JP2009045207A - ミシンの糸調子装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】天秤を経て針に供給される上糸に、微小な張力を安定して付与することができ、薄い生地、柔らかい生地を、縫目欠陥を生じることなく良好な品質にて縫製することができるミシンの糸調子装置を提供する。
【解決手段】回転抵抗式の主糸調子器4に供給される上糸2に予備張力を付与する副糸調子器5を、外周の幅方向に間隔を有して上糸2を複数回巻き掛け保持し、軸回りに回転する回転ドラム51と、この回転ドラム51に押し付け力を加える押しばね53、及び押しばね53のばね力を増減調節する調節つまみ52を備えて構成する。また回転ドラム51の幅方向に延びる糸道部材8にガイド溝を形成し、これらのガイド溝に回転ドラム51に巻き掛ける上糸2を引っ掛けて、上糸2の周長が、糸供給源から主糸調子器4の側に順次短くなるようにする。
【選択図】図2

Description

本発明は、ミシンに装備され、針に供給される上糸(針糸)に張力を付与する糸調子装置に関し、特に、薄い生地、柔らかい生地の縫製に適した微小な張力を付与することが可能な糸調子装置に関する。
ミシンによる縫製においては、針に供給される上糸と、釜、ルーパ等の下糸繰り装置に供給される下糸とに適切な張力を付与する必要があり、各種のミシンには、このような張力付与を実現するために糸調子装置が備えられている。
上糸に張力を付与するための糸調子装置の多くは、一対の糸調子皿と、これらを相互に押し付けるように付勢する付勢手段(ばね、ソレノイド等)とを備え、前記糸調子皿の間に挾持された上糸が、針及び天秤の動作により引き出されるとき、前記糸調子皿の挾持面との間に加わる摩擦抵抗により張力を付与するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
この種の摩擦抵抗式の糸調子器を備える糸調子装置においては、付勢手段の付勢力を調節し、糸調子皿の押し付け力を増減せしめることにより上糸の付与張力を大小に変更することができ、生地の硬軟、厚薄等の縫製条件に応じた張力付与を実現することができるが、付勢力を減じて微小な張力を付与した状態で運転を実施した場合、弱い力にて押し付けられた糸調子皿の押し付け状態が、上糸の引き出し、運転中の振動等の外的な要因により変化するため、安定した張力付与が難しいという問題がある。
この問題を解消し、小さい張力を安定して付与することを可能としたミシンの糸調子装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この糸調子装置は、軸回りに回転する一対の糸調子皿と、これらの回転抵抗を増減調節する調節手段とを備えている。上糸は、一対の糸調子皿の間に挾持させ、略1回転分巻き掛けて針に導かれており、針及び天秤の動作による上糸の引き出しに伴って糸調子皿が回転するとき、前記回転抵抗に相当する張力が上糸に付与される。
以上の構成を有する糸調子器(回転抵抗式の糸調子器)においては、糸調子皿の回転抵抗を微小な領域で調節することができ、小さい張力を安定して上糸に付与することが可能となるが、このような張力付与は、糸調子器自身に供給される上流側の上糸が張力を有している場合に可能となることから、特許文献2に開示された糸調子装置においては、回転抵抗式の糸調子器(主糸調子器)の上流側に、該主糸調子器に供給される上糸に予備張力を付与する副糸調子器を設けている。
副糸調子器は、特許文献1に開示された糸調子装置と同様、一対の糸調子皿間に挾持した上糸に摩擦抵抗を加える摩擦抵抗式の糸調子器である。この副糸調子器により付与される予備張力は、前述の如く、微小な領域において不安定となるが、回転抵抗式の主糸調子器による安定した張力付与により補われ、薄い生地、柔らかい生地の縫製に対応することができる。
