ニット生地からなる上着(ジャージーの上着)や夏用上着では、布地が柔軟であったり、薄かったりするために、肩パッドを使用すると、肩パッドの箇所がそのまま膨らんだ状態で外観に響いてしまい、上着のシルエットが崩れてしまうという問題が生じる。
本発明はこのような問題を解決するために、後身頃の肩先から袖付けの脇にかけてゆとりを持たせたセット・イン・スリーブタイプの上着において、肩パッドを使用しなくとも、抱き皺が生じず、背中のシルエットの崩れを軽減した上着を提供することを目的とする。
本発明は、セット・イン・スリーブタイプの上着において、身頃と袖とを縫合せた状態のアームホール部において、袖付けの縫い代に肩先から背中側のアームホール中央付近までシャーリングテープがテンションを掛かけた状態で縫着されたことを特徴とする上着により前記目的を達成した。
本発明において、前記シャーリングテープはテンションの掛かっていない状態の長さに対して長さ方向に10〜25%引き伸ばされて、袖付けの縫い代に縫着され、縫着後に収縮しているものである。
本発明の上着はその肩部に肩パッドが存在しないことが好ましい。また、本発明の上着はその表地がニット地であることが好ましい。
本発明によれば、セット・イン・スリーブタイプの上着において、身頃と袖とを縫合せた状態のアームホール部において、袖付けの縫い代に肩先から背中側のアームホール中央付近までシャーリングテープがテンションを掛かけた状態で縫着されたので、縫着後のシャーリングテープは収縮し、それに伴いアームホールにおいて肩先から背中側のアームホール中央付近の部分までの袖付けの縫い代がその長さ方向にいせ込んだように縮まり、その結果、後身頃の袖付け付近の箇所は肩先に向かって引張り上げられたような感じになり、背中の抱き皺がなくなる。
更に、本発明によれば、シャーリングテープを伸ばした状態で縫着した背中側の袖付けの縫い代は見掛けはいせ込んだように襞が寄っているが、この襞は引張り力が掛かればシャーリングテープとともに伸ばすことができる。このため、腕を動かした場合も、背中側のアームホールが伸びるので、腕を動かし易い。
シャーリングは平面の布に細かくギャザーを寄せて、布面に立体的な陰影をつくる装飾的な技法であり、手縫いで行ったり、ミシンの下糸にゴムミシン糸を使用したりすることが多い。また、伸縮性を有するシャーリング用のテープも市販されており、このシャーリングテープを引き伸ばしながら布に縫い付けて、ギャザーを形成する。この場合、ギャザーにより所望の装飾的効果を得るために、シャーリングテープを元の長さに対して60%以上伸長した状態で行うことが普通である。
これに対して、本発明によれば、シャーリングテープは長さ方向に元の長さの10〜25%、好ましくは、12〜20%、引き伸ばすだけである。これは、アームホールにおける背中のゆとり分となる長さ(後身頃の袖付け長さと袖の袖付け長さとの差)を袖付け時にいせ込んだために生じる抱き皺を解消するためにシャーリングテープを使用するのであり、装飾的効果を得るためにギャザーを形成するためではないからである。すなわち、本発明においては、シャーリングテープを引き伸ばし過ぎて縫着した場合は、縫着後のシャーリングテープによる縮みが大きく、背中側の袖付けの箇所に皺が寄り過ぎて、見た目が悪くなる。
本発明によれば、肩パッドを使用しなくても、背中のシルエットを美しく保つことができる。
また、本発明によれば、肩パッドを使用しない場合は、ニット地や薄手の生地を上着の表地として使用しても、肩パッドによるシルエットへの悪影響がなく、しかも肩パッドを使用したのと同様に抱き皺が生じない。しかも、ニット生地を使用した場合は、ニット地が多少の伸縮性を有するので、腕等を動かし易く、着心地がよい。
ニット地は伸縮性を有するので、長期間、着用するとシルエットが崩れる傾向があるが、本発明によれば背中のシルエットの崩れを軽減することできる。
図1(a)は上着の前身頃、後身頃および細腹を縫合せた状態のものを人台に着せ掛けた状態を示す側面図であり、図1(b)は図1(a)に示したものの背面図である。 上着の背面図であり、説明のために上着の左後身頃側は袖を付けた状態で示し、右後身頃側はまだ袖を付けていない状態で示している。 本発明の上着のアームホール部を示す斜視図であり、上着を裏側から見た状態を示している。 本発明の上着の背面図であり、説明のために、上着の左後身頃側は袖を付けた状態で示し、右後身頃側はまだ袖を付けていない状態で示している。 図5(a)は本発明に使用するシャーリングテープの一実施例の平面図であり、図5(b)はシャーリングテープの別の実施例の平面図である。
以下、図面に示した実施例に基いて本発明を詳細に説明する。
本発明の上着は通常のアームホールの位置で袖付けをしたセット・イン・スリーブタイプの上着である。本発明は、特に、表地がニット地(ジャージ)や薄い生地であり、肩パッドを使用しない上着に適している。
