JP2013202029A - 3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリセリンを経由する3HP生成経路を利用した3HPの発酵生産において、糖から直接3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法は、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を、糖の存在下で培養することを有する点に特徴を有する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法は、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を、糖の存在下で培養することを有する点に特徴を有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法に関する。特に、本発明は、微生物の培養により、糖からグリセリンを経由して3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法に関し、3−ヒドロキシプロピオン酸の生産性を向上させるための手段を提供するものである。
地球温暖化防止および環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源を従来の化石原料の代替として用いることが注目されている。例えば、汎用化成品、プラスチックおよび燃料生産の原料として、トウモロコシや小麦などの澱粉系バイオマス、サトウキビなどの糖質系バイオマス、および菜種の絞りかすや稲わらなどのセルロース系バイオマスなどのバイオマス資源を由来とする糖類を原料として利用する方法の開発が試みられている。また、バイオマス資源由来の糖類の利用以外にも、木質系バイオマスをガス化して得られる一酸化炭素と水素とを原料として利用する方法や木質系バイオマスをガス化してメタノールを合成する方法についても検討・報告されている。
3−ヒドロキシプロピオン酸(3−hydroxypropionic acid:3HP)およびそのエステルは、脂肪族ポリエステルの原料として有用な化合物であり、また、これから合成されるポリエステルは生分解性の地球にやさしいポリエステルとして注目されている。3HPは、通常、アクリル酸に対する水の付加により、またはエチレンクロロヒドリンとシアン化ナトリウムとの反応により製造される。アクリル酸を水和する反応は平衡反応であるため、反応率が制御されるという問題がある。また、エチレンクロロヒドリンの場合は、毒性の強い物質の使用が必要であり、さらに加水分解工程を追加しなくてはならない。この場合、塩化ナトリウムおよびアンモニウム塩が大量に生じるという問題もある。
3HPは、脱水することによりアクリル酸を製造することができる。アクリル酸は、主にアクリル酸エステル製造の中間体として使用されており、アクリル酸エステルはコーティング剤、仕上げ剤、ペイント、接着剤の製造に使用され、吸着剤や洗浄剤用添加剤の製造にも使用されている。また、アクリル酸を部分中和させ、架橋性モノマーと共重合させることで吸水性樹脂を製造することもできる。アクリル酸の代替製造法としては、アクリロニトリルの硫酸による加水分解が知られている。しかし、この方法では、硫酸アンモニウム廃棄物が大量に生成し、それに伴うコストのために商業的には実施されていない。
3HPが酵素反応または発酵により生成可能なことが報告されている。一例として、グリセリン(グリセロール)から出発する3HP生成経路(グリセリン → 3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3HPA) → 3HP)を利用した3HPの発酵生産が知られている。当該3HP生成経路は、他の3HP生成経路(例えば、βアラニンを経由する経路や、3HPサイクルを含む経路)と比較して、反応段数が少ないことから3HP生産により適していると考えられている。
特許文献1には、グリセロールデヒドラターゼ(glycerol dehydratase)と、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)と、を発現する遺伝子構造体を有する遺伝子組み換え微生物を用いて、グリセリンを原料として3HPを製造することが開示されている。具体的には、特許文献1には、Klebsiella pneumoniae由来のdhaB遺伝子と、Saccharomyces cerevisiae由来のald4遺伝子とを有する遺伝子物質を含む遺伝子組換え大腸菌(Escherichia coli)を含む培地に、5g/Lのグリセリンを添加してフラスコ中で12時間嫌気的発酵を行ったところ、0.173g/Lの3HPが生産されたことが記載されている。なお、引用文献1には、グルコースをグリセリンに変換可能なSaccharomyces cerevisiaeなどの生物を宿主として用いることにより、3HPがグルコースから直接生産されうる、との記載はあるが、それを実証している実施例はない。
また、非特許文献1には、グリセロールデヒドラターゼをコードするKlebsiella pneumoniae由来のdhaB遺伝子と、アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする大腸菌由来のaldH遺伝子を有する遺伝子組換え大腸菌を調製し、これをグリセリンの存在下で培養したところ、フラスコスケールのバッチ培養では48時間で4.4g/L、バイオリアクターを用いたフェドバッチ培養では72時間で31g/L(収率35%)の3HPが生産されたことが開示されている。非特許文献1では、培地における、pH、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)濃度、基質であるグリセリン濃度などを最適化することにより、3HPの生産性を向上させている。
また、非特許文献2には、グリセロールデヒドラターゼをコードするKlebsiella pneumoniae由来のDhaB遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子をコードするKlebsiella pneumoniae由来のGDR遺伝子、および2,5−ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ(α−ketoglutaric semialdehyde dehydrogenase)をコードするAzospirillum brasilense由来のKGSADH遺伝子を有する遺伝子組み換え大腸菌を調製し、これをグリセリンの存在下で培養したところ、フラスコ中での浸透培養では2.8g/L、バイオリアクターを用いた好気的フェドバッチ培養では72時間で38.7g/L(収率35%)の3HPが生産されたことが開示されている。非特許文献2では、2種の酵素(すなわち、グリセリンから3HPAへの反応を触媒する酵素;および3HPAから3HPへの反応を触媒する酵素)の活性およびバランスにより、これらの酵素をコードする遺伝子の発現が変化する、という知見を基に、AldH遺伝子に代えてKGSADH遺伝子を導入することにより、3HPの生産性を向上させている。
Appl Microbiol Biotechnol,2009 Sep,84(4),p.649−657
Biotechnol Bioeng.,2009 Nov 1,104(4),p.729−739
上述したように、3HPの発酵生産において、グリセリンを経由する3HP生成経路を利用した手法が提案・報告されているが、これまでの報告は、発酵の原料としてグリセリンを用いた例のみであり、糖から直接3HPを発酵生産したという例はない。しかしながら、安価に入手可能なバイオマス資源などから3HPを生産する場合、糖からグリセリンを製造する工程と、グリセリンから3HPを製造する工程とを別々に行う必要があることから、コスト面で不利となる。したがって、糖から直接3HPを製造する方法が強く望まれていた。
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされ、グリセリンを経由する3HP生成経路を利用した3HPの発酵生産において、糖から直接3HPを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を調製し、当該微生物を用いて、糖から直接3HPを製造することに成功した。そして、上記知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を、糖の存在下で培養することを有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法によって達成される。
本発明によれば、グリセリンを経由する3HP生成経路を利用した3HPの発酵生産において、糖から直接3HPを製造することが可能となる。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の好ましい形態を説明する。以下では、所望の反応を触媒する酵素名または酵素遺伝子名を記載しているが、所望の反応を触媒できる酵素または酵素遺伝子であれば、その酵素名、酵素遺伝子名、EC番号に関わらず、本明細書に記載の酵素または酵素遺伝子と同様に利用することが可能である。なお、本明細書における遺伝子には、DNAおよびRNAが包含され、好ましくはDNAである。
本形態は、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を、糖の存在下で培養することを有する、3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の製造方法に関する。
化学式1に、本発明の一実施形態に係るグルコースから3HPを製造する方法を概念的に示す。
化学式1の実施形態では、糖からグリセリンを生成する能力を元来有していない大腸菌(Escherichia coli)に、Saccharomyces cerevisiae由来のグリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(glycerol−3−phosphate dehydrogenase:GDP)をコードする遺伝子と、Saccharomyces cerevisiae由来のグリセロール−3−ホスファターゼ(glycerol−3−phosphatase:GPP)をコードする遺伝子とを導入してなる遺伝子組換え微生物を、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物として使用している。さらに、当該微生物には、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子として、Lactobacillus reuteri由来の、ジオールデヒドラターゼ(diol dehydratase:DD)をコードする遺伝子およびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(diol dehydratase reactivating factor:DDR)をコードする遺伝子が、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子として、大腸菌由来のγ−グルタミル−γ−アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(γ−glutamyl−γ−aminobutyraldehyde dehydrogenase)をコードする遺伝子(aldH)が導入されている。
化学式1に示すように、本実施形態の遺伝子組換え微生物をグルコース存在下で培養すると、当該微生物の解糖系において、ジヒドロキシアセトンリン酸およびグリセルアルデヒド−3−リン酸に分解される。ジヒドロキシアセトンリン酸およびグリセルアルデヒド−3−リン酸は、トリオースリン酸イソメラーゼ(triose phosphate isomerase)により、可逆的に相互変換される。ジヒドロキシアセトンリン酸は、本実施形態の遺伝子組換え微生物が有するGDPによりグリセロール−3−リン酸へと変換される。そして、当該グリセロール−3−リン酸は、本実施形態の遺伝子組換え微生物が有するGPPによりグリセリンへと変換される。一方、グリセルアルデヒド−3−リン酸は、遺伝子組換え微生物が有する代謝経路により、酢酸、乳酸、エタノールなどへと変換されうる。
上記で生成されたグリセリンは、続いて、本実施形態の遺伝子組換え微生物が有するDDおよびDDR(以下、「DDおよびDDR」を「DD−DDR」とも称する)により3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3HPA)へと変換される。そして、当該3HPAは、本実施形態の遺伝子組換え微生物が有するaldHにより、3HPへと変換される。
上述の従来技術で使用される遺伝子組換え微生物は、いずれも糖からグリセリンを生成する能力を有していないため、グリセリンを発酵生産の原料としている。上記特許文献1では、Saccharomyces cerevisiaeなどの、グルコースからグリセリンを生成可能な微生物を宿主として用いることにより、グルコースから3HPを直接生成可能である、との記載はあるが、これを実証している例はない。
従来技術におけるグリセリンから3HPまでの反応はわずか2段階であるが、例えば、グルコースから3HPまでの反応は、化学式1に示す反応経路では8段階である。このように多段階の反応を一の個体内で行わせるためには、複数の遺伝子を導入することが必要であるが、それらの遺伝子の発現を3HP発酵生産に適した形態で制御するには技術的な課題が多く、困難であると考えられてきた。特に、宿主微生物が元来有する代謝経路(例えば、化学式1では、グルコースから、グリセルアルデヒド−3−リン酸を経由した酢酸までの経路)によるグルコースの代謝を抑えて、3HPを高い収率で得ることは、非常に困難であった。
