JP2012082366A - 活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、それを用いた電子機器用部材、及びパッキン - Google Patents

活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、それを用いた電子機器用部材、及びパッキン Download PDF

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Abstract

【課題】 ホットメルト性と紫外線等の照射による速硬化性を有し、且つポリオールの相溶性が改良されることで、保型性、柔軟性、機械的強度、耐加水分解性、基材密着性、アウトガスに優れた活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)、前記(a1)と後記(a3)以外のポリオール(a2)、及びビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるNCO基末端ウレタンプレポリマー(C)のNCO基総数の50%を超えて100%以下を、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)と活性エネルギー線重合開始剤(Y)を含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、それを用いた電子機器用部材、及びパッキンに関する。
更に詳しくは、塗布後の冷却固化が速いホットメルト性と、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線等の活性エネルギー線照射による速硬化性との2つの特性を兼ね備えた活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物であり、基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)(リワーク性を含む)、低アウトガス性に優れており、それを用いた電子機器用部材、及びパッキンに関する。
磁気ディスク装置は、大容量、高速、且つ経済的な記憶装置として、コンピュータにとり益々その重要度が高まりつつあり、更に最近では小型化が急速に進行している。
これらに使用される磁気ディスクドライブは、ハードディスクドライブ用パッキン(以下「HDDパッキン」と略す。)にて密閉構造内に固定されており、密閉構造にすることで、塵埃や汚染物質の進入や振動による誤作動や故障の防止、高密度記録、コンパクトな構造、小型化、高信頼性の確保などを実現している。
更に、HDDパッキンには、パッキン機能として、基材への塗布後の保型性の確保の他に、柔軟性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性等の優れた性能が要求される。
従来は、このような塵埃や汚染物質の進入や振動を防ぐ目的で、磁気ディスクドライブのハウジングと該ハウジングとの間にシール材(即ち、パッキン)を設ける方法として、例えば、帯状に切断したスポンジやコルク等の弾性を有する多孔質体が用いられていた。
しかしながら、このような方法では、ハウジングの蓋と接触する周辺に手作業で帯状のスポンジやコルクなどを熱硬化性接着剤で接着するため、作業者の熟練と多大な労力を要し、大量生産に適さないばかりか、接着剤を塗布する工程とスポンジ等を接着する工程との少なくとも2つの工程が不可欠であり、極めて非効率的であった。更に、ハウジングがプラスチックで成形された構造であるため、接着剤として熱硬化性接着剤を用いた場合には、前記ハウジングが熱で変形してしまうという問題があった。
そこで、近年、磁気ディスクドライブとその部品の組立や製造においては、作業時間の短縮や加熱工程の回避によるコスト削減などの要請に対応するため、各部品の固定や接合に、紫外線硬化性樹脂組成物等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が使用されている。
かかる例として、磁気ディスクドライブ用ハウジングと該ハウジングの蓋との間に設けられるシール材として、弾性を有する紫外線硬化性樹脂組成物を用いると共に、前記磁気ディスクドライブ用ハウジングの蓋をする面の周辺の場所にノズルを用いて前記紫外線硬化性樹脂組成物を被覆した後、紫外線を照射して該被覆を硬化する磁気ディスクドライブ用ハウジングにシール材を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかる方法では、紫外線硬化性樹脂として、例えば、不飽和アクリル樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエン−ポリチオール付加重合型樹脂、カチオン重合樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを用いてなる紫外線硬化性樹脂組成物を、ノズルによって塗布した後、得られた被覆に紫外線を照射して硬化し、弾性を有するシール材を形成することにより、塵埃や汚染物質の進入及び振動を防ぐことができ、簡単且つ迅速にシール材とでき、更にノズルによって適用されるので、所望の厚さ及び幅に任意に調整できるという。
しかしながら、特許文献1で用いられる紫外線硬化性樹脂組成物では、紫外線を照射し硬化後の残存モノマーに起因するアウトガス発生量が多いため、信号の記録や読み取りの際に誤動作や故障などのトラブルが発生しやすいという問題があった。
そのため、このようなアウトガス発生の主たる原因物質である残存モノマーを低減させるために、通常、樹脂組成物を得る際に予め高温条件下の長時間の加熱処理が行なわれていたが、かかる方法ではアウトガス低減に僅かに効果が認められるのみであり、決して有効な手段とは言えず、また、手間と処理時間を要すために生産性に極めて劣るという問題があった。
また、特定の一般式で示される少なくとも一つの2官能性(メタ)アクリレート、特定の一般式で示される少なくとも一つの単官能(メタ)アクリレート、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、光重合開始剤、及びシリカ粉を必須成分として混合する光硬化性シール剤の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
かかる製造方法で得られる光硬化性シール剤は、良好な耐透湿性及び弾性を有しているので、ハードディスクなどの電子回路素子や電子部品を内在した電子部品筐体のシールをはじめとして、その他の耐透湿性を必要とする部材において耐透湿シール剤として有用であるという。
しかしながら、特許文献2に記載の光硬化性シール剤も、特許文献1と同様に、紫外線を照射して硬化後の残存モノマーに起因するアウトガス発生量が多いため、信号の記録や読み取りの際に誤動作や故障などのトラブルが発生しやすいという問題があった。
更に、ハードディスク装置の各部組立に使用する紫外線硬化性組成物において、当該紫外線硬化性組成物の硬化性成分が、イソシアネート基と活性水素との付加反応触媒に有機亜鉛またはアミン化合物のいずれかを使用して調整されたイソシアネートオリゴマーに、有機亜鉛またはアミン化合物のいずれかを触媒にして、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基と当該イソシアネートオリゴマーのイソシアネート基を付加反応させたウレタン(メタ)アクリレートであるハードディスク装置の組立用の紫外線硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。
かかる紫外線硬化性組成物は、スズ化合物を含まず、アウトガス成分を含んでいないので、ハードディスク装置部品等(ハードディスク装置のハウジングケースのパッキン、スピンドルモーターのキャップシール、磁気ヘッドの固定、基板とコネクターとの固定)の固定又は接合に使用可能であるという。
しかしながら、特許文献3で得られる紫外線硬化性組成物は、(1)保型性確保の活性エネルギー線照射による硬化プロセスが必須であること、(2)低分子量プレポリマーと残存MDI量が多いために架橋密度が上昇し硬くなり過ぎること、(3)硬化後の残存モノマーが多くアウトガス発生によるディスク読み取り不良が発生しやすいこと等の問題があった。
その他にも、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば、高分子オリゴマーのアクリレート化合物等も検討されてきたが、アウトガス発生量の低減に関しては、満足すべき結果は得られていなかった。
また、HDDパッキンに使用する樹脂として、活性エネルギー線硬化性樹脂以外にも、ゴム系エラストマーや粘着剤付き発泡ポリウレタン樹脂などの種々の材料が検討されてきたが、いずれの材料も成形物からのアウトガス発生量が多いため、信号の記録や読み取りの際の誤作動や故障が頻発し、解決には到らなかった。その対策として、例えば、予め高温条件下での加熱処理による脱ガスが行なわれていたが、かかる方法では生産性に極めて劣り、また、アウトガス低減効果も充分ではなかった。
更に、最近では、ハードディスクの記憶容量の増加と精度の向上、情報処理速度の目覚しい上昇に伴い、以前は誤作動や故障の原因として考慮されていなかったレベルの極微量のアウトガス成分が磁気ディスク表面に付着しただけでも、大記憶容量のハードディスクドライブなどの装置の場合では甚大な障害を招く恐れが懸念されてきた。
