JP2012069962A - 磁石用固形材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高密度で高磁気特性を有し、熱安定性、耐酸化性に優れ、金属的結合により固化された固形状の磁石用固形材料の提供。
【解決手段】菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が、一般式RαFe100-α-β-γβγで表され、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素であり、又、α、β、γは原子百分率で、3≦α≦20、5≦β≦30、0.01≦γ≦10であることを特徴とし、その希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が80体積%を超えて100体積%まで含有した磁石用固形材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、高密度で高磁気特性を有し、熱安定性、耐酸化性に優れた希土類−鉄−窒素−水素系磁石用固形材料に関する。本発明は、更に、磁性材料粉体を圧粉成形後、更に衝撃圧縮して、分解や脱窒を防止しながら高密度・高性能の永久磁石を得る、磁石用固形材料の製造方法に関する。
ここで言う高密度とは、原料磁性粉体の真密度に対し体積比にて80%を超える密度のことである。また、ここで言う高性能とは、飽和磁化、残留磁化又は残留磁束密度、保磁力、角形比、最大エネルギー積[(BH)max]の少なくとも一つが従来の希土類−鉄−窒素系磁石よりも高いこと、或いは、磁気特性の安定性が従来の希土類−鉄−窒素系磁石よりも高い要素を有することである。
さらに、ここで言う磁石用固形材料とは、塊状の磁性材料のことを指し、本願では、磁石用固形材料を構成する磁性材料の粉末同士が直接、または金属相若しくは無機物相を介して、連続的に結合し、全体として塊状を成している状態の磁性材料をいう。
高性能の希土類磁石として、例えばSm−Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石が知られている。前者は高い熱安定性と耐食性等により、後者は極めて高い磁気特性、低コスト、原料供給の安定性等によりそれぞれ広く用いられている。今日更に高い熱安定性と高い磁気特性を併せ持ち、原料コストの安価な希土類磁石が、電装用や各種FA用のアクチュエータ、あるいは回転機用の磁石として要望されている。
一方、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄化合物をNH3とH2の混合ガス等の中で400℃〜600℃の比較的低温にて反応させる時、N原子及びH原子が上記結晶、例えばTh2Zn17型化合物の格子間位置に侵入し、キュリー温度や磁気異方性の顕著な増加を招来することが報告されている(特許文献1)。近年、かかる希土類−鉄−窒素系磁性材料が前記要望に沿う新磁石材料としてその実用化の期待が高まっている。
窒素と水素を金属間化合物の格子間に有し、菱面体晶又は六方晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系材料(以下R−Fe−N−H系磁性材料という)は、一般に粉体状態にて得られるが、常圧下約600℃以上の温度ではα−Fe分解相と希土類窒化物とに分解し易いため、自己焼結により焼結して磁石用固形材料として得ることは、通常の工業的方法では非常に困難である。
そこで、R−Fe−N−H系磁性材料を用いた磁石としては、樹脂をバインダとしたボンド磁石が生産され、使用されている。しかし、当該材料を用いて作られた磁石は、多くは400℃以上のキュリー温度を有し、本来200℃以上の温度でも磁化を失わない磁性粉体を使用しているにもかかわらず、樹脂バインダの耐熱温度が低いことが一つの大きな原因となって不可逆減磁率が大きくなり、概ね100℃以下の温度でしか使用されていない。すなわち、最近高負荷の要求に対して、150℃以上の高温の環境下で使用される動力源としてのブラシレスモータ等を作る場合、当該ボンド磁石は使用することができないという問題があった。
また、樹脂をバインダとした圧縮成形ボンド磁石を製造する場合、充填率を向上させ、高性能化するには、工業的に難しい10重量トン/cm2以上の成形圧力が必要であり、金型寿命等を考慮すると、混合比率は体積比にて80%以下にせざるを得ない場合が多く、圧縮成形ボンド磁石によっては、R−Fe−N−H系磁性材料の優れた基本磁気特性を十分に発揮できないという問題があった。
すなわち、R−Fe−N−H系磁性材料を原料とするボンド磁石は、従来のSm−Co系、Nd−Fe−B系焼結磁石等と比較して、本来の高い熱安定性及び、磁気特性を十分に発揮できないという問題があった。
前記問題点を解決するために、特許文献2による永久磁石の製造方法が提案されている。しかしながら、当該方法によると、衝撃圧縮後の残留温度をTh2Zn17型希土類−鉄−窒素系磁性材料の分解温度以下に抑制するためには、衝撃圧縮の際の最大圧力を一定の狭い範囲に限定しなければならないという問題があった。これは、従来の衝撃波を用いた場合には、衝撃波自体の持続時間が短いにもかかわらず、磁性材料の温度が高く且つ長い時間にわたって保持される結果、磁性材料が非常に分解され易いからである。
米国特許第5186766号明細書 特許第3108232号公報
