JP2012093518A - ペリクル - Google Patents

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泰輝 山下
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Seitaro Doi
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Abstract

【課題】マスクの平坦性に影響を与えにくく、且つヘイズの低減を図ることができるペリクルを提供する。
【解決手段】ペリクル枠体2と、ペリクル枠体2の上縁面2eに展張支持されたペリクル膜3と、上縁面2eの反対側の下縁面2fに設けられた粘着剤10とを備えるペリクル1であって、粘着剤10は、アクリル系樹脂粘着剤であり、ペリクル枠体2は、Cu:0.5〜3.0%、Mg:1.5〜4.5%、Zn:4.0〜7.0%を含むアルミニウム材にて形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えばIC(Integrated Circuit:集積回路)、LSI(LargeScale Integration:大規模集積回路)、TFT型LCD(Thin Film Transistor,Liquid Crystal Display:薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等の半導体装置や液晶表示装置を製造する際のリソグラフィー工程で使用されるフォトマクスやレティクルに異物が付着することを防止するために用いるペリクルに関する。
半導体製造のフォトリソグラフィー工程において、ウエハー上に集積回路に対応したフォトレジストパターンを形成するためには、ステッパー(縮小投影露光装置)等の半導体製造装置が使用されている。ペリクルは枠形状を有するペリクル枠体の一端面に透明薄膜を張設したものであり、異物が回路パターンを形成するためのマスク上に直接付着することを防止するものである。従って、仮にフォトリソグラフィー工程において異物がペリクル上に付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハー上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による半導体集積回路の短絡や断線等を防ぐことができ、フォトリソグラフィー工程の製造歩留まりを向上させることができる。
近年、半導体装置の高集積化に伴って、フォトリソグラフィー工程に用いる露光光の短波長化が進められている。すなわち、ウエハー上に集積回路パターンを描写する際に、より狭い線幅で微細な回路パターンを描画できる技術が要求されている。これに対応するために、例えば、フォトリソグラフィー用ステッパーの露光光として、従来のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)から進んでKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、更に、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のより短波長の光が用いられようとしている。
ここで、ペリクルをマスク上に固定する方法としては、粘着剤で剥離可能に固定する方法が通常使用され、そのための粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリブテン系、ポリウレタン系、シリコーン系等のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年の露光光の短波長化・高エネルギー化に伴い、パターンの微細化が進んでいるが、このため、マスクの平坦性が悪いと露光時に焦点ズレが発生し、焼き付けられるパターンの精度が悪くなるという問題が発生する。そのため、マスクの平坦性は、従来よりも精度の高いものが求められている。
マスクの平坦性を変化させる要因の1つとしては、ペリクルの影響があると言われている。そこで、マスク粘着材にて平坦性を変化させない方法やペリクル枠体の平坦性を規定したものが開示されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
一方、上述した露光光の短波長化・高エネルギー化に伴い、露光の時間の経過と共に反応生成物がフォトマスク等に付着し、くもり(ヘイズ)が発生するといった問題がある。フォトマスク等の製造後の検査では無欠陥の良好な品質状態であっても、露光装置でエキシマレーザーの照射を繰り返すうちにフォトマスクやレティクル上にヘイズが発生して良好なパターン転写像が得られず、場合によっては半導体素子の回路の断線やショートを引き起こしてしまう。
ペリクル枠体は、一般にアルミニウム材からなり、通常、その表面には陽極酸化皮膜が形成される。ところが、陽極酸化皮膜を形成する際に用いる電解液には硫酸等の酸性成分が含まれており、これが形成された皮膜中に残存すると、フォトリソグラフィー工程等において離脱して、フォトマスクやレティクルとの間の閉ざされた空間内にガス状物として発生する。そして、雰囲気中に含まれたアンモニアをはじめ、シアン化合物や炭化水素化合物などと光化学反応を起こしてヘイズが生じる。これを低減する方法としては、例えば特許文献6〜9に開示されている。
特開平05−281711号公報 特開2009−276504号公報 特開2009―025560号公報 特開2008−256925号公報 特開2008−065258号公報 特開2006−184822号公報 特開2007−333910号公報 特開2007−225720号公報 特開2010−113350号公報
