JP2012079619A - 固体高分子型燃料電池用隔膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】湿潤状態である電池の作動時はもちろんのこと、乾燥状態になる作動停止時にも高い気体非透過性が保持され、膜の断裂等も生じる危険性がなく、作動再開時には再び優れた気体非透過性が示される陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜膜を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン製多孔質基材、好適には空隙率が40〜60%のものの細孔内に、特定のハロゲノアルキルスチレン化合物からなる繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が、その炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態で充填されてなる陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池用隔膜、詳しくは、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、陰イオン交換樹脂が充填されてなる陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜、及びその製造方法に関する。
従来、固体高分子電解質膜として陽イオン交換型電解質膜(以下、陽イオン交換膜ともいう)を使用した陽イオン交換膜型燃料電池の研究・開発が行われてきた。近年は、陽イオン交換膜に代えて、陰イオン交換型電解質膜(以下、陰イオン交換膜ともいう)を使用した陰イオン交換膜型燃料電池も提案され、その研究・開発が活発化している(特許文献1、2)。
陰イオン交換膜型燃料電池は、プロトンがイオン伝導種である陽イオン交換膜型燃料電池と違って、水酸化物イオンがイオン伝導種であり、陽イオン交換膜型燃料電池にはない、次のような利点を有する。
(i)反応場が強塩基性のため、安価な遷移金属触媒が使用可能となる。
(ii)触媒種の選択枝が広がるため、電池の高出力化や様々な燃料の使用が可能となる。
(iii)電解質中の水酸化物イオンの移動方向が燃料の酸化剤ガス極への透過方向と逆方向であるために酸化剤ガス極への燃料透過が抑制され、燃料と酸化剤ガスとの直接反応によるロスを防止し、出力電圧の低下を抑えることが可能である。
また、陰イオン交換膜の原料として安価な炭化水素系の材料を用いることで、コストダウンを図ることも可能である。
このような利点を有する陰イオン交換膜型燃料電池用隔膜において、陰イオン交換膜を構成する陰イオン交換樹脂に用いられている陰イオン交換基としては、その優れたイオン伝導性から、第4級アンモニウム塩基や第4級ホスホニウム塩基等の第4級塩基が用いられることが多く、特に、第4級アンモニウム塩基が有利とされている。また、機械的強度の他、燃料および酸化剤ガス非透過性を向上させるために、これらの陰イオン交換樹脂は、架橋されているのが好適である。さらに、機械的強度や寸法安定性の付与や製膜化の容易性等から、該陰イオン交換樹脂は、母材である多孔質基材の空隙部中に充填して膜化するのが効率的である。
これらから、第4級アンモニウム塩基を陰イオン交換基とする炭化水素系陰イオン交換膜は、通常、クロロメチルスチレンなどのハロゲノメチル基を有する芳香族炭化水素基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤からなる重合性組成物を、多孔質基材と接触させて、該重合性組成物を多孔質基材の有する空隙部に含浸させた後重合させ、次いで上記ハロゲノメチル基を第4級アンモニウム塩基に変換することにより製造するのが一般的である。この際、母材の多孔質基材は、機械的強度やコスト的に有利なことなどから、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンが汎用されている。
また、上記ポリオレフィン製多孔質基材の空隙部中に充填される、炭化水素系陰イオン交換樹脂の膜面への結合性を高めるために、これらをグラフト重合することも知られている。すなわち、ポリオレフィン製多孔質基材に電離性放射線を照射した状態で、重合性組成物を多孔質基材の有する空隙部に接触させて重合することで、炭化水素系陰イオン交換樹脂を上記ポリオレフィン製多孔質基材に強固にグラフト結合させ、機械的強度等を高めることが公知である(特許文献3)
ところで、固体高分子型燃料電池は、作動温度が高いほど大きな電池出力を得ることができる。したがって、前記陰イオン交換膜型燃料電池においても、使用する陰イオン交換膜の耐熱性を高め、できるだけ高温で作動させるのが有利である。しかし、第4級アンモニウム塩基を陰イオン交換基とする炭化水素系陰イオン交換膜では、70℃程度で該イオン交換基の分解が進行し、この要求を十分に満足できなかった。
このため、第4級アンモニウム塩基を有する炭化水素系陰イオン交換膜の耐熱性を高めるために、その製造を、ハロゲノメチル基を有する芳香族炭化水素基を有する重合性単量体として、前記クロロメチルスチレンではなく、ブロモブチルスチレン等の鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンを用いて行なうことが提案されている(特許文献4)。これは、ハロゲノメチルスチレンを用いて製造された陰イオン交換樹脂では、第4級アンモニウム塩基が芳香環に対してベンジル位で結合するものになり、この位置は反応性が強いため該イオン交換基は熱分解し易いものになるが、これに対して、上記アルキル鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンを用いれば、上記第4級アンモニウム塩基の反応性は相当に弱められ、耐熱性が改善されるからである。
なお、斯様に耐熱性に優れる、アルキル鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンを用いて陰イオン交換膜を製造する場合において、前記ポリオレフィン製多孔質基材と陰イオン交換樹脂との結合性を高めるために、多孔質基材に電離性放射線を照射して、両者の間にグラフト結合を生じさせた具体例は、現在までのところ全く知られていない。
特開平11−273695号公報 特開平11−144745号公報 特開平11−135137号公報 国際公開2009/081931号パンフレット
上述の通り第4級アンモニウム塩基を陰イオン交換基とする炭化水素系陰イオン交換膜は、固体高分子型燃料電池用隔膜として極めて有用であるが、前記耐熱性だけでなく、さらに気体の非透過性においても改良の必要性があった。すなわち、陰イオン交換膜型燃料電池は、アルコール等の液体燃料も含めて様々な燃料の使用が可能であるが、中でも水素ガスが好適である。一方、酸化剤ガス極では空気または酸素といった気体が供給されて発電が行われる。したがって、効率的な発電を行なうには、陰イオン交換膜は、気体(水素ガスや酸化剤ガス)の非透過性に優れることが、重要になる。ところが、前記第4級アンモニウム塩基を陰イオン交換基とする炭化水素系陰イオン交換膜は、これが、前記ハロゲノメチルスチレンを用いて製造した膜も、アルキル鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンを用いて製造した膜も、いずれも係る物性を高度に満足できていないものであった。
