JP2016155704A - 耐食性部材、その製造方法および静電チャック装置 - Google Patents

耐食性部材、その製造方法および静電チャック装置 Download PDF

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宣浩 日▲高▼
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弘訓 釘本
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Abstract

【課題】静電チャック装置に使用した場合、電界を印加したときの吸着力を強くし、電界の印加を停止したときの残留吸着力を弱くすることができる耐食性部材、その耐食性部材の製造方法およびその耐食性部材を含む静電チャック装置の提供。【解決手段】耐食性部材の製造方法は、ReAlO3(Reは希土類元素)の複数の原料粉体を混合して作製した原料混合物の成形体をアルゴン、窒素及びヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種の気体の雰囲気内で、又は減圧雰囲気で焼成する焼成工程、及び焼成工程で焼成した成形体を、900〜1400℃で10〜30時間熱処理する熱処理工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性部材、その耐食性部材の製造方法およびその耐食性部材を含む静電チャック装置に関し、さらに詳しくは、フッ素系腐食性ガス、塩素系腐食性ガスなどのハロゲン系腐食性ガスおよびこれらのプラズマに対して高い耐食性を有する耐食性部材、その耐食性部材の製造方法およびその耐食性部材を含む静電チャック装置に関する。
IC、LSI、VLSIなどの半導体装置の製造ラインには、フッ素系腐食性ガス、塩素系腐食性ガスなどのハロゲン系腐食性ガスおよびこれらのプラズマを用いる工程がある。これらの工程では、静電チャック装置により固定された半導体ウエハに対して、たとえば、ドライエッチング、プラズマエッチング、クリーニングなどの処理が実施される。これらの処理には、CF、SF、HF、NF、Fなどのフッ素系ガスや、Cl、SiCl、BCl、HClなどの塩素系ガス、それらのガスのプラズマなどが使用される。これらの腐食性ガスやプラズマは腐食性が高いため、これらの腐食性ガスやプラズマによる静電チャック装置の腐食が問題となっている。そこで、従来は、静電チャック装置に用いる耐食性材料として、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12、以下、YAGと略す)やイットリウム以外の希土類酸化物を添加したYAGが使用されていた(例えば、特許文献1および2参照)。
特開平10−236871号公報 特開平11−157916号公報
特許文献1および2に記載されている耐食性部材は、フッ素系腐食性ガス、塩素系腐食性ガスなどのハロゲン系腐食性ガスおよびこれらのプラズマに対して高い耐腐食性を有する。これらの耐食性部材は、とくに静電チャック装置に使用されるので、腐食性が高いのみならず、静電チャック装置に使用した場合、電界を印加したときの耐食性部材の吸着力が強く、電界の印加を停止したときの耐食性部材の残留吸着力が弱いことが重要である。そこで、本発明は、静電チャック装置に使用した場合、電界を印加したときの吸着力を強くし、電界の印加を停止したときの残留吸着力を弱くすることができる耐食性部材、その耐食性部材の製造方法およびその耐食性部材を含む静電チャック装置を提供することを目的とする。
従来、ペロブスカイト型化合物の多くは、正方晶、斜方晶、三方晶などの立方格子から歪んだ構造を有しているため、強誘電性を示し、強い電界が印加される静電チャック装置の用途には不適当であると考えられていた。しかし、本発明者らは、ReAlO(Reは希土類元素)は、斜方晶ペロブスカイト型構造(LaAlO型構造)であるにも関わらず、静電チャック装置の用途に好適であることを見出した。さらに、本発明者らは、ReAlO(Reは希土類元素)の酸素欠損δを所定の範囲内になるように調整することによって、静電チャック装置に使用した場合、電界を印加したときの吸着力をさらに強くし、電界の印加を停止したときの残留吸着力をさらに弱くすることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]ReAlO3−δ(Reは希土類元素、0.1≦δ≦0.7)を含む耐食性部材。
[2]δが0.1以上0.5以下である上記[1]に記載の耐食性部材。
[3]Reが、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]または[2]に記載の耐食性部材。
[4]40Hz以下の周波数における比誘電率が45以上であり、損失正接(tanδ)が0.1以下である上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の耐食性部材。
[5]耐食性部材は多結晶体であり、多結晶体における結晶粒の平均粒径が2.0μm以上20μm以下である上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の耐食性部材。
[6]請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐食性部材を含む静電チャック装置。