本発明の目的は、高密度で高磁気特性を有し、熱安定性、耐酸化性に優れた希土類−鉄−窒素−水素系磁石用固形材料、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題について、鋭意検討した結果、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素系磁性材料粉体に水素を含有させ、磁場中若しくは無磁場で圧粉成形体にした後、水中衝撃波を用いて衝撃圧縮固化し、衝撃圧縮の持つ超高圧剪断性、活性化作用、短時間現象などの特徴を活かして、衝撃圧縮後の残留温度をR−Fe−N−H系磁性材料の分解温度(常圧で約600℃)以下に抑制して分解を防ぐことにより、R−Fe−N−H系磁性材料を主として含有する高密度の磁石用固形材料を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
また、本発明者等は、更に、上記水中衝撃波を用いた場合、R−Fe−N−H系磁性材料と軟磁性の粉体や固体、或いは非磁性材料の粉体又は固体を容易に一体化できることも見出し、本発明を完成した。
本発明の磁石用固形材料は樹脂等のバインダを含まないものである。
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
(1)菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が、一般式RαFe100-α-β-γβγで表され、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素であり、又、α、β、γは原子百分率で、3≦α≦20、5≦β≦30、0.01≦γ≦10であることを特徴とし、その希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が80体積%を超えて100体積%まで含有した磁石用固形材料。
(2)前記R及び/又はFeの10原子%以下をNi、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Os、Irから選ばれる少なくとも一種の元素と置換したことを特徴とする(1)に記載の磁石用固形材料。
(3)前記N及び/又はHの10原子%以下をC、P、Si、S、Alから選ばれる少なくとも一種の元素と置換したことを特徴とする(1)又は(2)に記載の磁石用固形材料。
(4)菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が、一般式RαFe100-α-β-γ-δβγδで表され、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Pd、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、Biから選ばれる少なくとも一種の元素及び/又はRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、塩化物、硝酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、又、α、β、γ、δはモル百分率で、3≦α≦20、5≦β≦30、0.01≦γ≦10、0.1≦δ≦40であることを特徴とし、その希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が80体積%を超えて100体積%まで含有した磁石用固形材料。
(5)前記Rの50原子%以上がSmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(6)前記Feの0.01〜50原子%をCoで置換したことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(7)Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも一種の元素を含む軟磁性材料が均一に分散され、一体化していることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(8)希土類−鉄−ほう素系磁性材料、希土類−コバルト系磁性材料、フェライト系磁性材料から選ばれる少なくとも一種の磁性材料が均一に添加混合され、一体化していることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(9)磁性材料の粒界に非磁性相が存在することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の磁石用固形材料と軟磁性の固形金属材料とを接合して一体化したことを特徴とする磁石用固形材料。
(11)軟磁性層を有し、軟磁性層と交互に積層されて一体化していることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(12)少なくとも一部が非磁性の固形材料で覆われたことを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(13)磁気異方性を付与したことを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
(14)円柱状又は円筒状又はリング状又は円板状又は平板状に成形したことを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の磁石用固形材料。
