JP2012078130A - 粒子状物質検出センサおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】電気抵抗式の粒子状物質検出センサにおいて、PM粒子をセンサ表面の一対の検出電極間に速やかに堆積可能とし、一対の検出電極の間隔をより小さくして、センサ感度を向上させる。
【解決手段】PMセンサSのセンサ素子部1は、絶縁基板11〜16を積層した絶縁性基体10と、その粒子状物質検出面21となる側面に露出する検出電極e1〜e5からなる検出部2を備える。検出電極e1〜e5は、絶縁基板11〜16の層間に配置される電極膜eA、eBからなり、絶縁性基体10内において交互に接続されて、異なる極性の検出電極e1〜e5が対向配設している。検出電極e1〜e5の間に位置する絶縁基板12〜15は、分極により静電捕集可能であり、検出電極e1〜e5の間隔は、絶縁基板12〜15の厚みによって、例えば20μm以下に調整される。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、車両用内燃機関の排気浄化システムに好適に利用されて、被測定ガス中に存在する粒子状物質を検出する電気抵抗式の粒子状物質検出センサに関する。
自動車用ディーゼルエンジン等において、排気ガスに含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)および可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に排気ガスを通過させてPMを捕捉する。
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大したり、PMのすり抜けが増加したりするおそれがあり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。再生時期は、一般的には、PM捕集量の増加により前後差圧が増大することを利用しており、このため、DPFの上流および下流の圧力差を検出する差圧センサが設置される。再生処理は、ヒータ加熱あるいはポスト噴射等により高温の燃焼排気ガスをDPF内に導入し、PMを燃焼除去する。
一方、排気ガス中のPMを直接検出可能なセンサが、例えば特許文献1、2等に提案されている。このセンサを、DPFの下流に設置した場合には、DPFをすり抜けるPM量を測定し、車載式故障診断装置(OBD;On Board Diagnosis)において、DPFの作動状態の監視、例えば亀裂や破損といった異常の検出に利用することができる。あるいはDPFの上流に設置して、DPFに流入するPM量を測定し、差圧センサに代わる再生時期の判断に利用することも検討されている。
特許文献1には、絶縁性を有する基板の表面に、一対の櫛形電極を形成し、基板の裏面または内部に発熱体を形成した電気抵抗式のスモークセンサが開示されている。このセンサは、スモーク(微粒炭素)が導電性を有することを利用したもので、検出部となる電極間に、スモークが堆積することで生じる電気抵抗値の変化を検出する。基板材料には、電気絶縁性耐熱材料が用いられ、電極材料となるPt、Ag等の貴金属粉をペースト状にして、平板状基板の表面にスクリーン印刷することにより一対の電極が形成される。基板の裏面側には、電極と相対する部分に発熱体が形成され、検出部を所望の温度(例えば、400℃〜600℃)に加熱して、電極間抵抗を測定した後に、付着したスモークを焼き切って検出能力を回復させる。
また特許文献2には、センサ上の煤堆積を制御するためのセンサエレメントが開示されている。センサの基本構造を図15に示すと、アルミナセラミックス等の絶縁基板100上に一対の櫛形電極101、102が形成されており、電極101、102は、例えば車両電源等を利用した電源部103に接続されている。電源部103から印加される電圧に応じて、相互に噛み合う櫛形電極101、102間の空間に不均一な電界が形成され、センサエレメントを通過する排気ガス中に含まれる煤粒子が、電極101、102に引き寄せられて堆積する。この時の電極間抵抗を、抵抗測定部104にて検出することで煤堆積量を測定することができる。
特許文献2は、センサエレメントの電極101、102に、異なる測定電圧を印加可能な構成として、センサ感度と捕集時間を調整している。例えば測定初期には、比較的高い電界を形成して比較的高い電界を形成し、より煤粒子を引き付けやすくすることが記載されている。そして、測定可能な電流(トリガ閾値)に達した後、比較的弱い電界に切り換えて測定を開始する。これは、センサエレメントに堆積する煤粒子が飽和して、燃焼再生させるまでの期間を延長させるためである。トリガ閾値の設定は、DPFの前に配置されるか、後置されるかによって異なり、トリガ閾値に達するまでの捕集時間を最小化するようにセンサ感度領域を調整する。
また、特許文献3には、櫛状の測定電極表面に保護層を形成した構成において、製法として、スクリーン印刷の他、CVD、PVDによる方法により、測定電極間の間隔を小さくし、例えば20〜40μmとできることが記載されている。
特開昭59−197847号公報 特表2008−502892号公報 特開2009−85959号公報
電気抵抗式のセンサは、簡易な構成で比較的安定した出力が得られる利点があるものの、図15において、絶縁基板100上にPM粒子が堆積し、一対の櫛形電極101、102間が導通するまでは、電気抵抗値の変化が検出されない。このため、PMの検出を早期に可能とすることが課題であり、特許文献2では、印加電圧を高めて煤粒子を引き付けやすくする制御を行っている。ところが、電荷を帯びたPM粒子は、電界の強い電極101、102に引き付けられるため、その近傍により堆積しやすく、特許文献2中に図示されるように絶縁基板100の表面全面にPM粒子を均一に堆積することは容易でない。