しかしながら、本発明者らは、このような状況下、糖から3HPを生成する能力を1つの個体内に有する遺伝子組換え微生物を調製し、当該遺伝子組換え微生物により、糖から直接3HPを発酵生産させることに成功した。これにより、バイオマス資源などから得られる糖を発酵の原料として用いることができるので、従来のグリセリンを原料とする場合と比較して、生産コストを大幅に低減することが可能となる。以下、本形態について詳細に説明する。
本形態の3HPの製造方法における特徴の一つは、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物を、遺伝子組換え微生物の宿主として用いる点である。ここでいう「糖」は、本形態における3HPの発酵生産の原料となるものである。糖としては、当該技術分野における培養で使用されうる一般的な糖を制限なく使用することができる。本形態における糖として、具体的には、バイオマス資源から誘導される糖などが挙げられ、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどのヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロースなどのペントース、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、デンプン、セルロースなどの2糖類や多糖類、マンニトール、キシリトール、リビトールなどの糖アルコール類(ただし、グリセリンを除く)、セルロースやリグノセルロース等のバイオマス糖化処理物由来の糖などが挙げられる。このうち、グルコースおよび/またはキシロースを用いることが好ましい。これらの糖は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよく、使用する微生物の生物種によって適宜選択される。
本形態で使用される、糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物は、特に制限はなく、(1)糖からグリセリンを生成する能力を元来有する微生物;(2)糖からグリセリンを生成する能力を元来有する微生物のグリセリン生成能が遺伝学的手法により高められてなる微生物;(3)糖からグリセリンを生成する能力を有しない宿主微生物に、糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種が導入されてなる微生物;のいずれも使用可能である。
上記(1)および(2)における糖からグリセリンを生成する能力を元来有する微生物は、特に制限はなく、例えば、Schizosaccharomyces属、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Pichia属、Torulaspora属、Zygosaccharomyces属、Candida属などに属する酵母などを使用することができる。これらの微生物のうち、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombeを用いることがより好ましく、Schizosaccharomyces pombeを用いることがさらに好ましい。
上記酵母のうち、特にSchizosaccharomyces pombeは、耐酸性能を有する。したがって、このような耐酸性能を有する微生物を用いることにより、3HP生成に伴って低下する培地中のpHを、NaOHやアンモニア等のアルカリ試薬を添加することで中性付近に調整しなくても3HP発酵を継続することが可能となる。また、アルカリ試薬の添加による発酵液の希釈化を行う必要もないため、発酵終了後の発酵液中の3HP濃度を高く保つことができる。さらに、3HP塩を3HPに変換する工程、およびこれに必要な熱エネルギーや二酸化炭素、酸性試薬等も不要である。このように、3HPを中和せずに酸型のまま発酵・回収を行う「3HP酸型発酵」は、原材料の削減、発酵工程以降の工程の簡略化、およびユーテリィティーの向上が可能であるため、3HPをアルカリ試薬で塩型として発酵・回収を行う「3HP塩発酵」と比較して非常に有利である。なお、低pHでも発酵が可能な、耐酸性能を有する微生物の一例として、上記ではSchizosaccharomyces pombeの利用を記載したが、上記で例示した酵母も耐酸性能を有する微生物として挙げられる。さらに、低pHでも発酵可能な能力を保有した微生物や、生成された3HPによる生育阻害に対する耐性を保有する微生物であれば、どのような微生物でも利用可能である。また、低pHでも発酵が継続するように改変した遺伝子組換え微生物、3HPによる生育阻害を抑制するように改変した遺伝子組換え微生物、低pHでも発酵が継続するように変異処理を施した変異株、または3HPによる生育阻害に対する耐性を向上させた変異株のいずれも利用可能である。
また、上記(2)において、微生物のグリセリン生成能を高める遺伝学的手法についても特に制限はなく、当該技術分野で使用されるあらゆる手法を適宜採用することができる。例えば、(2a)糖からグリセリンまでの反応のうちの少なくとも1種の反応を触媒する酵素の発現を高める方法;(2b)グリセリンを代謝する反応を触媒する酵素遺伝子を破壊する方法や酵素遺伝子の発現量を弱くする方法;(2c)高浸透圧条件下において培養するなどの手法が挙げられる。
上記(2a)糖からグリセリンまでの反応のうちの少なくとも1種の反応を触媒する酵素の発現を高める方法としては、具体的には、酵素遺伝子の発現用プロモーターを高発現プロモーター、例えば、大腸菌の場合は一般的に外来遺伝子発現に利用されているT7プロモーター、Lacプロモーター、Trpプロモーター、λ−PLプロモーター、Tacプロモーター、T7プロモーターなどが利用可能である。加えて、グルコース代謝に関与するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子や6−ホスホフルクトキナーゼ遺伝子などのプロモーター領域、および大腸菌において耐酸性機構に関与するグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子などのプロモーター領域も利用することができる。酵母の場合はGAPプロモーター、CMVプロモーターやnmt1プロモーター等の外来遺伝子の高発現が可能なプロモーターに変更する方法が利用できる。また、細胞内で複数コピーで存在可能なプラスミドにクローニングして導入することで細胞内の酵素遺伝子のコピー数を増加させる方法、酵素遺伝子を宿主の染色体上の複数の位置に挿入することで、酵素遺伝子のコピー数を増加させる方法などは大腸菌、酵母ともに利用可能である。
上記(2b)グリセリンを代謝する反応を触媒する酵素遺伝子を破壊する方法としては、具体的には、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼおよび/またはグリセロール−−3−ホスファターゼ遺伝子を破壊したり、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼおよび/またはグリセロール−3−ホスファターゼ遺伝子のプロモーターを発現量の低いプロモーターに置換する方法、ジヒドロキシアセトンキナーゼおよび/またはグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子を破壊したり、ジヒドロキシアセトンキナーゼおよび/またはグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを、発現量の低いプロモーターに置換する方法する方法、トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子を破壊したり、トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子のプロモーターを、発現量の低いプロモーターに置換する方法する方法等が挙げられる。
上記(2c)高浸透圧条件下において培養する方法としては、具体的には、糖濃度や塩濃度を高くした培地を用いて培養を行う方法などの方法が挙げられる。
一方、上記(3)における糖からグリセリンを生成する能力を有しない宿主微生物も特に制限はなく、例えば、Escherichia属、Lactobacillus属、Salmonella属、Klebsiella属、Propionibacterium属、Agrobacterium属、Anabaena属、Bacillus属、Bradyrhizobium属、Brucella属、Chlorobium属、Clostridium属、Corynebacterium属、Fusobacterium属、Geobacter属、Gloeobacter属、Leptospira属、Mycobacterium属、Mycobacterium属、Photorhabdus属、Porphyromonas属、Prochlorococcus属、Pseudomonas属、Ralstonia属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Sinorhizobium属、Streptomyces属、Synechococcus属、Thermosynechococcus属、Treponema属、Archaeoglobus属、Halobacterium属、Mesorhizobium属、Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanopyrus属、Methanosarcina属、Methanosarcina属、Pyrobaculum属、Sulfolobus属、Thermoplasma属、Acetobacterium属、Moorella属、Oligotropha属、Cupriavidus属、Chloroflexus属、Roseiflexus属、Erythrobacter属、Metallosphaera属、Sulfolobus属、Acidianus属、Sulfolobus属、Acidianus属、Stygiolobus属、Pyrolobus属、Alcaligenes属、Synechococcus属、Chloronema属、Oscillochloris属、Heliothrix属、Herpetosiphon属、Roseiflexus属、Thermomicrobium属、Clathrochloris属、Prosthecochloris属、Allochromatium属、Chromatium属、Halochromatium属、Isochromatium属、Marichromatium属、Rhodovulum属、Thermochromatium属、Thiocapsa属、Thiorhodococcus属、Thiocystis属、Phaeospirillum属、Rhodobaca属、Rhodomicrobium属、Rhodopila属、Rhodopseudomonas属、Rhodothalassium属、Rhodospirillum属、Rodovibrio属、Roseospira属、Hydrogenovibrio属、Hydrogenophilus属、Hydrogenobacter属、Oxobacter属、Peptostreptococcus属、Eubacterium属、Butyribacterium属、Rubrivivax属、Citrobacter属、Carboxydothermus属、Carboxydibrachium属、Carboxydocella属、Thermincola属、Thermolithobacter属、Thermosinus属、Desulfotomaculum属、Thermosyntrophicum属、Methanothermobacter属、Thermococcus属、Bacillus属などに属する微生物を使用することができる。より具体的には、Escherichia coli、などの微生物が挙げられ、このうち、Escherichia coliを用いることが好ましい。
上記(3)において、糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素としては、特に制限はない。例えば、解糖系で生じるジヒドロキシアセトンリン酸をグリセロール−3−リン酸へと変換する反応を触媒するグリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GDP)、および、グリセロール−3−リン酸をグリセリンへと変換する反応を触媒するグリセロール−3−ホスファターゼ(GPP);解糖系で生じるジヒドロキシアセトンリン酸をジヒドロキシアセトンへと変換する反応を触媒するジヒドロキシアセトンホスファターゼ(dihydroxyacetone phosphatase)、および、グリセルアルデヒドをグリセリンへと変換する反応を触媒するグリセリンデヒドロゲナーゼ(glycerol dehydrogenase)などが挙げられる。
上述の糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素がコードされている遺伝子は、特に制限されないが、GDPをコードする遺伝子としては、例えば、Saccharomyces属に属する微生物に由来する遺伝子などが挙げられる。このうち、Saccharomyces cerevisiaeに由来する遺伝子を用いることが好ましい。
GPPをコードする遺伝子としては、例えば、Saccharomyces属に属する微生物に由来する遺伝子などが挙げられる。このうち、Saccharomyces cerevisiaeに由来する遺伝子を用いることが好ましい。
また、本形態の3HPの製造方法は、上述の糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を培養に用いる点にも特徴を有する。