このように、組立又は製造時において、ハードディスクドライブ内にごく微量の塵埃や汚染物質が混入し磁気ディスク表面に付着すると、信号の記録や読み取りの際に誤動作や故障が頻繁に発生する原因となる恐れがあるため、ハードディスクドライブの組立に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物などの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物そのものにも、アウトガス発生量の少ない樹脂組成物の使用が強く求められるようになってきた。
ところで、ハードディスクドライブは、内蔵されたディスクが高速回転するので、その高速回転運動の際に生ずる振動を吸収できるようなゴム状弾性体で部品同士を接合・固定することが行なわれている。そのため、接合・固定に使用される活性エネルギー線硬化性樹脂には、比較的柔軟性に富む硬化物を形成するようなウレタンアクリレート化合物を主原料とするものが一般に用いられてきた。
しかしながら、一般に使用されているウレタン(メタ)アクリレート化合物の場合は、触媒として有機スズ化合物が含まれるので、硬化後の残存モノマーに起因するアウトガス成分が発生しやすく、それらアウトガス成分がディスク表面に付着し、信号の記録や読み取りの際に誤動作や故障を誘発させる傾向にあり、これまで度々問題になっていた。
一方、有機溶剤を使用する接着剤は、作業者に対する有害性、火災の危険性、環境汚染、乾燥速度の遅れ、溶剤の消費等に問題があるため、無溶剤で溶剤回収を必要としない省エネ・環境対応型接着剤として、反応性ホットメルトウレタン接着剤が積極的に検討されている。このような反応性ホットメルトウレタン接着剤は、従来の溶剤型樹脂や水系樹脂に代わる高付加価値製品として、例えば、建材用や繊維用の接着剤のほか、コーティング剤等をはじめ幅広い用途に用いられつつある。
前記反応性ホットメルトウレタン接着剤は、常温では固体で熱を加えると溶融して液状又は粘ちょうな性状になり、冷却により再度凝集力が発現する性質である「ホットメルト性」と、空気中の湿気(水)とイソシアネート基との反応に起因する架橋構造による接着性が得られる性質である「湿気硬化性」を併有するものであり、近年、無溶剤化の手法として多岐の分野から注目されている。尚、本発明では、湿気(水)と水蒸気は同意として扱うものとする。
このような反応性ホットメルトウレタン接着剤として、例えば、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いたものが代表的に知られている。
しかしながら、このような反応性ホットメルトウレタン接着剤を電子機器用部材の組立や製造に用いた場合には、生産ラインのスピードが高速であるために、反応性ホットメルトウレタン接着剤による接合・固定が未だ不充分な状態のままで次工程に移行してしまうというトラブルが多発してしまい、工程管理及び品質管理上、問題であった。
また、加熱塗布時には溶融状態に保つ必要があるため、一般に反応性ホットメルトウレタン接着剤では耐熱保持性に劣るという問題もあった。
また、基材層と表皮層とを少なくとも有する皮革様シートであって、前記表皮層が、ウレタンプレポリマーの100質量部と、ビヒクルとしてポリオールを含有する着色剤の5〜40質量部と、多官能(メタ)アクリレートの5〜50質量部と、光重合開始剤の0.5〜5質量部とを含有するポリウレタンホットメルト組成物の架橋物からなり、前記ウレタンプレポリマーが、ポリテトラメチレングリコールを40質量%以上含有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の5〜50%を、水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて得られるものである、皮革様シートが知られている(例えば、特許文献4参照)。
かかる皮革様シートは、表皮層の毛羽立ちを抑制することで優れた表面品位を有し、かつ柔軟な風合い、耐久性および耐屈曲性に優れることから、例えば婦人靴、スポーツシューズ、サンダル等の履き物や、家具、衣料等の製造に使用する人工皮革や合成皮革として使用することができるという。
しかしながら、特許文献4の皮革様シートでは、特に柔軟性を重視しているため、ウレタンプレポリマーが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の数の5〜50%程度しか水酸基含有(メタ)アクリレートと反応していないため、塗布後の保型性に劣るという問題があった。
以上のように、従来の技術には、基材への塗布後の保型性、柔軟性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性に未だ問題を残しているため、バランスのとれた性能を有する活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、それを用いた電子機器用部材、及びパッキンの開発が切望されていた。
このように、従来は柔軟性や耐久性などの特性を発現させるために、ウレタンプレポリマーに使用するポリオールとして、一般にポリテトラメチレングリコール(PTMG)を用いていたが、PTMGのみの使用では初期凝集力が不足するため、基材への塗布後の保型性に劣っていた。
そのため、本発明者らは、種々検討の結果、初期凝集力を向上させる目的で、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオールと他のポリオールを含むポリオールを併用することにより、特に基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度などの良好な性能を有する活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができることを見出し、出願した(特許文献5)。
しかしながら、このものは芳香族ポリエステルポリオールと他のポリオール(特にポリエーテルポリオール)との相溶性が不充分であるため、柔軟性や機械的強度などの特性において未だ満足できないという問題があった。
特開平2−50378号公報 特開2009−96839号公報 特公表99−51653号公報 特許第4168205号公報 特願2010−198793
本発明の目的は、塗布後の冷却固化が速いホットメルト性と、例えば、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による速硬化性との2つの特性を兼ね備え、且つ、ポリオールの相溶性が改良されて均一な相溶系を形成できることにより、柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの優れた特性を有する活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、それを用いた電子機器用部材、及びパッキンを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)及び後記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)以外のポリオール(a2)(特にポリエーテルポリオール)と共に、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)を併用することにより、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)が優れた「相溶化剤」として作用して、ポリオール(A)の相溶性が改良されて均一な相溶系を形成できることにより、より柔軟性に富み、且つ、優れた機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性が発現可能な活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)、前記(a1)及び後記(a3)以外のポリオール(a2)、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とポリカルボン酸とを縮合反応させてなるポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基総数の50%を超えて100%以下を、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)と、活性エネルギー線重合開始剤(Y)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物に関するものである。
本発明は、前記活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする電子機器用部材に関するものである。
本発明は、前記活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を成形してなることを特徴とするパッキンに関するものである。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、塗布後の冷却固化が速いホットメルト性と、例えば、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による速硬化性との2つの特性を兼ね備えており、且つ、ポリオールの相溶性が改良されて均一な相溶系を形成できることにより、柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性に優れているので、例えば、パッキン類(電子機器用、工業部材用、ハードディスクドライブ用、ハウジングケース用などの各種パッキン)、キャップシール材、固定材(例えば、磁気ヘッド用、基板とコネクターとの固定用など)等の電子機器用部材のほかに、シール材、フィルム、シート、工業用パッキン、リボン、接着剤(例えば建材用、繊維用など)、コーティング剤、粘着剤など広範囲に有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基総数の50%を超えて100%以下を、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)と、活性エネルギー線重合開始剤(Y)を含有してなる。
