本発明は、例えばマンションなどの高層階の玄関や気密化された部屋の出入口等に設けられ、部屋の内外に生じてしまった気圧差による開閉操作の不具合を解消するための錠装置に関する。
マンションなどの住居においては、近年では高気密化されていることから、居室内の換気扇などの運転により、室外に比べ室内の気圧が低下し、すなわち室内外で気圧差が生じてしまい、玄関ドアの開放時に大きな力が必要となることがある。このような場合、特に高齢者や子供などは、ドアの開放が困難となる。
従来、上記のような不具合を解消するために、種々の機構が案出されている。例えば、以下に示す特許文献1や特許文献2では、ハンドル裏面に突出するレバーや、ハンドル軸から突出するこじ開け杆などを設けている。これらは、室内外の気圧差で扉の開放が困難となった場合、レバーをハンドルとともに握り、突出杆を建物側の当接部に当接して扉自体を開放方向に移動させたり、こじ開け杆を建物側反力部材の傾斜面に当接し、こじ開け杆に反力部材から反力を生じさせて扉自体を開放方向に移動させたりする。これにより、扉と建物側枠体の間をこじ開けるようになり、扉と建物側枠体との間に隙間を生じさせ、室内外の気圧差を解消させている。
特許第4034216号公報
特開2005−127044号公報
しかしながら、ハンドルと別体にレバーを設ける機構は、部品点数が多くなり、レバーが表出するため見栄えも悪く、扉を開放させる操作としてレバーも操作が必要となるなど操作性もよくなかった。また、こじ開け杆をハンドル軸から突出させる機構は、突出杆や反力部材が表出するため、見栄えが悪く、人の通過時にこれら部品に引っ掛かったり、或いは操作時に双方の部材間に指などを挟む虞もあった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、少ない部品数で、見栄え良く扉の内外の差圧解消が行えて、扉の開放操作を容易なものとする錠装置を提供することにある。
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠装置11は、扉23の木口81より進退自在なラッチ55を有し、該ラッチ55の進出状態の保持及び該保持状態の解除を行う連動機構57を備え、前記扉23の表裏面に対して接離方向に移動自在とされて設けられる把手19を、前記扉23の開く方向に押す或いは引くことにより、前記連動機構57を介して前記ラッチ55を後退或いは後退を許容させ同時に前記扉23の開放が行われる扉23の構造において、
前記把手19は前記扉23の表裏面に配設されて、該扉23の表裏面に対し接離方向に移動自在となり、
それぞれの前記把手19には該把手19に連動する作動片29が前記扉内方向に突設されるとともに、各作動片29の先端(37a,39a)の移動方向が同方向とされて設けられ、
前記扉23の木口81より突出自在な突出杆59と、
前記把手19の押し引き動作に前記作動片29を介して支軸61回りに従動回転し、前記連動機構57による前記ラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに、前記突出杆59を突出させるカム板53と、
建物側枠体117に配設され、前記突出杆59の突出時に当接し、該突出杆59の突出方向に対して略直交する前記扉23の開放方向へ、前記突出杆59の突出とともに前記扉23を揺動させる当接部115と、
を具備することを特徴とする。
この錠装置11では、把手19が扉23の表裏面に対して接離自在に移動自在に設けられており、例えば把手19は上下方向を長手方向とされ、その一端21が扉23の表裏面に平行な横方向の把手軸25に支持されて揺動自在となる。この把手19を、扉23の開く方向に押す或いは引くと、作動片29を介してカム板53が従動して回転し連動機構57によるラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに突出杆59を突出させる。この突出杆59を建物側枠体117に設けた当接部115に当接させて、互いの当接により生じる開放方向の扉23の移動にて、扉端縁と建物側の端縁との間に間隙を生じさせ、室内外の気圧差を解消させることができる。
請求項2記載の錠装置11は、請求項1記載の錠装置11であって、
前記カム板53は、扉厚み方向に沿う方向の支軸61に回動自在に支持され、該支軸61を中心とした半径方向外側に腕部65と、第一座部67と、第二座部69と、が突設され、前記腕部65が前記突出杆59を突出させ、前記第一座部67と、前記第二座部69とには前記一対の把手19からの各作動片29が当接することを特徴とする。
この錠装置11では、扉表裏面のいずれかの把手19が扉23の開く方向に押され或いは引かれると、把手19の作動片29が第一座部67又は第二座部69を押圧し、カム板53が回転される。カム板53が回転することで、カム板53が連動機構57を介してラッチ55の後退を許容させるとともに突出杆59を突出させる。
請求項3記載の錠装置11Aは、請求項1又は請求項2記載の錠装置11であって、
一対の前記作動片29のそれぞれが上下動自在となり、
前記一対の作動片29を内側に配置させたコ字状の連動補助部材71Aが該一対の作動片29のいずれかの下降にて下向きに移動されて該連動補助部材71Aを介して前記カム板53が回転することを特徴とする。
この錠装置11Aでは、上下動自在となる一対の作動片29が、コ字状に形成した連動補助部材71Aの内側に配置され、いずれの作動片29が作動しても連動補助部材71Aが同様に下降される。これにより、カム板53の支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作が一つの連動補助部材71Aの上下動作となる。
請求項4記載の錠装置11は、請求項1又は請求項2記載の錠装置11であって、
前記カム板53の支軸61を中心とした半径方向の内側と外側に配置された一対の前記作動片29が上下動自在となり、
内側の作動片29が前記カム板53を直接回転させ、
外側の作動片29が、基端71aを前記支軸61と同方向の軸部77で回動自在に支持された連動補助部材71を介して前記カム板53を揺動させることを特徴とする。
この錠装置11では、半径方向の外側に配置される作動片29が、連動補助部材71を介して、半径方向の内側に配置される作動片29に近接してカム板53を揺動させるので、カム板53に入力されるモーメントの差を極めて小さくできる。
請求項5記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4のいずれか1項に記載の錠装置11であって、
前記ラッチが、反転ラッチ55であることを特徴とする。
この錠装置11では、ラッチが、通常の木口81からの進退移動のみでなく、扉23の上下に沿う方向のラッチ軸回りにも回転する反転ラッチ55となる。通常のラッチでは進退方向と平行な衝止面が、ラッチの後退によらなければストライク板83の係止穴85から離脱されないが、反転ラッチ55では上記ラッチ軸回りに回転することで、係止穴85からの離脱が可能となる。
請求項6記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1項に記載の錠装置11であって、
前記連動機構57は、前記支軸61と同方向の揺動軸99にて揺動自在に支持される少なくとも一つの揺動部材97を有し、
前記揺動部材97は、前記カム板53の開扉時回転によって前記揺動軸99を挟む一方の揺動端が押圧され、前記揺動軸99を挟む他方の揺動端に設けられた規制部105が前記ラッチ55から離脱して前記ラッチ55の進出状態の保持を解除することを特徴とする。
この錠装置11では、揺動部材97の一方の揺動端がカム板53に押圧され、揺動部材97の他方の揺動端に設けられた規制部105がラッチ55から離脱する。ラッチ55は規制部105が離脱することにより後退が可能となる。
本発明に係る請求項1記載の錠装置によれば、開閉操作用の把手とは別体にレバーを設けたり、こじ開け杆をハンドル軸から突出させたりする必要がなくなり、少ない部品数で、見栄え良く扉の内外の差圧解消を行うことが可能となる。すなわち、扉の開放操作を通常の把手による開閉操作のみで容易に行えるものとすることができる。
請求項2記載の錠装置によれば、それぞれの把手による連動機構の駆動と、突出杆の駆動とを一つのカム板を用いて行うことができ、部品点数を増やすことなく、扉の開動の助勢が行われる。
請求項3記載の錠装置によれば、カム板の支軸から半径方向に内外で配置される一対の作動片の上下動作を、一旦、一つの連動補助部材の上下動作に変換できるので、カム板に入力されるモーメントを略同一にできる。
