JP2012085635A - 3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法 - Google Patents

3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法 Download PDF

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洋 堀川
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Abstract

【課題】効率的に3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を製造する方法を提供する。
【解決手段】アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産し、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下で前記マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有し、前記アセチルCoAカルボキシラーゼは、前記マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法、ならびに該方法で得られた3−ヒドロキシプロピオン酸からアクリル酸および吸水性樹脂を製造する方法に関する。特に、本発明は、生物の重要な代謝中間体であるアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)から発酵によりマロニルコエンザイムA(マロニルCoA)を経て3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を製造する方法、ならびに該方法で得られた3−ヒドロキシプロピオン酸からアクリル酸および吸水性樹脂を製造する方法に関する。
地球温暖化防止及び環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源を従来の化石原料の代替として用いることが注目されている。例えば、汎用化成品、プラスチックおよび燃料生産の原料として、トウモロコシや小麦等の澱粉系バイオマス、サトウキビなどの糖質系バイオマス、および菜種の絞りかすや稲わら等のセルロース系バイオマス等のバイオマス資源を原料として利用する方法の開発が試みられている。また、バイオマス由来の糖類の利用以外にも、木質系バイオマスをガス化して得られる一酸化炭素と水素とを発酵原料として利用する方法や木質系バイオマスをガス化してメタノールを合成する方法についても検討・報告されている。このように、バイオマスから得られる糖類以外にも、様々な原料から汎用化成品を合成する技術が望まれている。
3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)及びそのエステルは、脂肪族ポリエステルの原料として有用な化合物であり、また、これから合成されるポリエステルは生分解性の地球にやさしいポリエステルとして注目されている。3−ヒドロキシプロピオン酸は、通常、アクリル酸に対する水の付加により、又はエチレンクロロヒドリンとシアン化ナトリウムとの反応により製造される。アクリル酸を水和する反応は平衡反応であるため、反応率が制御されるという問題がある。また、エチレンクロロヒドリンの場合は、毒性の強い物質の使用が必要であり、さらに加水分解工程を追加しなくてはならない。この場合、塩化ナトリウム及びアンモニウム塩が大量に生じるという問題もある。
3−ヒドロキシプロピオン酸は、脱水することによりアクリル酸を製造することができる。アクリル酸は、主にアクリル酸エステル製造の中間体として使用されており、アクリル酸エステルはコーティング剤、仕上げ剤、ペイント、接着剤の製造に使用され、吸着剤や洗浄剤用添加剤の製造にも使用されている。また、アクリル酸を部分中和させ、架橋性モノマーと共重合させることで吸水性樹脂を製造することもできる。アクリル酸の代替製造法としては、アクリロニトリルの硫酸による加水分解が知られている。しかし、この方法では、硫酸アンモニウム廃棄物が大量に生成し、それに伴うコストのために商業的には実施されていない。
3−ヒドロキシプロピオン酸が酵素反応または発酵により生成可能なことが報告されている。
非特許文献1は、3HPAサイクルと呼ばれる炭素固定経路を保有するChloroflexus aurantiacusの発酵において、3HPAサイクルの中間代謝産物である3HPAが、微量培地中に放出されることを記載している。しかしながら本論文に記載されている発酵液中の3HPAは、本来は3HPA以降の3−ヒドロキシプロピオニルCoAに変換されるべき3HPAが、培地中に微量放出されたものである。
非特許文献2は、Chloroflexus aurantiacusのマロニルCoAレダクターゼ(malonyl−CoA reductase)タンパク質を精製し、そのN末端アミノ酸配列分析結果から、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子のDNA配列を明らかとしている。マロニルCoAレダクターゼはマロニルCoAを基質とし3HPAを生成する反応を触媒する酵素である。本論文では、Chloroflexus aurantiacusのマロニルCoAレダクターゼの酵素学的諸性質についても報告し、マロニルCoAレダクターゼが3HPA生成に利用できる可能性について言及している。しかしながら本論文に記載されているマロニルCoAレダクターゼを利用して生成した3HPAは、酵素反応で生成したものであり、マロニルCoAレダクターゼを他の生物に導入して利用すること、マロニルCoAレダクターゼを導入した遺伝子組換え生物を用いて、発酵により3HPAを最終代謝産物として生成することには言及していない。
非特許文献3は、アセチルCoAカルボキシラーゼおよびマロニルCoAレダクターゼを利用した、糖→ピルビン酸→アセチルCoA→マロニルCoA→3HPAの生成に関して言及しているが、実験による立証はなされていない。加えて、3HPA生産性を増加させる遺伝子改変についても言及していない。また、3HPA回路を元来保有する微生物を利用した3HPA発酵生産の可能性についても言及しているが、3HPAサイクルを利用した3HPA発酵生産の場合、生成された3HPAは他の化合物、具体的には3HPA以降の代謝産物である3−ヒドロキシプロピオニルCoAやアクリロイルCoAに変換されるため、3HPAを効率的に生産することは困難な発酵であるといえる。さらに、本文献では糖以外の3HPAの原料として二酸化炭素の利用についても言及しているが、実験的な立証はなされていない。
非特許文献4は、Chloroflexus aurantiacus由来のマロニルCoAレダクターゼおよびプロピオニルCoAシンターゼの3−ヒドロキシプロピオニル−CoAシンテターゼドメインをCupriavidus neactorに導入し、フルクトース、アルカン酸、オクタン酸およびドデカン酸からPoly(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)が生成されたことが記載されているが、マロニルCoAレダクターゼを利用した3HPA発酵生産については言及していない。また、Poly(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)をNMR分析に供し、3−ヒドロキシブタン酸ユニットと3−ヒドロキシプロピオン酸ユニットに該当するシグナルを検出しているが、発酵液中に3HPAが生成しているかは記載していない。加えて、外来遺伝子として利用しているマロニルCoAレダクターゼはアセチル−CoAから3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成するために利用していると論文中に記載されており、マロニルCoAレダクターゼを利用して3HPAを発酵生産する方法には言及していない。
また、マロニルCoAレダクターゼを利用しない3HPA生成経路として、いくつかの経路が提案・検討されている。例えば、特許文献1は、Klebsiella pneumoniae由来グリセロールデヒドラターゼ アルファ サブユニットおよび大腸菌由来アルデヒドデヒドロゲナーゼを導入した遺伝子組換え大腸菌を用いた、発酵によるグリセリンからの3−ヒドロキシプロピオン酸の生成を記載している。特許文献1に記載の方法に従えば、グリセリンから3HPAまでの反応段数は2段であるが、グルコース等の糖を含む他の化合物を原料とした場合、多くの反応段数が必要となり、3HPA生成に必須となる複数の外来酵素遺伝子の導入方法、複数の外来酵素遺伝子の発現量のコントロール方法、各反応における効率的な酵素反応の実現等、技術的な課題が多く、3HPAを効率的に発酵生産するには難しい反応系と言える。
特許文献2はβアラニンを中間体とした3HPA発酵生産方法について記載しているが、特許文献2に記載の方法は、代謝中間体であるピルビン酸から3HPAを生成するまでに必須となる反応段数は少なくとも4段であり、特許文献1記載の方法と同様に、3HPA生成に必要な複数の外来酵素遺伝子の導入方法、複数の外来酵素遺伝子の発現量のコントロール方法、各反応における効率的な酵素反応の実現等、技術的な課題が多く、3HPAを効率的に発酵生産するには難しい生成経路である。
国際公開第2001/016346号パンフレット 国際公開第2008/027742号パンフレット
Helge Holo.,Arch Microbiol,1989,151:252−256 Michael Hugler et al.,Journal of Bacteriology,2002,184,9:2404−2410 Xinglin Jiang et al.,Appl Microbiol Biotechnol,2009,82:995−1003 Toshiaki Fukui et al.,Biomacromolecules,2009,10:700−706
上述したように、3HPAの発酵生産には、グリセリン経由の3HPA生成方法、βアラニン経由の3HPA方法等、いくつかの生成方法が提案・報告されているが、いずれの3HPA生成方法においても3HPAまでの反応は多段数必要であり、複数の遺伝子を導入すること、複数の遺伝子の発現を3HPA発酵生産に適した形態で制御すること、および高い発酵収率を得ることは困難であった。また、3HPAサイクルを利用した3HPA生成についても報告がなされているが、実際に3HPAが発酵により生成しているのは、元来3HPAサイクルを有する微生物において、代謝中間体の3HPAが培地中に放出された場合のみであり、その3HPA生成量は極微量であった。
そこで、本発明は、上記事情をかんがみてなされ、効率的に3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、ほとんどの生物が生成する重要な代謝中間体であるアセチルCoAから、簡便に(例えば、僅かな酵素反応段階で)代謝産物(好ましくは、最終代謝産物)として3HPAを生成可能な、効率的な3HPA製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、フィードバック阻害を抑制するなどしてマロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼと、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼと、を組み合わせて使用することによって、脂肪酸合成の重要な前駆物質であり、ほとんどの生物が合成可能な代謝産物であるアセチルCoAから、僅か二段または三段の酵素反応により、代謝産物(好ましくは、最終代謝産物)として3HPAを効率よく生成可能なことを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産し、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下で前記マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有し、前記アセチルCoAカルボキシラーゼは、前記マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法によって達成される。
本発明の方法によると、3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を効率よく製造することが可能である。
本発明の方法を概念的に示す図である。
本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産し、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下で前記マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有し、前記アセチルCoAカルボキシラーゼは、前記マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法を提供する。本発明は、マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼと、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼとを用いて、アセチルCoA→マロニルCoA→3HPAの反応を行うことを特徴とする。本発明は、アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産する際に、マロニルCoAの生合成量が増加する。このため、その次のマロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下でのこのマロニルCoA→3HPAの反応が効率よく進行するため、3HPAの収率を向上することができる。また、上記マロニルCoAの生合成量増加効果は、アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でのアセチルCoA→マロニルCoAの反応において、マロニルCoA生成律速を受けず、上記反応がマロニルCoAの生成量にかかわらず進行することによって、3HPAを効率よく製造することによっても達成できる。この際、3HPAが効率よく製造できる理由は明らかではないが以下のように推論される。すなわち、天然の生物中で、アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産する場合には、ある程度のマロニルCoAが生物内で生産されると、アセチルCoAカルボキシラーゼがフィードバック阻害を受けて、酵素作用が抑制されて、その結果、アセチルCoA→マロニルCoAの反応がうまく進行せずに、3HPAが効率よく生産しなくなる。しかし、本発明の方法によるように、フィードバック阻害を受けないように、アセチルCoAカルボキシラーゼを改変すると、マロニルCoA生成律速を受けず、上記反応がマロニルCoA量にかかわらず進行する。ゆえに、次のマロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下でのマロニルCoA→3HPAをあわせたアセチルCoA→マロニルCoA→3HPAの反応が少ない反応工程数でかつ良好に進行して、所望の3HPAを効率よく製造することができる。したがって、所望の化合物を得るために必要な酵素反応段数および導入する外来酵素遺伝子数を少なくできるため、化合物発酵生産に適した外来遺伝子の発現制御が容易となり、かつ必要な各酵素反応における収率低下を抑制することが可能となる。