ここで、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素としては、グリセリンから3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3HPA)への反応を触媒する機能を有するものであれば特に制限はないが、例えば、グリセロールデヒドラターゼおよびグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子;ジオールデヒドラターゼおよびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DD−DDR)などが挙げられる。このうち、本形態では、ジオールデヒドラターゼおよびジオールデヒドラターゼ再活性化因子を用いることが好ましい。
宿主微生物に導入する際に使用される、上記酵素をコードする遺伝子も特に制限はない。グリセロールデヒドラターゼの場合は、例えば、Klebsiella属、Citrobacter属、Clostridium属、Lactobacillus属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、Escherichia属、およびListeria属に属する微生物に由来する遺伝子などが使用できる。より詳しくは、Klebsiella pneumoniae、Citrobacter freundii、Clostridium pasteurianum、Lactobacillus leichmannii、Citrobacter intermedium、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus brevis、Enterobacter agglomerans、Clostridium butyricum、Caloramator viterbensis、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus hilgardii、Salmonella typhimurium、Escherichia blattae、Listeria monocytogenes、およびListeria innocuaに由来する遺伝子などが挙げられる。さらに上記以外に、ビタミンB12非依存性のGDである、Clostridium butyricum由来GDも利用できる。
グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子は、グリセリンから3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドへの変換反応を触媒することにより不活性化したグリセロールデヒドラターゼにおける反応中心部分の補酵素B12を入れ替えて、再度活性を取り戻させる役割を有するものであれば、特に制限はない。このようなグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子としては、例えば、国際公開第98/21341号パンフレット;Daniel et al., J. Bacteriol., 177, 2151(1995); Toraya and Mori, J. Biol. Chem., 274, 3372(1999);及びTobimatsu et al., J. Bacteriol. 181, 4110(1999)に記載のものなどが挙げられる。また、ビタミンB12非依存性のGDであるClostridium butyricum由来GDの場合、グリセリン脱水活性の維持に重要な役割を果たすglycerol dehydratase activating enzyme(GD−AE)を利用することが好ましい。
また、ジオールデヒドラターゼ(DD)の場合は、例えば、Klebsiella属、Citrobacter属、Clostridium属、Lactobacillus属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、およびListeria属に属する微生物に由来する酵素遺伝子が使用できる。より詳しくは、Lactobacillus reuteri、Klebsiella pneumoniae、Citrobacter freundii、Clostridium pasteurianum、Lactobacillus leichmannii、Citrobacter intermedium、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus brevis、Enterobacter agglomerans、Clostridium butyricum、Caloramator viterbensis、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus hilgardii、Salmonella typhimurium、Listeria monocytogenes、およびListeria innocuaに由来する遺伝子などが挙げられる。
ジオールデヒドラターゼ再活性化因子は、グリセリンから3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドへの変換反応を触媒することにより不活性化したジオールデヒドラターゼにおける反応中心部分の補酵素B12を入れ替えて、再度活性を取り戻させる役割を有するものであれば、特に制限はない。このようなジオールデヒドラターゼ再活性化因子としては、例えば、Kajiura H.et al.,J.Biol.Chem.,276,36514(2001)に記載のものなどが挙げられる。
以上で例示したグリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子うち、本形態では、Lactobacillus属に属する微生物に由来するDD−DDR遺伝子を用いることが好ましく、Lactobacillus reuteri由来のDD−DDR遺伝子を用いることがより好ましい。
また、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素も、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから3HPへの反応を触媒する酵素であれば特に制限はなく、例えば、γ−glutamyl−γ−aminobutyraldehyde dehydrogenaseやα−ketoglutaric semialdehyde dehydrogenaseなどが使用できる。宿主微生物に導入する際に使用される、上記酵素をコードする遺伝子も特に制限はなく、例えば、Escherichia属、Aerobacter属、Agrobacterium属、Alcaligenes属、Arthrobacter属、Bacillus属、Corynebacterium属、Flavobacterium属、Klebsiella属、Micrococcus属、Protaminobacter属、Proteus属、Pseudomonas属、Salmonella属、Sarcina属、Staphylococcus属、Shigella属、Erwinia属、Neisseria属、およびLactobacillus属に属する微生物に由来する酵素遺伝子が使用できる。より詳しくは、Escherichia coli、Aerobacter aerogenes、Agrobacterium radiobacter、Agrobacterium tumefaciens、Alcaligenes viscolactis、Arthrobacter simplex、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus subtilis、Corynebacterium equi、Flavobacterium sp.、Klebsiella pneumonia、Micrococcus glutamicus、Protaminobacter alboflavus、Proteus vulgaris、Pseudomonas fluorescens、Salmonella typhimurium、Sarcina lutea、Staphylococcus aureus、Shigella flexneri、Erwinia carotovora、Neisseria meningitides、Neisseria gonorr hoeae、Lactobacillus reuteri、Schizosaccharomyces pombe、Azospirillum brasilenseに由来する遺伝子などが挙げられる。上記酵素遺伝子のうち、本形態では、Escherichia coli、Schizosaccharomyces pombe、Azospirillum brasilense由来の酵素遺伝子を用いることが好ましく、具体的には、Escherichia coli由来のaldH遺伝子を用いることがより好ましい。
本形態の製造方法で使用される遺伝子組換え微生物は、宿主微生物に上述の酵素遺伝子が導入されてなる。このような遺伝子組換え微生物を得るための酵素遺伝子の導入は、従来公知の方法を適宜参照することによって、容易に行うことができる。本形態では、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、の少なくとも2種の酵素遺伝子を同一の宿主微生物に導入する必要があり、さらに使用する宿主微生物によっては、糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素をコードする遺伝子なども導入されうる。これらの酵素遺伝子は、同一の宿主で発現させる限り、ゲノムに導入してもよいし、同一のベクターに導入して形質転換を行ってもよいし、別々のベクターに導入して形質転換を行ってもよい。宿主微生物への遺伝子の導入は、上記酵素遺伝子を適当なベクターに連結し、得られた組換えベクターを目的の酵素遺伝子が発現し得るように宿主中に導入する、または、相同組換えによってゲノム上の任意の位置に目的の酵素遺伝子を挿入することにより行われうる。
微生物のゲノムから所望の酵素遺伝子をクローニングにより取得する方法は、分子生物学の分野において周知である。例えば、遺伝子の配列が既知の場合、制限エンドヌクレアーゼ消化により適したゲノムライブラリを作り、所望の遺伝子配列に相補的なプローブを用いてスクリーニングすることができる。配列が単離されたら、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,202号)のような標準的増幅法を用いてDNAを増幅し、形質転換に適した量のDNAを得ることができる。本形態で使用されるグリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子、およびアルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子;さらに必要に応じて使用されうる、糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素をコードする遺伝子などは、既知の遺伝子以外にも、既知の遺伝子の塩基配列に基づいて適当に設計された合成プライマーを用いたハイブリダイゼーション法、PCR法などにより取得することも可能である。このような方法により、GenBankなどの公開データベースに登録されていない遺伝子であっても使用することが可能となる。なお、遺伝子のクローニングに用いるゲノムDNAライブラリの作製、ハイブリダイゼーション、PCR、プラスミドの調製、DNAの切断および連結、形質転換などの方法は、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,9.47−9.58,Cold Spring Harbor Lab. press(1989)に記載されている。
上記で使用される遺伝子を連結するベクターは、宿主微生物で複製可能なものであれば特に限定されない。例えば、大腸菌では、外来遺伝子の導入に利用されているプラスミド、ファージ、コスミドおよび大腸菌人工染色体(BAC)などが挙げられる。大腸菌に外来遺伝子を導入する際に利用するプラスミドとしては、例えば、pHSG398、pUC18、pBR322、pSC101、pUC19、pUC118、pUC119、pACYC117、pBluescript II SK(+)、pETDuet−1、pACYCDuet−1、pCDFDuet−1、pRSFDuet−1、pCOLADuet−1、PinPoint Xa−1(Promega社)などが挙げられ、ファージとしては、例えばλgt10、Charon 4A、EMBL−、M13mp18、M13mp19などが例示できる。また、酵母に外来遺伝子を導入する際に利用するプラスミドは、酵母内で外来遺伝子を発現させる際に用いるプロモーター、ターミネーター、および酵母内でのプラスミドの複製を担う複製起点を含むものであれば利用可能である。加えて、5−非翻訳領域、3−非翻訳領域を含んでもよく、また栄養要求性相補マーカーや抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を含んでもよい。具体的には、pART,pSM,REP3X,pSLF101,pAUR224、pDUAL、pDUAL2等が挙げられる。