請求項4記載の錠装置によれば、支軸から半径方向に内外で配置される一対の作動片のうち、半径方向の外側に配置される作動片が、連動補助部材を介して、半径方向の内側に配置される作動片に近接してカム板を揺動させるので、カム板に入力されるモーメントの差を極めて小さくできる。
請求項5記載の錠装置によれば、カム板の回転をラッチ後退に変換するための大きな変換スペースを確保する必要がなくなる。
請求項6記載の錠装置によれば、カム板の回転を、少ない部品でラッチの保持状態の解除動作に変換できる。
本発明に係る錠装置の縦断面図である。
図1の要部拡大図である。
図2に示した錠箱の正面図である。
(a)は当接部の縦断面図、(b)は正面図、(c)は水平断面図である。
把手が押された錠装置の要部拡大図である。
(a)は把手が押された錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのA−A断面図である。
把手が引かれた錠装置の要部拡大図である。
把手が引かれた錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのB−B断面図である。
コ字状の連動補助部材を備えた変形例による錠箱の正面図である。
把手が開扉操作された図9に示す錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのC−C断面図である。
連動補助部材を省略した変形例による錠装置の正面図である。
把手が開扉操作された図11に示す錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのD−D断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る錠装置の縦断面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2に示した錠箱の正面図、図4(a)は当接部の縦断面図、(b)は正面図、(c)は水平断面図である。
本実施の形態に係る錠装置11は、扉23の表裏面である室外面13及び室内面15に、把手としてのグリップ19が上下方向を長手方向として設けられ、扉23の内外面13,15に対し略平行となって接離方向に移動自在とされ、本実施の形態では、長手方向の下端となる一端21が扉23の表裏面に平行な横方向の把手軸25に支持されて上端側が揺動自在となる。それぞれの把手19の端部としての他端27には作動片29が設けられる。扉23は、室外方向に開放となる。それぞれの台座31に対するグリップ19は、室内側ではグリップ19が扉面に近接する方向に移動自在であり、すなわち、プッシュグリップ33となり、室外側ではグリップ19が扉面より離れる方向に移動自在となっており、すなわち、プルグリップ35となり、所謂プッシュプル錠を構成している。
一端21が把手軸25に支持されたプルグリップ35とプッシュグリップ33は、他端27が室外側作動片37と室内側作動片39によって移動自在に台座31に支持される。室外側作動片37と室内側作動片39は、T字形状の板部材として形成される。室外側作動片37は、上部の一方が台座31に軸38aにて回動自在に固定され、他方がプルグリップ35に軸38bにて回動自在に連結される。中央延出部41の先端37aは錠箱43の内部に突出する。また、室内側作動片39は、下部の一方が台座31に軸40aにて回動自在に固定され、他方がプッシュグリップ33に軸40bにて回動自在に連結される。中央延出部41の先端39aは錠箱43の内部に突出する。図2に示すように、木口81側から見て、室内側作動片39の先端39aは手前側、室外側作動片37の先端37aは奥側となって前後で重なっており、各先端37a,39aは各グリップ33,35の操作で下方向へ揺動する。
プルグリップ35は室外側バネ45によって扉23に接近する方向に付勢され、プッシュグリップ33は室内側バネ47によって扉23から離反する方向に付勢されている。錠箱43には、扉23の室側に表出するシリンダ錠49と、扉23の室内側に表出するサムターン51とが接続されている。
図3に示すように、錠箱43には、カム板53と、ラッチ55と、連動機構57と、突出杆59とが配設されている。カム板53は、グリップ19の押し引き動作に従動して一方向(図3の時計回り)に回転し、連動機構57によるラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに、突出杆59を突出させる。カム板53は、この一方向の回転が、開扉時の回転方向となる。
カム板53は、扉厚み方向に沿う方向の支軸61に回動自在に支持され、不図示の回転付勢バネによって同図の反時計回りに付勢される。カム板53は、支軸61を中心とした半径方向外側に腕部65と、第一座部67と、第二座部69と、が突設され、腕部65が突出杆59を突出させる。第一座部67にはプッシュグリップ33の室内側作動片39が当接し、第二座部69にはプルグリップ35の室外側作動片37が連動補助部材71を介して当接する。カム板53には弧状のガイド穴73が形成され、ガイド穴73は錠箱43に立設された支柱75にガイドされる。
錠装置11は、カム板53の支軸61を中心とした半径方向の内側と外側に配置された室内側作動片39と室外側作動片37が上下動自在となり、内側の室内側作動片39がカム板53を直接回転させ、外側の室外側作動片37が、支軸61と同方向の軸部77で基端71aを回動自在に支持された連動補助部材71を介してカム板53を揺動させる。半径方向の外側に配置される室外側作動片37が、連動補助部材71を介して、半径方向の内側に配置される室内側作動片39に近接してカム板53を揺動させるので、カム板53に入力されるモーメントの差を極めて小さくしている。腕部65は、開扉時回転側と反対側の面をストッパ79に当接し、カム板53の反時計回りの回転を所定範囲に規制する。
ラッチ55は、本実施の形態では、反転式ラッチ(以下、ラッチ55を「反転ラッチ55」と称す。)とされる。すなわち、閉扉動作時には、一般的なラッチ錠と同様にストライク板当接時に錠箱43内に後退し、開扉時には、反転動作して解錠及び開扉が行えるものである。反転ラッチ55は、通常の木口81からの進退移動のみでなく、扉23の上下に沿う方向のラッチ軸63回りにも回転する。通常のラッチ55では進退方向と平行な衝止面が、ラッチの後退によらなければ図4に示すストライク板83の係止穴85から離脱されないが、反転ラッチ55では上記ラッチ軸63回りに回転することで、係止穴85からの離脱が可能となる。この反転ラッチ55は、ラッチ本体87と、ガイド部89とで構成されている。
ラッチ本体87は、先端が、衝止面と、この衝止面に対し所定の角度に斜めに形成されるガイド面(図示せず)とで略三角形状とされ、上下両端面にラッチ軸63が突設されている。そして、錠箱43のフロント板裏面からその周縁部に両ラッチ軸が掛かり、このフロント板93より先端が突出する。
ラッチ本体87には、圧縮コイルバネなどの図示しない付勢部材が後端側に配設され、先端が常にフロント板93より突出するよう付勢されている。通常時、ラッチ本体87は、フロント板93から突出した状態で、衝止面が扉面と平行となり、相手側のストライク板83の係止穴85に係合する。すなわち扉23の開放を規制する。また、閉扉動作時には、ストライク板83の端縁にガイド面が当接することで、付勢部材の付勢力に抗してフロント板93よりガイド部89内を真っ直ぐ後退する。また、開扉時には、後述する連動機構57によって、ラッチ本体87に対する規制が解除されて、ラッチ本体87は衝止面がストライク板83の係止穴縁部に当接し、ラッチ軸63を揺動中心として、ガイド部89内で反転動作が可能となり、且つラッチ本体87の後退が許容され、これによりフロント板93より後退して扉23が開放可能となる。
本実施の形態では、ラッチを反転ラッチ55とすることにより、カム板53の回転をラッチ後退に変換するための大きな変換スペースを確保する必要がなくなる。
連動機構57は、上記反転ラッチ55と、カム板53との間に介設される。この連動機構57は、本実施の形態では、それぞれ略L字状に形成された複数の揺動部材97を組み合わせて構成され、反転ラッチ55の後端側に配設される。各揺動部材97は、それぞれ揺動軸99にて揺動自在に錠箱43内に配置される。連動機構57は、少なくとも一つの揺動部材97(図3中、下側の揺動部材97)を備えればよい。下側の揺動部材97は、カム板53の開扉時回転によって揺動軸99を挟む一方の揺動端101がカム平坦面103によって押圧され、図3の反時計回りに回転する。これにより、揺動軸99を挟む他方の揺動端に設けられた規制部105がラッチ本体87に係止状態ではラッチ本体87の真直な進退のガイドを行い、ラッチ本体87から離脱すると反転ラッチ55の揺動規制状態の保持を解除するようになっている。
