JP2012094826A - 静電チャック及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化イットリウムアルミニウム結晶相(A)又は酸化イットリウムアルミニウムのイットリウムの一部をイットリウムでない希土類元素で置換してなる結晶相(B)と、イットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物結晶相(C)とを含む複合酸化物焼結体を含み、X線回折プロファイルに基づき所定の式で算出される結晶相(C)の含有率が0.05%以上10%以下である静電チャック及びその製造方法である。
【選択図】なし
Description
このチャック装置としては、従来真空チャック方式やメカニカルクランプ方式が採用されてきたが、近年の半導体製造プロセスの高度化に伴い、半導体ウェハを静電引力(クーロン力)により吸着する静電チャック(Electro Static Chuck:ESC)方式が用いられるようになってきている。この静電チャック方式は、ウェハ平面度の矯正や均熱等の面において、従来の真空チャック方式やメカニカルクランプ方式に比べ優れた特性を発揮する。静電チャックの動作特性としては、電圧を印加している間は大きなチャッキング力を発生して被吸着物の落下等を防止し、電圧印加を解除したならば直ちにチャッキング力を小さくして被吸着物を容易に取外し得ることが望ましい。
そこで、静電チャック用の耐食性材料として、例えば、イットリウムアルミニウム・ガーネットやイットリウムアルミニウム・ガーネットにイットリウムを除く希土類酸化物を添加したものが使用されている(例えば、特許文献2参照)。
また、特許文献2に記載の方法によれば、酸化イットリウムアルミニウム材料が静電チャックとして十分な吸着力と加工性を保持することが可能とされるが、実際に静電チャックとして直径が300mm以上の大型品を製造しようとすると、その工程において製造される焼結体の中心と周辺とで粒径や酸素欠陥量を制御するのは困難な場合があり、静電チャック面内での吸着力の不均一による半導体製品の歩留り低下を招きやすくなる。そのため、面内の特性均一化のためにポストアニール等の後処理工程が必要となりコストアップを余儀なくされてしまう。
[1] 酸化イットリウムアルミニウム結晶相(A)又は酸化イットリウムアルミニウムのイットリウムの一部をイットリウムでない希土類元素で置換してなる結晶相(B)と、イットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物結晶相(C)とを含む複合酸化物焼結体を含み、X線回折プロファイルに基づき下記式(1)で算出される前記結晶相(C)の含有率が、0.05%以上10%以下である静電チャック。
結晶相(C)の含有率(%)=〔(結晶相(C)に基づく最高ピークの強度)/(酸化イットリウムアルミニウムに基づく最高ピークの強度)〕×100 ・・・ (1)
[3] 前記結晶相(C)の結晶構造が、斜方晶系結晶相及び三方晶系結晶相のうちの少なくとも1種からなる[1]又は[2]に記載の静電チャック。
(a)原料粉体を溶媒中に分散させたスラリーを調製するスラリー調製工程と、(b)前記スラリーを造粒し顆粒とした後、該顆粒を所定形状の成型体とする成型工程と、(c)前記成型体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記スラリー調製工程における前記原料粉体が、酸化アルミニウム粉体、酸化イットリウム粉体、及びイットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物の粉体である静電チャックの製造方法。
<静電チャック>
本実施形態の静電チャックは、酸化イットリウムアルミニウム結晶相(A)又は酸化イットリウムアルミニウムのイットリウムの一部をイットリウムでない希土類元素で置換してなる結晶相(B)と、イットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物結晶相(C)とを含む複合酸化物焼結体を含み、X線回折プロファイルに基づき下記式(1)で算出される前記結晶相(C)の含有率が、0.05%以上10%以下となっている。
このことに鑑み、種々の試行錯誤によって、誘電率が1MHz以下の周波数領域で10未満、かつ1kHz以下の周波数領域において30未満であっても、例えば原料としてREAlO3を導入し焼結体内にREAlO3が存在させることにより、十分な吸着力が得られることを見出したものである。