上記ベクターにおいては、挿入した遺伝子が確実に発現されるようにするため、当該遺伝子の上流に適当な発現プロモーターを接続する。使用される発現プロモーターは、特に制限されず、使用する宿主や3HP発酵生産に適した培養条件下で効率的に遺伝子発現が可能となるプロモーターを当業者が適宜選択すればよい。例えば大腸菌においては、一般的に外来遺伝子発現に利用されているT7プロモーター、Lacプロモーター、Trpプロモーター、λ−PLプロモーター、Tacプロモーター、T7プロモーターなどに加えて、大腸菌由来の硝酸呼吸に関与する硝酸還元遺伝子narGHJIオペロンのNarプロモーター領域や、大腸菌の硝酸還元酵素遺伝子であるFrd遺伝子のプロモーター領域を利用することもできる。Narプロモーター領域やFrdプロモーターは嫌気条件において遺伝子発現誘導を受けるプロモーターである。さらに、グルコース代謝に関与するグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子や6−ホスホフルクトキナーゼ遺伝子などのプロモーター領域、および大腸菌において耐酸性機構に関与するグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子などのプロモーター領域も利用することができる。また、酵母での外来遺伝子発現に利用するプロモーターとしては、nmt1プロモーター、nmt41プロモーター、nmt81プロモーター、fbp1プロモーター、inv1プロモーター,ctr4プロモーター,CaMV35Sプロモーター,adh1プロモーター,SV40プロモーター,urg1プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、efa1a−cプロモーター、tif51プロモーター,cam1プロモーター、グルコース代謝に関与するグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子や6−ホスホフルクトキナーゼ遺伝子等のプロモーター領域等が利用できる。
好ましい実施形態としては、遺伝子組換え微生物として、グリセリンを生成するのに必要な酵素をコードする遺伝子、具体的には、GDPをコードする遺伝子(GDP遺伝子)およびGPPをコードする遺伝子(GPP遺伝子)が導入されてなる遺伝子組換え微生物を使用する場合、当該GDP遺伝子およびGPP遺伝子を発現させるためのプロモーターとして、Tacプロモーター、およびLacプロモーターを用いることが好ましく、なかでも、Tacプロモーターを用いることがより好ましい。このようなプロモーターを用いることにより、微生物中におけるGDPおよびGPPの活性が大きくなり、グリセリンの生成反応が良好に進行するため、結果として3HPの生成効率を向上させることが可能となる。
本形態の3HP溶液の製造方法は、上述の遺伝子組換え微生物を上述の糖の存在下で培養し、当該微生物が糖を資化する過程で生成する3HPを培養液中に蓄積させることにより実施できる。
培養に用いる培地および培養条件は、微生物の生育条件により選定すればよく、上述の糖に加えて、窒素源、無機イオン、および必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができ、特に限定されない。例えば、宿主微生物として大腸菌を用いる場合には、LB培地が例示でき、また宿主微生物として酵母を利用する場合は、YPD培地、YES培地、EMM培地等が例示できる。
培養は、微生物の生育に好適な条件で行われればよく、特に限定されない。3HPの生成効率を考慮すると、大腸菌を宿主微生物とした場合の好ましい実施形態としては、培養温度は、20℃を超えて37℃未満であり、より好ましくは22〜35℃であり、さらに好ましくは25〜30℃である。大腸菌を宿主微生物とした場合の本形態の遺伝子組換え微生物は、一般的な培養温度と比較して低い温度領域で培養した方が、3HPの生成効率が向上しうる。後述の実施例では、宿主微生物として大腸菌を使用しているが、培養温度を大腸菌の至適温度(37℃)とした場合と比較して、より低い25℃の場合の方が、3HPの生成効率が高いことが分かる。また、酵母を宿主とした場合、3HPの生成効率を考慮すると好ましい実施形態は、20℃〜42℃である。また、培養時間も特に制限はないが、好ましくは10〜100時間、より好ましくは15〜60時間である。
微生物の培養におけるpHは、3HPが効率的に発酵生産可能なpHであれば特に限定されない。耐酸性能を有する微生物を用いて培養を行う場合(3HP酸型発酵)、低pHでも発酵産物の生成が継続するため、アルカリ試薬を添加してpHを中性付近に調整することなく培養することが可能である。例として、Schizosaccharomyces pombeを宿主として利用する場合、培養開始時は使用する培地のpH(中性付近)から培養は開始するが、3HPの生成に伴って次第に培地のpHは低下する。pH2.5付近まで培地のpHが低下すると宿主の生育は抑制されるが、pH2.5以下、例えばpH1付近まで培地のpHが低下したとしても、培地中の炭素源は資化され、3HP生産は継続する。3HPの培地中の濃度が100g/Lを超えた段階で培養を終了すると、培地のpHは4未満となる。このように、発酵工程においてアルカリ試薬を添加せずに培養を行い、pH4未満の3HP発酵液を得ることで、発酵工程以降の工程、例えば、発酵液からの3HP回収工程に用いる場合に、前述のように、原材料の削減、工程の簡略化、およびユーティリティーの向上が期待できる。なお、この場合であっても、例えば微生物の生育などを考慮して、pHを適切な範囲に調整してもよい。pHの調整方法としては、アルカリ性物質を発酵中に適時培養液に添加する方法や、緩衝作用を持った培地を使用する方法等がある。アルカリ性物質を適時培養液に添加する場合、アルカリ試薬として、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液等の一般的なアルカリ試薬を用いることができる。また、緩衝作用を持った培地を使用する方法としては、発酵に使用する培地に予め水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、水酸化アンモニウム等を添加した培地を使用する方法が挙げられる。
一方、培養中にアルカリ試薬を添加して3HPなどの酸を中和する、3HP塩型発酵を行う場合、使用する宿主の生育を妨害せず、3HPが効率的に発酵生産可能なpHを発酵期間中は維持することが望ましく、pHの維持には培養液から酸を分離するときの障害とならない試薬を用いて調整することが好ましい。例として、大腸菌を宿主として利用する場合、培養期間中pHは、5.0以上、好ましくは5.5以上で、10.0以下、好ましくは9.7以下に保持することが望ましい。pH調整には無機もしくは有機の、酸性またはアルカリ性物質、さらにアンモニアガスなどを使用することができる。炭酸ナトリウム、アンモニア、ナトリウムイオン供給源を添加してもよい。また、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液などの一般的なアルカリ試薬を用いてもよい。
窒素源は、使用する微生物の生育に適した窒素源を選定すればよく特に限定されない。例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカーなどの利用が挙げられる。また、無機物も同様に微生物の生育に適した窒素源を選定すればよく特に限定されない。例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
培養中は、カナマイシン、アンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、G418,ハイグロマイシンB、オーレオバシジンA、ストレプトスライシン、ブラストシジン、フレオマイシンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インデューサーを培地に添加することもできる。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)、インドール酢酸(IAA)、アラビノース、ラクトースなどを培地に添加することができる。
以上のように、本形態では、糖の存在下で上述の一の遺伝子組換え微生物を培養することにより、糖から3HPを直接製造することが可能となる。従来もグリセリン経由の3HP生成経路を利用し3HPの発酵生産に関する技術が提案されている。しかしながら、これらの従来技術で用いられている微生物は、糖からグリセリンを生成する能力を有していないものであるため、グリセリンを炭素源として培養が行われている。したがって、例えば、バイオマス資源などから得られる糖を、発酵の原料として用いることができないという問題点を有しており、これが3HPの生産コストを下げることができない大きな要因となっていた。本形態の製造方法によると、糖から3HPを直接製造することが可能となるため、このような問題を解消することができる。
上記培養によって得られる3HP溶液は、上述のように培養後に未精製のまま、次の工程、例えばアクリル酸の製造工程に供することも可能であるが、必要によりさらに精製を行ってもよい。3HPの精製法は当該技術分野において周知である。例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留およびカラムクロマトグラフィーに反応混合物を供することにより、3HP溶液から3−ヒドロキシプロピオン酸を分離することができる(米国特許第5,356,812号)。また、限外濾過膜や水などの低分子のみが透過できるゼオライト分離膜などで3HP溶液の濃縮を行ってもよい。濃縮を行うことにより、水を蒸発させるためのエネルギーを低減することができる。さらに、3HP溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にかけることにより、3−ヒドロキシプロピオン酸を直接同定することもできる。
本形態の製造方法で得られた3HPは、脱水処理を行うことにより、アクリル酸に変換することができる。すなわち、本発明の一形態によると、上記の製造方法により得られる3−ヒドロキシプロピオン酸を脱水処理することを有する、アクリル酸の製造方法が提供される。本形態のアクリル酸の製造方法では、上述の製造方法により得られる3HPを、触媒の存在下あるいは非存在下、加熱して脱水反応を起こし、アクリル酸を得る。脱水反応工程は特に限定されず、液相または気相での反応が可能である。また反応形式は回分式、半回分式、連続式のいずれも好適に使用できる。反応器としては、固定床反応器、流動床反応器、撹拌槽型反応器、膜反応器、押出流れ反応器、トリクルベッド反応器、反応蒸留塔等が例示できる。
脱水反応に供する3HPを含む原料組成物は、3HPを含んでいればよく、これ以外にも3HPのエステルダイマーやエーテルダイマー等のオリゴマー成分を含んでいてもよい。さらに、微生物による培養により副生する、発酵副生成物が含まれていてもよい。
また、3HPを含む原料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒としては、3−ヒドロキシプロピオン酸を溶解可能なものであれば特に制限されない。例えば、水;メタノール、エタノール、ドデカノールなどのアルコール系溶媒;トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;トリカプリルアミン、トリデシルアミンなどのアミン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒のうち、好ましくは水が使用される。これらの溶媒は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
3HPを含む原料組成物における3HPの濃度は、当該組成物の全質量(溶媒を含む)に対し、5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがよりこのましく、20〜90質量%であることがさらに好ましい。3HPの濃度を95質量%以下とすることにより、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になる。一方、3HPの濃度が5質量%以上とすることで、アクリル酸の生産効率を上げることができ、用役費の低減にも寄与できる。
3HPの脱水反応は、触媒の存在下で実施してもよいし、触媒の非存在下で実施することも可能であるが、触媒の存在下で実施した方が、反応速度の向上や選択率の上昇が期待できるため、好ましい。脱水反応に用いられる触媒としては、3HPを脱水してアクリル酸とする反応を触媒する作用を有するものであれば特に限定されず、公知の触媒を適宜採用することができる。触媒としては、(1)塩類;具体的には、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、および3−ヒドロキシプロピオン酸カルシウム等;(2)酸触媒;具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類、ケイタングステン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸、リン酸またはヘテロポリ酸等の酸性化合物をシリカ等の担体に接触して得た触媒、リン酸水素ナトリウムやリン酸水素カリウム等のリン酸塩を担体に担持した触媒、酸性イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、シリカ/アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、およびその他のルイス酸またはブレンステッド酸等の固体酸触媒などの酸触媒;(3)塩基触媒;具体的には、酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、トリカプリルアミン、トリデシルアミン、およびトリドデシルアミン等のアミン類、塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの触媒のうち、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、リン酸やリン酸塩を担体に担持した触媒が好適に用いられる。
脱水反応の反応温度は特に制限はないが、通常150℃〜500℃であり、好ましくは200℃〜450℃である。反応温度がこのような範囲であると、反応速度が速く、副反応も生じにくいため、アクリル酸の収率を高めることができる。また、脱水反応の反応圧力も特に限定されず、反応形式や反応条件を勘案して当業者が適宜決定することができる。例えば、反応圧力は10kPa〜1000kPaの範囲が好適であり、50kPa〜300kPaの範囲がより好ましい。