本発明は、従来技術と比較して、従来技術とは異なる、以下の4点の優れた特長を有しており、これらの特長により3HPAを効率的に発酵生産することが可能である。(1)ほんどの生物が合成可能なアセチルCoAから僅か2段または3段の反応で3HPAを効率よく生成可能なこと;(2)ほとんどの生物が合成する、生物が生育する上で非常に重要な代謝中間体であるアセチルCoAおよび/またはマロニルCoAを3HPAの前駆物質として利用することから、糖、一酸化炭素、二酸化炭素を含む様々な炭素源から3HPAを効率よく生成可能なこと;(3)非常に重要な代謝中間体であり、かつ多量に生合成されるアセチルCoAを3HPAの前駆物質とすることから、3HPAを効率的にかつ多量に生産可能とすること;および(4)ほとんどの生物が生合成可能であるアセチルCoAおよび/またはマロニルCoAを3HPAの前駆物質とすることから、ほとんどの生物が3HPA発酵の宿主として利用可能なこと。
上記特長により、所望の化合物を得るために必要な酵素反応段数および導入する外来酵素遺伝子の種類を少なくできるため、化合物発酵生産に適した外来遺伝子の発現制御が容易となり、かつ必要な各酵素反応における収率低下を抑制できる。マロニルCoAは、脂肪酸合成の重要な前駆物質であり、ほとんどの生物において合成可能な化合物であるが、このマロニルCoAから僅か1段階または2段階の酵素反応により3HPA生成が可能となり、他の複数段の反応(複数の外来遺伝子の導入)が必要な3HPA生成経路よりも効率的に3HPAを生成できる。加えて、マロニルCoAは上記したようにフィードバック阻害を受けずにアセチルCoAからアセチルCoAカルボキシラーゼにより生成される場合も効率的な3HPA発酵において非常に有利である。また、アセチルCoAやマロニルCoAのように、細胞内で生成量が多い主要な代謝中間体を3HPAの前駆体とする3HPA生成経路を利用できるため、所望の3HPAをさらに効率的に生産できる。アセチルCoAは生物が生きていく上で重要なTCAサイクルの入口に位置し、様々な化合物の代謝において代謝中間体として多量に生成される重要な代謝中間体であるが、このアセチルCoAからわずか2段階または3段階の酵素反応により3HPA生成が可能となる。アセチルCoAは解糖系、TCA回路以外の代謝経路、β酸化やメバロン酸経路においても中間代謝産物として生成される、生物にとって非常に重要な中間代謝産物であるため、グルコース、フルクトース等の糖類、メタノール等のアルコール類、グリセリン等の糖アルコール類、オクタン酸やドデカン酸等の脂肪類酸、乳酸、酢酸、グルコン酸等のカルボン酸類等、様々な原料から3HPAを生成可能とする。加えて、還元的TCA回路、アセチルCoA経路、3−ヒドロキシプロピオン酸経路、カルビンベンソン回路等の炭素固定能を有する微生物もアセチルCoAおよび/またはマロニルCoAを生成することから、これらの炭素固定能を有する微生物を利用することで、二酸化炭素および/または一酸化炭素に含まれる炭素から3HPAを生成することも可能である。ゆえに、アセチルCoAやマロニルCoAは、ほとんどの生物が糖、糖アルコール、アルコール、脂肪酸、カルボン酸、一酸化炭素、または二酸化炭素を炭素源して合成する物質であるため、本発明の方法は、広範な出発原料を利用できる。
加えて、ほとんどの生物において合成可能な化合物であるマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAから3HPAを発酵可能な点も特徴とする。
さらに、本発明の方法は他の3HPA生成経路、例えばグリセリン経由3HPA経路や、ピルビン酸からβアラニンを経由し3HPAを生成する経路と併用して利用することも可能であり、他の3HPA生成方法と併用することで、より効率的に、かつ炭素収率高く3HPAを(例えば、発酵などにより)生産できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、以下には所望の反応を触媒する酵素名または酵素遺伝子名を記載しているが、所望の反応を触媒できる酵素または酵素遺伝子であれば、その酵素名、酵素遺伝子名、EC番号に関わらず、本特許記載の酵素または酵素遺伝子と同様に利用することが可能である。
図1は、本発明の方法を概念的に示す図である。
本発明において3HPA製造に用いるアセチルCoAカルボキシラーゼは、マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有する。ここで、マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼは、上記効果を有するものであればその製造方法は特に制限されにない。具体的には、(a)宿主が本来保有するアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を高発現させたアセチルCoAカルボキシラーゼ、(b)宿主とは異なる生物由来のアセチルCoAカルボキシラーゼ、(c)アセチルCoAを基質とした、所望の反応(アセチルCoA→マロニルCoA)以外の反応を触媒する酵素遺伝子を破壊した遺伝子組換え生物が有するアセチルCoAカルボキシラーゼ、(d)生成したマロニルCoAによるフィードバック制御が生じないようにアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子に突然変異を導入した変異アセチルCoAカルボキシラーゼなどが挙げられる。
(a)の方法としては、特に制限されないが、例えば、下記微生物のアセチルCoAを合成する酵素遺伝子を導入する方法;アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子の複数コピー(例えば、1〜10コピー)を有する発現ベクターを同じ宿主に形質転換する方法;下記微生物における酢酸を基質としてアセチルCoAを合成するacetyl−CoA synthetase遺伝子を高発現させる方法;下記微生物におけるアセチルCoAカルボキシラーゼを高発現するような培養条件で培養する方法;アセチルCoAカルボキシラーゼを高発現するように下記微生物に変異を行う方法;N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホン酸(EMS)等の変異剤処理によりマロニルCoAおよび/またはアセチルCoA生合成量が多くなった突然変異生物などが挙げられる。または、アセチルCoAカルボキシラーゼがビオチン依存性の酵素であることから、ビオチン生合成能を向上させた遺伝子改変生物または変異生物を利用することで、アセチルCoAカルボキシラーゼ活性を向上させて、その結果3HPA生成量を増加させることも可能である。また、3HPAサイクルを保有する微生物も利用可能であり、3HPAサイクルを保有する微生物において、アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を高発現させる、または外来のアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を導入・高発現させることで、さらに3HPA生成量を増加させることも可能である。加えて、3HPAを基質とする反応を触媒する酵素遺伝子、具体的には3−ヒドロキシプロピオン酸CoAリガーゼをコードする遺伝子を破壊することで3HPA生成量を増加させることもできる。さらに、アセチルCoAの前駆物質であるピルビン酸を基質とした反応を触媒する酵素遺伝子、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼやアラニンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ等の酵素遺伝子を破壊した遺伝子組換え生物を利用することにより3HPA生成量を増加させることも可能である。特に、エタノールを主な発酵産物とするSaccharomyces cerevisiaeやSchizosaccharomyces pombeを宿主として利用する場合には、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を破壊した遺伝子組換え生物を利用することが3HPA生成量の増加の点で有効である。
また、(b)の方法としては、本発明の方法で使用されるアセチルCoAカルボキシラーゼを本来有する生物とは異なる生物由来とすることができれば特に制限されないが、例えば、下記微生物のアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子の1コピーまたは複数コピー(例えば、1〜200コピー)を、当該アセチルCoAカルボキシラーゼを本来有する宿主(例えば、微生物)とは異なる種に属する宿主(例えば、微生物)に形質転換する方法などが挙げられる。
(c)の方法としては、特に制限されないが、例えば、下記微生物において、アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子は維持しつつ、アセチルCoAを基質とし、アセチルリン酸を生成するphosphoacylase遺伝子、アセチルCoAとオキサロ酢酸を基質としてクエン酸を合成するcitrate synthase遺伝子、アセチルCoAを基質としアセトアルデヒドを生成するacetaldehyde dehydrogenase遺伝子等のアセチルCoAを基質とする酵素反応を触媒する酵素遺伝子を破壊することによって得られる遺伝子破壊株、または上記アセチルCoAを基質とする酵素活性が低下した突然変異微生物を利用する方法が使用できる。
加えて、アセチルCoAが最も利用される代謝経路であるクエン酸回路(TCAサイクル)に対する改変も3HPA生成量の増加に有効である。具体的には、(c−1)TCAサイクルを構成する各酵素活性が低くなった遺伝子改変株や変異株の利用、(c−2)TCAサイクルを構成する各酵素活性が低くなるような培養条件の変更等が挙げられる。(c−2)の方法としては、例えば、嫌気条件下で培養を行うことでTCAサイクルに流れるアセチルCoA量を減らすことができる。また、アセチルCoA生合成量を増やす改変も併せて利用できる。具体的には、ピルビン酸を基質としアセチルCoAを生成するpyruvate dehydrogenase complex遺伝子を高発現させた遺伝子改変株の利用や、宿主として利用する生物以外の生物由来のpyruvate dehydrogenase complex遺伝子を利用する宿主に導入し高発現させる方法、pyruvate dehydrogenase complex遺伝子の発現を制御するPdhR遺伝子を破壊した遺伝子破壊株を利用する方法、またはPdhR遺伝子内に変異が起こる等によりpyruvate dehydrogenase complexの発現量が増加した遺伝子改変株を利用する方法等が考えられる。
このように、アセチルCoAが他の反応の基質となることを抑制する遺伝子改変、または、アセチルCoA生合成量を増加させる遺伝子改変の具体的例を記載したが、同様の効果が得られる遺伝子改変または変異株であれば本発明の方法の遺伝子組換えの宿主として利用可能である。
上記(a)〜(d)は、単独で適用されてもあるいは2種以上を組み合わせて適用されてもよい。これらのうち、(a)、(b)が好ましく、(b)がより好ましい。すなわち、マロニルCoAの生合成量の増加効果は、アセチルCoAカルボキシラーゼを、当該アセチルCoAカルボキシラーゼを本来有する微生物とは異なる種に属する微生物に形質転換することによって得られることが好ましい。ここで、アセチルCoAカルボキシラーゼの形態は、特に制限されず、公知のいずれの形態を適用できる。具体的には、細胞内より精製した酵素タンパク質そのもの、細胞内でアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子が発現したことにより合成されたアセチルCoAカルボキシラーゼ酵素を包括した細胞、上記酵素の固定化酵素などが利用できる。なお、本明細書中、生物が本来有しているアセチルCoAカルボキシラーゼを、「天然アセチルCoAカルボキシラーゼ」と、およびマロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼを、「修飾アセチルCoAカルボキシラーゼ」と、も称する。このため、「修飾アセチルCoAカルボキシラーゼ」は、フィードバック阻害を受けない。
本発明において、マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼは、アセチルCoAを基質としマロニルCoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。例えば、Corynebacterium glutamicum、Photorhabdus luminescens、Acidianus brierleyi、Acidianus infernus、Alopecurus myosuroides、Alopecurus myosuroides、Anabaena sp.、Anser anser、Arabidopsis sp.、Arabidopsis thaliana、Arabidopsis thaliana、Bacillus cereus、Bacillus subtilis、Bos taurus、Brachydanio rerio、Brassica napus、Brevibacterium thiogenitalis、Caenorhabditis briggsae、Caenorhabditis elegans、Candida lipolytica、Canis familiaris、Capra hircus、Chloroflexus aurantiacus、Ciona intestinalis、Cryptosporidium parvum、Cyclotella cryptica、Dicentrarchus labrax、Drosophila melanogaster、Eleusine indica、Escherichia coli、Euglena gracilis、Festuca rubra、Gallus gallus、Glycine max、Homo sapiens、Hordeum vulgare、Lactobacillus plantarum、Leptochloa chinensis、Lolium multiflorum、Lolium rigidum、Macaca mulatta、Magnaporthe grisea、Medicago sativa、Mesocricetus auratus、Metallosphaera sedula、Mus musculus、Mycobacterium avium、Mycobacterium phlei、Myxococcus xanthus、Nicotiana tabacum、Oryctolagus cuniculus、Oryza sativa、Ovis aries、Persea americana、Petroselinum hortense、Phytophthora infestans、Pisum sativum、Plasmodium falciparum、Plasmodium knowlesi、Pseudomonas citronellolis、Pseudomonas sp.、Rattus norvegicus、Rattus norvegicus、Rhizobium etli、Ricinus communis、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Setaria viridis、Solanum tuberosum、Spinacia oleracea、Staphylococcus aureus、Streptomyces coelicolor、Sulfolobus metallicus、Takifugu sp.、Toxoplasma gondii、Triticum aestivum、Ustilago maydis、Zea mays、Candida catenulata、Candida gropengiesseri、Candida rugosa、Debaryomyces polymorphus、Desulfovibrio alcoholovorans、Eremothecium ashbyi、Escherichia coli、Gallus gallus、Pichia haplophila、Propionibacterium shermanii、Sus scrofa、Tetrahymena pyriformis、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas sp.、Mus musculus、Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregans、Roseiflexus castenholzii、Roseiflexus sp.、Erythrobacter sp.、gamma proteobacterium、Roseiflexussp. strain RS−1 、Erythrobactersp. strain NAP1、Metallosphaera sedula、Sulfolobus tokodaii、Acidianus brierleyi、Sulfolobus metallicus、Acidianus infernus、Acidianus brierleyi、Metallosphaera sedula、Acidianus ambivalens、Sulfolobus sp.、Stygiolobus azoricus、Pyrolobus fumarii、Aspergillus clavatus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus terreus、Aspergillus oryzae、Aspergillus ochraceus、Emericella nidulans、Aspergillus niger、Escherichia blattae、に由来するアセチルCoAカルボキシラーゼなどが挙げられるが、アセチルCoAからマロニルCoAを生成可能な酵素遺伝子であれば利用可能であり、上記生物由来の酵素遺伝子に限定されない。加えてアセチルCoAカルボキシラーゼは、単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。また、上記微生物または遺伝子組換え生物が元来保有するアセチルCoAカルボキシラーゼに点突然変異を加え、マロニルCoAによるフィードバック阻害が生じないように改変した改変アセチルCoAカルボキシラーゼを利用してもよい。上記のうち、Corynebacterium glutamicumまたはPhotorhabdus luminescensに由来するアセチルCoAカルボキシラーゼが好ましい。