本実施の形態では一対の揺動部材97が設けられ、図3の下側の揺動部材97の解除揺動(反時計回りの揺動)が係合部107を介して上側の揺動部材97の解除揺動(時計回りの揺動)として伝達されるようになっている。また、上側の揺動部材97はバネ109により反時計回りに付勢される。この付勢力は、係合部107によって下側の揺動部材97の時計回りの付勢力として伝達される。
カム板53が一方向(図3の時計回り方向)に回転されると、下側の揺動部材97の一方の揺動端101がカム平坦面103に押圧され、双方の揺動部材97に設けられた規制部105がラッチ本体87から離脱する。これにより、反転ラッチ55、規制部105が離脱することにより揺動及び後退が可能となる。このように、錠装置11では、カム板53の回転を、少ない部品で反転ラッチ55の保持状態の解除動作に変換できるようになっている。
突出杆59は、錠箱43内のガイド軸111によってスライド移動自在となり、先端がフロント板93より進退自在に配設されている。この突出杆59は、略角柱状に形成され、長手方向を扉面に沿わせて配置され、圧縮コイルバネなどよりなる付勢部材95によって、通常時、先端部分がフロント板93より突出しない状態を維持している。突出杆59の先端は、本実施の形態では、扉23の閉鎖方向側となる側面を所定角度、本実施の形態では約45°の斜面とされ、略くさび状に形成されている。また、この突出杆59の基端は、図3に示したように腕部65の開扉時回転側の面に押圧される。
図4に示すように、当接部115は、建物側の枠体117におけるストライク板83の下部に配設される。この当接部115は、本実施の形態では、支持ブラケット119と、ローラ121とで略構成されている。支持ブラケット119は、枠体117に形成された凹部123に固設され、この凹部底面に対して、扉23の木口81に向かって延出するように構成される。ローラ121は支持ブラケット119の先端に設けられており、軸を扉23の木口81に沿わせ垂直方向とされて回転自在に配設されている。
この支持ブラケット119が固設される凹部123は、ストライク板83の板面よりも深く、扉23の木口81より離間した位置を底面とする形状に構成されるとともに、扉23の開放方向側が開口した形状とされ、建物側枠体117としては、室外側に向かう段部のように形成される。なお、この支持ブラケット119の延出位置は、閉扉状態の木口81における突出杆59の中心線上ではなく、突出杆59の最先端に近接した、やや偏芯した位置とされている。そして、突出杆59は、突出動作が行われることで、支持ブラケット先端のローラ121に当接し、このローラ121の回転と、突出杆先端の斜面とで、ローラ121に対して突出杆59側を進出方向に対して略直交方向に移動させるようになっている。
次に、上述のように構成された錠装置11の動作について説明する。
図5はプッシュグリップ33が押された錠装置11の要部拡大図、図6(a)はプッシュグリップ33が押された錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのA−A断面図、図7はプルグリップ35が引かれた錠装置11の要部拡大図、図8はプルグリップ35が引かれた錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのB−B断面図である。
扉23は、反転ラッチ55がストライク板83の係止穴85に係止することで閉扉される。この閉扉時、扉23は、枠体117との間に設けられた気密部材であるパッキン(図示せず)を介して密着される。
閉扉時において、室内と室外とで気圧差が生じ、扉23の開放が困難となった状態で、扉表裏面のいずれかのグリップ19が扉23の開く方向に押され或いは引かれると、グリップ19の作動片29が第一座部67又は第二座部69を押圧する。
図5に示すよう、例えば室内側のプッシュグリップ33が押され、室内側作動片39が移動すると、図6に示すように、カム板53が一方向(図6の時計回り)に回転される。また、図7に示すように、室外側のプルグリップ35が引かれ、室外側作動片37が移動すると、図8に示すように、カム板53が連動補助部材71を介して一方向(図8の時計回り)に回転される。
カム板53が一方向に所定角度θ(例えば26.2°)回転すると、腕部65の開扉時回転側の面が突出杆59の後端面129に当接する。同時に、連動機構57によって規制部105が揺動を開始し、ラッチ本体87から退きラッチ本体87に対する規制状態が解除される。すなわち、室内と室外とで気圧差が生じていない場合には、この状態で開扉へと移行可能となる。このことから、気圧差の無い場合にはグリップ19への初期の操作、すなわちグリップ19の傾きが浅い状態で開放へと導くことができる。気圧差が生じている場合には、重たく感じる扉23をグリップ19への操作力として開放方向へグリップ19に対して力を加える操作、すなわちグリップ19の押す或いは引く操作をさらに続けることとなる。
さらにグリップ19が押され或いは引かれ、グリップ19の揺動に連動して、突出杆59が進出を始めると、その先端が当接部115のローラ121に当接する。突出杆59は、カム板53が所定角度回転して回転規制されるまで進出する。カム板53は、腕部65が揺動軸99の外周に当接することで時計回りの回転が規制される。この進出によって突出杆先端の斜面113が当接部115のローラ121に当接して、ローラ121の回転によって斜面113が扉23の開放方向に移動し、扉自体を開放方向に移動させる。
このような、突出杆59の先端の斜面113と、当接部115のローラ121の構成によれば、互いの接触時が線接触となるとともに、ローラ121が回転することで、突出杆59の進出移動を助勢できることとなって、扉23の開放方向への移動をスムーズなものとなる。
これにより、扉23の室内側面における端縁と、建物側枠体117との間を、こじ開けるようになり、このことから、扉23の端縁と枠体117との間に数mm〜十数mmの隙間を生じさせ、室内外の気圧差を解消させることとなる。本実施の形態では、突出杆59が約17mm進出し、この突出杆59の斜面113と当接部115のローラ121により、約12mm扉が開放方向に動き、グリップ19の揺動操作のみという大きな力を必要としない操作で扉23の開放を始めることが可能となる。
同時に、このグリップ19の揺動操作により、錠箱43内にて連動機構57を介して規制部105を離脱させ、反転ラッチ55に対する規制状態が解除状態となる。その後、グリップ19を、室外側からは引く、室内側からは押す、操作で、反転ラッチ55は反転して後退し、扉23が開放となる。このときの開放は、上記気圧差の解消後であることから、小さな力で開放操作が可能となる。
すなわち、グリップ19の揺動を連動機構57に伝える構成としたので、グリップ19の揺動から扉23の開放への操作をスムーズに行うことができ、この扉23の開放時に、気圧差解消のための操作を有することを意識しなくとも、扉23の開放操作を容易なものとすることができる。
このように構成された錠装置11では、マンションなどの高層住宅などにおける玄関ドアなどの扉23において、室内と室外とで気圧差が生じ、扉23の開放が困難になった場合、扉面に配設されたグリップ19を揺動させることで、カム板53が従動して一方向に回転し連動機構57による反転ラッチ55の進出状態の保持及び規制を解除するとともに、突出杆59を突出させる。この突出杆59を建物側枠体117に設けた当接部115に当接させて、互いの当接により生じる開放方向の扉23の移動にて、扉端縁と建物側の端縁との間に間隙を生じさせ、室内外の気圧差を解消させる。これにより、扉23は、気圧差による開放困難が解消されて、小さな力で開放を行うことが可能となる。
なお、上述した実施の形態では、突出杆59の先端に斜面113を設け、建物側枠体117にローラ121を備えた当接部115を設けた構成の例について述べたが、これら突出杆59と当接部115とは、その他の構成としてもよく、例えば、突出杆59の先端に回転自在なローラ121を設け、建物側枠体117に斜面113を設ける構成としてもよい。この場合、突出杆59の先端が進出するに伴い、斜面113に沿ってローラ121が転動し、これにより、扉23を開放する方向に移動させることができ、このことから、上記同様に室内外に気圧差があった場合などに、これを解消できることとなる。
次に、上記した錠装置11の変形例を説明する。