本発明のように、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性粉体等を圧粉成形し、水中衝撃波により衝撃圧縮することにより、バインダを必要とせず、自己焼結によらずに、又、分解、脱窒を防いで、高密度な磁石用固形材料とすることにより、高性能な固形状永久磁石を得ることができる。
希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料と軟磁性の固形状金属を接合して一体化して得られた磁石用固形材料の断面の一例を示す説明図である。 希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料層と軟磁性層が交互に積層され一体化した磁石用固形材料の断面の一例を示す説明図である。 希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料を主として含有する層の周辺の一部又は全部を非磁性の固形状材料で覆った磁石用固形材料の断面の例を示す説明図である。 磁石用固形材料の断面の一例を示す説明図である。 水中衝撃波を用いた衝撃圧縮法を実施する手段の一例を示す説明図である。 比較例で使用した、爆薬の爆轟波を直接用いた衝撃圧縮法を実施する手段の一例を示す説明図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の磁石用固形材料は水中衝撃波の衝撃波圧力を用いて原料成形体を圧縮固化することにより製造することができる。
衝撃波圧力が3〜40GPaの水中衝撃波を用いて圧縮固化することにより、原料磁性粉体の真密度に対し体積比にて80%を超える密度の磁石用固形材料を得ることができる。衝撃波圧力が3GPaより低いと、必ずしも密度が80%を超える磁石用固形材料を得ることができない。また、衝撃波圧力が40GPaより高いと、α−Fe分解相等の分解物が生じ易く、好ましくない。衝撃波圧力が3〜40GPaの水中衝撃波を用いて圧縮固化する場合は、原料磁性粉体の真密度に対し体積比にて80%を超える密度の磁石用固形材料を再現性良く得ることができる。また、衝撃波圧力が6〜40GPaの水中衝撃波を用いた場合は、密度が90%を超える密度の磁石用固形材料を得ることができる。
本発明の磁石用固形材料に用いられるR−Fe−N−H系磁性材料は、公知の方法(例えば、米国特許第5186766号、米国特許第5164104号、特許第2703281号公報、特許第2705985号公報、特許第2708568号公報、特許第2739860号公報、特許第2857476号公報等参照)により調製される。
例えば、希土類−鉄合金を高周波法、超急冷法、R/D法、HDDR法、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法などで調製し、数十〜数百μm程度に粗粉砕した後、窒素−水素混合ガス、アンモニア−水素混合ガスなどの雰囲気下で窒化水素化処理を行って微粉砕を行い、R−Fe−N−H系磁性材料を調製する。磁性材料の組成、合金の処理法や窒化/水素化法によっては粗粉砕や微粉砕を必要としない場合もある。
本発明においては、工程のいずれかの段階で水素ガス、アンモニアガス、水素を含む化合物などの水素源と接触させ、窒素のみならず水素を導入することが重要である。即ち、R−Fe−N−H系磁性材料の水素量については、0.01原子%以上含むことが好ましい。この水素量が0.01原子%未満であると、しばしばα−Fe分解相及び希土類窒化物分解相が生じ、保磁力が低くなり、更に耐食性が低下する場合もあり好ましくない。水素量を0.1原子%以上含有しておれば、さらに好ましい磁石用固形材料の原料となる。
好ましい磁性材料の結晶構造は、Th2Zn17型結晶構造等又はそれと同様な結晶構造を有する菱面体晶、又はTh2Ni17、TbCu7、CaZn5型結晶構造等又はそれと同様な結晶構造を有する六方晶が挙げられ、そのうち少なくとも一種を含むことが必要である。この中でTh2Zn17型結晶構造等又はそれと同様な結晶構造を有する菱面体晶が最も好ましい。
以上のR−Fe−N−H系磁性材料は、0.1〜100μmの平均粒径を有する粉体状として得られ、磁石用固形材料の原料として供給される。平均粒径が0.1μm未満であると、磁場配向性が悪くなり、残留磁束密度が低くなる。逆に平均粒径が100μmを超えると保磁力が低くなり、実用性に乏しくなる。優れた磁場配向性を付与させるために、更に好ましい平均粒径の範囲は1〜100μmである。
また、R−Fe−N−H系磁性材料は、高い飽和磁化、高いキュリー点とともに、大きな磁気異方性を有することが特徴である。従って、単結晶粉体とすることができる場合には、外部磁場により容易に磁場配向することができ、高い磁気特性を持つ異方性磁石用固形材料とすることができる。
R−Fe−N−H系磁性材料の大きな特徴の一つは、耐酸化性が比較的高く、錆が発生しにくい点である。
Nd−Fe−B系焼結磁石は、磁気特性が極めて高く、VCMなどのアクチュエータや各種モータに多用されているが、表面が常温の大気中でも容易に酸化してしまうため、錆落ち防止の目的でニッケルメッキやエポキシ樹脂コーティングなどにより表面処理することが必須となる。