また、OBDによる故障診断は、通常、20μm以下の微粒状PM粒子のすり抜けを監視しており、電極101、102の間隔がより小さければ、早期検出が可能になる。しかしながら、特許文献1、2に記載される従来のスクリーン印刷による方法では、電極101、102の印刷幅や間隔に制約があり、一般に50μm以下とすることは困難である。また、特許文献3に記載されるように、PVD法、CVD法といった薄膜形成技術を利用することも可能であるが、電極間隔は20〜40μmとされており、また、専用の装置が必要であり、生産コストが高くなる。
そこで本発明は、内燃機関の排気ガス中のPM検出に用いられる電気抵抗式の粒子状物質検出センサにおいて、PM粒子をセンサ表面の一対の検出電極間に速やかに堆積させて、センサ感度を向上させること、また、一対の検出電極の間隔をより小さくして、DPFからの微粒状PM粒子のすり抜けといった、異常を速やかに検出可能な構成とすること、さらには、そのような構成の粒子状物質検出センサを、複雑な生産工程を必要とすることなく、比較的低コストで製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の発明は、被測定ガス中の粒子状物質を検出するセンサ素子部を備える粒子状物質検出センサであって、該センサ素子部は、
絶縁性基体の一面を粒子状物質検出面とし、該粒子状物質検出面に、異なる極性を持つ検出電極を対向させて交互に配設した粒子状物質検出部を有しており、
上記粒子状物質検出面において、上記検出電極は、その少なくとも一部が上記絶縁性基体の内部に埋設配置されていることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の発明において、上記絶縁性基体は、複数の絶縁基板を積層して直方体形状としたものであり、上記検出電極は、上記複数の絶縁基板の層間に保持されている。
本発明の請求項3に記載の発明において、上記検出電極は、上記絶縁基板の表面に形成した電極膜からなり、該電極膜を、上記粒子状物質検出面に面する上記絶縁基板の端縁部に沿って配置する。
本発明の請求項4に記載の発明において、上記粒子状物質検出部は、異なる極性を持つ複数組の上記検出電極が、上記絶縁基板を挟んでその積層方向に対向している。
本発明の請求項5に記載の発明において、異なる極性を持つ1組の上記検出電極の間隔が20μm以下である。
本発明の請求項6に記載の発明において、同じ極性を持つ上記検出電極は、上記絶縁基板に形成したスルーホールを介して互いに接続される。
本発明の請求項7に記載の発明において、上記粒子状物質検出面は、上記絶縁性基体の側面または端面にて形成される。
本発明の請求項8に記載の発明は、被測定ガス中の粒子状物質を検出するセンサ素子部を備え、該センサ素子部が、絶縁性基体の一面を粒子状物質検出面とし、該粒子状物質検出面に、異なる極性を持つ検出電極を交互に対向させて配設した粒子状物質検出部を有する粒子状物質検出センサの製造方法であって、
複数の絶縁基板の表面に、該絶縁基板の側縁部または端縁部に沿うように電極膜を形成し、該電極膜の近傍に板面を貫通するスルーホールを形成する工程と、
上記複数の絶縁基板を積層して、上記絶縁性基体を構成するとともに、上記粒子状物質検出面となる側面または端面に、上記電極膜の縁部を露出させて上記検出電極とし、積層方向に交互に位置する上記検出電極同士を上記スルーホールを介して電気的に接続する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の請求項1に記載の粒子状物質検出センサは、検出電極を絶縁性基体の内部に埋設して粒子状物質検出部を構成したので、粒子状物質検出面において、異なる極性を持つ検出電極の間に介在する絶縁性基体に誘電分極が生じる。このため静電力で粒子状物質を引き付ける力が強くなり、検出電極の表面のみならず、対向電極間の絶縁性基体にも粒子状物質が付着しやすくなる。したがって、静電捕集力と実効面積が強まり、対向する検出電極間を速やかに導通させることができるので、高い検出感度が得られる。よって、例えば内燃機関の排気浄化システムに適用されて、排出ガスに含まれるPM粒子を早期に検出することができる。
本発明の請求項2に記載の発明では、絶縁性基体は、複数の絶縁基板を積層して構成されるので、その層間に検出電極を配置することで、容易に検出電極を絶縁性基体内に埋設した構成とすることができる。
本発明の請求項3に記載の発明では、検出電極は、絶縁基板の表面に形成した電極膜であり、電極膜の1辺を絶縁基板の端縁に沿って配置して積層することで、絶縁基板を挟んで検出電極を対向配置することができる。また、対向する検出電極の間隔は、絶縁基板の厚みとなるので、例えば印刷形成される従来センサでは困難であった50μm以下とすることができ、電極間隔を小さくしてより高感度なPMセンサを実現できる。
本発明の請求項4に記載の発明では、複数組の検出電極を積層方向に配置したので、粒子状物質検出部の実効面積が増加し、被測定ガス中の粒子状物質を捕捉しやすくなるので、検出感度が向上する。
本発明の請求項5に記載の発明では、対向する検出電極の間隔を20μm以下としたので、例えば、排気浄化システムにおいてDPFをすり抜ける微小PM粒子を、素早く検出することが可能となる。
本発明の請求項6に記載の発明では、同じ極性を持つ検出電極同士を、絶縁性基体の内部においてスルーホールにより容易に接続することができる。この場合、外部にリード部を形成する必要がないので、絶縁保護膜も不要であり、構成が簡易にできる。
本発明の請求項7に記載の方法によれば、複数の絶縁基板に電極膜とスルーホールを所定パターンで形成し、積層するだけで、絶縁性基体の側面または端面に複数の検出電極を対向させた粒子状物質検出部を構成することができる。そして、絶縁基板を挟んで検出電極が対向するので、絶縁基板の分極による静電捕集力で、速やかに粒子状物質を検出できる。また、絶縁基板の厚みによって電極間隔を調整できるので、50μm以下、さらには20μm以下の電極間隔を精度よく実現して、検出感度を大幅に向上できる。また、同じ極性の検出電極をスルーホールを介して、積層と同時に絶縁性基体の内部で接続することができ、工程を複雑化することなく、簡易な方法で高性能なセンサ素子部を製造することができる。
