JP2012072487A - 平版印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

平版印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐インク汚れ性に優れ、長期間保管後における感光層の局所的な欠陥を生じ難く、粗面化処理後のピットの均一性に優れた平版印刷版用アルミニウム合金板、ならびに、その製造方法を提供する。
【解決手段】Fe、Si、Cu、Tiならびに、B及びCから選択される1種以上を所定量含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる平版印刷版用アルミニウム合金板において、アルミニウム合金板中に存在する炭化アルミニウムの濃度が8ppm以下であり、粗面化処理後におけるアルミニウム合金板表面に存在する凝集物のアルミニウム合金板表面における任意の半径5μmの円に対する面積占有率が10%未満であるか、或いは、面積占有率が10%以上の場合には凝集物が1〜2個/50cm存在することを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板、ならびに、その製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、粗面化処理を施したアルミニウム合金板表面に陽極酸化処理を施し、更に感光性物質を塗布して形成される平版印刷版に使用されるアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。より詳細には、粗面化後におけるピット均一性、非画像部における耐インク汚れ性及び長期保管後における感光層の耐欠陥性に優れた平版印刷版用アルミニウム合金板、ならびに、その製造方法に関する。
一般に平版印刷版は、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に粗面化処理、陽極酸化皮膜処理などの表面処理を施してなる支持体上に、感光性物質を塗布して用いられる。このような平版印刷版のうちで一般に広く用いられているのは、予め支持体上に感光性物質を塗布しておき、直ちに焼き付けられる状態とした、所謂PS(Pre−Sensitized)版である。
このような平版印刷版を実際に印刷版として使用するにあたっては、露光、現像、ガム引き等の製版処理が施される。ここで画像部は、現像処理において感光層が溶解せずにインクを受容する親油性画像部となることによって形成される。一方、非画像部は、現像処理により感光層が除去されて陽極酸化膜が露出することにより、湿し水を受容する親水性非画像部として形成される。このようにして作製される印刷版は、印刷機の回転する円筒形版胴に巻付けて、湿し水の存在下でインクを画像部上に付着させ、ゴムブランケットに転写して紙面に印刷することになる。
従来、このような用途のアルミニウム合金板としては、JIS1050、JIS1100、JIS3003等のアルミニウム合金が主として用いられている。これらのアルミニウム合金板は、通常、表面を機械的方法、化学的方法及び電気化学的方法のいずれか一つ又は二つ以上を組合せた工程による粗面化処理方法によって粗面化される。その後、必要に応じて陽極酸化処理、親水化処理が施されて平版印刷版用支持体とされる。このようにして得られる平版印刷版用支持体の表面に感光塗膜を設け、画像露光と現像により印刷原版が得られる。
最近では、より鮮明な印刷と、同じ版を用いてより多くの部数の印刷を行うことが強く要望されている。この要望に応えるためには、印刷中の非画像部にインク汚れが生じない、すなわち耐インク汚れ性に優れていることが重要となる。そのため最近では、レーザ書き込み装置等を用いて直接感光層に画像を書き込むCTP(Computer To Plate)タイプの平版印刷版が増加している。
CTPタイプの平版印刷版の感光層は、従来の平版印刷版に比べて光や熱に対して高感度である。そのため、アルミニウム合金板表面に金属間化合物などの介在物が存在すると、感光層に欠陥が生じ易い。特に、単体Siや粗大なTi−B系化合物の金属間化合物がインク汚れの原因となる。ここで、単体Siとは、アルミニウム合金に含有されるSiのうち、合金中に固溶せずにSi粒子として析出しているものである。
特許文献1には、単体Siによって陽極酸化皮膜の欠陥が生じその部分の親水性が低下してインク汚れが発生するため、アルミニウム合金板中の単体Siの減少が有効であることが記載されている。特許文献2には、Mg、Mnの含有量を調整してMgSi又はAl−Mn−Si系化合物として析出させることにより、単体Siの析出を抑制することが記載されている。
特許文献3には、フィルターを介して粗大なTi−B系化合物を除去した後に連続鋳造する方法が記載されている。特許文献4には、濾過手段、溶湯流路、液面制御手段、溶湯供給ノズルを順次通過させる工程を含む連続鋳造において、液面制御手段内、溶湯供給ノズル内にアルミニウム合金溶湯中に存在するTi−B系化合物を含む沈降粒子のトラップ手段を1箇所以上設け、アルミニウム溶湯が溶湯流路を通過する時間や溶湯流路の距離を規定することが記載されている。しかしながら、特許文献3、4に記載の方法では、Ti−B凝集物の除去は不十分で、粗大な凝集物の混入を安定的に防止できない。
以上のように、金属間化合物の介在物を規制しても、インク汚れ防止を十分に解消することは出来なかった。
また、最近の研究により、炭化アルミニウムも耐インク汚れ性に影響していることが判明している。炭化アルミニウムを減少させた印刷版用アルミニウム合金板を製造する方法としては、特許文献5、6に示される方法が既に提案されている。
特許文献5には、酸化アルミニウム電解製錬後のアルミニウム溶湯へ不活性ガスを吹き込み、保持工程での保持時間を規定し、インライン脱ガス処理とインラインフィルターによる濾過を行うことにより、アルミニウム溶湯から製造されるアルミニウム合金板に含有される炭化アルミニウム濃度を規制することが記載されている。
特許文献6には、溶解工程、保持工程、脱水素ガス工程、濾過工程、鋳造工程の少なくとも一つの工程を弗化ガスを含有する保護ガス雰囲気中で実施することによって、酸化物や炭化物量を規制することが記載されている。
しかしながら、特許文献5、6に記載の方法では、炭化アルミニウム量を減少させる効果は不十分であり、炭化アルミニウム量を減少させた材料を安定的に製造することは困難である。また、特許文献5に示される弗化アルミニウムや特許文献6に記載される弗化ガスを含有する保護ガスと溶湯との反応により生成される弗化アルミニウムは、大気中での加熱により弗化水素を発生する可能性がある。弗化水素は生体への毒性が極めて強く激しい腐食性も有するので、人体への悪影響や炉が損傷し易いという問題がある。