これに対して、R−Fe−N−H系磁性材料を用いた磁石の場合、上記の表面処理を必要としないか、或いは簡便なものとすることができる。即ち、コスト的に有利であるだけでなく、アクチュエータやモータとして使用する場合、ステータとロータ間のギャップが磁性の低い表面層分だけ狭く取れるので、回転や反復運動のトルクを大きく取れる利点があり、磁石の磁力を最大限活かすことができる。
このため、例えば(BH)max値がNd−Fe−B系磁石より劣る場合であっても、同様なパフォーマンスを発揮することができる。R−Fe−N−H系磁性材料を含有した磁石においては、表面処理を必要としない場合、(BH)max値が200kJ/m3以上であればコストパフォーマンスの優れた好ましい磁石となり、240kJ/m3以上であれば更に好ましい。
しかし、R−Fe−N−H系磁石材料は微粉体であるため、連続孔であるボイド等の酸素の通り道が多く存在すると、微粉体の表面が酸化劣化して保磁力が低下する要因となる。従って、十分に密度を上昇させ、表面からの酸素の進入を防ぐことが必要である。従って、充填率は95%以上、好ましくは98%以上であることが要求され、特に表面近くの充填率は100%近いことが要求される。
ところで、水素を含有しないTh2Zn17型R−Fe−N系磁性材料は、磁気特性の最適化を図ろうとした場合、窒素量がR2Fe17当たり3個より少なくなり、熱力学的に不安定なR2Fe173-Δ相が生じる。この相は、熱的、機械的なエネルギーにより容易にα−Feと窒化希土類とへ分解する結果、従来の衝撃波圧縮によっては高性能な磁石用固形材料とはなり得ない。
これに対し、水素が上記で規定される範囲内に制御されれば、通常、その主相は熱力学的に安定なR2Fe173x相又は余剰な窒素を含むR2Fe173+Δx相(通常xは0.01〜2程度の範囲)になって熱的、機械的なエネルギーによるα−Fe及び窒化希土類への分解は、Hを含まないTh2Zn17型R−Fe−N系磁性材料に比べて顕著に抑制される。
このことは、密度が高く、高磁気特性で、熱安定性、耐酸化性の優れた磁石用固形材料を得るための重要な知見に他ならない。
本発明で用いるR−Fe−N−H系磁性材料は、ニュークリエーション型、ピンニング型、エクスチェンジスプリング型、交換結合型など磁化反転のメカニズムが異なる各種磁性材料を磁石用固形材料とすることができる。これら全ての磁性材料は、いずれも600℃を超える温度で分解反応が生じるため、高温で高密度化する焼結法によっては磁石用固形材料とすることができないものであり、本発明の衝撃圧縮法を用いて成形することが非常に有効な材料群である。
上述のように、R−Fe−N−H系磁性材料はHを含まないR−Fe−N系磁性材料に比べて、熱的・機械的エネルギーによる分解が顕著に抑制されるが、仮に、これが分解して、100nmを超える粒径の大きなα−Fe分解相と希土類窒化物相とが生じた場合、高価な希土類が多く含まれているのにも関わらず、α−Fe分解相が逆磁区の芽となり、保磁力が大きく低下して好ましくない。
そこで、予めR−Fe−N−H系磁性材料の副相として、Fe、Co、Fe−Co、パーマロイなどのFe−Ni、Fe−Co−Ni及びそれらの窒化物、さらに以上の成分と前記したM成分との合金、化合物などの軟磁性相を含有させる場合、かかる軟磁性相の粒径または厚さが5〜100nm程度となるように調製することによって、実用的な保磁力を維持できる上に、高価な希土類の量を節約することができ、コストパフォーマンスの高い磁石が得られる。
これらの軟磁性副相は、特にR−Fe−N−H系磁性材料の残留磁束密度を向上させる効果を有する。しかし、軟磁性相の粒径または厚さが5nm未満であると飽和磁化が小さくなってしまい、又、100nmを超えると軟磁性相と硬磁性相並びに軟磁性相同士の交換結合による異方性を保持できなくなり、逆磁区の芽となって保磁力が極端に低くなるので、好ましくない。
このような微構造を達成するために、R−Fe原料の作製法として、M成分を加え、超急冷法によりR−Fe−M原料とする公知の方法や、メカニカルアロイング法又はメカニカルグラインディング法などの公知の方法、又はそれに準じた粉砕法でR−Fe又はR−Fe−M原料を作製するなどの方法を採用できる。
また、このとき、軟磁性副相の量は5〜50体積%であることが好ましい。5体積%未満であると、保磁力は比較的高くなるが、残留磁束密度がR−Fe−N−H系材料単独の場合よりさほど高くならず、50体積%を超えると逆に残留磁束密度は高くなるが保磁力が大きく低下し、何れも高い(BH)maxが得られない。より好ましい軟磁性相量の範囲は10〜40体積%である。
更に、Nd−Fe−B系などの希土類−鉄−ほう素系磁性材料、SmCo5系やSm2Co17系のような希土類−コバルト系磁性材料、フェライト系磁性材料などの硬磁性粉体のうち一種又は二種以上を、50体積%以下の範囲内で、R−Fe−N−H系磁性材料と混合することにより、用途に応じて磁気特性、熱安定性、コストなどの各種実用化要件が最適化された磁石用固形材料を得ることができる。
一般に、希土類−鉄−ほう素系材料を多く含む程、磁気特性全般が高くなるが、耐食性が低下する上にコスト高となり、希土類−コバルト系磁性材料を多く含む程、熱安定性が向上するが、磁気特性が低下し、コストが高くなり、フェライト系磁性材料を多く含む程、コストが安くなり、温度特性は向上するが磁気特性が大きく低下する。R−Fe−N−H系磁性材料と極端に粒径の異なる他の磁性材料を混合すると、充填率を上げる条件がより広くなる利点がある。
本発明の磁石用固形材料で、特に保磁力が高く角形比の高い磁石とすることを目的として、R−Fe−N−H系磁性材料の粒界に非磁相を存在させることができる。