以下、本形態における脱水処理の具体的な方法について、例を挙げて説明する。本形態の脱水処理の一例としては、3HPを含む原料組成物を加熱し、脱水反応を気相で行うことによりアクリル酸を得る方法が挙げられる。より具体的には、3HPを含む原料組成物を蒸発させ、気化した原料組成物を触媒を充填した反応器へ導入して脱水反応を行うことで、アクリル酸を得る。
3HPを含む原料組成物を蒸発させる際には、3HPは沸点が高いため、また二量化等の副反応が進行しやすいため、効率よく蒸発させることが好ましい。蒸発に用いる蒸発器は、液体状態で供給される原料組成物に効率的に熱を伝えることができる構造を有するものであることが好ましい。このような蒸発器としては、例えば、水平管型や垂直管型の自然循環式蒸発器、強制循環式蒸発器等が挙げられる。また、蒸発器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、ディクソンパッキン等の単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、液体の表面積を大きくして蒸発させる方法も挙げられる。また、上昇液膜型、流下液膜型、撹拌液膜型等の薄膜式熱交換器を用いて液体の表面積を大きくして短時間で蒸発させる方法も挙げられる。さらに、スプレーやアトマイザー等を用いて当該組成物を細かい液滴にして分散させて蒸発させる方法も挙げられる。これ以外にも、加熱した原料組成物を蒸発室に供給し、気化させるフラッシュ蒸発器を使用する方法が挙げられる。フラッシュ蒸発器を用いた蒸発は、原料組成物を常圧または加圧下で加熱し、この加熱された液体状の原料組成物を減圧または常圧下の蒸発室に供給して、原料組成物を気化させることにより行われる。また、原料組成物を流動床式の蒸発器に供給して気化させてもよい。流動床式の蒸発器を用いた蒸発は、例えば、粒状の不活性固体を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式蒸発器に原料組成物を供給し、気化させることによって行われる。さらに、上記の蒸発方法を適宜併用してもよい。例えば、スプレーで原料組成物を噴霧し、充填物を充填した蒸発器で原料組成物を気化させることもできる。
蒸発を行う際の蒸発器の温度(蒸発器の設定温度)は150℃〜500℃が好ましく、200℃〜450℃がより好ましい。蒸発器の温度を150℃以上とすることにより、原料組成物が速やかに気化させることができる。また、蒸発器の温度を500℃以下とすることにより、3HPの副反応や加熱に必要なエネルギーの増大を抑えたり、当該組成物がコーキングを起こし炭素質の析出物が反応器内に付着して閉塞を起こすのを防ぐことができる。
原料組成物を蒸発させる際の好ましい形態は、加熱する際にガスを導入しながら蒸発させる形態である。原料組成物と共に、水や不活性気体等のガスを導入すると、3HPの蒸発が促進され、安定な反応を継続できるため好ましい。この際に使用されるガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気またはそれらの混合物等を用いることができ、窒素または水蒸気が好適に使用される。なお、上記水蒸気には、原料組成物中に溶媒として含まれる水が気化した水蒸気も含まれうる。また、導入されるガスの量は、原料組成物中の3HPの全モル数に対して、0.5〜100倍のモル数のガスを使用することが好ましく、1〜50倍のモル数のガスを使用することがより好ましい。
脱水反応が気相で行われる場合、原料組成物が蒸発した後に脱水反応が行われるが、原料組成物の蒸発後、脱水反応が行われる前に、上記を所定の温度に加熱または冷却する温度調整工程を経てもよい。また、蒸発器で気化させた原料組成物の蒸気を導管を通して連結した脱水反応器へと供給してもよい。あるいは、蒸発器と反応器を一体化されてなる装置を用いて蒸発および脱水反応を連続して行ってもよい。例えば、反応管に触媒を充填し、その上に表面積の大きい充填物を充填することにより、蒸発を充填物層で行った後、脱水反応を触媒層で行うことができ、蒸発および脱水反応を連続して行う形態も好ましい。さらに、1または複数の充填物層と、触媒を充填した多管式の反応器とを連結して、蒸発および脱水反応を連続して行うこともまた好ましい。
3HPの脱水工程で使用する反応器は、反応器内に固体触媒を保持し、加熱することができるものであれば特に制限はなく、固定床式流通反応器や流動床式流通反応器等を当業者が適宜選択することができる。固定床式反応器は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに原料組成物の蒸気を供給して反応を行うものである。原料組成物の蒸気は、上昇流、下降流、水平流いずれであってもよい。固定床式流通反応器のうち、特に熱交換の容易さから、多管式固定床反応器が好適に使用されうる。流動床式反応器は、反応器の中に粒状の触媒を入れ、原料組成物の蒸気や、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら反応を行うものである。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくいという利点を有する。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
脱水反応により得られる反応生成物は、液体として回収されうる。反応生成物を回収する方法は、特に制限されないが、例えば、反応生成ガスを熱交換器に導入し、反応生成ガスの露点以下の温度で凝縮する方法や、反応生成ガスを溶剤等に接触させて捕集する方法等により、アクリル酸を含む組成物として回収される。得られる当該組成物中のアクリル酸濃度は、その回収方法によっても異なるが、通常、組成物の全質量に対して5質量%〜90質量%である。
また、本形態の脱水処理の他の一例としては、脱水反応を液相で行う方法が挙げられる。具体的には、反応器内の加熱された溶媒および/または触媒からなる液相に、液体状態の原料組成物を導入して、当該原料組成物を加熱することにより脱水反応を行う。液相での脱水反応を行う際の原料組成物には、溶媒が含まれていてもよい。このような溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、ドデカノールなどのアルコール系溶媒;トルエンなどの炭化水素系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;トリカプリルアミン、トリデシルアミンなどのアミン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒のうち、好ましくは、水、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒が使用される。これらの溶媒は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
脱水反応において使用される触媒は、液相反応が可能な触媒であれば特に制限はなく、液体状の触媒または固体状の触媒のいずれも使用可能である。また、反応時に、溶媒に触媒が溶解されていてもよいし、溶媒中に触媒が分散している状態であっても構わない。この際に使用される溶媒としては、上述の原料組成物に含まれてもよい溶媒が例示される。
脱水反応は、液相において原料組成物を触媒と接触させることで行われる。液相での反応の場合、原料組成物中の3HPの濃度が低下するので、3HPのオリゴマー化等の副反応を抑制することができ、アクリル酸収率を向上させることが可能である。また、液相の場合、液相から供給される熱により、反応で生成したアクリル酸や水が速やかに気化し、液相より除去される。これにより反応の平衡が移動するため、3HPからアクリル酸への変換率を高めることもできる。
液相反応において、原料組成物を反応器へ導入する速度は、使用する触媒や反応温度により異なるが、反応液中のアクリル酸濃度が、反応液の全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下となる状態を維持できるように調整することが好ましい。反応液中のアクリル酸濃度が1質量%以下であると、平衡反応である脱水反応の反応速度が高く維持され、3HPからアクリル酸への変換を効率よく進めることができる。また、このように反応液中のアクリル酸濃度を低く保つことにより、生成したアクリル酸が副反応により消費されて、アクリル酸の収率が低下するのを防ぐこともできる。
液相反応における好ましい形態の一つは、脱水反応後の反応生成物を気化させる際に、ガスを導入する形態である。ガスとしては、特に限定されないが、窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)や空気等の非凝縮性のガス、水蒸気、過熱水蒸気等の凝縮性のガスを適宜用いることができる。これらのガスのうち、窒素、水蒸気、または過熱水蒸気を用いることが好ましい。これらのガスは、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
導入されるガスの温度は、非凝縮性のガスの場合、通常20℃〜350℃であり、反応温度の維持および生成ガスの凝縮の観点から、好ましくは50℃〜330℃、より好ましくは100℃〜300℃である。一方、凝縮性のガスの場合、導入されるガスの温度は、通常反応圧力における沸点〜350℃の範囲であり、反応温度の維持および生成ガスの凝縮の観点から、好ましくは反応圧力における沸点+20℃〜330℃の範囲である。
導入されるガスの量は、原料組成物の全質量に対して、0.1〜100質量倍の範囲であればよく、好ましくは、0.5〜50質量倍の範囲である。導入されるガスの量が0.1質量倍以上であると、反応生成物からのアクリル酸の気化による除去効率を高め、反応収率を向上させることができる。一方、導入されるガスの量が100質量倍以下であると、反応器から流出するガスを冷却するのに用いるエネルギーを抑えることができる。
本形態における脱水反応に用いられる反応器または反応装置は、反応生成物である水やアクリル酸を速やかに気化して除去することができるように、反応系に効率的に熱を与えることができるものであることが好ましい。例えば、反応器の壁面からの加熱に加えて、外部熱交換器に反応液を循環させてもよい。この際に使用できる熱交換器としては、例えば、液膜式の熱交換器が挙げられ、より具体的には、上昇液膜型、流下液膜型、撹拌液膜型等の公知の熱交換器が挙げられる。また、熱交換器そのものを反応器として使用してもよい。さらにまた、反応系内にガスを供給する場合には、加熱したガスにより熱を供給してもよい。
脱水反応により得られる反応生成物は、冷却して液体として回収されうる。反応生成物を回収する方法は、特に制限されないが、例えば、反応生成ガスを熱交換器に導入し反応生成ガスの露点以下の温度で凝縮して得る方法や、または反応生成ガスを溶剤等の捕集剤に接触させて吸収する方法等により冷却して、アクリル酸を含む組成物を得ることができる。当該組成物中のアクリル酸濃度は5質量%〜90質量%である。
また、本発明の方法で得られるアクリル酸を含む組成物は精製してもよく、精製を行う場合は、好ましくは、晶析工程を用いる。
晶析工程は、アクリル酸を含む組成物を晶析装置に供給して結晶化させることにより、精製アクリル酸を得る工程である。なお、結晶化の方法としては、従来公知の結晶化方法を採用すればよく、特に限定されるものではないが、結晶化は、例えば、連続式または回分式の晶析装置を用いて、1段または2段以上で実施することができる。得られたアクリル酸の結晶は、必要に応じて、さらに洗浄や発汗などの精製を行うことにより、さらに純度の高い精製アクリル酸を得ることができる。
連続式の晶析装置としては、例えば、結晶化部、固液分離部および結晶精製部が一体になった晶析装置(例えば、新日鐵化学社製のBMC(Backmixing Column Crystallizer)装置、月島機械社製の連続溶融精製システム)や、結晶化部(例えば、GMF GOUDA社製のCDC(Cooling Disk Crystallizer)装置)、固液分離部(例えば、遠心分離器、ベルトフィルター)および結晶精製部(例えば、呉羽テクノエンジ社製のKCP(Kureha Crystal Purifier)精製装置)を組み合わせた晶析装置などを使用することができる。
回分式の晶析装置としては、例えば、Sulzer Chemtech社製の層結晶化装置(動的結晶化装置)、BEFS PROKEM社製の静的結晶化装置などを使用することができる。
動的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクと、結晶器に粗アクリル酸を供給する循環ポンプとを備え、結晶器の下部に設けた貯蔵器から循環ポンプにより粗アクリル酸を結晶器の管内上部に移送できる動的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。また、静的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器であり、下部に抜き出し弁を有する結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクとを備えた静的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。
具体的には、粗アクリル酸を液相として結晶器に導入し、液相中のアクリル酸を冷却面(管壁面)に凝固・生成させる。冷却面に生成した固相の質量が、結晶器に導入した粗アクリル酸に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%になったら、直ちに、液相を結晶器から排出し、固相と液相とを分離する。液相の排出は、ポンプで汲み出す方式(動的結晶化)、結晶器から流出させる方式(静的結晶化)のいずれであってもよい。他方、固相は、結晶器から取り出した後、さらに純度を向上させるために、洗浄や発汗などの精製を行ってもよい。
