JP2012104397A - 電気光学装置の製造方法及び電気光学装置 - Google Patents

電気光学装置の製造方法及び電気光学装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電気光学装置において、基板貼り合わせにおけるコスト低減や製造工程の簡素化を図る。また、電気光学装置の2枚の基板の貼り合わせにおいて、内部に設けられた発光素子が熱により損傷を受けるのを抑制する。
【解決手段】電気光学装置の製造方法は、2枚の基板110,120を貼り合わせる工程において、2枚の基板110,120をそれぞれのシール領域が重なるように対向配置させて重ね合わせ基板とし、重ね合わせ基板のシール領域に超短パルスレーザーを照射することにより、ガラス基板の表面を溶融させて両基板を接着する。
【選択図】図3

Description

本発明は、2枚の基板の貼り合わせ方法に特徴を有する電気光学装置の製造方法、及びその製造方法により製造された電気光学装置に関する。
平面型の光源装置として利用可能な電気光学装置として、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL:Electroluminescence)照明装置、無機EL照明装置、プラズマ照明、電界放出型ランプ(FEL:Field Emission Lamp)等の照明装置や、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、プラズマ表示装置、電気泳動表示装置(EPD:Electrophoretic Display)、電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)等の表示装置が挙げられる。中でも、有機EL照明装置や有機EL表示装置は、低電圧駆動、全固体型、高速応答性、自発光性等の点で優れた光源装置として、近年、精力的に研究開発が行われている。
有機EL照明装置や有機EL表示装置に代表される有機EL装置は、一般に、基板上に第1電極、有機層、第2電極が順に積層された有機EL基板を有する。そして、有機EL基板の有機層が設けられた側の表面を保護するように、封止基板が有機EL基板に対向配置された構成となっている。
有機EL基板上に設けられた有機層は、大気中の酸素や水分等により劣化しやすいため、有機EL基板と封止基板とは、両基板間に構成される空間が不活性雰囲気の封止空間となるように、基板の周囲において接着されている。有機EL基板と封止基板とを封止接着する方法としては、例えば、エポキシ樹脂等の接着樹脂を用いる方法(例えば、特許文献1)や、シール領域に低融点のフリットガラスを塗布し連続発振レーザー照射によりフリットガラスを溶融させて両基板を接着する方法(例えば、特許文献2)等が知られている。
特開2010−204417号公報 特開2008−107508号公報
表示装置の2枚の基板の貼り合わせでは、上記のように、エポキシ樹脂やフリットガラス等の副資材が必要となる。このため、貼り合わせ工程において、副資材をシール領域に配置したり塗布したりする工程が必要となる。
また、表示装置の2枚の基板をエポキシ樹脂等の接着樹脂を用いて接着する場合には、接着樹脂を溶融するために、基板のシール領域において加熱を行う。2枚の基板をフリットガラスにより接着する場合にも、フリットガラスを溶融するために、基板のシール領域において500℃程度に加熱を行う。このとき、接着樹脂やフリットガラスの溶融のために加えた熱が、基板の表示領域に到達し、表示領域に設けられた内部の発光素子が損傷を受ける虞がある。特に、有機EL表示装置では、内部の発光素子が有機層で構成されているため、加熱により大きな損傷を受ける虞がある。
本発明の第1の目的は、電気光学装置において、副資材を用いることなく2枚の基板の貼り合わせを行って、コスト低減や製造工程の簡素化を図ることである。また、本発明の第2の目的は、電気光学装置の2枚の基板の貼り合わせにおいて、内部の発光素子が熱により損傷を受けるのを抑制することである。
本発明の電気光学装置の製造方法は、少なくとも一方がガラス基板である2枚の基板が対向配置されて基板中央に設けられた発光領域を囲む枠状のシール領域において貼り合わされ、両基板間に発光素子が設けられた電気光学装置の製造方法であって、
2枚の基板を貼り合わせる工程において、
2枚の基板をそれぞれのシール領域が重なるように対向配置させて重ね合わせ基板とし、
重ね合わせ基板のシール領域に超短パルスレーザーを照射することにより、ガラス基板の表面を溶融させて両基板を接着することを特徴とする。
上記の製造方法によれば、超短パルスレーザーを照射することによりガラス基板の表面の一部を溶融させ、溶融ガラスが再凝固するのを利用して両基板を接着することができるので、基板の貼り合わせに、接着樹脂や低融点ガラス等のシール材を用いる必要がない。従って、シール材を基板のシール領域に配置したり塗布したりする工程を省略でき、製造工程を簡素化することができる。また、シール材が不要となるので、その分の製造コストを低減することができる。
また、上記の製造方法によれば、超短パルスレーザーを用いてガラス基板の溶融を行うので、超短パルスレーザーのエネルギーが伝搬しにくい。従って、両基板間に設けられた発光素子に両基板の接着の際に加えられる熱が伝搬することによって発光素子が損傷を受けるのを抑制することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法は、電気光学装置を構成する2枚の基板が有機EL基板及び封止基板であって、
発光素子は、有機EL基板上に形成され、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層された構成の有機EL素子である場合に好適に用いられる。