配列番号:13にCorynebacterium glutamicum由来のアセチルCoAカルボキシラーゼ(accBC)遺伝子の塩基配列を、また、配列番号:14にCorynebacterium glutamicum由来のアセチルCoAカルボキシラーゼ(dtsR1)遺伝子の塩基配列を、例示する。これらの塩基配列由来のアミノ酸配列を含むタンパク質がアセチルCoAカルボキシラーゼ活性を有する限り、配列番号:13や14で表される塩基配列の変更により、相当するアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
本発明において、アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を形質転換される遺伝子組換えの宿主として利用する生物は、天然アセチルCoAカルボキシラーゼとは異なる由来で、アセチルCoAを生合成可能な生物であればどんな生物でもよいが、操作の容易さ、使用できる宿主の汎用性、生物の増殖速度などを考慮すると、微生物が好ましい。宿主の選定は、3HPAの原料とする化合物の資化性を有しているかにより選定してよい。また、生育速度が速い、酸に対する耐性が高い等、3HPA発酵生産において有利な形質を有する生物に、原料として利用する化合物の資化性を付与して用いてもよい。加えて、3HPAサイクルを保有する微生物を遺伝子組換えの宿主としてもよい。本発明の方法で使用できる微生物としては例えば、Escherichia属、Lactobacillus属、Salmonella属、Klebsiella属、Propionibacterium属、Agrobacterium属、Anabaena属、Bacillus属、Bradyrhizobium属、Brucella属、Chlorobium属、Clostridium属、Corynebacterium属、Fusobacterium属、Geobacter属、Gloeobacter属、Leptospira属、Mycobacterium属、Mycobacterium属、Photorhabdus属、Porphyromonas属、Prochlorococcus属、Pseudomonas属、Ralstonia属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Sinorhizobium属、Streptomyces属、Synechococcus属、Thermosynechococcus属、Treponema属、Archaeoglobus属、Halobacterium属、Mesorhizobium属、Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanopyrus属、Methanosarcina属、Methanosarcina属、Pyrobaculum属、Sulfolobus属、Thermoplasma属、Acetobacterium属、Moorella属、Oligotropha属、Cupriavidus属、Chloroflexus属、Roseiflexus属、Erythrobacter属、Metallosphaera属、Sulfolobus属、Acidianus属、Sulfolobus属、Acidianus属、Stygiolobus属、Pyrolobus属、Alcaligenes属、Synechococcus属、Chloronema属、Oscillochloris属、Heliothrix属、Herpetosiphon属、Roseiflexus属、Thermomicrobium属、Clathrochloris属、Prosthecochloris属、Allochromatium属、Chromatium属、Halochromatium属、Isochromatium属、Marichromatium属、Rhodovulum属、Thermochromatium属、Thiocapsa属、Thiorhodococcus属、Thiocystis属、Phaeospirillum属、Rhodobaca属、Rhodomicrobium属、Rhodopila属、Rhodopseudomonas属、Rhodothalassium属、Rhodospirillum属、Rodovibrio属、Roseospira属、Hydrogenovibrio属、Hydrogenophilus属、Hydrogenobacter属、Oxobacter属、Peptostreptococcus属、Eubacterium属、Butyribacterium属、Rubrivivax属、Citrobacter属、Carboxydothermus属、Carboxydibrachium属、Carboxydocella属、Thermincola属、Thermolithobacter属、Thermosinus属、Desulfotomaculum属、Thermosyntrophicum属、Methanothermobacter属、Thermococcus属、Bacillus属、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Pichia属に属する微生物を例示することができるが、マロニルCoAおよび/またはアセチルCoAを生合成する生物であれば特に制限されず、公知のものを利用できる。これらのうち、操作性、遺伝子組換えの容易さ、遺伝子発現系の有無、微生物の増殖速度、培養における知見などを考慮すると、Escherichia属に属する微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。
また、本発明の方法においては特に、メタン生成菌、硫黄酸化細菌、水素細菌、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、鉄酸化細菌、緑色植物、藻類、ラン類、緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌等のカルビンベンソン回路、還元的TCA回路、アセチルCoA経路、3−ヒドロキシプロピオン酸経路等の炭素固定経路を有する生物を遺伝子組換えの宿主として利用することで、二酸化炭素および/または一酸化炭素から3HPAを発酵生産することも可能である。特に、生育速度の速さ、有機酸の生産速度等から、水素を酸化してエネルギーを獲得する能力を有するHydrogenobacter属、Acetobacterium属、Moorella属、Oligotropha属細菌を宿主として利用することが好ましい。
本発明においてマロニルCoAレダクターゼは、マロニルCoAを基質とした脱CoA反応および還元反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。例えば、Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregans、Roseiflexus castenholzii、Roseiflexus sp.、Erythrobacter sp.、gamma proteobacterium、Roseiflexussp. strain RS−1、Erythrobactersp. strain NAP1、Metallosphaera sedula、Sulfolobus tokodaii、Acidianus brierleyi、Sulfolobus metallicus、Acidianus infernos、Acidianus brierleyi、Metallosphaera sedula、Acidianus ambivalens、Sulfolobus sp.、Stygiolobus azoricus、Pyrolobus fumariiに由来するマロニルCoAレダクターゼなどが例示できるが、マロニルCoAから3HPAを生成可能な酵素遺伝子であれば利用可能であり、上記生物由来の酵素遺伝子に限定されない。加えて、マロニルCoAレダクターゼは、単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明で利用するマロニルCoAレダクターゼは、好ましくは、Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregans、Roseiflexus castenholzii、Roseiflexus sp.、Erythrobacter sp.、gamma proteobacterium、Acidianus brierleyi、Sulfolobus metallicus、Metallosphaera sedula, Acidianus ambivalens、Sulfolobus sp.を用いる。より好ましくは、Chloroflexus aurantiacus由来のマロニルCoAレダクターゼを用いる。
また、本発明の方法に用いられるマロニルCoAレダクターゼの形態は、特に制限されず、公知のいずれの形態を適用できる。具体的には、細胞内より精製した酵素タンパク質そのものでもよいし、細胞内でマロニルCoAレダクターゼ遺伝子が発現したことにより合成されたマロニルCoAレダクターゼ酵素を包括した細胞、上記酵素の固定化酵素などが利用できる。
配列番号:1にChloroflexus aurantiacus由来のマロニルCoAレダクターゼのアミノ酸配列を、配列番号:2にChloroflexus aurantiacus由来のマロニルCoAレダクターゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらのアミノ酸配列を含むタンパク質がマロニルCoAレダクターゼ活性を有する限り、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、NADPH依存性のマロニルCoAレダクターゼに、点突然変異法等によりNADH依存性の酵素に改変した改変マロニルCoAレダクターゼを用いることで、より効率的に3HPAを生成することも可能である。NADH依存性に改変したマロニルCoAレダクターゼを導入する宿主には様々な微生物が利用可能であるが、特に、グリセリン経由で3HPAを生成するように遺伝子導入または改変を行った遺伝子組換え大腸菌、またはピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を破壊したSaccharomyce cerevisiaeやSchizosaccharomyces pombeを遺伝子導入の宿主として利用することが好ましい。これにより、より効率的に3HPAが生成可能となる。
加えて、本発明ではマロニルCoAから3HPAを生成させるために、マロニルCoAレダクターゼを利用しているが、同様の反応を触媒することが可能な酵素であれば、他の酵素を単独または2種類以上組合わせて利用することもできる。例えば、マロニルCoAレダクターゼと同様にマロニルCoAから3HPAを生成できる、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼを利用することも可能である。加えて、マロニルCoAレダクターゼ、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼを併用して利用することも可能である。
マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼは、マロニルCoAを基質としてマロン酸セミアルデヒドを生成する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。例えば、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas sp.、Homo sapiens、Mus musculus、Rattus norvegicus、Rhizobium leguminosarum、Roseiflexus sp.、Lactobacillus casei、Pseudomonas sp.、Psychrobacter sp.、Halomonas sp.、Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregans、Roseiflexus castenholzii、Roseiflexus sp.、Erythrobacter sp.、gamma proteobacterium、Roseiflexussp. strain RS−1、Erythrobactersp. strain NAP1、Metallosphaera sedula、Sulfolobus tokodaii、Acidianus brierleyi、Sulfolobus metallicus、Acidianus infernus、Acidianus brierleyi、Metallosphaera sedula、Acidianus ambivalens、Sulfolobus sp.、Stygiolobus azoricus、Pyrolobus fumariiに由来するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼが例示できるが、マロニルCoAからマロン酸セミアルデヒドを生成可能な酵素遺伝子であれば利用可能であり、上記生物由来の酵素遺伝子に限定されない。加えて、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼは、単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。