特開昭62−146694号公報 特開平5−309964号公報 特開平10−52740号公報 特開2009−006386公報 US2009/0220376A1 特開2007−167863公報
本発明は、炭化アルミニウム量を減少させ、かつ、Ti−B系化合物及びTi−C系化合物から選択される1種以上の化合物と炭化アルミニウムとの凝集を防止することにより、粗面化処理後のピットの均一性、非画像部における耐インク汚れ性、ならびに、長期間保管後における感光層の耐欠陥性に優れた平版印刷版用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム合金の溶解段階と溶解した溶湯の処理段階における条件を厳密に規制することによって課題を解決し得ることを見出し、この発明を完成するに至った。
本発明は請求項1において、Fe:0.10〜0.60mass%、Si:0.01〜0.25mass%、Cu:0.0001〜0.05mass%、Ti:0.005〜0.05mass%、B及びCから選択される1種以上:0.0001〜0.0020mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる平版印刷版用アルミニウム合金板において、当該アルミニウム合金板中に存在する炭化アルミニウムの濃度が8ppm以下であり、粗面化処理後における当該アルミニウム合金板表面に存在する凝集物であって、Ti−B系化合物及びTi−C系化合物から選択される1種以上と炭化アルミニウムとから構成される凝集物の当該アルミニウム合金板表面における任意の半径5μmの円に対する面積占有率が10%未満であるか、或いは、当該面積占有率が10%以上の場合には前記凝集物が1〜2個/50cm存在することを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板とした。
更に本発明は請求項2において、平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.10〜0.60mass%、Si:0.01〜0.25mass%、Cu:0.0001〜0.05mass%、Ti:0.005〜0.05mass%、B及びCから選択される1種以上:0.0001〜0.0020mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を680〜780℃で溶解する段階と;溶解した溶湯を680〜780℃で処理する段階であって、前記アルミニウム合金を溶解した溶湯を機械的又は電磁的な手段によって5〜60分間撹拌する工程と、攪拌した溶湯を10〜60分間保持する工程と、保持した溶湯をインライン脱ガス処理する工程と、インライン脱ガス処理した溶湯をインラインフィルターで濾過処理する工程と、結晶粒微細化材を添加した溶湯を10以内攪拌する工程とを含む処理段階と;を備えることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法とした。
本発明に係る平版印刷版用アルミニウム合金板は、粗面化処理後のピットの均一性に優れ、印刷時の非画像部における汚れの生じ難い、すなわち耐インク汚れ性に優れ、しかも大気雰囲気下で保管された際に感光層に欠陥が生じ難い、すなわち長期間保管後における感光層の耐欠陥性に優れる。また、本発明に係る平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法により、前記平版印刷版用アルミニウム合金板を確実、かつ安定して得ることができる。
以下に、本発明について更に詳細に説明する。先ず、本発明で用いるアルミニウム合金成分の限定理由について説明する。
A.アルミニウム合金成分の限定理由
Fe:
Fe含有量は、材料中に分散するAl−Fe系、Al−Fe−Si系化合物のサイズ及び数密度に影響し、再結晶時の結晶粒挙動や粗面化処理により生成されるピットの均一性にも大きな影響を与える。Fe含有量が0.10mass%(以下、単に「%」と記す)未満では、再結晶時の結晶粒径が粗大となって粗面化処理により生成されるピットが不均一となる。一方、Fe含有量が0.60%を超えると、Al−Fe系、Al−Fe−Si系の粗大化合物が多くなり、粗面化処理により生成されるピットが不均一となる。そのためFe含有量は、0.10〜0.60%の範囲内とする。好ましいFe含有量は、0.20〜0.40%の範囲内である。
Si:
Si含有量が0.01%未満では、粗面化処理後のピットが不均一となる。一方、Si量が0.25%を超えると、Al−Fe−Si系粗大化合物が多くなり、粗面化処理後のピットが不均一となる。また、単体Siの析出が生じ易く、これが陽極酸化皮膜中に残存して皮膜欠陥を形成する。その結果、この欠陥が印刷時に非画像部の汚れ発生の起点となり、印刷時の汚れの原因となる。そのためSi含有量は、0.01〜0.25%の範囲内とする。好ましいSi含有量は、0.07〜0.15%の範囲内である。
Cu:
Cuは、粗面化性に大きな影響を及ぼす元素である。Cu含有量が0.0001%未満では、粗面化処理後のピットが不均一となる。一方、Cu含有量が0.05%を超えても粗面化処理後のピットが不均一となり、また、粗面化処理後の色調が黒味を帯び過ぎて商品価値を損なう。そのためCu含有量は、0.0001〜0.05%の範囲内とする。好ましいCu含有量は、0.005〜0.04%の範囲内である。
Ti:
Tiは、粗面化性に大きな影響を及ぼし、また、アルミニウム合金鋳塊の組織状態にも大きな影響を及ぼす元素である。Ti含有量が0.005%未満では、粗面化処理後のピットが不均一になり、また、鋳塊の結晶粒が微細化されずに粗大結晶粒組織になるため、マクロ組織に圧延方向に沿う帯状の筋が発生して、粗面化処理後にも帯状の筋が残存してしまう。一方、Ti含有量が0.05%を超えると、前述の効果が飽和するばかりでなく、粗大なAl−Ti系化合物が形成されてその化合物が圧延板に筋状に分布する。その結果、陽極酸化皮膜に欠陥が生じ、感光層の欠陥となって印刷汚れが発生する。そのためTi含有量は、0.005〜0.05%の範囲内とする。好ましいTi含有量は、0.005〜0.03%の範囲内である。
B、Cのうちから選択される1種以上の含有量:
結晶粒組織を微細化するために、微量のB及び/又はCをTiと組合せて添加する。B及びCから選択される1種以上の含有量が0.0001%未満では、結晶粒微細化の効果が得られず、粗面化処理後のピットが不均一となる。一方、前記含有量が0.0020%を超えると結晶粒微細化効果が飽和するばかりでなく、Ti−B系化合物やTi−C系化合物に溶湯中の炭化アルミニウムが凝集し易くなり、溶湯からの炭化アルミニウム量の減少が不十分となる。また、Ti−B系化合物やTi−C系化合物が存在している箇所に炭化アルミニウムも晶出し易いため、インク汚れや長期間保管後の局所的な感光層の欠陥が生じ易くなる。また、Ti−B系化合物やTi−C系化合物の粗大凝集物による表面欠陥も生じ易くなる。そのためB及びCから選択される1種以上の含有量は、0.0001〜0.0020%の範囲内とする。この含有量の好ましい範囲は、0.0003〜0.0012%である。
