JP5319501B2 - ペリクル - Google Patents

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Description

本発明は、LSI、超LSIなどの半導体デバイスあるいは液晶表示板などを製造する際に、マスクに異物が付着することを防止するために使用されるリソグラフィー用ペリクルに関する。特に高解像度を必要とする露光において使用されるエキシマレーザーを使用したリソグラフィー用ペリクルに関する。特に好ましくは200nm以下の紫外光露光に使用されるリソグラフィー用ペリクルに関する。
半導体製造のフォトリソグラフィ工程において、ウエハー上に集積回路に対応したフォトレジストパターンを形成するためには、ステッパー(縮小投影露光装置)等の半導体製造装置が使用されている。ペリクルは枠形状を有するペリクル枠の一端面に透明薄膜を張設したものであり、異物が回路パターンを形成するためマスク上に直接付着することを防止するものである。従って、仮にフォトリソグラフィ工程において異物がペリクル上に付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハー上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による半導体集積回路の短絡や断線等を防ぐことができ、フォトリソグラフィ工程の製造歩留まりを向上させることができる。
近年、半導体装置の高集積化に伴って、フォトリソグラフィ工程に用いる露光光の短波長化が進められている。すなわち、ウエハー上に集積回路パターンを描写する際に、より狭い線幅で微細な回路パターンを描画できる技術が要求されている。これに対応するために、例えば、フォトリソグラフィ用ステッパーの露光光として、従来のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)から進んでKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)さらに、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のより短波長の光が用いられようとしている。
ペリクルをマスク上に固定する方法としては、粘着剤で剥離可能に固定する方法が通常使用され、そのための粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリブテン系、ポリウレタン系、シリコーン系等のものが知られている(特許文献1参照)。粘着剤層は一端面にペリクル膜が張設されたペリクル枠の他端面に形成されるのであるが、ペリクル膜またはマスクが汚れた場合には、マスクから一度ペリクルを剥離して汚れを除去しペリクルを再度マスクに貼り替える必要がある。
一方、上述した露光光の短波長化・高エネルギー化に伴い、露光に伴うペリクル膜またはマスクの汚れ(「ヘイズ」と呼ばれる。)が発生する頻度は高くなってきている。
上述の露光光の短波長化・高エネルギー化に伴い発生するヘイズの原因の1つとしてとして、露光中に粘着剤から発生する有機ガス成分が考えられている。これまで使われてきたシリコーン系粘着剤やゴム系粘着剤では、露光中に発生するガス成分が多い。粘着剤から発生するガス成分を低減する方法としては、特許文献2〜4に開示されるような技術が一般的には知られているが完全に問題の解決には至っていない。
特開平05−281711号公報 特開平10−171103号公報 特開2001−147518号公報 国際公開第2004−046827号パンフレット
本発明は、上記問題に鑑み、短波長化が進むフォトリソグラフィ工程でもフォトマスク上のヘイズの発生を効果的に防止することができるペリクルを提供することを目的とする
本発明者らが鋭意検討した結果、アクリル系粘着剤が有機ガス発生の抑制に効果的であることがわかった。しかし、アクリル系粘着剤の使用は有機ガス発生の抑制には効果的ではあるものの、それだけではフォトマスク上に発生するヘイズを十分に抑制することは出来なかった。
そこで、ヘイズ発生の原因について本発明者らが更に鋭意検討した結果、粘着剤中に含まれる重合開始剤がヘイズの発生に大きく寄与していることを突き止め、上記課題を解決するに至った。
すなわち本発明は
〔1〕ペリクル枠と、前記ペリクル枠の一端面にペリクル膜を有し、他端面に粘着剤を有するペリクルであって、前記粘着剤が重合開始末端を備えた重合体と重合開始剤を含む粘着剤組成物からなる粘着剤であって、前記粘着剤中の重合開始剤の全重量が粘着剤全重量に対し8ppm以下であることを特徴とするペリクル。
〔2〕前記重合開始剤が過酸化物系重合開始剤若しくはアゾ系重合開始剤、又はアルキルフェノン系重合開始剤若しくはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることを特徴とする〔1〕に記載のペリクル。
〔3〕前記重合開始末端を備えた重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と多官能性エポキシ化合物との反応生成物であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エポキシ基との反応性を有する官能基を有するモノマーとの共重合体であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のペリクル。
