JP2012085694A - 加熱調理器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】調理物を加熱する加熱手段と、調理物の温度を測定する温度測定手段と、調理対象のメニューを入力する調理メニュー入力手段と、調理メニュー入力手段から入力された調理メニューの調理を行う自動加熱調理において、調理物の温度が目標温度の近傍に保たれるように加熱手段による加熱量を制御する目標温度維持制御を行う加熱制御手段とを備える加熱調理器であって、温度データを複数個記憶できる記憶手段と、裏返し検知アルゴリズムを実行する演算手段とを備えた加熱調理器。
【選択図】図7
Description
前記温度測定手段により検知された調理物の温度を温度データとして複数個記憶できる記憶手段と、
(1)予め設定された標本母集団決定条件に基づいて、前記記憶手段に記憶されている前記温度データから、調理物の裏返しを検知するための標本温度データを抽出する対象である標本母集団を構成する3個以上の前記温度データを決定する標本母集団決定ステップ、
(2)予め設定された標本抽出条件に基づいて、前記標本母集団から予め定められた3個以上の標本数の温度データを前記標本温度データとして抽出する標本抽出ステップ、
(3)前記標本温度データの夫々について、予め設定された基準条件に基づいて定められる基準温度との温度差を算出し、算出された前記温度差の積を判定指標として算出する判定指標算出ステップ、
(4)前記判定指標が閾値以上の場合に調理物の裏返しがあったと判定する裏返し判定ステップ、からなる裏返し検知アルゴリズムを実行する演算手段とを備えた点にある。
例えば、図9(a)は、目標温度維持制御の自然放熱による温度低下を示す図である。図9(a)では、調理物の温度低下は、高々1.4℃以下である。一方、図9(b)は、調理物の裏返しによる温度低下を示す図である。図9(b)では、調理物の温度低下は、3.7℃以下となっている。これは、目標温度維持制御の自然放熱による温度低下を示す図9(a)に比べて、大きな値である。
そこで、各標本温度データについて前記温度差を得るための基準温度を適切に選択し、経時的に検知される複数の温度データを使用して基準温度からの温度差を求め、その積を判定指標とすることで、従来技術で判定指標とした一定時間前の温度差で判定する場合に比べて、調理物の裏返しをより的確に判定することが可能となる。なお、このような基準温度としては、例えば、標本温度データのうち、調理物の温度変化を他の温度データとの関係で良好に代表できる温度データを採用することができる。
また、温度上昇の場合と温度低下の場合を明確に区別するために、標本数は奇数がよい。温度上昇の場合の温度差は負数、温度低下の場合の温度差は正数となることから、判定指標を奇数個の温度差の積算値とすれば、温度上昇の場合の判定指標の値は負数、温度低下の場合の判定指標の値は正数となることが期待できる。これにより、温度上昇と温度低下とを、より的確に判定できるためである。
なお、標本数を奇数とする場合、3個以上とする。標本数を1とすると、判定指標は「温度差の積」でなく、単に「温度差」となる。これは、温度差の積を判定指標として算出することにより、目標温度維持制御による温度低下と調理物の裏返しによる温度低下と
をより的確に判別するという本願発明の技術的思想にそぐわない。
上記の特徴構成によれば、標本抽出条件や基準条件、閾値を適切に設定することにより、調理物が少量の場合や、調理物が裏返される場所が温度センサーの真上から離れていた場合、或いは熱伝導の悪いフライパンを使用する場合などのように、温度低下が小さく、温度低下を監視するだけでは調理物の裏返しを検知できない場合でも、調理物の裏返しを検知できる加熱調理器を提供することができる。
また、目標温度維持制御による温度低下と調理物の裏返しによる温度低下とをより的確に判別して、調理物の裏返しを検知する加熱調理器を提供できる。
ここで、調理物の裏返しによる温度低下は、目標温度維持制御の自然放熱に比べて温度低下の幅が大きいため、適切な標本数の温度差の積である判定指標で比較すると、単に1つの温度差で比較する場合に比べて、両者の差がより明確となる。
すなわち、上記の特徴構成のように標本抽出条件及び基準条件を設定することで、単に1つの温度差では判別しづらい目標温度維持制御の自然放熱による温度低下と調理物の裏返しによる温度低下とを、より確実に判別できる。
なお、上記閾値を、調理メニューや調理器具の種別等に応じて定まる設定値として加熱調理器の記憶手段や演算手段等に予め記憶しておき、入力された調理メニューや調理器具の種別に応じて、適切な値が閾値に設定される構成としてもよい。或いは、制御手段が、目標温度維持制御による加熱量の変化と、加熱量の変化に伴う調理物の温度の変化とを関連付けて監視し、加熱量を低段階に設定した場合に自然放熱により生じる温度低下時の前記判定指標の値を算出して、当該算出した判定指標の値より大きい値を閾値に設定する構成としてもよい。