有機EL層は有機物で構成されるため、外部より熱が加えられると有機EL層が損傷を受けて、有機EL素子全体として劣化する虞があるが、本発明の電気光学装置の製造方法では、超短パルスレーザーを照射することにより両基板の接着を行うので、発光素子である有機EL素子に熱が伝搬しにくく、かかる問題が抑制される。
電気光学装置が有機EL装置である場合、封止基板は、有機EL基板側表面に、有機EL素子が設けられた領域に対応する凹部が形成されていてもよい。
上記の構成によれば、封止基板には、有機EL基板側表面に凹部が設けられ、凹部が有機EL素子が設けられた領域に対応しているので、有機EL基板と封止基板とを貼り合わせる際に、有機EL基板に設けられた有機EL素子が封止基板の凹部に嵌るように両基板を貼り合わせることができる。従って、有機EL基板のシール領域と封止基板のシール領域を重ね合わせるために基板を撓ませる必要がないので、基板を撓ませて両基板を重ね合わせる場合よりも優れた強度を得ることができる。
本発明の電気光学装置の製造方法は、2枚の基板の一方がガラス基板で、他方が金属板である場合に好適に用いられる。
電気光学装置が、ガラス基板と金属板とが対向配置されて構成されている場合、従来のようにシール材を用いて両基板を接着しても、接着強度が十分に得られない虞がある。しかしながら、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、超短パルスレーザーを照射することによりガラス基板と金属板とを接着するので、両基板を十分な強度で貼り合わせることができる。本発明によれば、電気光学装置をガラス基板と金属板とを対向配置させて構成できるので、例えば、製造コストが低いソーダガラス基板とステンレス板とを組み合わせて電気光学装置を構成することも可能となり、製造コストの観点からも好ましいといえる。
本発明の電気光学装置の製造方法で使用する超短パルスレーザーは、レーザー照射強度が5mW未満であることが好ましく、1〜2mWであることがより好ましい。
上記の製造方法によれば、超短パルスレーザーのレーザー照射強度を5mW未満、より好ましくは1〜2mWとすることにより、レーザーが照射される領域に設けられた金属部材が断線するのを抑制することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法で使用する超短パルスレーザーは、パルス幅が10−9秒未満であることが好ましく、パルス幅が1.0×10−14〜1.0×10−11秒のフェムト秒レーザーやピコ秒レーザーであることがより好ましい。
本発明の電気光学装置は、少なくとも一方がガラス基板である2枚の基板が対向配置されて基板中央に設けられた発光領域を囲む枠状のシール領域において貼り合わされ、両基板間に発光素子が設けられたものであって、
2枚の基板は、シール領域において、ガラス基板の表面が超短パルスレーザーにが照射されることにより溶融されて接着されたことを特徴とする。
上記の構成の電気光学装置によれば、2枚の基板が、シール領域において、超短パルスレーザーを照射することによりガラス基板の表面の一部が溶融され、溶融されたガラスが再凝固するのを利用して接着されているので、基板の貼り合わせに、接着樹脂や低融点ガラス等のシール材を用いる必要がない。従って、シール材を基板のシール領域に配置したり塗布したりする工程を省略でき、製造工程を簡素化することができる。また、シール材が不要となるので、その分の製造コストを低減することができる。
また、上記の構成の電気光学装置は、超短パルスレーザーを用いてガラス基板の溶融を行って2枚の基板が貼り合わされているので、2枚の基板の貼り合わせの工程において、超短パルスレーザーのエネルギーが伝搬しにくい。従って、両基板間に設けられた発光素子に両基板の接着の際に加えられる熱が伝搬することによって発光素子が損傷を受けるのを抑制することができる。
本発明の電気光学装置は、2枚の基板が有機EL基板及び封止基板であって、
発光素子は、有機EL基板上に形成され、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層された構成の有機EL素子である場合に好適に用いられる。
有機EL層は有機物で構成されるため、外部より熱が加えられると有機EL層が損傷を受けて、有機EL素子全体として劣化する虞があるが、本発明の電気光学装置では、超短パルスレーザーを照射することにより両基板の接着を行うので、発光素子である有機EL素子に熱が伝搬しにくいので、かかる問題が抑制される。
本発明の電気光学装置において、電気光学装置が有機EL装置である場合、封止基板は、有機EL基板側表面に、有機EL素子が設けられた領域に対応する凹部が形成されていてもよい。
上記の構成によれば、封止基板には、有機EL基板側表面に凹部が設けられ、凹部が有機EL素子が設けられた領域に対応しているので、有機EL基板と封止基板とを貼り合わせる際に、有機EL基板に設けられた有機EL素子が封止基板の凹部に嵌るように両基板を貼り合わせることができる。従って、基板を撓ませることなく有機EL基板のシール領域と封止基板のシール領域とが重ね合わせられており、基板が撓んでいる場合よりも優れた強度が得られる。
本発明の電気光学装置が有機EL装置である場合、有機EL装置は、有機EL照明装置であってもよく、また、有機EL表示装置であってもよい。
本発明の電気光学装置は、2枚の基板の一方がガラス基板で、他方が金属板である場合に好適に用いられる。
電気光学装置が、ガラス基板と金属板とが対向配置されて構成されている場合、従来のようにシール材を用いて両基板を接着しても、接着強度が十分に得られない虞がある。しかしながら、本発明の電気光学装置によれば、ガラス基板と金属板が、超短パルスレーザーを照射することにより接着されているので、両基板を十分な強度で貼り合わせることができる。本発明によれば、電気光学装置をガラス基板と金属板とを対向配置させて構成できるので、例えば、製造コストが低いソーダガラス基板とステンレス板とを組み合わせて電気光学装置を構成することも可能となり、製造コストの観点からも好ましいといえる。