〔4〕前記重合開始末端を備えた重合体が前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部と多官能性エポキシ化合物0.05〜3重量部との反応生成物であることを特徴とする〔3〕に記載のペリクル。
〔5〕前記多官能性エポキシ化合物が2〜4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物であることを特徴とする〔3〕または〔4〕に記載のペリクル。
〔6〕前記エポキシ基との反応性を有する官能基を有するモノマーとしてアクリル酸を含み、該アクリル酸の量が該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する全モノマーに対し0.1〜5重量%であることを特徴とする〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載のペリクル。
〔7〕前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量が70万〜250万であることを特徴とする〔3〕〜〔6〕のいずれかに記載のペリクル。
に関する発明である。
本発明のペリクルを使えば、短波長化が進むフォトリソグラフィ工程でもフォトマスク上のヘイズの発生を効果的に防止することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
ペリクルに使用する粘着剤に残存する重合開始剤については、粘着剤重量に対し8ppm以下であることが好ましい。粘着剤中に残存する重合開始剤が粘着剤全重量に対し8ppm以下であるとヘイズの発生を大幅に抑制することができる。粘着剤層に残存する重合開始剤の量を低減させることで、フォトマスクのヘイズが改善する理由について定かではないが、以下のように考えている。
ヘイズの発生原因はいくつか考えられるが、露光雰囲気下に存在する有機ガス成分が露光光のエネルギーにより化学反応を起こし、その反応生成物がフォトマスク上に付着することがヘイズ発生の主な原因であると考える。粘着剤層にある一定量以上の重合開始剤が存在すると、その重合開始剤が露光光のエネルギーにより開裂し、有機ガスの化学反応のトリガーとなり、その結果、ヘイズの原因となる反応生成物の生成量が格段に多くなると推察している。
以上理由により、ペリクルに使用する粘着剤に残存する重合開始剤については、粘着剤重量に対し8ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下が良い。
粘着剤層に残存する重合開始剤を低減・コントロールする方法については、粘着剤ポリマーを重合する際の重合開始剤量を低減することや熱分解しやすい重合開始剤を使用すること、また粘着剤の塗布・乾燥工程にて、高温・長時間の温度をかけ、乾燥工程で重合開始剤を分解させる方法などがある。
重合開始剤の熱分解速度を表す指標に10時間半減期温度がある。半減期とは、重合開始剤が元々の量の半分分解するまでの時間を示し、10時間半減期温度は半減期が10時間になる温度を示す。10時間半減期温度が低い重合開始剤の方が熱分解しやすいため、粘着剤層に残存しにくい。特に10時間半減期温度が80℃以下、好ましくは75℃以下の重合開始剤を使用することが好ましい。このような重合開始剤に、アゾ系の重合開始剤であれば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度60℃)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(10時間半減期温度66℃)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度67℃)、過酸化物系の重合開始剤であればジベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度74℃)、ジラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度62℃)などが挙げられるがこの限りではない。
また、光重合開始剤もヘイズ発生の原因となり得る。粘着剤層に残存する光重合開始剤を低減・コントロールする方法としては加熱により熱分解や乾燥・蒸発させる方法や、紫外線を照射し、光重合開始剤を分解させる方法、上記方法によって分解しやすい光重合開始剤を使用する方法等が考えられる。上記方法によって分解しやすい光重合開始剤としては、アルキルフェノン系重合開始剤やアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系重合開始剤としては、具体的には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
本願発明のペリクルに使用する粘着剤は、粘着剤中に残存する重合開始剤の全重量が粘着剤全重量に対し8ppm以下であれば限定は無いが、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と多官能性エポキシ化合物との反応生成物を含んでなる組成物からなる粘着剤であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下「A成分」という。)と、エポキシ基との反応性を有する官能基を有するモノマー(以下「B成分」という。)との少なくとも2つのモノマー成分を共重合させることによって得られる共重合体である粘着剤が、有機ガスの発生が少なく、マスクとの接着力が十分で、且つ、剥離後の糊残りが少ないという点で好ましい。