[7]ReAlO(Reは希土類元素)の複数の原料粉体を混合して作製した原料混合物の成形体をアルゴン、窒素およびヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種の気体の雰囲気内で、または減圧雰囲気で焼成する焼成工程、および 焼成工程で焼成した成形体を、900℃以上1400℃以下で10時間以上30時間以下熱処理する熱処理工程を含む耐食性部材の製造方法。
本発明によれば、静電チャック装置に使用した場合、電界を印加したときの吸着力を強くし、電界の印加を停止したときの残留吸着力を弱くすることができる耐食性部材、その耐食性部材の製造方法およびその耐食性部材を含む静電チャック装置を提供することができる。
図1は、本発明の静電チャック装置の一例を示す概略図である。
[耐食性部材]
本発明の耐食性部材は、ReAlO3−δを含む。ここで、Reは希土類元素を示し、δは酸素欠損を示す。
本発明の耐食性部材におけるReAlO3−δのReは、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種である。耐食性部材の比誘電率および固有体積抵抗値が高くなる点および誘電損失が低くなる点から好ましいReは、ランタン(La)、ネオジウム(Nd)およびサマリウム(Sm)からなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明の耐食性部材におけるReAlO3−δのδは0.1以上0.7以下であり、好ましくは0.1以上0.5以下であり、さらに好ましくは0.1以上0.3以下である。本発明の耐食性部材におけるReAlO3−δのδが0.1未満であると、酸素欠損の発生に起因する分極発生のエネルギー障壁の低下が不十分になり、耐食性部材の比誘電率が低くなる場合がある。また、本発明の耐食性部材におけるReAlO3−δのδが0.7よりも大きいと、耐食性部材の絶縁性が著しく低下し、誘電損失が悪くなるため、電界の印加を停止したときの耐食性部材の残留吸着力が高くなる場合がある。なお、耐食性部材の酸素欠損は、たとえば、以下のようにして測定できる。耐食性部材を粉砕した後、5%O/He雰囲気中で、1000℃の処理温度で5時間処理したときの酸素消費量を、流通式化学吸着測定装置を使用して測定する。そして、消費された酸素は、耐食性部材の酸素欠損を解消するために、すなわち、δの値をゼロにするために消費されたとして、酸素消費量から酸素欠損(δ)を算出することができる。
以下の原理は本発明を限定しないが、酸素欠損が存在すると耐食性部材の比誘電率が高くなるのは、以下の原理によるものと推測される。耐食性部材に酸素欠損が存在すると、耐食性部材の結晶内に不均一性が生ずる。これにより、分極発生のエネルギー障壁が下がることで、耐食性部材には強誘電性が発現する。これにより、耐食性部材の比誘電率が高くなるものと考えられる。
本発明の耐食性部材は多結晶体であり、多結晶体における結晶粒の平均粒径は、好ましくは2.0μm以上20μm以下であり、より好ましくは2.0μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは3.0μm以上6.0μm以下である。結晶粒の平均粒径が2.0μm以上20μm以下であると、クラックの伝播が不規則になるので耐食性部材の破壊靱性を高くなるとともに、耐食性部材の組織が微細になる。なお、結晶粒の平均粒径は、走査型顕微鏡を使用して、1000倍スケールで100μm×70μmの長方形の範囲を10箇所観察し、それぞれの長方形の範囲内にある結晶粒の最大粒径を測定し、測定した結晶粒の最大粒径の平均値を算出することによって測定する。
本発明の耐食性部材におけるReAlO3−δの割合は、好ましくは25質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上99質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以上99質量%以下である。耐食性部材におけるReAlO3−δの割合が25質量%以上99質量%以下であると、耐食性部材の比誘電率を高くすることができる。
本発明の耐食性部材の40Hzの周波数における比誘電率は、好ましくは45以上であり、より好ましくは48以上であり、さらに好ましくは57以上である。本発明の耐食性部材における比誘電率が45以上であると、電界を印加したときの耐食性部材の吸着力を強くすることができる。
本発明の耐食性部材の40Hzの周波数における損失正接(tanδ)は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。耐食性部材の40Hzの周波数における損失正接(tanδ)が0.1以下であると、電界を除去したときの静電チャック装置の脱離特性を良好にすることができる。
本発明の耐食性部材の固有体積抵抗値は、好ましくは1×1013Ω・cm以上であり、より好ましくは1×1014Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1015Ω・cm以上である。耐食性部材の固有体積抵抗値が1×1013Ω・cm以上であると、電界を除去したときの静電チャック装置の脱離特性を良好にすることができる。
