JP2012086376A - トランスファ成形機におけるプランジャの制御方法及びプランジャの制御機構 - Google Patents

トランスファ成形機におけるプランジャの制御方法及びプランジャの制御機構 Download PDF

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Abstract

【課題】 複数のタブレットにプランジャが当接してから複数同時に充填成形することで、製品の加工条件のばらつきを抑え、品質の安定した製品を作り込むことができるプランジャの制御機構を提供する。
【解決手段】 複数のポット31に配されたタブレット20をそれぞれ加圧するプランジャ50と、複数の油室60によって各プランジャ50を油圧保持する油圧バランサ1と、油圧バランサ1内の各油室60の連通路を開閉する油圧ピストン7を油圧制御する制御回路8と、油圧回路C1上に配されて油圧バランサ1内の油室圧力値の上昇を検出する圧力センサPeと、油圧バランサ1と共にプランジャを駆動する射出駆動装置9を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トランスファ成形機におけるプランジャの制御方法及びプランジャの制御機構に関する。
トランスファ成形は樹脂成形の一種であり、予め所定形状に加工された成形用の樹脂材料(タブレット)を金型内のポットに入れておき、ポット内でタブレットを加熱することで溶融させ、溶融樹脂をプランジャで加圧することでスプル、ランナを経由させて金型内のキャビティに充填し、冷却して成形する。一般にタブレットは溶融をスムーズにするために、プランジャで加圧する前に予熱されている。トランスファ成形は、エア入りが少なく、ほとんどはみ出しがでない、成形品の寸法精度が得られやすい、複雑な形状の成形品を成形することができる、金属の埋め込み(インサート)を行う製品に適しているなど、種々の特長がある。
トランスファ成形では、生産効率を高めるために複数のキャビティを使用し、タブレットを各ポットに1つずつ入れて、複数同時に成形するマルチプランジャ方式が主流となっている。複数同時成形を行うマルチプランジャ方式では、複数のプランジャが同じ圧力で各タブレットを均等にキャビティ充填する必要があり、油圧を用いた等圧機構(タブレット油圧バランサ)を備えている。タブレット油圧バランサは、トランスファ成形機の射出駆動装置(射出シリンダ)と平行配置された複数本のプランジャロッドとの間に介装されて、射出推力を各プランジャに均等に分配する。
従来のプランジャの制御機構(プランジャの制御方法)としては、例えば特許文献1から4が挙げられる。特許文献1には、前記射出シリンダにより駆動される可動ブロックに、複数本のプランジャロッドに対応して同一断面積の複数本のシリンダ室を並列形成し、各シリンダ室にプランジャロッドの基部を挿入してピストンを構成すると共に、可動ブロック内に設けられた連通路により各シリンダ室のボトム側の空間を相互に連通させ、ここに圧力制御されない大気圧の液体(油)を封入して、複数本のプランジャロッドを支持する等圧機構が記載されている。特許文献2には、前記複数本のプランジャの前記金型ポット内への摺動圧入側と反対側に接合された同一受圧面積を有する受圧プランジャピストンが、前記密閉流体型イコライザーユニット(タブレット油圧バランサと同義)のケースを摺動可能に貫通して、内部の密閉流体内に挿入され、この密閉流体(油)から圧力を伝える等圧機構が記載されている。特許文献3には、油圧シリンダのピストンに上記プランジャを支持させ、かつこれらの油圧シリンダに共通のオイル溜部を設けてこれらの油圧シリンダの各ピストンに等しい油圧を付与するようにし、上記モータを駆動して上記プランジャを上昇させて加熱溶融されたタブレットを等しい油圧で上記キャビティに圧入するようにするとともに、上記キャビティ内の内圧が上記エジェクタピンを介して伝達される感圧装置を設けてこの感圧装置により上記キャビティの内圧を測定し、制御装置により、この感圧装置の測定値と指令値とを比較して、上記モータに補正指令を加えることにより、測定値が指令値に一致するよう制御するとの記述がある。特許文献4には、シリンダブロックに多数分割成形され、流動体連通用の上部連通路及び下部連通路を有すると共に、ピストンを内蔵した等圧シリンダと、前記上部連通路を開閉する上部切換弁及び前記下部連通路を開閉する下部切換弁と、ピストンロッドと一体的に設けられ、前記ポットに下方から嵌合するプランジャを備えた等圧機構が記載されている。
実用新案登録第3027691号公報 特開平5−261753号公報 特許第2720548号公報 特開平7−1497号公報