このような状況下にあって、本発明者らは、係る気体の膜透過は、多孔質基材とその空隙に充填される陰イオン交換樹脂の接触界面に存在する微細間隙に起因すると考え、この界面での結合力を高めれば、該気体非透過性を改善できるのではないかと推察した。そして、この考えに従って、前記ハロゲノメチルスチレンを用いて膜を製造する態様で、ポリオレフィン製多孔質基材に電離性放射線を照射して、陰イオン交換樹脂を強固にグラフト結合させ、得られた陰イオン交換膜について、上記気体非透過性を測定してみた。その結果、得られた陰イオン交換膜では、膜が一定の湿潤状態においては、前記予想通りに優れた気体非透過性が示された。
しかしながら、さらに検討を進めたところ、この陰イオン交換膜は、燃料電池セルに組み込まれたような張力が付加された状態において、膜が乾燥した状態に近づくと、上記改善した気体非透過性が、再度急激に低下することが確認された。しかも、この乾燥時の気体非透過性の急激な低下は、ポリオレフィン製多孔質基材の空隙率が大きいほど顕著であり、状態によっては単に気体非透過性が低下するだけでなく、膜に断裂が生じることさえあった。また、一度、こうした乾燥状態におかれた膜では、膜を再び湿潤状態にしても、該気体非透過性は低下したままで、回復しないことも確認された。
しかして、陰イオン交換膜型燃料電池に使用される固体電解質膜は、作動時には、燃料ガスとして水素ガスを用いたとしても各電極反応で水が生成するため湿潤性の高い状態で上記乾燥時の気体非透過性の低下は大きな問題にならない。しかし、作動停止時には相当に乾燥するのが一般的であり、上記燃料電池セルに組み込まれた状態で乾燥時には、気体非透過性が大きく低減し、断裂したりその後回復しない状況は、該燃料電池の実用化に大きな障壁であった。
これらから、陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜において、湿潤状態である電池の作動時はもちろんのこと、乾燥状態になる作動停止時にも高い気体非透過性が保持され、膜の断裂等も生じる危険性がなく、作動再開時には再び優れた気体非透過性が示される膜を開発することが大きな課題であった。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意研究を行ってきた。その結果、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填する陰イオン交換樹脂として、ハロゲノブチルスチレン等の鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンに基く繰り返し単位を有する、架橋された炭化水素鎖からなるものを採択し、且つその充填を、該陰イオン交換樹脂を構成する前記炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態にすることで、上述の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、下記式(1)
Figure 2012079619
(但し、R、R、およびRは夫々同種又は異種の炭素数が1〜3のアルキル基であり、Aは陰イオンであり、mは3〜6の整数であり、nはAの陰イオンの価数である。)
で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が、その炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態で充填されてなる陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜である。
本発明において固体高分子型燃料電池用隔膜として使用する陰イオン交換膜は、優れた、耐熱性および気体非透過性を有している。特に、後者の性状は、膜が湿潤状態にある場合だけでなく、乾燥状態においても極めて良好である。具体的には、水素非透過性であれば40℃/90%RHの条件での測定値で1×10−12cm・cm・cm−2・s−1・Pa−1以下、より好ましくは2〜9×10−13cm・cm・cm−2・s−1・Pa−1とすることも可能である(通常の陰イオン交換膜は、1×10−9〜1×10−10cm・cm・cm−2・s−1・Pa−1程度)。そして、この水素非透過性の値は、40℃/0%RHの条件での測定においても上記値内に保持できる。
本発明で使用する陰イオン交換膜において、このように乾燥状態でも優れた気体非透過性が示される原因は次のような理由によるものと推察される。すなわち、前記したように陰イオン交換樹脂と多孔質基材との間の結合力が弱いと、両者の界面に微細間隙が形成され、その間を気体が通過するようになる。したがって、前記グラフト重合により陰イオン交換樹脂と多孔質基材との間の結合力を高めると、こうした微細間隙は形成され難くなり、気体非透過性は大きく向上する。
ところで、前記したように燃料電池の作動時において、陰イオン交換膜は湿潤状態にあり、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔に充填されている陰イオン交換樹脂は膨潤している。よって、この膨張力に押されて上記多孔質基材も膨らんでいる。一方で、燃料電池の運転を停止すると、陰イオン交換膜は乾燥し、それに伴って前記陰イオン交換樹脂は収縮する。しかし、前記湿潤時に膨らんだポリオレフィン製多孔質基材は弾性範囲から外れて塑性変形しているため、陰イオン交換樹脂からの膨張力がなくなっても、もはやもとの状態まで収縮することが難しくなる。そのため、陰イオン交換樹脂と多孔質基材との間には強い剥離力が働き、この力は、通常の陰イオン交換膜(すなわち、陰イオン交換樹脂がクロルメチルスチレンに基く繰り返し単位のもの)では、たとえその陰イオン交換樹脂と多孔質基材との間の結合力が前記グラフト重合により高められていたとしても、これを上回るものになり、両部材の界面には微細間隙が形成され、前記気体非透過性が大きく低下すると考えられる(基材の空隙率が大きい等して、間隙が激しく形成された場合には、膜は断裂するにまでに至る)。
これに対して、本発明で使用する陰イオン交換膜では、陰イオン交換樹脂が前記ハロゲノブチルスチレン等の鎖長の長いハロゲノアルキルスチレンに基く繰り返し単位を有するものであるため、前記通常の陰イオン交換膜と同じ架橋度で比較すれば、その含水率は小さく、過度に膨潤し難い性質にある。このことから、該陰イオン交換膜では、通常の陰イオン交換膜よりも乾燥時に陰イオン交換樹脂と多孔質基材との間に働く剥離力が弱く、前記陰イオン交換樹脂と多孔質基材との界面に間隙が形成され難く、乾燥時にも優れた気体非透過性が保持されるのではないかと考えられる。
以上から、本発明の隔膜を用いて製造した固体高分子形燃料電池では、電池性能低下の抑制、さらには燃料ガスおよび酸化剤ガスのロスが少なくでき、長時間の発電が可能となる。また、こうした隔膜の優れた気体非透過性は、部材劣化の抑制にも資する。さらに、運転を一旦停止し、膜が乾燥状態なってから再び作動した場合でも、同様の効率的発電が維持でき、極めて有意義である。
実施例において、燃料電池出力電圧の測定に使用した、固体高分子型燃料電池の燃料電池セルの構造を示す概念図である。
1;燃料電池セル
2;燃料供給孔
3;水及び酸化剤ガス供給孔
4;燃料室触媒電極層
5;空気室触媒電極層
6;陰イオン交換膜
7;燃料室
8;空気室
本発明で使用する陰イオン交換膜は、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が、その炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態で充填されている。