これは、焼結体内にREAlO3が所定量存在すると、このREAlO3による新たな導電層が形成され、焼結体内に含まれる酸化イットリウムアルミニウムの体積抵抗率を下げる効果を発現するためと考えられる。そしてその結果、本来酸化イットリウムアルミニウムが誘電分極により発生するクーロン力に加え、電子伝導が関与するジョンソン・ラーベック力が付与されるため、吸着力が上昇するものと推察される。
なおここで、「単相」とは、この複合酸化物焼結体のX線回折パターンにおいて他の成分の存在が認められない状態のことを指称する。したがって、ガーネット型結晶相は5Al2O3・(3−x)Y2O3・xRE2O3(ただし、0.01<x<1.20)なる組成式で表される。
なかでも、サマリウム(Sm)及びガドリニウム(Gd)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの希土類元素を含むことにより、酸化イットリウムアルミニウム単相に比べ耐食性が向上する。
上記REAlO3としては、SmAlO3(REがSm)及びGdAlO3(REがGd)から選択されることが好ましい。また、SmAlO3及びGdAlO3を同時に含んでも良い。これらの化合物を含むことにより十分な吸着力が得られる。
次に、本発明の静電チャックの製造方法について、同様に実施形態により説明する。
本実施形態の静電チャックの製造方法は、前述の本実施形態の静電チャックを製造する方法であって、(a)原料粉体を溶媒中に分散させたスラリーを調製するスラリー調製工程と、(b)前記スラリーを造粒し顆粒とした後、該顆粒を所定形状の成型体とする成型工程と、(c)前記成型体を焼成する焼成工程と、を含むものである。そして、上記スラリー調製工程における原料粉体として、酸化アルミニウム粉体、酸化イットリウム粉体、及びイットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物の粉体を使用する。当該原料粉体には、さらに、イットリウムを除く希土類元素の酸化物粉体を含んでもよい。
以下、各工程を具体的に説明する。
本工程では、各結晶相の原料となる粉体を溶媒中に混合、分散させて、スラリーを調製する。
まず、原料粉末である、酸化アルミニウム粉体、酸化イットリウム粉体、イットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物の粉体、及びイットリウムを除く希土類元素の酸化物粉体の一次粒子の平均粒径は、0.01〜1.0μm程度であることが好ましい。0.01〜1.0μm程度であることで、ハンドリングの低下を防ぎ、焼結性が悪化、密度の低下を防止するとともに、焼結体中の粒子径が大きくなることによる腐食性ガス又はそのプラズマ中での劣化をも有効に防ぐことができる。
原料粉体は、市販のものを使用することができる。
本工程では、前記(a)工程で得られたスラリーを造粒して顆粒とし、さらにこの顆粒を成型体に成型する。
上記スラリーから顆粒形状に造粒する方法は、特に限定されず、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、噴霧乾燥造粒法等の公知の造粒法が挙げられ、造粒装置としては、例えばスプレードライヤー等が好適に用いられる。造粒後の顆粒の粒径は、50μm〜100μmの範囲であることが望ましい。顆粒の平均粒径は、光学顕微鏡を用い、100個の粒子について最大径を測定し、その平均として求めることができる。
次いで、この顆粒を周知の成型手段により所定形状に成型する。
本工程では、上記で得られた成型体を焼成する。
まず、成型体を、大気中、50〜600℃程度にて脱脂した後、大気中あるいは不活性ガス雰囲気中、1400℃〜1800℃程度、好ましくは1550℃〜1750℃にて1〜10時間程度焼成することにより、98%以上の相対密度を有する緻密な焼結体を作製することができる。温度が1400℃未満では焼結が進まず密度が上がらない場合がある。また、1800℃を超えると溶解が起こるため好ましくない。
焼成方法としては、常圧焼成でもよいが、緻密な焼結体を得るためには、ホットプレス、熱間静水圧プレス(HIP)等の加圧焼成法が好ましい。加圧焼成時の加圧力は特に制限はないが、通常、10〜40MPa程度である。
また、前記静電チャック装置においては、たとえば厚さ0.5mmの複合酸化物焼結体層からなる板状体を有する静電チャック部材に、試料載置面温度25℃にて1.5kVの電圧を印加した際の静電吸着力を10〜30kPaとすることができる。
なお、各例における諸特性は、下記に示す方法に従って測定した。