トランスファ成形では、一般に、ポット内にセットしたタブレットを軟化させておき、次に、加熱溶融させた状態のタブレットをプランジャで金型内のキャビティに加圧充填し、冷却して成形する。ここでタブレットは、通常、長尺の樹脂を所定サイズに切断加工して使用することから、これらタブレットの寸法には、少なからず切断による高さばらつきがある。しかし、プランジャによる加圧充填に際し、これら個々のタブレットの高さばらつきを考慮した充填時間の制御ができているとはいい難い。つまり、実作業においては、速く充填されたり、遅く充填されたり充填のタイミングがばらつく。この点において、特許文献1から3に記載の発明の詳細な説明には、油圧バランサによって、高さばらつきのある複数のタブレットに対して各プランジャが等圧で加圧できることしか記載されておらず、充填のタイミングについては何ら記述が見当たらない。加えて、特許文献1から3に記述の技術は、油圧バランサを備えるが故に、すべてのタブレットにプランジャが当接するまでの間に、プランジャが射出シリンダの動作に追従しない期間(区間)が存在し、その期間がタブレットの高さばらつきに起因して1回の充填作業毎にばらつくことを一切考慮していない。ちなみに、プランジャが射出シリンダの動作に追従しない期間(区間)とは、油圧バランサ内において、プランジャが背の高いタブレットに当接し、油圧バランサによって、タブレットに当接したプランジャが引っ込み、それによって、まだタブレットに当接していないプランジャが油圧バランサから押し出される動作を行っている間の期間(区間)を指す。そのため、油圧バランサとともにプランジャを駆動することになる射出シリンダを制御する際には、その射出シリンダの動作をいくら精度良く制御しても、プランジャが射出シリンダの動作に追従しない期間(区間)が存在する。よって、プランジャが射出シリンダの動作に追従しない期間(区間)がばらつくことを考慮した制御となっていなければ、タブレットが溶融し金型内のキャビティに充填を開始した以降のプランジャ動作を、充填作業毎に再現性よく動作させることができない。また、特許文献4に記載されている従来の方式では、背の高いタブレットにプランジャが当接し加熱した段階でも、背の低いタブレットにはプランジャが当接しておらず、その結果、先に背の高いタブレットが溶融し金型内のキャビティに充填開始し、後から背の低いタブレットが溶融し金型内のキャビティに充填開始する事態が生じる。このため、充填のタイミングがばらついてしまい、品質の安定した製品を作り込む上での障害となっている。なお、予めタブレットの高さを正確に揃える方法も考えられるが、タブレットの製造コストが高くなってしまい、実用的ではない。
そこで本発明の目的は、タブレットの高さばらつきがあったとしても、充填のタイミングを適切に制御することで、品質の安定した製品を作り込むことができ、しかも、現状の方式を大幅に変更することなく実現することが出来るトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法及びプランジャの制御機構を提供することにある。
本発明のトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法は、複数のポットに配されたタブレットをそれぞれ加圧するプランジャと、複数の油室によって各プランジャを油圧保持する油圧バランサと、油圧バランサと共にプランジャを駆動する射出駆動手段と、油圧バランサと射出駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態でプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする。
本発明では、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給する。つまり、少なくとも2つ以上、好ましくはすべてのタブレットにプランジャを当接させてから、当接状態のまま同時に前進させて充填作業に入ることによって、各プランジャが各タブレットに当接した時点から射出駆動装置の動きに追従させて、充填のタイミングを適切に制御することができ、充填の初期段階から各タブレットに対する充填時間及び充填圧力を揃えることが可能となり、品質の安定した製品を作り込むことができる。また、本発明によれば、上記のように、プランジャが射出駆動装置に追従しない期間(区間)を考慮して充填のタイミングを適切に制御したうえで、溶融した各タブレットを金型内の各キャビティに一斉に充填する作業を行う。例えば、その充填作業を一般的に圧力充填制御に比べて充填時間等の再現性が高いとされる速度充填制御で行うにしても、本発明によれば、本発明を実施しないままその充填作業をその速度充填制御で行う場合と比べて、その充填作業中のプランジャ動作や充填時間等についての充填作業毎の再現性をより安定させて、より品質の良い製品を成形できる。もちろん、本発明によれば、上記速度充填制御以外の例えば圧力充填制御などでも、その速度充填制御の場合と同様にその充填時間等の再現性が安定する。
