JP2012111970A - アルミナ含有2液性注型樹脂組成物、アルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法およびガス絶縁開閉装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】2液性注型樹脂における流動性、作業性を維持しながら、2液性注型樹脂に含有されるアルミナ粒子の沈降を防止することができるアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤と、粒子からなり、電気絶縁性を保持するためのアルミナ充填剤と、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成され、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加された微粒子添加物とを必須成分として構成されている。
【選択図】なし
【解決手段】アルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤と、粒子からなり、電気絶縁性を保持するためのアルミナ充填剤と、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成され、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加された微粒子添加物とを必須成分として構成されている。
【選択図】なし
Description
本発明は、アルミナ粒子を充填材として使用した2液性注型樹脂組成物に関し、特に、SF6を用いるガス絶縁開閉装置用絶縁スペーサなどのエポキシ樹脂注型品等として適用されるアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法、さらにアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を備えたガス絶縁開閉装置に関する。
エポキシ樹脂注型品は、固体絶縁物として電気絶縁性や機械的特性に優れていることから、高電圧変電機器の絶縁物として多く利用されている。このエポキシ樹脂注型品に使用される充填材としては、安価で比重が小さい溶融シリカや石英シリカ(SiO2)、耐燃性がある水和アルミナ(Al(OH)3)などが使用されている。
例えば、絶縁媒体として六フッ化硫黄(SF6)を使用したガス絶縁開閉装置では、式(1)〜式(3)に示されるように、遮断器や断路器の動作時に生じるアークでSF6が分解してSF4やSOF2などが生成する。さらに、これらガスは、ガス絶縁開閉装置内の微量の水分と反応して、最終的にフッ酸(HF)ガスになる。
SF6 → SF4,SOF2 …式(1)
SF4+H2O → SOF2+2HF …式(2)
SOF2+H2O → SO2+2HF …式(3)
SF6 → SF4,SOF2 …式(1)
SF4+H2O → SOF2+2HF …式(2)
SOF2+H2O → SO2+2HF …式(3)
この時、充填材として前述したシリカを使用すると、式(4)〜式(5)に示されるように、HFガスがシリカと容易に反応して潮解性のH2SiF6を形成し、電気絶縁特性が大きく低下する(例えば、非特許文献1参照。)。
SiO2+4HF → SiF4+2H2O …式(4)
SiF4+2HF → H2SiF6 …式(5)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O …式(4)
SiF4+2HF → H2SiF6 …式(5)
このような電気絶縁特性の低下を回避するため、ガス絶縁開閉装置内で用いられる絶縁スペーサなどの注形品には、シリカに代えて、HFガスに侵されないアルミナ(Al2O3)が充填材として使用されている。
また、エポキシ樹脂注型品の製造方法としては、(1)注型作業現場において、エポキシ樹脂、充填材、硬化剤などを混合機で攪拌し、その場で真空チャンバー内に設置された金型に、減圧下で混合した樹脂を注入して硬化する方法と、(2)予め、液状エポキシ樹脂、液状酸無水物に充填材を配合した2液性樹脂組成物を、スタティックミキサー等の装置を使って連続混合して射出し、金型に加圧注入して短時間で硬化させる方法がある。
上記した(1)の製造方法は、従来から行なわれている方法で、長年の実績と高い信頼性はあるが、樹脂を混合し金型に注入して硬化させるまでに費やす時間が数時間から十数時間と長い。そのため、長時間金型を占有するので、生産効率が悪く、1日の製造個数が金型の個数で決定されるなどの問題や、注型するたびに混合機の洗浄が必要となるなどの問題があった。
一方、上記した(2)の製造方法は、連続混合、注型のため、常に新しい樹脂が配管系を流れることになり、混合装置の洗浄が不要となる。さらに、加圧ゲル化法のような、樹脂の硬化収縮を補償しながら反応の速い樹脂を連続加圧注入して、短時間で注型品を製造する方法を採用すれば、1つの金型で数多くの注形品を連続的に注形して硬化することができ、上記した(1)の製造方法よりも高い生産性が得られる。
このため近年では、生産性向上、コスト低減、生産自動化などを図るため、注形品の製造には、短時間で樹脂を硬化させる加圧ゲル化法が広く適用されるようになってきた。また、最近、ガス絶縁機器の小型化が進み、これに応えるため、絶縁物の耐熱性の向上が求められる傾向にあり、ガラス転移点が140℃以上の絶縁物が少なくとも要求されている。
上記した加圧ゲル化法を実施するためには、エポキシ樹脂、硬化剤として室温で液状であるものを使用し、かつ、充填材を配合した状態で2液化する必要がある。しかしながら、常温で液状であるエポキシ樹脂や硬化剤は粘度が低いため、予め添加した充填材が沈降し易いという問題が生じる。さらに、耐SF6分解ガス性を要求されるガス絶縁機器用注型樹脂では、アルミナ粒子を充填材することになるが、アルミナ粒子は加圧ゲル化用注型樹脂で一般的に使われているシリカ粒子に比べて比重が大きいため、充填材の沈降が顕著に現れる。また、アルミナを配合したエポキシ樹脂は、次工程のミキシングに備えて、予備タンク等で混合温度に近い温度で保温する必要があり、その間にアルミナが沈降しないようにすることが求められる。この際、予備タンク等の装置内で大幅な沈降が発生すると、配管などが閉止し、製造上大きな障害となる。
このようなアルミナの沈降を防止するために、粒径が1μm以下のアルミナを8重量%以上含有することにより樹脂の粘度を高め、充填材の沈降を防止する技術が開示されている。
電気学会技術報告(II部)第342号 固体絶縁材料の添加剤・充填剤効果調査専門委員会編、1990年7月16日