本発明の耐食性部材の曲げ強度は、好ましくは160MPa以上であり、より好ましくは180MPa以上であり、さらに好ましくは200MPa以上である。ここで、曲げ強度は、JIS R1601に準拠して、4点曲げ試験により測定した値である。耐食性部材の曲げ強度が160MPa以上であると、耐食性部材を静電チャック装置に使用した場合、強度に関して実用上の問題は生じない。
本発明の耐食性部材における相対密度は、好ましくは98%以上であり、より好ましくは98.5%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。耐食性部材における相対密度が98%以上であると、耐食性部材の強度を高くし、耐食性部材の比誘電率を高くすることができる。また、耐食性部材中の気孔は損失正接(tanδ)増大の原因となるので、耐食性部材における相対密度が98%以上であると、耐食性部材の損失正接(tanδ)を低減することができる。
1mmの厚さを有し、ウエハ載置面の温度が25℃である本発明の耐食性部材に2.0kVの電圧60秒間を印加して、1インチのシリコンウエハを、耐食性部材に吸着させたきの吸着力は、好ましくは60torr以上であり、より好ましくは100torr以上であり、さらに好ましくは120torr以上であり、とくに好ましくは130torr以上である。吸着力が60torr以上であると、シリコンウエハなどの基板を耐食性部材に確実に固定させることができる。
1mmの厚さを有し、ウエハ載置面の温度が25℃である本発明の耐食性部材に2.0kVの電圧を60秒間印加して、1インチのシリコンウエハを耐食性部材に吸着させた後、電圧の印加を止めたときの残留吸着力は、好ましくは15torr以下であり、より好ましくは10torr以下であり、さらに好ましくは8torr以下であり、特に好ましくは6torr以下である。残留吸着力が15torr以下であると、シリコンウエハなどの基板の処理が終わった後、基板を耐食性部材から容易に取り外すことができる。
[耐食性部材の製造方法]
次に、本発明の耐食性部材の製造方法を説明する。本発明の耐食性部材の製造方法は、以下の焼成工程および熱処理工程を含む。
(焼成工程)
焼成工程は、ReAlO(Reは希土類元素)の複数の原料粉体を混合して作製した原料混合物の成形体をアルゴン、窒素およびヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種の気体の雰囲気内で、または減圧雰囲気で焼成する。
ReAlO(Reは希土類元素)の複数の原料粉体を混合して作製した原料混合物はたとえば、以下のようにして作製してもよい。酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末と溶媒とを混合して、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末を含むスラリーを作製する。酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末の平均粒子径は、それぞれ、好ましくは0.01μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上0.25μm以下である。酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末の平均粒子径が0.01μm以上1.0μm以下であると、粉末原料のコストを低減できるとともに、相対密度が高い耐食性部材を得ることができる。また、耐食性部材中のアルミニウムおよび希土類元素の偏析を抑制できる。原料として用いられる酸化アルミニウムには、α−酸化アルミニウム、β−酸化アルミニウム、θ−酸化アルミニウムおよびγ−酸化アルミニウムなどが挙げられる。焼結性を考慮すると、これらの酸化アルミニウムの中で、α−酸化アルミニウムが好ましい。なお、平均粒子径は、1次粒子の平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法により測定した体積平均粒子径である。
スラリーの作製で使用する溶媒には、たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテルなどが挙げられる。好ましい溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選択される少なくとも1種である。溶媒を用いて酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末を混合するので、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末を均一に混合することができる。
酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末と溶媒とを混合するとき、分散剤を添加してもよい。分散剤は、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末の表面に吸着して、溶媒中の酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末の分散効率を上げるものであれば、とくに限定されない。しかし、耐食性部材中の金属不純物の含有量をできるだけ低減させるために、分散剤は金属イオンを含まないものが好ましい。異粒子同士のヘテロ凝集を防止する観点から、分散剤を添加することが好ましい。
酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末と溶媒との混合に使用する装置は、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末を均一に含むスラリーを作製できれば、とくに限定されない。酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末と溶媒との混合に使用する装置には、たとえば、ボールミル、ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー、振動ミル、サンドグラインドミル、アトライター、超音波分散機、高圧分散機などが挙げられる。たとえば、直径が1mm以上5mm以下の酸化アルミニウム製のメディアを用いたボールミルを使用することができる。このボールミルを使用することにより、耐食性部材の固有体積抵抗値を改善することができる。メディアの直径が小さくなればなるほど、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末の混合および分散の効率が高くなり、耐食性部材の固有体積抵抗値を向上させることができる。また、超音波分散機および高圧分散機などのメディアレス分散機を、酸化アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末と溶媒との混合に使用した場合、メディアから発生する不純物を低減できる。このため、半導体製造装置用の耐食性部材を作製するときには、メディアレス分散機を使用することが好ましい。
原料混合物の成形体は、たとえば、以下のようにして作製することができる。アルミニウム粉末および希土類酸化物粉末を含む原料混合物は、原料混合物の成形を容易にするために、顆粒状であることが好ましい。したがって、スラリーの乾燥は、スラリーを乾燥するとともに、顆粒を形成する方法で実施されることが好ましい。スラリーの乾燥には、たとえば、噴霧乾燥機、気流乾燥機、流体層などが使用される。混合粉末の顆粒を形成するために、ポリアクリル酸塩などの分散剤、ポリエチレングリコール系消泡剤などの消泡剤、ステアリン酸などの潤滑剤、ポリビニルアルコールなどの結合材、ポリエチレングリコールなどの可塑剤などをスラリーに添加してもよい。そして、得られた原料混合物を金型中で一軸プレスするか、またはゴム型中で静水圧プレスすることにより成形体を得る。
原料混合物の成形体を焼成するときの焼成温度は、好ましくは1400℃以上1600℃以下であり、より好ましくは1420℃以上1500℃以下であり、さらに好ましくは1430℃以上1450℃以下である。焼成温度が1400℃以上1600℃以下であると、異常粒成長を抑制して緻密な焼結体を得ることができるとともに焼結体が溶融することを抑制することができる。上記焼成温度の焼成における焼成時間は、好ましくは1時間以上10時間以下であり、より好ましくは2時間以上6時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上5時間以下である。また、焼結体に酸素欠損を生じさせるために、原料混合物の焼成は、アルゴン、窒素およびヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種の気体の雰囲気内で、または減圧雰囲気で行う。
成形体の焼成は、常圧焼成でもよいが、より緻密な焼結体を得ることができるという点で加圧焼成であることがより好ましい。加圧焼成には、たとえば熱間静水圧(HIP)焼成、ホットプレス(HP)一軸加圧焼成、超高圧プレス(UHP)多軸加圧焼成などが挙げられる。加圧焼成により成形体を焼成するときの成形体への圧力は、たとえば10MPa以上40MPa以下である。
なお、成形体を焼成する前に成形体を仮焼してもよい。これにより、希土類酸化物粉と反応してReAlOを生成するのに過剰な酸化アルミニウム粉が希土類酸化物粉と反応しないでそのまま残留することを抑制できる。成形体を仮焼するときの仮焼温度は、好ましくは700℃以上1300℃以下であり、より好ましくは800℃以上1100℃以下であり、さらに好ましくは900℃以上1000℃以下である。焼成温度が700℃以上1300℃以下であると、希土類酸化物粉と反応しない酸化アルミニウム粉を残したまま、焼結することを抑制することができる。上記仮焼における仮焼時間は、好ましくは1時間以上10時間以下であり、より好ましくは2時間以上8時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上5時間以下である。
(熱処理工程)
熱処理工程は、焼成工程で焼成した成形体を熱処理する。すなわち、焼成工程で焼成した成形体をアニール処理する。これにより、酸素欠損δの値を、0.1以上0.7以下に、好ましくは0.1以上0.5以下に、さらに好ましくは0.1以上0.3以下に調節することができる。熱処理温度は、900℃以上1400℃以下であり、好ましくは1100℃以上1300℃で以下ある。また、上記熱処理温度による熱処理の熱処理時間は10時間以上30時間以下であり、好ましくは20時間以上30時間以下である。
[静電チャック装置]
図1を参照して、本発明の静電チャック装置の一例を説明する。図1は、本発明の静電チャック装置の一例を示す概略図である。本発明の静電チャック装置の一例である静電チャック装置10は、本発明の耐食性部材を含み、セラミックス基材20と、セラミックス基材20に対して、セラミックス基材20の厚さ方向に配置され、セラミックス基材20を支持する支持体30と、セラミックス基材20および支持体30の間に配置された接着層40とを含む。
