JP2012066478A - プレコートアルミニウム板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム板1の表面に、膜厚0.2〜7μmの硬質皮膜2を被覆したプレコートアルミニウム板10であって、硬質皮膜2は、Si,F,C,O,Nの元素の合計質量に対して、Fの割合が1〜25%、Siの割合が1〜50%である樹脂からなり、Si,Fを含有する塗料をアルミニウム板1に塗布して210〜280℃で焼付処理して形成されたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
A=[F]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(1)
B=[Si]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(2)
本発明に係るプレコートアルミニウム板10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム板1の表面に、硬質皮膜(樹脂皮膜)2を被覆したものである。本発明のプレコートアルミニウム板10において、硬質皮膜2は、図1に示すようにアルミニウム板1の両面を被覆するものでもよく、片面を被覆するもの(図示省略)でもよい。プレコートアルミニウム板10は、その使用形態に対応した構造とし、例えばプリント基板の製造において中間板として用いる場合(図2参照)は、銅箔6に対向(接触)する面に硬質皮膜2が被覆されているようにする。
以下に、本発明に係るプレコートアルミニウム板を構成する各要素について説明する。
アルミニウム板1は、プレコートアルミニウム板10の基材であり、1000系の工業用純アルミニウム、3000系のAl−Mn系合金、5000系のAl−Mg系合金が適用でき、用途によって選択すればよい。特に、絞り加工やしごきが施される場合にはJIS H4000に規定するA1050,A1100,A3003,A3004が推奨される。また、高強度を要する用途に使用する場合には、A5052,A5182が推奨される。調質、板厚については特に制限はなく、用途や目的に応じて選択することができる。
硬質皮膜2は、その硬さによる耐疵付き性とともに、プリント基板の製造における耐熱性、および銅箔からの離型性を付与するために設けられる。硬質皮膜2は、ケイ素(Si)およびフッ素(F)を含有する樹脂、具体的にはケイ素を結合させたフッ素樹脂からなり、後記するような混合樹脂塗料をアルミニウム板1に塗布して焼付処理することで得られる。そして、硬質皮膜2は、Si、F、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)の合計質量に対するF,Siの割合(%)を、F,Siの濃度(質量%)を近似的に表すものとして次のように規制する。
F,Siの割合がそれぞれ1%未満では、硬質皮膜2の離型性が得られない。さらにSiの割合が1%未満では、硬質皮膜2の硬さが不十分となる。一方、Fの割合が25%を、Siの割合が50%をそれぞれ超えると、硬質皮膜2のアルミニウム板1への密着性が低下し、アルミニウム板1と硬質皮膜2との間に樹脂プライマー層や接着層等を形成する等の処置をしないと、強固に接着することができなくなる。
A=[F]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(1)
B=[Si]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(2)
硬質皮膜2の硬さは、JIS K5600−5−4の規定に従い鉛筆硬度を測定し、キズ判定で4H以上とする。硬さをこの値にすることにより、優れた離型性が発揮される。硬さが4H未満であると、プリント基板の製造における加熱加圧により硬質皮膜2に銅箔が押し込まれるため、銅箔と硬質皮膜2が接着され易く、離型性が低下する。
硬質皮膜2の膜厚は0.2μm以上7μm以下とする。膜厚が0.2μm未満では、プレコートアルミニウム板10において硬質皮膜2の効果が十分に得られない。一方、膜厚が7μmを超えてもさらなる効果の向上は得られ難く、硬質皮膜2の材料のコストが増大する。また、膜厚を前記範囲にすることにより、コイル状のアルミニウム板1に、ロールコーターを使用して連続的に硬質皮膜2を形成できるため、生産性に優れ、コスト面でも望ましい。膜厚が7μmを超えると、ロールコーターのピックアップロールによる塗料の持ち上げ性が不十分となり膜厚のバラつきが著しく大きくなる。反対に、膜厚が0.2μm未満では、ピックアップロールとアップリケーターロールの間の圧力を高くする必要があり、ロールが磨耗し易くなる。
次に、プレコートアルミニウム板の製造方法について説明する。本発明に係るプレコートアルミニウム板の製造方法は、アルミニウム板1の片面または両面にSi,Fを含有する塗料を塗布する塗布工程と、塗布した塗料を210℃以上280℃以下で焼付処理して硬質皮膜(樹脂皮膜)2を形成する焼付工程と、を行うものである。