3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼは、マロン酸セミアルデヒドを基質とし3HPAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。例えば、Candida catenulata、Candida gropengiesseri、Candida rugosa、Debaryomyces polymorphus、Desulfovibrio alcoholovorans、Eremothecium ashbyi、Escherichia coli、Gallus gallus、Pichia haplophila、Propionibacterium shermanii、Sus scrofa、Tetrahymena pyriformis、Rhodobacter sphaeroides、Pseudomonas aeruginosa、Alcaligenes faecalis、Pseudomonas putida、Escherichia coli、Chloroflexus aurantiacus、Chloroflexus aggregans、Roseiflexus castenholzii、Roseiflexus sp.、Erythrobacter sp.、gamma proteobacterium、Roseiflexussp. strain RS−1、Erythrobactersp. strain NAP1、Metallosphaera sedula、Sulfolobus tokodaii、Acidianus brierleyi、Sulfolobus metallicus、Acidianus infernus、Acidianus brierleyi、Metallosphaera sedula、Acidianus ambivalens、Sulfolobus sp.、Stygiolobus azoricus、Pyrolobus fumariiに由来する3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼが例示できるが、マロン酸セミアルデヒドから3HPAを生成可能な酵素遺伝子であれば利用可能であり、上記生物由来の酵素遺伝子に限定されない。加えて3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼは、単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明で利用する3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼは好ましくは、Rhodobacter sphaeroides、Pseudomonas aeruginosa、Alcaligenes faecalis、Pseudomonas putida、またはEscherichia coli由来の酵素遺伝子を用いる。
Alcaligenes faecalisの3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの塩基配列を配列番号:3に、アミノ酸配列を配列番号:4に例示した。Pseudomonas aeruginosaの3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの塩基配列を配列番号:5に、アミノ酸配列を配列番号:6に例示した。Pseudomonas putidaの3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの塩基配列を配列番号:7に、アミノ酸配列を配列番号:8に例示した。Escherichia coliの3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの塩基配列を配列番号:9に、アミノ酸配列を配列番号:10に例示した。配列番号:4、6、または8のアミノ酸配列を含むタンパク質が3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する限り、配列番号:4、6、または8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
上述したように、本発明の方法は、マロニルCoA→3HPAの反応を、マロニルCoAレダクターゼ、またはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下で行うことが可能であるが、好ましくは、マロニルCoAレダクターゼの存在下で行う。当該方法は、反応段数が少ないため、酵素活性の制御、化合物発酵生産に適した外来遺伝子の発現制御などが容易であり、また、酵素反応における収率低下を抑制できる。
本発明において、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子または3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を形質転換される遺伝子組換えの宿主として利用する生物は、マロニルCoAを生合成可能な生物であればどんな生物でもよいが、操作の容易さ、使用できる宿主の汎用性、生物の増殖速度などを考慮すると、微生物が好ましい。宿主の選定は、3HPAの原料とする化合物の資化性を有しているかにより選定してよい。また、生育速度が速い、酸に対する耐性が高い等、3HPA発酵生産において有利な形質を有する生物に、原料として利用する化合物の資化性を付与して用いてもよい。加えて、3HPAサイクルを保有する微生物を遺伝子組換えの宿主としてもよい。本発明の方法で使用できる微生物としては例えば、上記アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を形質転換される遺伝子組換えの宿主として利用する微生物で記載したのと同様の微生物が例示されうる。これらのうち、操作性、遺伝子組換えの容易さ、遺伝子発現系の有無、微生物の増殖速度、培養における知見などを考慮すると、Escherichia属に属する微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。なお、アセチルCoAカルボキシラーゼと、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子または3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子とは、同一の宿主に形質転換されてもあるいは異なる宿主に形質転換されてもよいが、同一の宿主に形質転換されることが好ましい。このように単一の宿主に形質転換することにより、アセチルCoA→マロニルCoA→3HPAの反応が一の宿主(例えば、微生物)中で行われるため、上記反応が効率よく進行し、また、宿主間の培養条件の違いを考慮する必要がないため、形質転換された宿主を最適の培養条件で培養することができる。
なお、本発明の方法は、上述したように、3HPAを代謝産物(好ましくは、最終代謝産物)として発酵により生産することが好ましい。これにより、3HPAサイクルを元来保有する微生物を利用して3HPAサイクルの中間代謝産物として3HPAを発酵生産する場合よりも、効率的に3HPAを発酵生産可能となり、かつ一旦発酵液中に生成された3HPAが他の化合物に変換されること防ぐ効果も併せて期待できる。
マロニルCoAレダクターゼを形質転換される宿主にはまた、マロニルCoAを基質とした反応を触媒する酵素遺伝子を破壊した組換え生物またはマロニルCoAを基質とした反応を触媒する酵素遺伝子の活性を抑制させる遺伝子改変を行った生物を利用してもよい。例えば、マロニルCoAを基質としマロニル−ACPを合成するマロニル−CoA−ACPトランスアシラーゼ遺伝子を破壊した遺伝子破壊株や、β−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードするfabF遺伝子を高発現させることでマロニルCoAが脂肪酸に変換されることを抑制した遺伝子組換え生物または突然変異生物も利用可能である。
このように、マロニルCoAが他の反応の基質となることを阻害する代謝改変、または、マロニルCoA生合成量を増加させる遺伝子改変の具体的例を記載したが、同様の効果が得られる代謝改変または変異株であれば本発明の方法の遺伝子組換え宿主として利用可能である。
また、3HPAサイクルを保有する微生物も遺伝子組換えの宿主として利用可能であり、3HPAサイクルを保有する微生物において、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子を高発現させる、または外来のマロニルCoAレダクターゼ遺伝子を導入・高発現させることで、さらに3HPA生成量を増加させることも可能である。加えて、3HPAを基質とする反応を触媒する酵素遺伝子、具体的には3−ヒドロキシプロピオン酸CoAリガーゼをコードする遺伝子を破壊することで3HPA生成量を増加させることもできる。
酵素遺伝子によっては、複数の活性ドメインを有し、1つの酵素遺伝子で複数の反応を触媒するmultifunctional enzymeが存在するが、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する活性ドメインを保有する酵素遺伝子を利用して3HPAを生成することも可能である。
以上のように、配列番号:2にマロニルCoAレダクターゼ、配列番号:3、5、7,9に3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼを例示したが、配列番号:2、3、5、7、9で表される塩基配列からなる遺伝子と機能的に同等の遺伝子も包括される。「機能的に同等の遺伝子」とは、対象となる遺伝子によってコードされるタンパク質が、各配列番号で表される塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質と同等の生物学的機能、生化学的機能を有することを指す。
あるタンパク質と機能的に同等のタンパク質をコードする遺伝子を調製する当業者によく知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook, Jetal., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47−9.58, Cold Spring Harbor Lab. press(1989))を利用する方法が挙げられる。
例えば、配列番号:2で表される塩基配列の全長において、種々の人為的処理、例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断による核酸断片の変異、欠失、連結等により、部分的にその配列が変化したものであっても、これらの変異型遺伝子が配列番号:2で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、マロニルCoAレダクターゼの活性、すなわち、マロニルCoAを基質とし3HPAを生成する酵素活性を有する限り、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子に含まれる。その他、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子、3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子についても同様である。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、すなわち、各遺伝子に対し高い相同性を有するDNAがハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、このような条件は、0.5〜1MのNaCl存在下42〜68℃で、又は50%ホルムアミド存在下42℃で、又は水溶液中65〜68℃で、ハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline sodium citrate)溶液を用いて室温(20℃)〜68℃でフィルターを洗浄することにより達成できる。
上記のようなストリンジェントな条件においては、対象となる塩基配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらに好ましくは少なくとも99%の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子が、対象となる塩基配列と相補的な塩基配列からなる遺伝子とハイブリダイズすることができる。
各遺伝子には、各アミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質をコードする遺伝子も包含される。例えば、配列番号:1のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質としては、配列番号:1のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入又は置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、マロニルCoAレダクターゼの活性を示すタンパク質が挙げられる。
ここで、タンパク質の構成要素となるアミノ酸の側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるものであるが、実質的にタンパク質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が、経験的にまた物理化学的な実測により知られている。例えば、異なるアミノ酸残基間の保存的置換の例としては、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、グリシンとアラニン(Ala)又はバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、スレオニンとセリン(Ser)又はアラニン、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等のアミノ酸の間での置換が知られている。
したがって、配列番号:1のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入又は置換が生じた結果得られたアミノ酸配列からなる変異型タンパク質であっても、その変異が配列番号:1に記載のアミノ酸配列の3次元構造において保存性が高い変異であって、その変異型タンパク質がマロニルCoAを基質とし3HPAを生成する酵素活性を有しているのであれば、これらの変異型タンパク質をコードする遺伝子もまたマロニルCoAレダクターゼをコードする遺伝子に包含される。ここで、数個とは、通常2〜5個、好ましくは2〜3個である。
また、マロニルCoAレダクターゼをコードする遺伝子には、配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらに好ましくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、マロニルCoAを基質とし3HPAを生成する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含される。その他のマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ、並びにアセチルCoAカルボキシラーゼをコードする遺伝子についても同様である。
マロニルCoAレダクターゼ、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、同一の宿主で発現させる限り、ゲノムに導入してもよいし、同一のベクターに導入して形質転換を行ってもよいし、別々のベクターに導入して形質転換を行ってもよい。
宿主として利用する生物への遺伝子の導入は、上記遺伝子又はその一部を適当なベクターに連結し、得られた組換えベクターを目的の遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより、又は相同組換えによってゲノム上の任意の位置に目的の遺伝子又はその一部を挿入することにより実施できる。「一部」とは、宿主中に導入された場合に各遺伝子がコードするタンパク質を発現することができる、または所望の酵素活性を有するタンパク質を発現させることができる各遺伝子の一部分を指す。本発明において遺伝子には、DNA及びRNAが包含され、好ましくはDNAである。