近年の高エネルギー化に伴うパターンの微細化により、ペリクルを貼り付けた後のマスクの歪みを低減するペリクルが求められている。上記特許文献2〜5に記載されているように、マスクの歪みはペリクルの影響が1つの要因とされており、ペリクル枠体の平坦度を規定したり、粘着剤の平坦度を規定したり、粘着剤の厚さを規定したりして様々な対策がとられている。
ペリクル枠体は、その平坦度を維持した方がよく、製造工程中のハンドリング時や粘着剤等の成型等で歪んだり、変形しないことが望ましい。また、粘着剤は、マスクの平坦性を考慮して比較的柔らかい粘着剤を使用した方がよい。これは、粘着剤が、フレームの表面の平坦性を吸収し、マスクに与える平坦性の影響が緩和されると考えられるからである。しかしながら、粘着剤が柔らかすぎると、製造工程中でのハンドリングが悪化する傾向や、マスクからペリクルを剥離するときに起こる糊残りが発生するといった問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、マスクの平坦性に影響を与えにくく、且つヘイズの低減を図ることができるペリクルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ペリクル枠体に特定の成分を含むアルミニウム材を使用し、かつ、特定の粘着剤を塗布することで、従来よりもマスクの平坦性に影響を与えにくく、且つヘイズの低減を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るペリクルは、ペリクル枠体と、ペリクル枠体の表面に展張支持されたペリクル膜と、表面の反対側の裏面に設けられた粘着剤とを備えるペリクルであって、粘着剤は、アクリル系樹脂粘着剤であり、ペリクル枠体は、Cu:0.5〜3.0%、Mg:1.5〜4.5%、Zn:4.0〜7.0%を含むアルミニウム材にて形成されていることを特徴とする。
また、粘着剤は、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、硬化材との反応性を有する官能基を有するモノマーとの共重合体である(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、硬化材との反応生成物とを含む。
また、硬化材は、多官能性エポキシ化合物及びイソシアネート化合物の少なくとも1つの硬化材である。
また、粘着剤の厚みは、0.1mm〜0.8mmである。
また、アルミニウム材は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リン酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの電解液で陽極酸化処理されている。
本発明によれば、マスクの平坦性に影響を与えにくく、且つヘイズの低減を図ることができる。
本発明の一実施形態に係るペリクルを示す斜視図である。 図1におけるII−II線断面図である。 評価結果を示す表である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るペリクルを示す斜視図であり、図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、ペリクル1は、ペリクル枠体2と、ペリクル枠体2の上縁面(表面)2eに展張支持されたペリクル膜(光学的薄膜体)3と、ペリクル枠体2の下縁面(裏面)2fに塗布された粘着剤10と、粘着剤10に粘着され、この粘着剤10を保護する保護フィルムFとを備えている。ペリクル1は、特に高解像度を必要とする露光において使用されるエキシマレーザーを使用したリソグラフィー用ペリクルであり、特に、200nm以下の紫外光露光に使用されるリソグラフィー用ペリクルである。
このペリクル枠体2は、対向する一対の長辺(枠部材)2a,2bと、この長辺2a,2bよりも短い対向する一対の短辺(枠部材)2c,2dとから構成されており、平面視において矩形状を呈している。ペリクル枠体2において、長辺2aと長辺2bとの長さは等しく形成されており、短辺2cと短辺2dとの長さは等しく形成されている。ペリクル枠体2は、矩形状の開口部4を有しており、長辺2a,2b及び短辺2c,2dは、開口部4の周縁を形成している。この開口部4の開口面積は、好ましくは18000cm以上、より好ましくは23000cm以上、35000cm以下である。
一対の長辺2a,2bは、幅が例えば9.0mmの柱部材からなり、その長さは、例えば800mmである。一対の短辺2c,2dは、幅が例えば7.0mmの柱部材からなり、その長さは、例えば480mmである。つまり、短辺2c,2dの平面視(上面視)における幅は、長辺2a,2bの幅よりも狭い。ペリクル枠体2の角部5の曲率は、例えば、R=2mmである。ペリクル枠体2の側面6には、溝部7が長手方向(辺方向)に沿って設けられている。
ペリクル枠体2の各辺2a〜2dの幅は、露光面積を確保する観点からは細ければ細いほど好ましいが、細すぎるとペリクル膜3の展張時にペリクル膜3の張力でペリクル枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺の長さに対して剛性を考慮した幅の太さになるため、各辺2a〜2dは、3mm〜25mm程度とすることができる。
また、ペリクル枠体2の厚みに関しても、薄ければ薄いほど軽くて扱いやすいペリクル1となるが、薄すぎるとペリクル膜3の展張時にペリクル膜3の張力でペリクル枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺2a〜2dの長さに応じた両者のバランスから、ペリクル枠体2の厚みは、好ましくは4.5mm〜12mm程度とすることができる。