しかしながら、上記した従来のアルミナの沈降を防止する方法では、加圧ゲル化法に使用される2液化樹脂に求められている良好な流動性を維持することが困難となり、加圧ゲル化法にこの方法を採用することは困難であった。また、充填剤の沈降を許容して使用することも考えられるが、その場合は、混合装置および注入装置の配管に蓄積する沈降層を頻繁に除去する必要があり、メンテナンスが煩雑となり、本来の生産効率を得ることが難しかった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、2液性注型樹脂における流動性、作業性を維持しながら、2液性注型樹脂に含有されるアルミナ粒子の沈降を防止することができるアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、本発明に係るアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を備えたガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、粒子からなり、電気絶縁性を保持するためのアルミナ充填剤と、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成され、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加された微粒子添加物とを必須成分として構成されていることを特徴とするアルミナ含有2液性注型樹脂組成物が提供される。
本発明に係るアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法によれば、2液性注型樹脂における流動性、作業性を維持しながら、2液性注型樹脂に含有されるアルミナ粒子の沈降を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本発明に係る第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、層状無機化合物とを必須成分として構成されている。
本発明に係る第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、層状無機化合物とを必須成分として構成されている。
本発明に係る第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂は、炭素原子2個と酸素原子1個からなる三員環(エポキシ基)を1分子中に2個以上有し、室温(20〜30℃)で液状であり、硬化し得る化合物であればよく、その種類は特に限定されるものではなく、耐熱性、反応性、使用される用途等に応じて適宜に選択される。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単体あるいは少なくとも2種以上混合して、室温で液状の状態で使用する。また、耐熱性が要求される場合には、上記した、液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル等の他にも、耐熱附与エポキシ樹脂である、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルキル置換3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型4官能エポキシ樹脂等を使用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂を単体あるいは少なくとも2種以上混合して、室温で液状の状態で使用する。
エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂と化学反応してエポキシ樹脂を硬化させるものであり、かつ室温(20〜30℃)で液状であるものであればよく、その種類は特に限定されるものではなく、耐熱性、反応性、使用される用途等に応じて適宜に選択される。このようなエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、酸無水物では、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂用硬化剤を単体あるいは少なくとも2種以上混合して、室温で液状の状態で使用する。ここで、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸には、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、または3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸と4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物等がある。特に高耐熱を必要とする場合には、エポキシ樹脂用硬化剤として、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。また、アミン系のエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、イソフォロジアミン、メンセンジアミン等が挙げられ、これらは、液状で高い耐熱性が得られる。
アルミナ充填剤は、アルミナ含有2液性注型樹脂組成物の電気絶縁性を保持するためのものであり、例えば、電気絶縁用途として一般的に使用されているα−結晶を有する電融アルミナや焼結アルミナ等の粒子で構成される。アルミナ充填剤は、1μm〜100μmの範囲の粒度分布を有する粒子で構成されることが好ましく、その平均粒径は、10μm〜50μmであることが好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径であり、粒径は、レーザ回折法等によって計測される。また、アルミナ充填剤は、電気絶縁性を保持するために、エポキシ樹脂100重量部に対して300〜500重量部の割合で添加されることが好ましい。
ここで、使用するアルミナ充填剤の好ましい粒度分布の範囲を1μm〜100μmとし、好ましい平均粒径の範囲を10μm〜50μmとしたのは、平均粒径が10μmよりも小さい場合には、粘度が上昇し適正な流動性を得ることが難しくなるからであり、特に、1μmよりも小さい粒子を含む場合には、粘度の上昇が大きいからである。一方、平均粒径が50μmよりも大きい場合には、粒子の沈降が生じ、特に、100μmよりも大きい粒子を含む場合には、粒子の沈降が顕著になるからである。
層状無機化合物は、無機物で構成される層状構造を有し、その層間に他の物質を取り入れることが可能な層状粘土化合物等からなり、具体的には、スメクタイト群、バーミキュライト群からなる鉱物群から少なくとも一成分を選択したものであることが好ましい。