一般式(1)で示される繰り返し単位において、R、R、およびRは、炭素数が1〜3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。このうち、耐熱性が特に良好であることからメチル基が好ましい。これらは、各々異種であっても良いが、通常は同種のものである。
第4級アンモニウム塩基の対イオンであるAは陰イオンであり、水酸化物イオン、重炭酸イオン、ハライドイオン等の一価の陰イオンや、炭酸イオン等の多価の陰イオンが、特に制限なく挙げられる。こうした繰り返し単位を有する陰イオン交換樹脂の製造時には、該Aの陰イオンは、その製法に起因して通常、塩素イオンや臭素イオンのハライドイオンであることが多い。しかしながら、ハライドイオンは、陰イオン交換膜を燃料電池に用いた場合に触媒被毒が懸念され、さらには水酸化物イオン伝導の競合伝導種となって電池の内部抵抗を増大させ、電池出力の低下等を引き起こすため、該Aの陰イオンは、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオンであるのが、特に好ましい。
また、一般式(1)においてmは3〜6、より好ましくは3〜5の整数である。mが2以下、すなわち、第4級塩基と芳香族炭化水素基との連結基がメチレン基やエチレン基の場合、ベンジル位の水素が活性水素として引き抜かれてアミンが脱離し易くなり、第4級塩基の耐熱性が低下する。また、陰イオン交換膜が乾燥状態において、気体非透過性を低下させない効果も十分に得られなくなる。他方、mが7以上になると、陰イオン伝導性樹脂の陰イオン交換容量が低くなりイオン伝導性が低くなる。
本発明において、上記式(1)で示される繰り返し単位の中で、最も好ましい構造は、下記式(4)で表される構造である。
Figure 2012079619
上記式(1)で示される繰り返し単位からなる炭化水素鎖同士は、共有結合による架橋構造が形成されている。こうした架橋構造は、陰イオン交換樹脂が、上記式(1)で示される繰り返し単位に加えて架橋性重合性単量体に基く繰り返し単位が共重合されていることにより形成される。架橋性重合性単量体は、ビニル基を分子内に二つ有する化合物を使用するのが好適である。例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジビニルピリジン類等のジビニル化合物が用いられる。中でも、入手のしやすさ、取り扱いの容易さからジビニルベンゼンが最も好適に使用される。
陰イオン交換樹脂において、上記架橋の程度は、特に制限されるものではないが、燃料電池として使用時の膜からの溶出防止や、イオン伝導性の高さ等を勘案すると、上記式(1)で示される繰り返し単位の1モル当り、架橋性重合性単量体に基く繰り返し単位が0.01〜0.3モル含まれる割合が好ましく、0.02〜0.2、最も好ましくは0.02〜0.05モル含まれる割合がより好ましい。
なお、上記陰イオン交換膜を形成する炭化水素鎖は、一般式(1)で示される繰り返し単位と架橋性重合性単量体に基く繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を少量で有れば含有していても良い。こうしたその他の繰り返し単位を形成させるもとになる重合性単量体としては、具体的にはスチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、酢酸4−ビニルフェニル等が挙げられる。その含有量は、上記式(1)で示される繰り返し単位の1モル当り、0.2モル以下、特に0.01〜0.1モルの範囲であるのがより好ましい。
その他、陰イオン交換樹脂には、可塑剤類等の任意添加剤が必要に応じて配合されていても良い。
本発明で使用する陰イオン交換膜において、上記架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂を細孔内に充填させる母材は、ポリオレフィン製多孔質基材である。こうしたポリオレフィン製多孔質基材は、細孔の少なくとも一部として、表裏を連通しているものが形成されている、ポリオレフィン製の膜状物であれば制限なく使用できる。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。これらのなかでも特に、入手が容易であり、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れるという観点から、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンが最も好ましい。
該ポリオレフィン製多孔質基材の平均孔径は、得られる陰イオン交換膜の膜抵抗の小ささや機械的強度を勘案すると、一般には0.01〜0.2μmであり、0.02〜0.15μmであることが最も好ましい。
また、該ポリオレフィン製多孔質基材の空隙率は、上記平均孔径と同様の理由からは20〜95%の範囲から採択すれば良い。ここで、ポリオレフィン製多孔質基材の空隙率は、空隙を含む多孔質基材全体の体積(見かけ体積)に占める、基材の表面から裏面へ穿通する孔によってもたらされる空隙部の総体積の割合として定義される値(気孔率とも呼ばれる)である。
本発明で使用する陰イオン交換膜は、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔に充填させる陰イオン交換樹脂が、前記式(1)で示される繰り返し単位を含み嵩高いことに起因して、同じ充填量では陰イオン交換容量がやや小さくなる傾向がある。このため、多孔質基材の空隙率は40〜60%の大きめのものを用いるのが、十分なイオン伝導性を有する隔膜とする観点から有利である。すなわち、斯様に空隙率が大きい多孔質基材に対して、その細孔に、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂を0.3〜2.0g/cm−空隙体積の割合、より好ましくは0.5〜1.5g/cm−空隙体積の割合で高充填し、得られる陰イオン交換膜の陰イオン交換容量を高くするのが好ましい。このように空隙率が大きい多孔質基材を用いると、前記したようにポリオレフィン製多孔質基材に陰イオン交換樹脂をグラフト結合させると、得られる陰イオン交換膜では乾燥状態における気体非透過性の低下が激しくなり易いが、本発明ではこのような現象が抑制され、その効果が特に顕著に発現するため特に好適である。ここで、ポリオレフィン製多孔質基材の空隙体積は、
空隙を含む多孔質基材全体の体積(見かけ体積)/空隙率
を計算することにより求めることができる。また、多孔質基材の細孔に充填されている、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂の質量は、陰イオン交換膜の測定片において、空隙を含む多孔質基材(空隙率W%)全体の体積(見かけ体積;Vcm)とその質量(Yg)から下記の式
充填割合[g/cm−空隙体積]=(U−Y)/V×(W/100)
により算出したものを用いる。
なお、本発明において、ポリオレフィン製多孔質基材の平均孔径は、ASTM−F316−86に準拠し、ハーフドライ法にて測定した値をいう。また、ポリオレフィン製多孔質基材の空隙率は、空隙を含む該多孔質基材全体の体積(Vcm)と質量(Ug)を測定し、該多孔質基材の材質の密度をX(g・cm−3)として、下記の式により算出した値をいう。
空隙率=[(V−U/X)/V]×100[%]
なお、これらの平均孔径や空隙率の測定は、25℃の状態の多孔質基材に対して行うものとする。