本発明の製造方法によれば、超短パルスレーザーを照射することによりガラス基板の表面の一部を溶融させ、溶融ガラスが再凝固するのを利用して2枚の基板を接着して電気光学装置を作製することができるので、基板の貼り合わせに、接着樹脂や低融点ガラス等のシール材を用いる必要がない。従って、シール材を基板のシール領域に配置したり塗布したりする工程を省略でき、製造工程を簡素化することができる。また、シール材が不要となるので、その分の製造コストを低減することができる。
また、本発明によれば、超短パルスレーザーを用いてガラス基板の溶融を行うので、超短パルスレーザーのエネルギーが伝搬しにくい。従って、2枚の基板間に設けられた発光素子に両基板の接着の際に加えられる熱が伝搬して発光素子が損傷を受けるのを抑制することができる。
実施形態1の有機EL照明装置の概略断面図である。 実施形態1の有機EL基板の(a)平面図、及び、(b)その平面図のIIb−IIb線における断面図である。 (a)及び(b)は、実施形態1の有機EL照明装置の基板の貼り合わせ方法の説明図である。 実施形態2の有機EL照明装置の概略断面図である。 実施形態2の有機EL基板の断面図である。 実施形態3の有機EL照明装置の概略断面図である。 実施形態2の封止基板の(a)平面図、及び、(b)その平面図のVIIb−VIIb線における断面図である。 (a)及び(b)は、実施形態3の有機EL照明装置の基板の貼り合わせ方法の説明図である。 実施形態4の有機EL照明装置の概略断面図である。 実施形態4の有機EL基板における発光領域の要部を拡大して示す平面図である。 図10のXI−XI線における断面図である。 実施例1の有機EL装置の(a)平面図、及び(b)その平面図のXIIb−XIIb線における断面図である。 (a)〜(e)は、実施例1の有機EL装置の作製方法の説明図である。 各実施例の有機EL装置の作製に用いたレーザー照射装置の構成の概略図である。 試験評価1について、それぞれ(a)200時間経過前、(b)実施例1の200時間経過後、及び(c)比較例の200時間経過後における有機EL装置のサンプルを示す写真である。 試験評価3について、サンプル基板の超短パルスレーザーの照射軌跡を示す写真である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
《実施形態1》
<有機EL照明装置>
図1及び2は、実施形態1にかかる有機EL照明装置100を示す。この有機EL照明装置100は、例えば、室内照明、屋外照明、ディスプレイ照明、機器・什器組込照明等の照明や、液晶用バックライト、電飾等に用いられる。
有機EL照明装置100は、有機EL基板110及び封止基板120が互いに対向配置された有機ELパネルを有し、両基板110,120間に有機EL素子130が設けられている。有機ELパネルは、基板中央に発光領域Pが設けられ、発光領域Pを囲む枠状の領域が非発光領域となっている。そして、非発光領域の一部は、発光領域Pを囲むように枠状にシール領域SLとなっている。
なお、有機EL照明装置100は、一対の有機EL基板110及び封止基板120からなる有機ELパネルで構成されていても、複数の有機ELパネルで構成されていてもよいが、実施形態1では、有機EL照明装置100が一対の有機ELパネルで構成されているとして説明する。
(有機EL基板110)
有機EL基板110は、例えば、ホウケイ酸ガラス(無アルカリガラス)板、ソーダガラス板、石英ガラス板等のガラス基板で形成されている。ホウケイ酸ガラスとしては、例えば、コーニング社製の商品名「#1737」や商品名「Eagle」、旭ガラス社製の商品名「AN」、ショット社製の商品名「テンパックス」、日本電気硝子社製の商品名「OA−10」等の市販品を用いることができる。有機EL基板110は、例えば、厚さが0.5〜1.1mmである。有機EL基板110は、基板表面に、例えば絶縁性樹脂からなる平坦化膜の形成等の処理が行われたものであってもよい。
(封止基板120)
封止基板120は、有機EL基板110と同様、例えば、ホウケイ酸ガラス板、ソーダガラス板、石英ガラス板等のガラス基板で形成されている。封止基板120は、例えば、厚さが0.5〜1.1mmである。封止基板120は、基板表面に、例えば、乾燥剤の貼り付け等の処理が行われたものであってもよい。
なお、封止基板120は、有機EL基板110と同じ種類の材料で構成されていても、異なる種類の材料で構成されていてもよい。
(有機EL素子130)
有機EL素子130は、有機EL基板110の封止基板120側表面に設けられている。有機EL素子130は、有機EL基板110上に、第1電極131、有機EL層132、及び第2電極133が順に積層された構造を有する。有機EL素子130は、例えば厚さが0.1〜1μmである。
第1電極131は、有機EL層132に正孔を注入する陽極としての機能を有する。第1電極131は、例えば、ITO等の透明電極で構成される。第1電極131は、例えば厚さが100〜200nmである。
有機EL層132は、例えば、第1電極側から、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層が順に積層されて構成される。これらのうち、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は必須の構成ではない。
第2電極133は、有機EL層132に電子を注入する陰極としての機能を有する。第2電極133は、例えば、Al膜等の金属膜で構成される。
有機EL素子130上には、絶縁保護膜(不図示)が設けられている。絶縁保護膜は、例えば抵抗率が10Ωcm以上で、厚さが10〜1000nmである。
