JP2012105741A - ミシン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転天秤41と、上糸供給源から回転天秤に至る上糸を挿通させる第一の糸案内部材44と、回転天秤から縫い針に至る上糸を挿通させる第二の糸案内部材45とを備え、回転天秤の回転により、主軸31の回転に同期した上糸の周期的な引き上げと解放を行う天秤装置40において、回転天秤の回転により上糸経路が第一又は第二の糸案内を中心に回動して上糸が角度変化を生じる方向における片側の方向からのみ上糸に当接することで当該上糸の経路長を変えて回転天秤による上糸の糸取り量を調節する調節体51と、上糸経路が回動を行う平面内で調節体の位置調節を行う位置調節手段52とを備えている。
【選択図】図1
Description
この回転天秤はミシンフレームの面部に設けられ、糸供給源側の糸案内から回転天秤の腕部を経由して縫い針側の糸案内に渡る縫い糸が、回転天秤の回転に応じて腕部の先端部と基端部との間を往復移動することで上糸の経路長、張力が変化することにより、上糸供給源からの繰り出しや縫い目の結節を促すものである。
図9は、釜による上糸の引き込み量の変化を示す釜曲線Kと回転天秤による上糸の糸取り量の変化を示す回転天秤曲線Tとを示す線図である。
上述の糸暴れは、回転天秤が上糸を引き上げる区間に生じる上糸の余りAに起因する弛みが原因となっている。
従って、回転天秤下死点から回転天秤上死点までの区間において、釜による上糸の引き込み量に対応して回転天秤による上糸の糸取り量を適宜調整することにより、釜越の際の糸余り量の低減を図る必要があった。
例えば、回転天秤上死点Jや落下点Rは、縫い針が布地に刺さるタイミングに合わせてその位相が設定されているが、特許文献1記載記載のミシンにおいて、糸経路を変更調節による上糸の糸取り量の調整を行うと、回転天秤上死点Jや落下点Rの位相まで変動を生じてしまい、縫い目の形成に影響を及ぼして縫い品質の低下を生じるおそれがあった。
以下、本発明の実施形態たる回転天秤方式の天秤装置を備える千鳥縫いミシン10について図1乃至図7に基づいて説明する。図1は千鳥縫いミシン10を面部側から見た側面図、図2はW−W線に沿った面部の断面図である。なお、以下の説明において、水平且つ布送りが行われる方向をX軸方向、水平且つ布送り方向に垂直な方向をY軸方向、垂直方向をZ軸方向というものとする。
かかる千鳥縫いミシン10は、縫い針11をその下端部で保持する針棒12と、針棒12を方向に直交する方向に揺動させる針振り機構20と、針棒を上下動させる上下動機構30と、回転天秤(いわゆるロータリ天秤)41を有する天秤装置40とを備えている。
また、揺動台22は、メタル軸受けを介して針棒12をZ軸方向に沿って滑動可能に支持している。
また、針棒抱き34は、針棒クランクロッド33の他端部にY軸回りに回動可能且つY軸方向に沿って滑動可能に支持されている。これにより、針振り機構20により揺動台22を介して針棒12にY軸方向に沿った往復動作が付与される場合でも、当該往復動作を許容しつつ針棒抱き34から針棒12に対して上下動を付与することができる。
天秤装置40は、主軸31により回転動作を行う回転天秤41と、回転天秤41の台座となる回転円板42と、回転円板42と主軸31とを連結する連結軸43と、上糸供給源から回転天秤41に至る上糸を挿通させる第一の糸案内部材44と、回転天秤41から縫い針12の針棒糸掛け13に至る上糸を挿通させる第二の糸案内部材45と、回転天秤41の保護カバー46(図1では図示略)と、回転天秤41による上糸の糸取り量を変更調節する調節体51と、調節体51の位置調節を行う位置調節手段52とを備えている。
回転天秤41は、その基端部が回転円板42に固定支持され、先端部は主軸31を中心とする回転半径方向外側に延出されている。
また、回転天秤41の先端部には回転円弧の接線方向の双方向に延出された糸掛止部としての一対の爪41a,41bを備えており、各爪41a,41bは先端部に向かうに従って面板60から遠ざかる方向に湾曲形成されている。かかる形状とすることにより、回転天秤41の先端部が下方を向いた時は各爪41a,41bの背面側に上糸が回り込んで掛止され、回転天秤41から抜け落ちることが防止される。
そして、調節体51は、基台53の一端部においてY軸方向に沿って立設された丸棒状のピンであり、その周面において上糸に当接する。
基台53は、他端部に長穴53aが形成され、当該長穴53aに止めネジ54が挿通されて締結固定される。また、長穴53aには、面板60上に設けられた突起状の回り止め55が嵌合しており、調節体51の位置調節を行う際には、締結を解除した止めネジ54により長穴53aに沿って基台53を所定方向に沿って直進移動させることにより、面板60の平面上において移動・位置調節を可能としている。