本発明で用いる前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)(以下「ウレタンプレポリマー(C)」という。)は、必須成分として、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)(以下「芳香族ポリエステルポリオール(a1)」という。)と、前記(a1)及び後記(a3)以外のポリオール(a2)(以下「ポリオール(a2)」という。)と共に、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とポリカルボン酸とを縮合反応させてなるポリエステルポリオール(a3)(以下「ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)」という。)とを含むポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得ることができる。
本発明において、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)は、グリコールと芳香族カルボン酸を縮合反応させて得られるものであって、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有することが必須条件である。前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有すれば、初期凝集力が向上して、基材への塗布後の保型性、機械的強度などの優れた特性を発現することができる。また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%未満しか含有しない場合には、初期凝集力が低下するために、基材への塗布後の保型性に劣り、本発明の目的を達成できない。
前記2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール(NPG)、その二量体、三量体、及びそれら化合物の少なくとも一つを開始剤としてγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどを開環重合させたグリコールであり、好ましくはネオペンチルグリコール(NPG)である。
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)の合成では、必須成分である前記2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールと共に、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコール以外のグリコールをグリコール成分として用いることができる。
前記2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコール以外のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールから選択される1種又は2種以上を使用できる。また、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。また、低分子量ポリオールを開始剤として使用し、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどを開環重合させた重合物も使用できる。
また、前記芳香族カルボン酸としては、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸から選択される1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、カルボン酸成分中に(無水)フタル酸を90モル%以上含有すると、前記2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールとの併用により、初期凝集力の向上による保型性が向上でき、適度な柔軟性と優れた機械的強度が得られるため、好ましい。
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜5000の範囲であり、より好ましくは500〜3000の範囲である。前記(a1)のMnがかかる範囲内であれば、保型性、塗布作業性、初期凝集力などの優れた特性を得ることができる。前記(a1)のMnが500未満の場合は、初期凝集力が低下して保型性に劣り、熱安定性にも劣り、硬化物も硬くなり過ぎて柔軟性に劣る傾向にあり、好ましくない。また、前記(a1)のMnが5000を超える場合は、ポリオールとしての粘度が上昇し過ぎるため、前記ポリオール(a2)及びビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)との混合性にも劣り、これを用いて得られる前記ウレタンプレポリマー(C)の溶融粘度も大きく上昇するため、作業性に劣る傾向にあり、好ましくない。尚、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)のMnは、後記した条件にて測定した。
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)及びビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)以外のポリオール(a2)としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐久性(特に耐加水分解性)、低温から高温までの幅広い温度条件下でも柔軟性に優れる点から、好ましくはポリエーテルポリオールである。また、前記ポリエーテルポリオールの中でも、好ましくは、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)であり、より好ましくはPTMGである。
前記ポリオール(a2)として、特にPTMGを用いる場合には、PTMGのMnとしては、好ましくは500〜3000の範囲であり、より好ましくは1000〜2000の範囲である。前記PTMGのMnがかかる範囲内であれば、優れた耐久性(特に耐加水分解性)、柔軟性、機械的強度を得ることができる。
次に、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)について説明する。
本発明では、前記ポリオール(A)の全量100質量部中に、好ましくは、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)を20〜70質量部の範囲、及び前記ポリオール(a2)を80〜30質量部の範囲で含有し、より好ましくは、前記(a1)を20〜50質量部の範囲、及び前記(a2)を80〜50質量部の範囲で含有する。前記ポリオール(A)が前記(a1)と前記(a2)とをかかる範囲で含有するならば、基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度などの良好な性能を発現することができる。
その際、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)の含有量は、前記ポリオール(A)の全量100質量部中に、好ましくは5〜50質量部の範囲、より好ましくは10〜30質量部の範囲である。前記(a3)をかかる範囲で含有するならば、ポリオール(A)に含有されるポリオール成分同士〔即ち、前記(a1)〜(a3)〕の相溶性を一層向上できるため、より優れた柔軟性と機械的強度を得ることができるので、好ましい。
ビスフェノールAに前記アルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールである、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、例えば、前記ビスフェノールAを開始剤として、前記アルキレンオキサイドを周知慣用の方法で付加させることにより製造することができる。
前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)の製造に用いるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)、テトラメチレンオキサイド(THF)などを使用することができ、これらの中でもEO、POが好ましい。
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)、テトラメチレンオキサイド(THF)等のアルキレンオキサイドのnモル付加物(但し、nは0を超える数である。)などが挙げられる。これらビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の中でも、基材に対する適度な初期凝集力を維持でき、且つ優れた柔軟性、耐熱性などの特性を一層向上可能な点から、ビスフェノールAのEO及び/又はPOの1〜10モル付加物が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