図9はコ字状の連動補助部材71Aを備えた変形例による錠箱43の正面図、図10はプルグリップ35が開扉操作された図9に示す錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのC−C断面図である。なお、以下の各変形例において、図1〜図8に示した同等の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
この錠装置11Aは、一対の作動片29のそれぞれが上下動自在となり、一対の作動片29を内側に配置させたコ字状の連動補助部材71Aが一対の作動片29のいずれかの下降にて下向きに移動されて連動補助部材71Aを介してカム板53Aが回転する。連動補助部材71Aは、折り曲げ片125が水平当接面137を押下する。
この錠装置11Aでは、上下動自在となる一対の作動片29が、コ字状に形成した連動補助部材71Aの内側に配置され、いずれの作動片29が作動しても連動補助部材71Aが同様に下降される。カム板53Aの支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作が一つの連動補助部材71Aの上下動作となる。これにより、カム板53Aの支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作を、一旦、一つの連動補助部材71Aの上下動作に変換できるので、カム板53に入力されるモーメントを略同一にできる。
次に、上記した錠装置11の他の変形例を説明する。
図11は連動補助部材71、71Aを省略した変形例による錠装置11Bの正面図、図12はプルグリップ35が開扉操作された図11に示す錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのD−D断面図である。
この錠装置11Bは、カム板53Bが単純形状に形成される。すなわち、カム板53には第一座部67、第二座部69が形成されず、その代わりに水平当接面137が形成されている。水平当接面137には室内側作動片39、室外側作動片37が当接している。
この錠装置11Bでは、室内側作動片39と室外側作動片37とにストロークの差が必要になるが、連動補助部材71、71Aを不要にでき、カム板53Bの形状も簡単にして、構造を簡素にすることができる。
したがって、上記した実施の形態に係る錠装置11、11A、11Bによれば、開閉操作用の把手19とは別体にレバーを設けたり、こじ開け杆をハンドル軸から突出させたりする必要がなくなり、少ない部品数で、見栄え良く扉23の内外の差圧解消を行うことが可能となる。すなわち、扉23の開放操作を通常の把手19による開閉操作のみで容易に行えるものとすることができる。室外側と室内側とで作動片29の位置が支軸61を中心とした半径方向で異なる構造であっても、連動補助部材71、71Aを設けることで、同じような操作感を得ることができる。
なお、上述した各実施の形態では、把手19の構成として、下端である一端に把手軸25を設け上端側が揺動することで把手19自体が扉面に対して接離方向に移動する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、その他の把手構造としても機能するものである。
例えば、本出願人が先に出願した特開2002−70386号公報に開示されたハンドル状の構成、すなわち、ドアの壁面に固定される取付け座に軸支されて揺動自在となるレバー状などの把手部を有したアウターハンドル及びインナーハンドルよりなり、これらハンドルにそれぞれ一体な駆動カム部材を介し、ハンドルの操作による揺動を作動片29に伝える構成としてもよい。
また、本出願人が先に出願した特開2002−213114号公報に開示された構成、すなわち、扉に装着された台座に支承される回動可能な操作軸に設けられたノブやレバーハンドルなどを操作部材とし、このレバーハンドル等による操作で回転する操作軸に駆動板を一体的に装着する構造とするとともに、駆動板には作動部が突設され、台座内で上下に摺動自在なスライダに係止することで、作動部の回転移動がスライダを上方或いは下方に移動させる、すなわち回転直線変換機構を構成して、そのスライダと作動片29とを一体構造とされて、操作部材の操作から伝達が行われる構成としてもよい。
さらに、本出願人が先に出願した特開2006−2516号公報に開示された真直なハンドルによる把手の構造、すなわち、扉の壁面に所定間隔離間して固定された2つの台座部材に案内される2つの摺動腕を有する中空なハンドルを具備し、このハンドルは扉面に上下方向で長尺とされ、扉面に対して水平方向に操作可能となっており、台座部材内に固定支軸にて揺動自在に設けられたL型状の駆動レバーを備え、この駆動レバーの垂直部分をピン状案内部を介して摺動腕と連係し、そして、ハンドルの操作により上下の摺動腕に連動して台座部材内の駆動レバーを揺動とし、この駆動レバーの水平部分を上記作動片とする構成としてもよい。
また、本出願人が先に出願した特開2006−22541号公報に開示されたハンドル装置の構造、すなわち、扉面に対して接離自在となって配設される丸棒形状のハンドルよりなり、このハンドルの上下両端には扉面との間にカバーを有し、このカバー内部にてリンク装置が設けられており、リンク装置を構成する解錠レバーが錠箱内のラッチ機構に臨ませたレバー体で、解錠レバーはカバーに軸支され揺動自在となっており、ハンドルの端部と連結ピンを介して外端に連結され、ハンドルと上下の解錠レバーと扉とで平行四辺形リンクを構成し、ハンドルの押す或いは引く操作で解錠レバーが揺動するもので、この解錠レバーの先端を上記作動片とする構成としてもよい。
さらに、上記構成に相似した本出願人が先に出願した特開2006−193944号公報に開示されたハンドル装置の取手のような構造としても良く、すなわち扉面に固定された台座に対し、縦長で鉛直方向に延在される取手が扉面に平行となって設けられ、この取手が扉面に対して離間方向或いは近接方向に操作可能とされ、この操作に連動して台座内の操作片が揺動し、扉内のラッチ機構に伝達される構造としてもよい。
また、上記公報の構造と同様な縦長な杆状の把手よりなり、上下両端には扉面に向かって延設される揺動腕を有し、これら揺動腕が扉面に対して支軸を介して揺動自在に設けられて、この支軸を介して取手が扉面に対し接離方向に移動自在となり、揺動腕には扉内に延出する作動片が延設する構造としてもよい。
上記各例のように、本発明では、扉の開閉のための操作によって作動する把手19を備えた構造で、錠箱43内部に突出する作動片29(室内側作動片39,室外側作動片37)の移動方向を上記各実施の形態と同様の方向とするように、把手19の動作方向と作動片29の動作方向を連動させて変換する機構、例えば把手やハンドルのスライド動作を作動片の揺動に変換する機構や、把手やハンドルが軸支されその回転や揺動の方向の動作を作動片の揺動や移動に変換する機構などを介設させる構成を備えるものとすれば良い。いずれの把手構造であっても、扉の表裏から扉内方向に突出する作動片を具備し、その先端が同方向に移動する構成とされれば、上述同様の操作感で同様の効果を得られるものである。
11…錠装置
19…把手(グリップ)
23…扉
25…把手軸
27…端部(他端)
29…作動片
37a,39a…先端
53…カム板
55…ラッチ
57…連動機構
59…突出杆
61…支軸
65…腕部
67…第一座部
69…第二座部
71…連動補助部材
71a…基端
77…軸部
81…木口
97…揺動部材
99…揺動軸
101…揺動端
105…規制部
115…当接部
本発明は、例えばマンションなどの高層階の玄関や気密化された部屋の出入口等に設けられ、部屋の内外に生じてしまった気圧差による開閉操作の不具合を解消するための錠装置に関する。
マンションなどの住居においては、近年では高気密化されていることから、居室内の換気扇などの運転により、室外に比べ室内の気圧が低下し、すなわち室内外で気圧差が生じてしまい、玄関ドアの開放時に大きな力が必要となることがある。このような場合、特に高齢者や子供などは、ドアの開放が困難となる。
従来、上記のような不具合を解消するために、種々の機構が案出されている。例えば、以下に示す特許文献1や特許文献2では、ハンドル裏面に突出するレバーや、ハンドル軸から突出するこじ開け杆などを設けている。これらは、室内外の気圧差で扉の開放が困難となった場合、レバーをハンドルとともに握り、突出杆を建物側の当接部に当接して扉自体を開放方向に移動させたり、こじ開け杆を建物側反力部材の傾斜面に当接し、こじ開け杆に反力部材から反力を生じさせて扉自体を開放方向に移動させたりする。これにより、扉と建物側枠体の間をこじ開けるようになり、扉と建物側枠体との間に隙間を生じさせ、室内外の気圧差を解消させている。