有機EL基板110の非発光領域には、第1電極131と一体に、または、第1電極131と同一層に、ITO膜等の透明電極材料からなる配線が設けられている。非表示領域に設けられた配線は、シール領域SLを跨ぐように設けられることとなる。シール領域SLは、基板貼り合わせ時に超短パルスレーザーが照射されるので、シール領域SLにITO膜が露出していると、ITO膜が断線する虞がある。そのため、非表示領域においては、ITO膜が金属保護膜(不図示)で覆われるように金属保護膜を設け、ITO膜の断線を防止する必要がある。このような金属保護膜を形成する材料としては、耐熱性及び反射性の金属材料であるTi等が挙げられる。Ti膜の厚さは、例えば、100〜600nmである。
有機EL基板110と封止基板120とは、それぞれのシール領域SLが重なり合うようにしてシール領域SLにおいて両基板が接着されて貼り合わされている。有機EL基板110と封止基板120は、シール領域SLに超短パルスレーザーが照射されて、それぞれのガラス基板の表面のガラスが溶融することにより互いに接着されている。つまり、接着のために接着樹脂やフリットガラス等の副資材をシール材として用いることなく、2枚の基板が貼り合わされている。
なお、シール領域SLを跨ぐように配線が設けられた領域においては、有機EL基板110と封止基板120とは、それぞれのガラス基板同士は直接接触しないが、配線のない領域において有機EL基板110と封止基板120のガラス基板同士がガラス基板の溶融により接着されているので、有機EL基板110と封止基板120とは、確実に貼り合わされることとなる。
有機EL基板110及び封止基板120は、共に、平板形状を有するので、有機EL素子130が両基板間に介在するようにしてシール領域SLを貼り合わせるために、図1に示すように、封止基板120を僅かに撓ませて、両基板間に有機EL素子130を設けるための空間が形成されている。なお、両基板間に形成される空間は、有機EL素子130に影響を与えないように、例えば、酸素濃度が1ppm以下、及び水分濃度が1ppm以下の窒素雰囲気やアルゴン雰囲気、真空雰囲気等に調整されている。両基板間に形成される空間は、例えば、厚さが0.1〜0.5mmである。
以上の構成の有機EL照明装置100においては、有機EL素子130の第1電極131、第2電極132間に電圧が印加されると、第1電極131及び第2電極132のうち陽極側から正孔が、陰極側から電子がそれぞれ有機EL層132の発光層に注入される。そして両者が発光層で再結合し、それによって放出されたエネルギーが発光層の発光材料を励起させ、励起された発光材料が励起状態から基底状態に戻るときに蛍光や燐光を放出し、その蛍光や燐光が発光として外部に出射される。
なお、この有機EL照明装置100では、有機EL素子130において、第1電極131が陽極及び第2電極133が陰極であるとして説明したが、逆に、第1電極131が陰極及び第2電極133が陽極であってもよい。この場合、有機EL層132は、第2電極133側から、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層が順に積層されて構成されることとなる。また、第2電極133が透明電極で構成されることとなるので、有機EL照明装置100全体としては、有機EL基板110とは反対の封止基板120側から有機EL発光を取り出すトップエミッション型となる。
<有機EL照明装置の製造方法>
次に、実施形態1の有機EL照明装置100の製造方法について説明する。
(有機EL基板110,封止基板120の準備)
はじめに、有機EL基板110と封止基板120をそれぞれ準備する。有機EL基板110については、必要に応じて、有機EL素子130を形成する側の表面に平坦化膜を形成する等の処理を行う。封止基板120については、必要に応じて、表面に乾燥剤を貼り付ける等の処理を行う。
(有機EL素子作製)
次に、有機EL基板110上に、従来公知の方法を用いて有機EL素子130を形成する。具体的には、例えば、スパッタ法を用いて第1電極131を形成し、このうち非発光領域を金属保護膜で被覆する。そして、インクジェット法を用いて有機EL層132の各有機膜を順次成膜した後、スパッタ法を用いて第2電極133を形成する。
有機EL素子130形成後は、有機EL素子130を覆うようにして絶縁保護膜を形成する。
(基板貼り合わせ)
次に、有機EL素子130が形成された有機EL基板110と封止基板120との貼り合わせを行う。
まず、図3(a)に示すように、有機EL基板110の有機EL素子130が設けられた側に封止基板120を対向配置し、各基板110,120のシール領域SLが一致するように位置合わせを行い、重ね合わせ基板とする。
次いで、図3(b)に示すように、封止基板120側から(図3(b)の矢印の側から)シール領域SLに超短パルスレーザーの照射を行う。
超短パルスレーザーの照射は、重ね合わせ基板のシール領域SLに沿うように行う。なお、超短パルスレーザーは、シール領域SLに沿って1周だけ設けられていてもよく、複数周重ねて設けられていてもよい。
使用する超短パルスレーザーは、例えば、パルス幅が10−9秒(1ナノ秒)未満のレーザー光源を用いることができる。超短パルスレーザーのレーザー光源のパルス幅は、10−15秒(1フェムト秒)以上10−11秒(10ピコ秒)以下のオーダーのレーザー光源であることが好ましく、10−14〜10−11秒であることがより好ましい。かかるレーザー光源としては、例えば、チタン・サファイアレーザー、クロム・フォルステライトレーザー、エキシマレ−ザー等が挙げられる。なお、超短パルスレーザーのパルス幅は、アト秒(10−18秒)オーダーであってもよく、ゼプト秒(10−21秒)オーダーであってもよく、ヨクト秒(10−24秒)オーダーであってもよい。また、このとき使用する超短パルスレーザーの励起レーザーとしては、任意のレーザー光源を使用することができる。