特開2003−181182号公報 特開平10−211380号公報
ところが近年においては、ミシンにより縫製される生地が多様化しており、特許文献2に開示された糸調子装置を備えるミシンを使用し、例えば、マイクロファイバーと称される極細繊維を使用し、従来想定し得なかった薄く、柔らかい生地を縫製する場合、調節可能な最小の張力の付与下にて縫製を実施したとしても、上糸の張力の不適により縫目不良が発生し、所望の縫製品質を確保することが難しいという問題があった。
図4は、千鳥縫いミシンにおいて発生する縫目不良の説明図である。千鳥縫いミシンによる縫製を実施した場合、図示の如く、生地Wの表面には、上糸2aが左右に振れ幅を有してV字形に連続する縫目が形成される。薄く、また柔らかい生地Wを、上糸2aの張力が不適(過大)な状態で縫製した場合、この張力の作用により、図4(a)に示すように、上糸2aの振れ幅の間にて生地Wがアーチ形に盛り上がる縫目不良、所謂「かまぼこ」が発生する。更に、生地Wの裏面側において上糸2aと絡む下糸2bとの張力バランスが適切でない場合、生地Wの表面側に下糸2bが引き上げられて、前述したように「V字形」となるべき生地Wの表面の縫目が、図4(b)に示すように、上糸2aと引き上げられた下糸2bとにより「Y字形」となる縫目不良、所謂「Y字縫目」が発生する。
更に従来の糸調子装置においては、小さい力領域における上糸2aの付与張力が不安定であり、運転中の種々の外乱要因により変動することから、図4(a),(b)に示すような縫目不良が、縫目の長さ方向に局所的に発生し、縫製品質の更なる悪化を招くこととなっている。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、天秤を経て針に供給される上糸に微小な張力を安定して付与することができ、薄い生地、柔らかい生地を、縫目不良を生じることなく良好な品質にて縫製することができるミシンの糸調子装置を提供することを目的とする。
本発明の第1発明に係るミシンの糸調子装置は、一対の糸調子皿の間に上糸を挟んで回転し、該上糸に前記糸調子皿の回転抵抗に対応する張力を付与する主糸調子器と、該主糸調子器に供給される上糸に予備張力を付与する副糸調子器とを、糸供給源から天秤に至る上糸の経路の中途に備えるミシンの糸調子装置において、前記副糸調子器は、前記上糸を外周の幅方向に間隔を有して複数回巻き掛け保持し、軸回りに回転する回転ドラムと、該回転ドラムの回転抵抗を増減して、前記予備張力を調節する調節手段とを備えることを特徴とする。
本発明においては、主糸調子器に供給する上糸に予備張力を付与する副糸調子器を、軸回りに回転する回転ドラムと、この回転ドラムの回転抵抗を増減調節する調節手段とを備えて構成する。糸供給源から供給される上糸は、回転ドラムの外周に、幅方向に間隔を隔てて、相互に重なり合うことなく複数回巻き掛けて保持させてあり、回転ドラムの回転に伴って夫々の巻回周の間での引き合いにより微小な張力が発生する。この張力は、回転ドラムの回転抵抗の増減により大小に調節することができ、微小な予備張力が安定して付与された上糸を主糸調子器に供給することができる。
本発明の第2発明に係るミシンの糸調子装置は、前記回転ドラムの周囲に設けてあり、該回転ドラムの幅方向に並ぶ複数のガイド溝の夫々に前記回転ドラムへの一巻き毎に引っ掛けた前記上糸を、前記回転ドラムの幅方向に間隔を隔てて導く糸道部材を備えることを特徴とする。
この発明においては、回転ドラムの周囲に複数のガイド溝を備える糸道部材を設け、回転ドラムに巻き掛け保持させる上糸を糸道部材のガイド溝に一巻き毎に引っ掛けることにより、回転ドラムの周上の上糸間に幅方向の間隔を安定して確保する。
