JP2012064662A - 薄膜トランジスタの製造方法および薄膜トランジスタ - Google Patents

薄膜トランジスタの製造方法および薄膜トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】UV露光でも電気的絶縁性が損なわれず、表面濡れ性の変化を利用して印刷法でソース・ドレイン電極のパターニングが可能なゲート絶縁層を有する薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】基板7上にゲート電極42およびゲート絶縁層2が順次形成され、該ゲート絶縁層が形成されたゲート電極上に適宜の間隔でソース電極5aおよびドレイン電極5bが対向配置され、該間隔を含む領域に半導体層6が形成された薄膜トランジスタを、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成し、紫外線照射で表面濡れ性が可変のゲート絶縁層を形成し、紫外線照射で該ゲート絶縁層の露光部位を親水性域に変え、親水性域に電極材料含有溶液を印刷法で塗布・乾燥し、ソース電極及びドレイン電極を形成して薄膜トランジスタを形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、無機材料乃至は有機半導体材料を有する薄膜トランジスタとその製造方法に関するものであり、特に、紫外線(UV光)の照射によりゲート絶縁層の表面を撥液性域から親液性域に変化させ、この表面自由エネルギー差を利用して印刷法によりソース電極およびドレイン電極のパターニングを行う薄膜トランジスタの製造方法とそれにより製造される薄膜トランジスタに関する。
近年、電子ペーパーはもとより、電子IDタグ、フレキシブル太陽電池、フレキシブル有機ELディスプレイなどの分野において、印刷法によってフレキシブル基板上に電子デバイスを作製する試みが活発に行われている。このような電子デバイスは、携帯性に優れ、安価で提供されることが求められることから、構成材料として特に有機材料が期待されている。この根拠として、(1)有機材料は部分的に共有結合している比較的弱い結合体からなる有機分子の集合体であるために低温で作製が可能なこと、あるいは種々の溶媒に溶解するような材料設計が容易であるなど、印刷プロセスにマッチングしやすい材料であること、(2)柔軟性に富むことから基板との密着性が損なわれず、また軽量化が可能であることなど、フレキシブル基板上に作製可能なこと、(3)比較的安価であること、などが理由として挙げられる。
有機材料を構成材料に用いた電子デバイスを実現するためには、この駆動素子である有機薄膜トランジスタの実現が重要となる。有機薄膜トランジスタでは、特に、チャネル部を規定するソース電極およびドレイン電極(ソース・ドレイン電極)の作製、および電気絶縁性にすぐれたゲート絶縁膜材料の選定が重要となる。ここで、絶縁材料として求められる物性としては、高い抵抗値及び絶縁耐圧が必要であり、一般的にその値は体積抵抗値として1×1014Ωcm以上、絶縁耐圧として1MV/cm以上が要求される。
絶縁材料として種々の有機材料が検討されているが、上記抵抗値及び絶縁耐圧を両立する材料として特にポリイミド材料が注目されている。ポリイミド材料には、熱によりポリアミド酸(ポリアミック酸)を脱水重合させてイミド化する熱重合型ポリイミド(イミド化が確立した後は、溶剤に難溶)と、イミド化しても溶剤に可溶な溶剤可溶型ポリイミドがある。溶剤可溶型ポリイミドは、分子設計が限られてしまうことから、一般には熱重合型ポリイミドが多く用いられる。
熱重合型ポリイミドの場合には、先ずポリアミド酸を含有する溶液を印刷法にて基板上に塗布した後、焼成(加熱による閉環反応)によりイミド化してポリイミド膜とするプロセスが適用できるため、取扱い性や作業性が優れ電子デバイスを作製する上で好適な材料である。しかしながら、イミド化反応を引き起こすには一般に200℃以上に加熱する必要があり、このような温度では多くのフィルム基板の上限である200℃を超えてしまうという課題がある。一方で200℃以下の低温焼成では、イミド化反応が完了せず、ポリアミド酸が多く膜中に残った状態となってしまう。これによって、従来の電子素子においては、所望の抵抗値・絶縁耐圧を得ることができず、信頼性が不十分であるとともに、十分な電子素子特性が得られないという欠点があった。
ところで、有機トランジスタや電子素子を作製する際に、エネルギー付与(例えば、紫外線照射)により絶縁層(例えば、ポリイミドからなる絶縁膜)の表面張力(濡れ性)を変化させて、電極や導電層を形成する方法が提案されている(特許文献1〜4参照)。
チャネル部を規定するソース・ドレイン電極の作製方法の一つとして、インクジェット描画プロセス(インクジェット法)を利用したソース・ドレイン電極パターン作製方法がある。インクジェット法により電極パターンを作製する方法は種々挙げられるが、そのうちの一つに、表面自由エネルギーの差を利用する方法がある。
例えば、特許文献1では、ポリイミドを絶縁膜に用いて、UV光をマスク露光することによって光の当たった部分の表面自由エネルギーを上昇させ、未露光部の低い表面自由エネルギーとコントラストを付けることによってポリイミド表面をマッピングし、表面自由エネルギーの高い部分にインクジェットでソース・ドレイン電極を描画し、短チャネルのトランジスタを製造する手法が提案されている。