特に、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)としては、前記ビスフェノールAに、プロピレンオキサイド(PO)を4〜8モル付加して得られるポリエーテルポリオールと、前記脂肪族ジカルボン酸及び前記脂環族ジカルボン酸とを縮合反応させて得られるものを使用すると、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の各ポリオール成分との相溶性をより一層向上でき、且つ、基材に対する適度な初期凝集力を維持でき、優れた柔軟性と耐久性(耐加水分解性)を発現できるため、好ましい。
前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)は、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)及び前記ポリオール(a2)と大変相溶性に富むため、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物が硬化した際の透明性や接着性などの性能を阻害することなく、柔軟性や機械的強度を一層向上させることができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸などの中から、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と前記ポリオール(a2)との相溶性などの性能に応じて、適宜選択して使用することができる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等を使用することができ、目的とする樹脂組成物の初期凝集力を向上させるためには、炭素数が6以上のジカルボン酸を使用するのが好ましく、具体的にはセバシン酸、ドデカンジカルボン酸を使用することがより好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。これらの中でも、初期凝集力が大きいことから、オルソフタル酸が好ましい。前記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、目的とする樹脂組成物の相溶性及び初期凝集力を向上させるためには、炭素数が6以上のジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を併用するのがより好ましい。
また、前記ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸のメチルエステル化合物などの低級アルキルエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物などの種々のカルボン酸誘導体を用いてもよい。
前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜10000の範囲の範囲であり、より好ましくは1000〜7000の範囲である。前記(a3)のMnがかかる範囲であるならば、目的に応じた適度な柔軟性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができる。
このように、本発明では、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)及び前記ポリオール(a2)と共に、前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)を「相溶化剤」として用いることにより、前記(a1)〜(a3)の3成分がより均一な相溶系を形成できることにより、より柔軟性に富み、且つ、優れた機械的強度を発現できる。
また、本発明では、この系に3官能成分としてポリプロピレングリコール(PPG)を併用すると、架橋密度が高められ、柔軟性を損なわずに、耐久性(特に耐加水分解性)を更に向上させることができる。
その際の前記PPGの含有量は、前記ポリオール(A)の全量100質量部中に対し、好ましくは0.5〜5.0質量部の範囲であり、より好ましくは1.0〜3.0質量部の範囲である。前記PPGをかかる範囲で含有するならば、熱による粘度安定性、及び柔軟性などの良好な特性を付与することができる。
次に、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の製造に用いるポリイソシアネート(B)について以下に説明する。
本発明で用いるポリイソシアネート(B)としては、特に限定せず、従来公知のものが使用でき、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネ−ト、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられ、これらの中でも、ポリオール(A)との反応性、及び湿気(水)との反応が速いことから、MDI、XDIが好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用しても構わない。
本発明では、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)を合成する。
前記ウレタンプレポリマー(C)は、公知慣用の方法で反応させ得ることができ、反応方法は特に限定しない。反応方法の一例を挙げるならば、反応容器に仕込んだポリオール(A)、即ち、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と前記ポリオール(a2)、及びビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)とを必須に含むポリオール混合物を、減圧加熱条件下にて予め水分を除去しておき、その後、前記ポリオール混合物に、必要量のポリイソシアネート(B)を滴下、分割、一括、連続などの適当な方法にて仕込み混合した後、イソシアネート基含有量(%)が実質的に一定になるまで反応させる方法により得ることができる。
前記ウレタンプレポリマー(C)の製造は、通常、無溶剤で行うが、有機溶剤中で反応させてもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない有機溶剤を選択する必要がある。前記有機溶剤としては、特に限定しないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエーテルエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられ、これらを単独使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、前記有機溶剤の使用量は、反応を阻害しない範囲であれば、特に限定しない。なお、反応に使用した有機溶剤は、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の適当な方法により、除去することが必要である。
前記ウレタンプレポリマー(C)を製造する際に使用する、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との使用割合は、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基との当量比(以下[NCO/OH当量比]という。)が、好ましくは1.1〜5.0の範囲であり、より好ましくは1.5〜3.0の範囲である。前記NCO/OH当量比がかかる範囲であれば、塗布に適した溶融粘度になり、冷却固化による保型性に優れる活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができる。
前記ウレタンプレポリマー(C)を製造する際の反応条件(温度、時間等)は、安全、品質、コストなど諸条件を考慮して適宜設定すればよく、特に限定しないが、例えば、反応温度は、好ましくは80〜120℃の範囲であり、また、反応時間は、好ましくは1〜5時間の範囲である。
前記ウレタンプレポリマー(C)は、日本工業規格 K 2207に準拠して測定した軟化温度が、好ましくは30〜120℃の範囲であり、より好ましくは40〜100℃の範囲である。前記(C)の軟化温度がかかる範囲であるならば、基材への塗布後の保型性に優れるため、好ましい。
前記ウレタンプレポリマー(C)の軟化温度をかかる適正な温度範囲内に調製するための方法としては、例えば、(1)分子量による調整(ポリオールとポリイソシアネートとのモル比の調整、高分子量ポリオールの使用、高分子ポリマーの使用等)、(2)ポリエステルポリオールのエチレン鎖の結晶性による調整、(3)ポリオールやポリイソシアネートの芳香族構造による調整、(4)ウレタン結合による調整など種々の方法があり、適宜選択すればよく、特に限定しない。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基総数の50%を超えて100%以下を、好ましくは60〜100%を、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)と共に、活性エネルギー線重合開始剤(Y)を含有してなる。
前記反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられ、これらの中でも、例えば、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による速硬化性に優れ、且つ、特に機械的強度が向上する点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