特許第4034216号公報
特開2005−127044号公報
しかしながら、ハンドルと別体にレバーを設ける機構は、部品点数が多くなり、レバーが表出するため見栄えも悪く、扉を開放させる操作としてレバーも操作が必要となるなど操作性もよくなかった。また、こじ開け杆をハンドル軸から突出させる機構は、突出杆や反力部材が表出するため、見栄えが悪く、人の通過時にこれら部品に引っ掛かったり、或いは操作時に双方の部材間に指などを挟む虞もあった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、少ない部品数で、見栄え良く扉の内外の差圧解消が行えて、扉の開放操作を容易なものとする錠装置を提供することにある。
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠装置11は、扉23の木口81側より進退自在なラッチ55を有し、該ラッチ55の進出状態の保持及び該保持状態の解除を行う連動機構57を備え、前記扉23の表裏面に設けられる把手19にて、前記扉23を開く操作を行うことにより、前記連動機構57を介して前記ラッチ55を後退或いは後退を許容させるとともに前記扉23の開放が行われる扉23の構造において、
前記把手19は前記扉23の表裏面に配設されて、該扉23の表裏面に対し所定方向に操作自在となり、
それぞれの前記把手19には該把手19に連動する作動片29が前記扉内方向に突設されるとともに、各作動片29の先端(37a,39a)の移動方向が同方向とされて設けられ、
前記扉23の木口81側より突出自在な突出杆59と、
前記把手19の操作に前記作動片29を介して支軸61回りに従動回転し、前記連動機構57による前記ラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに、前記突出杆59を突出させるカム板53と、
建物側枠体117に配設され、前記突出杆59の突出時に当接し、該突出杆59の突出方向に対して略直交する前記扉23の開放方向へ、前記突出杆59の突出とともに前記扉23を揺動させる当接部115と、
を具備することを特徴とする。
この錠装置11では、把手19が扉23の表裏面に対して所定の方向に操作自在に設けられており、例えば把手19は上下方向を長手方向とされ、その一端21が扉23の表裏面に平行な横方向の把手軸25に支持されて揺動自在となる。この把手19を、扉23の開く方向に操作、例えば押す或いは引く操作を行うと、作動片29を介してカム板53が従動して回転し連動機構57によるラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに突出杆59を突出させる。この突出杆59を建物側枠体117に設けた当接部115に当接させて、互いの当接により生じる開放方向の扉23の移動にて、扉端縁と建物側の端縁との間に間隙を生じさせ、室内外の気圧差を解消させることができる。
請求項2記載の錠装置11は、扉23の木口81側より進退自在なラッチ55を有し、該ラッチ55の進出状態の保持及び該保持状態の解除を行う連動機構57を備え、前記扉23の表裏面に対して接離方向に移動自在とされて設けられる把手19を、前記扉23の開く方向に押す或いは引くことにより、前記連動機構57を介して前記ラッチ55を後退或いは後退を許容させるとともに前記扉23の開放が行われる扉23の構造において、
前記把手19は前記扉23の表裏面に配設されて、該扉23の表裏面に対し接離方向に移動自在となり、
それぞれの前記把手19には該把手19に連動する作動片29が前記扉内方向に突設されるとともに、各作動片29の先端(37a,39a)の移動方向が同方向とされて設けられ、
前記扉23の木口81側より突出自在な突出杆59と、
前記把手19の押し引き動作に前記作動片29を介して支軸61回りに従動回転し、前記連動機構57による前記ラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに、前記突出杆59を突出させるカム板53と、
建物側枠体117に配設され、前記突出杆59の突出時に当接し、該突出杆59の突出方向に対して略直交する前記扉23の開放方向へ、前記突出杆59の突出とともに前記扉23を揺動させる当接部115と、
を具備することを特徴とする。
この錠装置11では、把手19が扉23の表裏面に対して接離自在に移動自在に設けられており、例えば把手19は上下方向を長手方向とされ、その一端21が扉23の表裏面に平行な横方向の把手軸25に支持されて揺動自在となる。この把手19を、扉23の開く方向に押す或いは引くと、作動片29を介してカム板53が従動して回転し連動機構57によるラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに突出杆59を突出させる。この突出杆59を建物側枠体117に設けた当接部115に当接させて、互いの当接により生じる開放方向の扉23の移動にて、扉端縁と建物側の端縁との間に間隙を生じさせ、室内外の気圧差を解消させることができる。
請求項3記載の錠装置11は、請求項1又は請求項2記載の錠装置11であって、
前記カム板53は、扉厚み方向に沿う方向の支軸61に回動自在に支持され、該支軸61を中心とした半径方向外側に腕部65と、第一座部67と、第二座部69と、が突設され、前記腕部65が前記突出杆59を突出させ、前記第一座部67と、前記第二座部69とには前記一対の把手19からの各作動片29が当接することを特徴とする。
この錠装置11では、扉表裏面のいずれかの把手19が扉23の開く方向に押され或いは引かれると、把手19の作動片29が第一座部67又は第二座部69を押圧し、カム板53が回転される。カム板53が回転することで、カム板53が連動機構57を介してラッチ55の後退を許容させるとともに突出杆59を突出させる。
請求項4記載の錠装置11Aは、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の錠装置11であって、
一対の前記作動片29のそれぞれが上下動自在となり、
前記一対の作動片29を内側に配置させたコ字状の連動補助部材71Aが該一対の作動片29のいずれかの下降にて下向きに移動されて該連動補助部材71Aを介して前記カム板53が回転することを特徴とする。
この錠装置11Aでは、上下動自在となる一対の作動片29が、コ字状に形成した連動補助部材71Aの内側に配置され、いずれの作動片29が作動しても連動補助部材71Aが同様に下降される。これにより、カム板53の支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作が一つの連動補助部材71Aの上下動作となる。
請求項5記載の錠装置11は、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の錠装置11であって、
前記カム板53の支軸61を中心とした半径方向の内側と外側に配置された一対の前記作動片29が上下動自在となり、
内側の作動片29が前記カム板53を直接回転させ、
外側の作動片29が、基端71aを前記支軸61と同方向の軸部77で回動自在に支持された連動補助部材71を介して前記カム板53を揺動させることを特徴とする。
この錠装置11では、半径方向の外側に配置される作動片29が、連動補助部材71を介して、半径方向の内側に配置される作動片29に近接してカム板53を揺動させるので、カム板53に入力されるモーメントの差を極めて小さくできる。
請求項6記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1項に記載の錠装置11であって、
前記ラッチが、反転ラッチ55であることを特徴とする。
この錠装置11では、ラッチが、通常の木口81側からの進退移動のみでなく、扉23の上下に沿う方向のラッチ軸回りにも回転する反転ラッチ55となる。通常のラッチでは進退方向と平行な衝止面が、ラッチの後退によらなければストライク板83の係止穴85から離脱されないが、反転ラッチ55では上記ラッチ軸回りに回転することで、係止穴85からの離脱が可能となる。
請求項7記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1項に記載の錠装置11であって、
前記連動機構57は、前記支軸61と同方向の揺動軸99にて揺動自在に支持される少なくとも一つの揺動部材97を有し、
前記揺動部材97は、前記カム板53の開扉時回転によって前記揺動軸99を挟む一方の揺動端が押圧され、前記揺動軸99を挟む他方の揺動端に設けられた規制部105が前記ラッチ55から離脱して前記ラッチ55の進出状態の保持を解除することを特徴とする。