スメクタイト群に属する層状粘土化合物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ステブンサイト、ノントロナイト等が挙げられる。また、バーミキュライト群に属する層状粘土化合物としては、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト等が挙げられる。また、上記した層状粘土化合物以外にも、例えば、クロライト、フロゴパイト、レピドライト、マスコバイト、バイオタイト、パラゴナイト、マーガライト、テニオライト、テトラシリシックマイカ等のマイカ群に属する層状粘土化合物、白雲母、黒雲母、パラゴナイト、レビトライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等の雲母群に属する層状粘土化合物、タルク(滑石)等で層状無機化合物を構成してもよい。なお、分散性を向上させることで、アルミナ充填剤の沈降を抑制する効果が向上するため、上記した中でもエポキシ樹脂の分散性が特に優れるモンモリロナイト等のスメクタイト群に属する層状粘土化合物を層状無機化合物として使用することが好ましい。また、上記した層状粘土化合物を単体あるいは少なくとも2種以上混合した混合物として使用してもよい。
また、上記した層状粘土化合物は、シリケート層が積層した構造を有しており、イオン交換により、シリケート層の層間に種々の有機化合物を挿入することができ、有機化合物が挿入された層状粘土化合物を層状無機化合物として使用してもよい。層状粘土化合物の層間に挿入する有機化合物としては、エポキシ樹脂に対する親和性を層状粘土化合物に付与できる有機化合物であれば適宜使用可能であり、その種類は限定されるものではないが、有機化合物として、ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩などを用いることが好ましい。層状粘土化合物の各層間に有機化合物を導入することで、エポキシ樹脂中での層状粘土化合物の分散性が向上し、少量の層状粘土化合物の添加でも、アルミナ充填剤の沈降を抑制する効果が得られる。これによって、層状無機化合物等が混合されたエポキシ樹脂における粘度の上昇を抑え、適正な流動性を維持しながら、アルミナ充填剤の沈降が抑制される。
また、層状無機化合物は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加されることが好ましい。層状無機化合物を0.5〜3重量部の割合で添加するのが好ましいのは、0.5重量部よりも少ない場合には、アルミナ充填剤の沈降を抑制する効果が小さく、3重量部よりも多い場合には、粘度が上昇し適正な流動性を得ることが難しくなるからである。また、より粘度の低い状態でアルミナ充填剤の沈降を抑制するという観点から、エポキシ樹脂100重量部に対して層状無機化合物を0.5〜2重量部の割合で添加することがさらに好ましい。
また、上記した構成で形成された本発明に係る第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物のガラス転移点は140℃以上となる。これは、ガス絶縁機器の小型化が進むことで要求されるガラス転移点が140℃以上となる絶縁物を満足するものである。
次に、本発明に係る第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、加熱および攪拌しながら、上記した、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する液状のエポキシ樹脂に、このエポキシ樹脂100重量部に対して上記した層状無機化合物を0.5〜3重量部の割合で添加する(層状無機化合物添加工程)。
ここで、図1は、加熱および攪拌しながらエポキシ樹脂10に層状無機化合物20を添加したときの層状無機化合物20の層間21の変化を説明するための、エポキシ樹脂10の断面を模式的に示した図である。図1に示すように、層状無機化合物20の層間21にエポキシ樹脂10が浸透して各層間21の間隔が広くなり、ナノオーダーレベル(nmオーダーレベル)で各層が分散した状態なる。すなわち、各層がナノオーダーレベルの間隔をあけて配置された状態になる。この状態において、攪拌動作によって、エポキシ樹脂10にせん断力が加わると、層状無機化合物20の各層が流れに対して平行に配列するために粘性が低下し、良好な流動性が得られる。
続いて、加熱および攪拌しながら、層状無機化合物添加工程における混合物に、上記したエポキシ樹脂100重量部に対して、平均粒径が10μm〜50μmのアルミナ充填剤を300〜500重量部の割合で添加する(アルミナ充填剤添加工程)。
この際、例えば、エポキシ樹脂が静止状態となっても、層状無機化合物の各層が向き合った構造を形成するため、粘度が増してアルミナ充填剤の沈降が抑制される。
続いて、加熱および攪拌しながら、アルミナ充填剤添加工程における混合物に、エポキシ樹脂を硬化させるための適量の液状のエポキシ樹脂用硬化剤を添加する(硬化剤添加工程)。
上記した各工程は、例えば、従来から使用されている一般的な加圧ゲル法によって注型品を作製する注型装置に備えられる混合タンク等で行われ、樹脂中に存在する気泡等を除去するために真空環境下で行われる。また、混合タンクとして、層状無機化合物、アルミナ充填剤等を均一に分散させるため、例えば、三本ロールミル、ボールミル、サンドミルなどを使用することが好ましい。また、混合タンクをディスパーサーなどの高速攪拌機で構成してもよい。この高速攪拌機を用いた場合、エポキシ樹脂を加熱して粘度を低下させ、高速で攪拌しながら層状無機化合物を均一に分散した後、アルミナ充填剤を添加して攪拌、混練してもよい。なお、混合タンクには、内部の樹脂を加熱するための電気ヒータ等の加熱手段が備えられている。
続いて、混合タンクおよび混合物を搬送する配管内を真空の状態から解放し、硬化剤添加工程における混合物を加圧して、真空にされた金型のキャビティ内に混合物を圧入する。キャビティ内に充填された混合物は、加熱され硬化されて注型品となる。
上記したように、第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法によれば、所定量の層状無機化合物を必須成分とすることで、樹脂の流動性および作業性を維持しながら、アルミナ充填剤の沈降を抑制することができる。