その他の成分:
Mgは、大部分がアルミニウムに固溶して、常温での支持体の強度を向上させる元素である。耐熱軟化性を向上させる作用も果たすため、所望の支持体強度、耐熱軟化性を得るために、0%を超え、かつ、0.5%以下の量で含有されていてもよい。この範囲では、平版印刷版用アルミニウム合金板としてその特性を損なうことはない。
粗面化処理後のピットの均一性は所謂電解グレイニング性とされ、より低電流密度での電解操作により、更に微細化されたピットの均一性を得るために、In:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%、Be:0.0001〜0.01%、Pb:0.001〜0.05%、Ni:0.001〜0.05%の1種又は2種以上を含有してもよい。
不可避的不純物:
JIS1050相当の不純物量、すなわち、Mn0.05%以下、Zn0.05%以下、Zr0.05%以下、Cr0.05%以下、その他成分の合計が0.05%以下程度であれば、平版印刷版用アルミニウム合金板の特性を損なうことはない。
次に、アルミニウム合金板中に存在する炭化アルミニウムについて説明する。
B.炭化アルミニウム
一般に、炭化アルミニウムはアルミニウム地金中に不可避的に存在している。これは、三層電解等の電解製錬時に、電極に用いられている黒鉛がアルミニウム溶湯中に溶解し、アルミニウム溶湯移送や鋳造時に溶湯温度が低下するにつれ、過飽和な炭素が炭化アルミニウムとなってアルミニウム溶湯中に晶出するためである。また、地金メーカーや地金製造条件により、地金中の炭化アルミニウム量は大きく変動する。炭化アルミニウムを多量に含有するアルミニウム合金を平版印刷版に用いる場合には、炭化アルミニウムが存在する箇所は陽極酸化膜が健全に形成されず、炭化アルミニウムと湿し水が長時間接触することで、炭化アルミニウムが酸化される。その部分では親水性が低下するため、インクが付着し、非画像部が汚れることが判明した。また、粗面化処理後のアルミニウム合金板表面に炭化アルミニウムが存在している状態で長期間保管する場合には、炭化アルミニウムが大気中の水分と反応する。その結果、水酸化アルミニウムの生成による体積膨張や発生するCHガスによって、感光層との密着性が低下して感光層に局所的な欠陥が生じ易い。
アルミニウム合金板中に存在する炭化アルミニウム濃度が8ppmを超えると、炭化アルミニウムに起因するインク汚れや長期間保管後の感光層欠陥が生じ易い。そこで、炭化アルミニウム濃度は8ppm以下とする。また、炭化アルミニウムは極力少ないことが望ましく、炭化アルミニウム濃度は好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下である。
次に、粗面化処理後におけるアルミニウム合金板表面に存在する凝集物の分布について説明する。
C.粗面化処理後におけるアルミニウム合金板表面に存在する凝集物の分布
炭化アルミニウムはアルミニウム溶湯との濡れ性が非常に低いため、炉壁、炉床、酸化アルミニウムを主成分とするドロス等の固体と溶湯との固液界面、脱水素ガスのために溶湯中に吹き込まれる気体と溶湯との気液界面に存在し易い性質を有している。炭化アルミニウムが単体でアルミニウム溶湯中に存在する場合には、炭化アルミニウムはアルミニウム溶湯から排出され、溶湯中の炭化アルミニウム量は減少する。しかしながら、Ti−B系化合物及びTi−C系化合物の1種以上が溶湯中に存在すると、炭化アルミニウムはこれら化合物と共に凝集物を形成する。このような凝集物には、炭化アルミニウムとTi−B系化合物から構成される凝集物、炭化アルミニウムとTi−C系化合物から構成される凝集物、炭化アルミニウムとTi−B系化合物とTi−C系化合物から構成される凝集物の三種類が含まれる。このような凝集物は、アルミニウム溶湯との濡れ性が高く、溶湯から排出され難い。また、アルミニウム溶湯中に過飽和状態で溶解する炭素は、溶湯温度の低下により炭化アルミニウムとして晶出する。このように、Ti−B系化合物やTi−C系化合物が溶湯中に存在すると、これらの化合物を起点として炭化アルミニウムが晶出し易くなる。
このようにして生成する炭化アルミニウムと前記化合物との凝集物は粗大であり、陽極酸化膜の欠陥部となって耐インク汚れ性の低下や表面欠陥を招く。従って、溶湯中の炭化アルミニウム濃度の制御だけでなく、Ti含有量、B含有量及びC含有量の制御も必要であるが、アルミニウム合金板表面における炭化アルミニウムと前記化合物の凝集物の分布状態を制御することが重要である。
Ti−B系化合物及びTi−C系化合物から選択される1種以上の化合物と炭化アルミニウムから構成される凝集物の分布は、(1)アルミニウム合金板表面における上記凝集物が占める任意の半径5μmの円の面積に対する面積占有率と、(2)アルミニウム合金板表面における任意の50cmの面積内に存在する該凝集物の個数によって規定する。前記面積占有率が10%未満の場合には、インク汚れや長期間保管後の感光層欠陥の発生の問題はない。一方、前記面積占有率が10%以上の場合には、50cmの面積内に存在する凝集物の個数が2個以下であれば、インク汚れや長期間保管後の感光層欠陥の発生の問題はない。一方、50cmの面積内に存在する凝集物の個数が3個以上の場合には、インク汚れ、長期間保管後の感光層欠陥が発生する。従って、凝集物の分布は、前記面積占有率を10%未満とするか、或いは、前記面積占有率が10%以上の場合には、50cmの面積内に存在する凝集物の個数を2個以下、すなわち、2個又は1個とする。
ここで、面積占有率は、凝集物が占める面積を半径5μmの円の面積で割ったものとした。凝集物の面積占有率及びその存在個数は、電子プローブ微小部分分析装置(日本電子株式会社製JXA―8200)によるアルミニウム合金板の表面観察や定性分析により行われる。ここで問題としている凝集物のサイズは、円相当径で半径5μm以下である。半径が5μmより大きくなると、凝集物の面積が大き過ぎるために本発明では問題の対象としないが、インク汚れ、長期間保管後の感光層欠陥がほぼ確実に発生する。
次に、本発明に係る平版印刷版用アルニウム合金板の製造方法について述べる。
D.アルニウム合金板の製造方法
本発明に係る平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法は、基本的には、溶解、処理、鋳造、均質化処理、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、表面処理の各段階からなる。炭化アルミニウム、Ti−B系化合物及びTi−C系化合物の量や凝集状態は、特にアルミニウム地金の溶解段階とその後の処理段階で決まるため、本発明では溶解及び処理の段階が重要である。
溶解及び溶解した溶湯を処理する段階におけるアルミニウム溶湯温度:
アルミニウム地金を溶解し、溶解した溶湯を処理する段階におけるアルミニウム溶湯温度が680℃未満では、アルミニウム地金や成分調整のための各種母合金が完全に溶解せず、また、前記処理工程である後述のインライン脱ガス処理やインラインフィルターでの濾過処理において溶湯温度がさらに低下するため、アルミニウム合金板を安定的に生産することが出来ない。一方、溶湯温度が780℃を超えると、燃料の不完全燃焼によるススや工程内の炭素含有化合物等とアルミニウム溶湯との反応が促進され、その反応により炭化アルミニウムが生成する。また、溶湯温度が780℃を超えると、過飽和状態で溶解している炭素量が多くなり、処理工程である撹拌、保持、インライン脱ガス、インラインフィルターでの濾過処理における溶湯温度の低下によって晶出する炭化アルミニウムが多量となる。その結果、炭化アルミニウムを十分に除去することが出来なくなる。そのため、溶解及び溶解した溶湯を処理する段階におけるアルミニウム溶湯温度は、680〜780℃とする。好ましい溶湯温度は、680〜750℃である。
アルミニウム地金の溶解段階:
ボーキサイトの電解製錬で得られるアルミニウム溶湯中には、前述の通り、溶解した炭素、晶出した炭化アルミニウムが存在しており、このアルミニウム溶湯から調製されるアルミニウム地金中には、晶出した炭化アルミニウムが多量に含有されている。このアルミニウム地金を溶解し、含有されている炭化アルミニウムが大気と接することで、炭化アルミニウムが酸化され、この酸化アルミニウムがドロスとしてアルミニウム溶湯から分離されるため、炭化アルミニウムを減少させることが可能である。
溶解段階に続く処理段階には、攪拌工程、保持工程、インライン脱ガス処理工程、インラインフィルターによる濾過処理工程、結晶粒微細化材の添加と攪拌工程の各工程がこの順序で含まれる。
撹拌工程:
上記溶解工程を経た溶湯は、機械的手段又は電磁的手段によって5〜60分撹拌される。炭化アルミニウムとアルミニウム溶湯の比重差は小さいため、アルミニウム溶湯から炭化アルミニウムを分離するには長時間を要する。そこで、溶湯を強制的に撹拌することにより、アルミニウム溶湯からの炭化アルミニウムの分離が促進される。この撹拌工程により、アルミニウム溶湯に晶出している炭化アルミニウムを大気と接触、酸化させて酸化アルミニウムを生成させ、これをアルミニウム溶湯から除去することによって、炭化アルミニウムが除去される。また、炭化アルミニウムは固液界面に存在し易いため、アルミニウム溶湯表面のドロス、炉壁、炉床と炭化アルミニウムを接触させることで、アルミニウム溶湯から炭化アルミニウムを除去することもが出来る。
機械的又は電磁的な撹拌手段としては、撹拌用冶具を装着したフォークリフト、クレーン等を操作することでアルミニウム溶湯を撹拌する手段、或いは、電磁撹拌装置を用いた電磁的撹拌等が挙げられる。撹拌時間が5分未満では、前述の撹拌効果が不十分である。一方、撹拌時間が60分を超えると、撹拌効果が飽和するだけでなく、酸化物をはじめとする介在物を巻き込み易く、介在物起因の線状欠陥やインク汚れが生じ易くなる。ここで酸化物とは、大気中の酸素と反応して生成された酸化アルミニウムや大気中との水分と反応して生成された水酸化アルミニウム、含水した酸化アルミニウム等が挙げられる。そのため撹拌時間は、5〜60分とする。好ましい撹拌時間は、10〜50分である。
後述するインライン脱ガス処理とは別に、炉内でアルゴンガスや塩素ガス、又はこれらの混合ガスをアルミニウム溶湯に吹き込む脱水素ガス処理が行われる場合がある。この処理からも撹拌効果が得られる。これは、ガスの気泡に炭化アルミニウムをはじめとする介在物が吸着しその状態で気泡が浮上するため、ドロスとしてアルミニウム溶湯から分離されるためである。
保持工程:
上記撹拌工程後に、アルミニウム溶湯が保持工程にかけられる。炭化アルミニウムはアルミニウム溶湯との濡れ性が劣るため、保持工程により、炭化アルミニウムが沈降し、或いは、溶湯の流動により浮上する。このような沈降や浮上によって、炭化アルミニウムを分離することが出来る。また、酸化アルミニウムをはじめとする介在物とアルミニウム溶湯との比重差を利用した分離も可能である。保持時間が10分未満では、前述の分離効果が不十分である。一方、保持時間が60分を超えるとその効果が飽和し、経済的に好ましくない。そのため保持時間は、10〜60分とする。好ましい保持時間は、20〜60分である。
インライン脱ガス処理工程:
上記保持工程の後に、溶湯はインライン脱ガス処理される。インライン脱ガス処理装置としては、SNIFやALPURなどの商標で市販されているものを使用すれば良い。これらの装置は、アルゴンガスやアルゴンと塩素の混合ガスを溶湯に吹き込みながら、羽根付き回転体を高速で回転させてガスを微細な気泡として溶湯中に供給する。脱水素ガス及び介在物の除去が、インラインで短時間に行える。この処理により、上記撹拌効果が得られ、溶湯中の炭化アルミニウムを更に減少させることが可能である。インライン脱ガス処理を行わない場合には、脱水素ガスや炭化アルミニウムをはじめとする介在物除去が不十分となり、表面欠陥や炭化アルミニウム起因のインク汚れや長期間保管後における感光層の欠陥が発生する。
インラインフィルターによる濾過処理工程:
上記インライン脱ガス処理後に、アルミニウム溶湯をインラインフィルターによって濾過する。インラインフィルターとしては、セラミックチューブフィルターやセラミックフォームフィルター、アルミナボールフィルター等が用いられ、ケーク濾過機構や濾材濾過機構により介在物を除去する。これらのフィルターを用いた濾過機構によりアルミニウム溶湯を濾過し、炭化アルミニウムのみならず酸化アルミニウムなどの酸化物をはじめとする鋳造介在物を除去することができる。インラインフィルターでの濾過処理を行わない場合には、炭化アルミニウムや酸化物等の介在物の除去が不十分となり、炭化アルミニウム起因のインク汚れや長期間保管後における感光層の欠陥が発生し易く、また、介在物の線状欠陥やインク汚れの原因となり易い。
結晶粒微細化材の添加と攪拌工程:
鋳塊組織の結晶粒を微細化するために、結晶粒微細化材として、塊状又は線状のTi系アルミニウム合金、Ti−B系アルミニウム合金、Ti−C系アルミニウム合金などが添加される。前述のように、添加量は、B及びCから選択される1種以上の含有量として、0.0001〜0.0020%の範囲内である。Ti−B系アルミニウム合金及びTi−C系アルミニウム合金は、Ti系アルミニウム合金と比べて結晶粒微細化効果が大きいが、これらのアルミニウム合金に含まれるTi−B系化合物やTi−C系化合物の凝集物に起因する表面欠陥が生じ易い欠点を有する。