この錠装置11では、揺動部材97の一方の揺動端がカム板53に押圧され、揺動部材97の他方の揺動端に設けられた規制部105がラッチ55から離脱する。ラッチ55は規制部105が離脱することにより後退が可能となる。
本発明に係る請求項1記載の錠装置によれば、開閉操作用の把手とは別体にレバーを設けたり、こじ開け杆をハンドル軸から突出させたりする必要がなくなり、少ない部品数で、見栄え良く扉の内外の差圧解消を行うことが可能となる。すなわち、扉の開放操作を通常の把手による開閉操作のみで容易に行えるものとすることができる。
請求項2記載の錠装置によれば、開閉操作用の把手とは別体にレバーを設けたり、こじ開け杆をハンドル軸から突出させたりする必要がなくなり、少ない部品数で、見栄え良く扉の内外の差圧解消を行うことが可能となる。すなわち、扉の開放操作を通常の把手による開閉操作のみで容易に行えるものとすることができる。
請求項3記載の錠装置によれば、それぞれの把手による連動機構の駆動と、突出杆の駆動とを一つのカム板を用いて行うことができ、部品点数を増やすことなく、扉の開動の助勢が行われる。
請求項4記載の錠装置によれば、カム板の支軸から半径方向に内外で配置される一対の作動片の上下動作を、一旦、一つの連動補助部材の上下動作に変換できるので、カム板に入力されるモーメントを略同一にできる。
請求項5記載の錠装置によれば、支軸から半径方向に内外で配置される一対の作動片のうち、半径方向の外側に配置される作動片が、連動補助部材を介して、半径方向の内側に配置される作動片に近接してカム板を揺動させるので、カム板に入力されるモーメントの差を極めて小さくできる。
請求項6記載の錠装置によれば、カム板の回転をラッチ後退に変換するための大きな変換スペースを確保する必要がなくなる。
請求項7記載の錠装置によれば、カム板の回転を、少ない部品でラッチの保持状態の解除動作に変換できる。
本発明に係る錠装置の縦断面図である。
図1の要部拡大図である。
図2に示した錠箱の正面図である。
(a)は当接部の縦断面図、(b)は正面図、(c)は水平断面図である。
把手が押された錠装置の要部拡大図である。
(a)は把手が押された錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのA−A断面図である。
把手が引かれた錠装置の要部拡大図である。
把手が引かれた錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのB−B断面図である。
コ字状の連動補助部材を備えた変形例による錠箱の正面図である。
把手が開扉操作された図9に示す錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのC−C断面図である。
連動補助部材を省略した変形例による錠装置の正面図である。
把手が開扉操作された図11に示す錠箱の正面図、(b)は当接部と共に表したそのD−D断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る錠装置の縦断面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2に示した錠箱の正面図、図4(a)は当接部の縦断面図、(b)は正面図、(c)は水平断面図である。
本実施の形態に係る錠装置11は、扉23の表裏面である室外面13及び室内面15に、把手としてのグリップ19が上下方向を長手方向として設けられ、扉23の内外面13,15に対し略平行となって接離方向に移動自在とされ、本実施の形態では、長手方向の下端となる一端21が扉23の表裏面に平行な横方向の把手軸25に支持されて上端側が揺動自在となる。それぞれの把手19の端部としての他端27には作動片29が設けられる。扉23は、室外方向に開放となる。それぞれの台座31に対するグリップ19は、室内側ではグリップ19が扉面に近接する方向に移動自在であり、すなわち、プッシュグリップ33となり、室外側ではグリップ19が扉面より離れる方向に移動自在となっており、すなわち、プルグリップ35となり、所謂プッシュプル錠を構成している。
一端21が把手軸25に支持されたプルグリップ35とプッシュグリップ33は、他端27が室外側作動片37と室内側作動片39によって移動自在に台座31に支持される。室外側作動片37と室内側作動片39は、T字形状の板部材として形成される。室外側作動片37は、上部の一方が台座31に軸38aにて回動自在に固定され、他方がプルグリップ35に軸38bにて回動自在に連結される。中央延出部41の先端37aは錠箱43の内部に突出する。また、室内側作動片39は、下部の一方が台座31に軸40aにて回動自在に固定され、他方がプッシュグリップ33に軸40bにて回動自在に連結される。中央延出部41の先端39aは錠箱43の内部に突出する。図2に示すように、木口81側から見て、室内側作動片39の先端39aは手前側、室外側作動片37の先端37aは奥側となって前後で重なっており、各先端37a,39aは各グリップ33,35の操作で下方向へ揺動する。
プルグリップ35は室外側バネ45によって扉23に接近する方向に付勢され、プッシュグリップ33は室内側バネ47によって扉23から離反する方向に付勢されている。錠箱43には、扉23の室側に表出するシリンダ錠49と、扉23の室内側に表出するサムターン51とが接続されている。
図3に示すように、錠箱43には、カム板53と、ラッチ55と、連動機構57と、突出杆59とが配設されている。カム板53は、グリップ19の押し引き動作に従動して一方向(図3の時計回り)に回転し、連動機構57によるラッチ55の進出状態の保持を解除するとともに、突出杆59を突出させる。カム板53は、この一方向の回転が、開扉時の回転方向となる。
カム板53は、扉厚み方向に沿う方向の支軸61に回動自在に支持され、不図示の回転付勢バネによって同図の反時計回りに付勢される。カム板53は、支軸61を中心とした半径方向外側に腕部65と、第一座部67と、第二座部69と、が突設され、腕部65が突出杆59を突出させる。第一座部67にはプッシュグリップ33の室内側作動片39が当接し、第二座部69にはプルグリップ35の室外側作動片37が連動補助部材71を介して当接する。カム板53には弧状のガイド穴73が形成され、ガイド穴73は錠箱43に立設された支柱75にガイドされる。
錠装置11は、カム板53の支軸61を中心とした半径方向の内側と外側に配置された室内側作動片39と室外側作動片37が上下動自在となり、内側の室内側作動片39がカム板53を直接回転させ、外側の室外側作動片37が、支軸61と同方向の軸部77で基端71aを回動自在に支持された連動補助部材71を介してカム板53を揺動させる。半径方向の外側に配置される室外側作動片37が、連動補助部材71を介して、半径方向の内側に配置される室内側作動片39に近接してカム板53を揺動させるので、カム板53に入力されるモーメントの差を極めて小さくしている。腕部65は、開扉時回転側と反対側の面をストッパ79に当接し、カム板53の反時計回りの回転を所定範囲に規制する。
ラッチ55は、本実施の形態では、反転式ラッチ(以下、ラッチ55を「反転ラッチ55」と称す。)とされる。すなわち、閉扉動作時には、一般的なラッチ錠と同様にストライク板当接時に錠箱43内に後退し、開扉時には、反転動作して解錠及び開扉が行えるものである。反転ラッチ55は、通常の木口81からの進退移動のみでなく、扉23の上下に沿う方向のラッチ軸63回りにも回転する。通常のラッチ55では進退方向と平行な衝止面が、ラッチの後退によらなければ図4に示すストライク板83の係止穴85から離脱されないが、反転ラッチ55では上記ラッチ軸63回りに回転することで、係止穴85からの離脱が可能となる。この反転ラッチ55は、ラッチ本体87と、ガイド部89とで構成されている。
ラッチ本体87は、先端が、衝止面と、この衝止面に対し所定の角度に斜めに形成されるガイド面(図示せず)とで略三角形状とされ、上下両端面にラッチ軸63が突設されている。そして、錠箱43のフロント板裏面からその周縁部に両ラッチ軸が掛かり、このフロント板93より先端が突出する。
ラッチ本体87には、圧縮コイルバネなどの図示しない付勢部材が後端側に配設され、先端が常にフロント板93より突出するよう付勢されている。通常時、ラッチ本体87は、フロント板93から突出した状態で、衝止面が扉面と平行となり、相手側のストライク板83の係止穴85に係合する。すなわち扉23の開放を規制する。また、閉扉動作時には、ストライク板83の端縁にガイド面が当接することで、付勢部材の付勢力に抗してフロント板93よりガイド部89内を真っ直ぐ後退する。また、開扉時には、後述する連動機構57によって、ラッチ本体87に対する規制が解除されて、ラッチ本体87は衝止面がストライク板83の係止穴縁部に当接し、ラッチ軸63を揺動中心として、ガイド部89内で反転動作が可能となり、且つラッチ本体87の後退が許容され、これによりフロント板93より後退して扉23が開放可能となる。