本発明の第3発明に係るミシンの糸調子装置は、前記糸道部材の複数のガイド溝が、夫々に引っ掛けて前記回転ドラムに巻き掛けられる前記上糸の周長が、前記糸供給源から前記主糸調子器の側に順次短くなるように設けてあることを特徴とする。
この発明においては、糸道部材の複数のガイド溝を、夫々に引っ掛けて回転ドラムに巻き掛け保持させる上糸の周長が糸供給源の側の一巻きが長く、主糸調子器の側の最終巻きに向けて順次短くなるように設け、夫々の巻回周の間での引き合いにより安定した張力を発生させる。上糸の周長の相違は、回転ドラムの幅方向に沿って延びる糸道部材に深さが異なるガイド溝を形成することにより実現することができ、また、複数のガイド溝の形成位置と回転ドラムの外周との離隔距離が異なるように糸道部材を構成することによっても実現することができる。
本発明に係るミシンの糸調子装置においては、主糸調子器に供給される上糸に予備張力を付与する副糸調子器を、上糸を相互に間隔を隔てて複数回巻き掛け保持する回転ドラムと、この回転ドラムの回転抵抗を増減調節する調節手段とを備え、糸供給源から導出される上糸に張力を付与することが可能な回転抵抗式の糸調子器としたから、同じく回転抵抗式の主糸調子器との相乗作用により、天秤を介して針に供給される上糸に微小な張力を安定して付与することができ、薄い生地、柔らかい生地を、縫目不良を生じることなく良好に縫製することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る糸調子装置を備える千鳥縫いミシンの外観斜視図である。
千鳥縫いミシン1は、図示のように、ミシンベッド10と、該ミシンベッド10の一側(右側)上面から略垂直に立ち上がる脚柱11と、該脚柱11の上端に基部を連設され、ミシンベッド10の上面に沿って他方(左方)に延びるミシンアーム12とを備えている。ミシンアーム12の先端部(左端部)には、下方に対向するミシンベッド10の先端部(左端部)上面に配した針板13に向けて針棒14が垂下支持され、該針棒14の下端部には、針15が取り付けられている。
針棒14は、ミシンアーム12の内部に設けた図示しない針棒駆動機構に連結されており、該針棒駆動機構の動作により、下端に取り付けた針15と共に所定ストロークの上下動作をなすように構成されている。針15の上下動は、左右に適宜の振り幅を隔てた2箇所において交互に生じ、この上下動により糸繰りされる上糸2と、針板13の下部に設けた図示しない釜により糸繰りされる下糸とにより、針板13上に送り込まれる図示しない生地に千鳥縫いの縫目を形成することができる。
ミシンアーム12の前面には糸調子装置3が設けてある。糸調子装置3は、ミシンアーム12の先端側に位置する主糸調子器4と、この主糸調子器4よりもミシンアーム12の基端側に位置する副糸調子器5とを備えている。ミシンアーム12の前面には、主糸調子器4よりも先端側に糸掛け16及び糸案内17が取り付けてあり、またミシンアーム12の上面には、副糸調子器4の上位置に糸案内18が取り付けてある。ミシンアーム12の先端部には、円形のカバー板60により開閉自在に覆われた天秤室61(図2参照)が設けてある。
針15に供給される上糸2は、図1中に一点鎖線により示すように、糸案内18を経て副糸調子器5に導き、副糸調子器5から後述の如く導出して主糸調子器4に導き、更に主糸調子器4から後述の如く導出して、糸掛け16及び糸案内17を経て天秤室61の内部に導入されており、該天秤室61から下方に引き出して針15にセットされている。
図2は、副糸調子器5から針15までの上糸2の経路の説明図である。本図には、ミシンアーム12の先端部に設けた天秤室61の内部が図示されている。天秤室61は、ミシンアーム12の先端部を窪ませて設けた円形断面の室であり、この天秤室61の内部には、略中央の軸回りに、図中に矢符により示す向きに回転する天秤6が配してある。