ペリクル膜3は、特に制限はなく公知のものを使用することができるが、例えば石英等の無機物質や、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル類、フッ素系ポリマー、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のポリマーなどを例示することができる。ペリクル膜3は、CaF2等の無機物やポリスチレン、テフロン(登録商標)等のポリマーからなる反射防止層などを備えるようにしてもよい。ペリクル膜3の厚さは、例えば10μm以下0.1μm以上が好ましい。このペリクル膜3は、ペリクル枠体2の開口部4を覆うように上縁面2eに展張され、ペリクル枠体2に貼着支持されている。
ペリクル膜3をペリクル枠体2の上縁面2eに接着する接着剤は、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、又は含フッ素シリコーン接着剤等のフッ素系ポリマーを用いることができる。
また、ペリクル膜3を貼着支持する貼着剤層としては、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、又は発泡体を基材とした粘着テープを用いることができる。貼着剤層の厚さは、ペリクル枠体2の厚さと粘着材厚さの合計が規定されたペリクル膜3とフォトマスクの距離を越えない範囲で設定するものであり、例えば、10mm以下0.01mm以上が好ましい。
続いて、粘着剤10について詳細に説明する。粘着剤10は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、硬化材との反応生成物とを含む組成物からなる粘着剤であれば、架橋密度を調整でき、ペリクル枠体2の平坦性を向上できるが、この(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下「A成分」という。)と、硬化材との反応性を有する官能基を有するモノマー(以下「B成分」という。)との少なくとも2つのモノマー成分を共重合させることによって得られる共重合体である粘着剤であること好ましい。この場合、マスクとの接着力が十分で、且つ、剥離後の糊残りが少ない。
アルキルエステル共重合体は、A成分が99〜80重量%、B成分が1〜20重量%である単量体混合物の共重合体であることがマスクへの適度な接着力を発現することができ、より好ましい。
ここで、A成分のモノマーを、炭素数4〜14のアルキル基が直鎖状のもの(以下「A1成分」という。)と炭素数4〜14のアルキル基が分岐状のもの(以下「A2成分」という。)に分けた場合に、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、A2成分が9〜59%である単量体混合物の共重合体であると、粘着力に優れるのでより好ましい。A1成分が40〜90重量%、A2成分が9〜59重量%、B成分が1〜20重量%である単量体混合物の共重合体であると、剥離後の糊残りが少なくなり更に好ましい。A1成分のアクリレ―ト系モノマーは、アルキル基の炭素数が4〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの直鎖脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、マスクとの適度な接着性を発現するため、好ましく用いられる。
A2成分のアクリレ―ト系モノマーは、分岐状のアルキル鎖を持つものであり、具体的には、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルがあげられる。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、共重合性の点から、(メタ)アクリル酸イソブチル(例えば、イソブチルアクリレート)や(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル(例えば、2−エチルヘキシルアクリレート)が好ましく用いられる。
B成分のモノマーは、上記A成分のモノマーと共重合可能なモノマーであって、エポキシ基との反応性を有するモノマーである。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーや、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマーである。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、共重合性、汎用性等の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。特に糊残りの点から(メタ)アクリル酸が好ましく、(メタ)アクリル酸は(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する全モノマーに対し0.1〜5重量%、更に好ましくは0.5〜4重量%、更に好ましくは0.8〜3重量%含有することがよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、上記のA1成分のアクリレート系モノマーは、モノマー混合物中、40〜90重量%、好ましくは45〜80重量%の割合で用いられる。また、A2成分は9〜59重量%、好ましくは15〜50重量%、B成分は1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%となるようにするのがよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量が70万以上、250万以下であると、粘着剤層の凝集力、接着力が適度な大きさになり、糊残りしにくく、且つ、十分な接着力、耐荷重性を持つ粘着剤となり、好ましい。重量平均分子量は、好ましくは90万以上230万以下、更に好ましくは100万以上200万以下が好ましい。重量平均分子量の制御方法について、公知の方法で制御できる。具体的には、一般に重合反応するときのモノマー濃度が高いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にあり、重合開始剤量の量が少ないほど、又、重合温度が低いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にある。