本発明の上着は、従来の背広やジャケットと同様に、人体の肩甲骨による膨らみに沿わせるため、および、腕を動かし易くするために、前身頃1の肩線の長さよりも後身頃2の肩線の長さを長くして、後身頃2の肩部をいせ込みながら、前身頃1の肩線と後身頃2の肩線とを縫合せる。一方、後身頃2を後身頃2の肩先から袖付けの脇にかけて縦にゆとりを持たせている。
図1(a)および(b)は本発明の上着における前身頃1、後身頃2および細腹3を縫合せた状態のものを人台9に着せ掛けた状態で示している。図1(a)において縫合せた状態の肩線に符号6を付して示した。また、図1(a)および(b)において、点線の〇で囲って示した部分がゆとり2aとなる箇所で、図1(b)に示したように肩甲骨部分の高さがアームホール4に向かってフレアー状の余り(ゆとり)2aとなり、その余り2aは図1(a)に斜線で示したように、アームホール4より浮き上がっている。
この状態の身頃1、2、3のアームホールと袖5とを縫製する際に、後身頃2のアームホール部をいせ込むようにして袖5と後身頃2とを縫合わせる。図2において、左後身頃側が袖5を付けた状態で示しており、右後身頃側は袖を付ける前の状態を示しており、袖5を付ける前に符号2aで示したゆとりとなる箇所は袖を付けた後は図2において点線の〇で囲って示したように斜めの皺2b(所謂、抱き皺)が肩から袖にかけて生じる。
ここまでの縫製手順は従来と同様である。
本発明においては、袖付けを行った後に、袖5の縫い代51および後身頃2の袖付けの縫い代21に肩先から背中側のアームホール中央付近までシャーリングテープ7を、テンションを掛かけた状態(引き伸ばした状態)で縫着する(図3参照)。シャーリングテープ7は、重なり合った状態の両縫い代21、51に袖5の縫い代51側から縫着することが好ましい。
この際、シャーリングテープ7を、テンションの掛かっていない状態の長さ(元の長さ)に対して長さ方向に10〜25%、好ましくは12〜20%、引き伸ばしながら縫い代51、21に縫着する。シャーリングテープ7は縫着後に収縮するが、縫合せた縫い代51、21の厚みがあるので、完全に元の長さに戻るわけではない。収縮する長さは、上着に使用する生地の厚みに関係するので一様ではないが、おおよそ、伸ばした分の半分程度が戻る。
図3には、シャーリングテープ7が縫着後に収縮して、縫い代21に皺が寄っていることを分かり易く示している。
シャーリングテープ7を縫着した縫い代21、51は袖側に倒す。上着の表側から見ると、図4の袖を付けた状態の左後身頃側に示すように、肩先から背中側のアームホール中央付近の間A−Bの縫い代が縫い縮められて、後身頃の袖付け付近の箇所(点線の〇で示した箇所)は肩先に向かって引張り上げられたような感じになり、少し膨らみ加減となって、袖付けの縫い目が袖と後身頃との間に少し入り込んだような状態となり、背中の抱き皺はなくなる。
本発明に使用するシャーリングテープ7は、テープ状のもので、適度の伸縮性を有するものであれば、特に限定されないが、衣服に使用する通常のゴムテープは厚みがあるので、シャーリングテープとして市販されているものが縫着し易く好ましい。
図5(a)および(b)はそれぞれシャーリングテープ7の一実施例を示しているものである。図5(a)に示したシャーリングテープ7は平行に並べられた3本の弾性糸71(例えば、ポリウレタン弾性糸)とこれらを接続するよこ糸72(例えば、ナイロン加工糸)とからなる。図5(b)に示したシャーリングテープ7は平行に並べられた4本の弾性糸71とこれらを接続するよこ糸72とからなる。なお、本発明においてシャーリングテープ7はこれに限定されるものではない。
1 前身頃
2 後身頃
2a ゆとり
2b 抱き皺
4 アームホール
5 袖
6 肩線
7 シャーリングテープ
21 後身頃の袖付けの縫い代
51 袖の袖付けの縫い代

Claims (4)

  1. セット・イン・スリーブタイプの上着において、身頃と袖とを縫合せた状態のアームホール部において、袖付けの縫い代に肩先から背中側のアームホール中央付近までシャーリングテープがテンションを掛かけた状態で縫着されたことを特徴とする上着。
  2. 前記シャーリングテープはテンションの掛かっていない状態の長さに対して長さ方向に10〜25%引き伸ばされて前記袖付けの縫い代に縫着されて、縫着後に収縮していることを特徴とする請求項1記載の上着。
  3. 前記上着の肩部に肩パッドが存在しないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の上着。
  4. 前記上着の表地がニット地であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の上着。
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