本発明の第1実施形態であり、(a)は、PMセンサの主要部であるセンサ素子部の部分拡大図、(b)は、センサ素子部の概略構成を示す全体斜視図、(c)は、センサ素子部の分解斜視図である。 (a)は、PMセンサを排気管に取り付けた状態を示す拡大断面図であり、(b)は、本発明が適用される自動車用ディーゼルエンジンの排ガス浄化システムの全体構成を示す概略図である。 (a)は、本発明の効果を説明するための図で、検出部の構成を模式的に示す要部斜視図および断面図、(b)は、従来のPMセンサにおける検出部の構成を模式的に示す要部斜視図および断面図である。 (a)は、本発明の効果を説明するための図で、検出部の構成を模式的に示す要部斜視図および断面図、(b)は、従来のPMセンサにおける検出部の構成を模式的に示す要部斜視図および断面図である。 (a)〜(c)は、検出部の電極配置の他の例を示す模式的な図である。 本発明の第2実施形態であり、(a)は、PMセンサの主要部であるセンサ素子部の概略構成を示す全体斜視図、(b)は、センサ素子部の分解斜視図である。 (a)は、センサ素子部の製造工程を説明するための概略構成図、(b)は、印刷パターンの例を示す平面図である。 (a)は、第1実施形態のセンサ素子部の分解斜視図、(b)は、第2実施形態のセンサ素子部の分解斜視図である。 (a)は、第1実施形態の検出部の電極配置を示す模式的な図、(b)は、検出部の電極配置の他の例を示す模式的な図である。 本発明の第3実施形態であり、(a)は、PMセンサの主要部であるセンサ素子部の概略構成を示す全体斜視図、(b)は、センサ素子部の分解斜視図である。 (a)は、第3実施形態のセンサ素子部の製造工程の一部を説明するための概略構成図、(b)は、(a)のA、Bの電極パターンを用いた積層工程を説明するためのセンサ素子部の分解斜視図であり、(c)は、(a)のCの電極パターンによる積層例を示すセンサ素子部の概略断面図である。 (a)は、検出電極の間隔と捕捉する粒子状物質の粒径との関係を説明するための検出部の概略構成図、(b)は、センサ素子部の製造工程における絶縁性基体と検出電極の熱膨張の関係を説明するためのセンサ素子部の部分概略断面図である。 (a)、(b)は、検出電極の間隔および検出電極の突出高さと、捕捉する粒子状物質の粒径との関係を説明するための検出部の概略構成図である。 本発明の第4実施形態であり、PMセンサの主要部であるセンサ素子部の概略構成を示す分解斜視図と追加可能な各部構成を示す平面図である。 従来のPMセンサの主要部であるセンサ素子部の全体概略構成を説明するための平面図である。
以下、本発明の粒子状物質検出センサを、内燃機関の排ガス浄化システムへ適用した第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1(a)〜(c)は、粒子状物質検出センサとしてのPMセンサSの主要部である、センサ素子部1の概略構成を示している。図2(b)は、内燃機関である自動車用ディーゼルエンジンE/Gのシステム概略図であり、図2(a)は、図2(b)の要部を拡大した図で、エンジンE/Gの排気管EXに、PMセンサSを取り付けた状態を示す。
図2(b)のエンジンE/Gは、各気筒に共通のコモンレールRに、高圧ポンプにて昇圧した高圧燃料を所定の噴射圧となるように蓄圧するコモンレール燃料噴射システムを採用し、インジェクタINJによって燃焼室内に直接噴射する直噴エンジンとして構成されている。PMセンサSは、エンジンE/Gの排気通路である排気管EXにおいて、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFの下流に設けられ、エンジンE/G各部とともに制御装置ECUによって制御される。制御装置ECUは、PMセンサSの出力に基づき粒子状物質PMを検出する一方、PMセンサSの異常検出機能を備えており、この詳細については後述する。
まず、図2(b)において、エンジンE/Gのシステム構成について説明する。エンジンE/Gの排気マニホールドMHEXには、タービンTRBが設けられ、タービンTRBに連動して過給器TRBCGRが回転すると、圧縮された空気がインタクーラCLRINTを通過して吸気マニホールドMHINに送られる。排気マニホールドMHEXから排出される燃焼排気の一部はEGRバルブVEGRおよびEGRクーラCLREGRを介して吸気マニホールドMHINに還流する。過給により吸気量を増大して燃焼効率を高め、EGRにより燃焼を緩やかにしてNOx等の排出を抑制する。
排気マニホールドMHEXに接続する排気管EXには、ディーゼル酸化触媒DOCおよびディーゼルパティキュレートフィルタDPFが設けられ、燃焼排気ガスを処理する。すなわち、排気管Eに排出された燃焼排気ガスは、上流側のディーゼル酸化触媒DOCを通過する間に、未燃焼の炭化水素HC、一酸化炭素COおよび一酸化窒素NOが酸化され、下流側のディーゼルパティキュレートフィルタDPFを通過する間に、煤粒子(Soot)、可溶性有機成分(SOF)および無機成分からなる粒子状物質PMが捕集される。
ディーゼル酸化触媒DOCは公知のモノリス担体、例えばコーディエライト等のセラミックハニカム構造体よりなる担体表面に、酸化触媒を担持してなる。ディーゼル酸化触媒DOCは、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFの強制再生時に、供給される燃料の酸化燃焼により排気温度を上昇させ、あるいは粒子状物質PM中のSOF成分を酸化除去する。また、NOの酸化により生成するNOは、後段のディーゼルパティキュレートフィルタDPFに堆積した粒子状物質PMの酸化剤として使用され、連続的な酸化を可能にする。