本発明では、結晶粒微細化材の添加量、換言すると、B量、C量を制御し、かつ、凝集させないような溶湯処理を行うことで、Ti−B系化合物やTi−C系化合物の凝集を防止する。具体的には、結晶粒微細化材を溶湯に添加して撹拌する時間を10分以内とすることで、撹拌による凝集を防止するものである。ここで、撹拌としては、上記機械的又は電磁的な撹拌、脱水素ガスのためのバブリング、インライン脱ガス処理が挙げられる。結晶粒微細化材が添加されたアルミニウム溶湯が10分を超えて撹拌されると、Ti−B系化合物やTi−C系化合物の凝集が生じ、線状欠陥が発生し易い。また、Ti−B系合物やTi−C系化合物はアルミニウム溶湯中において固体として存在するため、この固液界面に炭化アルミニウムが吸着されて、アルミニウム溶湯からの分離が困難となる。この炭化アルミニウムとTi−B系化合物との凝集物、ならびに、炭化アルミニウムとTi−C系化合物との凝集物により、インク汚れや長期間保管後における感光層欠陥が生じ易くなる。なお、好ましい撹拌する時間は、5分以内である。
鋳造:
前述のような溶解及び処理を経た溶湯は、DC鋳造法等による常法に従って鋳塊に鋳造される。これに代わって、駆動鋳型を用いる連続鋳造法によって鋳造してもよい。
以上のようにして得られる鋳塊は、以下に記載するような常法に従い、均質化処理、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延等の工程により最終的に所要の板厚の圧延板に成形される。
均質化処理段階:
鋳塊に対しては、通常、450〜620℃で均質化処理が実施される。これにより不純物元素が拡散して、電解グレイニング時のピットの生成がより均一化される。また、中間焼鈍時の結晶粒が微細化され易くなる。均質化処理の保持時間は鋳塊サイズ等により適当な時間を定めればよいが、通常、0.5〜20時間である。0.5時間未満では、十分な均質化効果が得られない場合がある。一方、20時間を超えても上記各効果が飽和するため、経済的に好ましくない。ここで、均質化処理後に、鋳塊を一旦室温まで冷却してから熱間圧延のための加熱処理を行ってもよく、均質化処理後に350〜500℃に冷却した後に、熱間圧延を施してもよい。
熱間圧延段階:
熱間圧延は、350〜500℃の温度で開始することが好ましい。熱間圧延開始温度が350℃未満では、熱間圧延中に再結晶せずに鋳塊の結晶粒が熱間圧延板に残存するため、最終圧延板に電解グレイニング処理を施すと帯状又は筋状の外観ムラ(ストリークス)が発生して印刷版の表面外観が不均一となる場合がある。一方、熱間圧延開始温度が500℃を超えると、熱間圧延中において再結晶粒が粗大化し、電界粗面化処理時にストリークスが発生して表面外観が不均一となる場合がある。
熱間圧延終了温度は300〜350℃とすることで、熱間圧延上がりの熱を利用する自己再結晶が可能となる。その結果、熱間圧延終了後において板全体を微細再結晶組織とすることができる。自己再結晶により、熱間圧延後の焼鈍が不要となるため、製造コストの削減が望める。終了温度が300℃未満では熱間圧延板表面が部分的に再結晶するため、粗面化処理後の外観が不均一となる場合がある。また、板表層部のみが再結晶しても、板厚中央部では部分的に再結晶し、層状組織が一部残存するため、安定した強度を有するアルミニウム合金板を量産することが困難となる場合がある。一方、350℃を超えると十分な転位が導入されず、熱間圧延板表面部の結晶粒が粗大となるため、粗面化処理後の外観が不均一となる場合がある。
熱間圧延終了温度を200〜300℃として熱間圧延終了後から冷間圧延終了前に焼鈍を施こすことで、前述の自己再結晶工程材に比べて結晶粒を微細とし、粗面化後の外観の均一性を増すようにしてもよい。この場合において、熱間圧延終了温度が200℃未満では、圧延油が蒸発しきれずに板面に残留し表面汚れや腐食を起こし易い場合がある。一方、300℃を超えると蓄積される転位密度が不十分であるため、焼鈍により結晶粒が微細化せず粗面化処理後の外観が不均一となる場合がある。
焼鈍段階:
上記焼鈍として、熱間圧延終了後から冷間圧延終了前に、連続焼鈍炉にて400〜550℃で0〜60秒、或いは、バッチ炉にて300〜500℃で1〜20時間の処理を施すことで、結晶粒が微細化され粗面化処理後の外観が均一となる。連続焼鈍炉での焼鈍の場合において、400℃未満ではその効果が十分でない場合がある。一方、550℃を超える温度又は60秒を超える時間の焼鈍では、その効果が飽和して製造コストの点で好ましくない。バッチ炉での焼鈍の場合において、300℃未満では単体Siが析出し易く、結晶粒微細化の効果が十分でない場合がある。また、焼鈍時間が1時間未満では、結晶粒微細化の効果が十分でない場合がある。500℃を超える温度又は20時間を超える時間の焼鈍では、結晶粒が粗大化し粗面化処理後の外観が不均一となる場合がある。
冷間圧延段階:
冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、常法に従えば良い。最終冷間圧延率は、必要な製品板強度や板厚に応じて定めれば良く、通常は圧下率60〜98%で施せば良い。なお、最終冷間圧延後にレベラ−矯正を行っても良い。
表面処理段階:
以上のようにして得られた平版印刷版用アルミニウム合金板を平版印刷版支持体とするためには、粗面化、陽極酸化等のための表面処理が施される。この表面処理方法は特に限定されるものではなく、常法に従った機械的方法、化学的方法及び電気化学的方法のいずれか一つ又は二つ以上を組合せた工程により実施される。表面処理によるエッチング量としては、アルミニウム合金板表面より1〜10μmとするのが好ましい。1μm未満のエッチング量では、粗面化が不十分で耐刷性に劣る場合がある。一方、10μmを超えると、エッチング量が多過ぎて経済的に好ましくない。
以上の各段階により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板に、感光層を塗布しこれを乾燥して平版印刷版支持体とする。
以下に、本発明を本発明例及び比較例に基づいて更に詳細に説明する。なお、請求項に記載した以外の条件については、常法の条件内で本発明の作用、効果を説明するために例示したものであり、これらの条件が本発明の技術的範囲を限定するものでない。
本発明例1〜22及び比較例23〜33
表1に示すA〜gの組成のアルミニウム合金を製造するにあたり、各アルミニウム地金を745℃で溶解した。次いで、3枚羽根を備えた攪拌機によって溶解した溶湯を745℃で30分間機械的に攪拌した。更に、溶湯を735℃で40分間保持した。その後、インライン脱ガス処理装置(SNIF)用いてアルゴンガスを溶湯に吹き込んでインライン脱ガス処理を行った。更に、セラミックチューブフィルターをインラインフィルターとして溶湯を濾過することにより、炭化アルミニウムや酸化物を除去した。その後、結晶粒微細化材をA〜g記載の濃度となるように添加した。結晶粒微細化材を添加してからの攪拌時間は0分であった。インライン脱ガス処理から物結晶粒微細化材の添加までにおける溶湯の温度は、700℃であった。
Figure 2012072487