アルキルエステル共重合体は、A成分が99〜80重量%、B成分が1〜20重量%である単量体混合物の共重合体であることがマスクへの適度な接着力を発現することができ、より好ましい。
ここで、A成分のモノマーを、炭素数4〜14のアルキル基が直鎖状のもの(以下「A1成分」という。)と炭素数4〜14のアルキル基が分岐状のもの(以下「A2成分」という。)に分けた場合に、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、A2成分が9〜59%である単量体混合物の共重合体であると、粘着力に優れるのでより好ましい。A1成分が40〜90重量%、A2成分が9〜59重量%、B成分が1〜20重量%である単量体混合物の共重合体であると、剥離後の糊残りが少なくなりさらに好ましい。
A1成分のアクリレ―ト系モノマーは、アルキル基の炭素数が4〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ) アクリル酸ドデシル、(メタ) アクリル酸ラウリルなどの直鎖脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、マスクとの適度な接着性を発現するため、好ましく用いられる。
A2成分のアクリレ―ト系モノマーは、分岐状のアルキル鎖を持つものであり、具体的には、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルがあげられる。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、共重合性の点から、(メタ)アクリル酸イソブチルや(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく用いられる。
B成分のモノマーは、上記A成分のモノマーと共重合可能なモノマーであって、エポキシ基との反応性を有するモノマーである。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーや、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマーである。これらは単独でも2種以上併せて用いてもよい。なかでも、共重合性、汎用性等の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。特に糊残りの点から(メタ)アクリル酸が好ましく、(メタ)アクリル酸は(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する全モノマーに対し0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは0.8〜3重量%含有することが良い。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、上記のA1成分のアクリレート系モノマーは、モノマー混合物中、40〜90重量%、好ましくは45〜80重量%の割合で用いられる。また、A2成分は9〜59重量%、好ましくは15〜50重量%、B成分は1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%となるようにするのがよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量が70万以上、250万以下であると、粘着剤層の凝集力、接着力が適度な大きさになり、糊残りしにくく、且つ、十分な接着力、耐荷重性を持つ粘着剤となり、好ましい。重量平均分子量は、好ましくは90万以上230万以下、さらに好ましくは100万以上200万以下が好ましい。重量平均分子量の制御方法については公知の方法で制御できる。具体的には、一般に重合反応するときのモノマー濃度が高いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にあり、重合開始剤量の量が少ないほど、又、重合温度が低いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にある。
このような(メタ)アクリルエステル共重合体の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリルエステル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。
具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜2.0重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
好ましい重合開始剤としては、上記に挙げたような過酸化物系重合開始剤若しくはアゾ系重合開始剤、又はアルキルフェノン系重合開始剤若しくはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤などが挙げられる。
本願発明のペリクルに使用する粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と多官能性エポキシ化合物からなる架橋剤との反応生成物を含んでなる組成物からなる粘着剤であることが好ましい。
かかる架橋剤としては、多官能性エポキシ化合物以外にも、金属塩、金属アルコキシド、アルデヒド系化合物、非アミノ樹脂系アミノ化合物、尿素系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物など、通常の粘着剤に使用される架橋剤をあげることができるが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が有する官能基成分との反応性の点から、多官能性エポキシ化合物が好ましい。
具体的には、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、N、N、N’、N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどがあげられる。これらの中でも2〜4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が好ましく、4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が反応性の点から好適に用いられる。反応性が良いと粘着剤と塗布後、架橋反応が速やかに終了するので、特性が短時間で安定し、生産性の面で優れる。
多官能性エポキシ化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部に対して、0.05〜3 重量部であることが好ましく、0.1〜2.5重量部であることがより好ましい。更には、0.15〜2.0重量部が好ましい。多官能性エポキシ化合物の含有量が上記範囲であると、架橋密度が適度な密度となり、糊残りしにくく、且つ、十分な接着力、耐荷重性を有する粘着剤となる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と多官能性エポキシ化合物との反応生成物を得るための反応は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体溶液と多官能性エポキシ化合物溶液を秤量し、均一に混ざるように混合・攪拌し、溶剤を加熱乾燥除去した後に、加温することで迅速に進行する。
また、粘着剤組成物には、上記の反応生成物以外に、必要に応じて、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線安定剤などの従来公知の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種類または2種以上を使用することが可能である。ただし、所望する物性が得られるように、添加量は適時設定することが好ましい。
本発明のペリクルは、例えば以下の方法で好適に製造することができる。
第一に、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体溶液と多官能性エポキシ化合物溶液とを混合し粘着剤前駆体組成物を得る。この場合、所定の厚み・幅のマスク粘着剤層を塗布するために、粘着剤前駆体組成物をさらに溶媒で希釈し、溶液濃度(粘度)を調整する。希釈のための溶媒は、溶解性、蒸発速度などの観点から選ばれる。好ましい溶媒の具体例としては、アセトン、酢酸エチル、トルエンがあげられるが、これらに限定されるものではない。
第二に、該粘着剤前駆体組成物を、一端面に接着されたペリクル膜を有するペリクル枠の他端面に塗布する。塗布方法は、特に限定されるものではないが、ディスペンサーを用いて塗布することが好ましい。前記粘着剤前駆体組成物中のアクリル共重合体溶液(溶媒と(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる溶液をいう。)粘度については特に限定はされないが、好ましくは50P以下、より好ましくは10〜40P、さらに好ましくは20〜30P程度の粘度である(B型粘度計、25℃)。ディスペンサーでの塗布において溶媒で希釈することによって、塗布液の糸引きが少なく、安定した幅・厚みに調整することが容易となる。
第三に、塗布した粘着剤層を加熱乾燥させることにより、溶媒及び/又は残存モノマーを除去することができる。さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が有する官能基と多官能エポキシ化合物とが加熱反応して架橋構造を形成すると、ペリクル枠と粘着剤組成物とが一体化し、ペリクル枠表面に密着する。
かかる乾燥温度については、溶媒および残存モノマーの沸点、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の分解温度を考慮し、50〜200℃であることが好ましく、60〜190℃であることが好ましい。
乾燥、架橋後に、粘着面を保護するための離型シートを貼っても良い。離型シートは、一般的にはポリエステルなどの厚さ30〜200μm程度のフィルムを用いる。また、粘着剤から離型シートを剥がす際の剥離力が大きいと、剥がす際に粘着剤が変形する恐れがあるので、適切な剥離力になるように、粘着剤と接するフィルム表面にシリコーンやフッ素などの離型処理を行っても良い。