その方法としては、特許第2705985号公報を初めとする公知の方法、例えば、磁性粉体と非磁性成分を混合して熱処理する方法、磁性粉体表面をメッキ処理する方法、磁性粉体表面に各種蒸着法により非磁性成分をコーティングする方法、磁性粉体を有機金属で処理し該有機金属を光分解させることにより金属成分として粉体表面をコーティングする方法等が挙げられる。さらに、R−Fe−N−H系磁性材料と非磁性成分を混合し圧縮成形した後、衝撃波により圧縮する方法も可能である。
非磁性成分としては、Zn、In、Sn、Ga等の融点が1000℃以下、好ましくは500℃以下の各低融点金属が好ましく、中でもZnを用いると飛躍的に保磁力が上昇し、熱安定性も向上する。
本発明の磁石用固形材料は、軟磁性の固形金属材料と接合して一体化することにより、より高いコストパフォーマンスを実現することができる。Fe材、Fe−Co材、珪素鋼板などをR−Fe−N−H系磁石用固形材料と組み合わせることにより、磁束密度を増強することができ、更に、表面にそれらの材料やNi若しくはNiを含有する材料を張り合わせることで、加工性や耐食性をさらに増すこともできる。
R−Fe−N−H系磁石用固形材料と軟磁性材を接合一体化した例を図1、図2に示す。
図1は、R−Fe−N−H系磁性材料(硬磁性層)と軟磁性の固形状金属(軟磁性層)とを接合して一体化して得られた磁石用固形材料の断面の一例を示す。
図2は、R−Fe−N−H系磁性材料層(硬磁性層)と軟磁性層が交互に積層され一体化された磁石用固形材料の断面の一例を示す。図2のような構成にすると、磁石の表面磁束密度を損なうことなく、低コスト化が図れる。
本発明の大きな特徴として、R−Fe−N−H系磁性材料粉体と軟磁性バルク材又は粉体とを混合することなく、同時に仕込んで衝撃波圧縮した場合、R−Fe−N−H系磁性材料の固化と軟磁性材との一体化を同時に行うことが出来、後工程で一体化の為の、切り出し、溶接、接着剤などによる接着を行う必要がないため、コストメリットが大きい。
本発明の磁石用固形材料は、図3に示すように、その表面の一部又は全部を非磁性の固形材料で覆うことができる。
図3は、非磁性体で覆われた磁石用固形材料の断面を例示する。表面全てを非磁性体で覆うような磁石用固形材料は、耐食性を増す効果もあって、高温高湿の過酷な環境での用途では磁気特性を若干犠牲にしてでも非磁性体の被覆をした方が好適な場合もある。非磁性体としては、分解温度や融点の高い有機物、高分子、無機物、非磁性金属などが挙げられるが、熱安定性が特に要求される用途では非磁性金属や無機物による被覆が好ましい。この場合も又、R−Fe−N−H系磁性材料粉体と非磁性固形材料又は粉体とを混合することなく同時に仕込んで、衝撃波圧縮した場合、R−Fe−N−H系磁性材料の固化と非磁性材との一体化を同時に行うことができる。
磁石用固形材料を異方性化し、磁石とするために、通常着磁を行うが、この際に磁石用固形材料に大きな衝撃が加わり、緻密に固化したR−Fe−N−H系磁石用固形材料をもってしても、割れ欠けの原因となる場合がある。そのため、着磁場や着磁方法によっては、磁石表面の一部又は全部を非磁性の固形材料で覆うことにより耐衝撃性の高い磁石用固形材料とすることが好ましい。
図4は、本発明の他の磁石用固形材料の断面の一例を示すものである。即ち、R−Fe−N−H系磁性材料と軟磁性体及び非磁性体を組み合わせることにより、図4に示すような磁石用固形材料を形成することもできる。
本発明の磁石用固形材料は、着磁後の磁気特性に優れることが特徴である。R−Fe−N−H系材料が磁気異方性材料であった場合、圧縮成形時に80kA/m以上、好ましくは800kA/m以上の磁場で、磁性粉体を磁場配向することが望ましい。更にまた、衝撃波圧縮成形後に1.6MA/m以上、より好ましくは2.4MA/m以上の静磁場若しくはパルス磁場で着磁することにより、残留磁束密度及び保磁力を増加させることが望ましい。
R−Fe−N−H系磁性材料が等方性材料である場合、圧縮成形時の磁場配向は不要であるが、上記のような着磁を行って、充分磁気的に異方化することが必須となる。
また、本磁石用固形材料を着磁し、永久磁石として使用する場合、その用途によっては多種多様な形状が要求される。本磁石用固形材料は、樹脂バインダを含まず、且つ密度が高く、切削加工及び/又は塑性加工により、任意の形状に、通常の加工機で容易に加工することができる。特に、工業的利用価値の高い円柱状、円筒状、リング状、円板状又は平板状の形状に、容易に加工できることが大きな特徴である。ここで言う切削加工とは、一般的な金属材料の切削加工であり、鋸、旋盤、フライス盤、ボール盤、砥石などによる機械加工であり、塑性加工とは、プレスによる型抜きや成形、圧延、爆発成形などである。また、冷間加工後のひずみ除去の為に、当該磁性材料粉体の分解温度以下での焼き鈍し等の熱処理を行うことができる。磁性材料粉体の組成によっては、塑性加工により、磁気異方性を付与したり強化したりすることができ、また熱処理と組み合わせることにより保磁力の調整を行うことも可能である。熱処理は、後述する衝撃波圧縮の後、生じた歪みを焼鈍したり、微細組織の調整を行い各種磁気特性を向上させるためにも用いることができる。更に、R−Fe−N−H系磁性材料に低融点金属を含む場合などにおいて、圧粉成形と同時に或いはその前後に熱処理を行って磁性粉間の仮結合を強固なものとし、その後の取り扱いを容易にすること等にも利用できる。熱処理温度としては100℃以上且つ分解温度未満の範囲で選ばれる。