ディーゼルパティキュレートフィルタDPFは、公知のウォールフロータイプのフィルタ構造を有する。例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスよりなる多孔質セラミックハニカム構造体を成形し、ガス流路となる多数のセルの入口側または出口側のいずれか一方を、隣接するセルで互い違いになるように目封じしてフィルタとする。この時、ガス流路を区画するセル壁を貫通して多数の細孔が形成され、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFに導入される排出ガス中の粒子状物質PMを捕獲する。ディーゼル酸化触媒DOCとディーゼルパティキュレートフィルタDPFを一体化した連続再生式ディーゼルパティキュレートフィルタとして構成することもできる。
排気管EXには、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFに堆積した粒子状物質PMの量を監視するために、差圧センサSPが設けられる。差圧センサSPは、圧力導入管を介してディーゼルパティキュレートフィルタDPFの上流側および下流側と接続されており、その前後差圧に応じた信号を出力する。また、ディーゼル酸化触媒DOCの上流および、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFの上下流には、温度センサS1、S2、S3が配設されて、各部の排気温度を監視している。
制御装置ECUは、これら出力に基づいてディーゼル酸化触媒DOCの触媒活性状態やディーゼルパティキュレートフィルタDPFのPM捕集状態を監視し、PM捕集量が許容量を超えると、強制再生を行って粒子状物質PMを燃焼除去する再生制御を実施する。さらに制御部2には、エンジンE/Gの運転状態を知るための各種センサ信号、例えばエアフロメータAFMからの吸気量や吸気温度、エンジン潤滑油や冷却水の温度、エンジン回転数、スロットル開度等が入力している。制御装置ECUは、これら信号に基づいて燃料噴射量、噴射時期等を算出し、燃料噴射を制御する。
図2(a)において、PMセンサSは、排気管EXの管壁に螺結される筒状ハウジング50を有し、その内部に筒状インシュレータ60に挿入固定されたセンサ素子部1の上半部を保持している。センサ素子部1の下半部は、筒状ハウジング50の下端部に固定されて排気管EX内に突出する中空のカバー体40内に位置している。カバー体40の底部および側部には、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFを通過した被測定ガス、すなわち粒子状物質PMを含む排出ガスが流出入するための通孔410、411が穿設されている。
本実施形態のPMセンサSは、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFを通過して下流側にすり抜ける粒子状物質PMを、センサ素子部1にて検出する。図1(b)において、センサ素子部1は、直方体形状の絶縁性基体10の一面を粒子状物質検出面(図の手前側面)21とし、その先端側(図の右端側)の端部表面に、粒子状物質検出部(以下適宜、検出部という)2を有している。図1(a)において、検出部2は、粒子状物質検出面21に、所定間隔をおいて平行に配置された複数の検出電極e1〜e5を有し、これら検出電極e1〜e5は、交互に異なる極性を持つとともに、電極表面が、粒子状物質検出面21の表面と面一となるように、その全体がアルミナ等の絶縁材料よりなる絶縁性基体10の内部に埋設されている。
図1(c)に示すように、絶縁性基体10は、複数の長方形状の絶縁基板11〜16を積層して構成される。検出電極e1〜e5は、それぞれ絶縁基板11〜15の上表面に、例えばスクリーン印刷により形成される電極膜からなり、2種類のパターンの電極膜eA、eBを、図示するように積層方向に交互に配置している。電極膜eA、eBは、対称な略台形状で、長辺が絶縁基板11〜15の上側縁の同一位置にあり、短辺は左右にずれた配置として、その近傍に板面を貫通するスルーホール1A、1Bが形成されている。ここでは、絶縁基板11、13、15に電極膜eAとスルーホール1Aを、絶縁基板12、14に電極膜eBとスルーホール1Bを形成している。スルーホール1Aは電極膜eBと、スルーホール1Bは電極膜eAと対向する位置にある。さらに、電極膜eAが形成される絶縁基板11、13、15のうち最上層の絶縁基板15に、電極膜eAから長手方向の端縁(図の左端縁)に至る引き出し電極22を形成するとともに、電極膜eBが形成される絶縁基板12、14のうち最下層の絶縁基板12に、電極膜eBから長手方向の端縁(図の左端縁)に至る引き出し電極23を、例えばスクリーン印刷により形成する。
そして、絶縁基板11を最下層として、その上に絶縁基板12〜15と、絶縁基板16を順に積層する。これにより、検出電極e1、e3、e5(電極膜eA)は、その上下に位置するスルーホール1Bに充填される導電材を介して、互いに電気的に接続され、引き出し電極22により外部へ接続可能となる。また、検出電極e2、e4(電極膜eB)は、その上下に位置するスルーホール1Aに充填される導電材を介して、互いに電気的に接続され、引き出し電極23により外部へ接続可能となる。
引き出し電極22、23は、図1(b)の電源部31に接続されて電源供給を受けるようになっている。また、抵抗測定部(電気特性測定部)32に接続されて、検出部2の電気特性、具体的には、検出電極e1〜e5の対向電極間の抵抗値を測定する。ここで、検出電極e1〜e5間の距離は一定であり、対向する検出電極e1と検出電極e2、検出電極e2と検出電極e3、検出電極e3と検出電極e4、検出電極e4と検出電極e5は、互いに極性が異なっている。また、極性の同じ検出電極e1、e3、e5は引き出し電極22に、検出電極e2、e4(電極膜eB)は引き出し電極23に、それぞれ並列接続している。したがって、粒子状物質検出面21が粒子状物質PMを含む雰囲気に晒された時に、検出電極e1〜e5の対向電極間の抵抗値を測定し、その変化から粒子状物質PMの堆積を検出することができる。