上記ポリオレフィン製多孔質基材の膜厚は、一般には5〜200μmの範囲から採択され、膜抵抗のより小さい膜を得る観点等から5〜80μmであるのが好ましい。さらに、燃料透過性の低さのバランスや必要な機械的強度を付与するということも加味すると7〜50μmであるのが最も好ましい。
こうしたポリオレフィン製多孔質基材は、例えば特開平9−216964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東レ東燃機能膜合同会社「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
前記したように本発明で使用する陰イオン交換膜において、上記ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填される、前記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂は、その炭化水素鎖の一端が、該ポリオレフィン製多孔質基材の細孔表面にグラフト結合している。このように炭化水素鎖の一端が、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔表面にグラフト結合していることは、陰イオン交換膜の製造段階において確認できるが、詳細は後述する。
こうした構造を有する本発明で使用する陰イオン交換膜は、ポリオレフィン製多孔質基材の材質、細孔径および空隙率、並びに陰イオン交換樹脂の種類および含有量等によって、陰イオン交換容量、イオン伝導度などの物性を制御することができる。陰イオン交換容量は、一般に0.1mmol/g以上である。前記したようにポリオレフィン製多孔質基材に形成される細孔の空隙率が40〜60%であり、その空隙に対して、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が0.3〜2.0g/cm−空隙体積の割合で充填したものであれば、その陰イオン交換容量は、0.5〜2.5mmol/g、特に好ましくは0.8〜2.2mmol/gとすることができる。
イオン伝導度は、一般に3mS・cm−1以上であり、陰イオン交換容量の場合と同様に、ポリオレフィン製多孔質基材に形成される細孔の空隙率が40〜60%であり、その空隙に対して陰イオン交換樹脂が高充填のものを用いれば5〜25mS・cm−1、特に好ましくは8〜20mS・cm−1とすることもできる。
こうした陰イオン交換膜からなる本発明の固体高分子型燃料電池用隔膜は、陰イオン交換樹脂が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有していることに起因して、耐熱性に優れる。例えばエタノール含量が12質量%で水酸化カリウム濃度が10質量%である水溶液に110℃という高温で500時間浸漬保持する加速耐久試験を実施した場合でも、試験後の陰イオン交換容量保持率を90%以上とすることも可能であり、さらには95%以上とすることも可能である。
次に、以上説明した、本発明において固体高分子型燃料電池用隔膜として使用する陰イオン交換膜の製造方法について詳述する。本発明で使用する前記陰イオン交換膜は、その製造方法が特定の方法に制限されるものではないが、通常は、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内で、下記式(2)で示される
Figure 2012079619
(但し、Xはハロゲンであり、mは3〜6の整数である。)
化合物からなるハロゲノアルキル基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物をグラフト重合し、次いでハロゲノアルキル基を4級アンモニウム塩基に変換する方法(第1の製造方法)、
またはポリオレフィン製多孔質基材の細孔内で、下記式(3)で示される
Figure 2012079619
(但し、R、R、およびRは夫々同種又は異種の炭素数が1〜3のアルキル基であり、Aは陰イオンであり、mは3〜6の整数であり、nはAの陰イオンの価数である。)
化合物からなる第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物をグラフト重合する方法(第2の製造方法)により製造できる。
このうちまず、第1の製造方法について説明すると、一般式(2)で示される化合物からなるハロゲノアルキル基を有する重合性単量体としては、例えば、4−(4−ブロモプロピル)スチレン、4−(4−ブロモブチル)スチレン、4−(4−ブロモペンチル)スチレン、4−(4−ブロモへキシル)スチレン、4−(4−クロロブチル)スチレン、4−(4−ヨードブチル)スチレン等が挙げられ、このうち前記式(1)で示される繰り返し単位が特に好適とした一般式(4)
Figure 2012079619
で示される構造のものを得るのであれば、4−(4−クロロブチル)スチレン、4−(4−ブロモブチル)スチレン、4−(4−ヨードブチル)スチレン等が使用され、なかでもハロゲノアルキル基の4級アンモニウム塩基への変換が容易である点、及びその結果、得られる陰イオン交換膜が高い陰イオン交換容量を有する点から4−(4−ブロモブチル)スチレンを用いるのが最も好ましい。
こうしたハロゲノアルキル基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体を含む重合性組成物に配合される重合開始剤は、有機過酸化物やアゾ系化合物などの公知の重合開始剤の中から適宜決定すればよい。第1の製造方法においては、該重合性組成物への相溶性の観点から、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物が好適に使用される。重合性組成物中において、該重合開始剤の配合量は、重合反応が進行するのに十分な量であり、一般的には、重合性単量体成分の総量100質量部当り0.1〜3質量部あればよく、0.5〜2質量部であるのがより好適である。
これらの重合性組成物は、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内でグラフト重合される。グラフト重合は、電離性放射線またはプラズマの照射処理を施し活性種を付与した、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、上記重合性組成物を充填し重合させることにより行なうのが好ましい。電離性放射線は、強い電離作用 (他の物質を通過する時にそれを電離させる能力) を持つ放射線であり、具体的には、α線、β線、陽子線、重荷電粒子線、電子線、中性子線、宇宙線、γ線、X線等が挙げられる。これらの活性種付与手段の中でも、グラフト重合の反応性が高いことから電子線照射がより好ましい。
電離性放射線照射、特に、電子線照射を行なう場合、照射線量としては、あまり弱くてもグラフト重合が十分に進行せず、他方で強すぎるとポリオレフィン製多孔質基材の自己架橋や機械的強度低下が生じる虞があるため、好ましくは5〜25kGy、より好ましくは7〜20kGy、最も好ましくは7〜12kGyである。
電子線を照射する際の温度は室温ないしそれ以下が好ましい。室温以下とすることにより、電子線を照射するときの温度が高くなりすぎず、活性種の消滅が起こりにくく好ましい。さらに、電子線の照射は、ヘリウム、窒素、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましいが、必ずしも酸素不在下で行う必要はない。