動的結晶化や静的結晶化を多段で行う場合、向流の原理を採用すれば、有利に実施することができる。このとき、各段階で結晶化されたアクリル酸は、残留母液から分離され、より高い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。他方、残留母液は、より低い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。
なお、動的結晶化では、アクリル酸の純度が低くなると、結晶化が困難になるが、静的結晶化では、動的結晶化に比べて、残留母液が冷却面に接触する時間が長く、また、温度の影響が伝わり易いので、アクリル酸の純度が低下しても、結晶化が容易である。それゆえ、アクリル酸の回収率を向上させるために、動的結晶化における最終的な残留母液を静的結晶化に付して、さらに結晶化を行ってもよい。
必要となる結晶化段数は、どの程度の純度が要求されるかに依存するが、高純度のアクリル酸を得るために必要な段数は、精製段階(動的結晶化)が通常1〜6回、好ましくは2〜5回、より好ましくは2〜4回であり、ストリッピング段階(動的結晶化および/または静的結晶化)が通常0〜5回、好ましくは0〜3回である。通常、供給される粗アクリル酸より高い純度を有するアクリル酸が得られる段階は、全て精製段階であり、それ以外の段階は、全てストリッピング段階である。ストリッピング段階は、精製段階から残留母液に含まれるアクリル酸を回収するために実施される。なお、ストリッピング段階は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、蒸留塔を用いて、晶析装置の残留母液から低沸点成分を分離する場合には、ストリッピング段階は省略してもよい。
動的結晶化および静的結晶化のいずれを採用する場合であっても、晶析工程で得られるアクリル酸の結晶は、そのまま製品としてもよいし、必要に応じて、さらに洗浄や発汗などの精製を行ってから製品としてもよい。他方、晶析工程で排出される残留母液は、系外に取り出してもよい。
上記方法で製造されるアクリル酸は、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸等のアクリル酸誘導体の原料として使用可能であることは公知となっていることから、上記アクリル酸の製造方法を、アクリル酸誘導体の製造方法におけるアクリル酸製造工程にすることも可能である。すなわち、一実施形態においては、上記方法によって得られたアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、これを必要であれば他のモノマーと(共)重合することにより、吸水性樹脂を製造することができる。したがって、本発明は、本発明の方法により製造されるアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、前記部分中和アクリル酸を架橋性モノマーと共重合することを有する、吸水性樹脂の製造方法をも提供する。ここで、上記部分中和および(共)重合は、公知の反応によって実施することができ、例えば、本発明の製造方法により得られたアクリル酸および/またはその塩を単量体成分の主成分(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)とし、さらに0.001〜5モル%(アクリル酸に対する値)程度の架橋剤、0.001〜2モル%(単量体成分に対する値)程度のラジカル重合開始剤を用いて、架橋重合させた後、乾燥・粉砕することにより、吸水性樹脂が得られる。
ここで、吸水性樹脂とは、架橋構造を有する水膨潤性水不溶性のポリアクリル酸であって、自重の3倍以上、好ましくは10〜1,000倍の純水または生理食塩水を吸水し、また、水溶性成分(水可溶分)が好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である水不溶性ヒドロゲルを生成するポリアクリル酸を意味する。このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号などに記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第01/038402号パンフレット、国際公開第2006/034806号パンフレットなどに記載されている。
アクリル酸を出発原料として、中和、重合、乾燥などにより、吸水性樹脂を製造する一連の工程は、例えば、以下の通りである。
本発明の製造方法により得られるアクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸水性樹脂の製造プロセスにおいては、アクリル酸を中和工程,重合工程,乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中または重合後に架橋工程を介在させてもよい。
中和工程は、任意の工程であり、例えば、所定量の塩基性物質の粉末または水溶液と、アクリル酸やポリアクリル酸(塩)とを混合する方法が例示されるが、従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、中和工程は、重合前または重合後のいずれで行ってもよく、また、重合前後の両方で行ってもよい。アクリル酸やポリアクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミンなど、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。また、ポリアクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
重合工程における重合方法は、特に限定されるものではなく、ラジカル重合開始剤による重合、放射線重合、電子線や活性エネルギー線の照射による重合、光増感剤による紫外線重合など、従来公知の重合方法を用いればよい。また、重合開始剤、重合条件など各種条件については、任意に選択することができる。勿論、必要に応じて、架橋剤や他の単量体、さらには水溶性連鎖移動剤や親水性高分子など、従来公知の添加剤を添加してもよい。
重合後のアクリル酸塩系ポリマー(すなわち、吸水性樹脂)は、乾燥工程に付される。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、熱風乾燥機,流動層乾燥機,ナウター式乾燥機など、従来公知の乾燥手段を用いて、所望の乾燥温度、好ましくは70〜230℃で、適宜乾燥させればよい。
乾燥工程を経て得られた吸水性樹脂は、そのまま用いてもよく、さらに所望の形状に造粒・粉砕、表面架橋をしてから用いてもよく、還元剤、香料、バインダーなど、従来公知の添加剤を添加するなど、用途に応じた後処理を施してから用いてもよい。
[調製例1]LacP−GDP−GPP/pCDFの構築
pUC18(Takara社)のプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pUC18断片を得た。
pUC18(Takara社)のプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pUC18断片を得た。
Saccharomyces cerevisiae ATCC204508のゲノムDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、Glycerol−3−phosphate dehydrogenase遺伝子断片(GDP断片)(配列番号:39)を得た。
Saccharomyces cerevisiae ATCC204508のゲノムDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、Glycerol−3−phosphatase遺伝子断片(GPP断片)(配列番号:40)を得た。
前述のPCR増幅により得た、pUC18断片、GDP断片、GPP断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、S.cerevisiae由来glycerol−3−phosphate dehydrogenase遺伝子(GDP)およびglycerol−3−phosphatase遺伝子(GPP)がLacプロモーター下流にクローニングされた、LacP−GDP−GPP/pUC18を構築した。
LacP−GDP−GPP/pUC18のプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、LacP−GDP−GPP断片を得た。
また、pCDFDuet−1(Novagen社)のプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pCDF断片を得た。
PCR増幅により得た、pCDF断片、LacP−GDP−GPP断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、LacP−GDP−GPP/pCDFを構築した。
[調製例2]TacP−GDP−GPP/pCDFの構築
LacP−GDP−GPP/pCDFのプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、GDP−GPP/pCDF断片を得た。
LacP−GDP−GPP/pCDFのプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、GDP−GPP/pCDF断片を得た。
PinPoint Xa−1 (Invitrogen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、TacP断片を得た。
PCR増幅により得た、GDP−GPP/pCDF断片、TacP断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、S.cerevisiae由来GDP遺伝子およびGPP遺伝子がTacプロモーター下流にクローニングされたTacP−GDP−GPP/pCDFを構築した。
[調製例3]TacP−KP_DD−DDR/pACYCの構築
Klebsiella pneumoniae ATCC25955株 のゲノムDNAをテンプテレ−トとしてジオールデヒドラターゼ遺伝子(DD遺伝子)(配列番号:41)およびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DDR遺伝子)(配列番号:42)を含む領域を、以下の2つのプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、KP_DD−DDR断片を得た。
Klebsiella pneumoniae ATCC25955株 のゲノムDNAをテンプテレ−トとしてジオールデヒドラターゼ遺伝子(DD遺伝子)(配列番号:41)およびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DDR遺伝子)(配列番号:42)を含む領域を、以下の2つのプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、KP_DD−DDR断片を得た。
PinPoint Xa−1(Invitrogen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、PinPoint Xa−1断片を得た。
PCR増幅により得た、KP_DD−DDR断片、pinpoint Xa−1断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、Tacプロモーター下流にK.pneumoniae由来のDD−DDR遺伝子が挿入された、TacP_KP_DD−DDR/pinpointを構築した。
TacP−KP_GDP−GPP/pinpointのプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、TacP−KP_DD−DDR断片を得た。
pACYCDuet−1(Novagen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pACYC断片を得た。
PCR増幅により得た、TacP−KP_DD−DDR断片、pACYC断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、TacP−KP_DD−DDR/pACYCを構築した。
[調製例4]TacP−LR_DD−DDR/pACYCの構築
Lactobacillus reuteri JCM1112株 のゲノムDNAをテンプテレ−トとしてジオールデヒドラターゼ遺伝子(DD遺伝子)(配列番号:43)およびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DDR遺伝子)(配列番号:44)を含む領域を、以下の2つのプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、LR_DD−DDR断片を得た。
Lactobacillus reuteri JCM1112株 のゲノムDNAをテンプテレ−トとしてジオールデヒドラターゼ遺伝子(DD遺伝子)(配列番号:43)およびジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DDR遺伝子)(配列番号:44)を含む領域を、以下の2つのプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、LR_DD−DDR断片を得た。
PinPoint Xa−1(Invitrogen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、PinPoint Xa−1断片を得た。
PCR増幅により得た、LR_DD−DDR断片、pinpoint Xa−1断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、Tacプロモーター下流にL.reuteri由来のDD−DDR遺伝子が挿入された、TacP−LR_DD−DDR/pinpointを構築した。