次に、上記構成のセンサ素子部1を備えるPMセンサSの基本作動と作用効果について、説明する。図2(a)、(b)において、被被測定ガスとなるエンジンE/Gの排出ガスは、PMセンサSのカバー体40の上流側の通孔411から内部に導入され、センサ素子部1と接触した後、底面の通孔410または下流側の通孔411から排出される。この時、粒子状物質PMを確実に捕捉するため、図示するように、センサ素子部1の粒子状物質検出面21が排気管EXの上流側を向くように配置するとよい。DPFで捕集されずに下流側へすり抜けてきた粒子状物質PMは、センサ素子部1の検出部2に到達すると、検出電極e1〜e5の表面および電極間の粒子状物質検出面21表面に付着し、堆積していく。
図3(a)は、本発明の検出部2の構造を模式的に示す図である。図中、検出電極e1、e2は、全体が絶縁性基体10に埋設されており、粒子状物質検出面21に露出する検出電極e1、e2の表面は、絶縁性基体10を構成する絶縁基板11、12、13の表面と同一面内にある。すなわち、検出電極e1、e2の間に、絶縁性基体10を構成する絶縁基板12が存在するので、図1(b)の電源部31の正極、負極にそれぞれ接続すると、検出電極e1、e2の間において絶縁基板12が誘電分極する。この時、検出部2の近傍に到達する粒子状物質PMは、検出電極e1、e2のみならず絶縁基板12の表面にも電気的に引き付けられるので、粒子状物質PMを捕集する能力が高まる。この静電捕集力と静電捕集の実効面積の増加により、検出電極e1、e2間に粒子状物質PMが速やかに堆積し、検出電極e1、e2間が素早く導通する。この際の電気特性の変化から、粒子状物質PMのすり抜けといった異常を早期に検知することができる。
これに対して、図3(b)に従来センサの検出部の構造を模式的に示す。図示するように、従来センサでは、絶縁基板100の表面に、一対の電極101、102を構成する電極膜がスクリーン印刷により積層形成される。この時、電極101、102は、絶縁基板100の表面から上方に突出して位置し、その対向面間は空間となっていて、絶縁基板100は分極しないので、粒子状物質PMを捕集する能力が低い。また、粒子状物質PMは電極101、102に引き付けられやすくなるので、粒子状物質PMが均等に堆積しない。このため、電極101、102間が導通するまでに、本発明の構成よりも時間がかかり、異常を早期検出することが難しい。
図3(a)では、検出電極e1、e2のみを示したが、検出電極e1〜e5の隣合う1組のいずれについても、同様の分極効果が得られる。また、このような分極構造の違いに加え、本発明では、図4(a)、(b)に示すように、検出電極e1、e2の距離を従来よりも小さくすることができる。図4(b)に示す従来センサは、絶縁基板100の表面にスクリーン印刷にて電極101、102を形成しており、この作製方法で、両電極間の短絡等を抑制し、絶縁を確保しようとすると、両者の間隔を50μm以下とするのは困難である。
一方、本発明の検出部2は、図1(c)に示したように、検出電極e1〜e5間の間隔が、絶縁基板11〜15の厚みによって決まる。この場合、絶縁基板11〜15の厚みは、任意に調整することができるので、対向する電極の間隔も任意であり、絶縁基板11〜15の厚みを50μm以下とすることで、容易に電極間隔を50μm以下とすることができる。また、電極間に絶縁基板11〜15が介在するので、両電極間の絶縁を容易に確保できる。したがって、検出対象となる粒子状物質PMの粒径や用途に応じて、対向電極の間隔を適宜設定すればよい。例えば、図2(b)のようにDPFの後流に配置して、粒子状物質PMのすり抜けを検出する場合には、電極間隔をできるだけ小さく設定するのがよく、通常は、検出電極e1〜e5の電極間隔を20μm以下、好ましくは10μm以下となるように作製することで、従来より素早い検出が可能になり、検出感度を大幅に向上することができる。
本実施形態では、検出部2に検出電極e1〜e5を設け、4組の対向電極を有する構成としたが、電極配置は、必要により適宜変更することができる。検出部2は、少なくとも1組の対向電極を有していればよく、例えば、図5(a)に示すように、検出部2に極性の異なる検出電極e1〜e3を交互に配置し、絶縁性基体10に2組の対向電極を埋設した構成とすることができる。また、検出電極の数は任意に設定することができ、図5(b)に示すように、検出電極e1〜enを絶縁性基体10に埋設し、n組の対向電極を設けた構成としてもよい。この時、図5(a)、(b)では電極間隔を一定としている。あるいは、電極間隔は一定でなくてもなく、5(c)のように、検出電極e1、e2と検出電極e3、e4を同間隔とし、検出電極e2、e3の間隔をより広くすることもできる。
図6に本発明の第2実施形態を示す。上記第1実施形態では、検出部2をセンサ素子部1の側面に配置したが、図6(a)に示すように、センサ素子部1の長手方向の端面を粒子状物質検出面24として検出部2を構成することもできる。検出部2は、検出電極e1〜e5が絶縁性基体10に埋設されて、その表面が粒子状物質検出面24と面一となっており、長手方向の反対側の端部にて、外部の電源部31、抵抗測定部32に接続される構成は、上記第1実施形態と同様である。
図6(b)に示すように、本実施形態においても、絶縁基板11〜15に電極膜eA、eBを交互に形成し、積層して絶縁基板16を最上層に配置する。この際に、電極膜eA、eBの略台形の長辺が、粒子状物質検出面24の端縁に位置するようにパターン印刷することで、図6(a)の構成とすることができる。図2(a)のPMセンサSに適用する場合には、第1実施形態のようにセンサ素子部1の検出部2が側面にあると、排気流れが衝突して粒子状物質PMを捕捉しやすい。このため、DPFをすり抜けた粒子状物質PMをより早く検知したい場合に適している。一方、本実施形態の検出部2は、PMセンサSの底面に位置することになり、排気流れと対向しないため第1実施形態ほど高い検出感度とはならないものの、カバー体40内部に流入する排気中のPM濃度に応じた出力が得やすい利点がある。