また、第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を、高電圧変電器などの固体絶縁物として使用することができる。第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物では、電気絶縁性を保持する材料として石英シリカ(SiO2)の代わりに、アルミナを用いているため、特に、絶縁媒体として六フッ化硫黄(SF6)を使用したガス絶縁開閉装置に適用することができる。ガス絶縁開閉装置に第1の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を使用することで、石英シリカ(SiO2)を使用した場合のような、HFガスが石英シリカ(SiO2)と容易に反応して潮解性のH2SiF6を形成し、電気絶縁特性が大きく低下するといった問題を回避でき、電気絶縁特性に優れ、高い信頼性を有するガス絶縁開閉装置を提供することができる。
(第2の実施の形態)
本発明に係る第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、アルミナ微粒子とシリカ微粒子とを配合して構成された微粒子添加物とを必須成分として構成されている。
本発明に係る第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、アルミナ微粒子とシリカ微粒子とを配合して構成された微粒子添加物とを必須成分として構成されている。
ここで、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤およびアルミナ充填剤は、第1の実施の形態で説明したものと同じである。
微粒子添加物は、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合したものである。この微粒子添加物は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加されることが好ましい。このように、アルミナ微粒子とシリカ微粒子とを含有することで、エポキシ樹脂のような極性を有する溶媒中で、正に帯電したアルミナ微粒子と負に帯電したシリカ微粒子が反発し合うことで安定した内部構造が形成される。この内部構造によってアルミナ充填剤の沈降を抑制することができる。
ここで、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子の平均粒径を15nm以下としたのは、平均粒径が15nmを超えると、それ自身がエポキシ樹脂内で沈降することがあるからである。また、平均粒径の下限値は、凝集力が高くなり、分散が困難になるという理由から5nm程度である。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径であり、粒径は、電子顕微鏡やENDTER社やGEBAUER社の粒子サイズ分析装置等によって計測される。
また、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比を、重量比で1:2〜1:4(アルミナ微粒子:シリカ微粒子)とするのが好ましいのは、配合比が最小となる1:2よりも小さい配合比では、シリカ微粒子に起因する沈降防止効果が低下するからであり、配合比が最大となる1:4よりも大きい配合比では、アルミナ微粒子に起因する反発力が不十分で粒子同士の分散性が悪くなるからである。なお、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比は、用途に応じて上記した範囲内で組み合わせて設定することができる。また、より好ましいアルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比(アルミナ微粒子:シリカ微粒子)は、1:3〜1:3.5である。
また、微粒子添加物を、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加することが好ましいのは、0.5重量部よりも少ない場合には、アルミナ充填剤の沈降を抑制する効果が小さく、3重量部よりも多い場合には、粘度が上昇し適正な流動性を得ることが難しくなるからである。また、より粘度の低い状態でアルミナ充填剤の沈降を抑制するという観点から、エポキシ樹脂100重量部に対して微粒子添加物を0.5〜2重量部の割合で添加することがさらに好ましい。
また、上記した構成で形成された本発明に係る第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物のガラス転移点は140℃以上となる。これは、ガス絶縁機器の小型化が進むことで要求されるガラス転移点が140℃以上となる絶縁物を満足するものである。
次に、本発明に係る第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、加熱および攪拌しながら、上記した、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する液状のエポキシ樹脂に、上記した、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成された微粒子添加物を、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加する(微粒子添加物添加工程)。
続いて、加熱および攪拌しながら、微粒子添加物添加工程における混合物に、上記したエポキシ樹脂100重量部に対して、平均粒径が10μm〜50μmのアルミナ充填剤を300〜500重量部の割合で添加する(アルミナ充填剤添加工程)。
この際、例えば、エポキシ樹脂が静止状態となっても、正に帯電したアルミナ微粒子と負に帯電したシリカ微粒子が反発し合うことで形成される安定した内部構造によってアルミナ充填剤の沈降が抑制される。
続いて、加熱および攪拌しながら、アルミナ充填剤添加工程における混合物に、エポキシ樹脂を硬化させるための適量の液状のエポキシ樹脂用硬化剤を添加する(硬化剤添加工程)。
上記した各工程は、例えば、従来から使用されている一般的な加圧ゲル法によって注型品を作製する注型装置に備えられる混合タンク等で行われ、樹脂中に存在する気泡等を除去するために真空環境下で行われる。また、混合タンクとして、微粒子添加物、アルミナ充填剤等を均一に分散させるため、例えば、三本ロールミル、ボールミル、サンドミルなどを使用することが好ましい。また、混合タンクをディスパーサーなどの高速攪拌機で構成してもよい。この高速攪拌機を用いた場合、エポキシ樹脂を加熱して粘度を低下させ、高速で攪拌しながら微粒子添加物を均一に分散した後、アルミナ充填剤を添加して攪拌、混練してもよい。アルミナ充填剤を添加して攪拌する際、衝突するアルミナ充填剤間に微粒子添加物が存在した場合には、特に大きな粒径の微粒子添加物をすりつぶして小さくするという効果も得られる。なお、混合タンクには、内部の樹脂を加熱するための電気ヒータ等の加熱手段が備えられている。