このような(メタ)アクリルエステル共重合体の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリルエステル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。
具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜2.0重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
好ましい重合開始剤としては、たとえば、アゾ系の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などや過酸化物系のベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。本実施形態のペリクル1に使用する粘着剤10は、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と硬化材との反応生成物を含んでなる組成物からなる粘着剤であることが好ましい。
かかる硬化材としては、金属塩、金属アルコキシド、アルデヒド系化合物、非アミノ樹脂系アミノ化合物、尿素系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物など、通常の粘着剤に使用される硬化材をあげることができるが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が有する官能基成分との反応性の点から、イソシアネート系化合物及び多官能性エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つの硬化材が好ましく、多官能性エポキシ化合物がより好ましい。
具体的には、イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネートが、多官能性エポキシ化合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、N、N、N’、N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどがあげられる。これらの中でも2〜4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が好ましく、4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が反応性の点から好適に用いられる。反応性がよいと粘着剤の塗布後、架橋反応が速やかに終了するので、特性が短時間で安定し、生産性の面で優れる。
硬化材の含有量は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部に対して、0.05〜3重量部であるとペリクルに好ましく、0.05〜2重量部、更には、0.05〜1重量部であることがより好ましい。この範囲であると、架橋密度が適度な密度となり、糊残りしにくく、且つ、十分な接着力、耐荷重性を有する粘着剤となる。
なかでも、硬化材の含有量が0.05重量部〜0.20重量部であれば、ペリクル用の粘着剤としてより好ましく、ヘイズ(くもり)の発生を抑止し、糊残りが発生しにくくなる。更に、適度な架橋密度となるため、フォトマスクの平坦性に特に影響を与えにくい(フォトマスクの変形を特に抑止できる)マスク粘着剤となる。これは、硬化材の含有量が0.20重量部以下であれば、架橋密度が大きくなりすぎないため、マスクに掛かる応力を粘着剤10が吸収し、フォトマスクに与える平坦性の影響が緩和されると考えられる。一方で、0.05重量部以上であれば、架橋密度が小さくなり過ぎないため、製造工程中でのハンドリング性を維持し、マスクからペリクルを剥離するときに起こる糊残りの問題が発生しないと考えられる。
また、粘着剤10の厚みは、0.2mm〜0.8mmであることが好ましく、更に0.25〜0.6mm、特に好ましくは、0.3mm〜0.45mmである。アルミニウム材の表面には微細な凹凸が発生しており、ペリクル枠体より柔軟性のある粘着剤10がその凹凸を吸収することで、アルミニウム材の表面の凹凸に影響されない粘着剤10の平坦性を得ることが可能になる。上記範囲であれば、アルミニウム材の表面の凹凸を吸収でき、粘着剤10の平坦性を確保しつつ粘着剤からのアウトガスが問題のないレベルとなる。
粘着剤10に残存する重合開始剤については、粘着剤重量に対し8ppm以下であることが好ましい。粘着剤中に残存する重合開始剤が粘着剤全重量に対し8ppm以下であるとヘイズの発生を大幅に抑制することができる。粘着剤層に残存する重合開始剤の量を低減させることで、フォトマスクのヘイズが改善する理由について定かではないが、以下のように考えられる。
ヘイズの発生原因はいくつか考えられるが、露光雰囲気下に存在する有機ガス成分が露光光のエネルギーにより化学反応を起こし、その反応生成物がフォトマスク上に付着することがヘイズ発生の主な原因であると考える。粘着剤層にある一定量以上の重合開始剤が存在すると、その重合開始剤が露光光のエネルギーにより開裂し、有機ガスの化学反応のトリガーとなり、その結果、ヘイズの原因となる反応生成物の生成量が格段に多くなると推察している。
以上理由により、ペリクル1に使用する粘着剤10に残存する重合開始剤については、粘着剤重量に対し8ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは7ppm以下、更に好ましくは6ppm以下がよい。