なお、上記では電離性放射線及びプラズマの照射は、重合性組成物をポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填する前に行なっているが、必ずしもそれに限定されるものではない。すなわち、電離性放射線やプラズマは、重合性組成物をポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填した後に照射しても良く、さらには該重合性組成物をポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填する前後で夫々照射しても良い。ポリオレフィン製多孔質基材に安定して活性種を付与できる点や、該ポリオレフィン製多孔質基材の強度の低下を抑止できる傾向がある点を考慮すると、電離性放射線やプラズマは、重合性組成物を、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填する前に照射するのが特に好ましい。この場合、電離性放射線やプラズマをポリオレフィン製多孔質基材に照射した後、その細孔内に重合性組成物を充填してグラフト重合させるまでの時間は、あまり長く空くと、付与した活性種が消失して重合性が低下する虞も有るため、照射後30分以内、より好ましくは10〜20分で重合性組成物の充填操作を行なうのが望ましい。上記時間が長く空く場合は上記電離性放射線やプラズマをポリオレフィン製多孔質基材に照射した後、脱酸素下且つ低温(好ましくは−10℃未満)で貯蔵するのが望ましく、それにより、時間の経過による該ポリオレフィン製多孔質基材の反応性についての過剰な損失が防止される。
前記重合性組成物を、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填する方法は、特に制限されず、重合性組成物を、ポリオレフィン製多孔質基材に塗布やスプレーしたり、あるいは、該ポリオレフィン製多孔質基材を該重合性組成物中に浸漬したりする方法などが例示される。
重合性組成物を、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填することにより、ポリオレフィン製多孔質基材に付与された活性種を起点としたグラフト重合が開始される。その際、重合性組成物に配合させた重合開始剤の種類に応じた、加熱等の重合促進操作を施すのが好ましい。加熱温度は特に制限されないが、一般的には30〜120℃、好ましくは40〜100℃である。重合時間は、10分〜10時間が好ましい。
重合は、酸素による重合阻害を防止し、また表面の平滑性を得るため、重合性組成物をポリエステル等のフィルムで覆った後、重合させることが好ましい。フィルムで重合性組成物を覆うことにより、厚さが均一で薄い(基材となる多孔質膜の厚さと同程度の厚さで厚くなりすぎていないことを意味する)陰イオン交換膜を得ることができる。重合後、得られた膜状物は、必要に応じて洗浄すれば良い。
以上により、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、一般式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が、その炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態で充填されてなる陰イオン交換膜が得られる。なお、これらの製造方法において、電離性放射線またはプラズマの照射処理したポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、重合開始剤を含有させずに、前記一般式の重合性単量体および架橋性重合性単量体のみを充填し加熱し、次いで、これら重合性単量体が溶解可能な溶媒中に、該ポリオレフィン製多孔質基材を一晩浸漬した後その重量を測定すると、ポリオレフィン製多孔質基材は、その電離性放射線やプラズマの照射量に応じて重量増加している。すなわち、細孔内に充填された重合性単量体は重合開始剤の不存在下で、電離性放射線やプラズマの照射量に応じて浸出しなくなっており、このことから、該細孔内に充填された重合性単量体は、その一端を、該ポリオレフィン製多孔質基材の細孔表面にグラフト結合させて重合することが確認できる。
斯様にして第1の製造方法により得られた陰イオン交換膜は、第4級アンモニウム塩基の対イオンであるAの陰イオンがハライドイオンになっている。前記したように、第4級アンモニウム塩基の対イオンがハライドイオンの場合、その陰イオン交換膜を固体高分子型燃料電池用隔膜として使用しても、触媒被毒が懸念され、さらには水酸化物イオン伝導の競合伝導種となるため、水酸化物イオン、重炭酸イオン、または炭酸イオンに変換するのが好ましい。
この変換処理は、通常、上記陰イオン交換膜を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ水溶液又は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の炭酸塩類水溶液に浸漬する方法を採用するのが好ましい。このとき、水酸化アルカリ水溶液や炭酸塩類水溶液の濃度は、特に限定はされず、0.1〜2mol・L−1程度であり、また浸漬温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜24時間程度である。
他方、第2の製造方法について詳述すると、一般式(3)で示される化合物からなる第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体としては、例えば、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリエチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリプロピルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−エチル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−プロピル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−ペンチル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−ヘキシル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアンモニウムクロリド、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアンモニウムヒドロキシド、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアンモニウムカーボネート、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアンモニウムバイカーボネート、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムクロリド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムヒドロキシド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムカーボネート、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムバイカーボネート等が挙げられ、このうち前記式(1)で示される繰り返し単位が特に好適とした一般式(4)
Figure 2012079619