次に、本発明の磁石用固形材料の製造法、特にその中で本発明の磁石用固形材料の実現を可能とした衝撃波圧縮について述べる。
水中衝撃波による衝撃圧縮方法としては、二重管の最内部に当該粉体を圧粉成形し、中間部に水を入れ、外周部に爆薬を配置し、爆薬を爆轟させることで、前記中間部の水中に衝撃波を導入し、最内部の当該粉体を圧縮する方法や、当該粉体を密閉容器中へ圧粉成形し、水中へ投入し、爆薬を水中にて爆轟させ、その衝撃波により当該粉体を圧縮する方法や、特許第2951349号公報又は、特開平6−198496号公報による方法が選択できる。いずれの方法においても、以下に示す水中衝撃波による衝撃圧縮の利点を得ることができる。
水中衝撃波を用いた本発明の衝撃圧縮法による圧縮固化工程では、衝撃波の持つ超高圧剪断性、活性化作用は、粉体の金属的結合による固化作用と組織の微細化作用を誘起し、バルク固化と共に高保磁力化することも可能である。
このとき、衝撃圧力自体の持続時間は、従来の衝撃波を用いた場合よりも長いが、体積圧縮と衝撃波の非線型現象に基づくエントロピーの増加による温度上昇は極めて短時間(数μs以下)に消失し、分解や脱窒は殆ど起こらない。
水中衝撃波を用いて圧縮した後も残留温度は存在する。この残留温度が分解温度(常圧で約600℃)以上になると、R−Fe−N−H系化合物等も分解が開始され、磁気特性を劣化するので好ましくない。
しかし、水中衝撃波による場合は、従来の衝撃波による場合よりも、残留温度を低く保つことが非常に容易である。
即ち、水中衝撃波は以下のような特徴を有する。
(1)水中衝撃波の圧力は、爆薬と水のユゴニオ関係によって決まり、圧力Pは概略次式で示される。
P=288(MPa){(ρ/ρ07.25−1}
上式より、水中衝撃波を用いた場合には、水の密度ρの基準値ρ0に対する変化に関する圧力Pの増加量が非常に大きいため、爆薬量の調節により容易に超高圧が得られ、その際の磁性材料の温度は従来の衝撃波を用いた場合に比べて容易に低温度に保持される。
(2)衝撃圧力自体の持続時間が長い。
(3)体積圧縮と衝撃波の非線型現象に基づくエントロピーの増加による磁性材料の温度上昇は極めて短時間に消失する。
(4)磁性材料の温度は、その後高く保持されることが少なく、又、長く保持されることが少ない。
(5)衝撃圧力が被圧縮体に均一に負荷される。
水中衝撃波のもつ、これらの優れた特徴によって初めて、R−Fe−N−H系材料が熱分解を起こさず、高密度に容易に圧縮固化される。
更に、圧粉成形を磁場中で行うことにより、磁性材料粉体の磁化容易軸を一方向に揃えることができ、得られた圧粉体を衝撃圧縮固化により固形化しても、配向性は損なわれず、磁気的に一軸性の異方性をもつ磁石用固形材料が得られる。
以上述べたように、磁性粉体として熱的に安定でα−Fe分解相を析出しにくいR−Fe−N−H系材料を選び、上記水中衝撃波圧縮固化法にて固形化することにより初めて高密度な磁石用固形材料を作製することができるのであり、この磁石用固形材料を用いて製造する永久磁石は、高磁気特性で、耐酸化性に優れ、ボンド磁石のように磁性粉体の結合材として樹脂成分を含まないため、熱安定性に優れた特徴を有する。
本発明を実施例に基づいて説明する。尚、R−Fe−N−H系磁性材料の分解の度合いは、成形した磁石用固形材料のX線回折図(Cu−Kα線)をもとに、Th2Zn17型をはじめとする菱面体晶又は六方晶の結晶構造由来の回折線における最強線の高さaに対する、44°付近のα−Fe分解相由来の回折線の高さbの比b/aをもって判断した。この値が0.2以下なら分解の度合いは小さいと言える。好ましくは0.1以下である。さらに好ましくは0.05以下で、この場合、分解はほぼ無いと言える。
但し、上記の判定法は、磁石用固形材料の原料となるR−Fe−N−H系磁性材料にもともとFe軟磁性材料のような44°付近にピークを持つ材料が含有されている場合は適用できない。この場合、R−Fe−N−H系磁性材料と磁石用固形材料におけるb/aの相対比により、分解の有無の目安とすることは可能である。
<実施例1>
平均粒径60μmのSm2Fe17母合金をNH3分圧0.35atm、H2分圧0.65atmのアンモニア−水素混合ガス気流中、465℃で7.2ks窒化水素化を行った後、アルゴン気流中で1.8ksアニールを行い、その後ボールミルにより平均粒径が約2μmとなるように粉砕した。この粉体を、1.2MA/mの磁場中で磁場配向させながら圧粉成形を行うことで成形体を得た。図5は水中衝撃波を用いた衝撃圧縮法を行う装置の一例を示す説明図である。得られた成形体を図5に示す如く銅製パイプ1に入れて銅製プラグ2に固定した。さらに銅製パイプ3を銅製プラグ2に固定し、更に、この間隙に水を充填し、外周部に均一な間隙を設け、紙筒4を配置し、前記間隙中に280gの硝酸アンモニウム系爆薬5を装填し、起爆部6より前記爆薬を起爆し、爆薬を爆轟させた。このとき衝撃破圧力は16GPaであった。
衝撃圧縮後、パイプ1から固化したSm8.8Fe75.113.22.9組成を有する磁石用固形材料を取り出し、4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=1.22T、保磁力HcJ=0.75MA/m、(BH)max=260kJ/m3の結果を得た。又、アルキメデス法により密度を測定した結果、充填率は99%であった。
更に、X線回折法で解析した結果、固化した磁石用固形材料はほとんどα−Fe分解相の析出が起きておらず、Th2Zn17型菱面体晶の結晶構造を有していることが確認された。