本発明では、基材への塗布後の保型性を向上させるために、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)をイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の末端NCO基総数の50%を超えて100%以下と反応させた後の二重結合による紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による硬化反応と、NCO基による湿気(水)硬化反応とを併用することにより、基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、速硬化性を向上させることが可能となる。
具体的には、前記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)を、好ましくは5.0〜20.0質量部の範囲、より好ましくは5.0〜15.0質量部の範囲で加え、前記ウレタンプレポリマー(C)中のイソシアネート基総数の50%を超えて100%以下の範囲、好ましくは80〜100%の範囲を前記反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)を得る。次いで、前記ホットメルトウレタン(X)に所定量の活性エネルギー線重合開始剤(Y)を加え、攪拌し、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができる。
前記ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基をかかる範囲内で前記反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)と反応させるならば、速硬化性、基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)などの優れた特性を得ることができる。
また、前記ウレタンプレポリマー(C)と、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)とを反応させる際には、必要に応じて、ウレタン化触媒を使用することができる。前記ウレタン化触媒は、前記ウレタン化反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
前記ウレタン化反応は、イソシアネート基含有量(%)が実質的に一定になるまで行なうことが好ましい。
前記ウレタン化触媒としては、特に限定せず、従来公知のものが使用可能であり、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの含窒素化合物、あるいは酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸第一錫などの有機金属塩、あるいはジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物が挙げられる。
前記ウレタン化触媒の使用量は、反応時の安全性、中間体あるいは製品の安定性、品質などに悪影響を与えなければ、特に限定しない。
次に、必須成分である活性エネルギー線重合開始剤(Y)について以下に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物において、前記活性エネルギー線重合開始剤(Y)の配合量は、前記ウレタンプレポリマー(C)100質量部に対して、好ましくは0.5〜5.0質量部の範囲であり、より好ましくは1.0〜3.0質量部の範囲である。前記活性エネルギー線重合開始剤(Y)をかかる範囲で含有すれば、加工性に応じた硬化性を調整でき、その結果、基材への塗布後の保型性の優れる活性エネルギー線硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができる。
前記活性エネルギー線重合開始剤(Y)の添加時期は、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)をイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の末端NCO基総数の50%を超えて100%以下と反応させた後に添加することが好ましい。
反応条件(温度、時間等)は、安全性、品質、コストなど諸条件を考慮して適宜設定すればよく、特に限定しない。例えば、反応温度は、好ましくは80〜120℃の範囲であり、混合時間は、好ましくは0.5〜2.0時間の範囲である。
前記活性エネルギー線重合開始剤(Y)としては、特に限定せず、例えば、光重合開始剤、過酸化物などが挙げられる。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等のアルキルフェノン光重合開始剤、カンファーキノン光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド光重合開始剤、チタノセン光重合開始剤等の従来公知の光重合開始剤を使用でき、特に制限しない。光重合開始剤の市販品(以下、商標記載)としては、例えば、クオンタキュアー(インターナショナル・バイオ−シンセティクス社製)、カイアキュアーMBP(日本化薬株式会社製)、エサキュアーBO(フラテリ・ランベルティ社製)、トリゴナル14(アクゾ社製)、イルガキュアー(チバ・ガイギー社製)、ダロキュアー(同社製)、スピードキュアー(同社製)、ダロキュアー1173とFi−4との混合物(イーストマン社製)等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、紫外線などの活性エネルギー線照射による優れた硬化性の付与が可能なイルガキュア651が好ましい。
また、過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の従来公知の過酸化物を使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、80〜120℃の高温条件下での硬化では、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートが好ましく、特にパーオキシジカーボネートが好ましい。前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、市販品では、パーロイルTCP(日本油脂株式会社製)などが挙げられる。
更に、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物には、多孔性シリカ(E)を含有させることができる。
前記多孔性シリカ(E)としては、好ましくは、平均粒子径が2.0〜10.0μmの範囲であり、且つ、100g当りの吸油量が150〜300mlの範囲のもの、より好ましくは、平均粒子径が2.0〜10.0μmの範囲であり、且つ、100g当りの吸油量が150〜350mlの範囲のものである。前記多孔性シリカ(E)の平均粒子径及び吸油量がかかる範囲であるならば、作業性に優れた溶融粘度、及び基材への塗布後の保型性に優れたチキソ性を付与することができる。
尚、本発明でいう「吸油量」とは、日本工業規格 K5101に準拠し測定した値である。
前記多孔性シリカ(E)の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは、0.5〜10質量部の範囲であり、より好ましくは2.0〜7.5質量部の範囲である。前記多孔性シリカ(E)の配合量がかかる範囲であれば、溶融粘度が適度となり作業性に優れ、また、基材への塗布後の保型性やチキソ性などの優れた性能が付与でき、好ましい。
前記多孔性シリカ(E)の市販品としては、例えば、サイリシア(以下、商標記載、富士シリシア株式会社製)、ファインシール(徳山曹達株式会社製)、アエロジル(日本アエロジル株式会社製)、ACEMATT(デグサ株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、粘度調整が容易であることから、サイリシア310P(富士シリシア株式会社製)、サイリシア320(同社製)、サイリシア350(同社製)が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物には、上記した原料以外に、各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、製造工程の何れの段階においても用いることができる。
かかる添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等が例示できる。また、必要に応じて、ブレンド用樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。尚、前記添加剤はほんの一例であって、本発明の目的を阻害しない限り、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂や、石油樹脂としてC5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂、およびC5系とC9系の共重合樹脂等を使用することができる。
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等を使用することができる。メチルアシッドホスフェート(AP−1)、アクリル系表面調整剤(BYK−361N)などが挙げられる。
前記安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を使用することができる。