続いて、混合タンクおよび混合物を搬送する配管内を真空の状態から解放し、硬化剤添加工程における混合物を加圧して、真空にされた金型のキャビティ内に混合物を圧入する。キャビティ内に充填された混合物は、加熱され硬化されて注型品となる。
上記したように、第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法によれば、アルミナ微粒子とシリカ微粒子とを必須成分とすることで、エポキシ樹脂のような極性を有する溶媒中で、正に帯電したアルミナ微粒子と負に帯電したシリカ微粒子が反発し合うことで安定した内部構造が形成される。この内部構造によって、樹脂の流動性および作業性を維持しながら、アルミナ充填剤の沈降を抑制することができる。
また、第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を、高電圧変電器などの固体絶縁物として使用することができる。第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物では、アルミナ充填剤の沈降を抑制する材料として、シリカ微粒子を使用しているが、このシリカ微粒子の含有量は非常に少ないため、絶縁媒体として六フッ化硫黄(SF6)を使用したガス絶縁開閉装置に固体絶縁物として使用されても、前述したような電気絶縁特性の大きな低下を生じることはない。すなわち、絶縁媒体として六フッ化硫黄(SF6)を使用したガス絶縁開閉装置に、第2の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を使用することができ、電気絶縁特性に優れ、高い信頼性を有するガス絶縁開閉装置を提供することができる。
(第3の実施の形態)
本発明に係る第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、脂肪酸アミド系材料からなる粉体とを必須成分として構成されている。
本発明に係る第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、アルミナ充填剤と、脂肪酸アミド系材料からなる粉体とを必須成分として構成されている。
ここで、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤およびアルミナ充填剤は、第1の実施の形態で説明したものと同じである。
脂肪酸アミド系材料からなる粉体は、分子内に脂肪酸基とアミド基を有する脂肪酸アミド系材料からなる粉体である。脂肪酸アミド系材料として、具体的には、ひまし油を出発原料としたもの等が挙げられる。この脂肪酸アミド系材料からなる粉体は、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜5重量部の割合で添加されることが好ましい。このように、脂肪酸アミド系材料からなる粉体を含有することで、エポキシ樹脂中にこの粉体が分散、膨潤変形し、樹脂中にミクロな網目構造を形成する。この網目構造により、アルミナ充填剤の沈降が抑制される。
ここで、脂肪酸アミド系材料からなる粉体をエポキシ樹脂100重量部に対して2〜5重量部の割合で添加することが好ましいのは、2重量部よりも少ない場合には、アルミナ充填剤の沈降を抑制する効果が小さく、5重量部よりも多い場合には、耐熱性が阻害されるからである。また、より耐熱性に優れた状態でアルミナ充填剤の沈降を抑制するという観点から、エポキシ樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド系材料からなる粉体を2〜4重量部の割合で添加することがさらに好ましい。
次に、本発明に係る第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、加熱および攪拌しながら、上記した、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する液状のエポキシ樹脂に、このエポキシ樹脂100重量部に対して上記した脂肪酸アミド系材料からなる粉体を2〜5重量部の割合で添加する(脂肪酸アミド系粉体添加工程)。
続いて、加熱および攪拌しながら、脂肪酸アミド系粉体添加工程における混合物に、上記したエポキシ樹脂100重量部に対して、平均粒径が10μm〜50μmのアルミナ充填剤を300〜500重量部の割合で添加する(アルミナ充填剤添加工程)。
この際、例えば、エポキシ樹脂が静止状態となっても、エポキシ樹脂中にこの粉体が分散し、樹脂中にミクロな網目構造を形成し、アルミナ充填剤の沈降が抑制される。
続いて、加熱および攪拌しながら、アルミナ充填剤添加工程における混合物に、エポキシ樹脂を硬化させるための適量の液状のエポキシ樹脂用硬化剤を添加する(硬化剤添加工程)。
上記した各工程は、例えば、従来から使用されている一般的な加圧ゲル法によって注型品を作製する注型装置に備えられる混合タンク等で行われ、樹脂中に存在する気泡等を除去するために真空環境下で行われる。また、混合タンクとして、脂肪酸アミド系材料からなる粉体、アルミナ充填剤等を均一に分散させるため、例えば、三本ロールミル、ボールミル、サンドミルなどを使用することが好ましい。また、混合タンクをディスパーサーなどの高速攪拌機で構成してもよい。この高速攪拌機を用いた場合、エポキシ樹脂を加熱して粘度を低下させ、高速で攪拌しながら脂肪酸アミド系材料からなる粉体を均一に分散した後、アルミナ充填剤を添加して攪拌、混練してもよい。なお、混合タンクには、内部の樹脂を加熱するための電気ヒータ等の加熱手段が備えられている。
続いて、混合タンクおよび混合物を搬送する配管内を真空の状態から解放し、硬化剤添加工程における混合物を加圧して、真空にされた金型のキャビティ内に混合物を圧入する。キャビティ内に充填された混合物は、加熱され硬化されて注型品となる。
上記したように、第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物およびその製造方法によれば、所定量の脂肪酸アミド系材料からなる粉体を必須成分とすることで、樹脂の流動性および作業性を維持しながら、アルミナ充填剤の沈降を抑制することができる。