本発明は、前記油圧バランサ内の各油室の連通路を開閉する開閉手段を備え、各油室の連通路を開いてプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させてから、各油室の連通路を閉じた状態とし、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする。
本発明によれば、前記制御回路が開閉手段を油圧制御することで、高さばらつきのある複数のタブレットに対して各プランジャを当接させることが容易であり、かつ、各油室の連通路を閉じることで、各油室が個別分離してプランジャがロック状態となるので、各プランジャを射出シリンダの動きに追従させることが容易である。
ここで、各油室の連通路を開いてから、射出駆動装置によって各プランジャの前進を開始させる時点での各油室の油圧は、大気圧等の低圧が好ましい。油圧を低圧とすることで、各プランジャを各タブレットに当接させるため、個々のタブレットの高さ寸法の高低差を越える長さの範囲で押し出させたり、引っ込めさせたりするように設定することが容易であるからである。
本発明は、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態で油室圧力を検出する検出手段を備え、前記制御手段が検出手段から送出された信号を受信し、油室圧力の上昇値から、少なくとも2以上のプランジャが各タブレットに当接したと判定することを特徴とする。
前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態で射出駆動装置を前進させて、油圧バランサの働きによって各プランジャを各タブレットに当接させ、この当接状態で各プランジャが前進すると油室圧力が上昇する。本発明によれば、前記制御手段が検出手段から送出された信号を受信し、この油室圧力の上昇値から、各プランジャが各タブレットに当接したと判定することで、現状設備に大きな変更を加えなくとも容易かつ確実な当接検知を行なうことができる。
本発明は、前記制御手段が、油圧バランサ内の各油室の連通路の合流箇所に配された開閉手段を油圧制御して、前記連通路の開閉を行なうことを特徴とする。
本発明によれば、油圧バランサ内の各油室の連通路の合流箇所に配された開閉手段を油圧制御することで、各油室の連通路の開閉が容易かつ確実に制御できる。
本発明のトランスファ成形機におけるプランジャの制御機構は、複数のポットに配されたタブレットをそれぞれ加圧するプランジャと、複数の油室によって各プランジャを油圧保持する油圧バランサと、油圧バランサと共にプランジャを駆動する射出駆動装置と、油圧バランサと射出駆動装置を制御する制御回路とを備え、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態でプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする。
本発明によれば、制御回路が、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態でプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給する。すなわち、各プランジャを各タブレットに当接させてから充填作業に入ることで、各プランジャを射出駆動装置の動きに追従させることができ、タブレットの高さのばらつきがあっても、金型に対する樹脂材料の供給タイミングを揃えて設定条件で供給することができる。
本発明は、前記油圧バランサ内の各油室の連通路を開閉する開閉手段を備え、前記制御回路が開閉手段を油圧制御し、各油室の連通路を開いてプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させてから、各油室の連通路を閉じた状態とし、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする。
本発明によれば、前記制御回路が開閉手段を油圧制御することで、高さばらつきのある複数のタブレットに対して各プランジャを当接させることが容易であり、かつ、各油室の連通路を閉じることで、各油室が個別分離してプランジャがロック状態となるので、各プランジャを射出シリンダの動きに追従させることが容易である。
本発明は、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態で油室圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御回路が圧力センサから送出された信号を受信し、油室圧力の上昇値から、少なくとも2以上のプランジャが各タブレットに当接したと判定することを特徴とする。
本発明によれば、前記制御回路が圧力センサから送出された信号を受信し、油室圧力の上昇値から、各プランジャが各タブレットに当接したと判定することで、現状設備に大きな変更を加えなくとも容易かつ確実な当接検知を行なうことができる。この圧力センサは、各油室への送液圧力を検出する圧力センサとしても使用できる。