微生物のゲノムから所望の遺伝子をクローニングにより取得する方法は、分子生物学の分野において周知である。例えば遺伝子の配列が既知の場合、制限エンドヌクレアーゼ消化により適したゲノムライブラリを作り、所望の遺伝子配列に相補的なプローブを用いてスクリーニングすることができる。配列が単離されたら、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,202号)のような標準的増幅法を用いてDNAを増幅し、形質転換に適した量のDNAを得ることができる。マロニルCoAレダクターゼ遺伝子、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子、3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、またはアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子等の遺伝子は、既知の遺伝子以外にも、既知の遺伝子の塩基配列に基づいて適当に設計された合成プライマーを用いてハイブリダイゼーション法、PCR法などによりGenBank等の公開データベースに登録されていない遺伝子も取得することも可能である。
遺伝子のクローニングに用いるゲノムDNAライブラリーの作製、ハイブリダイゼーション、PCR、プラスミドの調製、DNAの切断及び連結、形質転換等の方法は、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,9.47−9.58,Cold Spring Harbor Lab. press(1989)に記載されている。
遺伝子を連結するベクターは、宿主で複製可能なものであれば特に限定されない。例えば大腸菌では、外来遺伝子導入に利用されているプラスミド、ファージ、コスミド及び大腸菌人工染色体(BAC)等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、pHSG398、pUC18、pBR322、pSC101、pUC19、pUC118、pUC119、pACYC117、pBluescript II SK(+)、pETDuet−1、pACYCDuet−1、pCDFDuet−1、pRSFDuet−1、pCOLADuet−1、PinPoint Xa−1(Promega社)等が挙げられ、ファージとしては、例えばλgt10、Charon 4A、EMBL−、M13mp18、M13mp19等が例示できる。
上記ベクターにおいては、挿入した遺伝子が確実に発現されるようにするため、該遺伝子の上流に適当な発現プロモーターを接続する。使用する発現プロモーターは、特に制限されず、使用する宿主や3HPA発酵生産に適した培養条件下で効率的に遺伝子発現が可能となるプロモーターを当業者が適宜選択すればよい。例えば大腸菌においては、一般的に外来遺伝子発現に利用されているT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、λ−PLプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター等に加えて、大腸菌由来の硝酸呼吸に関与する硝酸還元遺伝子narGHJIオペロンのNarプロモーター領域や、大腸菌の硝酸還元酵素遺伝子であるFrd遺伝子のプロモーター領域を利用することもできる。Narプロモーター領域やFrdプロモーターは嫌気条件において遺伝子発現誘導を受けるプロモーターである。さらに、グルコース代謝に関与するグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子や6−ホスホフルクトキナーゼ遺伝子等のプロモーター領域、および大腸菌において酸耐性機構に関与するグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子等のプロモーター領域も利用することができる。
遺伝子破壊の方法は公知の方法を使用できる。具体的には、標的遺伝子の任意の位置で相同組換えを起こすベクター(ターゲティングベクター)を用いて当該遺伝子を破壊する方法(ジーンターゲティング法)や、標的遺伝子の任意の位置にトラップベクター(プロモーターを持たないレポーター遺伝子)を挿入して当該遺伝子を破壊しその機能を失わせる方法(遺伝子トラップ法)、それらを組み合わせた方法等の当技術分野でノックアウト細胞、トランスジェニック動物(ノックアウト動物含む)等を作製する際に用いられる方法を用いることが出来る。また、破壊したい遺伝子のアンチセンスcDNAを発現するベクターを導入する方法や、破壊したい遺伝子の2重鎖RNAを発現するベクターを細胞に導入する方法も利用できる。当該ベクターとしては、ウイルスベクターやプラスミドベクター等が包含され、通常の遺伝子工学的手法に基づき、例えばSambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed.,9.47−9.58,Cold Spring Harbor Lab. press(1989)等の基本書に従い作製することができる。又、市販されているベクターを任意の制限酵素で切断し所望の遺伝子等を組み込んで半合成することもできる。
相同置換を起こす位置又はトラップベクターを挿入する位置は、破壊したい標的遺伝子の発現を消失させる変異を生じる位置であれば特に限定されないが、好ましくは転写調節領域、より好ましくは第2エクソンを置換する。
また、Gene Bridge社より販売されている、リコンビネーションタンパク質を利用した相同組換えによる遺伝子破壊系(Red system)を利用すれば、Escherichia、Salmonella、Shigella、Yersinia、Serratia、またはCitrobacter属細菌の、破壊したい遺伝子のみを選択的に破壊した遺伝子破壊株を構築することが可能である。さらに、Sigma−aldrich社から販売されているグループ2イントロンを利用した遺伝子破壊システムであるTargeTron Gene Knockout Systemを利用することで、Escherichia 、Staphylococcus、Clostridium、Lactcoccus、Shigella、Salmonella、Clostridium、Francisella、Azospirillum、Pseudomonas、Agrobacterium属細菌の遺伝子破壊も可能である。
ベクターの宿主への導入方法は、使用する宿主によって選定すれば良く、特に制限されない。例えば大腸菌では、ベクター導入に一般的に利用されている電気パルス法、カルシウムイオンを用いる方法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法等を利用することができる。
相同組換えによってゲノム上の任意の位置に目的の遺伝子を挿入する方法は、ゲノム上の配列と相同な配列に目的遺伝子をプロモーターとともに挿入し、この核酸断片をエレクトロポレーションによって細胞内に導入して相同組換えを起こさせることにより実施できる。ゲノムへの導入の際には目的遺伝子と薬剤耐性遺伝子を連結した核酸断片を用いると容易に相同組換えが起こった株を選抜することができる。また、薬剤耐性遺伝子と特定の条件下で致死的に機能する遺伝子を連結した遺伝子をゲノム上に上記の方法で相同組換えによって挿入し、その後、薬剤耐性遺伝子と特定の条件下で致死的になる遺伝子を置き換える形で目的遺伝子を相同組換えにより導入することもできる。
目的とする遺伝子が導入された組換え微生物を選択する方法は、特に制限されないが、目的とする遺伝子が導入された組換え微生物のみを、容易に選択できる手法が好ましい。
また一実施形態において本発明の方法は、マロニルCoAから3HPAを生成する能力を有する生物または遺伝子組換え生物を、マロニルCoAおよび/またはアセチルCoAと接触させることにより実施することも可能である。遺伝子組換え生物を構築する際の遺伝子導入方法、宿主選定方法、使用する宿主の代謝改変方法等の組換え生物の構築方法については、既に記載した通りである。
本発明において、マロニルCoAから3HPAへの反応をマロニルCoAレダクターゼの存在下で行う場合には、当該反応を高いNADPH量の条件下で行うことが好ましい。すなわち、本発明は、高いNADPH量の条件下でかつマロニルCoAレダクターゼの存在下で、マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法をも提供する。なお、当該方法は、上記本発明のマロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有するアセチルCoAカルボキシラーゼを使用する方法と組み合わせてもよい。この方法は、特にNADPH依存性のマロニルCoAレダクターゼを利用する場合に好適に実施され、原料とする化合物を資化する代謝経路上でより多くのNADPHが生成されるように代謝改変を行った遺伝子組換え生物でも利用可能である。例えば、マロニルCoAから3HPAへの反応をマロニルCoAレダクターゼの存在下で高いNADPH量の条件下で行い、この際グルコース等の糖を原料として用いる場合には、当該反応をグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現する微生物を用いて行うことが好ましい。グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子や6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、ペントースリン酸経路においてNADP依存性の反応を触媒する酵素遺伝子であるため、これらいずれかの遺伝子を導入または高発現させることで、糖代謝におけるNADPH生成量を増加させ、3HPAをより効率的に発酵生産することができる。すなわち、マロニルCoAから3HPAへの反応をマロニルCoAレダクターゼの存在下で行う場合には、マロニルCoAから3HPAへの反応を、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現する微生物を用いて行うことが好ましい。または、下記反応:
を触媒するトランスヒドロゲナーゼ遺伝子を導入または高発現させることで、細胞内の酸化還元バランスが制御でき、効率的な3HPA発酵生産を行うこともできる。
ここで、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼは、下記反応:
を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。利用するグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、当該遺伝子の発現の容易さ、遺伝子が発現したことにより合成される酵素タンパク質の合成のし易さ等から宿主として利用する生物が元来保有するグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現させることが好ましい。例えば、大腸菌を宿主として利用する場合は、大腸菌(Escherichia coli)由来のグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が好ましい。
配列番号:19にE. coli由来グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらの塩基配列由来のアミノ酸配列を含むタンパク質がグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する限り、配列番号:19で表される塩基配列の変更により、相当するアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは、下記反応:
を触媒する酵素活性を有するタンパク質であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。利用する6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、当該遺伝子の発現の容易さ、遺伝子が発現したことにより合成される酵素タンパク質の合成のし易さ等から宿主として利用する生物が元来保有する6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現させることが好ましい。例えば、大腸菌を宿主として利用する場合は、大腸菌(Escherichia coli)由来の6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼが好ましい。
配列番号:20にE. coli由来6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらの塩基配列由来のアミノ酸配列を含むタンパク質が6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する限り、配列番号:20で表される塩基配列の変更により、相当するアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
上記グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼおよび6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは、それぞれ、単独で使用してももしくは2種以上の混合物として使用してもよく、または、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの1以上と6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼの1以上とを組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の方法に用いられるグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼおよび6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼの形態は、特に制限されず、公知のいずれの形態も適用できる。具体的には、細胞内より精製した酵素タンパク質そのものでもよいし、細胞内でグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が発現したことにより合成された酵素を包括した細胞、上記酵素の固定化酵素などが利用できる。また、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼまたは6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは、当該酵素活性を発揮する限り、そのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、本発明において、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を形質転換される遺伝子組換えの宿主として利用する生物は、アセチルCoAおよび/またはマロニルCoAを生合成可能な生物であればどんな生物でもよいが、操作の容易さ、使用できる宿主の汎用性、生物の増殖速度などを考慮すると、微生物が好ましい。宿主の選定は、3HPAの原料とする化合物の資化性を有しているかにより選定してよい。また、生育速度が速い、酸に対する耐性が高い等、3HPA発酵生産において有利な形質を有する生物に、原料として利用する化合物の資化性を付与して用いてもよい。加えて、3HPAサイクルを保有する微生物を遺伝子組換えの宿主としてもよい。本発明の方法で使用できる微生物としては例えば、上記アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を形質転換される遺伝子組換えの宿主として利用する微生物で記載したのと同様の微生物が例示されうる。これらのうち、操作性、遺伝子組換えの容易さ、遺伝子発現系の有無、微生物の増殖速度、培養における知見などを考慮すると、Escherichia属に属する微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。なお、アセチルCoAカルボキシラーゼと、マロニルCoAレダクターゼ遺伝子、必要であれば、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子または3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子と、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子および/または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子と、は、同一の宿主に形質転換されてもあるいは異なる宿主に形質転換されてもよいが、同一の宿主に形質転換されることが好ましい。このように単一の宿主に形質転換することにより、アセチルCoA→マロニルCoA→3HPAの反応が一の宿主(例えば、微生物)中で行われるため、上記反応が効率よく進行し、また、宿主間の培養条件の違いを考慮する必要がないため、形質転換された宿主を最適の培養条件で培養することができる。上記に加えて、各酵素遺伝子による酵素反応を1つの細胞内で行うことで、各酵素反応で必要となる酸化力(NAD、NADP)や還元力(NADH、NADPH)の授受を効率よく行うことが可能となり、3HPA生産性を向上させることができる利点がある。