すなわち、自動加熱調理の目標温度維持制御において、加熱手段の加熱量を高段階から低段階に自動的に設定変更することで生じる自然放熱では、温度低下が緩やかであるため、標本温度データの温度と基準温度との温度差が1℃未満となる場合がある。そして、1℃未満の温度差が多ければ多いほど、判定指標の値(温度差の積算値)は、0に近づく(収束する)。
一方、調理物の裏返しの場合、自然放熱の場合と比べて温度低下の幅が大きい。従って、温度測定手段の分解能が1℃未満であったとしても、温度差が1℃以上となるように標本抽出を行えば、判定指標の値が0に近づくことはない。
以上より、調理物の裏返しの検知が必要となる目標温度の近傍において、温度測定手段が1℃未満の温度を検知できる分解能を有すれば、自然放熱による温度低下と調理物の裏返しによる温度低下との差がより明確となる。これにより、調理物の裏返しの判定精度を一層高めることができる。
図1〜3に基づいて、本実施形態に係るガスコンロの構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスコンロは、加熱手段としての3つのコンロバーナ1(1a、1b、1c)、及び、グリルバーナ2を備えたグリル部3からなるビルトインタイプのグリル付きガスコンロとして構成されている。また、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に鍋等を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。
図2に示すように、3つのコンロバーナ1a、1b、1cの夫々には、点火手段としての点火器7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられている。また、3つのコンロバーナ1a、1b、1cの夫々には、五徳6にて載置支持された調理容器等の被加熱物の底面部に接触して調理物(被加熱物)の温度を測定する温度測定手段である温度センサー10が設けられている。
使用者は、選択中の調理メニューをメニュー表示部27aで確認できる。メニュー表示部27aは調理メニュー名称とLEDランプとの組からなり、選択中の調理メニューのLEDランプが点灯する。
図4〜図6の制御フロー図に基づいて、本実施形態に係るガスコンロにおける自動加熱調理/マニュアル調理の選択、自動加熱調理、及び、調理物の裏返し検知の制御を説明する。
図4は、本実施形態に係るガスコンロにおける調理を、自動加熱調理又はマニュアル調理のいずれで行うかの制御を示すフロー図である。自動加熱調理では、予熱、調理物の投入や裏返しの指示、加熱や加熱の停止、調理温度の設定を、ガスコンロが自動的に行う。マニュアル調理では、これらを全て使用者が行う。本実施形態に係るガスコンロでは、使用者は所定の操作により、自動加熱調理又はマニュアル調理のいずれを行うかを選択できる。
自動加熱調理(ステップS200)では、入力された調理メニューに基づき、予熱、調理物の投入や裏返しの指示、加熱や加熱停止、加熱時の火力、調理温度の設定等を、ガスコンロが自動的に制御する。
裏面調理における自動加熱調理の制御(目標温度維持制御)の動作は、表面加熱調理(ステップS240)で説明した制御と同様である。
以下では、図6、図7に基づいて、裏返し検知(ステップS300)について説明する。図6は、裏返し検知の制御を示すフロー図である。また、図7は、裏返し検知アルゴリズムの適用を示す模式図である。
(1)裏返し検知のための判定指標の算出に用いる標本Sdの抽出対象である標本母集団U0を決定する標本母集団決定ステップ(S310)、
(2)標本母集団に異常値が含まれる場合の影響を抑えるべく、標本母集団U0から異常値の除去を図るノイズ除去ステップ(S320)、
(3)調理物の裏返しの有無を判定するための判定指標Irを算出するための標本Sdを抽出する標本抽出ステップ(S330)、
(4)抽出した標本Sdに基づき、判定指標Irの値を算出する判定指標算出ステップ(S340)、
(5)算出された判定指標Irに基づき、裏返しの有無を判定する裏返し判定ステップ(S350)、の実行により実現される。
演算部CAは、記憶手段に記憶されている温度データから、予め設定された標本母集団決定条件に基づいて、調理物の裏返しを検知するための判定指標Irの算出に用いる標本温度データSdを抽出する対象である、標本母集団U0を構成する3個以上の前記温度データを決定する(ステップS311)。