本発明は、前記開閉手段が油圧ピストンであり、前記油圧バランサ内の各油室の連通路の合流箇所に配されて、前記連通路の開閉を行なうことを特徴とする。
本発明によれば、油圧ピストンが前記連通路の合流箇所に配されることで、1つの油圧ピストンで複数の油室を同時に開閉することができ、シンプルで操作性がよく、信頼性の高い制御機構となる。すなわち、各タブレットに当接した各プランジャを射出駆動装置に正確に追従動作させるためには、1つの油圧ピストンで前記連通路の合流箇所を開閉させることが効率よく正確な制御となる。
本発明によれば、一つの射出駆動装置により、前記複数のプランジャを同時に前進させることができ、シンプルで操作性がよく、信頼性の高い作動機構となる。換言すると、複数のプランジャが各タブレットに当接した状態で前進駆動されるので、一つの射出駆動装置で正確な駆動が保障される。
本発明によれば、前記射出駆動装置がプランジャを前進させ、少なくとも2つ以上、好ましくはすべてのプランジャがタブレット(高さの異なるタブレット)に当接してから、前記射出駆動装置がプランジャを前進させて複数同時に成形することで、各プランジャを駆動装置(射出シリンダ)の動きに追従させることができ、タブレットの高さばらつきがあったとしても、充填のタイミングを適切に制御することで、品質の安定した製品を高い再現性で作り込むことができ、しかも、現状の方式を大幅に変更することなく実現することが出来る。
また、本発明によれば、前記検出手段による各プランジャの当接検知の後、前記開閉手段が各油室の連通路を閉じることで、各油室が個別分離してプランジャがロック状態となるので、各プランジャを射出シリンダの動きに当接状態のまま追従させることが容易である。また、本発明によれば、油圧ピストンが前記連通路の合流箇所に配されることで、1つの油圧ピストンで複数の油室を同時に開閉することとなり、シンプルで操作性がよく、信頼性の高い制御機構となる。
本発明の実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、各油室の連通路を開いてプランジャを引っ込めた状態を示している。 上記実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、プランジャを押し出した状態を示している。 上記実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、背の高いタブレットにプランジャを当接させた状態を示している。 上記実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、各タブレットにプランジャを当接させた状態を示している。 上記実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、各油室の連通路を閉じた状態を示している。 上記実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図であり、射出作業を行った状態を示している。 本発明の実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧回路を示す構成図である。 本発明の実施形態のプランジャの制御機構手順を示すフローチャートである。 本発明のトランスファ成形機の油圧バランサの開閉手段と複数のプランジャとの位置関係の例を示す平面図である。 本発明のトランスファ成形機の油圧バランサの開閉手段と複数のプランジャとの位置関係の他の例を示す平面図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
(実施形態)
図1から図6は、本発明の実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ内部の動作を示す構成図である。本実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧バランサ1には、少なくとも2つ以上のプランジャ50(51,52等)が備わっており、個々のプランジャ50の基部に備えるピストン部は対応する各油圧シリンダ60(61、62等)内に配されており、個々の油圧シリンダ60からの油圧で対応するプランジャ50が前方に押し出されたり、後方に引っ込められたりする。図1から図6に示す例では、各油圧シリンダ60内に、各プランジャ50基部のピストン部が配されるとともに、そのピストン部の前面側(ピストンロッド側)の各油室60a(61a、62a等)と、そのピストン部の背面側(ピストンヘッド側)の各油室60b(61b、62b等)とが形成されている。