たとえば、セラミックス基材20における板状試料Wを載置する部分が本発明の耐食性部材で構成される。セラミック基材20は、静電吸着用電極21を備えている。静電吸着用電極21は給電用端子22と接続しており、給電用端子22を通じて静電吸着用電極21に直流電圧が印加される。静電吸着用電極21に直流電圧が印加されると、セラミックス基材20における板状試料Wを載置する面に静電力が発生する。これにより、板状試料Wはセラミックス基材20に吸着し、板状試料Wはセラミックス基材20に固定される。
支持体30はセラミックス基材20を支持する。支持体30は、水および有機溶媒などの冷却媒体を流通させる流路31を内部に備える。水および有機溶媒などの冷却媒体を流路31に流通させることにより、セラミックス基材20に載置された板状試料Wを冷却することができ、セラミックス基材20における板状試料Wの載置面を所望の温度に制御することができる。給電用端子22および支持体30の間を絶縁するために、支持体30における給電用端子22周りに絶縁碍子32が設けられている。
本発明の耐食性部材を静電チャック装置10に使用すると、板状試料Wをセラミックス基材20に吸着させるときの吸着力を強くすることができ、板状試料Wをセラミックス基材20に確実に固定することができる。また、電界の印加を停止したときの残留吸着力を弱くすることができ、所定の処理が終わった後、板状試料Wをセラミックス基材20から容易に取り外すことができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
後述の実施例および比較例における測定および評価は以下のように行った。
(1)耐食性部材の相対密度
アルキメデス法により、実施例および比較例で得られた耐食性部材の密度を測定し、下記式により求めた理論密度で、測定した密度を割り算して相対密度を算出した。
単位胞重量(g)=酸化サマリウムアルミニウム結晶相の各単位胞重量(g)×各結晶相のmol%
単位胞体積(cm)=酸化サマリウムアルミニウム結晶相の各単位胞体積(cm)×各結晶相のmol%
理論密度(g/cm)=単位胞重量(g)/単位胞体積(cm
なお、酸化サマリウムアルミニウムの各結晶相%のmol%は、原料粉体の仕込み量から算出した。
(2)耐食性部材の結晶相の同定
粉末X線回折法により、実施例および比較例で得られた耐食性部材の結晶相の同定を行った。粉末X線回折には、X線回折装置(PANalytical社製、X’Pert PRO MPD)を使用した。
(3)耐食性部材の比誘電率および損失正接(tanδ)
実施例および比較例の耐食性部材をφ60×1mmに加工した後、40MHzにおける耐食性部材の比誘電率および損失正接(tanδ)を、プレシジョン・インピーダンス・アナライザ(Agilent社製、型番:4294A)を使用して測定した。
(4)耐食性部材の固有体積抵抗値
実施例および比較例の耐食性部材をφ60×1mmに加工した後、耐食性部材の固有体積抵抗値を、3端子法にて、デジタル超高抵抗/電流計((株)アドバンテスト製、R83040A)を使用して、500Vの印加電圧および60秒の保持時間で測定した電流値から換算して算出した。
(5)耐食性部材の吸着力
実施例および比較例で得られた耐食性部材を厚さ1.0mmに加工し、加工した耐食性部材とアルミナセラミックスとの間に電極を埋設した接着層を形成して静電チャックを作製した。静電チャックの試料載置面温度を25℃にし、2.0kVの電圧を電極に60秒間印加して、1インチのシリコンウエハを静電チャックに真空中(<0.5Pa)で吸着させた。そして、1インチのシリコンウエハに対する吸着力を測定した。測定はロードセルを用いた引き剥がしにより行い、そのとき発生した最大引き剥がし応力を吸着力とした。
(6)耐食性部材の残留吸着力
実施例および比較例で得られた耐食性部材を厚さ1.0mmに加工し、加工した耐食性部材とアルミナセラミックスとの間に電極を埋設した接着層を形成して静電チャックを作製した。静電チャックの試料載置面温度を25℃にし、2.0kVの電圧を電極に60秒間印加して、1インチのシリコンウエハを静電チャックに真空中(<0.5Pa)で吸着させた。その後、電圧の印加を停止し、電圧の印加を停止した直後の1インチのシリコンウエハに対する残留吸着力を測定した。測定はロードセルを用いた引き剥がしにより行い、そのとき発生した最大引き剥がし応力を残留吸着力とした。
(7)耐食性部材の結晶粒の平均粒径
実施例および比較例の耐食性部材を鏡面研磨した後、1400℃で5時間のサーマルエッチングを施し、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、型番:S−4000)を用いて1000倍スケールで100μm×70μmの長方形の範囲を10箇所観察し、それぞれの長方形の範囲内にある結晶粒の最大径を測定した。そして、測定した結晶粒の最大径の平均値を算出し、その平均値を結晶粒の平均粒径とした。
(8)酸素欠損(δ)
実施例および比較例の耐食性部材を粉砕した後、5%O/He雰囲気中で、1000℃の処理温度で5時間処理したときの酸素消費量を流通式化学吸着測定装置(日本ベル(株)製、BELCAT B)を使用して測定した。そして、消費された酸素は、実施例および比較例の耐食性部材の酸素欠損を解消するために、すなわち、δの値をゼロにするために消費されたとして、酸素消費量から酸素欠損(δ)を算出した。