主糸調子器4から導出された上糸2は、糸掛け16に引っ掛けて方向を変え、溝形の糸案内17を通してミシンアーム12の先端部に導かれ、天秤室61の内部に、該天秤室61の周壁の前下方に設けた導入孔62を経て導入されている。天秤室61に導入された上糸2は、前述の如く回転する天秤6に図示の如く引っ掛けて方向を変え、天秤室61の外部に、該天秤室61の周壁の下方に設けた導出孔63を経て引き出され、針棒14の下端に取り付けた針15にセットされている。
天秤6の回転は、針棒14及び針15の上下動に同期して生じる。このように回転する天秤6は、図2に示す回転位置にあるとき上糸2を引き上げ、更なる回転により引き上げた上糸2を弛める作用を繰り返す。上糸2の引き上げは、上流側の上糸2を縫目の形成に必要な長さ分だけ引き出すべくなされ、これに続く上糸2の弛めは、針15の下降により繰り出される上糸2が針板13の下部に配した釜により掬い得る長さを確保すべくなされる。釜による掬われた上糸2は、天秤6の回転により再度引き上げられ、糸調子装置3により以下の如く付与される張力下にて引き締められる。
糸調子装置3の主糸調子器4は、軸回りに回転する一対の糸調子皿40,40と、これらの回転抵抗を増減調節する調節手段とを備える公知の回転抵抗式の糸調子器である。糸調子皿40,40は、ミシンアーム12に固定支持された基台41に突設された支軸42の回りに回転自在に支持されている。支軸42は、糸調子皿40,40の支持部から適長延出させてあり、この延出端にねじ込み支持された調節つまみ43と糸調子皿40,40との間に、コイルばねを用いてなる押しばね44が介装されている。
上糸2は、一対の糸調子皿40,40の対向面間に挾持させ、略1回転分巻き掛けて導出されている。このように巻き掛けた上糸2は、天秤6の回転により、糸調子皿40,40の回転を伴って導出側に引き出され、このとき上糸2には、糸調子皿40,40の回転抵抗に応じた張力が付与される。糸調子皿40,40の回転抵抗は、調節つまみ43を回転操作し、押しばね44のばね力を強弱に変更することにより増減調節することができ、上糸2の付与張力を大小に変更することができる。
以上の如き主糸調子器4による張力付与は、該主糸調子器4の上流側の上糸2、即ち、主糸調子器4に供給される上糸2が張力を有する場合に限って実現される。糸調子装置3の副糸調子器5は、主糸調子器4に供給される上糸2に張力(予備張力)を付与すべく設けてあり、本願発明の特徴は、副糸調子器5の構成にある。
図3は、副糸調子器5の分解斜視図である。副糸調子器5は、基板50に回転自在に支持された回転ドラム51と、該回転ドラム51の回転抵抗を増減調節する調節手段(調節つまみ52及び押しばね53)とを備えている。
基板50は、一面の略中央に垂直に立設された支軸54を有している。回転ドラム51は、両側の鍔縁間に適幅の巻き部を設けてなる厚肉の円板であり、ラジアル軸受55を介して支軸54の基部に嵌合支持されている。支軸54の先端部は、軸心を通る割り溝により分離され、外周に雄ねじが形成されたねじ軸56としてある。前記調節つまみ52は、軸心を貫通する孔の内周に雌ねじが形成された中抜き円板形のナットであり、支軸54の先端のねじ軸56に螺合されている。
支軸54の中途部には、スラスト軸受57及び押し板58が遊嵌され、押し板58は、スラスト軸受57を介して回転ドラム51の端面に当接させてある。前記押しばね53は、調節つまみ52及び押し板58の間に介装されて夫々の対向面に弾接させてあり、回転ドラム51の端面に押し板58を介してスラスト軸受57を押し付けるように構成されている。この押し付け力は、調節つまみ52を回転操作し、ねじ軸56に沿って螺進させて押しばね53を短縮せしめることにより増大する。