塗料の塗布は、刷毛塗り、ロールコーター、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、静電塗装機、ブレードコーター、ダイコーター等、いずれの方法で行ってもよいが、特に塗布量が均一になると共に作業が簡便なロールコーターが好ましい。また、アルミニウム板1の表面に0.2〜7μmの範囲の所望の厚さの硬質皮膜2が形成されるように、アルミニウム板1の搬送速度、ロールコーターの回転方向と回転速度等を考慮して、塗布量を適宜調整する。
塗料を塗布したアルミニウム板1を、210℃以上280℃以下で焼付処理して前記塗料を硬化させる。焼付温度とはアルミニウム板1の最高到達温度とする。焼付温度が210℃未満では塗料の硬化が不十分で、硬質皮膜2の硬さが不十分となる。焼付温度が280℃を超えると、塗料が分解し始めるため、硬質皮膜2の硬さが却って低下する。焼付処理時間は20〜60秒間が好ましい。焼付処理時間が20秒未満では焼付が不十分である虞があり、一方、60秒を超えて焼付処理しても、さらなる硬化とはならず、時間あたりの生産性が低下する。焼付処理は、熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー線硬化炉等を用いて行うことができる。
(アルミニウム板の下地処理)
アルミニウム板1として、板厚0.5mmのJIS 5182H18材を適用した。アルミニウム板は、アルカリ水溶液にて表面を脱脂した後、リン酸クロメート処理を施し、Cr換算で20mg/m2のリン酸クロメート皮膜を両面に形成した。
下地処理後のアルミニウム板の片面にSi含有量の異なる含シリコンフッ素樹脂塗料を塗布した。含シリコンフッ素樹脂塗料は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法にて測定して、F:0.1〜10質量%、Si:0.1〜20質量%の範囲となるようにSi含有量を調整した。なお、供試材No.14〜18は、表1の備考欄に示す塗料を塗布した。次に、表1に示す焼付温度(アルミニウム板の最高到達温度)で焼付処理を行って、プレコートアルミニウム板の供試材を作製した。アルミニウム板の加熱方式は、塗料を塗布したアルミニウム板が炉の入口から出口へ移動する連続焼付方式とし、アルミニウム板が炉内を通過する時間を加熱時間とし、これを30秒間に調整した。また、アルミニウム板にヒートラベルを貼り付けてアルミニウム板の最高到達温度を測定した。
鉛筆硬度はJIS K5600−5−4に従い、キズ判定にて測定した。測定結果を表1に示す。
(加熱加圧試験)
プレコートアルミニウム板をプリント基板の製造における中間板として用いたときの加熱加圧を模擬した加熱加圧試験を行った。供試材の皮膜表面に銅箔を光沢面を対向させて重ねて、両面から30kg/cm2で加圧した状態で、90分間180℃に加熱した後、供試材から銅箔を分離した。再び銅箔を重ねて同様に加熱加圧する試験を、同一の供試材について10回行った。1回目と10回目の加熱加圧後に、それぞれ離型性および耐疵付き性の評価を行った。
加熱加圧後に供試材(皮膜)表面から銅箔が容易に分離するものは合格として「○」で、皮膜表面と銅箔が接着して力を入れないと分離できないものは不良として「×」で表1に示す。
加熱加圧後に供試材から分離した銅箔の表面を目視にて観察し、疵や変形が認められたものは不良として「×」、疵や変形のないものは合格として「○」で表1に示す。
2枚の供試材を、皮膜同士を対向させて重ねた状態で、90℃で1分間加熱した後、供試材を1枚ずつに分離した。供試材が容易に分離するものはブロッキング無(合格)として「○」で、皮膜同士が接着して力を入れないと分離できないものはブロッキング有(不良)として「×」で表1に示す。
(潤滑性)
供試材表面(皮膜表面)の潤滑性の評価として、バウデン法(荷重200g)にて摩擦係数を測定した。結果を表2に示す。
1 アルミニウム板
2 硬質皮膜(樹脂皮膜)
Claims (3)
- アルミニウム板と、その片面または両面に形成された膜厚0.2μm以上7μm以下の樹脂皮膜と、を備えるプレコートアルミニウム板であって、
前記樹脂皮膜は、ケイ素、フッ素、炭素、酸素、窒素の合計質量に対して、下式(1)のAで表されるフッ素の割合が1〜25%、下式(2)のBで表されるケイ素の割合が1〜50%であり、鉛筆硬度がキズ判定で4H以上であることを特徴とするプレコートアルミニウム板。
A=[F]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(1)
B=[Si]/([Si]+[F]+[C]+[O]+[N])×100 ・・・(2)
[Si]、[F]、[C]、[O]、[N]は、前記樹脂皮膜におけるケイ素、フッ素、炭素、酸素、窒素の各元素の濃度(質量%)を表す。 - 前記樹脂皮膜は、最表面から膜厚の1/4の深さまでの範囲において、ケイ素の濃度(質量%)がフッ素の濃度(質量%)よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のプレコートアルミニウム板。
- アルミニウム板の片面または両面に樹脂皮膜を形成するプレコートアルミニウム板の製造方法であって、
前記アルミニウム板の片面または両面にSi,Fを含有する塗料を塗布する塗布工程と、
前記塗布した塗料を210℃以上280℃以下で焼付処理して前記樹脂皮膜を形成する焼付工程と、を行うことを特徴とするプレコートアルミニウム板の製造方法。
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