(1)金属酸化物粉末原料の一次平均粒径
透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、機種名:H−800)を用い、50個の粒子について最大径を測定し、その平均として求めた。
(2)焼結体の相対密度
アルキメデス法により、焼結体の密度を測定し、下記式(2)により求めた理論密度に対する割合(相対密度)を算出した。
<理論密度>
理論密度=単位胞重量(g)/単位胞体積(cm3) ・・・(2)
・単位胞重量:(酸化イットリウムアルミニウム結晶相の各単位胞重量×各結晶相のmol%)+(REAlO3結晶相の単位胞重量×各結晶相のmol%)
・単位胞体積:(酸化イットリウムアルミニウム結晶相の各単位胞体積×各結晶相のmol%)+(REAlO3結晶相の単位胞体積×各結晶相のmol%)
なお、酸化イットリウムアルミニウム及びREAlO3の各結晶相のmol%は、原料粉体の仕込み量から算出した。
粉末X線回折法により、X線回折装置として、PANalytial社製、機種名「X'Pert PRO MPD」を用いて、結晶相の同定を行った。表1中、結晶相(I)は酸化イットリウムアルミニウム結晶相を表しており、Gはガーネット型結晶相、Mは単斜晶系結晶相である。また、結晶相(II)はREAlO3結晶相を示しており、Oは斜方晶系結晶相、Tは三方晶系結晶相である。なお、上記同定された結晶相は焼結体の中心及び周辺で共通であった。
また、結晶相(C)(REAlO3結晶相)の含有率は、結晶相(I)及び結晶相(II)の最高ピーク強度比(結晶相(II)/結晶相(I))から、前記式(1)により求めた。
(4)焼結体の比誘電率
40Hzから1MHzの周波数領域における誘電率を、測定機器としてAgilent社製、機種名「Agilent 4294A プレシジョン・インピーダンス・アナライザー」を用いて測定した。焼結体は60mm×60mm×2mmに加工したものを用いた。
(i)焼結体の吸着力
焼結体を厚さ0.5mmに加工し、アルミナセラミックス/電極/焼結体の構成で接着し、試料載置面温度25℃にて印加電圧1.5kV、印加時間60秒、真空中(<0.5Pa)の条件で、1インチのシリコンウエハに対する吸着力を測定した。測定はロードセルを用いた引き剥がしにより行い、そのとき発生した最大引き剥がし応力を吸着力とした。
(ii)焼結体の残留吸着力
焼結体を厚さ0.5mmに加工し、アルミナセラミックス/電極/焼結体の構成で接着し、真空中(<0.5Pa)、試料載置面温度25℃にて、5.0kVの印加電圧を60秒間付与した後、電圧の印加を解除してその直後に測定した。測定は、1インチのシリコンウエハを用いた引き剥がしにより行い、そのとき発生した最大引き剥がし応力を残留吸着力とした。
試料から、JIS R1601に準じる試験片を切り出し、INSTRON社製、機種名「インストロン4206型万能材料試験機」を用い、四点曲げ試験にて曲げ強度(10本平均)を測定した。
なお、(3)X線回折及び(5)吸着力の測定は、直径300mmの焼結体の中心及び周辺において実施した。ここで、中心とは中心点から50mm以内の範囲、及び周辺とは外周から50mm以内の範囲とした。また、(2)相対密度、(4)比誘電率及び(6)四点曲げ強度は周辺で測定した。
(1)SmAlO3粉末の作製
いずれも透過型電子顕微鏡により計測される一次粒子の平均粒子径が0.1μmの市販の酸化アルミニウム(Al2O3)粉末と、市販の酸化サマリウム(Sm2O3)粉末とを、モル比率が50/50となるように秤量し、その後、水を溶媒として周知の分散方法により湿式混合した。得られたスラリーをホットプレート上で蒸発乾固し、乾固物を乳鉢で粉砕した。粉砕した粉末を2分し、1000℃及び1200℃で各々別々に仮焼した後、それぞれタイプI及びタイプIIのSmAlO3粉末とした。得られたSmAlO3粉末は粉末X線回折の結果、タイプIは斜方晶系結晶相であり、タイプIIは三方晶系結晶相であった。
いずれも透過型電子顕微鏡により計測される一次粒子の平均粒子径が0.1μmの市販の酸化アルミニウム(Al2O3)粉末と、市販の酸化ガドリニウム(Gd2O3)粉末とを、モル比率が50/50となるように秤量し、その後、水を溶媒として周知の分散方法により湿式混合した。得られたスラリーをホットプレート上で蒸発乾固し、乾固物を乳鉢で粉砕した。粉砕した粉末を、1200℃で仮焼した後、GdAlO3粉末とした。得られたGdAlO3粉末は粉末X線回折の結果、ペロブスカイト型結晶相であった。
(スラリーの調製)