以上の構成により回転ドラム51は、ラジアル軸受55を介して支持された支軸54を中心として回転する。このとき回転ドラム51には、支軸54との間に介装されたラジアル軸受55の回転抵抗と、押し板58を介して押し付けられるスラスト軸受57の回転抵抗とが作用する。このうち、スラスト軸受57による回転抵抗は、調節つまみ52を回転操作し、押しばね53による押し付け力を増減させることにより調節することができる。
スラスト軸受57は、図示の如く、円板形の保持器に放射状に設けた複数の孔部の夫々に針状ころを保持させてなる転がり軸受として構成されており、回転ドラム51は、押し板58を介して加わる押しばね53の押し付け力に阻害されることなく滑らかに回転することができ、調節つまみ52の操作による回転ドラム51の回転抵抗の調節は、微小な領域で安定して行わせることができる。
図3中のラジアル軸受55は、円筒形の滑り軸受として図示されているが、スラスト軸受57と同様の針状ころを用いてなる転がり軸受を使用することができ、これにより回転ドラム51の回転が更に滑らかになる。
回転ドラム51を支持する基板50は、回転ドラム51の外周よりも外側に延長されており、この延長部には、略直角に立ち上がる2つの糸道部材7,8が設けてある。図示の糸道 部材7,8は、基板50の一部を屈曲成形し、該基板50と一体の部材として設けてあるが、基板50と別体に構成し得ることは言うまでもない。
一方の糸道部材7には、基板50の一面から離れた位置に、上糸2を挿通させるための糸孔70が貫通形成してある。他方の糸道部材8は、図2に示すように、基板50に前述の如く支持される回転ドラム51の全幅を超える立ち上がり高さを有している。この糸道部材8には、回転ドラム51の幅領域内において所定の間隔を隔てて並ぶ複数(図においては4つ)のガイド溝8a〜8dが、図3に示すように形成されている。これらのガイド溝8a〜8dは、夫々が異なる深さを有しており、基板50の近くに位置するガイド溝8aから、基板50から離れて位置するガイド溝8dに向けて順次深さを増すように形成されている。
以上の如く構成された副糸調子器5には、図2に示す如く上糸2がセットされる。図示しない糸供給源から前述した糸案内18を経て副糸調子器5に導かれる上糸2は、糸道部材7の糸孔70に通した後、回転ドラム51の外周に複数回巻き掛けて下方に導出し、主糸調子器4に前述の如くセットされる。
回転ドラム51への上糸2の巻き掛けは、図2に示す如く、糸道部材8に設けたガイド溝8a〜8dに、この順に一巻き毎に係合せしめてなされる。前述の如くガイド溝8a〜8dは、糸道部材8の高さ方向、即ち、回転ドラム51の幅方向に間隔を隔てて並設されており、これらのガイド溝8a〜8dに引っ掛けながら回転ドラム51に巻き掛けられる上糸2は、回転ドラム51外周において幅方向に所定の間隔を有し、相互に重なり合うことなく複数回(4回)巻回される。
また糸道部材8のガイド溝8a〜8dは、前述の如く、基板50から離れるに従って、即ち、ガイド溝8a,8b、8c,8dの順に深くなるように形成してあり、これらのガイド溝8a〜8dに係合させながら回転ドラム51に巻き掛けられる上糸2は、糸供給源からの供給側が長く、主糸調子器4への導出側に向けて順次短くなるような周長を有することとなる。なお図2中には、図面の煩雑化を防ぐべく、糸孔の参照符号70及びガイド溝の参照符号8a〜8dを省略してある。
このように副糸調子器5にセットされた上糸2は、回転ドラム51の回転を伴って導出側に引き出される。このとき回転ドラム51の外周に相互に重なり合うことなく巻き掛けられた上糸2には、夫々の巻回周上にて引き締められ、巻回周間での引き合いにより張力が発生する。更に、回転ドラム51に巻き掛けられた上糸2は、前述の如く、引き出し側に向けて順次短くなる周長を有しているから、夫々の巻回周上での引き締めが良好になされ、安定した張力を発生させることができる。