このように、原料とする化合物を資化する代謝経路において、より多くのNADPHが生成するような代謝改変、または、細胞内の酸化還元バランスを制御するための遺伝子改変の具体的例を記載したが、同様の効果が得られる代謝改変または変異株であれば本発明の方法の遺伝子組換え宿主として利用可能である。
3HPAを発酵生産する場合に適した生物も本発明の方法では利用可能である。例えば、乳酸発酵において発酵中のpH調整を行わなくとも乳酸生成が可能であることが報告されている、Shizosaccharomyces pombeを宿主として利用した場合、3HPA生成に伴って低下する培地中のpHを、NaOHやアンモニア等のアルカリ試薬を添加することで中性付近に調整しなくとも3HPA発酵を継続することが可能となる。このような酸耐性能を有するShizosaccharomyces pombe等の生物を利用した3HPA発酵(3HPA酸型発酵)を行う場合、発酵中のpH調整は必要としない、つまりアルカリ試薬の添加が不要となる。また、発酵液にアルカリ試薬を添加しないため、アルカリ試薬の添加による発酵液の希釈化を行う必要がなく、発酵終了後の発酵液中の3HPA濃度を高く保つことができる。よって、3HPA酸型発酵によると、原材料の削減、発酵工程以降の工程の簡略化、およびユーティリティーの向上が期待でき、一般的に行われている3HPA塩発酵よりも有利な方法となる。前記3HPA塩発酵は、アルカリ試薬を添加してpHを中性付近に保ちながら発酵を行うものであり、発酵工程終了後の発酵液中の3HPAは、塩の状態で存在する。3HPA塩の状態で発酵液から3HPAを回収しようとすると、3HPAの回収率の低下や、続く3HPAのアクリル酸への脱水反応における収率の低下等が問題となりうる。前記問題を解決する方法として、3HPA塩発酵後に、3HPA塩を3HPAに変換してから3HPAを回収する方法が提案されている。例えば、国際公開第2002/090312号パンフレットには、3HPAアンモニウム塩を含む溶液にアミン系溶媒の添加、加熱によって3HPAアンモニウム塩を3HPAに変換し、アミン系溶媒に3HPAを抽出する方法が開示されている。また、国際公開第2005/073161号パンフレットには、3HPAカルシウム塩を含む溶液に第3級アミン溶媒を添加し、二酸化炭素を流加するによって3HPAカルシウム塩を3HPAに変換し、第3級アミン溶媒中に3HPAを抽出する方法が開示されている。しかしながら、発酵工程におけるpHを調整するためのアルカリ試薬が不要である点、並びに3HPA塩を3HPAに変換する工程、およびこれに必要な熱エネルギーや二酸化炭素、酸性試薬等が不要である点から、上述のように、3HPA酸型発酵は、原材料の削減、発酵工程以降の工程の簡略化、およびユーテリィティーの向上の観点から、3HPA塩発酵と比較して非常に有利な方法である。低pHでも発酵が可能な生物の一例としてShizosaccharomyces pombeの利用を記載したが、低pHでも発酵可能な能力を保有した微生物や、生成された3HPAによる生育阻害に対する耐性を保有する微生物であれば、どのような微生物でも利用可能である。また、低pHでも発酵が継続するように改変した遺伝子組換え微生物、3HPAによる生育阻害を抑制するように改変した遺伝子組換え微生物、低pHでも発酵が継続するように変異処理を施した変異株、または3HPAによる生育阻害に対する耐性を向上させた変異株のいずれも利用可能である。低pHでも発酵が可能な微生物としてはShizosaccharomyces pombe以外には、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Pichia属、Torulaspora属、Zygosaccharomyces属、Candida属等の酵母、具体的には、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces marxianus、Kluyveromyces thermotolerans、Kluyveromyces lactis、Pichia pastoris、Candida sonorensisが例示できる。当然のことながら、本発明に係る3−HPAの製造方法は3HPA酸型発酵に限定されず、3HPA塩型発酵を行ってもよい。
発酵に用いられるマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAはどのような化合物から合成したものでも利用可能であり、原料とする化合物を資化する生物において、代謝の過程で生成したマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAを利用してもよい。すなわち、様々な化合物を原料として発酵により生成したマロニルCoAまたはアセチルCoAが含まれる発酵液、または発酵液から精製したマロニルCoAまたはアセチルCoAを利用することも可能である。ここで、生物の代謝により生合成されたマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAは、いずれの炭素源を利用して生成されてもよく、特に制限されないが、例えば、糖、糖アルコール、アルコール、脂肪酸、カルボン酸、一酸化炭素、または二酸化炭素を炭素源とした生物の代謝により生合成されたマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAが好ましく使用できる。ここで、糖としては、特に制限されず、培養に使用される一般的な糖が使用でき、その生物種によって適宜選択される。例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース等の六炭糖類、キシロース等の五炭糖類、デンプンの加水分解等により得られた糖類、セルロース系バイオマスを糖化処理することにより得られる糖類などが使用できる。また、糖アルコールとしては、特に制限されず、培養に使用される一般的な糖アルコールが使用でき、その生物種によって適宜選択される。例えば、グリセリン、エリスリトール、D,L−トレイトール、D,L−アラビニトール、キシリトール、リビトール(アドニトール)、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトール、D−エリトロ−D−ガラクト−オクチトールなどが挙げられる。アルコールとしては、特に制限されず、培養に使用される一般的なアルコールが使用でき、その生物種によって適宜選択される。例えば、メタノール、エタノール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。脂肪酸としては、特に制限されず、培養に使用される一般的な脂肪酸が使用でき、その生物種によって適宜選択される。例えば、オクタン酸、ドデカン酸、酪酸、カプロン酸、デカン酸、などが挙げられる。カルボン酸としては、特に制限されず、培養に使用される一般的なカルボン酸が使用でき、その生物種によって適宜選択される。例えば、乳酸、酢酸、グルコン酸、プロピオン酸、蟻酸などが挙げられる。上記炭素源を資化しうる微生物の種類は、特に制限されず、公知の微生物が資化する炭素源の種類によって適宜選択されうる。
また、還元的TCA回路、アセチルCoA経路、3−ヒドロキシプロピオン酸経路、カルビンベンソン経路等の炭素固定能を有する微生物により、炭素固定により生成されたマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAでもよい。炭素は例えば、二酸化炭素または一酸化炭素に含まれる炭素でもよい。これらのうち、原料入手の汎用性、容易さ等を考慮すると、一酸化炭素および/または二酸化炭素を炭素源として使用することが好ましい。すなわち、本発明の方法は、一酸化炭素および/または二酸化炭素を炭素源として用いた微生物の代謝によりアセチルCoAまたはマロニルCoAを生産することをさらに有することが好ましい。一酸化炭素および/または二酸化炭素を炭素源としてアセチルCoAまたはマロニルCoAを生産する微生物の種類は特に限定されず、公知の炭素固定能を有する微生物が利用可能である。例えば、炭素源として一酸化炭素を用いる場合には、Oligotropha属に属する微生物などが好ましく使用される。また、炭素源として二酸化炭素を用いる場合には、Moorella属、Cupriavidus属、Acetobacterium属、Hydrogenobacter属に属する微生物などが好ましく使用される。
本発明において、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造は、上記生物、あるいは複数の生物を原料として利用する化合物と接触させ、生物が原料とする化合物を資化することで生成したマロニルCoAおよび/またはアセチルCoAから3HPAを生成、反応液中に3−ヒドロキシプロピオン酸を蓄積させ、3−ヒドロキシプロピオン酸を採取することにより実施できる。
上記生物と原料として利用する化合物とを接触させるとは、原料として利用する化合物の存在下で微生物又はその処理物を培養すること、また、本発明の微生物の処理物を用いて反応を行うことを包含する。該処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、菌死体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物、これらから酵素を抽出した粗酵素液、精製酵素等が挙げられる。また、常法により担体に固定化した菌体、該処理物、酵素等を用いることもできる。
培養に用いる培地及び培養条件は、宿主として利用する生物の生育条件により選定すれば良く、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができ、特に限定されない。例えば、大腸菌においてはLB培地が例示できる。培養は、宿主として利用する生物の生育に好適な条件で行われれば良く、特に限定されない。例えば、大腸菌を宿主として利用する場合は、培養温度10℃〜45℃で、16〜96時間実施する。培養を連続的に行う場合には、培養は1週間〜3ヶ月間実施する。
微生物の培養におけるpHは、3HPAが効率的に発酵生産可能なpHであれば特に限定されない。上述のように、酸耐性能を有する微生物を用いて培養を行う場合(3HPA酸型発酵)、低pHでも発酵産物の生成が継続するため、アルカリ試薬を添加してpHを中性付近に調整することなく培養することが可能である。例として、Shizosaccharomyces pombeを宿主として利用する場合、培養開始時は使用する培地のpH(中性付近)から培養は開始するが、3HPAの生成に伴って次第に培地のpHは低下する。pH2.5付近まで培地のpHが低下すると宿主の生育は抑制されるが、pH2.5以下、例えばpH1付近まで培地のpHが低下したとしても、培地中の炭素源は資化され、3HPA生産は継続する。3HPAの培地中の濃度が100g/Lを超えた段階で培養を終了すると、培地のpHは4未満となる。このように、発酵工程においてアルカリ試薬を添加せずに培養を行い、pH4未満の3HPA発酵液を得ることで、発酵工程以降の工程、例えば、発酵液からの3HPA回収工程に用いる場合に、前述のように、原材料の削減、工程の簡略化、およびユーティリティーの向上が期待できる。なお、例えば微生物の生育などを考慮して、pHを適切な範囲に調整してもよい。一方、3HPA塩型発酵を行う場合、使用する宿主の生育を妨害せず、3HPAが効率的に発酵生産可能なpHを発酵期間中は維持することが望ましく、pHの維持には培養液から酸を分離するときの障害とならない試薬を用いて調整することが好ましい。例として、大腸菌を宿主として利用する場合、培養期間中pHは、5.0以上、好ましくは5.5以上で、10.0以下、好ましくは9.7以下に保持することが望ましい。pH調整には無機又は有機の酸性又はアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。炭酸ナトリウム、アンモニア、ナトリウムイオン供給源を添加してもよい。また、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液等の一般的なアルカリ試薬を用いてもよい。
窒素源は使用する宿主の生育に適した窒素源を選定すれば良く特に限定されない。例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー等の利用が挙げられる。また、無機物も同様に宿主の生育に適した窒素源を選定すれば良く特に限定されない。例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
培養中は、カナマイシン、アンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インデューサーを培地に添加することもできる。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)、インドール酢酸(IAA)、アラビノース、ラクトース等を培地に添加することができる。
あるいは、上記において得られた生物の培養物から遠心分離などによって集菌を行い、適当なバッファーや培地に懸濁する。この菌体懸濁液を、マロニルCoAおよび/またはアセチルCoAを含むバッファーに懸濁し、菌体での反応を行うことによって、3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することもできる。反応の条件は、例えば、反応温度は10〜80℃、好ましくは15〜50℃、反応時間は5分〜96時間、好ましくは10分〜72時間、pHは5.0以上、好ましくは5.5以上で、10.0以下、好ましくは9.7以下が例示できるが、3HPA生成に適した反応条件であれば特に限定されない。反応を連続的に行う場合には、反応を1週間〜3ヶ月間実施する。
3−ヒドロキシプロピオン酸の精製法は当該技術分野において周知である。例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留及びカラムクロマトグラフィーに反応混合物を供することにより、培地から3−ヒドロキシプロピオン酸を得ることができる(米国特許第5,356,812号)。また、限外濾過膜や水などの低分子のみが透過できるゼオライト分離膜などで発酵液の濃縮を行うのが好ましい。濃縮を行うことにより、水を蒸発させるためのエネルギーを低減することができる。培地を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にかけることにより、3−ヒドロキシプロピオン酸を直接同定することもできる。