各油圧シリンダ60内のピストンヘッド側の各油室60bは、油が行き来できるように連通路610にて連結されており、その連通路610の合流箇所71aは、後述される開閉手段である油圧ピストン7の前面側(ピストンロッド側)の油室71aとなる。開閉手段用の油圧シリンダ71内には、油圧ピストン7が配されるとともに、そのピストン7の前面側(ピストンロッド側)の油室71aと、そのピストン7の背面側(ピストンヘッド側)の油室71bとが形成される。また、油圧ピストン7は、そのロッド先端部分が油圧シリンダ71の縮径部分内に配されることで、その縮径部分内に油室71cを形成する。その油圧ピストン7の進退は、ピストンヘッド側の油室71bとピストンロッド先端前方の油室71cの油圧に応じて動作する。そして、油圧バランサ1は、油が流れる経路となる油圧回路C1の一部を構成している(図7を参照)。なお、プランジャ50基部のピストン部前面側(ピストンロッド側)の各油室60a同士も別途連通路で連結されるとなお良い。また、少なくとも2つ以上のプランジャ50(51,52等)と記述するのは、複数の製品を製造する最小単位が2個であることによるものであり、2個以上であれば、いくつ配されていても良く、例えば3つ以上のプランジャのうち2つ以上の場合をも含んでいる。本実施の形態では、最小構成単位の2個で説明する。油圧バランサ1は、複数のプランジャ50に対して一つであり、連通路610にて、複数のプランジャ50を駆動させる油を供給する(図1から図6)。
本実施の形態のトランスファ成形機には、複数のポット31に配されたタブレット20をそれぞれ加圧するプランジャ50と、複数の各プランジャ50を油圧保持する油圧バランサ1と、油圧バランサ1と共にプランジャ50を駆動する射出駆動装置9と、前記複数のプランジャ50が対応する各タブレット20に当接したことを検知する検出手段Peとが備わっている。油圧バランサ1や射出駆動装置9は、制御回路8によって制御される。
図1から図6に示すように、トランスファ成形では、予め所定形状に加工された成形用の樹脂材料(タブレット)20を金型3,4のうち上型3内のポット31に入れておき、ポット31内でタブレット20を加熱することで溶融させ、溶融樹脂をプランジャ50で加圧することでスプル32やランナを経由させて金型のうち下型4内のキャビティ41に充填し、冷却して成形する。一般にタブレット20は溶融をスムーズにするために、プランジャ50で加圧する前に予熱されている。ここでは、説明の便宜上、図1から図6における下方向(下型4の側)を前方とし、上方向(射出駆動装置9の側)を後方として説明する。本実施形態では、油圧バランサ1の正面からプランジャ50が突き出て上型3内のタブレット20を押圧する構成となっており、油圧バランサ1の背面をその後方に配された駆動装置9が油圧シリンダで前進又は後退させる(図1から図6)。すなわち、本実施形態では、1つの射出駆動装置9が1つの油圧バランサ1と共に複数のプランジャ50を駆動する構成となっている。なお、射出駆動装置9は、油圧シリンダに限らず、モータなどの別の駆動源を用いても良い。
図7は、本実施形態のプランジャの制御機構に係る油圧回路C1を示す構成図である。油圧回路C1上には、オイルタンクT1、油圧ポンプP1、油圧バランサ1、検出手段Pe、バルブV1、バルブV2、並びにチェックバルブV3が配されている。チェックバルブV3は逆流防止弁であり、図7に示すチェックバルブV3には、パイロットが付いており、パイロットに圧力をかけることで封止を解除して油を逆流させることができるようになっている。符号79と符号78は、油圧ピストン7を前進又は後退させる液送路であり、バルブV1を作動させて、液送路78の油圧を液送路79の油圧よりも高くすることで油圧ピストン7を後退させ、液送路79の油圧を液送路78の油圧よりも高くすることで油圧ピストン7を前進させる。符号69と符号68は、プランジャ50を前進又は後退させる液送路であり、バルブV2を作動させて、液送路68の油圧を液送路69の油圧よりも高くすることでプランジャ50を後退させ、液送路69の油圧を液送路68の油圧よりも高くすることでプランジャ50を前進させる。
検出手段Peは、圧力センサであり、前記検出手段Peが油圧回路C1上に配されて油圧バランサ1内の油室圧力値の上昇を検出する。これにより、一つの圧力センサPeで、前記複数のプランジャ50が対応する各タブレット20に当接したことを検知することができる。
図8は、本発明の実施形態のプランジャの制御方法の手順を示すフローチャートである。図8(a)は射出成形作業を繰り返す場合に予備作業である符号S1とS2をスキップするフローチャートであり、図8(b)は予備作業である符号S1とS2をスキップしないフローチャートである。図8(a)に示すフローチャートにしたがって、本実施形態のプランジャの制御機構手順を以下に説明する。