以上のように副糸調子器5は、糸供給源から供給される張力を有しない上糸2に予備張力を発生させて主糸調子器4に供給する作用をなす。副糸調子器5により上糸2に付与される予備張力の大きさは、前述の如く回転ドラム51の巻回周間での引き合いにより発生する張力と、回転ドラム51の微小な回転抵抗との合力に対応する。これらのうち回転ドラム51の回転抵抗は、前述の如く、調節つまみ52の操作により増減調節することが可能であるから、副糸調子器5は、微小な力領域において調節可能な予備張力を安定して付与することができる。
従って、以上のような予備張力の付与下にて前述した主糸調子器4の動作により、天秤6を経て針15に供給される上糸2の張力を、微小な力領域にて安定して付与することが可能となり、マイクロファイバーを使用した生地を含め、薄い生地、柔らかい生地を、図4に示すような縫目不良を生じることなく良好に縫製することが可能となる。
なお以上の実施の形態においては、回転ドラム51の外周上の上糸2の巻き掛け数を4回としてあるが、上糸2は、幅方向に間隔を隔て、相互に重ならないという条件下にて複数回(2回以上)巻き掛けてあればよい。
また以上の実施の形態においては、上糸2の周長を異ならせるために、基板50と直交する方向、即ち、回転ドラム51の幅方向に沿って延びる糸道部材8に異なる深さを有してガイド溝8a〜8dを形成し、これらに上糸2を係合させてあるが、例えば、等しい深さを有するガイド溝8a〜8dが形成された糸道部材8を、回転ドラム51の外周との離隔距離が先端側に向けて小さくなるように設け、上糸2を一巻き毎にガイド溝8a〜8dに係合させて回転ドラム51に巻き掛けるようにして周長の相違を実現する等、他の構成により実現することも可能である。
更に以上の実施の形態においては、千鳥縫いミシンへの適用例について説明したが、本発明は、千鳥縫いミシンに限らず、微小な張力付与が要求されるミシン全般に適用可能であることは言うまでもない。
本発明に係る糸調子装置を備える千鳥縫いミシンの外観斜視図である。 副糸調子器から針までの上糸の経路の説明図である。 副糸調子器の分解斜視図である。 千鳥縫いミシンにおいて発生する縫目不良の説明図である。
符号の説明
2 上糸
4 主糸調子器
5 副糸調子器
6 天秤
8 糸道部材
15 針
50 基台
51 回転ドラム
52 調節つまみ
53 押しばね 8a〜8d ガイド溝

Claims (3)

  1. 一対の糸調子皿の間に上糸を挟んで回転し、該上糸に前記糸調子皿の回転抵抗に対応する張力を付与する主糸調子器と、該主糸調子器に供給される上糸に予備張力を付与する副糸調子器とを、糸供給源から天秤に至る上糸の経路の中途に備えるミシンの糸調子装置において、
    前記副糸調子器は、
    前記上糸を外周の幅方向に間隔を有して複数回巻き掛け保持し、軸回りに回転する回転ドラムと、
    該回転ドラムの回転抵抗を増減して、前記予備張力を調節する調節手段と
    を備えることを特徴とするミシンの糸調子装置。
  2. 前記回転ドラムの周囲に設けてあり、該回転ドラムの幅方向に並ぶ複数のガイド溝の夫々に前記回転ドラムへの一巻き毎に引っ掛けた前記上糸を、前記回転ドラムの幅方向に間隔を隔てて導く糸道部材を備える請求項1記載のミシンの糸調子装置。
  3. 前記糸道部材の複数のガイド溝は、夫々に引っ掛けて前記回転ドラムに巻き掛けられる前記上糸の周長が、前記糸供給源から前記主糸調子器の側に順次短くなるように設けてある請求項2記載のミシンの糸調子装置。
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