前記充填材としては、例えば、ケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等を使用することができる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、メチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ブチルメチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ジブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールなどに代表されるベンゾトリアゾール系化合物、あるいはビス(テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(ペンタメチルピペリジル)セバケートなどに代表されるヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。
なお、本発明でいう「活性エネルギー線」には、例えば、紫外線、電子線、X線、赤外線、可視光線などが含まれる。これらの活性エネルギー線のうち、樹脂の硬化性と樹脂劣化防止の観点から、中でも紫外線、可視光線、赤外線が好ましい。
活性エネルギー線の波長は、特に限定しないが、重合開始剤の分解効率の観点から、好ましくは200〜750nm、より好ましくは200〜450nmの範囲である。
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を、例えば、紫外線照射で硬化させる場合は、例えば、水銀灯(低圧、高圧、超高圧等)、水素ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、蛍光灯、He−Cdレーザー等の種々の光源が使用でき、それらの中でも高圧水銀灯が好ましい。
本発明をまとめると以下のようになる。
HDDパッキンなどに用いられる樹脂組成物には、パッキン機能としての基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性等が要求特性として必須に求められているが、従来の樹脂組成物には、これらの要求特性をバランスよく全て満足できるものはなかった。
従来は、例えば、柔軟性や耐久性を得るために、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの合成原料に、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(PTMG)が用いられていたが、PTMG単独使用では、初期凝集力が不足し、基材への塗布後の保型性に極めて劣るという問題があった。
そのため、本発明者らは、種々検討の結果、初期凝集力を向上させる目的で、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオールと他のポリオールを含むポリオールを併用することにより、特に基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度などの良好な性能を有する活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができることを見出し、出願した(特許文献5)。
しかしながら、このものは芳香族ポリエステルポリオールと他のポリオール(特にポリエーテルポリオール)との相溶性が不充分であるため、柔軟性や機械的強度などの特性において未だ満足できないという問題があった。
そのため、本発明では、初期凝集力の付与を目的に種々検討した結果、前記ポリオール(A)において、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と前記ポリオール(a2)と共に、更に前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)を「相溶化剤」として併用することにより、前記ポリオール(A)が均一な相溶系を形成できることにより、これにより、優れた柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、低アウトガス性などの特性を得ることができることが判った。
また、この系に3官能化合物であるプロピレングリコール(PPG)を併用することにより、耐久性(耐加水分解性)を一層向上させることができることも明らかになった。
本発明では、基材への塗布後の保型性を向上させるために、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)をイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)中の末端NCO基総数の50%を超えて100%以下と反応させた後の二重結合による紫外線等のエネルギー線照射による硬化反応と、NCO基による湿気硬化反応とを併用することにより、基材への塗布後の保型性、柔軟性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、速硬化性などの従来にない優れた効果を得ることができる。
以上のように、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、塗布後の冷却固化が速いホットメルト性と、例えば紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による速硬化性との2つの特性を兼ね備えており、柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性に優れているので、例えば、パッキン類(例えば、電子機器用、工業部材用、ハードディスクドライブ用、ハウジングケース用などの各種パッキン)、キャップシール材、固定材(例えば、磁気ヘッド用、基板とコネクターとの固定用など)等の電子機器用部材のほかに、シール材、フィルム、シート、工業用パッキン、リボン、接着剤(例えば建材用、繊維用など)、コーティング剤、粘着剤など広範囲に有用である。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物からなるパッキンは、柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性に優れているので、電子機器用部材、中でもハードディスクドライブ用のパッキンなどに有用である。
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
〔イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)及び末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)の溶融粘度の測定方法〕
実施例及び比較例で得た夫々のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)及び末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)の溶融粘度(mPa・s)をコーンプレート粘度計(ICI社製)にて測定温度100℃で測定した。
〔イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の軟化温度の測定方法〕
実施例及び比較例で得た夫々のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の軟化温度(乾球式軟化点)(℃)を日本工業規格 K 2207に準拠して、昇温速度5℃/分の条件にて測定した。
〔塗布作業性の評価方法〕
実施例及び比較例で得た夫々の末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)を100℃で加熱溶融させて、600μm内径シリンジに充填して、圧力:0.30MPa、加工速度:100mm/秒、塗布時間:10秒の条件にて、アルミ板上に塗布した時の吐出量(g)を下記の基準に従い評価した。
塗布作業性の評価基準。
○:0.25を越え0.50g以下。
△:0.10を越え0.25g以下。
×:0.10g以下。
〔基材への塗布後の保型性の評価方法〕
実施例及び比較例で得た夫々の末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)を100℃で加熱溶融させて、上記のような塗布条件(600μm内径シリンジ)にて吐出させ、基材(基材の種類:アルミ板A1050P)上に塗布した。
次いで、30秒後に紫外線照射〔照射条件:装置内を1回通過するごとに145mJ/cmの紫外線が照射されるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置「CSOT−40」(日本電池株式会社製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm、コンベアスピード10m/分、1回通過)〕し、硬化後の成形品の高さ(μm)を電子顕微鏡(SEM)にて測定し、下記の基準に従い評価した。
基材への塗布後の保型性の評価基準。
○:580を超え600μm。
△:540を超え580μm以下。
×:540μm以下。
〔紫外線照射による硬化後フィルムの柔軟性の評価方法〕
実施例及び比較例で得た夫々の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を100℃で加熱溶融させて、100℃に加熱されたナイフコーターを用いて離型紙上に200μmの厚みに塗布した。
次いで、前記塗布面に、装置内を1回通過させるごとに145mJ/cmの紫外線照射量となるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置CSOT―40(日本電池株式会社製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm、コンベアスピード5m/分)内を1回通過させることによって紫外線照射を行い、次いで、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽中で3日間放置し湿気硬化反応を進行させた。放置後に形成されたフィルムを離型紙上から剥離し、硬化フィルムを得た。