本実施形態では、予備作業として各プランジャ50を引っ込める動作を行なう(符号S1)。図1は、プランジャ50基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の各油室60bを連通する連通路610を開いてプランジャ50を引っ込めた状態を示している。つまり、バルブV1を作動させて、液送路78の油圧を液送路79の油圧よりも高くすることで油圧ピストン7を油圧シリンダ71内で後退させ、連通路610の合流箇所71aを連通させて、それら各油室60bの連通路610を開けておく。このときの油圧ピストン7の後退動作は、油圧ピストン7のピストンロッド先端前方の油室71cに油圧ポンプP1から液送路78を介して作動油が供給され、油圧ピストン7の背面側(ピストンヘッド側)の油室71bから液送路79を介してオイルタンクT1に作動油が戻されることによって行われる。また、バルブV2を作動させて、液送路68の油圧を液送路69の油圧よりも高くすることでプランジャ50を後退させる。この作業では、プランジャ50を後退させてその位置を原点(基準位置)に合わせている。このときのプランジャ50を引っ込める動作は、各プランジャ50基部のピストン部前面側(ピストンロッド側)の各油室60aに油圧ポンプP1から液送路68を介して作動油が供給され、プランジャ50基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の油室60bから液送路69を介してオイルタンクT1に作動油が戻されることによって行われる。
そして前記各プランジャ50を引っ込めてから(符号S1)、各プランジャ50を押し出す(符号S2)。図2は、各プランジャ50基部のピストンヘッド側の各油室60bを連通する連通路610を開いた状態で各プランジャ50を前方に押し出した状態を示している。つまり、それら各油室60bを連通する連通路610を開けておき、バルブV2を作動させて、液送路69の油圧を液送路68の油圧よりも高くすることで各プランジャ50を前進させる。このとき、各プランジャ50を押し出すときの油圧は、大気圧等の低圧状態としている。また、各プランジャ50を押し出す長さは、個々のタブレット(21,22・・・)の高さ寸法の高低差を越える長さに設定される。これは、各プランジャ50を押し出す長さを、個々のタブレット20の高さ寸法の高低差を越える長さに設定することで、背の高いタブレット21と背の低いタブレット22のいずれにも各プランジャ50が当接できるようにするためである。この時点では、いずれのプランジャの先端面(511,521・・・)もタブレット(21,22・・・)には接触していない。このときのプランジャ51を押し出させる動作は、プランジャ51基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の油室61bに油圧ポンプP1から液送路69を介して作動油が供給され、プランジャ51基部のピストン部前面側(ピストンロッド側)の油室61aから液送路68を介してオイルタンクT1に作動油が戻されることによって行われる。また、このときのプランジャ52を押し出させる動作は、プランジャ52基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の油室62bに油圧ポンプP1から液送路69を介して作動油が供給され、プランジャ52基部のピストン部前面側(ピストンロッド側)の油室62aから液送路68を介してオイルタンクT1に作動油が戻されることによって行われる。
前記各プランジャ50を押し出した後(符号S2)、バルブV2を閉じて各油室60bへの油の供給を停止し、射出駆動装置9のシリンダが符号f1方向に伸びて油圧バランサ1と共にプランジャ50を前進させることで(符号S3)、背の高いタブレット21にプランジャ51が当接し(図3)、引き続き各プランジャ50を当接させる(符号S4)。前記油圧回路C1の各プランジャ50を押し出す液送路69上にはチェックバルブV3が配されており、チェックバルブV3の下流側に前記圧力センサPeが配され、圧力センサPeの下流側に油圧バランサ1が配されている。上述のように、各油室60bの連通路610を開いているので、油圧バランサ1の働きによって、先に背の高いタブレット21にプランジャ51が当接したときは、背の高いタブレット21が当接したプランジャ51を引っ込めることとなり、かつ、背の高いタブレット21に当接したプランジャ51が引っ込んだ分の油が他のプランジャの油室、つまり、油室62bに供給されることで当接していないプランジャ52が押し出され、背の低いタブレット22にプランジャ52が当接する(図4)。そして、各油室60bの連通路610を開いた状態で、すべてのタブレット20に各プランジャ50が当接し各プランジャ50が同時に前進すると、すべてのプランジャ50が各タブレット20を押圧することとなり、油室圧力値が上昇するので、油圧回路C1の液送路69上に配された圧力センサPeが油圧バランサ1内の油室圧力値の上昇を検出し、制御回路8に検知信号を送出する。そして、圧力センサPeから送出された検知信号を受信した制御回路8は、油室圧力の上昇値から、すべてのプランジャ50が各タブレット20に当接したと判定する。なお、この時点では、いずれのタブレット20も、まだ金型内のキャビティ41に充填開始されていない状態である。