超短パルスレーザーのレーザー照射強度は、5mW未満であることが好ましく、1〜2mWであることがより好ましい。超短パルスレーザーのレーザー照射強度が5mW未満が好ましいとするのは、レーザー照射強度が5mW以上の場合にはレーザー照射時に、金属保護膜であるTi膜が断線してしまう虞があるからである。
超短パルスレーザーの照射は、有機EL素子130が損傷を受けるのを抑制するために、酸素濃度が1ppm以下、及び水分濃度が1ppm以下に調整された窒素雰囲気やアルゴン雰囲気、真空雰囲気等の不活性な雰囲気で行う。
なお、上記の貼り合わせ方法では、封止基板側からレーザーの照射を行うとして説明したが、その反対側の基板側からレーザーの照射を行うことも可能である。
<実施形態1の効果>
連続発振レーザーや、低パルス発振のYAGレーザーは、ガラスのようなワイドバンドギャップの絶縁性材料に照射されても、光子の遷移確率が低いので、エネルギーが吸収されずに絶縁性材料を透過してしまう。そのため、ガラス基板の表面を溶融することにより2枚のガラス基板を接着することはできない。
しかしながら、パルス幅が1ns未満の超短パルスレーザーは、光子の数が多いので、2回あるいはそれ以上励起される多光子吸収により、ワイドバンドギャップ絶縁物でも光子の遷移がゼロでなくなる。そのため、超短パルスレーザーを絶縁性材料へ照射すると、絶縁性材料へのエネルギーの吸収が起こる。
本実施形態では、有機EL基板110と封止基板120とを重ね合わせた重ね合わせ基板のシール領域SLに超短パルスレーザーを照射するので、有機EL基板110のガラス基板や封止基板120のガラス基板が超短パルスレーザーのエネルギーを吸収して、ガラス表面が1000〜2000℃程度のにまで加熱されて溶融する。そして、溶融したガラスが再凝固することにより両基板の接着を行うことができる。
これにより、接着樹脂やフリットガラス等の副資材をシール材として用いることなく、ガラス基板そのものの表面を溶融させて2枚の基板を接着することが可能となる。そのため、シール材を基板のシール領域SLに配置したり塗布したりする工程を省略でき、製造工程を簡素化することができる。また、シール材が不要となるので、その分の製造コストを低減することができる。
また、有機EL基板と封止基板の貼り合わせは、連続発振レーザーや低パルス発振のYAGレーザー等を用いてシール材を溶融することにより行われているが、このとき、幅1mm程度のシール材が500℃程度にまで加熱されることとなる。そして、このときの熱が有機EL素子にまで伝搬して、有機EL素子が損傷を受ける虞がある。
しかしながら、本実施形態で用いる超短パルスレーザーによれば、熱の拡散よりも速くアブレーションが起こるので、周囲への熱の伝搬をほぼ0にすることができる。具体的には、超短パルスレーザーを照射することにより、対象物に、極めて狭い幅(数μm程度の幅)で1000〜2000℃に達するエネルギーを付与することができる(C.B. Schaffer et al., Appl. Phys. A 76 (2003), p. 351)。従って、本実施形態では、超短パルスレーザーをシール領域SLに照射し、レーザーエネルギーによりガラス基板表面を溶融して有機EL基板110と封止基板120を接着しても、シール領域SLの周囲への熱の伝搬を無視することができ、発光領域P内に設けられた有機EL素子130が基板貼り合わせ時に熱により損傷を受けるのが抑制される。そして、結果として、信頼性の高い有機EL表示装置100を得ることができる。
《実施形態2》
図4は、実施形態2にかかる有機EL照明装置200を示す。この有機EL照明装置200は、実施形態1の有機EL照明装置100と同様、例えば、室内照明、屋外照明、ディスプレイ照明、機器・什器組込照明等の照明や、液晶用バックライト、電飾等に用いられる。
有機EL照明装置200は、有機EL基板210及び封止基板220が互いに対向配置された有機ELパネルを有し、両基板210,220間に有機EL素子230が設けられている。有機ELパネルは、基板中央に発光領域Pが設けられ、発光領域Pを囲む枠状の領域が非発光領域となっている。そして、非発光領域の一部は、発光領域Pを囲むように枠状にシール領域SLとなっている。
有機EL基板210は、例えば、ホウケイ酸ガラス(無アルカリガラス)板、ソーダガラス板、石英ガラス板等のガラス基板で形成されている。一方、封止基板220は、金属板で形成されている。金属板としては、例えば、ステンレス板、アルミニウム板、銅板等が挙げられる。封止基板220は、例えば、厚さが0.1〜1.1mmである。
有機EL素子230は、図5に示すように、有機EL基板210の封止基板220側表面に設けられ、第1電極231、有機EL層232、及び第2電極233が順に積層された構造を有する。
上記の構成の有機EL照明装置200は、実施形態1の有機EL照明装置100と同様の方法により作製することができる。
本実施形態では、有機EL基板210がガラス基板、及び封止基板220が金属板であるとして説明したが、有機EL基板210が金属板、及び封止基板220がガラス基板であってもよい。この場合には、有機EL基板210側が光を透過しないので、有機EL照明装置200は、封止基板220側から発光を取り出すトップエミッション型の構造のものとなる。
<実施形態2の効果>
本実施形態の有機EL照明装置200は、超短パルスレーザーを照射することにより有機EL基板210と封止基板220とが接着されているので、実施形態1と同様に、シール材を基板のシール領域SLに配置したり塗布したりする工程を省略できて製造工程を簡素化することができると共に、シール材が不要であることからその分の製造コストを低減することができる。さらに、超短パルスレーザー照射によって多光子吸収の原理を用いて有機EL基板210と封止基板220との貼り合わせを行うので、シール領域SLの周囲への熱の伝搬が起こらず、発光領域P内に設けられた有機EL素子230が基板貼り合わせ時に熱により損傷を受けるのが抑制される。