標本母集団決定ステップ(S310)で決定した標本母集団U0には、強力な電波等の外乱的要因によるノイズの混入や信号処理過程における突発的なエラーなどの理由により、異常に高い/異常に低い温度データ(異常データ)が含まれる場合がある。このような異常データによる調理物の裏返し検知への悪影響を抑制するため、演算部CAは、標本母集団U0から、予め設定された標本除外条件に該当する標本温度データを除外したものを、標本温度データを抽出する対象の標本母集団Uとする(ステップS321)。
演算部CAは、ノイズ除去後の標本母集団Uから、予め設定された標本抽出条件に基づいて、裏返し検知のための判定指標Irの算出に用いる標本温度データSdを抽出する(ステップS331)。抽出する標本温度データSdの標本数nは、3以上とする。また、後ほど温度差D1、D2、・・・、Dnの積により判定指標Irを算出するので、温度差が負である場合と正である場合とを明確に識別するために、言い換えれば、調理物の温度が上昇傾向の場合と下降傾向の場合とを明確に識別するために、標本数は奇数であることが望ましい。
抽出した標本データSdに基づいて、判定指標Irを算出する(ステップS341〜S345)。判定指標Irは、基準温度T0と標本データの温度T1、T2、・・・、Tnの温度差D1、D2、・・・、Dnの積で算出されるため、判定指標算出ステップS340は、さらに以下のステップS341〜S345から構成される。
(i)基準温度T0の決定(ステップS341)
(ii)温度差D1、D2、・・・、Dnの算出(ステップS343)
(iii)判定指標Irの算出(ステップS345)
演算部CAは、予め設定された基準条件に基づき、次ステップS343で温度差を算出するための基準とする基準温度T0を決定する。図7(d)では、基準条件として、「標本母集団Uに含まれる温度データのうち、直近の温度データの温度」を基準温度T0としている。
演算部CAは、標本データSd1、Sd2、・・・、Sdnの温度T1、T2、・・・、Tnと、基準温度T0との温度差D1、D2、・・・、Dnを算出する。図7(d)では、標本抽出ステップS331で抽出した標本データSd1、Sd2、Sd3の温度T1、T2、T3と、基準温度決定ステップS341で決定した基準温度T0との温度差D1、D2、D3を算出している。
演算部CAは、上記で算出した温度差D1、D2、・・・、Dnの積を判定指標Irとする。図7(d)では、Ir=D1×D2×D3=3×4×2=24となる。ここまでで、判定指標Irの値が算出される。
演算部CAは、判定指標Irの値に基づき、調理物の裏返しの有無を判定する。調理物の裏返しの有無は、判定指標Irの値が閾値Θ以上かどうかで判定する。裏返し判定ステップS350は、さらに以下のステップから構成される。
(i)閾値の決定(ステップS351)
(ii)調理物の裏返しの有無の判定(ステップS353)
演算部CAは、調理物の裏返しの有無を判定する閾値Θを決定する。閾値Θは、目標温度維持制御において、火力を低段階に設定した場合に自然放熱により生じる温度低下時において算出される判定指標Irの値より大きい値に設定する。これにより、目標温度維持制御のために火力を低段階に設定したことによる温度低下と、調理物を投入したことによる温度低下との判別を可能にする。
演算部CAは、これまでに算出した判定指標Ir及び決定した閾値Θに基づいて、調理物の裏返しの有無を判定する。演算部CAは、調理物の裏返しの有無を、判定指標Irが閾値Θ以上かどうかで判定する。
本願発明に係る裏返し検知アルゴリズムは、基準温度との温度差の積を判定指標として算出する。従って、調理物の裏返し検知が行われる目標温度の近傍において、1℃未満の温度を検知できる分解能を温度センサーが備える場合、本願発明に係る裏返し検知アルゴリズムは、より顕著な効果を期待できる。
Ir=D1×D2×D3=1.4×0.7×0.7=0.686
となる(1℃未満の温度差を2つ含むため、Irの値が0に近づいている)。
Ir=D1×D2×D3=3.7×3.0×3.0=33.3
となる(1℃未満の温度差を含まないため、Irの値は0に近づかない)。
以下、別実施形態を列記する。
上記実施形態では、母集団標本数Unを12個、標本数nを3個として調理物の裏返し検知を行う構成を例示したが、母集団標本数Un及び標本数nは、その他の適切な値に設定されるように構成しても良い。
(a)母集団標本数Unが12個、標本数が3個の場合
(b)母集団標本数Unが12個、標本数が5個の場合
(c)母集団標本数Unが17個、標本数が3個の場合
(d)母集団標本数Unが17個、標本数が5個の場合
のグラフ図である。図10(a)(b)(c)(d)では、実線が判定指標Ir、破線が調理物の温度Tを示している。また、Aの時点で調理物を投入し、Bの時点で調理物を裏返している。