また、第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を、高電圧変電器などの固体絶縁物として使用することができる。第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物では、電気絶縁性を保持する材料として石英シリカ(SiO2)の代わりに、アルミナを用いているため、特に、絶縁媒体として六フッ化硫黄(SF6)を使用したガス絶縁開閉装置に適用することができる。ガス絶縁開閉装置に第3の実施の形態のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を使用することで、石英シリカ(SiO2)を使用した場合のような、HFガスが石英シリカ(SiO2)と容易に反応して潮解性のH2SiF6を形成し、電気絶縁特性が大きく低下するといった問題を回避でき、電気絶縁特性に優れ、高い信頼性を有するガス絶縁開閉装置を提供することができる。
なお、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。また、本発明に係るアルミナ含有2液性注型樹脂組成物は、ガス絶縁開閉装置に限られず、例えば、ケーブルアクセサリーや受配電用設備等の高電圧機器の絶縁材として適用することができる。
次に、本発明に係るアルミナ含有2液性注型樹脂組成物においてアルミナ充填剤の沈降が抑制されていることを実施例および比較例に基づいて説明する。
(実施例1〜実施例4)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、有機化したモンモリナイト(エスベンNX、ホージュン製)を0.5、1、2、3重量部添加したものをそれぞれ作製し、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、モンモリナイトが添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料1〜試料4を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、有機化したモンモリナイト(エスベンNX、ホージュン製)を0.5、1、2、3重量部添加したものをそれぞれ作製し、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、モンモリナイトが添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料1〜試料4を得た。
そして、透明で底面が平らな容器に、各試料(試料1〜試料4)を液面高さが40mmまで入れ、60℃の恒温槽中に静置し、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(実施例5)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、有機化した合成スメクタイト(STN、コープケミカル製)を0.5重量部添加し、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、合成スメクタイトが添加されたエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料5を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、有機化した合成スメクタイト(STN、コープケミカル製)を0.5重量部添加し、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、合成スメクタイトが添加されたエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料5を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(比較例1)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を300重量部添加し、60℃程度に加熱しながら攪拌して混合し、試料6を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を300重量部添加し、60℃程度に加熱しながら攪拌して混合し、試料6を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(実施例1〜実施例5および比較例1の測定結果)
表1は、実施例1〜実施例5および比較例1における測定結果を示している。なお、表中に示された「−」の記号は、その記号が付された欄に対応する条件での測定を行っていないことを示している。
表1は、実施例1〜実施例5および比較例1における測定結果を示している。なお、表中に示された「−」の記号は、その記号が付された欄に対応する条件での測定を行っていないことを示している。
表1に示すように、層状無機化合物を添加しない比較例1の試料6では、17時間経過時に既に沈殿層が観察され、168時間後には、厚さが15mmのアルミナ粒子の固い沈殿層を形成した。これに対して、実施例1〜実施例5の層状無機化合物である有機化したモンモリナイトまたはスメクタイトを添加した試料1〜試料5では、168時間経過してもアルミナ粒子の沈降は生じず、200時間以上たって僅かにアルミナ粒子の沈降が確認できる程度であった。この結果から、試料1〜試料5においては、アルミナ粒子の沈降が抑制されることが明らかとなった。
また、実施例1〜実施例5の結果から、層状無機化合物の添加量が0.5重量部程度で実用的に十分な効果を示し、一方、2重量部、3重量部と増加しても同様な効果が得られた。一方、添加による粘度の上昇が比較的小さいナノレベルの層状無機物化合物であっても、必要以上の添加は粘度の上昇やそれに伴う分散工程の煩雑さを増すため、0.5〜3重量部の添加が適当であることがわかった。
(実施例6〜実施例8)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)0.2、0.3、0.5重量部添加し、さらにそれぞれにアルミナ微粒子の3倍量(0.6、0.9、1.5重量部)のシリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料7〜試料9を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)0.2、0.3、0.5重量部添加し、さらにそれぞれにアルミナ微粒子の3倍量(0.6、0.9、1.5重量部)のシリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料7〜試料9を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(比較例2〜比較例7)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)1、2、3、4、5、6重量部添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料10〜試料15