TacP−LR_DD−DDR/piopointのプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、TacP−LR_DD−DDR断片を得た。
pACYCDuet−1(Novagen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pACYC断片を得た。
PCR増幅により得た、TacP−LR_DD−DDR断片、pACYC断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、TacP−LR_DD−DDR/pACYCを構築した。
[調製例5]TacP−aldH/pUC18の構築
Escherichia coli W3110株のゲノムDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、γ−glutamyl−γ−aminobutyraldehyde dehydrogenase(aldH)断片(配列番号:45)を得た。
Escherichia coli W3110株のゲノムDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、γ−glutamyl−γ−aminobutyraldehyde dehydrogenase(aldH)断片(配列番号:45)を得た。
PinPoint Xa−1(Invitrogen社)のプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、PinPoint Xa−1断片を得た。
PCR増幅により得た、aldH断片、pinpoint Xa−1断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、Tacプロモーター下流にE.coli由来のaldH遺伝子が挿入された、TacP−aldH/pinpointを構築した。
TacP−aldH/pinpointのプラスミドDNAをテンプレートとして、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、TacP−aldH断片を得た。
pUC18(Takara社)のプラスミドDNAをテンプレートとし、以下のプライマーおよびPhusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzyme社)を用いてPCR増幅を行い、pUC18断片を得た。
PCR増幅により得た、TacP−aldH断片およびpUC18断片を用いて、In−Fusion PCRクローニングキット(Takara社)のプロトコールに従ってクローニングを行い、TacP−aldH/pUC18を構築した。
[調製例6]3HP生成試験に用いる組換え大腸菌の構築
<DD−DDR+aldH導入大腸菌>
Fusion−Blue Competent Cells(Takara社)を用いて、ヒートショック法でTacP−KP_DD−DDR/pACYCおよびTacP−aldH/pUC18の導入を実施し、E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)を取得した。なお、ヒートショック法はFusion−Blue Competent Cells(Takara社)添付のプロトコールに従って実施し、形質転換体の選抜は、クロラムフェニコールを終濃度100μg/mLおよびストレプトマイシンを終濃度50μg/mLとなるようにLB培地(Bacto−tryptone=10g、Bacto−yeast extract=5g、NaCl=10g)に添加して作成した寒天培地を用いて行った。
<DD−DDR+aldH導入大腸菌>
Fusion−Blue Competent Cells(Takara社)を用いて、ヒートショック法でTacP−KP_DD−DDR/pACYCおよびTacP−aldH/pUC18の導入を実施し、E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)を取得した。なお、ヒートショック法はFusion−Blue Competent Cells(Takara社)添付のプロトコールに従って実施し、形質転換体の選抜は、クロラムフェニコールを終濃度100μg/mLおよびストレプトマイシンを終濃度50μg/mLとなるようにLB培地(Bacto−tryptone=10g、Bacto−yeast extract=5g、NaCl=10g)に添加して作成した寒天培地を用いて行った。
また、前述と同様の方法により、TacP−LR_DD−DDR/pACYCおよびTacP−aldH/pUC18の導入を実施し、E.coli fusion blue(TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)を取得した。
<GDP−GPP+DD−DDR+aldH導入大腸菌の構築>
Fusion−Blue Competent Cells(Takara社)を用いて、ヒートショック法でLacP−GDP−GPP/pCDF、TacP−KP_DD−DDR/pACYCおよびTacP−aldH/pUC18の導入を実施し、E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)を取得した。なお、ヒートショック法はFusion−Blue Competent Cells(Takara社)添付のプロトコールに従って実施し、形質転換体の選抜は、クロラムフェニコールを終濃度100μg/mL、ストレプトマイシンを終濃度50μg/mL、アンピシリンを終濃度100μg/mLとなるようにLB培地(Bacto−tryptone=10g、Bacto−yeast extract=5g、NaCl=10g)に添加して作成した寒天培地を用いて行った。
Fusion−Blue Competent Cells(Takara社)を用いて、ヒートショック法でLacP−GDP−GPP/pCDF、TacP−KP_DD−DDR/pACYCおよびTacP−aldH/pUC18の導入を実施し、E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)を取得した。なお、ヒートショック法はFusion−Blue Competent Cells(Takara社)添付のプロトコールに従って実施し、形質転換体の選抜は、クロラムフェニコールを終濃度100μg/mL、ストレプトマイシンを終濃度50μg/mL、アンピシリンを終濃度100μg/mLとなるようにLB培地(Bacto−tryptone=10g、Bacto−yeast extract=5g、NaCl=10g)に添加して作成した寒天培地を用いて行った。
また、前述と同様の方法により、以下3つの遺伝子組換え大腸菌を構築した。
E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC TacP−aldH/pUC18)
E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)。
E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC TacP−aldH/pUC18)
E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)。
[実施例1]グリセリンを原料とした3HP生産
1.1. 評価菌株
[1] E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[2] E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)。
1.1. 評価菌株
[1] E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[2] E.coli fusion blue(TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)。
1.2. グリセリン添加生産培地の調製
下記に示す各成分を混合後、オートクレーブ滅菌(121℃、20min)することにより培地を調製した。
下記に示す各成分を混合後、オートクレーブ滅菌(121℃、20min)することにより培地を調製した。
1.3. 培養方法
以下に示す条件で前培養および本培養を実施した。なお各培地に添加した抗生物質の終濃度は、クロラムフェニコール100μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLであった。
以下に示す条件で前培養および本培養を実施した。なお各培地に添加した抗生物質の終濃度は、クロラムフェニコール100μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLであった。
1.3.1. 前培養
評価菌株のコロニーを、試験管中の抗生物質添加LB培地3mlに植菌後、振盪培養(37℃、300rpm、24時間)を行った。
評価菌株のコロニーを、試験管中の抗生物質添加LB培地3mlに植菌後、振盪培養(37℃、300rpm、24時間)を行った。
1.3.2. 本培養
前培養液を菌体OD660が0.018になるように抗生物質添加グリセリン添加生産培地50mlに植菌後、振盪培養(37℃、120rpm)を行った。OD660が1.0を超えた時点で1M IPTGと8mM Ado−Cblを各50μLずつ添加し、さらに振盪培養(37℃、120rpm)を行った。
前培養液を菌体OD660が0.018になるように抗生物質添加グリセリン添加生産培地50mlに植菌後、振盪培養(37℃、120rpm)を行った。OD660が1.0を超えた時点で1M IPTGと8mM Ado−Cblを各50μLずつ添加し、さらに振盪培養(37℃、120rpm)を行った。
1.4. 3−ヒドロキシプロピオン酸の定量(HPLC)
生成物である3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の定量は、YMC ヒドロキシカルボン酸分析用ラベル化試薬(株式会社ワイエムシィ)による誘導体化後、以下の分析条件で定量した。
生成物である3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の定量は、YMC ヒドロキシカルボン酸分析用ラベル化試薬(株式会社ワイエムシィ)による誘導体化後、以下の分析条件で定量した。
(サンプル調製方法)
サンプル50μl(0.25mM H2SO4で10倍希釈)に2.5mM内部標準液100μlを加えた。これに、試薬A液100μl、試薬B液100μlを加え、混合後、60℃で20分間処理した。その後、試薬C液100μlを加え、混合後、60℃で15分間処理した。得られた混合液を室温まで冷やした後、溶媒系フィルターに通し、液体クロマトグラフィー(LC)分析に供した。LC分析条件を下記に示す。
サンプル50μl(0.25mM H2SO4で10倍希釈)に2.5mM内部標準液100μlを加えた。これに、試薬A液100μl、試薬B液100μlを加え、混合後、60℃で20分間処理した。その後、試薬C液100μlを加え、混合後、60℃で15分間処理した。得られた混合液を室温まで冷やした後、溶媒系フィルターに通し、液体クロマトグラフィー(LC)分析に供した。LC分析条件を下記に示す。
使用カラム:YMC−pACK FA
移動相:メタノール/アセトニトリル/水=40/5/55(vol)
流速:0.4ml/min
カラム温度:35℃
インジェクション量:10μl
UV波長:400nm
分析時間:45min
内部標準液:2.5mM 2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸。
移動相:メタノール/アセトニトリル/水=40/5/55(vol)
流速:0.4ml/min
カラム温度:35℃
インジェクション量:10μl
UV波長:400nm
分析時間:45min
内部標準液:2.5mM 2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸。
1.5. グリセリン、酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオールの定量(HPLC)
原料であるグリセリン、生成物である酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオール(1,3−PD)の定量は、以下の分析条件で定量した。
原料であるグリセリン、生成物である酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオール(1,3−PD)の定量は、以下の分析条件で定量した。
(サンプル調製方法)
得られた培養上清1mLを5mM硫酸溶液で10倍希釈した後、0.45mmフィルターに通して、LC分析サンプルとした。当該LCサンプルを用いて、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィー(LC)分析を行った。
得られた培養上清1mLを5mM硫酸溶液で10倍希釈した後、0.45mmフィルターに通して、LC分析サンプルとした。当該LCサンプルを用いて、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィー(LC)分析を行った。
使用カラム:Aminex HPX−87H lon exclusion column 300mm×7.8mm(Bio−Rad)
流量:0.5ml/min
インジェクション量:10μl
移動相:5mM硫酸溶液
検出:RI。
流量:0.5ml/min
インジェクション量:10μl
移動相:5mM硫酸溶液
検出:RI。
1.6. 培養結果
培養結果を下記表および図1に示す。
培養結果を下記表および図1に示す。
下記表に示すように、グリセリンを原料とした場合、Klebsiella pneumoniae由来のDD−DDRを用いた場合よりも、Lactobacillus reuteri由来のDD−DDRを用いた方が3HPの生産量が10倍以上多かった。