また、特許文献2では、ポリイミドを含む高分子材料からなる濡れ性変化層上にエネルギーを付与(紫外線照射)し、高表面エネルギー部に導電性材料を含有する液体を付与(インクジェット法)して電極を形成し電子素子を製造する手法が提案されている。
また、特許文献3では、エネルギー付与(紫外線照射)により臨界表面張力が変化する材料(臨界表面張力が変化する材料が主鎖と多分岐構造を含む側鎖とを有する高分子:可溶性ポリイミド)を含有する濡れ性変化層によってパターン化された電極層を形成して電子素子を製造する手法が提案されている。
また、特許文献4では、絶縁材料(イミド化率80%以上のポリイミド材料)の表面にエネルギー付与(紫外線照射)により形成された高表面エネルギー部位に導電層を形成して電子素子を製造する手法が提案されている。
特許文献1〜4のUV光によってポリイミド絶縁膜の表面自由エネルギー差を生じせしめてマッピングし、この表面自由エネルギー差を利用して電極パターンを形成する方法では、例えば、254nmのUV光で表面自由エネルギーのパターニングが可能なポリイミドを設計することは可能であるが、UV光照射により電気絶縁性が損なわれると考えられる。しかしながら、いずれの提案もUV光による電気絶縁性の劣化に対する対策に関しては配慮されておらず、したがってこれらに関する記述も無い。
ポリイミドを絶縁層(絶縁膜)に用いる場合、イミド化率の低いポリイミド絶縁層にUV光を照射して露光部分の表面自由エネルギーを変化させ、非露光部分とのエネルギー差によって電極を形成する技術では、特に波長の短いUV光によって絶縁膜がダメージを受けて最も重要な電気絶縁性の機能が損なわれてしまう可能性がある。しかしながら、従来はこの点に関して、十分な対策が施されていないのが現状である。
電子デバイスの絶縁層(絶縁膜)に用いる絶縁材料としてのポリイミドは、一般に下記反応式(2)に示す脱水反応を経るポリアミック酸(ポリアミド酸)の閉環(イミド化)により得られる。
なお、式(2)中、Xは4価の有機基からなる任意の連結基であり、nは所望の分子量に応じた繰り返し単位数である。
しかし本発明者らの検討によれば、電子デバイスの絶縁膜(薄膜)とした際に、上記反応式(2)で表される脱水反応を経るポリアミド酸の閉環が十分ではなくてイミド化率が低い場合、未反応のポリアミック酸が薄膜中に残存し、所望の抵抗値・絶縁耐圧を得ることができないことが判明した。その理由は、薄膜中に残存するポリアミック酸が大気中の水分を吸収することにより薄膜の抵抗値が下がるためである。
一方、下記反応式(3)に示すように、前記反応式(2)に示す脱水反応によって生じた水、およびポリアミック酸溶液中に溶存している水によって、ポリアミド酸のアミド結合が加水分解されてジカルボン酸が生成し、さらに加熱により酸無水物が生成する副反応が生じる。
上記反応式(3)に示す副反応によって、ポリアミック酸は低分子化し、ポリイミド薄膜中に酸無水物の不純物が混入することになり、ポリイミド薄膜の絶縁耐圧等、薄膜の信頼性を損ねる原因となっていた。これは、例えば、有機トランジスタ素子のポリイミドからなるゲート絶縁膜において、膜厚方向のゲートリークといった不具合として現れる。さらに、カルボン酸無水物存在下において半導体材料が積層された場合、その界面においてカルボン酸無水物がドーパントとなり、半導体材料の特性を変化させる場合があり、これは電子素子特性の劣化の原因となっていた。
また、印刷法によるパターン形成により、ポリイミド材料層上に電子素子構成材料を塗布する場合、前記反応式(3)に示される様な副反応が生じると、塗工液の溶媒にポリアミック酸、酸無水物等が溶出し、素子特性信頼性の劣化といった問題が生じていた。
以上のように、イミド化率の低いポリイミドからなるゲート絶縁膜上にUV光を照射して露光された部分の表面自由エネルギーを変化させ(高表面自由エネルギー部の形成)、露光されていない部分(低表面自由エネルギー部)とのエネルギー差によって電極を形成する技術では、波長の短いUV光によってゲート絶縁膜が損傷を受け、重要な電気絶縁性が損なわれてしまう。背景技術でも述べたように、従来はこの点に関して十分な対策が施されていない。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、紫外線(例えば、200〜300nmのUV光)の照射によりゲート絶縁層の表面自由エネルギーを制御して表面を所定のパターンで撥液性域から親液性域に変化し、この表面自由エネルギー差を利用して印刷法(例えば、インクジェット法:インクジェット描画プロセス)によりソース電極およびドレイン電極のパターニングが可能であり、且つ、UV光による露光に対して電気的絶縁性が損なわれにくいゲート絶縁層を有する薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。特にイミド化率の低いポリイミドからなるゲート絶縁層であってもUV光照射によって電気絶縁性が損なわれることのない製造方法を目標とする。
以降、「ゲート絶縁層」を、「ゲート絶縁膜」、「絶縁膜」または「絶縁層」と呼称することがある。また、「ソース電極およびドレイン電極」を、「ソース・ドレイン電極」と呼称することがある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔13〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕:上記課題は、基板上にゲート電極およびゲート絶縁層が順次形成され、該ゲート絶縁層が形成されたゲート電極上に適宜の間隔でソース電極およびドレイン電極が対向配置され、該間隔を含む領域に半導体層が形成された薄膜トランジスタの製造方法において、