このように、センサ素子部1の検出部2は、用途や検出目的に応じて、側面または端面に配置することができる。さらに、第2実施形態の端面に設ける構成と、側面に配置する第1実施形態の構成を組み合わせることもできる。この場合は、粒子状物質PMを捕捉する検出部2の面積が拡大することで、粒子状物質PMの早期検出を図ることができる。あるいは、側面の検出部2と端面の検出部2に対して、引き出し電極22、23と抵抗測定部32をそれぞれ設け、検出電極e1〜e5の電極間隔を別々に設定することもできる。例えば、側面の検出部2において電極間隔をより小さくして、粒子状物質PMの早期検出を行い、端面の検出部2において電極間隔をより大きくして、粒子状物質PMの堆積量を測定する構成としてもよい。
次に、図7、8を用いて、シート積層法によるセンサ素子部1の作製方法の一例について、詳細に説明する。図7(a)は、絶縁性基体10を構成する絶縁基板17、18に検出電極e1、e2となる電極膜eA、eBを形成する工程を示しており、まず、1)のシート成形工程において、公知のドクターブレード法を用い、絶縁基板17、18となるセラミックシートをフィルム上に成形する。セラミックシート材料には、電気絶縁性および耐熱性に優れたセラミック材料が用いられ、例えば誘電率の高いチタン酸バリウム等や高誘電率材料とアルミナやジルコニアを混合したセラミック材料等が好適に用いられる。シート厚みは、上述したように対向電極の間隔を決定するので、焼結後に所定の電極間隔、例えば10μm以下となるように、セラミック材料塗布時のブレードギャップ、塗布速度等から調整することが好ましい。また、グリーンシートの塗布精度は、ブレードギャップの平行度調整等により、絶縁層厚み精度R%を10%以下にすることが好ましい。
2)のスルーホール形成工程では、フィルム上に成型されたセラミックシートを、絶縁基板17、18のサイズに合わせて打ち抜き、また、パンチングを施してスルーホール1A、1Bをそれぞれ設ける。ここで、スルーホールを形成する箇所、大きさは任意に設定可能であり、通常は2個以上あれば良い。例えば、スルーホールを4箇所以上設けることで、補助的な導通経路等を与えることもできる。
次いで、3)の電極印刷形成工程にて、AおよびBの2種類のパターンで電極膜eA、eBを印刷する。A、Bパターンは対称な略台形状で、Aパターン(電極膜eA)はスルーホール1Aを避けた位置、Bパターン(電極膜eB)はスルーホール1Bを避けた位置にそれぞれ設けられる。電極材料には、例えば白金等の貴金属を含む導電性金属が好適に用いられ、これをペースト状とした電極ペーストを、所定のパターンに印刷すればよい。これを繰り返してセンサ素子部1の構成に応じた枚数の絶縁基板17、18を用意し、さらに引き出し電極22、23を形成して積層する。
この時、図7(b)のように、矩形のグリーンシートを用いてその表面に、絶縁基板17、18に対応するA、Bパターンを複数個分、同時に印刷し、積層した後に素子サイズに切り離すようにすると、一度に多数のセンサ素子部1を効率よく製造することができる。また、A、Bパターンに接続する引き出し電極22、23を形成した絶縁基板17’、18’も、同様にして作成することができる。A、Bパターンは略台形状に限るものではないが、電極ペーストの塗布面積を小さくし、検出電極e1〜e5長を確保できるので有利である。
図8に示すように、このようにして得られた絶縁基板17、18、絶縁基板17’、18’を、電極膜eA、eBが交互に配置されるように積層することで、同極間がスルーホール1Aまたは1Bで連結された素子構造が容易に作製できる。図8(a)では、絶縁基板18’、絶縁基板17、絶縁基板18、絶縁基板17’を、下層からこの順に積層し、最上層に絶縁基板19を重ねて、長手方向の端面を粒子状物質検出面24とするセンサ素子部1を構成している。あるいは、図7(b)において、A、Bパターンの印刷向きを90度回転させることで、図8(b)のように、側面に粒子状物質検出面21を有するセンサ素子部1を構成することができる。
上記各実施形態では、図9(a)に示すように、絶縁性基体10の粒子状物質検出面において、検出部2の検出電極e1〜enのエッジが積層方向(図中矢印)に対して整列している構成としたが、検出部2における電極配置は任意であり、適宜変更することができる。図9(b)に示すように、粒子状物質検出面において、正極と負極が積層方向に対向していれば、検出電極e1〜enのエッジが全て整列している必要はない。ここでは、正極は図の右方寄りに、負極は図の左方寄りに配置して、それぞれのエッジを積層方向に整列させている。
図10、11は、本発明の第3実施形態であり、図9(b)の電極配置を利用した例である。図10(b)に示すように、本実施形態のセンサ素子部1は、絶縁性基体10の手前側面を粒子状物質検出面25としており、その左端側に検出電極e1〜e8が露出する検出部2を設けている。検出部2の検出電極e1〜e8は、図10(a)に模式的に示すように、絶縁性基体10を構成する絶縁基板11〜19に挟持されるように積層され、表面が粒子状物質検出面25と面一となるように埋設配置されている。また、絶縁性基体10の内部において電源部31、抵抗測定部32と接続される構成は、上記各実施形態と同様である。
図11は、第3実施形態のセンサ素子部1を作製するための、電極パターンと積層構造を示したものである。図11(a)は、上記図7の1)のシート成形工程、2)のスルーホール形成工程、3)の電極印刷形成工程に対応しており、2)のスルーホール形成位置と、3)の電極パターン形状のみ異なっている。まず、1)のシート成形工程において、公知のドクターブレード法を用い、絶縁基板11、12となるセラミックシートをフィルム上に成形したら、2)のスルーホール形成工程で、セラミックシートを絶縁基板11、12のサイズに合わせて打ち抜き、パンチングでスルーホール1A’、1B’をそれぞれ設ける。スルーホール1A’、1B’は、上記図7のスルーホール1A、1Bよりもセラミックシートの側縁部に近い位置に形成するとよい。