を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)1、2、3、4、5、6重量部添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料10〜試料15を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(比較例8〜比較例11)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、シリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)0.1、0.2、0.5、1重量部添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、シリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料16〜試料19を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、シリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)0.1、0.2、0.5、1重量部添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、シリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料16〜試料19を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(比較例12〜比較例14)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)0.2、0.5、0.6重量部添加し、さらにそれぞれにシリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)1、0.7、0.6重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料20〜試料22を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、アルミナ微粒子(AEROXIDE AluC、日本アエロジル製 平均粒径13nm)0.2、0.5、0.6重量部添加し、さらにそれぞれにシリカ微粒子(AEROSIL200、日本アエロジル製 平均粒径12nm)1、0.7、0.6重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料20〜試料22を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(実施例6〜実施例8および比較例2〜比較例14の測定結果)
表2は、実施例6〜実施例8における測定結果を示している。表3は、比較例2〜比較例7における測定結果を示している。表4は、比較例8〜比較例11における測定結果を示している。表5は、比較例12〜比較例14における測定結果を示している。なお、表中に示された「−」の記号は、その記号が付された欄に対応する条件での測定を行っていないことを示している。
表2は、実施例6〜実施例8における測定結果を示している。表3は、比較例2〜比較例7における測定結果を示している。表4は、比較例8〜比較例11における測定結果を示している。表5は、比較例12〜比較例14における測定結果を示している。なお、表中に示された「−」の記号は、その記号が付された欄に対応する条件での測定を行っていないことを示している。
表2に示すように、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを、重量比が1:3の割合で添加した実施例6〜実施例8における試料7〜試料8では、アルミナ微粒子を単体で添加した比較例2〜比較例7における試料10〜試料15、シリカ微粒子を単体で添加した比較例8〜比較例11における試料16〜試料19に比べて、アルミナ粒子の沈降が抑制されることが明らかとなった。また、前述した表1に示された比較例1における試料6の結果との比較から、試料7〜試料8のように、アルミナ微粒子とシリカ微粒子とを所定の重量比で添加することで、アルミナ粒子の沈降が抑制されることが明らかとなった。
また、表3に示すように、アルミナ微粒子を単独で添加した場合には、その添加量を増やしてもアルミナ粒子の沈降を抑制することはできなかった。また、比表面積の大きなアルミナ微粒子をエポキシ樹脂中に分散するため、添加量が3重量部よりも多くなると組成物の粘度が上昇し、組成物の流動性が低下した。
また、表4に示すように、シリカ微粒子を単体で添加した場合には、シリカ微粒子の添加量を1重量まで増やしたときに、アルミナ粒子の沈降が抑制されているが、アルミナ微粒子およびシリカ微粒子の双方が添加された試料7〜試料8における抑制効果に至るものではなかった。また、シリカ微粒子の添加量をさらに増やすことで、アルミナ粒子の沈降を抑制する効果を向上させる可能性はあるが、アルミナ微粒子を分散した場合と同様に、添加量が増えていくと組成物の粘度が上昇し、組成物の流動性が低下するので好ましくない。
さらに、表5に結果が示される比較例12〜比較例14における試料20〜試料22では、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の重量を合わせた総重量は一定であるが、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比が異なる。すなわち、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比(配合重量比)は、試料20で1:5、試料21で1:1.4、試料22で1:1である。
表5に示すように、試料20〜試料22におけるアルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比では、アルミナ粒子の沈降を抑制する効果は小さいことがわかった。これらの結果と、前述した、アルミナ微粒子とシリカ微粒子の配合比が1:3である試料7〜試料8における結果を比べると、試料7〜試料8の方がアルミナ粒子の沈降を抑制する効果が大きいことがわかった。また、試料7〜試料8よりもアルミナ微粒子の占める割合を増加させた試料22では、アルミナ微粒子を単体で添加した試料10の結果に近付くことがわかった。一方、試料7〜試料8よりもシリカ微粒子の占める割合を増加させた試料20では、シリカ微粒子を単体で添加した試料19の結果に近付くことがわかった。