粘着剤層に残存する重合開始剤を低減・コントロールする方法については、粘着剤ポリマーを重合する際の重合開始剤量を低減することや熱分解しやすい重合開始剤を使用すること、また粘着剤10の塗布・乾燥工程にて、高温・長時間の温度をかけ、乾燥工程で重合開始剤を分解させる方法などがある。
重合開始剤の熱分解速度を表す指標に10時間半減期温度がある。半減期とは、重合開始剤が元々の量の半分分解するまでの時間を示し、10時間半減期温度は半減期が10時間になる温度を示す。10時間半減期温度が低い重合開始剤の方が熱分解しやすいため、粘着剤層に残存しにくい。特に10時間半減期温度が80℃以下、好ましくは75℃以下の重合開始剤を使用することが好ましい。
このような重合開始剤に、アゾ系の重合開始剤であれば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度60℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度66℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度67℃)、過酸化物系の重合開始剤であればジベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度74℃)、ジラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度62℃)などが挙げられるがこの限りではない。
また、光重合開始剤もヘイズ発生の原因となり得る。粘着剤層に残存する光重合開始剤を低減・コントロールする方法としては加熱により熱分解や乾燥・蒸発させる方法や、紫外線を照射し、光重合開始剤を分解させる方法、上記方法によって分解しやすい光重合開始剤を使用する方法等が考えられる。上記方法によって分解しやすい光重合開始剤としては、アルキルフェノン系重合開始剤やアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系重合開始剤としては、具体的には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
粘着剤10に残存する重合開始剤の全重量を、粘着剤全重量に対し8ppm以下にするために好ましく用いられる粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、硬化材との反応生成物を含んでなる組成物からなる粘着剤であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、硬化材との反応性を有する官能基を有するモノマーとの少なくとも2つのモノマー成分を共重合させることによって得られる共重合体である。
また、粘着剤組成物には、上記の反応生成物以外に、必要に応じて、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線安定剤などの従来公知の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種類または2種以上を使用することが可能である。ただし、所望する物性が得られるように、添加量は適時設定することが好ましい。
続いて、ペリクル1の製造方法について説明する。
(1)まず、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体溶液と多官能性エポキシ化合物溶液とを混合し粘着剤前駆体組成物を得る。この場合、所定の厚み・幅のマスク粘着剤層を塗布するために、粘着剤前駆体組成物を更に溶媒で希釈し、溶液濃度(粘度)を調整する。希釈のための溶媒は、溶解性、蒸発速度などの観点から選ばれる。好ましい溶媒の具体例としては、アセトン、酢酸エチル、トルエンがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(2)次に、粘着剤前駆体組成物を、ペリクル膜3を有するペリクル枠体2の下縁面2fに塗布する。塗布方法は、特に限定されるものではないが、ディスペンサーを用いて塗布することが好ましい。上記粘着剤前駆体組成物中のアクリル共重合体溶液(溶媒と(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる溶液をいう。)粘度については特に限定はされないが、好ましくは50P以下、より好ましくは10〜40P、更に好ましくは20〜30P程度の粘度である(B型粘度計、25℃)。ディスペンサーでの塗布において溶媒で希釈することによって、塗布液の糸引きが少なく、安定した幅・厚みに調整することが容易となる。
(3)続いて、塗布した粘着剤層を加熱乾燥させることにより、溶媒及び/又は残存モノマーを除去することができる。更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が有する官能基と硬化材とが加熱反応して架橋構造を形成すると、ペリクル枠体2と粘着剤組成物とが一体化し、ペリクル枠体2の表面に密着する。
かかる乾燥温度については、溶媒および残存モノマーの沸点、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の分解温度を考慮し、50〜200℃であることが好ましく、60〜190℃であることが好ましい。また、粘着剤10中に含まれる溶媒が下記アウトガス試験で50ppb以下となるように、粘着剤10は十分に乾燥させた状態でペリクル1に使用することが好ましい。
乾燥、架橋後に、粘着面を保護するための保護フィルムF(離型シート)を貼ってもよい。保護フィルムFは、一般的にはポリエステルなどの厚さ30〜200μm程度のフィルムを用いる。また、粘着剤10から保護フィルムFを剥がす際の剥離力が大きいと、剥がす際に粘着剤10が変形する恐れがあるので、適切な剥離力になるように、粘着剤と接するフィルム表面にシリコーンやフッ素などの離型処理を行ってもよい。粘着面を保護するための保護フィルムFを貼った後、加重をかけて、粘着剤表面を略平坦に成型してもよい。