尚、上記の紫外線照射量は、UVチェッカーUVR−N1(日本電池株式会社製)を用いて、300〜390nmの波長域において測定した値である。
前記硬化フィルムを幅5mm×長さ70mm×厚み200μmにカットして得られた試験片の引張特性をJIS K−7311に準拠して、テンシロン〔(株)島津製作所製、ヘッドスピード:300mm/分〕を用いて評価した。硬化フィルムの柔軟性は、引張特性のうちの100%モジュラス(MPa)の値を下記の基準に従い評価した。
硬化後フィルムの柔軟性の評価基準。
◎:3.0MPa以下
○:3.0を超え4.0Mpa以下。
△:4.0を超え8.0Mpa以下。
×:8.0Mpaを超える。
〔硬化フィルムの耐久性(耐加水分解性)の評価方法〕
上記で得た硬化フィルムを温度70℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿槽中に5週間放置した後、引張強度を測定した。なお、前記硬化フィルムを幅5mm×長さ70mm×厚み200μmにカットして得られた試験片の引張特性を、JIS K−7311に準拠して、テンシロン〔(株)島津製作所製、ヘッドスピード=300mm/分〕を用いて評価した。
前記硬化フィルムの耐久性は、試験後の引張特性のうちの引張強度の保持率(%)の値を下記の基準に従い評価した。
硬化フィルムの耐久性(耐加水分解性)の評価基準。
○:90%以上
△:60以上90%未満
×:60%未満
〔アウトガス性の評価方法〕
上記の基材への塗布後の保型性の評価を行なった成形品を温度120℃に設定した乾燥機中で5分間加熱処理を施した後、試料採取量:30mg、加熱脱離条件:90℃、30分間にて、VDA278(VOC)に準じたアウトガス成分の定量をGC−MASSを用いて測定した。
炭素数20のエイコ酸までの保持時間における検出成分面積の総計をトルエン換算した値をVOC値、即ちアウトガス量(ppm)とした。
成形品のアウトガス性は、VOC値をもとに評価した。
アウトガス性の評価基準。
○:10ppm以下
△:10を超え40ppm以下。
×:40ppmを超える。
〔基材密着性の評価方法〕
上記の基材への塗布後の保型性の評価方法で作製したアルミ板A5052上に塗布した成形品の剥離強度をJIS K−7311に準拠して、テンシロン〔(株)島津製作所製、ヘッドスピード=200mm/分〕を用いて評価した。尚、基材密着性は、剥離強度の値(N)を以下の基準に従い評価した。
基材密着性の評価基準。
○:2.0N以上。
△:0.5以上2.0N未満。
×:0.5N未満。
〔速硬化性の評価方法〕
上記の基材密着性にて評価した剥離後のアルミ板上の残存物の有無を目視観察し、速硬化性を以下の基準に従い評価した。
速硬化性の評価基準。
○:全く残存物が残っていない状態。
△:表面にごく微量の残存物が残っている状態。
×:表面に残存物が明らかに残っている状態。
〔合成例1〕
≪イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C−1)の合成≫
1リットル4ツ口フラスコにて、ネオペンチルグリコール(NPG)を55質量部と、ジエチレングリコール(DEG)を2.0質量部と、無水フタル酸(OPA)を43質量部とを反応させ、数平均分子量(Mn)が1000の2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有する芳香族ポリエステルポリオール(a1−1)を得た。
次いで、1リットル4ツ口フラスコに、上記で合成した芳香族系ポリエステルポリオール(a1−1)20質量部と、Mnが2000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)(a2−1)70質量部と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)6モル付加体にセバシン酸とイソフタル酸を反応させて得たビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3―1)10質量部とを、減圧条件下にて100℃に加熱して、水分率が0.05質量%となるまで脱水し、混合物であるポリオール(A)を得た。
次いで、70℃にまで冷却した前記ポリオール(A)中に、ポリイソシアネート(B)としてm−キシレンジイソシアネートを22質量部加えて、100℃まで昇温して、イソシアネート基含有量が一定となるまで3時間反応させ、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C−1)を得た。
前記ウレタンプレポリマー(C−1)の100℃における溶融粘度は1900mPa・sであり、イソシアネート基含有量(NCO%)は3.90質量%であった。合成例1で得たウレタンプレポリマー(C−1)の性状を第1表にまとめた。
〔合成例2〜16〕
第1表の配合に従い同様の操作にて、ウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−16)を合成した。
合成例2〜16で得たウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−16)の性状を第1表にまとめた。
前記合成例1〜16で得た芳香族ポリエステルポリオール(a1)について、原料である2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコール及び芳香族カルボン酸の種類と組成は以下の通りである。
(a1−1)芳香族ポリエステルポリオール
組成 :NPG/DEG/OPA
Mn :1000
グルコール :NPG/DEG=96.6/3.4モル%
芳香族カルボン酸:OPA=100モル%
(a1−2)芳香族ポリエステルポリオール
組成 :NPG/TPA
Mn :1000
グルコール :NPG=100モル%
芳香族カルボン酸:TPA=100モル%
〔実施例1〕
≪活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM1)の合成≫
合成例1で得た前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C−1)100質量部を100℃で加熱溶融させ、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)5.3質量部とオクチル酸第一錫0.01質量部を加えて、内温80℃にてNCO%が一定となるまで反応させ、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X−1)を得た。
前記ウレタンプレポリマー(C−1)の有するイソシアネート基総数に対して、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)としてHEAが反応したNCO基の数の割合〔[OH/NCO]×100(%)〕は、NCO基総数の理論値が55%になるように仕込んだ。
前記ホットメルトウレタン(X−1)の組成及び性状を第1表にまとめた。前記ホットメルトウレタン(X−1)の100℃における溶融粘度は1920mPa・sであり、イソシアネート基含有量(NCO%)は1.93質量%であった。
次いで、前記末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X−1)と、活性エネルギー線重合開始剤(Y−1)として紫外線硬化剤であるイルガキュア 651(チバスペシャリティ株式会社製)2.0部を混合攪拌することにより、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM1)を得た。
なお、前記ウレタンプレポリマー(C−1)の有するイソシアネート基総数に対して、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)が反応したNCO基の数の割合〔[OH/NCO]×100(%)〕は、定法に従い、過剰のジブチルアミンを添加し、イソシアネート基とジブチルアミンとを反応させ、次いで残存するジブチルアミンの量を、塩酸を用いた逆滴定法により、イソシアネート基量を算出し求めることができる。
第1表中のウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−16)についても、前記(C−1)と同様の方法にて、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)が反応したNCO基の数の割合〔[OH/NCO]×100(%)〕を求めた。
〔活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いた成形品の作成〕
前記活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM1)を100℃に加熱溶融して、100℃に加熱された0.6mmφ内径のディスペンサーヘッドを用いて、吐出圧力:0.30MPa、加工速度100mm/秒、塗布時間:10秒にてアルミ板上にビード状に塗布した後、装置内を1回通過するごとに145mJ/cmの紫外線(UV)が照射されるように設定したコンベアタイプの紫外線照射装置「CSOT−40」(日本電池株式会社製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm、コンベアスピード30m/分)内を1回通過させることで紫外線照射を行い、次いで、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽内で3日間放置することにより、湿気硬化後の成形品1を得た。 本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いた成形品1の特性評価結果を第1表に示した。前記成形品1は、UV照射後に表面タックが消失して、適度な柔軟性と機械的強度があり、基材への塗布後の保型性、耐久性(耐加水分解性)、低アウトガス性などの優れた性能を有していた。