上記実施形態では、ガス用フライパンで調理した場合の実施例を示したが、判定指標Irの値は、調理器具により大きく異なる。そこで、調理器具の種別に基づいて、閾値Θが設定される構成としてもよい。
上記実施形態では、閾値を、調理メニューや焼き加減ごとに予め経験的に算出しておき、メモリに記憶させておく構成を例示したが、目標温度維持制御の自然放熱による温度低下時の判定指標の値を計測し、計測された自然放熱による温度低下時の判定指標の値に基づいて、演算部が閾値を決定するように構成してもよい。
上記実施形態では、調理物の裏返しの有無を、判定指標の値が閾値以上かどうかで判定する構成(ステップS353)を例示したが、判定指標の値が所定時間以上(例えば5秒以上)長く閾値以上に保たれた場合に、調理物の裏返しがあったと判定する構成としてもよい。
10 温度センサー (温度測定手段)
27 メニュー切替スイッチ (調理メニュー入力手段)
28 焼き加減調整スイッチ (調理メニュー入力手段)
C 制御部 (加熱制御手段)
CA 演算部 (演算手段)
M メモリ (記憶手段)
Min 調理メニュー入力手段 (調理メニュー入力手段)
Tm タイマー (調理時間計測手段)
Claims (6)
- 調理物を加熱する加熱手段と、
前記調理物の温度を測定する温度測定手段と、
調理対象のメニューを入力する調理メニュー入力手段と、
前記調理メニュー入力手段から入力された調理メニューの調理を行う自動加熱調理において、前記温度測定手段により測定される前記調理物の温度が、前記調理メニューにより定まる目標温度の近傍に保たれるように前記加熱手段による加熱量を制御する目標温度維持制御を行う加熱制御手段とを備える加熱調理器であって、
前記温度測定手段により検知された調理物の温度を温度データとして複数個記憶できる記憶手段と、
以下の(1)〜(4)のステップからなる裏返し検知アルゴリズムを実行する演算手段とを備えた加熱調理器。
(1)予め設定された標本母集団決定条件に基づいて、前記記憶手段に記憶されている前記温度データから、調理物の裏返しを検知するための標本温度データを抽出する対象である標本母集団を構成する3個以上の前記温度データを決定する標本母集団決定ステップ。
(2)予め設定された標本抽出条件に基づいて、前記標本母集団から予め定められた3個以上の標本数の温度データを前記標本温度データとして抽出する標本抽出ステップ。
(3)前記標本温度データの夫々について、予め設定された基準条件に基づいて定められる基準温度との温度差を算出し、算出された前記温度差の積を判定指標として算出する判定指標算出ステップ。
(4)前記判定指標が閾値以上の場合に調理物の裏返しがあったと判定する裏返し判定ステップ。 - 前記温度データが、当該温度データを測定した時間を測定時間情報として保持しており、
前記標本抽出条件が、前記標本母集団から、温度が高いものから順に前記標本数の前記温度データを抽出するように設定されており、
前記基準条件が、前記標本母集団に含まれる前記温度データのうち、前記測定した時間が最も新しい前記温度データの温度を前記基準温度と定めるように設定されている請求項1記載の加熱調理器。 - 前記加熱手段が、加熱量を段階的に変化させて調理物の温度を上下させる加熱手段であって、
前記閾値が、前記目標温度維持制御において、前記加熱手段による加熱量を高段階から低段階に設定変更した場合に生じる温度低下時において算出される前記判定指標の値より大きい値に設定されている請求項1又は2記載の加熱調理器。 - 調理開始からの時間である調理時間を計測する調理時間計測手段とを備え、
前記調理時間計測手段により計測される調理時間が前記調理メニュー入力手段から入力された調理メニュー毎に設定される裏返し検知実行時間帯である時間帯においてのみ、前記裏返し検知アルゴリズムを実行するように前記演算手段を制御する裏返し検知実行制御手段を備えた請求項1〜3いずれか一項記載の加熱調理器。 - 前記標本母集団決定ステップが、標本母集団を構成する6個以上の前記温度データを決定する標本母集団決定ステップであって、
前記演算手段が、前記標本母集団決定ステップを実行した後に、前記標本母集団に含まれる温度データから最も温度の高い温度データと最も温度の低い温度データとを除外するノイズ除去ステップを実行した後で、前記標本抽出ステップを実行する請求項1〜4いずれか一項記載の加熱調理器。 - 前記温度測定手段が、前記目標温度の近傍において、1℃未満の温度を検知できる分解能を備える請求項1〜5いずれか一項記載の加熱調理器。
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