また、ペリクル枠体2は、アルミニウム材から形成されている。アルミニウム材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであり、Cu:0.5〜3.0%、Mg:1.5〜4.5%、Zn:4.0〜7.0%を必須成分として含んでいる。これらの元素は、強度を向上させるために有効な成分であり、各々下限より少ないと強度不足を生じる場合がある一方、上限より多いと素材の鋳造・熱間加工性が低下し製造困難となる場合がある。好ましくは、JIS A7000系であり、更には、強度と後術する平坦性の観点とからJIS A7075系のアルミニウム材が好適である。なお、本実施形態では、上記成分を含んでいる場合においても、アルミニウムとしている。
また、アルミニウム材には、硫酸以外の電解液にて陽極酸化処理により陽極酸化皮膜Pが形成されることが好ましい。硫酸以外の陽極酸化処理に使用する電解液については、例えば多価の酸であるシュウ酸、マロン酸、コハク酸等やそれらの塩、またはリン酸やそれらの塩を用いることができ、特に好ましくは、シュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた陽極酸化処理である。これは、ヘイズの最大原因物質である硫酸を用いないようにして、陽極酸化処理をする必要があるためである。また、シュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜Pは、電解液等が皮膜中に残存する可能性があるため、ヘイズを低減するイオンの総量からも好ましく、前記アルミニウム材の場合、耐食性が若干劣るため、耐食性と耐磨耗性の観点からも好ましい。
以下、電解液としてシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いる場合について説明する。但し、電解液はシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液に限定されるものではない。シュウ酸塩としては、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸アンモニウム等を挙げることができ、好ましくはシュウ酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、及びシュウ酸ナトリウムであることがよい。電解液の濃度については、シュウ酸根(C 2−)が20〜90g/Lであるのがよく、好ましくは30〜60g/Lであることがよい。シュウ酸根濃度が20g/L〜90g/Lの範囲であると適切な電解電圧を得ることができる。
陽極酸化処理の電圧については10〜60Vであることがよく、好ましくは20〜50Vであることがよい。10Vより高いと得られる陽極酸化皮膜Pの強度を使用十分なものとすることができ、60Vより低くすることで上記の陽極酸化皮膜P中に形成されるポーラス層で大きな表面積が得られるので、後の着色処理で十分な着色性が得られる。また、電解液の温度については、好ましくは15〜40℃とすることがよく、陽極酸化の処理時間は2〜60分、好ましくは5〜20分の範囲であることがよい。
そして、これら陽極酸化処理の条件を調整し、得られる陽極酸化皮膜Pの膜厚を0.5〜10μm、好ましくは1.0〜6.0μm、更には2.0〜4.5μmとすることが望ましい。陽極酸化皮膜Pの厚みが0.5μmより大きいと着色処理で十分な着色性が得られ、10μmより小さいと皮膜内に取り込まれる酸性成分の量をヘイズの原因とならない程度に少なくすることができる。
また、このようにシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いたことで、一般に硫酸を用いて陽極酸化皮膜Pを形成する場合(通常100〜200g/L程度)に比べて使用する酸の量を減らすことができる。また、得られた陽極酸化皮膜Pはビッカース硬度で150〜500Hv程度の硬度を有することができるため、枠体表面の傷付きや発塵を抑えることができて耐久性にも優れる。
更に、ペリクル枠体2は、その表面が着色されていることが好ましい。着色処理の条件については特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、有機系染料や無機系染料による染色処理や、金属塩による二次電解着色処理が挙げられる。好ましくは、陽極酸化処理後に枠体を染色処理することがよい。着色処理は露光光の散乱防止等と異物検査性を目的とし、いわゆる黒色化或いは黒色に近い色にすることができればよい。ヘイズの原因である酸性成分の含有量が少ないとされる染料を用いることが特に好ましい。また、着色処理後は封孔処理を行ってもよい。封孔処理の条件については特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、処理後は純水洗浄を十分に行うようにする。好ましくは純水温度を50〜95℃とし、10分〜24hrの洗浄を行うようにすることがよい。この封孔処理を行うことにより、仮に陽極酸化皮膜P中に酸性成分が残存していたとしても、表面からの流出を抑えることができる。
また、本実施形態においては、陽極酸化処理の前に、アルミニウム材の熱処理(焼鈍処理)を行うことが好ましい。予め熱処理を行うことで、アルミニウム材のひずみが除去され、陽極酸化処理で形成する陽極酸化皮膜Pのクラックの発生も抑えることができる。具体的な処理条件については、特定の成分を含むアルミニウム材であるため、高温でも結晶状態が変化しない剛性の高い母材であるため、クラックの発生やひずみ除去を考慮して、200℃〜400℃、好ましくは、250℃〜380℃、更には、280℃〜350℃である。