前述のように溶解及び処理を施した溶湯を、常法のDC鋳造法に従って鋳造してアルミニウム合金の鋳塊を作製した。この鋳塊を560℃、6時間の条件で均質化処理を施した。その後、室温まで一旦冷却した後、熱間圧延のために430℃まで加熱した。次いで、開始温度425℃、終了温度320℃の熱間圧延を施した。更に、圧下率85%の冷間圧延を施して、厚さ0.30mmの平版印刷版用アルミニウム合金板を得た。
(炭化アルミニウム濃度の測定と評価)
炭化アルミニウム濃度は、LIS A09−1−1971(LIS:Light Metal Industrial Standard)に記載の水酸化アルカリ分解ガスクロマトグラフ法に準じて、以下のように測定した。上述のようにして作製した平版印刷版用アルミニウム合金板の0.2gを反応槽に投入し、槽内をHeで十分に置換した。He置換後は、滴下ロートを用いて、NaOH水溶液(20体積%、約20ml)を滴下した。滴下直後に、反応槽を加熱しながらスターラを回転させて撹拌し、炭化アルミニウムを含有するアルミニウム合金サンプルとNaOH水溶液を十分に反応させた。この際、炭化アルミニウムと水分との反応によって生成したCHを、液体Nに浸漬した活性炭カラムに捕集した。アルミニウム合金サンプルとNaOH水溶液が十分に反応した後に、活性炭カラムを水浴に浸漬して捕集したCHを気化させた。気化したCHを、ガスクロマトグラフィ(Hewlett
Packard社製HP6890)によって定量した。CH量は、予めNにCHを希釈、調製した標準ガスを用いた検量線を用いて決定した。次に、このCH量を炭化アルミニウム濃度に換算した。ここで、炭化アルミニウムとして、AlやAl、AlC等が挙げられるが、炭化アルミニウム濃度として換算する炭化アルミニウムは、Alで代表した。
このようにして求めた炭化アルミニウム濃度が、8ppm以下の場合を合格とし、8ppmを超える場合を不合格とした。結果を表2に示す。なお、用いたアルミニウム地金中の炭化アルミニウム濃度を前もって測定したところ、18ppmであった。
Figure 2012072487
得られたアルミニウム合金板を10質量%水酸化ナトリウム水溶液に70℃で30秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20質量%硝酸で中和洗浄し更に水洗した。これをV=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。引き続いて55℃の30質量%の硫酸水溶液中に浸漬して2分間デスマットした後、33℃の20質量%硫酸水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dmにおいて50秒間陽極酸化した。陽極酸化皮膜量は2.6g/mであった。このような表面処理を施したアルミニウム合金板を支持体1とした。
(凝集物の面積占有率の測定)
上記表面処理を施したアルミニウム合金板表面に分布している、Ti−B系化合物と炭化アルミニウム、Ti−C系化合物と炭化アルミニウム、ならびに、Ti−B系化合物とTi−C系化合物と炭化アルミニウムの凝集物の面積占有率を測定した。測定は、半径5μmの円内に存在する凝集物が占める面積を電子プローブ微小部分分析装置によって測定した。任意の凝集物20箇所を選択し、それぞれの凝集物の面積占有率を測定した。面積占有率は、凝集物が占める面積を当該円の面積で割ったものとした。それぞれの凝集物の面積占有率が10%未満の場合を合格とした。結果を表2に示す。
(凝集物の存在個数の測定)
上記凝集物の任意の半径5μmの円に対する面積占有率が10%以上の場合には、凝集物の存在個数も測定した。測定は、表面における50cmの範囲内に存在する凝集物の個数を電子プローブ微小部分分析装置によって測定した。50cmの範囲内に存在する凝集物の個数が1、2個の場合を合格とし、2個を超える場合を不合格とした。結果を表2に示す。アルミニウム合金板表面での凝集物の面積率、存在個数の測定は上記表面処理を施した支持体1で行うのが望ましいが、微細な疵や粗面化処理による凹凸が存在するため判別が困難である場合がある。その場合は、表面の平滑化処理を行った表面で測定を行っても良い。平滑化処理方法としては、機械的研磨、電解研磨手法等が挙げられる。また研磨深さは1〜10μmとし、上記表面処理によってエッチングされる深さと同等することが重要である。また炭化アルミニウムは大気中の水分、酸素との反応によって酸化されるため、表面処理後は速やかに測定を行う必要がある。
(粗面化後のピットの均一性の評価)
上記表面処理を施したアルミニウム合金板を一定の大きさ(30×30cm)に切り取って試験片とし、ピットの均一性を評価した。評価は、試験片の全幅にわたって外観を目視で観察し、ピットの均一性が全幅にわたり良好なものを優良(◎印)、一部分劣っているところがあるが実用上問題の無いものを良好(○印)、全幅にわたり劣っているものを不良(×印)とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。結果を表2に示す。
この支持体1に下記組成の下塗り液を、バーコーターを用いて乾燥塗布量2mg/mとなるように塗布し、80℃で20秒間乾燥して支持体2を得た。
(下塗り液の組成)
・ポリマー(P1)<化学構造を下記に示す> 0.3質量部
・純水 60.0質量部
・メタノール 939.7質量部
Figure 2012072487
この支持体2の上にバーコーターを用いて下記組成の感光性組成物を塗布した後、90℃で1分間乾燥して感光層を形成した。乾燥後の感光層の質量は1.35g/mであった。
(感光性組成物の組成)
・重合性化合物(1)<化学構造を下記に示す> 1.69質量部
(PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・バインダーポリマー(1)<化学構造を下記に示す> 1.87質量部
・増感色素(1)<化学構造を下記に示す> 0.13質量部
・重合開始剤(1)<化学構造を下記に示す> 0.46質量部
・連鎖移動剤(1)<化学構造を下記に示す> 0.44質量部
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 1.70質量部
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤 0.012質量部
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・黄色顔料の分散物 0.5質量部
(黄色顔料Novoperm Yellow H2G(クラリアント製):15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万)<化学構造を下記に示す>
0.03質量部
・メチルエチルケトン 27.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 26.7質量部