で示される構造のものを得るのであれば、 [4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムクロリド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムブロミド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムヨージド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムヒドロキシド、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムカーボネート、[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムバイカーボネート等が採用でき、中でも調製のし易さ及び得られる陰イオン交換膜が高い陰イオン交換容量を有するものにできることから[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムブロミドを用いるのが最も好ましい。
第2の製造方法においても、重合性組成物を、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に充填しグラフト重合を行なう工程までは、第1の製造方法と同様に操作を進めれば良い。ただし、一般式(3)で示される化合物からなる第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体は、通常、常温で固体状であるため、このものと、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物は、一般には、溶媒を用いて溶液として、ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に含浸させて充填させることが必要になる。この際、含水溶液として含浸させるのが特に好ましい。すなわち、含水溶液として含浸させることにより、得られる陰イオン交換膜は、該第4級アンモニウム塩基の周囲に水分子が多量に存在するものになり、特に耐熱性に優れた膜になるため好適である。
含水溶液とする場合において水の含有量は、特に制限されるものではないが、第4級アンモニウム塩基に対して水が十分に親和した状態とするためには、該第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体の1モル当り10モル以上、より好ましくは12モル以上であるのが望ましい。なお、水は、あまり多量に含まれていても、後述するように液の均一性を保ち難くし、且つ多孔性基材が疎水性材料製ではある場合に細孔内への浸入性を低下させるため、上記第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体の1モル当り25モル以下、より好ましくは20モル以下であるのが好適である。
重合性組成物の含水溶液において、溶媒は上記水を単独で用いても一向に構わないが、架橋性重合性単量体は水に対して通常、相溶性が悪いため、液の均一性を高め、さらには、疎水性であるポリオレフィン製多孔質基材の細孔内への浸入性を高める観点から、水溶性有機溶媒も、多孔質膜への浸入促進剤として併用(水と水溶性有機溶媒の混合溶媒)するのが好ましい。この浸入促進剤としての水溶性有機溶媒は、多孔性基材質膜の細孔内に浸入した後は重合工程でほとんどが蒸散し、多少残留したとしても、その後の処理環境や保存環境で乾燥して膜外へ除去されるのが普通である。
上記水溶性有機溶媒として好適なものは、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等である。これら水溶性有機溶媒の使用量は、あまり多くても重合性組成物が濃度低下し、多孔質膜の空隙部への陰イオン交換樹脂の充填性が悪化するため、重合性単量体成分の総量100質量部に対し300質量部以内、さらには200質量部以内、特に、50〜100質量部であるのが好ましい。
さらに、第2の製造方法において、重合性組成物に配合される重合開始剤は、前記したように該重合性組成物を含水溶液として用いる場合には、水溶性のものが良好に用いられる。具体的には、過硫酸アンモニウムや、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩が好適に用いられる。重合性組成物中において、該重合開始剤の配合量は、重合反応が進行するのに十分な量であり、一般的には、重合性単量体成分の総量100質量部当り0.1〜3質量部あればよく、0.5〜2質量部であるのがより好適である
係る第2の製造方法により得られた陰イオン交換膜でも、第4級アンモニウム塩基の対イオンであるAの陰イオンは、ハライドイオンであることが多い。したがって、こうした場合は、前記第1の製造方法と同様に、該ハライドイオンを、水酸化物イオン、重炭酸イオン、または炭酸イオンに変換するのが好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用隔膜は、通常、その両面にそれぞれ燃料室側ガス拡散電極および酸化剤室側ガス拡散電極を接合させて陰イオン交換膜−電極接合体(以下、「MEA」と略する)として使用する。このようなMEAは、電極触媒に必要に応じて結着剤や分散媒を添加してペースト状の組成物とし、これをそのままロール成型するか又はカーボンペーパー等の支持層材料上に塗布した後に熱処理して層状物を得、その接合面となる表面にイオン伝導性付与剤を塗布した後に必要に応じて乾燥し、陰イオン交換膜と熱圧着する方法;又は電極触媒にイオン伝導性付与剤及び必要に応じて結着剤や分散媒を添加してペースト状の組成物とし、これをカーボンペーパー等の支持層材料上に塗布するか又はブランクに塗布して陰イオン交換膜上に転写、必要に応じて乾燥し、陰イオン交換膜と熱圧着する方法;さらには陰イオン交換膜上に直接塗布した後に乾燥させることで、陰イオン交換膜と接合させる方法などにより好適に製造することができる。
上記ペースト状の組成物を支持層材料上または陰イオン交換膜上に塗布する方法としては、ドクターブレード法やスプレー塗布が挙げられる。また、特開2003−86193号公報に開示されているように、互いに接触することにより架橋してイオン交換樹脂を形成し得る2種以上の有機化合物、及び電極触媒を含有する組成物からなる成形体を得た後に該成形体中に含まれる前記2種以上の有機化合物を架橋させてガス拡散電極を形成し、これを本発明で製造した陰イオン交換膜の両面に接合しても良い。
また、イオン伝導性付与剤としては、特開2002−367626号公報に開示されているような、分子内に陰イオン交換基を有し、水及びメタノールなどのアルコールに難溶な炭化水素系高分子エラストマー、又はその溶液或いは懸濁液からなることを特徴とする高分子型燃料電池のガス拡散電極用イオン伝導性付与剤が好適に使用される。
MEAに使用する電極触媒としては、従来のガス拡散電極において電極触媒として使用されている、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金等の金属粒子が制限なく使用できるが、触媒活性が優れていることから白金族元素を用いるのが好適である。これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用してもよい。導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