粘着面を保護するための離型シートを貼った後、加重をかけて、粘着剤表面を略平坦に成型しても良い。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
<実施例1>
(粘着剤前駆体組成物の調整)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体1は、周知の方法により調整した。具体的には、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に酢酸エチル(30重量部)を入れ、イソブチルアクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(10時間半減期温度60℃)の混合物(32重量部)を48/48/1.5/2.5/1.0の重量比で仕込み、窒素雰囲気下中、この反応溶液を60℃で8時間反応させた。反応終了後、トルエン(38重量部)を添加して、不揮発分濃度32重量% のアクリル共重合体溶液を得た(重量平均分子量120万)。得られたアクリル共重合体溶液100重量部に多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.25重量部添加・攪拌混合し、粘着剤前駆体組成物を得た。
(粘着剤付ペリクルの作製)
その後、一端面にペリクル膜を接着したアルミ合金製のペリクル枠(外径113mm×149mm、内径109mm×145mm、高さ4.8mm)の他端面に調合した上記粘着剤前駆体組成物をディスペンサーで塗布した。これを2段階で加熱乾燥・キュア(1段階:100℃、8分;2段階:180℃、8分)して、上記ペリクル用粘着剤前駆体組成物からなる粘着剤層(厚み0.2mm)を形成したペリクルを得た。その後、ペリクルを130℃60分加熱処理し、粘着剤層中に残存する2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)量を調整した。ついで、シリコーン離型処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼り合わせ、室温(20±3℃)にて3日間養生させ、粘着力を安定化させ、粘着剤付ペリクルを作製した。
得られた粘着剤付ペリクルについて、以下の方法で評価を実施した。
(剥離性評価)
実施例で得た粘着剤付ペリクルについて、該護フィルムを剥がして、6025クロム付きマスクブランクス基材に簡易型マウンターで加重(30kgf、60sec)貼付を行い、ペリクルを貼り付けた基材を得た。
ペリクルを貼り付けた基材を、室温(20±3℃)にて2時間放置後、基材を水平に固定し、ペリクルのひとつの角を引張試験機により、マスク面に対し垂直に5mm/minの速度で引き上げ、ペリクルの剥離を行った。剥離性は、各被着体表面の様子を観察し、以下の基準で評価した。
◎:糊残り面積が全体の貼付け面積の0〜5%
○:糊残り面積が全体の貼付け面積の6〜20%
×:糊残り面積が全体の貼付け面積の21〜100%
(重合開始剤の残存量測定)
粘着剤中に残存する重合開始剤の残存量を高速液体クロマトク゛ラフィー(HPLC)を用いて分析した。
粘着剤0.2gを20mLスクリュー管に採取し、アセトニトリル10mLを添加した。定量成分を抽出するために、浸とう器で120r.p.m.、25℃、8時間攪拌した。分析装置、抽出条件を以下のように設定した。
分析装置:東ソー製、HPL CCPM
カラム:NuCLEOSLL 7C18(4.8mmφ×250mm)
カラム圧力:41Kg/cm2
カラム温度:40℃
注入量:10μL
重合開始剤の定量は絶対検量線により求めた重量をペリクル1枚の粘着剤重量で割って算出した。
(耐荷重試験)
実施例で得た粘着剤付ペリクルについて、保護フィルムを剥がして、6025石英ブランクス基材および6025クロム付きマスクブランクス基材に簡易型マウンターで荷重(30kgf、60sec)貼付を行い、ペリクルを貼り付けた基材を得た。
ペリクルを貼り付けた基材に1kgの錘をつけ室温で放置した。基材からペリクルが剥離するまでの時間を以下の基準で評価した。
◎:3日経過してもエアパスなし
○:1日経過後にペリクルが基材から落下する
×:3時間経過後にペリクルが基材から落下する
(ヘイズテスト)
実施例で得た粘着剤付ペリクルについて、保護フィルムを剥がして、6025石英ブランクス基材に簡易型マウンターで加重(30kgf、60秒)貼りつけを行い、ペリクルを貼り付けた基材を得た。
得られた基材にArFエキシマレーザーにて0.7mJ/cm2/pulse、周波数250Hzにて13時間、8000J/cm2の照射量で照射した。照射後の基材及びペリクルについて、ヘイズの発生有無を目視し、以下の基準で評価した。
○・・・基材及びペリクルにヘイズの発生なし
×・・・基材及びペリクルにヘイズの発生あり
<実施例2>
メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体2は、周知の方法により調整した。具体的には、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に酢酸エチル(30重量部)を入れ、ブチルアクリレート/アクリル酸2、2’−アゾビスイソブチロニトリルの混合物(32重量部)を99/1/1.0の重量比で仕込み、窒素雰囲気下中、この反応溶液を60℃で8時間反応する。反応終了後、トルエン(38重量部)を添加して、不揮発分濃度32重量% のアクリル共重合体溶液を得た(重量平均分子量180万)。得られたアクリル共重合体溶液100重量部に多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.15重量部添加・攪拌混合し、粘着剤前駆体組成物を得た。以下実施例1と同様にペリクルサンプルを作製し、評価した。