少なくとも活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成して、撥水性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性が可変であるゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層に紫外線を照射して該紫外線露光部位を撥水性域から親水性域に変化させる工程と、
前記親水性域に電極材料を含有する溶液を印刷法で塗布・乾燥してソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法により解決される。
〔2〕:上記〔1〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記活性水素基を有する樹脂が、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)から選ばれる少なくとも一つの官能基を有することを特徴とする。
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記活性水素基を有する樹脂が、ポリイミド前駆体および/またはフェノール誘導体であることを特徴とする。
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記活性水素基を有する樹脂が、疎水性樹脂であるか、または疎水性樹脂を含有することを特徴とする。
〔5〕:上記〔4〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記疎水性樹脂が、疎水性基を有するポリイミド前駆体であることを特徴とする。
〔6〕:上記〔4〕または〔5〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記含有される疎水性樹脂が、前記活性水素基を有する樹脂と反応性の高い官能基を有さないことを特徴とする。
〔7〕:上記〔3〕または〔5〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記ポリイミド前駆体および疎水性基を有するポリイミド前駆体が、ポリアミド酸であることを特徴とする。
〔8〕:上記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記活性水素基と反応可能なメラミン誘導体が、メラミンとアルデヒド化合物から誘導されるメラミン単分子骨格もしくはポリメラミン骨格からなる誘導体であることを特徴とする。
〔9〕:上記〔8〕に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記ポリメラミン骨格からなるメラミン化合物が、メチル化ポリメラミンであることを特徴とする。
〔10〕:上記〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記メラミン誘導体の含有量が、前記活性水素基を含有する樹脂成分100重量%に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする。
〔11〕:上記〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記紫外線が、200nm以上300nm以下の波長帯であることを特徴とする。
〔12〕:上記〔1〕乃至〔11〕のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記印刷法が、インクジェット法であることを特徴とする。
〔13〕:上記課題は、〔1〕乃至〔12〕のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタにより解決される。
本発明によれば、高エネルギーの紫外線(例えば、200〜300nmのUV光)を照射してもゲート絶縁層(ゲート絶縁膜)の電気的絶縁性が低下することなく、またゲート絶縁膜に電極材料を含有する溶液(電極インク)を印刷法で塗布しても電極インクによってゲート絶縁膜の表面が侵食されにくく、表面自由エネルギー差を利用してインクジェット描画プロセスなどの印刷法によりソース電極およびドレイン電極のパターニングが可能であり、さらにより少ないUV光の露光時間でゲート絶縁膜(濡れ性変化層)の表面を撥液性域(低表面エネルギー部位)から親液性域(高表面エネルギー部位)に変化できることから、効率よく薄膜トランジスタの製造が実施できる。
本発明の薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層の原理的構成例を示す断面模式図である。 実験例5、実験例6で作製した薄膜に対する電極インクの接触角とUV露光量の関係(パラメータ:メラミン添加量)を示す図である。 実施例1、比較例1で作製した薄膜トランジスタの構成を示す断面模式図である。