本発明の燃料電池用隔膜を適用する燃料電池としては、MEAで仕切られた燃料室と酸化剤室とを有し、該燃料室および該酸化剤室には夫々前記MEAの一方の電極が存在しており、前記燃料室に燃料を供給して該燃料室側に存在する電極で燃料と水酸化物イオンとを反応させ、前記酸化剤室に水及び酸化剤を供して該酸化剤室側に存在する電極でこれらを反応させる固体高分子型燃料電池が一般的である。しかし、本発明の方法で得られる陰イオン交換膜の用途は、このようなタイプの燃料電池に限定されるものではなく、その他の公知の構造を有する燃料電池にも勿論適用することができる。
前記燃料室へ供給する燃料としては、メタノール、エタノール、ヒドラジンなどの液体、およびこれらの水溶液、さらにはこれらに水酸化ナトリウムなどの電解質を混合した液体燃料も使用することができるが、気体の非透過性が小さい性状を生かせば、水素やアンモニアなどの気体であるのが、より好ましい。
中でも、反応活性が高く、出力も高いため、燃料室に供給する燃料としては水素が最も好ましい。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で得られた陰イオン交換膜および該陰イオン交換膜を燃料電池隔膜として用いた燃料電池の評価項目および評価方法を以下に示す。
1)陰イオン交換容量および含水率
陰イオン交換膜を、0.5mol・L−1−NaCl水溶液に10時間以上浸漬し、塩化物イオン型とした後、0.2mol・L−1−NaNO水溶液で硝酸イオン型に置換したときに遊離した塩化物イオンを、硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Ammol)。次に、該イオン交換膜を0.5mol・L−1−NaCl水溶液に25℃下で4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後該陰イオン交換膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに該陰イオン交換膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。
上記測定値に基づいて、陰イオン交換容量および含水率を次式により求めた。
陰イオン交換容量[mmol・g−1−乾燥重量]=A×1000/D
含水率[%]=100×(W−D)/D
2)イオン伝導度
線幅0.3mmの白金線5本を互いに離して平行に配置した絶縁基板を用い、前記白金線に40℃の純水に湿潤した2.0cm幅の短冊状の陰イオン交換膜を押し当て測定用試料を調製した。この試料を40℃、90%RHの恒温恒湿槽中に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスを測定した。白金線間距離を0.5〜2.0cmに変化させたときのそれぞれの交流インピーダンスを測定した。
白金線と陰イオン交換膜との間には接触による抵抗が生じるが、白金線間距離と抵抗の勾配から陰イオン交換膜の比抵抗を算出することでこの影響を除外した。白金線間距離と抵抗測定値との間には良い直線関係が得られた。抵抗勾配と膜厚から下式により、40℃、90%RHのイオン伝導度を算出した。
イオン伝導度[mS・cm−1]=1000/(2.0×L×S)
L :膜厚(含水時)[cm]
S :抵抗極間勾配[Ω・cm―1
3)気体非透過性
5cm×5cmに切り出した陰イオン交換膜をガス透過率測定装置(GTRテック(株)製、GTR−200XFTS)に取り付け、水素透過量の測定を行った。測定は、始めに、該陰イオン交換膜を該装置のセルに挟み、該陰イオン交換膜の一方にキャリアガス(アルゴンガス)を温度40℃、湿度90%RH、流量30mL/minの条件で流し、他方に試験ガスとして水素ガスを温度40℃、湿度90%RH、流量30mL/minの条件で導入し、サンプリング時間内にキャリアガス側に透過した水素量をガスクロマトグラフで検知し、試験面積9.62cmおよび試験時膜厚当たりの水素透過係数を算出し、該陰イオン交換膜の気体非透過性を評価した。次いで、キャリアガスの条件を温度40℃、湿度0%RH、流量30mL/minに変更し、水素ガスを温度40℃、湿度0%RH、流量30mL/minの条件で導入し、該陰イオン交換膜の気体非透過性を評価した。続いてキャリアガスの条件を温度40℃、湿度90%RH、流量30mL/minに戻した後、水素ガスを温度40℃、湿度90%RH、流量30mL/minの条件で導入し、条件変更前と同様に該陰イオン交換膜の気体非透過性を評価した。
水素透過係数[cm・cm・cm−2・s−1・Pa−1]=(273/T)×(1/A)×B×(1/t)×L×{1/(101325−PH2O
T :測定温度(K)
A :透過面積(cm
B :透過ガス量(μL)
t :サンプリング時間(s)
L :膜厚(cm)
H2O:水蒸気圧(Pa)
4)陰イオン交換基の耐熱性
陰イオン交換膜を5cm角の寸法に切り出し、ポリテトラフルオロエチレン製容器に入れ、110℃のオーブン中、エタノール濃度が12質量%で且つ水酸化カリウム濃度が10質量%である水溶液に500時間保持することにより耐熱性試験を行った。
耐熱性試験後の陰イオン交換容量を測定し、耐熱性試験前の陰イオン交換容量に対する耐熱性試験後の陰イオン交換容量の割合からなる陰イオン交換容量保持率を求め、該陰イオン交換容量保持率をもって耐熱性の指標とした。
5)基材細孔への陰イオン交換樹脂の充填割合
陰イオン交換膜を20cm角の寸法に切り出し、質量を測定する(Ug)。また、20cm角の寸法の、空隙を含む多孔質基材(空隙率W%)全体の体積(見かけ体積;Vcm)と質量(Yg)を測定し、下記の式により算出した。
充填割合[g/cm−空隙体積]=(U−Y)/V×(W/100)

また、実施例及び比較例で使用した各種原材料の略号を以下に示す。
・ポリオレフィン製多孔質基材
A:ポリエチレン製多孔質基材(膜厚25μm、平均孔径0.13μm、空隙率60%)
B:ポリエチレン製多孔質基材(膜厚25μm、平均孔径0.05μm、空隙率45%)
・重合性単量体
BBS:4−(4−ブロモブチル)スチレン
BPS:4−(4−ブロモペンチル)スチレン
CMS:4−クロロメチルスチレン
BBS−TMA:[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリメチルアンモニウムブロミド
BBS−TEA:[4−(4−ビニルフェニル)−ブチル]−トリエチルアンモニウムブロミド
BPS−TMA:[4−(4−ビニルフェニル)−ペンチル]−トリメチルアンモニウムブロミド
DVB:ジビニルベンゼン
・重合開始剤
PO:t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート
APS:過硫酸アンモニウム
・有機溶媒
BuOH:1−ブタノール

(実施例1)
表1に示した多孔質基材A(20×20cm)に以下の条件にて電子線照射を施した。
線量:10kGy
加速電圧:4.8MV
電流:10mA
次いで表1に示した組成表に従って、各種単量体等を混合して重合性組成物を得た。得られた重合性組成物400gを500mlのガラス容器に入れ、該多孔質基材を浸漬した。
続いて、この多孔質膜を重合性組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。
なお、上記製造方法とは別に、重合性組成物として、重合開始剤を含有しないものを用意し、これを電子線照射を施した多孔質基材Aに上記と同様の手法で浸漬し80℃で5時間加熱した。次いで、アセトン400gを500mlのガラス容器に入れ、これに前記処理後の多孔質基材Aを一晩浸漬した。浸漬後、膜を取り出して一晩大気中に放置して乾燥させた後、その重量を測定し、重合性組成物に浸漬前の多孔質基材Aの重量(0.5g)と比較したところ、0.1g重量増加していた。このことから、前記製造方法では、多孔質基材Aの細孔表面に重合性組成物がグラフト重合したことが確認できた。