爆薬量を調節して同様の実験を多数回繰り返した。
衝撃波圧力が4GPaより低いと、得られた磁石用固形材料の密度は必ずしも80%を超えず、衝撃波圧力が40GPaより高いとα−Fe分解相等の分解物が生じることが確認された。又、密度80%を超える磁石用固形材料をより再現性良く得るためには、衝撃波圧力を3〜40GPaとすることが好ましいことも分かった。又、衝撃波圧力を6〜40GPaとすることで、密度90%を超える磁石用固形材料が再現性良く得られることも確認された。
<実施例2>
所定量のSm及びFeの金属粉体(重量比16.85:83.15)を振動ボールミルで180ks間メカニカルアロイング処理したのち、真空中600℃で7.2ks間熱処理した。この粉体には、Fe軟磁性材料が約30体積%含まれていた。この粉体を、NH3分圧0.35atm、H2分圧0.65atmのアンモニア−水素混合ガス気流中、380℃、1.2ksの条件で窒化水素化処理し、続いて同温度で水素中300sの時間熱処理した。この粉体を用いて、実施例1と同様に、ただし衝撃波圧力を18GPaとすることにより、Sm6.1Fe81.69.23.1なる組成の磁石用固形材料を作製した。
この磁石用固形材料を4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=1.25T、保磁力HcJ=0.40MA/m、(BH)max=209kJ/m3の結果を得た。又、アルキメデス法により密度を測定した結果7.74g/cm3であった。
この材料のX線回折図には、Th2Zn17型菱面体晶の結晶構造以外にα−Fe由来の回折線も観察されたが、この材料はもともとα−Fe分解相ではないFe軟磁性材料を含む材料であるため、固化によってα−Fe分解相が生じたか否かはX線回折法によって厳密に判定することができなかった。なお、透過型電子顕微鏡観察により、Fe軟磁性相の体積分率は約30%、その結晶粒径は10〜50nm程度であった。
<実施例3>
実施例1で得た平均粒径約2μmのR−Fe−N−H系粉体と、平均粒径約25μmで組成がSm11.5Co57.6Fe24.8Cu4.4Zr1.7であるSm−Co系粉体を、体積比で50:50の割合になるようにめのう乳鉢に仕込み、シクロヘキサン中で湿式混合した。
この混合粉体を用いて、実施例1と同様に、ただし衝撃波圧力を14GPaとすることにより、R−Fe−N−H系磁石用固形材料を作製した。この磁石用固形材料を4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=1.10T、保磁力HcJ=0.83MA/m、(BH)max=209kJ/m3であった。
<実施例4>
公知のジエチル亜鉛を用いた光分解法によって、表面にZn金属を被覆した平均粒径約1μmのSm−Fe−Co−N−H磁性粉体を調製し、この粉体を用いて、実施例1と同様に、ただし衝撃波圧力を16GPaとすることにより、Sm8.4Fe64.3Co7.112.63.4Zn4.2なる組成の磁石用固形材料を作製した。この磁石用固形材料を4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=1.27T、保磁力HcJ=0.76MA/m、(BH)max=257kJ/m3であった。密度は7.71g/cm3であった。さらに、X線回折法で解析した結果、固化した磁石用固形材料は、Th2Zn17型菱面体晶の結晶構造を有していることが確認された。44°付近におけるα−Fe分解相の回折線とTh2Zn17型菱面体晶の結晶構造を示す(303)最強線との強度比b/aは0.08であった。
<実施例5>
公知の方法(特開平8−55712号公報)により得た、磁化反転機構がピンニング型である平均粒径30μmのSm−Fe−Co−Mn−N−H系磁性粉体を用いて、実施例1と同様に、ただし衝撃波圧力を14GPaとすることにより、Sm8.5(Fe0.89Co0.1166.8Mn3.618.52.6なる組成の磁石用固形材料を作製した。この磁石用固形材料を4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=1.12T、保磁力HcJ=0.37MA/m、(BH)max=125kJ/m3であった。体積法で求めた密度は7.70g/cm3であった。さらに、この材料のX線回折図には、Th2Zn17型菱面体晶の結晶構造以外にα−Fe分解相由来の回折線も観察された。44°付近におけるα−Fe分解相の回折線とTh2Zn17型菱面体晶の結晶構造を示す(303)最強線との強度比b/aは0.06であった。
<比較例1>
平均粒径20μmのSm2Fe17母合金をN2ガス気流中、495℃で72ks窒化を行うこと以外は実施例1と同様に、ただし衝撃波圧力を18GPaとすることにより、Sm9.1Fe77.713.2なる組成の磁石用固形材料を作製した。
この磁石用固形材料を4.0MA/mのパルス磁場で着磁し磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br=0.96T、保磁力HcJ=0.36MA/m、(BH)max=120kJ/m3の結果を得た。又、アルキメデス法により密度を測定した結果7.50g/cm3であった。
この材料のX線回折図には、Th2Zn17型菱面体晶の結晶構造以外にα−Fe分解相由来の回折線も観察された。44°付近におけるα−Fe分解相の回折線とTh2Zn17型菱面体晶の結晶構造を示す(303)最強線との強度比b/aは0.21であった。