(実施例9〜実施例11)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、脂肪酸アミド粉末(A−S−A T250F、伊藤製油製)2、3、4重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、脂肪酸アミド粉末が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料23〜試料25を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、脂肪酸アミド粉末(A−S−A T250F、伊藤製油製)2、3、4重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、脂肪酸アミド粉末が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料23〜試料25を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(比較例15および比較例16)
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、脂肪酸アミド粉末(A−S−A T250F、伊藤製油製)0.5、1重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、脂肪酸アミド粉末が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料26〜試料27を得た。
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)100重量部に、脂肪酸アミド粉末(A−S−A T250F、伊藤製油製)0.5、1重量部を添加して、60℃程度に加熱しながら攪拌した。その後、60℃程度に加熱した状態で、脂肪酸アミド粉末が添加されたそれぞれのエピコート828に、平均粒径が13μmのα−アルミナ粒子を200重量部添加して混合し、試料26〜試料27を得た。
そして、実施例1と同様の方法で、容器の底部に形成される沈殿層の厚さの時間変化を測定した。
(実施例9〜実施例11および比較例15〜比較例16の測定結果)
表6は、実施例9〜実施例11および比較例15〜比較例16における測定結果を示している。
表6は、実施例9〜実施例11および比較例15〜比較例16における測定結果を示している。
表6に示すように、脂肪酸アミド粉末の添加量が2以上の試料23〜試料25では、アルミナ粒子の沈降が抑制されることがわかった。一方、脂肪酸アミド粉末の添加量が2よりも小さい試料26〜試料27では、アルミナ粒子の沈降を抑制する効果は小さいことがわかった。
10…エポキシ樹脂、20…層状無機化合物、21…層間。
Claims (6)
- 1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、
室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、
粒子からなり、電気絶縁性を保持するためのアルミナ充填剤と、
平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成され、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加された微粒子添加物と
を必須成分として構成されていることを特徴とするアルミナ含有2液性注型樹脂組成物。 - 1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂と、
室温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤と、
粒子からなり、電気絶縁性を保持するためのアルミナ充填剤と、
前記エポキシ樹脂100重量部に対して2〜5重量部の割合で添加された脂肪酸アミド系材料からなる粉体と
を必須成分として構成されていることを特徴とするアルミナ含有2液性注型樹脂組成物。 - ガラス転移温度が140℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物。
- 加熱および攪拌しながら、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する液状のエポキシ樹脂に、平均粒径が15nm以下のアルミナ微粒子と平均粒径が15nm以下のシリカ微粒子とを1:2〜1:4の重量比で配合して構成された微粒子添加物を、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部の割合で添加する微粒子添加物添加工程と、
加熱および攪拌しながら、前記微粒子添加物添加工程における混合物に、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、平均粒径が10〜50μmのアルミナ充填剤を300〜500重量部の割合で添加するアルミナ充填剤添加工程と、
加熱および攪拌しながら、前記アルミナ充填剤添加工程における混合物に、液状のエポキシ樹脂用硬化剤を添加する硬化剤添加工程と
を具備することを特徴とするアルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法。 - 加熱および攪拌しながら、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する液状のエポキシ樹脂に、前記エポキシ樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド系材料からなる粉体を2〜5重量部の割合で添加する脂肪酸アミド系粉体添加工程と、
加熱および攪拌しながら、前記脂肪酸アミド系粉体添加工程における混合物に、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、平均粒径が10〜50μmのアルミナ充填剤を300〜500重量部の割合で添加するアルミナ充填剤添加工程と、
加熱および攪拌しながら、前記アルミナ充填剤添加工程における混合物に、液状のエポキシ樹脂用硬化剤を添加する硬化剤添加工程と
を具備することを特徴とするアルミナ含有2液性注型樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のアルミナ含有2液性注型樹脂組成物を備えたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
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