本実施の形態では、ラッチを反転ラッチ55とすることにより、カム板53の回転をラッチ後退に変換するための大きな変換スペースを確保する必要がなくなる。
連動機構57は、上記反転ラッチ55と、カム板53との間に介設される。この連動機構57は、本実施の形態では、それぞれ略L字状に形成された複数の揺動部材97を組み合わせて構成され、反転ラッチ55の後端側に配設される。各揺動部材97は、それぞれ揺動軸99にて揺動自在に錠箱43内に配置される。連動機構57は、少なくとも一つの揺動部材97(図3中、下側の揺動部材97)を備えればよい。下側の揺動部材97は、カム板53の開扉時回転によって揺動軸99を挟む一方の揺動端101がカム平坦面103によって押圧され、図3の反時計回りに回転する。これにより、揺動軸99を挟む他方の揺動端に設けられた規制部105がラッチ本体87に係止状態ではラッチ本体87の真直な進退のガイドを行い、ラッチ本体87から離脱すると反転ラッチ55の揺動規制状態の保持を解除するようになっている。
本実施の形態では一対の揺動部材97が設けられ、図3の下側の揺動部材97の解除揺動(反時計回りの揺動)が係合部107を介して上側の揺動部材97の解除揺動(時計回りの揺動)として伝達されるようになっている。また、上側の揺動部材97はバネ109により反時計回りに付勢される。この付勢力は、係合部107によって下側の揺動部材97の時計回りの付勢力として伝達される。
カム板53が一方向(図3の時計回り方向)に回転されると、下側の揺動部材97の一方の揺動端101がカム平坦面103に押圧され、双方の揺動部材97に設けられた規制部105がラッチ本体87から離脱する。これにより、反転ラッチ55、規制部105が離脱することにより揺動及び後退が可能となる。このように、錠装置11では、カム板53の回転を、少ない部品で反転ラッチ55の保持状態の解除動作に変換できるようになっている。
突出杆59は、錠箱43内のガイド軸111によってスライド移動自在となり、先端がフロント板93より進退自在に配設されている。この突出杆59は、略角柱状に形成され、長手方向を扉面に沿わせて配置され、圧縮コイルバネなどよりなる付勢部材95によって、通常時、先端部分がフロント板93より突出しない状態を維持している。突出杆59の先端は、本実施の形態では、扉23の閉鎖方向側となる側面を所定角度、本実施の形態では約45°の斜面とされ、略くさび状に形成されている。また、この突出杆59の基端は、図3に示したように腕部65の開扉時回転側の面に押圧される。
図4に示すように、当接部115は、建物側の枠体117におけるストライク板83の下部に配設される。この当接部115は、本実施の形態では、支持ブラケット119と、ローラ121とで略構成されている。支持ブラケット119は、枠体117に形成された凹部123に固設され、この凹部底面に対して、扉23の木口81に向かって延出するように構成される。ローラ121は支持ブラケット119の先端に設けられており、軸を扉23の木口81に沿わせ垂直方向とされて回転自在に配設されている。
この支持ブラケット119が固設される凹部123は、ストライク板83の板面よりも深く、扉23の木口81より離間した位置を底面とする形状に構成されるとともに、扉23の開放方向側が開口した形状とされ、建物側枠体117としては、室外側に向かう段部のように形成される。なお、この支持ブラケット119の延出位置は、閉扉状態の木口81における突出杆59の中心線上ではなく、突出杆59の最先端に近接した、やや偏芯した位置とされている。そして、突出杆59は、突出動作が行われることで、支持ブラケット先端のローラ121に当接し、このローラ121の回転と、突出杆先端の斜面とで、ローラ121に対して突出杆59側を進出方向に対して略直交方向に移動させるようになっている。
次に、上述のように構成された錠装置11の動作について説明する。
図5はプッシュグリップ33が押された錠装置11の要部拡大図、図6(a)はプッシュグリップ33が押された錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのA−A断面図、図7はプルグリップ35が引かれた錠装置11の要部拡大図、図8はプルグリップ35が引かれた錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのB−B断面図である。
扉23は、反転ラッチ55がストライク板83の係止穴85に係止することで閉扉される。この閉扉時、扉23は、枠体117との間に設けられた気密部材であるパッキン(図示せず)を介して密着される。
閉扉時において、室内と室外とで気圧差が生じ、扉23の開放が困難となった状態で、扉表裏面のいずれかのグリップ19が扉23の開く方向に押され或いは引かれると、グリップ19の作動片29が第一座部67又は第二座部69を押圧する。
図5に示すよう、例えば室内側のプッシュグリップ33が押され、室内側作動片39が移動すると、図6に示すように、カム板53が一方向(図6の時計回り)に回転される。また、図7に示すように、室外側のプルグリップ35が引かれ、室外側作動片37が移動すると、図8に示すように、カム板53が連動補助部材71を介して一方向(図8の時計回り)に回転される。
カム板53が一方向に所定角度θ(例えば26.2°)回転すると、腕部65の開扉時回転側の面が突出杆59の後端面129に当接する。同時に、連動機構57によって規制部105が揺動を開始し、ラッチ本体87から退きラッチ本体87に対する規制状態が解除される。すなわち、室内と室外とで気圧差が生じていない場合には、この状態で開扉へと移行可能となる。このことから、気圧差の無い場合にはグリップ19への初期の操作、すなわちグリップ19の傾きが浅い状態で開放へと導くことができる。気圧差が生じている場合には、重たく感じる扉23をグリップ19への操作力として開放方向へグリップ19に対して力を加える操作、すなわちグリップ19の押す或いは引く操作をさらに続けることとなる。
さらにグリップ19が押され或いは引かれ、グリップ19の揺動に連動して、突出杆59が進出を始めると、その先端が当接部115のローラ121に当接する。突出杆59は、カム板53が所定角度回転して回転規制されるまで進出する。カム板53は、腕部65が揺動軸99の外周に当接することで時計回りの回転が規制される。この進出によって突出杆先端の斜面113が当接部115のローラ121に当接して、ローラ121の回転によって斜面113が扉23の開放方向に移動し、扉自体を開放方向に移動させる。
このような、突出杆59の先端の斜面113と、当接部115のローラ121の構成によれば、互いの接触時が線接触となるとともに、ローラ121が回転することで、突出杆59の進出移動を助勢できることとなって、扉23の開放方向への移動をスムーズなものとなる。
これにより、扉23の室内側面における端縁と、建物側枠体117との間を、こじ開けるようになり、このことから、扉23の端縁と枠体117との間に数mm〜十数mmの隙間を生じさせ、室内外の気圧差を解消させることとなる。本実施の形態では、突出杆59が約17mm進出し、この突出杆59の斜面113と当接部115のローラ121により、約12mm扉が開放方向に動き、グリップ19の揺動操作のみという大きな力を必要としない操作で扉23の開放を始めることが可能となる。
同時に、このグリップ19の揺動操作により、錠箱43内にて連動機構57を介して規制部105を離脱させ、反転ラッチ55に対する規制状態が解除状態となる。その後、グリップ19を、室外側からは引く、室内側からは押す、操作で、反転ラッチ55は反転して後退し、扉23が開放となる。このときの開放は、上記気圧差の解消後であることから、小さな力で開放操作が可能となる。
すなわち、グリップ19の揺動を連動機構57に伝える構成としたので、グリップ19の揺動から扉23の開放への操作をスムーズに行うことができ、この扉23の開放時に、気圧差解消のための操作を有することを意識しなくとも、扉23の開放操作を容易なものとすることができる。