制御回路8は、各プランジャ50を当接させた後(符号S4)、バルブV1を作動させて、液送路79の油圧を液送路78の油圧よりも高くすることで油圧ピストン7を前進させ、各プランジャ50基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の各油室60bの連通路610を閉じて各油室60bを独立させる(符号S5)。このときの油圧ピストン7の前進動作は、油圧ピストン7の背面側(ピストンヘッド側)の油室71bに油圧ポンプP1から液送路79を介して作動油が供給され、油圧ピストン7のピストンロッド先端前方の油室71cから液送路78を介してオイルタンクT1に作動油が戻されることによって行われる。本実施形態によれば、圧力センサPeによる当接検知の後、油圧ピストン7が各油室60bの連通路610を閉じることで、各油室60bが個別分離してすべてのプランジャ50がロック状態となるので、前記当接状態の各プランジャ50を射出シリンダ9の動きに追従させることが容易である。
そして、各油室60bを独立させた後(符号S5)、ポット31内でタブレット20を加熱することで溶融させ、射出駆動装置9のシリンダを符号f1方向に伸ばすことで油圧バランサ1と共にすべてのプランジャ50を同時に前進させ、金型に樹脂材料を供給する射出作業を行う(符号S6)。図6は、射出作業を行った状態を示しており、溶融樹脂をそれぞれのプランジャ50で加圧することでスプル32やランナを経由させて金型のうち下型4内のキャビティ41に充填し、冷却して成形する。
射出作業を行った後(符号S6)、射出駆動装置9のシリンダを縮めることで油圧バランサ1と共にすべてのプランジャ50を同時に後退させ(符号S7)、バルブV1を作動させて、液送路78の油圧を液送路79の油圧よりも高くすることで油圧ピストン7を油圧シリンダ71内で後退させ、プランジャ50基部のピストン部背面側(ピストンヘッド側)の各油室60bの連通路610を開いて、連通路610の合流箇所71aを連通させる。そして、射出成形作業を繰り返すかどうかの終了判定を行い(符号S8)、射出成形作業を繰り返す場合には、予備作業である符号S1とS2をスキップして、符号S3から作業を繰り返す(図8(a))。予備作業である符号S1とS2とは、射出毎に行う必要はなく、機械を立ち上げた後や、複数回ショットする毎などのタイミングで行えばよい。或いは、図8(b)に示すように、予備作業である符号S1とS2をスキップしない方法としてもよい。
図9は、本実施形態のトランスファ成形機の油圧バランサ1の開閉手段7と複数のプランジャ51〜56との位置関係の例を示すものである。ここでは、中央に配された一つの油圧バランサ1の開閉手段7に対して、開閉手段7及び合流箇所71aの外周円上において6個のプランジャ51〜56が所定間隔で配されている。各油圧シリンダ60(符号61〜66)の受圧面積を同一とし、各連通路610の内径寸法(またはその流路断面積)および長さ寸法を同一寸法に設定すると、同じ圧力で制御することが容易である。したがって、一つの開閉手段7の開閉で、6個のプランジャ51〜56に対して等しく圧力を加えて、6個のプランジャ51〜56を対応する各タブレット20に当接した状態としたなら、同じ充填圧力とすることが容易な構造になっている。
図10は、本実施形態のトランスファ成形機の油圧バランサ1の開閉手段7と複数のプランジャ51〜54との位置関係の例を示すものである。ここでは、中央に配された一つの油圧バランサ1の開閉手段7に対して、開閉手段7及び合流箇所71aの外周円上において4個のプランジャ51〜54が等間隔で配されている。各油圧シリンダ60(符号61〜64)の受圧面積を同一とし、各連通路610の内径寸法(またはその流路断面積)および長さ寸法を同一寸法に設定すると、同じ圧力で制御することが容易である。そして、1つの油圧ピストン7で複数のプランジャ51〜54を押し込む油圧方式の油圧バランサ1として、効率よく正確な押圧動作が保障される構造になっている。なお、その他の構造としては、複数の油圧バランサ1を配して、複数の油圧バランサ1を一つの射出駆動装置9で同時に駆動させることも可能である。
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。射出作業の後の、射出駆動装置9のシリンダを縮める後退作業と、油圧ピストン7を油圧シリンダ71内で後退させて各油室60bの連通路610を開ける作業は同時でもよいし、先に油圧ピストン7を油圧シリンダ71内で後退させてから射出駆動装置9のシリンダを縮めてもよい。また、本発明の制御方法によれば、既存の設備を用いることも可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