<比較例2>
図6は、爆薬の爆轟波を直接用いて衝撃圧縮を行う装置の一例を示す説明図である。この装置を用いて、実施例1で得た平均粒径2μmのR−Fe−N−H系磁性粉体を銅製パイプ1に入れて銅製プラグ2に固定し、外周部に均一な間隙を設け、紙筒4を配置し、前記間隙中に実施例と同量の硝酸アンモニウム系爆薬5を装填し、起爆部6より前記爆薬を起爆し、爆薬を爆轟させた。衝撃圧縮後、パイプ1から固化した試料を取り出し、X線回折法により解析した結果、衝撃圧縮後はSmNと多量のα−Fe分解相が生成していることが認められ、出発原料のR−Fe−N−H系化合物が分解していることが分かった。このときの回折線の強度比b/aは約3であった。
1 銅製パイプ(粉体を保持する為に使用)
2 銅製プラグ
3 銅製パイプ(水を保持するために使用)
4 紙筒(爆薬を保持するために使用)
5 爆薬
6 起爆部

Claims (14)

  1. 菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が、一般式RαFe100-α-β-γβγで表され、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素であり、又、α、β、γは原子百分率で、3≦α≦20、5≦β≦30、0.01≦γ≦10であることを特徴とし、その希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が80体積%を超えて100体積%まで含有した磁石用固形材料。
  2. 前記R及び/又はFeの10原子%以下をNi、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Os、Irから選ばれる少なくとも一種の元素と置換したことを特徴とする請求項1に記載の磁石用固形材料。
  3. 前記N及び/又はHの10原子%以下をC、P、Si、S、Alから選ばれる少なくとも一種の元素と置換したことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  4. 菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が、一般式RαFe100-α-β-γ-δβγδで表され、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Pd、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、Biから選ばれる少なくとも一種の元素及び/又はRの酸化物、フッ化物、炭化物、窒化物、水素化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、塩化物、硝酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、又、α、β、γ、δはモル百分率で、3≦α≦20、5≦β≦30、0.01≦γ≦10、0.1≦δ≦40であることを特徴とし、その希土類−鉄−窒素−水素系磁性材料が80体積%を超えて100体積%まで含有した磁石用固形材料。
  5. 前記Rの50原子%以上がSmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  6. 前記Feの0.01〜50原子%をCoで置換したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  7. Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも一種の元素を含む軟磁性材料が均一に分散され、一体化していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  8. 希土類−鉄−ほう素系磁性材料、希土類−コバルト系磁性材料、フェライト系磁性材料から選ばれる少なくとも一種の磁性材料が均一に添加混合され、一体化していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  9. 磁性材料の粒界に非磁性相が存在することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の磁石用固形材料と軟磁性の固形金属材料とを接合して一体化したことを特徴とする磁石用固形材料。
  11. 軟磁性層を有し、軟磁性層と交互に積層されて一体化していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  12. 少なくとも一部が非磁性の固形材料で覆われたことを特徴とする上記請求項1乃至11のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  13. 磁気異方性を付与したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の磁石用固形材料。
  14. 円柱状又は円筒状又はリング状又は円板状又は平板状に成形したことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の磁石用固形材料。
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