実施例1〜4の耐食性部材および比較例1〜4の耐食性部材を以下のようにして作製した。
(実施例1)
1次粒子の平均粒径が0.1μmの酸化アルミニウム(Al)粉末(大明化学工業(株)製、型番:TM−5D)および1次粒子の平均粒径が0.1μmの酸化サマリウム(Sm)粉末(日本イットリウム(株)製、型番:N-Sm3CP)を表1に示す組成となるようにそれぞれ秤量した。秤量した酸化アルミニウム粉末、酸化サマリウム粉末および水を、直径1mmのアルミナボールが入ったボールミルに投入し、酸化アルミニウム粉および酸化サマリウム粉を16時間混合し、酸化アルミニウム粉末および酸化サマリウム粉末の混合原料のスラリーを作製した。
スプレードライヤー((株)日本プリス製、型番:TR160)を使用してこのスラリーを乾燥および造粒して、混合原料の顆粒を作製した。次いで、この混合粉末を所定形状に成形した。そして、ホットプレス機(富士電波工業(株)製、型番:ハイマルチ5000)を使用して、1500℃の焼成温度で、2時間の焼成時間、20MPaの圧力およびアルゴン中で成形体を加圧焼成し、実施例1の焼結体を作製した。そして、1300℃のアニール温度で、大気中で10時間アニール処理を行い、実施例1の耐食性部材を作製した。
(実施例2)
酸化サマリウム(Sm)粉末の代わりに1次粒子の平均粒径が0.1μmの酸化ランタン(La)粉末(日本イットリウム(株)製、型番:N−La3CP)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の耐食性部材を作製した。
(実施例3)
焼成温度を1500℃から1600℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の耐食性部材を作製した。
(実施例4)
1300℃のアニール温度で10時間アニール処理を行う代わりに、900℃のアニール温度で30時間アニール処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の耐食性部材を作製した。
(比較例1)
1300℃のアニール温度の代わりに、1450℃のアニール温度でアニール処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の耐食性部材を作製した。
(比較例2)
アルゴン中で成形体を加圧焼成する代わりに、大気中で成形体を加圧焼成した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の耐食性部材を作製した。
(比較例3)
焼成温度を1500℃から1700℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3の耐食性部材を作製した。
(比較例4)
1300℃のアニール温度で10時間アニール処理を行う代わりに、800℃のアニール温度で50時間アニール処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の耐食性部材を作製した。
(評価結果)
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた耐食性部材の評価結果を表1に示す。
表1の実施例1〜4と比較例1および2とを比較することにより、酸素欠損(δ)が大きくなると耐食性部材の比誘電率が高くなることがわかった。また、表1の実施例1〜4と比較例3および4とを比較することにより、酸素欠損(δ)が大きすぎると耐食性部材の残留吸着力が大きくなることがわかった。また、実施例1、3、4と実施例2とを比較することにより、ReAlO3−δのReがサマリウム以外の希土類元素においても、ReAlO3−δのReがサマリウムの場合と同様の現象が起こることがわかった。

Claims (7)

  1. ReAlO3−δ(Reは希土類元素、0.1≦δ≦0.7)を含む耐食性部材。
  2. 前記δが0.1以上0.5以下である請求項1に記載の耐食性部材。
  3. 前記Reが、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の耐食性部材。
  4. 40Hz以下の周波数における比誘電率が45以上であり、損失正接(tanδ)が0.1以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐食性部材。
  5. 前記耐食性部材は多結晶体であり、
    前記多結晶体における結晶粒の平均粒径が2.0μm以上20μm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐食性部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐食性部材を含む静電チャック装置。
  7. ReAlO(Reは希土類元素)の複数の原料粉体を混合して作製した原料混合物の成形体をアルゴン、窒素およびヘリウムからなる群から選択される少なくとも1種の気体の雰囲気内で、または減圧雰囲気で焼成する焼成工程、および
    前記焼成工程で焼成した成形体を、900℃以上1400℃以下で10時間以上30時間以下熱処理する熱処理工程を含む耐食性部材の製造方法。
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