1 油圧バランサ、
7 開閉手段(油圧ピストン)、
8 制御手段(制御回路)、
9 射出駆動装置、
20 タブレット、
50,51〜56 プランジャ、
60,61〜66 油圧シリンダ
60a,61a〜66a 油室
60b,61b〜66b 油室
71 油圧シリンダ
71a,71b,71c 油室、
68,69,78,79 液送路(油圧回路での油の経路)、
610 連通路、
C1 油圧回路、
Pe 検出手段(圧力センサ)、
V3 チェックバルブ




Claims (8)

  1. 複数のポットに配されたタブレットをそれぞれ加圧するプランジャと、複数の油室によって各プランジャを油圧保持する油圧バランサと、油圧バランサと共にプランジャを駆動する射出駆動手段と、油圧バランサと射出駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態でプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とするトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法。
  2. 前記油圧バランサ内の各油室の連通路を開閉する開閉手段を備え、各油室の連通路を開いてプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させてから、各油室の連通路を閉じた状態とし、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする請求項1記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法。
  3. 前記制御手段が、油圧バランサ内の各油室の連通路の合流箇所に配された開閉手段を油圧制御して、前記連通路の開閉を行なうことを特徴とする請求項2記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法。
  4. 前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態で油室圧力を検出する検出手段を備え、前記制御手段が検出手段から送出された信号を受信し、油室圧力の上昇値から、少なくとも2以上のプランジャが各タブレットに当接したと判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御方法。
  5. 複数のポットに配されたタブレットをそれぞれ加圧するプランジャと、複数の油室によって各プランジャを油圧保持する油圧バランサと、油圧バランサと共にプランジャを駆動する射出駆動装置と、油圧バランサと射出駆動装置を制御する制御回路とを備え、前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態でプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させて、その後、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とするトランスファ成形機におけるプランジャの制御機構。
  6. 前記油圧バランサ内の各油室の連通路を開閉する開閉手段を備え、前記制御回路が開閉手段を油圧制御し、各油室の連通路を開いてプランジャを前進させ、少なくとも2以上のプランジャを各タブレットに当接させてから、各油室の連通路を閉じた状態とし、これら2以上のプランジャを当接状態のまま同時に前進させて金型に樹脂材料を供給することを特徴とする請求項5記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御機構。
  7. 前記開閉手段が油圧ピストンであり、前記油圧バランサ内の各油室の連通路の合流箇所に配されて、前記連通路の開閉を行なうことを特徴とする請求項6記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御機構。
  8. 前記油圧バランサ内の各油室を連通させた状態で油室圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御回路が圧力センサから送出された信号を受信し、油室圧力の上昇値から、少なくとも2以上のプランジャが各タブレットに当接したと判定することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項記載のトランスファ成形機におけるプランジャの制御機構。


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