熱処理の時間としては、15分〜90分間とすることが好ましい。更には、均一な陽極酸化皮膜Pを形成するために、前処理として酸やアルカリを用いたエッチング処理を行ってもよく、得られた枠体にごみ等が付着した場合に検知し易くするために予めブラスト処理等を施すようにしてもよい。一方、洗浄度を高めるために、陽極酸化処理後更には着色処理や封孔処理後に、純水洗浄、湯洗浄、超音波洗浄等の洗浄処理を行うようにしてもよい。
また、硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、枠体表面積100cmあたり100mlの純水を90℃に加温し、3時間浸漬させた溶出濃度で50μg以下であることが好ましく、より好ましくは25μg以下、更により好ましくは15μg以下である。
陽極酸化処理、酸浸漬溶解処理及び着色処理を経た枠体の表面には、これらの処理やそれ以外の処理で使用される水溶液や薬液等に含まれる酸やアルカリ成分が、そのままあるいはイオンとして付着しているものと考えられる。そこで、これらのなかから代表的であり、尚且つヘイズの発生に影響が考えられるイオン、すなわち無機酸イオンとして硫酸イオン(SO 2−)及び硝酸イオン(NO )、有機酸イオンとしてシュウ酸イオン(C 2−)、ギ酸イオン(HCOO)及び酢酸イオン(CHCOO)が少ないほうが好ましい。
上記イオン溶出試験における溶出イオンについて、より詳しくは、有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の溶出量が、枠体表面積100cmあたり純水100ml中への溶出濃度で35μg以下、好ましくは20μg以下、より好ましくは15μg以下であることがよい。有機酸イオンのなかでも、特にシュウ酸イオンの濃度が1μg以下、好ましくは0.8μg以下、より好ましくは0.3μg以下であることがよい。また、無機酸イオンでは、硫酸イオンの溶出量が枠体表面積100cmあたり純水100ml中への溶出濃度で0.5μg以下、好ましくは0.1μg以下、より好ましくは0.05μg以下であることがよい。溶出イオンの検出はイオンクロマトグラフ分析により行い、詳細な測定条件については後述する実施例にて説明する。
以上説明したように、ペリクル1は、ペリクル枠体2と、ペリクル枠体2の上縁面2eに展張支持されたペリクル膜3と、下縁面2fに設けられた粘着剤10とを備えており、粘着剤10は、アクリル系樹脂粘着剤であり、ペリクル枠体2は、Cu:0.5〜3.0%、Mg:1.5〜4.5%、Zn:4.0〜7.0%を含むアルミニウム材にて形成されている。このような構成により、マスクの平坦性に影響を与えにくく、且つヘイズの低減を図ることができる。
また、ペリクル枠体2には、異物を捕集したり耐光性のために内壁粘着材等を内壁に使用したり、内壁を被覆したりすることもできる。内壁粘着材としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリル系粘着材、フッ素系樹脂、フッ素系粘着材等が挙げられる。特に耐光性を考慮すると、好ましくは、フッ素系樹脂であり、具体的には、テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド共重合体等を例示できるが、特にこれらに限定されない。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
JIS A7075アルミニウム合金の中空押出し材を切断し、枠体外寸法149mm×113mm×4.6mm、枠体厚さ2mmとなるように切削研磨して、枠材を用意した。次いで、シュウ酸50g/Lの水溶液(C 2−:48.9g/L)を電解液として、30℃で電解電圧40Vの定電圧電解を15分行い、上記枠材を陽極酸化処理した。純水にて洗浄後、得られた陽極酸化皮膜を渦電流式膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ社製)にて確認したところ膜厚は3.8μmであった。
そして、上記処理した枠材を、有機染料(奥野製薬製TAC411)を濃度10g/Lで含有した水溶液に入れ、温度55℃にて10分間浸漬して染色処理した。その後、封孔剤(花見化学社製 シーリングX)を濃度40ml/Lで含有した水溶液に枠材を入れ、90℃にて20分浸漬して封孔処理を行った。そして純水にて十分に洗浄し、ペリクル枠体を得た。
(ペリクル枠体の平坦性評価)
また、上記で得られたペリクル枠体のマスク粘着材面の平坦度を測定した。平滑な常盤上にペリクル枠体のマスク粘着材面を上面にして置き、ペリクル枠体端面の高さを測定した。ペリクル枠体の測定は、ペリクル枠体上の各4隅と各直線の中央4点を測定して、各点の最大から最小を差分を算出し、その値を平坦度とした。測定機は、CNC三次元測定機(Mitutoyo製Mitutoyo9166 Model FALCIO Apex9166)を用いた。結果を図3に示す。なお、図3に示す「組成」においては、「i−BA:イソブチルアクリレート」、「BA:ブチルアクリレート」、「AA:アクリル酸」、「HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート」を示している。また、「硫酸イオン」において、「<0.04」は、定量下限以下を示している。