このように構成された錠装置11では、マンションなどの高層住宅などにおける玄関ドアなどの扉23において、室内と室外とで気圧差が生じ、扉23の開放が困難になった場合、扉面に配設されたグリップ19を揺動させることで、カム板53が従動して一方向に回転し連動機構57による反転ラッチ55の進出状態の保持及び規制を解除するとともに、突出杆59を突出させる。この突出杆59を建物側枠体117に設けた当接部115に当接させて、互いの当接により生じる開放方向の扉23の移動にて、扉端縁と建物側の端縁との間に間隙を生じさせ、室内外の気圧差を解消させる。これにより、扉23は、気圧差による開放困難が解消されて、小さな力で開放を行うことが可能となる。
なお、上述した実施の形態では、突出杆59の先端に斜面113を設け、建物側枠体117にローラ121を備えた当接部115を設けた構成の例について述べたが、これら突出杆59と当接部115とは、その他の構成としてもよく、例えば、突出杆59の先端に回転自在なローラ121を設け、建物側枠体117に斜面113を設ける構成としてもよい。この場合、突出杆59の先端が進出するに伴い、斜面113に沿ってローラ121が転動し、これにより、扉23を開放する方向に移動させることができ、このことから、上記同様に室内外に気圧差があった場合などに、これを解消できることとなる。
次に、上記した錠装置11の変形例を説明する。
図9はコ字状の連動補助部材71Aを備えた変形例による錠箱43の正面図、図10はプルグリップ35が開扉操作された図9に示す錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのC−C断面図である。なお、以下の各変形例において、図1〜図8に示した同等の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
この錠装置11Aは、一対の作動片29のそれぞれが上下動自在となり、一対の作動片29を内側に配置させたコ字状の連動補助部材71Aが一対の作動片29のいずれかの下降にて下向きに移動されて連動補助部材71Aを介してカム板53Aが回転する。連動補助部材71Aは、折り曲げ片125が水平当接面137を押下する。
この錠装置11Aでは、上下動自在となる一対の作動片29が、コ字状に形成した連動補助部材71Aの内側に配置され、いずれの作動片29が作動しても連動補助部材71Aが同様に下降される。カム板53Aの支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作が一つの連動補助部材71Aの上下動作となる。これにより、カム板53Aの支軸61から半径方向に内外で配置される一対の作動片29の上下動作を、一旦、一つの連動補助部材71Aの上下動作に変換できるので、カム板53に入力されるモーメントを略同一にできる。
次に、上記した錠装置11の他の変形例を説明する。
図11は連動補助部材71、71Aを省略した変形例による錠装置11Bの正面図、図12はプルグリップ35が開扉操作された図11に示す錠箱43の正面図、(b)は当接部115と共に表したそのD−D断面図である。
この錠装置11Bは、カム板53Bが単純形状に形成される。すなわち、カム板53には第一座部67、第二座部69が形成されず、その代わりに水平当接面137が形成されている。水平当接面137には室内側作動片39、室外側作動片37が当接している。
この錠装置11Bでは、室内側作動片39と室外側作動片37とにストロークの差が必要になるが、連動補助部材71、71Aを不要にでき、カム板53Bの形状も簡単にして、構造を簡素にすることができる。
したがって、上記した実施の形態に係る錠装置11、11A、11Bによれば、開閉操作用の把手19とは別体にレバーを設けたり、こじ開け杆をハンドル軸から突出させたりする必要がなくなり、少ない部品数で、見栄え良く扉23の内外の差圧解消を行うことが可能となる。すなわち、扉23の開放操作を通常の把手19による開閉操作のみで容易に行えるものとすることができる。室外側と室内側とで作動片29の位置が支軸61を中心とした半径方向で異なる構造であっても、連動補助部材71、71Aを設けることで、同じような操作感を得ることができる。
なお、上述した各実施の形態では、把手19の構成として、下端である一端に把手軸25を設け上端側が揺動することで把手19自体が扉面に対して接離方向に移動する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、その他の把手構造としても機能するものである。
例えば、本出願人が先に出願した特開2002−70386号公報に開示されたハンドル状の構成、すなわち、ドアの壁面に固定される取付け座に軸支されて揺動自在となるレバー状などの把手部を有したアウターハンドル及びインナーハンドルよりなり、これらハンドルにそれぞれ一体な駆動カム部材を介し、ハンドルの操作による揺動を作動片29に伝える構成としてもよい。
また、本出願人が先に出願した特開2002−213114号公報に開示された構成、すなわち、扉に装着された台座に支承される回動可能な操作軸に設けられたノブやレバーハンドルなどを操作部材とし、このレバーハンドル等による操作で回転する操作軸に駆動板を一体的に装着する構造とするとともに、駆動板には作動部が突設され、台座内で上下に摺動自在なスライダに係止することで、作動部の回転移動がスライダを上方或いは下方に移動させる、すなわち回転直線変換機構を構成して、そのスライダと作動片29とを一体構造とされて、操作部材の操作から伝達が行われる構成としてもよい。
さらに、本出願人が先に出願した特開2006−2516号公報に開示された真直なハンドルによる把手の構造、すなわち、扉の壁面に所定間隔離間して固定された2つの台座部材に案内される2つの摺動腕を有する中空なハンドルを具備し、このハンドルは扉面に上下方向で長尺とされ、扉面に対して水平方向に操作可能となっており、台座部材内に固定支軸にて揺動自在に設けられたL型状の駆動レバーを備え、この駆動レバーの垂直部分をピン状案内部を介して摺動腕と連係し、そして、ハンドルの操作により上下の摺動腕に連動して台座部材内の駆動レバーを揺動とし、この駆動レバーの水平部分を上記作動片とする構成としてもよい。
また、本出願人が先に出願した特開2006−22541号公報に開示されたハンドル装置の構造、すなわち、扉面に対して接離自在となって配設される丸棒形状のハンドルよりなり、このハンドルの上下両端には扉面との間にカバーを有し、このカバー内部にてリンク装置が設けられており、リンク装置を構成する解錠レバーが錠箱内のラッチ機構に臨ませたレバー体で、解錠レバーはカバーに軸支され揺動自在となっており、ハンドルの端部と連結ピンを介して外端に連結され、ハンドルと上下の解錠レバーと扉とで平行四辺形リンクを構成し、ハンドルの押す或いは引く操作で解錠レバーが揺動するもので、この解錠レバーの先端を上記作動片とする構成としてもよい。
さらに、上記構成に相似した本出願人が先に出願した特開2006−193944号公報に開示されたハンドル装置の取手のような構造としても良く、すなわち扉面に固定された台座に対し、縦長で鉛直方向に延在される取手が扉面に平行となって設けられ、この取手が扉面に対して離間方向或いは近接方向に操作可能とされ、この操作に連動して台座内の操作片が揺動し、扉内のラッチ機構に伝達される構造としてもよい。
また、上記公報の構造と同様な縦長な杆状の把手よりなり、上下両端には扉面に向かって延設される揺動腕を有し、これら揺動腕が扉面に対して支軸を介して揺動自在に設けられて、この支軸を介して取手が扉面に対し接離方向に移動自在となり、揺動腕には扉内に延出する作動片が延設する構造としてもよい。
上記各例のように、本発明では、扉の開閉のための操作によって作動する把手19を備えた構造で、錠箱43内部に突出する作動片29(室内側作動片39,室外側作動片37)の移動方向を上記各実施の形態と同様の方向とするように、把手19の動作方向と作動片29の動作方向を連動させて変換する機構、例えば把手やハンドルのスライド動作を作動片の揺動に変換する機構や、把手やハンドルが軸支されその回転や揺動の方向の動作を作動片の揺動や移動に変換する機構などを介設させる構成を備えるものとすれば良い。いずれの把手構造であっても、扉の表裏から扉内方向に突出する作動片を具備し、その先端が同方向に移動する構成とされれば、上述同様の操作感で同様の効果を得られるものである。
11…錠装置
19…把手(グリップ)
23…扉
25…把手軸
27…端部(他端)
29…作動片
37a,39a…先端
53…カム板
55…ラッチ
57…連動機構
59…突出杆
61…支軸
65…腕部
67…第一座部
69…第二座部
71…連動補助部材
71a…基端
77…軸部
81…木口
97…揺動部材
99…揺動軸
101…揺動端
105…規制部
115…当接部