本発明の方法で製造される3−ヒドロキシプロピオン酸は様々な分野において使用できる。一実施形態においては、上記方法によって得られた3−ヒドロキシプロピオン酸を脱
水することによりアクリル酸を製造することができる。すなわち、本発明は、本発明の方法により製造される3−ヒドロキシプロピオン酸を脱水することを有する、アクリル酸の製造方法をも提供する。ここで、3−ヒドロキシプロピオン酸の脱水は、公知の反応によって実施することができる。例えば、米国特許第2,469,701号にも記載されているように、3−ヒドロキシプロピオン酸は、触媒の存在下で減圧蒸留することにより容易にアクリル酸に変換することができる。
また、本発明の方法で得られるアクリル酸を含む組成物は精製してもよく、精製を行う場合は、好ましくは、晶析工程を用いる。したがって本発明は、本発明の方法により製造されるアクリル酸を、晶析等の精製工程により精製し、精製アクリル酸を得る製造方法をも提供する。
晶析工程は、アクリル酸を含む組成物を晶析装置に供給して結晶化させることにより、精製アクリル酸を得る工程である。なお、結晶化の方法としては、従来公知の結晶化方法を採用すればよく、特に限定されるものではないが、結晶化は、例えば、連続式または回分式の晶析装置を用いて、1段または2段以上で実施することができる。得られたアクリル酸の結晶は、必要に応じて、さらに洗浄や発汗などの精製を行うことにより、さらに純度の高い精製アクリル酸を得ることができる。
連続式の晶析装置としては、例えば、結晶化部、固液分離部および結晶精製部が一体になった晶析装置(例えば、新日鐵化学社製のBMC(Backmixing Column Crystallizer)装置、月島機械社製の連続溶融精製システム)や、結晶化部(例えば、GMF GOUDA社製のCDC(Cooling Disk Crystallizer)装置)、固液分離部(例えば、遠心分離器、ベルトフィルター)および結晶精製部(例えば、呉羽テクノエンジ社製のKCP(Kureha Crystal Purifier)精製装置)を組み合わせた晶析装置などを使用することができる。
回分式の晶析装置としては、例えば、Sulzer Chemtech社製の層結晶化装置(動的結晶化装置)、BEFS PROKEM社製の静的結晶化装置などを使用することができる。
動的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクと、結晶器に粗アクリル酸を供給する循環ポンプとを備え、結晶器の下部に設けた貯蔵器から循環ポンプにより粗アクリル酸を結晶器の管内上部に移送できる動的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。また、静的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器であり、下部に抜き出し弁を有する結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクとを備えた静的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。
具体的には、粗アクリル酸を液相として結晶器に導入し、液相中のアクリル酸を冷却面(管壁面)に凝固・生成させる。冷却面に生成した固相の質量が、結晶器に導入した粗アクリル酸に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%になったら、直ちに、液相を結晶器から排出し、固相と液相とを分離する。液相の排出は、ポンプで汲み出す方式(動的結晶化)、結晶器から流出させる方式(静的結晶化)のいずれであってもよい。他方、固相は、結晶器から取り出した後、さらに純度を向上させるために、洗浄や発汗などの精製を行ってもよい。
動的結晶化や静的結晶化を多段で行う場合、向流の原理を採用すれば、有利に実施することができる。このとき、各段階で結晶化されたアクリル酸は、残留母液から分離され、より高い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。他方、残留母液は、より低い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。
なお、動的結晶化では、アクリル酸の純度が低くなると、結晶化が困難になるが、静的結晶化では、動的結晶化に比べて、残留母液が冷却面に接触する時間が長く、また、温度の影響が伝わり易いので、アクリル酸の純度が低下しても、結晶化が容易である。それゆえ、アクリル酸の回収率を向上させるために、動的結晶化における最終的な残留母液を静的結晶化に付して、さらに結晶化を行ってもよい。
必要となる結晶化段数は、どの程度の純度が要求されるかに依存するが、高純度のアクリル酸を得るために必要な段数は、精製段階(動的結晶化)が通常1〜6回、好ましくは2〜5回、より好ましくは2〜4回であり、ストリッピング段階(動的結晶化および/または静的結晶化)が通常0〜5回、好ましくは0〜3回である。通常、供給される粗アクリル酸より高い純度を有するアクリル酸が得られる段階は、すべて精製段階であり、それ以外の段階は、すべてストリッピング段階である。ストリッピング段階は、精製段階から残留母液に含まれるアクリル酸を回収するために実施される。なお、ストリッピング段階は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、蒸留塔を用いて、晶析装置の残留母液から低沸点成分を分離する場合には、ストリッピング段階は省略してもよい。
動的結晶化および静的結晶化のいずれを採用する場合であっても、晶析工程で得られるアクリル酸の結晶は、そのまま製品としてもよいし、必要に応じて、さらに洗浄や発汗などの精製を行ってから製品としてもよい。他方、晶析工程で排出される残留母液は、系外に取り出してもよい。
上記方法で製造されるアクリル酸は、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸等のアクリル酸誘導体の原料として使用可能であることは公知となっていることから、上記アクリル酸の製造方法を、アクリル酸誘導体の製造方法におけるアクリル酸製造工程にすることも可能である。すなわち、一実施形態においては、上記方法によって得られたアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、これを必要であれば他のモノマーと(共)重合することにより、吸水性樹脂を製造することができる。したがって、本発明は、本発明の方法により製造されるアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、前記部分中和アクリル酸を架橋性モノマーと共重合することを有する、吸水性樹脂の製造方法をも提供する。ここで、上記部分中和および(共)重合は、公知の反応によって実施することができ、例えば、本発明の製造方法により得られたアクリル酸および/またはその塩を単量体成分の主成分(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)とし、さらに0.001〜5モル%(アクリル酸に対する値)程度の架橋剤、0.001〜2モル%(単量体成分に対する値)程度のラジカル重合開始剤を用いて、架橋重合させた後、乾燥・粉砕することにより、吸水性樹脂が得られる。
ここで、吸水性樹脂とは、架橋構造を有する水膨潤性水不溶性のポリアクリル酸であって、自重の3倍以上、好ましくは10〜1,000倍の純水または生理食塩水を吸水し、また、水溶性成分(水可溶分)が好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である水不溶性ヒドロゲルを生成するポリアクリル酸を意味する。このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号などに記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第01/038402号パンフレット、国際公開第2006/034806号パンフレットなどに記載されている。
アクリル酸を出発原料として、中和、重合、乾燥などにより、吸水性樹脂を製造する一連の工程は、例えば、以下の通りである。
本発明の製造方法により得られるアクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、アクリル酸を中和工程,重合工程,乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中または重合後に架橋工程を介在させてもよい。
中和工程は、任意の工程であり、例えば、所定量の塩基性物質の粉末または水溶液と、アクリル酸やポリアクリル酸(塩)とを混合する方法が例示されるが、従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、中和工程は、重合前または重合後のいずれで行なってもよく、また、重合前後の両方で行なってもよい。アクリル酸やポリアクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミンなど、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。また、ポリアクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
重合工程における重合方法は、特に限定されるものではなく、ラジカル重合開始剤による重合、放射線重合、電子線や活性エネルギー線の照射による重合、光増感剤による紫外線重合など、従来公知の重合方法を用いればよい。また、重合開始剤、重合条件など各種条件については、任意に選択することができる。もちろん、必要に応じて、架橋剤や他の単量体、さらには水溶性連鎖移動剤や親水性高分子など、従来公知の添加剤を添加してもよい。
重合後のアクリル酸塩系ポリマー(すなわち、吸水性樹脂)は、乾燥工程に付される。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、熱風乾燥機,流動層乾燥機,ナウター式乾燥機など、従来公知の乾燥手段を用いて、所望の乾燥温度、好ましくは70〜230℃で、適宜乾燥させればよい。
乾燥工程を経て得られた吸水性樹脂は、そのまま用いてもよく、さらに所望の形状に造粒・粉砕、表面架橋をしてから用いてもよく、還元剤、香料、バインダーなど、従来公知の添加剤を添加するなど、用途に応じた後処理を施してから用いてもよい。
本発明はまた、マロニルCoAレダクターゼ活性及び/またはアセチルCoAカルボキシラーゼ活性を含む、マロニルCoA及び/またはアセチルCoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を製造するための組成物に関する。当該組成物は、これらの酵素を産生する生物又はその処理物から製造することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り下記の実施例に限定されるものではない。
比較例1:Chloroflexus aurantiacus由来マロニルCoAレダクターゼ導入大腸菌を用いた3HPA発酵生産
Chloroflexus aurantiacus OK−70−fl(ATCC29365)株のマロニルCoAレダクターゼ(mcr)遺伝子の塩基配列(配列番号2)を元に、マロニルCoAレダクターゼの構造遺伝子領域を増幅するプライマー(Chloroflexus aurantiacus由来mcr増幅用プライマー;配列番号11、12)を設計した。設計したプライマーを用いて、Chloroflexus aurantiacus ATCC29365株のゲノムDNAをテンプレートとしてPCR増幅を行い、Chloroflexus aurantiacus ATCC29365のマロニルCoAレダクターゼ遺伝子を取得した。取得したマロニルCoAレダクターゼ遺伝子を、PinPoint Xa−1ベクター(Promega社)のTacプロモーター下流にクローニングし、mcr/PinPoint Xa−1を構築した。Escherichia coli fusion blue(Takara社)のプロトコールに従って、構築したmcr/PinPoint Xa−1をヒートショック法により導入し、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)を取得した。
E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)をIPTG添加(最終濃度1mM)2wt/vol%グルコース添加M9培地(Difco社製)に植菌し、37℃で48時間培養を行った。培養上清100μLに内部標準液 200μLを加えた。ヒドロキシカルボン酸ラベル化試薬(YMC社)の試薬A液 200μL、試薬B液 200μLを加え、よく混合した後、60℃、20分間処理した。ヒドロキシカルボン酸ラベル化試薬(YMC社)の試薬C液 200μLを添加し、よく混合した。60℃、15分間処理後、室温まで冷えたら0.45 mmフィルターに通し、LC分析サンプルとして供した。
得られたLC分析サンプルを以下の記載の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する、7.9分の位置にピークを確認した。したがって、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)を用いた発酵によりグルコースから3HPAが生成することを確認した。
また、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)をIPTG添加(最終濃度1mM)4wt/vol%グリセリン添加M9培地(Difco社製)に植菌し、37℃で48時間培養を行った。得られた培養液を前述と同様にして高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する、7.9分の位置にピークを確認した。したがって、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)を用いた発酵により、グリセリンから3HPAが生成することを確認した。
実施例1:Chloroflexus aurantiacus由来マロニルCoAレダクターゼおよびCorynebacterium glutamicum由来アセチルCoAカルボキシラーゼ導入大腸菌を用いた3HPA発酵生産
Corynebacterium glutamicum ATCC13032株のアセチルCoAカルボキシラーゼ(acc)をコードするaccBC遺伝子およびdtsR1遺伝子の塩基配列(配列番号13、14)を元に、accBC遺伝子およびdtsR1遺伝子を増幅するプライマー(Corynebacterium glutamicum由来accBC増幅用プライマー;配列番号:15、16、ならびにCorynebacterium glutamicum由来dtsR1増幅用プライマー;配列番号:17、18)を設計した。設計したプライマーを用いてCorynebacterium glutamicum ATCC13032株のゲノムDNAをテンプレートとしたPCR増幅を行い、Corynebacterium glutamicum ATCC13032株のaccBC遺伝子およびdtsR1遺伝子を取得した。取得したaccBC遺伝子およびdtsR1遺伝子を、比較例1に記載のmcr/PinPoint Xa−1のmcr遺伝子の下流にクローニングし、mcr−acc/PinPoint Xa−1を構築した。Escherichia coli fusion blue(Takara社)のプロトコールに従って、構築したmcr−acc/PinPoint Xa−1をヒートショック法により導入し、E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1)を取得した。