<実施例3>
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体3は、周知の方法により調整した。具体的には、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に酢酸エチル(50重量部)を入れ、ブチルアクリレート/アクリル酸/2、2’−アゾビスイソブチロニトリルの混合物(32重量部)を99/1/2.0の重量比で仕込み、窒素雰囲気下中、この反応溶液を65℃で8時間反応する。反応終了後、トルエン(18重量部)を添加して、不揮発分濃度32重量% のアクリル共重合体溶液を得た(重量平均分子量60万)。得られたアクリル共重合体溶液100重量部に多官能性エポキシ化合物(1,3−ビスN,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、不揮発分濃度5%、トルエン溶液)を0.25重量部添加・攪拌混合し、粘着剤前駆体組成物を得た。以下実施例1と同様にペリクルサンプルを作製し、評価した。
<実施例4>
実施例1で得た粘着材層付ペリクルの加熱処理条件を130℃60分から100℃60分に変更し、実施例1と同様にペリクルサンプルを作製・評価した。
<比較例1>
実施例1で得た粘着材層付ペリクルを130℃60分の加熱処理せずにペリクルサンプルを作製し、実施例1と同様に評価した。
<比較例2>
シリコーン粘着剤(東レダウコーニング(株)製、SD4580(商品名)不揮発分濃度40%、トルエン/キシレン溶液)100重量部に対して硬化剤(東レダウコーニング(株)製、SRX212)を0.9重量部添加し粘着剤前駆体組成物を得た。以下実施例1と同様にペリクルサンプルを作製し、評価した。
<比較例3>
スチレンエチレンブチレンスチレンのゴム系ホットメルト粘着剤を端面にペリクル膜を接着したアルミ合金製のペリクル枠(外径113mm×149mm、内径109mm×145mm、高さ4.8mm)の他端面に塗布した。以下実施例1と同様にペリクルサンプルを作製し評価した。
Figure 0005319501
本発明のペリクルは、フォトマスク上のヘイズの発生を効果的に防止することができる為、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)、TFT型LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等のリソグラフィー工程において好適に用いることが出来る。

Claims (7)

  1. ペリクル枠と、前記ペリクル枠の一端面にペリクル膜を有し、他端面に粘着剤を有するペリクルであって、前記粘着剤が重合開始末端を備えた重合体と重合開始剤を含む粘着剤組成物からなる粘着剤であって、前記粘着剤中の重合開始剤の全重量が粘着剤全重量に対し8ppm以下であることを特徴とするペリクル。
  2. 前記重合開始剤が過酸化物系重合開始剤若しくはアゾ系重合開始剤、又はアルキルフェノン系重合開始剤若しくはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることを特徴とする請求項1に記載のペリクル。
  3. 前記重合開始末端を備えた重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と多官能性エポキシ化合物との反応生成物であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エポキシ基との反応性を有する官能基を有するモノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載のペリクル。
  4. 前記重合開始末端を備えた重合体が前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100重量部と多官能性エポキシ化合物0.05〜3重量部との反応生成物であることを特徴とする請求項3に記載のペリクル。
  5. 前記多官能性エポキシ化合物が2〜4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物であることを特徴とする請求項3または4に記載のペリクル。
  6. 前記エポキシ基との反応性を有する官能基を有するモノマーとしてアクリル酸を含み、該アクリル酸の量が該(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する全モノマーに対し0.1〜5重量%であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のペリクル。
  7. 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量が70万〜250万であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のペリクル。
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