得られた膜状物を6重量%のトリメチルアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaHCO水溶液中に浸漬して対イオンを臭化物イオンから重炭酸イオンにイオン交換し、引き続きイオン交換水で洗浄し陰イオン交換膜を得た。この陰イオン交換膜は、下記する各種評価に供するまでは25℃で湿度50%RHの環境下に保存した。
このようにして得られた陰イオン交換膜について、各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
(実施例2)
表1に示した多孔質基材A(20×20cm)に以下の条件にて電子線照射を施した。
線量:10kGy
加速電圧:4.8MV
電流:10mA
次いで表1に示した組成表に従って、各種単量体等を混合、撹拌し、重合性組成物を得た。該重合性組成物400gを500mlのガラス容器に入れ、該多孔質基材を浸漬した。続いて、該多孔質基材を該重合性組成物中から取り出し、該多孔質基材の両面を、厚さ100μmのポリエステルフィルムからなる剥離材で被覆してから0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。
なお、上記製造方法とは別に、重合性組成物として、重合開始剤を含有しないものを用意し、これを電子線照射を施した多孔質基材Aに上記と同様の手法で浸漬し80℃で5時間加熱した。次いで、イオン交換水400gを500mlのガラス容器に入れ、これに前記処理後の多孔質基材Aを一晩浸漬した。浸漬後、膜を取り出して一晩大気中に放置して乾燥させた後、その重量を測定し、重合性組成物に浸漬前の多孔質基材Aの重量(0.5g)と比較したところ、0.06g重量増加していた。このことから、前記製造方法では、多孔質基材Aの細孔表面に重合性組成物がグラフト重合したことが確認できた。
前記加熱による重合後に得られた陰イオン交換膜を大過剰の0.5mol・L−1−NaHCO水溶液中に浸漬して対イオンを臭化物イオンから重炭酸イオンにイオン交換し、引き続きイオン交換水で洗浄し陰イオン交換膜を得た。この陰イオン交換膜は、下記する各種評価に供するまでは25℃で湿度50%RHの環境下に保存した。
このようにして得られた陰イオン交換膜について、各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
(実施例3)
ポリオレフィン製多孔質基材Bを使用した以外は実施例1と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(実施例4)
電子線線量を20kGyにて行った以外は実施例1と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。なお、この陰イオン交換膜は機械強度において、他の実施例で製造した膜よりも少し劣るものであった。
(実施例5)
重合性単量体を表1に示すものに置き換えた以外は実施例1と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(実施例6〜7)
重合性単量体を表1に示すものに置き換えた以外は実施例2と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例2と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(比較例1)
ポリオレフィン製多孔質基材Aに電子線照射しない他は実施例1と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(比較例2)
ポリオレフィン製多孔質基材Aに電子線照射しない他は実施例2と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例2と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
(比較例3)
重合性単量体を表1に示すものに置き換えた以外は実施例1と同様に陰イオン交換膜を作成した。得られた陰イオン交換膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
Figure 2012079619
Figure 2012079619

Claims (7)

  1. ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内に、下記式(1)
    Figure 2012079619
    (但し、R、R、およびRは夫々同種又は異種の炭素数が1〜3のアルキル基であり、Aは陰イオンであり、mは3〜6の整数であり、nはAの陰イオンの価数である。)
    で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が、その炭化水素鎖の一端が細孔表面にグラフト結合した状態で充填されてなる陰イオン交換膜からなる固体高分子型燃料電池用隔膜。
  2. ポリオレフィン製多孔質基材に形成される細孔の空隙率が40〜60%である請求項1記載の固体高分子型燃料電池用隔膜。
  3. ポリオレフィン製多孔質基材の空隙に対して、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する架橋された炭化水素鎖からなる陰イオン交換樹脂が0.3〜2.0g/cm−空隙体積の割合で充填されてなる請求項1記載の固体高分子型燃料電池用隔膜。
  4. ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内で、下記式(2)で示される
    Figure 2012079619
    (但し、Xはハロゲンであり、mは3〜6の整数である。)
    化合物からなるハロゲノアルキル基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物をグラフト重合し、次いでハロゲノアルキル基を第4級アンモニウム塩基に変換することにより請求項1記載の固体高分子型燃料電池用隔膜を製造する方法。
  5. ポリオレフィン製多孔質基材の細孔内で、下記式(3)で示される
    Figure 2012079619
    (但し、R、R、およびRは夫々同種又は異種の炭素数が1〜3のアルキル基であり、Aは陰イオンであり、mは3〜6の整数であり、nはAの陰イオンの価数である。)
    化合物からなる第4級アンモニウム塩基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物をグラフト重合することにより請求項1記載の固体高分子型燃料電池用隔膜を製造する方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載の製造方法において、ポリオレフィン製多孔質基材として空隙率が40〜60%のものを用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池用隔膜の製造方法。
  7. 重合性組成物のグラフト重合を、ポリオレフィン製多孔質基材に電離性放射線またはプラズマの照射処理により行なうことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の固体高分子型燃料電池用隔膜の製造方法。
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