次いで、3)の電極印刷形成工程にて、検出電極e1、e2となる電極膜eA’、eB’を印刷する。この時、電極膜eA’、eB’は、矩形の同一形状であり、A、Bパターンは、印刷位置のみが異なっている。すなわち、Aパターンは電極膜eA’とスルーホール1A’、Bパターンは電極膜eB’とスルーホール1B’が形成されたパターンである。絶縁基板13〜18についても、同様にして検出電極e3〜e8を形成する。その後、図11(b)のように、適宜、引き出し電極22、23を印刷形成し、A、Bパターンを交互に積層することで、図10の素子構造とすることができる。絶縁性基体10の端面に検出部2を有する素子構造も同様である。
あるいは、図11(a)において、A、Bパターンの代わりに、単一のCパターンを用いることもできる。この場合は、2)のスルーホール形成工程において、スルーホール1A’、1B’を図の左右方向にそれぞれ一対設けて、その内側のスルーホール1A’、1B’を含むように、絶縁基板11、12の中央に同一の矩形の電極パターンeCを形成する。これを、図11(c)のようにオフセットをかけて交互に積層することによっても、図10の素子構造とすることができ、Cパターンのみでよいので、製造工程がさらに簡易にできる。この時、電極パターンeCの中央部において、スルーホール1A’、1B’と同一ライン状に、電極を印刷しない一対の領域1Cを形成しておくと、オフセットを行った対極(上層の電極)のスルーホールと下層の電極が短絡しないようにすることができる。
いずれの製造工程による場合も、センサ素子部1を積層形成後、全体を高圧で油圧プレス機で一軸加圧することが好ましい。積層体シート間の接合力が弱い場合は、シップ機などを用い等方加圧することもできる。また、積層後、等方加圧のみ行う場合もある。積層体は、素子単位にスライサ、押し切り機等で切断加工する。切断バリは、乾式・湿式バレル研磨などで焼成前に除去することも可能である。
素子単位に切断された積層体は、焼成炉により、素子焼結温度で焼成することが好ましい。焼成雰囲気は、使用する検出電極e1〜en材料の酸化防止可能な酸素濃度に調整するとよい。焼成により絶縁性基体10が還元された場合、酸素濃度を上げ、アニール処理することも可能である。さらに、焼成後の検出電極e1〜enは、絶縁性基体10との熱膨張差により、絶縁性基体10の内部に凹んでいる場合がある。その場合、乾式・湿式バレル研磨、ミリング等により検出電極e1〜enを、絶縁性基体10表面に露出させることが可能である。
ここで、図12、13により、検出電極e1、e2の配置(電極間隔と電極高さ)と捕捉微粒子のサイズの関係について検討する。図12(a)のように、本発明において、検出しようとするPM粒子は、直径20μm以下の微粒状粒子である。一方、上述したように、本発明の構成では、検出電極e1、e2の間隔を10μm以下と小さくすることができ、また、検出電極e1、e2は、使用時の熱膨張により凸構造になると推察されるので、例えば、最大サイズの直径20μmの粒子状物質PMであれば、付着とほぼ同時に高速検出することが可能である。これについて、以下に説明する。
上述した方法により、センサ素子部1を製造する場合には、図12(b)のように、焼成・冷却過程において、検出電極e1、e2が絶縁性基体10の粒子状物質検出面21より内方に凹みやすい。これは、金属(検出電極e1、e2)とセラミックス(絶縁性基体10)とでは、一般に熱膨張率αが金属>セラミックスの関係にあり、検出電極e1、e2の収縮がより大きくなるためである。そこで、通常は、絶縁性基体10の表面を研磨し、平滑にすることにより、検出電極e1、e2と絶縁性基体10の粒子状物質検出面21が面一な製品とする。
一方、PMセンサSの使用時には、高温の排気ガスが流通する排気管EX内に設置されるため、センサ素子部1が熱膨張する。すると、熱膨張率α(金属>セラミックス)の関係から、検出電極e1、e2が絶縁性基体10の粒子状物質検出面21より突出する凸の構造になる。この時、図12(a)のように、検出電極e1、e2の間隔を10μm、捕捉微粒子は、直径20μmの球形と仮定すれば、電極高さが1.34μmあれば、1つの粒子の付着のみで検出電極e1、e2間を導通可能となることがわかる。
図13において、検出電極e1、e2を白金(Pt)、絶縁性基体10をアルミナ(Al)で構成し、熱膨張率αをそれぞれ9×10-6/℃(Pt)、7×10-6/℃(Al)、電極長さL=2000μm、使用温度425℃とすると、電極の突出高さΔTは、下記式で表される(ただし、Δα:熱膨張率の差、ΔT:使用温度と室温の差)。
ΔT=Δα×ΔT×L
=2×10-6×300×2000
=1.6μm
すなわち、直径20μmの微粒子の捕捉に必要な電極高さ1.34μmを満足することがわかる。このように本発明の構成では、検出電極e1〜enの全体が絶縁性基体10内に埋設される構成であっても、通常は、使用時に熱膨張差により粒子状物質検出面21より突出する。この構成は、比較的大きい粒子状物質PMを速やかに検知したい場合に有利であり、予め一部を突出させた構成とすることもできる。なお、図12(a)の電極凸構造とする場合、検出電極e1、e2の間のスペース(電極幅)を狭くするほど、電極使用量を削減することができる。製法上の限界は、絶縁層塗布厚みより、0.5μm程度である。逆に電極間隔を大きくし、例えば20μm程度とした場合でも、突出高さΔTが10μm程度となるようにすれば、直径20μmの微粒子の捕捉が可能である。ただし、突出高さΔTが大きいと変形による短絡のおそれが増加するので、極端に突出する構成とすることは望ましくない。