また、本実施形態の有機EL照明装置200は、封止基板220が金属板で形成されているが、有機EL基板210がガラス基板であって、超短パルスレーザーにより有機EL基板210自身の表面が溶融されて基板の貼り合わせを行うので、封止基板220が金属板であっても両者を良好に接着することができる。有機EL基板と封止基板を接着樹脂やフリットガラス等のシール材を介して接着する場合には、接着強度が十分に得られない虞があるが、本実施形態によれば接着強度不足の問題が生じないので、ガラス基板の代わりに封止基板220を金属板で形成することにより、製造コストをお猿ことができる。特に、製造コストが低いソーダガラス基板とステンレス板とを組み合わせて有機EL照明装置200を構成する場合には、有機EL基板と封止基板の両方をガラス基板で形成する場合よりも、製造コストを大きく抑えることができる。
《実施形態3》
図6は、実施形態3にかかる有機EL照明装置300を示す。この有機EL照明装置300は、実施形態1の有機EL照明装置100と同様、例えば、室内照明、屋外照明、ディスプレイ照明、機器・什器組込照明等の照明や、液晶用バックライト、電飾等に用いられる。
有機EL照明装置300は、有機EL基板310及び封止基板320が互いに対向配置された有機ELパネルを有し、両基板310,320間に有機EL素子330が設けられている。有機ELパネルは、基板中央に発光領域Pが設けられ、発光領域Pを囲む枠状の領域が非発光領域となっている。そして、非発光領域の一部は、発光領域Pを囲むように枠状にシール領域SLとなっている。
有機EL基板310は、実施形態1と同様、ホウケイ酸ガラス板等のガラス基板で形成され、平板形状を有する。有機EL基板310は、例えば厚さが0.5〜1.1mmである。
封止基板320は、有機EL基板310と同様、例えば、ホウケイ酸ガラス板等のガラス基板で形成されている。封止基板120は、例えば、厚さが0.5〜1.1mmである。封止基板320は、図7に示すように、概平板形状を有する。封止基板は、有機EL基板310に接着される側の表面に、有機EL素子330に対応する凹部321が形成されている。凹部321は、平板直方体形状に彫り込まれて形成され、例えば、彫り込み深さが0.2〜0.5mmである。
有機EL素子330は、有機EL基板310の封止基板320側表面に設けられ、第1電極331、有機EL層332、及び第2電極333が順に積層された構造を有する。
上記の構成の有機EL照明装置300は、図8に示すように、実施形態1の有機EL照明装置100と同様の方法により作製することができる。
<実施形態3の効果>
本実施形態の有機EL照明装置300は、超短パルスレーザーを照射することにより有機EL基板310と封止基板320とが接着されているので、実施形態1と同様に、シール材を基板のシール領域SLに配置したり塗布したりする工程を省略できて製造工程を簡素化することができると共に、シール材が不要であることからその分の製造コストを低減することができる。さらに、超短パルスレーザー照射によって多光子吸収の原理を用いて有機EL基板310と封止基板320との貼り合わせを行うので、シール領域SLの周囲への熱の伝搬が起こらず、発光領域P内に設けられた有機EL素子330が基板貼り合わせ時に熱により損傷を受けるのが抑制される。
また、本実施形態の有機EL照明装置300は、封止基板320に凹部321が設けられているので、有機EL基板310が平板形状であっても、封止基板320を実施形態1のように撓ませることなく両基板310,320を重ね合わせることができる。従って、封止基板320が撓んでいない状態で有機EL照明装置300が構成されることにより、優れた強度を得ることができる。
《実施形態4》
図9は、実施形態4にかかる有機EL表示装置400を示す。この有機EL表示装置400は、例えば、携帯電話やPDA等のモバイル端末のディスプレイや、テレビのディスプレイ等に用いられる。
有機EL表示装置400は、有機EL基板410及び封止基板420が互いに対向配置された有機ELパネルを有し、両基板410,420間に有機EL素子430が設けられている。有機ELパネルは、マトリクス状に複数の発光領域Pが設けられ、これらを囲む枠状の領域が非発光領域となっている。そして、非発光領域の一部が枠状のシール領域SLとなっている。
有機EL基板410は、実施形態1と同様、ホウケイ酸ガラス板等のガラス基板で形成されている。有機EL基板410は、図10及び11に示すように、基板本体411上に、各発光領域Pに対応する複数の薄膜トランジスタ(TFT)412,配線413,平坦化膜414,及び隔壁部415が積層されている。これらの各構成は従来公知の構成と同一である。
封止基板420は、有機EL基板410と同様、例えば、ホウケイ酸ガラス板等のガラス基板で形成されている。
有機EL素子430は、有機EL基板410の封止基板420側表面に設けられ、図10及び11に示すように、第1電極431、有機EL層432、及び第2電極433が順に積層された構造を有する。第1電極431は、各発光領域Pに対応するように設けられ、平坦化膜414に設けられたコンタクトホール414cを介してTFT412のドレイン電極に電気的に接続されている。
次に、有機EL表示装置400の製造方法について説明する。
まず、有機EL基板410及び有機EL素子430,並びに封止基板420を、従来公知の方法を用いて作製する。
続いて、有機EL基板410と,封止基板420の基板貼り合わせを行う。基板貼り合わせは、実施形態1と同一の方法により行うことができるので説明を省略する。これにより、有機EL表示装置400を得る。
<実施形態4の効果>