E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1)をIPTG添加(最終濃度1mM)2wt/vol%グルコース添加M9培地(Difco社製)に植菌し、37℃で48時間培養を行った。得られた培養液を比較例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、比較例1と比較して、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する7.9分の位置のピークが優位に増加した。したがって、マロニルCoAレダクターゼと、宿主として利用する生物とは異なる生物由来のアセチルCoAカルボキシラーゼを併用することで、マロニルCoAレダクターゼを単独で使用する場合よりも効率的に3HPA生産が可能となることが確認された。なお、グリセリンを炭素源とした培養においても同様に比較例1に記載の3HPAピークよりも有意に増加した3HPAピークを確認した。
実施例2:Chloroflexus aurantiacus由来マロニルCoAレダクターゼおよびEscherichia coli由来グルコース−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ導入大腸菌を用いた3HPA発酵生産
E. coliのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(zwf)遺伝子および6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(gnd)遺伝子の塩基配列(配列番号:19、20)を元に、zwfおよびgnd遺伝子を増幅するプライマー(E. coli由来グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ増幅用プライマー;配列番号:21、22、ならびにE. coli由来6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ増幅用プライマー;配列番号:23、24)を設計した。設計したプライマーを用いて、E. coli K12株のゲノムDNAをテンプレートとしたPCR増幅を行い、E. coli由来zwf遺伝子およびgnd遺伝子を取得した。取得したzwf遺伝子およびgnd遺伝子を、pCDFDuet−1(Takara社)のT7プロモーター下流にクローニングし、zwf−gnd/pCDFを構築した。
比較例1記載のE. coli (mcr/PinPoint)にzwf−gnd/pCDFを導入し、E. coli (mcr/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)を取得した。E. coli (mcr/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)をIPTG添加(最終濃度1mM)2wt/vol%グルコース添加M9培地(Difco社製)に植菌し、37℃で48時間培養を行った。得られた培養液を比較例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、比較例1と比較して、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する、7.9分の位置にピークが優位に増加した。したがって、細胞内のNADPHの利用性を高める遺伝子改変を行い、高いNADPH条件下でマロニルCoAレダクターゼを反応させることで、3HPA生産性を向上させることができることを確認した。
実施例3:Chloroflexus aurantiacus由来マロニルCoAレダクターゼ、Corynebacterium glutamicum由来アセチルCoAカルボキシラーゼおよびEscherichia coli由来グルコース−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ導入大腸菌を用いた3HPA発酵生産
実施例1に記載のE. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1)に、実施例2に記載のzwf−gnd/pCDFを導入し、E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)を取得した。E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)をIPTG添加(最終濃度1mM)2wt/vol%グルコース添加M9培地(Difco社製)に植菌し、37℃で48時間培養を行った。得られた培養液を比較例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、比較例1および実施例1、2と比較して、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する7.9分の位置のピークが優位に増加した。したがって、マロニルCoAレダクターゼと、使用するホストとは異なる生物由来のアセチルCoAカルボキシラーゼの併用に加えて、細胞内のNADPHの利用性を高める遺伝子改変を行うことで、マロニルCoAレダクターゼ単独またはマロニルCoAレダクターゼおよびアセチルCoAカルボキシラーゼを併用した場合よりも、より効率的に3HPA生産が可能となることが確認された。
実施例4:糖から発酵生産した3HPAを用いたアクリル酸および高吸水性樹脂の合成
実施例1,2,3で得られた3HPAを含む発酵液100gを、それぞれ、6000rpmで20分遠心後、培養液上清を回収した。回収した培養液上清にトリ−n−オクチルアミン100gを加え、攪拌子で穏やかに24時間室温(25℃)で混合した。
次に、所定時間混合後、混合液を静置して、二相に分離し、有機相を回収した。反応混合物を含む有機相に酸化アルミニウムを50g添加し、170℃で1時間加熱・留出した。得られた留出液を回収し、室温まで冷却した後、100℃から130℃まで徐々に加熱していき、留出液を除去した。その後、減圧して、系内の圧力を20kPaに保ちながら200℃まで徐々に加熱していき、留出液を回収することで、アクリル酸を含む溶液(アクリル酸溶液)を得た。
得られたアクリル酸溶液に、重合禁止剤としてハイドロキノンを60質量ppm(対アクリル酸)添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記重合禁止剤添加アクリル酸溶液を冷却下(液温35℃)で添加することにより、アクリル酸75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウムに対する値)を溶解することにより、単量体成分を得た。この単量体成分350gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素を吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.12g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.005g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分(重合ピーク時間)後にピーク重合温度108℃を示した後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。
得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で、20分間加熱乾燥させた。さらに、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
参考例1:Moorella thermoacetica ATCC39073の独立栄養培養
二酸化炭素または一酸化炭素を唯一の炭素源とした独立栄養条件下でMoorella thermoacetica ATCC39073を培養し、二酸化炭素または一酸化炭素より生合成されたアセチルCoAおよび酢酸を含有するMoorella thermoacetica ATCC39073の培養液を取得した。
実施例5:二酸化炭素または一酸化炭素を原料とした3HPA発酵生産
参考例1に記載のMoorella thermoacetica ATCC39073の独立栄養培養により二酸化炭素または一酸化炭素と水素とから生合成されたアセチルCoAおよび酢酸を含む培養液を、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1)、E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1)、E. coli (mcr/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)またはE. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)の菌体と混合し、37℃で72時間培養した。得られた培養液を比較例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーでの分析に供したところ、すべての培養液において、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する、7.9分の位置にピークを確認した。この際、7.9分の位置にピークは、E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)が一番大きく、E. coli(mcr−acc/PinPoint Xa−1)、E. coli(mcr/PinPoint Xa−1,zwf−gnd/pCDF)およびE. coli(mcr/PinPoint Xa−1)の順で小さくなった。したがって、これらの4菌体すべてにおいて、二酸化炭素または一酸化炭素を原料とした発酵により3HPAが生産可能なことを確認した。加えて、3−ヒドロキシプロピオン酸のピークと一致する、7.9分の位置のピークは、マロニルCoAレダクターゼを単独で利用した場合よりも、使用する宿主とは異なる生物由来のアセチルCoAカルボキシラーゼを併用した場合、およびNADPHの利用性を高める遺伝子改変を行った場合の方が、有意に高いピークが観察された。
実施例6:二酸化炭素または一酸化炭素から発酵生産した3HPAを用いたアクリル酸および高吸水性樹脂の合成
実施例5で得られた3HPAを含む発酵液100gを6000rpmで20分遠心後、培養液上清を回収した。回収した培養液上清にトリ−n−オクチルアミン100gを加え、攪拌子で穏やかに24時間室温(25℃)で混合した。
混合液を静置して、二相に分離した段階で、有機相を回収した。この反応混合物を含む有機相に酸化アルミニウムを50g添加し、170℃で1時間加熱・留出したした。
得られた留出液を回収し、室温まで冷却した後、100℃から130℃まで徐々に加熱していき、留出液を除去した。その後、減圧して、系内の圧力を20kPaに保ちながら200℃まで徐々に加熱していき、留出液を回収することでアクリル酸を含む溶液(アクリル酸溶液)を得た。
得られたアクリル酸溶液を母液として室温(約15℃)〜−5.8℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約15℃)〜4.8℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、精製アクリル酸を得た。
得られた精製アクリル酸に重合禁止剤としてハイドロキノンを60質量ppm(対アクリル酸)添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記の重合禁止剤添加アクリル酸溶液を冷却下(液温35℃)で添加することにより、アクリル酸75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウムに対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分350gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素を吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.12g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.005g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分(重合ピーク時間)後にピーク重合温度108℃を示した後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。
得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で、20分間加熱乾燥させた。さらに、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。

Claims (9)

  1. アセチルCoAカルボキシラーゼの存在下でアセチルCoAを反応させてマロニルCoAを生産し、マロニルCoAレダクターゼまたはマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼの存在下で前記マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有し、
    前記アセチルCoAカルボキシラーゼは、前記マロニルCoAの生合成量を増加させる効果を有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
  2. 前記マロニルCoAの生合成量の増加効果は、アセチルCoAカルボキシラーゼを、当該アセチルCoAカルボキシラーゼを本来有する微生物とは異なる種に属する微生物に形質転換することによって得られる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記マロニルCoAの反応は、マロニルCoAレダクターゼの存在下でかつ高いNADPH量の条件下で行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記マロニルCoAの反応は、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現する微生物を用いて行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 高いNADPH量の条件下でかつマロニルCoAレダクターゼの存在下で、マロニルCoAを反応させて3−ヒドロキシプロピオン酸を生産することを有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
  6. 前記マロニルCoAの反応は、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子または6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を高発現する微生物を用いて行われる、請求項5に記載の方法。
  7. 一酸化炭素または二酸化炭素を炭素源として用いた微生物の代謝によりアセチルCoAまたはマロニルCoAを生産することをさらに有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により製造される3−ヒドロキシプロピオン酸を脱水することを有する、アクリル酸の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法により製造されるアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、前記部分中和アクリル酸を架橋性モノマーと共重合することを有する、吸水性樹脂の製造方法。
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