図14に、本発明の第4実施形態を示す。本発明では、上記各実施形態の構成に、従来の印刷による電極パターンを追加して、複数の検出部を形成することもできる。本実施形態は、上記図8(a)のセンサ素子部1を基本構成とするもので、電極膜eBと引き出し電極23が形成された絶縁基板18’上に、電極膜eA、eBをそれぞれ形成した絶縁基板17、絶縁基板18と、電極膜eAと引き出し電極22を形成した絶縁基板17と、絶縁基板19とを積層して、粒子状物質検出面24となる図の左端面に検出部2を形成している。さらに、最上層の絶縁基板19上面には、一対の櫛歯状の捕捉電極71、72がスクリーン印刷により形成されて、第2の検出部7を構成している。第2の検出部7から長手方向の端縁に至るリード部73は、図示しない電源部に接続され、捕捉電極71、72間の抵抗変化を測定する。
第2の検出部7は、最下層の絶縁基板18’の下面に形成することもできる。これにより、センサ素子部1の端面と側面に複数の検出部を有するPMセンサを容易に形成することができる。電極間隔の小さい本発明の検出部2に対して、通常、第2の検出部7は電極間隔が広くなるので(通常50μm以上)、例えば、検出部2にて粒子状物質PMの早期検出を行い、第2の検出部7にて粒子状物質PMの堆積量を測定するといった使い分けが可能となる。なお、第2の検出部7の形成領域を除く表面を、絶縁保護膜で被覆すると、リード部73間に粒子状物質PMが堆積することによる誤検出を防止することができる。
さらに、ヒータ部8を内蔵する構成とすることもできる。ヒータ部8は、例えば、引き出し電極22、23が形成されない中間層の絶縁基板17、18の板面を利用して、電極膜eA、eBの近傍にヒータ電極81をパターン形成し、長手方向の端縁に至るリード部82を形成して図示しない電源部に接続すればよい。あるいは、ヒータ電極81およびリード部82を形成した別の絶縁基板を、センサ素子部1を構成する絶縁基板17〜19のいずれかの間に挿置してもよい。ヒータ部8を設けることにより、センサ素子部1を粒子状物質PMの検出に適した所定温度にすることができ、検出後に付着した粒子状物質PMの除去も容易になる。
ヒータ部8を、センサ素子部1を構成する絶縁基板17〜19を利用して、積層方向に形成することもできる。例えば、中間層の絶縁基板17、18にそれぞれヒータ電極膜83を形成し、層間を連結するスルーホール84、85を絶縁基板17、18で互い違いとなる位置に設けて、図示するように多数積層することで、ヒータパターンを形成することができる。この構成では、ヒータ部8が積層方向に形成されるので、センサ素子部1全体を均等に加熱することができる。
このようにして形成される本発明の粒子状物質検出センサは、内燃機関の排気浄化装置に適用されて、排出される粒子状物質の検出に好適に利用される。具体的には、DPFの下流に設置されて、DPFの異常検出に利用することができる。あるいは、DPFの上流に設置されて、DPFに流入する粒子状物質PMを直接検出するシステムに利用することもできる。
DPF ディーゼルパティキュレートフィルタ
ECU 制御装置
EX 排気管
E/G ディーゼルエンジン
S PMセンサ(粒子状物質検出センサ)
e1〜e5 検出電極
eA、eB 電極膜
1 センサ素子部
1A、1B スルーホール
10 絶縁性基体
11〜19 絶縁基板
2 粒子状物質検出部
21、24 粒子状物質検出面
31 電源部
32 抵抗測定部
40 カバー体
410、411 通孔
50 ハウジング
60 インシュレータ
7 第2の検出部
8 ヒータ部

Claims (8)

  1. 被測定ガス中の粒子状物質を検出するセンサ素子部を備える粒子状物質検出センサであって、該センサ素子部は、
    絶縁性基体の一面を粒子状物質検出面とし、該粒子状物質検出面に、異なる極性を持つ検出電極を対向させて交互に配設した粒子状物質検出部を有しており、
    上記粒子状物質検出面において、上記検出電極は、その少なくとも一部が上記絶縁性基体の内部に埋設配置されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ。
  2. 上記絶縁性基体は、複数の絶縁基板を積層して直方体形状としたものであり、上記検出電極は、上記複数の絶縁基板の層間に保持されている請求項1記載の粒子状物質検出センサ。
  3. 上記検出電極は、上記絶縁基板の表面に形成した電極膜からなり、該電極膜を、上記粒子状物質検出面に面する上記絶縁基板の端縁部に沿って配置する請求項2記載の粒子状物質検出センサ。
  4. 上記粒子状物質検出部は、異なる極性を持つ複数組の上記検出電極が、上記絶縁基板を挟んでその積層方向に対向している請求項2または3記載の粒子状物質検出センサ。
  5. 異なる極性を持つ1組の上記検出電極の間隔が20μm以下である請求項4記載の粒子状物質検出センサ。
  6. 同じ極性を持つ上記検出電極は、上記絶縁基板に形成したスルーホールを介して互いに接続される請求項2ないし4のいずれか1項に記載の粒子状物質検出センサ。
  7. 上記粒子状物質検出面は、上記絶縁性基体の側面または端面にて形成される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粒子状物質検出センサ。
  8. 被測定ガス中の粒子状物質を検出するセンサ素子部を備え、該センサ素子部が、絶縁性基体の一面を粒子状物質検出面とし、該粒子状物質検出面に、異なる極性を持つ検出電極を交互に対向させて配設した粒子状物質検出部を有する粒子状物質検出センサの製造方法であって、
    複数の絶縁基板の表面に、該絶縁基板の側縁部または端縁部に沿うように電極膜を形成し、該電極膜の近傍に板面を貫通するスルーホールを形成する工程と、
    上記複数の絶縁基板を積層して、上記絶縁性基体を構成するとともに、上記粒子状物質検出面となる側面または端面に、上記電極膜の縁部を露出させて上記検出電極とし、積層方向に交互に位置する上記検出電極同士を上記スルーホールを介して電気的に接続する工程と、を有することを特徴とする粒子状物質検出センサの製造方法。
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