本実施形態の有機EL表示装置400は、超短パルスレーザーを照射することにより有機EL基板410と封止基板420とが接着されているので、実施形態1と同様に、シール材を基板のシール領域SLに配置したり塗布したりする工程を省略できて製造工程を簡素化することができると共に、シール材が不要であることからその分の製造コストを低減することができる。さらに、超短パルスレーザー照射によって多光子吸収の原理を用いて有機EL基板410と封止基板420との貼り合わせを行うので、シール領域SLの周囲への熱の伝搬が起こらず、発光領域P内に設けられた有機EL素子430が基板貼り合わせ時に熱により損傷を受けるのが抑制される。
実施形態1〜4では、本発明の電気光学装置が有機EL装置の場合について説明したが、2枚の基板が対向配置されてその間に発光素子が設けられた電気光学装置であれば、特にこれに限られない。例えば、液晶表示装置や無機EL装置に本発明の構成を適用することも可能である。
以下、本発明の実施例及び本発明の実施例の評価試験について説明する。
(試験評価1)
−サンプル−
本発明の実施例1としての有機EL装置500と、比較例としての有機EL装置をそれぞれ作製した。
図12は、本発明の実施例1の有機EL装置500を示す。有機EL装置500は、有機EL基板510と封止基板520とが対向配置された構成を有する。有機EL基板510には、封止基板側表面に、第1電極531、有機EL層(不図示)、第2電極533が順に積層されて有機EL素子が形成されている。有機EL基板510上の有機EL素子530を含む発光領域Pには、エポキシ樹脂からなる樹脂封止剤534、及びその上層のガラス板535が設けられている。なお、樹脂封止剤534、及びガラス板535は、超短パルスレーザー照射時に有機EL素子530が大気にさらされて劣化するのを防止するために実験の都合上設けたものであり、本発明の構成としては必須の構成ではない。製品の生産応用上は、超短パルスレーザーの照射を真空、湿度フリーの環境下で行うので、樹脂封止剤等を設ける必要はない。
この有機EL装置500の作製方法について、図13を用いて説明する。
まず、図13(a)に示すように、スパッタ法を用いて、IZO膜からなる第1電極531を形成した。IZO膜のうち、発光領域P以外の領域には、IZO膜の上層に、IZO膜の金属保護膜としてTi膜531aを成膜した。そして、第1電極531の形成後、図示しないが、有機EL層の各有機膜の成膜を行った。
次いで、有機EL層の上層に、図13(b)に示すように、Al膜からなる第2電極533をスパッタ法により形成した。そして、図13(c)に示すように、第1電極531,有機EL層、及び第2電極533上にエポキシ樹脂からなる樹脂封止剤534及びガラス板535を設けた。
次に、図13(d)に示すように、有機EL基板510の有機EL素子530を形成した側に封止基板520を重ね、図13(d)中の矢印のように、シール領域SLに超短パルスレーザーの照射を行った。このとき、超短パルスレーザーの照射には、図14に示すレーザー照射装置を用いた。このときの照射条件は、チタン・サファイアレーザー再生増幅器のレーザーの波長が800nm及び繰り返し周波数が1kHz、対物レンズ開口率が0.3、接合速度が1mm/s、接合幅が200μm(3μmステップ)、並びに、レーザーパワーが4mWであった。これにより、図13(e)に示すように、有機EL基板510と封止基板520とが発光領域Pを囲むシール領域SLにおいて貼り合わされた有機EL装置を得た。
一方、比較例としては、エポキシ樹脂をシール材として有機EL基板と封止基板とを貼り合わせた、従来公知の構成の有機EL装置を作製した。
−試験方法−
上記作製した実施例1及び比較例の有機EL装置のそれぞれを、温度が60℃及び相対湿度が90%RHの雰囲気下におき、200時間経過後の実施例1及び比較例のサンプルを観察した。
−試験結果−
図15(a)、(b)及び(c)は、試験評価1の加湿試験の、200時間経過前及び経過後における実施例1の有機EL装置500、並びに、加湿試験200時間経過後における比較例の有機EL装置を示す写真である。
図15(b)では、発光領域Pにおいて、黒点(ダークスポット)の発生が見られないのに対し、図15(c)の比較例の有機EL装置では、発光領域P内に多くの黒点が発生しているのか観察される。この結果より、シール材を介して有機EL基板及び封止基板の貼り合わせを行った比較例では、基板貼り合わせ工程において、有機EL層が何らかのダメージを受けていると考えられる。
有機EL層は、酸素や水分等の物質や熱により損傷を受けやすいことが知られている。この比較試験では、実施例1、比較例とも、有機EL層のおかれた雰囲気の酸素濃度・水分濃度はほぼ同一であるので、比較例の有機EL層が実施例1よりも大きなダメージを受けた原因としては、基板貼り合わせ工程において加えられた熱が大きな要因であると考えられる。
(試験評価2)
−サンプル−
本発明の実施例として、試験評価1における実施例1と同一構成の実施例2,及び実施例3を作製した。実施例3は、エポキシ樹脂を設けないで超短パルスレーザーの照射を大気雰囲気下で行ったことを除いて、実施例1の有機EL装置500と同一の構成とした。
−試験方法−
上記作製した実施例2及び3の有機EL装置のそれぞれを、温度が60℃及び相対湿度が90%RHの雰囲気下におき、120時間経過後の実施例2及び3のサンプルを比較した。
−試験結果−
上記加湿試験を開始して120時間経過後、実施例2及び3のサンプルの発光領域をそれぞれ観察した。実施例3のサンプルは、上記試験評価1の比較例と比べると少ないものの、実施例2よりも多くの黒点が発生しているのが見られた。このことから、超短パルスレーザーの照射は、有機EL層が損傷を受けるのを抑制する観点から、真空、湿度フリーの環境下で行うことが好ましいと考えられる。
(試験評価3)
−試験方法−
ガラス基板上にIZO膜(厚さ0.1μm)及びTi膜(厚さ0.5μm)を積層形成し、サンプル基板とした。そして、Ti膜上から、図14のレーザー装置を用いて、接合幅が2μm幅及び1mm/sの接合速度で、超短パルスレーザーの照射を行った。このとき、超短パルスレーザーのレーザー照射強度が1mWの場合と5mWの場合のそれぞれについて照射を行った。