Figure 2012072487
Figure 2012072487
Figure 2012072487
Figure 2012072487
Figure 2012072487
Figure 2012072487
この感光層上に、下記組成の保護層塗布水溶液を乾燥塗布質量が2.5g/mとなるようにバーコーターで塗布し、120℃、1分間乾燥させて感光性平版印刷版原版を得た。
(保護層塗布水溶液の組成)
・PVA105 1.80質量部
(ポリビニルアルコール、ケン化度98モル% 、(株)クラレ製)
・PVP−K30(ポリビニルピロリドン、BASF社製) 0.40質量部
・エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.03質量部
・ルビスコールVA64W(BASF社製) 0.04質量部
・上記ポリマー(P1) 0.05質量部
・純水 36.5質量部
得られた感光性平版印刷版を富士フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて感材上の露光量が0.05mJ/cm2になるように調整し画像状に描き込みを行った。その後30秒以内に下記組成のアルカリ現像液を仕込んだG&J製PSプロセッサーInter Plater850HDを用い、プレヒートを行った後に25℃の現像液で現像した。
(アルカリ現像液の組成)
・水酸化カリウム 0.15g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル(n=13) 5.0g
・キレスト400(キレート剤) 0.1g
・水 94.75g
(耐インク汚れ性)
現像した平版印刷版を水洗乾燥後、オフセット輪転機を用いて10万部の印刷試験を行なった。その後、目視にて非画像部の点状汚れの程度を評価した。評価は、非画像部の全体にわたって点状汚れのない良好なものを優良(◎印)、若干の点状汚れがあるが実用上問題の無いものを良好(○印)、実用上問題となる点状汚れがあるものを不良(×印)とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。結果を表2に示す。
(長期間保管後における感光層の耐欠陥性)
更に、上記のように感光層を形成した平版印刷版を、室温において湿度20〜90%の範囲内の雰囲気下で3ケ月間保管し、感光層の欠陥の発生の有無を評価した。評価は、感光層に欠陥がないものを優良(◎印)、若干の欠陥があるが実用上問題の無いものを良好(○印)、実用上問題となる欠陥があるものを不良(×印)とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。結果を表2に示す。
本発明例1〜22では、炭化アルミニウム濃度が8ppm以下であり、凝集物の面積占有率が10%未満であるか、10%以上であっても凝集物の存在密度が50cm当たり2個以下であり、いずれも合格であった。更に、粗面化後のピットの均一性、耐インク汚れ性及び長期間保管後における感光層の耐欠陥性が合格であった。
比較例23では、アルミニウム合金WのFe含有量が少な過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例24では、アルミニウム合金XのFe含有量が多過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例25では、アルミニウム合金YのSi含有量が少な過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例26では、アルミニウム合金YのSi含有量が多過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となり、また単体Siが析出し、インク汚れが発生した。
比較例27では、アルミニウム合金aのCu含有量が少な過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例28では、アルミニウム合金bのCu含有量が多過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例29では、アルミニウム合金cのTi含有量が少な過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例30では、アルミニウム合金dのTi含有量が多過ぎたため、粗大なAl−Ti系化合物が形成されインク汚れが発生した。
比較例31では、アルミニウム合金eのB及びCの合計含有量が少な過ぎたため、粗面化処理により生成されるピットが不均一となった。
比較例32では、アルミニウム合金fのBの含有量が多過ぎたために、B及びCの合計含有量も多過ぎた。その結果、炭化アルミニウム濃度が高過ぎ、Ti−B系化合物の凝集密度も多過ぎて、インク汚れや長期間保管後の局所的な感光層の欠陥が発生した。更に、Ti−B系化合物の凝集により表面に欠陥も生じた。
比較例33では、アルミニウム合金gのCの含有量が多過ぎたために、B及びCの合計含有量も多過ぎた。その結果、炭化アルミニウム濃度が高過ぎTi−C系化合物の凝集密度も多過ぎて、インク汚れや長期間保管後の局所的な感光層の欠陥が発生した。更に、Ti−C系化合物の凝集により表面に欠陥も生じた。
本発明例34〜49及び比較例50〜60
Fe0.35%、Si0.09%、Cu0.025%、Ti0.010%、B0.0005%を含有するアルミニウム合金を製造するにあたり、表3に記載の溶解及び処理を施した。ここで、溶解後の攪拌工程での溶湯温度は、溶解における温度と同じであった。また、結晶粒微細化剤添加後の攪拌工程における溶湯温度は、インラインフィルターでの濾過における溶湯温度と同じであった。このようにして溶解及び処理を施した溶湯を、常法のDC鋳造法に従って鋳造してアルミニウム合金の鋳塊を作製した。
Figure 2012072487
得られた鋳塊を540℃、3時間の条件で均質化処理を施した。その後、室温まで一旦冷却した後、熱間圧延のために420℃まで加熱した。次いで、開始温度415℃、終了温度330℃の熱間圧延を施した。更に、圧下率80%の冷間圧延を施し、厚さ0.3mmの平版印刷版用アルミニウム合金板を得た。
得られた平版印刷版用アルミニウム合金板に前述の本発明例1と同様の表面処理を施して、アルミニウム合金板の支持体1とした。この支持体1の表面におけるTi−B系化合物と炭化アルミニウム、Ti−C系化合物と炭化アルミニウム、ならびに、Ti−B系化合物とTi−C系化合物と炭化アルミニウムの凝集物の面積占有率を、実施例1と同様に測定、評価した。更に、凝集物の面積占有率が10%以上の場合には凝集物の存在個数を、実施例1と同様に測定、評価した。更に、粗面化後のピットの均一性の評価についても実施例1と同様に評価した。これらの結果を、表4に示す。