また、平坦度を測定した上記でペリクル枠体をポリエチレン袋に入れ、枠体表面積100cmあたり純水100mlを加えて密封し、90℃に保って3時間浸漬した。このようにして枠体からの溶出成分を抽出した抽出水を、セル温度35℃、カラム(IonPacAS19)温度35℃とし、1.0ml/minの条件でイオンクロマトグラフ分析装置(日本ダイオネクス社製ICS−2100)を用いて分析した。この抽出水から、硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン及び酢酸イオン)を検出した。結果を図3に示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体11は、周知の方法により調整した。具体的には、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に酢酸エチル(30重量部)を入れ、イソブチルアクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/2、2’−アゾビスイソブチロニトリルの混合物(32重量部)を48/48/1.5/2.5/0.5の重量比で仕込み、窒素雰囲気下中、この反応溶液を還流温度で8時間反応する。反応終了後、トルエン(38重量部)を添加して、不揮発分濃度32重量%のアクリル共重合体溶液を得た(重量平均分子量120万)。得られたアクリル共重合体溶液100重量部に多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.1重量部添加・攪拌混合し、粘着材組成物を得た。
その後、本実施例1の条件で得た別のペリクル枠体の片側面に光学的薄膜体として上縁面にペリクル膜を接着し、下縁面に調合した上記粘着材組成物をディスペンサーで塗布した。これを2段階で加熱乾燥・キュア(1段階:100℃、8分;2段階:180℃、8分)して、上記のペリクル用粘着材組成物からなる粘着材層を形成しペリクルを得た。ついで、シリコーン離型処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼り合わせ、室温(20±3℃)にて3日間養生させ、粘着力を安定化させ、粘着材付ペリクルを作製した。
(フォトマスクの変形の評価)
フォトマスクの変形の評価は、Tropel社製のFlatMaster200を用いて測定した。フォトマスク(6025石英)について、ペリクルを貼りつける前の平坦度を測定し、その後にペリクルを貼り付け、ペリクル貼り付け後の平坦度を測定した(測定範囲:135mm×110mm)。貼り付け前後の平坦度の差し引きを行い、ペリクルを貼り付けたことでどれだけ6025石英が変形したかを算出した。ペリクルの石英への貼り付けは簡易型マウンターで行った(加重:30Kgf、60sec)。
◎:ペリクルを貼り付けたことによるフォトマスクの変形量が100nm以下
○:ペリクルを貼り付けたことによるフォトマスクの変形量が200nm以下
×:ペリクルを貼り付けたことによるフォトマスクの変形量が200nm以上
(ヘイズテスト)
実施例で得た粘着剤付ペリクルについて、保護フィルムを剥がして、6025石英ブランクス基材に簡易型マウンターで加重(30kgf、60秒)貼りつけを行い、ペリクルを貼り付けた基材を得た。
得られた基材にArFエキシマレーザーにて0.7mJ/cm/pulse、周波数250Hzに8時間、5000J/cmの照射量で照射した。照射後の基材及びペリクルについて、ヘイズの発生有無を目視し、以下の基準で評価した。
○・・・基材及びペリクルにヘイズの発生なし
×・・・基材及びペリクルにヘイズの発生あり
[実施例2]
実施例1で用意したものと同じ枠材を、陽極酸化処理に先駆けて、大気中で330℃、30分間の熱処理を行った。ついで、陽極酸化処理での電解時間を20分にし、マスク粘着材については、多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.2部に変えること以外は実施例1と同様の方法でペリクルを作製し評価した。結果を図3に示す。
[比較例1]
JIS A6061アルミニウム合金を使用した以外は実施例1と同様にしてペリクル枠体を準備し、マスク粘着材の多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.1部に変えること以外は実施例1と同様の方法でペリクルを作製し評価した。結果を図3に示す。
[比較例2]
JIS A6061アルミニウム合金を使用し、陽極酸化処理に用いる電解液を硫酸160g/Lの水溶液として、15℃で電解電圧20Vの低電圧電解を25分行った以外は実施例1と同様にしてペリクル枠体を準備し、マスク粘着材の多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を2.0部に変えること以外は実施例1と同様の方法でペリクルを作製し評価した。結果を図3に示す。
1…ペリクル、2…ペリクル枠体、2e…上縁面(表面)、2f…下縁面(裏面)、3…ペリクル膜、10…粘着剤。

Claims (5)

  1. ペリクル枠体と、前記ペリクル枠体の表面に展張支持されたペリクル膜と、前記表面の反対側の裏面に設けられた粘着剤とを備えるペリクルであって、
    前記粘着剤は、アクリル系樹脂粘着剤であり、
    前記ペリクル枠体は、Cu:0.5〜3.0%、Mg:1.5〜4.5%、Zn:4.0〜7.0%を含むアルミニウム材にて形成されているペリクル。
  2. 前記粘着剤は、
    炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、硬化材との反応性を有する官能基を有するモノマーとの共重合体である(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、
    前記硬化材との反応生成物と、
    を含む請求項1に記載のペリクル。
  3. 前記硬化材は、多官能性エポキシ化合物及びイソシアネート化合物の少なくとも1つの硬化材である請求項2に記載のペリクル。
  4. 前記粘着剤の厚みは、0.1mm〜0.8mmである請求項1〜3のいずれか一項記載のペリクル。
  5. 前記アルミニウム材は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リン酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの電解液で陽極酸化処理されている請求項1〜4のいずれか一項記載のペリクル。
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