〔実施例2〕及び〔実施例3〕
実施例2及び実施例3は、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)としてHEAの使用量を夫々9.9質量部と13.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作で行い、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM2)及び(UVHM3)を得た。
なお、ウレタンプレポリマー(C−1)の有するイソシアネート基総数に対して、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)としてHEAが反応したNCO基の数の割合〔[OH/NCO]×100(%)〕は夫々NCO基総数の理論値が75%(実施例2)と100%(実施例3)になるように仕込んだ。
次いで、実施例2及び実施例3において、実施例1と同様の操作で、本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM2)及び(UVHM3)を用いて、湿気硬化後の成形品2及び成形品3を得た。
前記成形品2と成形品3の評価結果を第1表に示した。前記成形品2及び成形品3は、UV照射後に表面タックが消失し、適度な柔軟性と機械的強度があり、基材への塗布後の保型性、耐久性(耐加水分解性)、低アウトガス性などの優れた性能を有していた。
〔実施例4〕〜〔実施例17〕、及び〔比較例1〕〜〔比較例10〕
第1表及び第2表の配合に従い、同様の反応手順で〔実施例4〕〜〔実施例17〕及び〔比較例1〕〜〔比較例10〕を行なった。そこで得たウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−16)、ホットメルトウレタン(X−4)〜(X−23)、及び活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(UVHM4)〜(UVHM27)の評価結果を第1表と第2表に示した。
〔比較例8〕
アクリレート成分として2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジアクリレートを5部、イソノニルアクリレートを95部、SIBSTAR 072T(商品名、株式会社カネカ製、トリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン含量23重量%)を35部、光重合開始剤としてイルガキュア651(チバスペシャリティ株式会社製)を2部、及びアエロジル200(商品名、日本アエロジル株式会社製、表面無処理ヒュームドシリカ)を6質量部の配合物を、60℃に加熱したプラネタリーミキサーで混合攪拌して、紫外線硬化型樹脂組成物(X−24)を得た。
前記紫外線硬化型樹脂組成物(X−24)を上記実施例、比較例と同様にUV照射することにより、柔軟性、耐久性、塗布作業性、保型性、アウトガスの測定、基材密着性、速硬化性などの評価を行なった。得られた成形品は、柔軟性はあるものの、アウトガス発生量が多く、UV硬化後の基材密着性や速硬化性に劣るものであった。
Figure 2012082366
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第1表及び第2表に記載の略号は、下記の化合物を意味する。
NPG :ネオペンチルグリコール
DEG :ジエチレングリコール
OPA :無水フタル酸
TPA :テレフタル酸
PTMG :ポリテトラメチレングリコール
アクトコールMN700:商品名、3官能プロピレングリコール(分子量700、三井化学株式会社製)
BIS−A+6PO:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド6モル付加物
PO :プロピレンオキサイド
SEBA :セバシン酸
IPA :イソフタル酸
XDI :キシリレンジイソシアネート
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト
HEA :2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA :4−ヒドロキシブチルアクリレート
HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
PPG :プロピレングリコール
SIBSAR 072T:商品名、株式会社カネカ製、トリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン含量23重量%
パーロイルTCP:商品名、日本油脂株式会社製
アエロジル200:商品名、日本アエロジル株式会社製、表面無処理ヒュームドシリカ
イルガキュア651:商品名、チバスペシャリティ株式会社製
サイリシア350:商品名、富士シリシア株式会社製
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、塗布後の冷却固化が速いホットメルト性と、例えば、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線などの活性エネルギー線照射による速硬化性との2つの特性を兼ね備えており、且つ、ポリオールの相溶性が改良されて均一な相溶系を形成できることにより、柔軟性、機械的強度、基材への塗布後の保型性、耐久性(特に耐加水分解性)、基材密着性(特に金属に対する密着性)、低アウトガス性などの特性に優れているので、例えば、パッキン類(電子機器用、工業部材用、ハードディスクドライブ用、ハウジングケース用などの各種パッキン)、キャップシール材、固定材(例えば、磁気ヘッド用、基板とコネクターとの固定用など)等の電子機器用部材のほかに、シール材、フィルム、シート、工業用パッキン、リボン、接着剤(例えば建材用、繊維用など)、コーティング剤、粘着剤など広範囲に有用である。

Claims (8)

  1. 2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールをグリコール成分中90モル%以上含有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)、前記(a1)及び後記(a3)以外のポリオール(a2)、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とポリカルボン酸とを縮合反応させてなるポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基総数の50%を超えて100%以下を、反応性官能基含有(メタ)アクリル化合物(D)により、末端(メタ)アクリロイル基としたホットメルトウレタン(X)と、活性エネルギー線重合開始剤(Y)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  2. 前記2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、グリコール成分と芳香族カルボン酸成分を縮合反応させて得られるものであって、前記グリコール成分が、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基を有するグリコールを前記グリコール成分中90モル%以上含有し、且つ、前記芳香族カルボン酸成分が、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸から選択される少なくとも一種を90モル%以上含有するものである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  3. 前記ポリオール(a2)が、ポリエーテルポリオールである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  4. 前記ポリオール(a2)が、ポリテトラメチレングリコールである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  5. 前記ポリオール(A)が、全量100質量部中に、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)20〜70質量部、前記ポリオール(a2)30〜80質量部、及び前記ビスフェノールA含有ポリエステルポリオール(a3)5〜50質量部を含有してなるポリオールである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  6. 日本工業規格 K 2207にて測定した前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の軟化温度が、30〜120℃の範囲である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする電子機器用部材。
  8. 請求項1〜6の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を成形してなることを特徴とするパッキン。
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