また、図5は、図示しない釜による上糸の引き込み量の変化を示す釜曲線Kと回転天秤41による上糸の糸取り量の変化を示す回転天秤曲線Tとを示す線図である。なお、図5において回転天秤曲線Tは調節体51が存在しない場合を示し、回転天秤曲線Tx(一点鎖線)は調節体51により回転天秤による上糸の糸取り量の調節を行った場合を示している。
なお、この段落の最短糸経路の説明では、調節体51による上糸の当接による影響を考慮しないものとする。
回転天秤41は、図3(A)、図4(A)、図5に示すように、主軸角度およそ310°において上糸の糸取り量が最小となる回転天秤下死点Mとなり、主軸角度およそ80°において上糸の糸取り量が最大となる回転天秤上死点Jとなるように回転円板42に取り付けられている。
そして、このミシン10では、回転天秤下死点Mにおける第一の糸案内部材44から回転天秤41に渡る最短糸経路(以下、単に「最短糸経路」という)は、第一の糸案内部材44と回転天秤41の回転中心とを結ぶ線分L1(主軸角度およそ70°における最短糸経路の方向に一致する。図6参照)と丁度重なり合うように設定されている。
そして、回転天秤下死点Mの通過後の最短糸経路は、線分L1に対してその傾きが、第一の糸案内部材44を中心として図6における左方(反時計方向)に変化して、主軸角度およそ0°において線分L1に対して最短糸経路のなす角度である左方(反時計方向)角度変化が最大となる。図6のθaは左方(反時計方向)への角度変化が最大となった時の最短糸経路に沿った線分を示している。
そして、最短糸経路の傾きは、最大左方角度変化位置θaを過ぎると、その後は、図6における右方(時計方向)に変化して、主軸角度およそ80°において回転天秤上死点Jを通過して(図6のθbは回転天秤上死点における糸経路に沿った線分)、さらに、その後は、右方(時計方向)と左方(反時計方向)の角度変化を経て、主軸角度およそ270°において線分L1に対して最短糸経路のなす角度である右方(時計方向)角度変化が最大となり、その後は最短糸経路は左方(反時計方向)に角度変化を経て再び回転天秤下死点Mに到達する。
なお、向きが変化する最短糸経路の上糸に対して調節体51を受動的に当接させることで糸取り量を調節する構造上、釜越点Gにおいてのみピンポイントで糸取り量を調節することは実施的に困難であり、このミシン10では、回転天秤上死点J及び落下点Rを含まずに釜越し点Gを含むある程度の主軸角度範囲、例えば、回転天秤下死点M以降であって回転天秤上死点Jの手前までの範囲で位置調節の前後における調節体51を上糸に当接させることが可能となるように配置が設定されている。
回転天秤下死点M以降であって回転天秤上死点Jの手前までの範囲で位置調節の前後における調節体51を上糸に当接させることが可能な配置とするには、直線θbより左方(直線θbを含まず)且つ直線L1よりも左方(直線L1を含む)の領域内となる。
さらに、釜越し点Gにおいて糸取り量を調節可能とするには、直線θc(直線θcを含まず)から直線θaの間の領域は含まれない。
さらに、調節体51の配置としては、回転天秤41との干渉を避けるために回転天秤41の回転範囲Hより外側とすることが望ましい。
従って、これらを総合して、直線L1と直線θcと円弧Hに囲まれた領域E内(直線L1及び直線θcの線上を含み、円弧Hの線上を含まず)に調節体51を配置することが望ましい。また、調節体51の位置調節可能な範囲も領域Eの範囲内とすることが望ましい。
上記ミシン10では、調節体51を直線L1の線上に沿って位置調節可能としている。
また、調節体51を支持する基台53の長穴53aは、線分L1と平行であり、調節体51は、止めネジ54を緩めて位置調節した場合に、調節体51が常に線分L1と平行な方向に沿って領域Eから逸脱しない範囲で移動調節を可能としている。
調節体51は、上記のように配置されことにより、主軸角度およそ310〜70°の範囲でのみ第一の糸案内部材44から回転天秤41に渡る上糸に当接させることができ、当該主軸角度区間についてのみ、回転天秤41による上糸の糸取り量の調節を行うことが可能となっている。
また、調節体51を、上記の方向に位置調節可能とされることにより、回転天秤による上糸の糸取り量の調節を行う主軸角度区間の変動は生じることなく、回転天秤による上糸の糸取り量の増減を増やすように調節することが可能である。
回転天秤装置40による上糸の糸取り量の調整の具体的な適用とその効果について図5に基づいて説明する。
千鳥縫いミシン10では、特に糸張力を低く設定した場合に、釜が上糸を解放する釜越(図5の回転天秤曲線KにおけるG点:主軸角度およそ350°)の際に糸暴れを生じやすいために、釜越のタイミングを含む所定の主軸角度の範囲において、釜による上糸の引き込み量に対する回転天秤41による上糸の糸取り量の差がより少なくなるように調整を行うことが要求される。
一方、回転天秤41による上糸の糸取り量が最大となる回転天秤上死点Jや回転天秤41の凹部41cに上糸がかかる落下点Rは、縫い目の形成に影響が生じやすいことから、これらが実行される位相(主軸角度)や、その位相での回転天秤による上糸の糸取り量の変動は生じないことが要求される。なお、回転天秤上死点Jの主軸角度はこのミシン10ではおよそ80°、落下点Rはおよそ90°に設定されている。