Figure 2012072487
実施例1と同様にして、上記支持体1に下塗り液を塗布、乾燥して支持体2を得た。更に、実施例1と同様にして、支持体2の上に感光性組成物を塗布、乾燥して感光層を形成した。最後に、実施例1と同様に、形成した感光層上に保護層塗布水溶液を塗布、乾燥して感光性平版印刷版原版を得た。
実施例1と同様にして、得られた感光性平版印刷版に画像状に描き込みを行ない、これを現像し、水洗乾燥後、オフセット輪転機を用いて10万部の印刷試験を行なった。このようにして得られた感光性平版印刷版について、実施例1と同様にして、耐インク汚れ性と長期間保管後における感光層の耐欠陥性を試験、評価した。結果を表4に示す。
本発明例34〜49では、炭化アルミニウム濃度が8ppm以下であり、凝集物の面積占有率が10%未満であるか、10%以上であっても凝集物の存在密度が50cm当たり2個以下であり、いずれも合格であった。更に、粗面化後のピットの均一性、耐インク汚れ性及び長期間保管後における感光層の耐欠陥性が合格であった。
比較例50では、溶解段階における溶湯温度が高過ぎたため燃料の不完全燃焼によるススや工程内の炭素含有化合物等と溶湯が反応し、炭化アルミニウムが生成されて高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。
比較例51では、溶解段階の溶湯温度が低過ぎたため、アルミニウム地金や母合金が完全に溶解されず、安定的にアルミニウム合金板を生産することが出来なかった。
比較例52では、溶解段階後における撹拌時間が短過ぎたため、撹拌による炭化アルミニウム除去の効果が不十分で高濃度になりTi−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。
比較例53では、溶解段階後における撹拌時間が長過ぎたため介在物が巻き込まれた。その結果、インク汚れが発生した。更に、表面に欠陥も生じた。
比較例54では、保持工程における溶湯温度が高過ぎたため燃料の不完全燃焼によるススや工程内の炭素含有化合物等と溶湯が反応し、炭化アルミニウムが生成されて高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。
比較例55では、保持時間が短過ぎたため、炭化アルミニウムの分離が不十分で高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。
比較例56では、インライン脱ガス処理工程での溶湯温度が低過ぎたため、溶湯が凝固し、安定的にアルミニウム合金板を生産することが出来なかった。
比較例57では、インライン脱ガス処理工程での溶湯温度が高過ぎたため、燃料の不完全燃焼によるススや炭素含有化合物等と溶湯の反応により炭化アルミニウムが生成されて高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。
比較例58では、インライン脱ガス処理を実施しなかったため、炭化アルミニウムの減少効果が不十分で高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、印刷時のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。また、脱水素ガスが不十分となり表面欠陥が発生した。
比較例59では、インラインフィルターでの濾過処理を実施しなかったため、炭化アルミニウムや酸化物等の鋳造介在物の除去が不十分となり、炭化アルミニウムが高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、炭化アルミニウム起因のインク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。また、介在物が表面欠陥やインク汚れの原因となった。
比較例60では、結晶粒微細化剤を添加した後のアルミニウム溶湯の撹拌時間が長過ぎたため、炭化アルミニウムが高濃度になり、Ti−B系化合物との凝集物密度も多過ぎた。その結果、インク汚れや長期間保管後の感光層の欠陥が発生した。また、Ti−B系化合物の凝集が生じ表面欠陥が発生した。
本発明により、粗面化後におけるピット均一性、印刷時の非画像部における耐インク汚れ性、ならびに、大気雰囲気下で保管された際における感光層の耐欠陥性に優れた平版印刷版用アルミニウム合金板が得られる。また、本発明に係る平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法により、前記平版印刷版用アルミニウム合金板が確実かつ安定して得ることができる。

Claims (2)

  1. Fe:0.10〜0.60mass%、Si:0.01〜0.25mass%、Cu:0.0001〜0.05mass%、Ti:0.005〜0.05mass%、B及びCから選択される1種以上:0.0001〜0.0020mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる平版印刷版用アルミニウム合金板において、当該アルミニウム合金板中に存在する炭化アルミニウムの濃度が8ppm以下であり、粗面化処理後における当該アルミニウム合金板表面に存在する凝集物であって、Ti−B系化合物及びTi−C系化合物から選択される1種以上と炭化アルミニウムとから構成される凝集物の当該アルミニウム合金板表面における任意の半径5μmの円に対する面積占有率が10%未満であるか、或いは、当該面積占有率が10%以上の場合には前記凝集物が1〜2個/50cm存在することを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板。
  2. 平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.10〜0.60mass%、Si:0.01〜0.25mass%、Cu:0.0001〜0.05mass%、Ti:0.005〜0.05mass%、B及びCから選択される1種以上:0.0001〜0.0020mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を680〜780℃で溶解する段階と;溶解した溶湯を680〜780℃で処理する段階であって、前記アルミニウム合金を溶解した溶湯を機械的又は電磁的な手段によって5〜60分間撹拌する工程と、攪拌した溶湯を10〜60分間保持する工程と、保持した溶湯をインライン脱ガス処理する工程と、インライン脱ガス処理した溶湯をインラインフィルターで濾過処理する工程と、結晶粒微細化材を添加した溶湯を10以内攪拌する工程とを含む処理段階と;を備えることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
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