超短パルスレーザー照射後、サンプル基板のガラス基板側からTi膜形成側に光を透過させ、レーザー照射強度1mW、5mWのそれぞれの照射軌跡を観察した。
−試験結果−
図16は、上記試験評価3のサンプル基板のうち、超短パルスレーザーの照射軌跡の部分を拡大して示す写真である。図16中、下側の「A」で示す点線領域が照射強度が1mWの照射軌跡、上側の「A」で示す点線領域が照射強度が5mWの照射軌跡である。5mWのレーザー照射強度による照射軌跡では、レーザー照射軌跡にそって光が漏れているのが見られた(図16の白線囲み部分)。一方、1mWのレーザー照射強度による照射軌跡では、そのような光漏れは見られなかった。
この結果から、超短パルスレーザーのレーザー照射強度が5mWの場合にはTi膜が溶断されてしまうと考えられる。従って、超短パルスレーザーを照射する際のレーザー照射強度は、5mW未満であることが好ましく、1mW程度に低いことがより好ましいといえる。
本発明は、2枚の基板の貼り合わせ方法に特徴を有する電気光学装置の製造方法、及びその製造方法により製造された電気光学装置について有用である。
P 発光領域
SL シール領域
100,200,300 有機EL照明装置(電気光学装置)
110,210,310,410 有機EL基板
120,220,320,420 封止基板
130,230,330,430 有機EL素子(発光素子)
400 有機EL表示装置(電気光学装置)

Claims (13)

  1. 少なくとも一方がガラス基板である2枚の基板が対向配置されて基板中央に設けられた発光領域を囲む枠状のシール領域において貼り合わされ、両基板間に発光素子が設けられた電気光学装置の製造方法であって、
    上記2枚の基板を貼り合わせる工程において、
    上記2枚の基板をそれぞれのシール領域が重なるように対向配置させて重ね合わせ基板とし、
    上記重ね合わせ基板のシール領域に超短パルスレーザーを照射することにより、ガラス基板の表面を溶融させて両基板を接着することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  2. 請求項1に記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記2枚の基板は、有機EL基板及び封止基板であって、
    上記発光素子は、上記有機EL基板上に形成され、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層された構成の有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  3. 請求項2に記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記封止基板は、有機EL基板側表面に、上記有機EL素子が設けられた領域に対応する凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記2枚の基板の一方がガラス基板で、他方が金属板であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記超短パルスレーザーのレーザー照射強度が5mW未満であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  6. 請求項5に記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記超短パルスレーザーのレーザー照射強度が1〜2mWであることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載された電気光学装置の製造方法において、
    上記超短パルスレーザーは、パルス幅が1.0×10−14〜1.0×10−11秒であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  8. 少なくとも一方がガラス基板である2枚の基板が対向配置されて基板中央に設けられた発光領域を囲む枠状のシール領域において貼り合わされ、両基板間に発光素子が設けられた電気光学装置であって、
    上記2枚の基板は、シール領域において、上記ガラス基板の表面が超短パルスレーザーにが照射されることにより溶融されて接着されたことを特徴とする電気光学装置。
  9. 請求項8に記載された電気光学装置において、
    上記2枚の基板は、有機EL基板及び封止基板であって、
    上記発光素子は、上記有機EL基板上に形成され、第1電極、有機EL層、及び第2電極が順に積層された構成の有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置。
  10. 請求項9に記載された電気光学装置において、
    上記封止基板は、有機EL基板側表面に、上記有機EL素子が設けられた領域に対応する凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
  11. 請求項9または10に記載された電気光学装置において、
    上記電気光学装置は、有機EL照明装置であることを特徴とする電気光学装置。
  12. 請求項9または10に記載された電気光学装置において、
    上記電気光学装置は、有機EL表示装置であることを特徴とする電気光学装置。
  13. 請求項8〜12のいずれかに記載された電気光学装置において、
    上記2枚の基板の一方がガラス基板で、他方が金属板であることを特徴とする電気光学装置。
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