具体的には、止めネジ54を緩めて基台53を止めネジ54に対してスライド移動させて調節体51をラインL1に沿って移動させ、回転天秤41による上糸の糸取り量の増減調節を行う。この場合、第一の糸案内部材44から遠ざかる方向に移動することで回転天秤41による上糸の糸取り量が増し、第一の糸案内部材44に近づける方向に移動することで回転天秤41による上糸の糸取り量が減る。
そして、調節体51の位置を決定したら止めネジ54を締結して調節体51及び基台53の位置を固定する。
縫製時には、主軸角度約310°から主軸角度70°の範囲内で第一の糸案内部材44から回転天秤41に渡る上糸に調節体51が当接し、上糸が屈曲することによる最短糸経路距離の増加により回転天秤41による上糸の糸取り量が増加する。従って、図5に示すような回転天秤曲線Txを得ることができ、釜越の際に、釜による上糸の引き込み量と回転天秤41による上糸の糸取り量との差を低減することができ、糸暴れの発生が抑制される。
これにより、縫いに不要な影響を与えることなく、糸暴れを回避する等、目的に応じた適切な調節を行うことが可能となる。
前述した調節体51は、第一の糸案内部材44から回転天秤41に渡る上糸に当接する配置としているが、これに限定されるものではない。
即ち、図8に示すように、調節体51Aを、回転天秤41から第二の糸案内部材45に渡る上糸に天秤回転方向下流側(図1左方)から当接する配置としてもよい。
そして、その場合も、回転天秤下死点における回転天秤41から第二の糸案内部材45に渡る最短上糸経路に沿った直線(当該直線上を含む)と釜越し点における回転天秤41から第二の糸案内部材45に渡る最短上糸経路に沿った直線(当該直線上を含む)と回転天秤41の回転範囲に沿った円弧(当該円弧の線上を含まず)とに囲まれる領域内に調節体51Aを配置し且つ当該領域内で位置調節可能とする。
具体的には、位置調節手段52Aは、調節体51Aを支持する基台53Aと、基台53Aを締結する止めネジ54Aと、基台53Aの回り止め55Aとを有する構成とし、基台53Aは調節体51Aの固定位置と前記回転天秤の回転中心を結ぶ直線L2方向に沿って調節体51Aの移動位置調節を可能とする。
そして、主軸角度およそ70°において回転天秤41から第二の糸案内部材45に渡る上糸の最短経路である直線L2の上に調節体51Aを配置すると共に、基台53Aが上記直線L2と平行に移動可能に構成することが望ましい。
そして、このように、回転天秤41と第二の糸案内部材45との間を渡る上糸に調節体51Aを当接させる構成とした場合も、回転天秤41と第一の糸案内部材44との間を渡る上糸に当接する調節体51とほぼ同様の効果を得ることが可能である。
31 主軸
40 天秤装置
41 回転天秤
41a,41b 爪(上糸掛止部)
44 第一の糸案内部材
45 第二の糸案内部材
51 調節体
52 位置調節手段
53 基台
54 止めネジ
55 回り止め
Claims (5)
- ミシンの主軸の回転に同期して回転すると共に先端部に上糸掛止部を備える回転天秤と、
上糸供給源から前記回転天秤に至る上糸を挿通させる第一の糸案内部材と、
前記回転天秤から縫い針に至る上糸を挿通させる第二の糸案内部材とを備え、
前記回転天秤の回転により、前記主軸の回転に同期した上糸の周期的な引き上げと解放を行う天秤装置において、
前記回転天秤の回転により上糸経路が前記第一又は第二の糸案内部材を中心に回動して角度変化を生じる方向における片側からのみ前記上糸に当接することで当該上糸の経路長を変えて前記回転天秤による上糸の糸取り量を調節する調節体と、
前記上糸経路が回動を行う平面内で前記調節体の位置調節を行う位置調節手段とを備えることを特徴とする天秤装置。 - 前記調節体は、前記第一の糸案内部材から前記回転天秤に渡る上糸に対して当接可能な配置で設けられていることを特徴とする請求項1記載の天秤装置。
- 前記調節体は、前記回転天秤から前記第二の糸案内部材に渡る上糸に対して当接可能な配置で設けられていることを特徴とする請求項1記載の天秤装置。
- 前記調節体は、
前記回転天秤と第一又は第二の糸案内部材との間の上糸経路を通過する上糸に対し、
前記回転天秤の回転天秤下死点通過から上死点通過前までの回転により第一の糸案内部材から前記回転天秤までの糸経路又は前記回転天秤から第二の糸案内部材までの糸経路が変化する領域内で上糸に当接可能な配置で設けられていることを特徴とする請求項1記載の天秤装置。 - 前記位置調節手段は、回転天秤下死点以降回転天秤上死点より手前の主軸角度の範囲内でのみ、前記調節体が前記上糸に当接可能となる移動範囲内で当該調節体の位置調節を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の天秤装置。
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