いずれも透過型電子顕微鏡(TEM)により計測される一次粒子の平均粒子径が0.1μmである、市販の酸化アルミニウム(Al2O3)粉末と、市販の酸化イットリウム(Y2O3)粉末、及び市販の酸化サマリウム(Sm2O3)粉末、市販の酸化ガドリニウム(Gd2O3)粉末を用いて、各々下記表1中の原料(I)に示す組成となるように秤量した。次に、秤量した原料(I)と表1中の原料(II)に示される前記作製したREAlO3(REがSm及びGdの少なくともいずれか)粉末を、それぞれ表中に示す割合で混合した。
これらの混合粉末を、水を溶媒としてアルティマイザーで分散して湿式混合して、混合粉末のスラリーを得た。
その後、このスラリーをスプレードライヤーにて造粒し顆粒とした。次いで、この顆粒を周知の成型手段により所定形状に成型した。次いで、ホットプレスを用いて、アルゴンガス中1600℃にて2時間加圧焼成し、直径が300mmの焼結体とした。なお、この際の加圧力は20MPaである。
得られた焼結体を厚さ0.5mmに加工し、X線回折測定や比誘電率測定に用いるとともに、アルミナセラッミックス/電極/焼結体という構成で接着し吸着力測定評価に用いた。
各実施例、比較例の配合、焼結体の特性をまとめて下記表1に示す。
実施例1のように酸化イットリウムアルミニウム単体にSmAlO3を全体の10質量%添加したものでは、相対密度が99.5%以上で緻密化しており酸化イットリウムアルミニウムはガーネット構造、SmAlO3は斜方晶系構造である。周波数が40Hzの誘電率は12と低いが、吸着力は25kPaと大きな値となっており、また、残留吸着力は0.6kPaと低く、中心と周辺との差もない。
なお、クーロン力型静電チャックの吸着力は以下の式(3)で表され、これより見積もられる計算値では1kPa程度であるので、本実施例の焼結体では25倍ほどの値となっている。
F=1/2ε0εr(V/d)2 ・・・(3)
上記式において、ε0は真空の誘電率であり、εrは誘電体の誘電率であり、Vは印加電圧(V)であり、dは誘電体の厚み(m)である。
また、実施例6〜8では実施例3の希土類元素をSmから一部又は全てGdに変更し、実施例9及び10ではSmAlO3結晶相を斜方晶系結晶相と三方晶系結晶相との混晶、又は三方晶系単相に変更しているが、実施例3と同様に吸着力は高い値となった。さらに実施例11では、酸化イットリウムアルミニウム結晶相をガーネット単相から、ガーネット型結晶相と単斜晶系結晶相の混晶に変更したが、やはり同様の結果となった。
また、上記吸着力の増加により、従来の金属酸化物に比べると誘電体層の厚みを上げることができるため、耐電圧も上がり、操業時の破損のリスクが減る。また、加工中に割れるリスクも減る。
Claims (5)
- 酸化イットリウムアルミニウム結晶相(A)又は酸化イットリウムアルミニウムのイットリウムの一部をイットリウムでない希土類元素で置換してなる結晶相(B)と、イットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物結晶相(C)とを含む複合酸化物焼結体を含み、
X線回折プロファイルに基づき下記式(1)で算出される前記結晶相(C)の含有率が、0.05%以上10%以下である静電チャック。
結晶相(C)の含有率(%)=〔(結晶相(C)に基づく最高ピークの強度)/(酸化イットリウムアルミニウムに基づく最高ピークの強度)〕×100 ・・・ (1) - 前記イットリウムを除く希土類元素が、サマリウム及びガドリニウムのうちの少なくとも1種である請求項1に記載の静電チャック。
- 前記結晶相(C)の結晶構造が、斜方晶系結晶相及び三方晶系結晶相のうちの少なくとも1種からなる請求項1又は2に記載の静電チャック。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電チャックの製造方法であって、
(a)原料粉体を溶媒中に分散させたスラリーを調製するスラリー調製工程と、(b)前記スラリーを造粒し顆粒とした後、該顆粒を所定形状の成型体とする成型工程と、(c)前記成型体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記スラリー調製工程における前記原料粉体が、酸化アルミニウム粉体、酸化イットリウム粉体、及びイットリウムを除く希土類元素−アルミニウム酸化物の粉体である静電チャックの製造方法。 - 前記原料粉体に、さらにイットリウムを除く希土類元素の酸化物粉体を含む請求項4に記載の静電チャックの製造方法。
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