[実施例2]グルコースを原料とした3HP生産
2.1. 評価菌株
[1] E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[2] E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC TacP−aldH/pUC18)
[3] E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[4] E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
2.2. 本培養培地の調製
下記に示す各成分を混合後、オートクレーブ滅菌(121℃、20min)し、濾過滅菌した50wt/vol% Glucose溶液 40mLを添加することにより培地を調製した。
2.1. 評価菌株
[1] E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[2] E.coli fusion blue(LacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC TacP−aldH/pUC18)
[3] E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−KP_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
[4] E.coli fusion blue(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)
2.2. 本培養培地の調製
下記に示す各成分を混合後、オートクレーブ滅菌(121℃、20min)し、濾過滅菌した50wt/vol% Glucose溶液 40mLを添加することにより培地を調製した。
2.3. 培養方法
以下に示す条件で前培養および本培養を実施した。なお培地に添加した抗生物質の終濃度は、アンピシリン100μg/mL、クロラムフェニコール100μg/mL、ストレプトマイシン50μg/Lであった。
以下に示す条件で前培養および本培養を実施した。なお培地に添加した抗生物質の終濃度は、アンピシリン100μg/mL、クロラムフェニコール100μg/mL、ストレプトマイシン50μg/Lであった。
2.3.1. 前培養
評価菌株のコロニーを、試験管中の抗生物質添加LB培地3mlに植菌後、振盪培養(37℃、300rpm、24時間)を行った。
評価菌株のコロニーを、試験管中の抗生物質添加LB培地3mlに植菌後、振盪培養(37℃、300rpm、24時間)を行った。
2.3.2. 本培養
前培養液を菌体OD660が0.018になるように抗生物質添加グルコース添加生産培地50mlに植菌後、振盪培養(それぞれ、37℃、30℃、25℃、20℃、120rpm、7時間)を行った。その後、1M IPTGと8mM Ado−Cblを各50μlずつ添加し、さらに振盪培養(それぞれ、37℃、30℃、25℃、20℃(1回目の振盪培養温度と同じ温度)、120rpm)を行った。
前培養液を菌体OD660が0.018になるように抗生物質添加グルコース添加生産培地50mlに植菌後、振盪培養(それぞれ、37℃、30℃、25℃、20℃、120rpm、7時間)を行った。その後、1M IPTGと8mM Ado−Cblを各50μlずつ添加し、さらに振盪培養(それぞれ、37℃、30℃、25℃、20℃(1回目の振盪培養温度と同じ温度)、120rpm)を行った。
2.4. 3−ヒドロキシプロピオン酸の定量(HPLC)
生成物である3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の定量は、YMC ヒドロキシカルボン酸分析用ラベル化試薬(株式会社ワイエムシィ)による誘導体化後、以下の分析条件で定量した。
生成物である3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の定量は、YMC ヒドロキシカルボン酸分析用ラベル化試薬(株式会社ワイエムシィ)による誘導体化後、以下の分析条件で定量した。
(サンプル調製方法)
サンプル50μl(0.25mM H2SO4で10倍希釈)に2.5mM内部標準液100μlを加えた。これに、試薬A液100μl、試薬B液100μlを加え、混合後、60℃で20分間処理した。その後、試薬C液100μlを加え、混合後、60℃で15分間処理した。得られた混合液を室温まで冷やした後、溶媒系フィルターに通し、LC分析に供した。LC分析条件を下記に示す。
サンプル50μl(0.25mM H2SO4で10倍希釈)に2.5mM内部標準液100μlを加えた。これに、試薬A液100μl、試薬B液100μlを加え、混合後、60℃で20分間処理した。その後、試薬C液100μlを加え、混合後、60℃で15分間処理した。得られた混合液を室温まで冷やした後、溶媒系フィルターに通し、LC分析に供した。LC分析条件を下記に示す。
使用カラム:YMC−pACK FA
移動相:メタノール/アセトニトリル/水=40/5/55(vol)
流速:0.4ml/min
カラム温度:35℃
インジェクション量:10μl
UV波長:400nm
分析時間:45min
内部標準液:2.5mM 2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸。
移動相:メタノール/アセトニトリル/水=40/5/55(vol)
流速:0.4ml/min
カラム温度:35℃
インジェクション量:10μl
UV波長:400nm
分析時間:45min
内部標準液:2.5mM 2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸。
2.5. グルコース、グリセリン、酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオールの定量(HPLC)
原料であるグルコース、生成物であるグリセリン、酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオール(1,3−PD)の定量は、以下の分析条件で定量した。
原料であるグルコース、生成物であるグリセリン、酢酸、乳酸、1,3−プロパンジオール(1,3−PD)の定量は、以下の分析条件で定量した。
(サンプル調製方法)
得られた培養上清1mLを5mM硫酸溶液で10倍希釈した後、0.45mmフィルターに通して、LC分析サンプルとした。当該LCサンプルを用いて、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィー(LC)分析を行った。
得られた培養上清1mLを5mM硫酸溶液で10倍希釈した後、0.45mmフィルターに通して、LC分析サンプルとした。当該LCサンプルを用いて、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィー(LC)分析を行った。
使用カラム:Aminex HPX−87H lon exclusion column 300mm×7.8mm(Bio−Rad)
流量:0.5ml/min
インジェクション量:10μl
移動相:5mM硫酸溶液
検出:RI。
2.6. 培養結果
培養結果を下記表および図2〜5に示す。
流量:0.5ml/min
インジェクション量:10μl
移動相:5mM硫酸溶液
検出:RI。
2.6. 培養結果
培養結果を下記表および図2〜5に示す。
下記表に示すように、グルコースを原料として、L.reuteri由来DD−DDR遺伝子を導入した組換え大腸菌を培養した際には、Tacプロモーターを用いた方がLacプロモーターを用いた場合に比べて、3HPの生産性が高かった。これについては、より発現量の多いプロモーターを用いることで、菌体中のGDPおよびGPPの活性が大きくなり、それに伴って表2に示すように中間代謝産物であるグリセリンの生成する反応が進行したためであると考えられる。
また、下記表に示すように、E.coli(TacP−GDP−GPP/pCDF,TacP−LR_DD−DDR/pACYC,TacP−aldH/pUC18)については、培養温度を37℃から、30℃、25℃と下げていくと3HPの生産量が向上した。しかしながら、培養温度を20℃まで低くすると3HPの生産性は低下した。
[実施例3]発酵生産した3HPを用いたアクリル酸および高吸水性樹脂の合成
実施例1および2で得られた3HPを含む発酵液100gを、それぞれ、6000rpmで20分遠心後、培養液上清を回収した。回収した培養液上清にトリ−n−オクチルアミン100gを加え、撹拌子を用いて穏やかに24時間室温(25℃)で混合した。
実施例1および2で得られた3HPを含む発酵液100gを、それぞれ、6000rpmで20分遠心後、培養液上清を回収した。回収した培養液上清にトリ−n−オクチルアミン100gを加え、撹拌子を用いて穏やかに24時間室温(25℃)で混合した。
次に、所定時間混合後、混合液を静置して、二相に分離し、有機相を回収した。反応混合物を含む有機相に酸化アルミニウムを50g添加し、170℃で1時間加熱・留出した。得られた留出液を回収し、室温まで冷却した後、100℃から130℃まで徐々に加熱していき、留出液を除去した。その後、減圧して、系内の圧力を20kPaに保ちながら200℃まで徐々に加熱していき、留出液を回収することで、アクリル酸を含む溶液(アクリル酸溶液)を得た。
得られたアクリル酸溶液に、重合禁止剤としてハイドロキノンを60質量ppm(対アクリル酸)添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記重合禁止剤添加アクリル酸溶液を冷却下(液温35℃)で添加することにより、アクリル酸75モル%中和を行った。得られた中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウムに対する値)を溶解することにより、単量体成分を得た。この単量体成分350gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素を吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.12g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.005g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー撹拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に撹拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分(重合ピーク時間)後にピーク重合温度108℃を示した後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。
得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で、20分間加熱乾燥させた。さらに、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
Claims (9)
- 糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物に、グリセリンの脱水反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子とが導入されてなる遺伝子組換え微生物を、前記糖の存在下で培養することを有する、3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記糖からグリセリンを生成する能力を有する微生物は、糖からグリセリンを生成する能力を有しない宿主微生物に、糖からグリセリンを生成するのに必要な酵素をコードする遺伝子が導入されてなる遺伝子組換え微生物である、請求項1に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記グリセリンの脱水反応を触媒する酵素は、ジオールデヒドラターゼおよびジオールデヒドラターゼ再活性化因子である、請求項1または2に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記ジオールデヒドラターゼおよびジオールデヒドラターゼ再活性化因子をコードする遺伝子は、Lactobacillus reuteri由来の酵素遺伝子である、請求項3に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記アルデヒドの酸化反応を触媒する酵素をコードする遺伝子は、Escherichia coli由来のaldH遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記遺伝子組換え微生物の宿主微生物は、Escherichia coliである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 前記培養における培養温度は、20℃を超えて37℃未満である、請求項6に記載の3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により製造される3−ヒドロキシプロピオン酸を脱水することを有する、アクリル酸の製造方法。
- 請求項8に記載の方法により製造されるアクリル酸を部分中和して部分中和アクリル酸を製造し、前記部分中和アクリル酸を架橋性モノマーと共重合することを有する、吸水性樹脂の製造方法。
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- 2012-03-29 JP JP2012077748A patent/JP2013202029A/ja active Pending
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