前述のように本発明における薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極およびゲート絶縁層が順次形成され、該ゲート絶縁層が形成されたゲート電極上に適宜の間隔でソース電極およびドレイン電極が対向配置され、該間隔を含む領域に半導体層が形成された薄膜トランジスタの製造方法において、
少なくとも活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成して、撥水性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性が可変であるゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層に紫外線を照射して該紫外線露光部位を撥水性域から親水性域に変化させる工程と、
前記親水性域に電極材料を含有する溶液を印刷法で塗布・乾燥してソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
以下、本発明について詳細を図面と共に説明する。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート絶縁層を形成する工程では、少なくとも活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成して、撥液性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性が可変である絶縁層を形成する。即ち、「ゲート絶縁層」は、紫外線照射により表面濡れ性が変化する機能を有するものであることから、以下「濡れ性変化層」と呼称して説明する。
[濡れ性変化層]
まず、一つの実施態様を例に本発明における濡れ性変化層について説明する。
図1は、本発明の薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層の原理的構成例を示す断面模式図である。
本実施の形態のゲート絶縁層は、例えば、基板(図示せず)上に形成された濡れ性変化層2により構成されている。
ここで、濡れ性変化層2は200〜300nmの紫外線(UV光1)の照射によって表面自由エネルギー(臨界表面張力ともいう)が変化する材料を含む層であって、本実施の形態では、少なくとも表面自由エネルギーの異なる2つの部位として、より表面自由エネルギーの大きな高表面エネルギー部3と、より表面自由エネルギーの小さな低表面エネルギー部4とを有している。
図1において、2つの高表面エネルギー部3の間隔は、例えば、1〜5μm程度の微小ギャップに設定されている。そして、濡れ性変化層2に対して高表面エネルギー部3の部位には、それぞれソース電極およびドレイン電極(ソース・ドレイン電極5)が形成され、かつ、濡れ性変化層2に対して少なくとも低表面エネルギー部4に接するようにして半導体層6が設けられている。つまり、ゲート絶縁層をなす濡れ性変化層2にUV光1を照射して、UV露光部位を撥水液性域から親水性域に変化させ、親水性域に、例えば、電極材料を含有する溶液を印刷法で塗布・乾燥してソース電極およびドレイン電極(ソース・ドレイン電極5)が形成される。尚、図1において、符号5の一方がソース電極であり、他方がドレイン電極である。
[濡れ性変化層の構成材料]
また、図1を参照して、濡れ性変化層2の構成材料について以下に詳述する。
濡れ性変化層2は、撥液性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性の制御が可能に構成される。本発明においては、少なくとも良好な電気絶縁性と濡れ性変化の機能を満たすため、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成して濡れ性変化層2を形成する。
ここで、前記活性水素基を有する樹脂が、疎水性樹脂であるか、または疎水性樹脂を含有することが好ましい。即ち、濡れ性変化層として良好な電気絶縁性と濡れ性変化の機能を満たすものであれば、メラミン誘導体と反応可能な活性水素基を有する樹脂1種類の構成でもよいが、メラミン誘導体と反応可能な活性水素基を有する樹脂と疎水性樹脂(活性水素基を有していてもよい)を含む2種類以上の構成が望ましい。つまり、活性水素基を有する樹脂1種類の構成の場合は、良好な電気絶縁性を有し、且つ紫外線照射によって表面自由エネルギーが低い状態から高い状態に変化可能な樹脂であることが必要である。
前記疎水性樹脂としては、例えば、炭化水素[−(CHCH(nは自然数)などのアルキル基]や、フッ化炭素[−(CFCF(nは自然数)などのフロロアルキル基]が側鎖に付いた、所謂、活性水素基を有していてもよい疎水性基(撥水性基)を有する樹脂が挙げられる。
具体的には、電気絶縁性のより大きな材料、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、あるいはポリビニルフェノールやポリビニルアルコールに架橋剤を添加したもの等、に前記の疎水性基(撥水性基)が側鎖に付いた樹脂などが挙げられる。
また、前記活性水素基を有する樹脂としては、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物(樹脂)が好ましく、ポリイミド前駆体および/またはフェノール誘導体であることが望ましい。
また、疎水性樹脂(活性水素基を有していてもよい)として、疎水性基を有するポリイミド前駆体(ポリアミド酸)、特に側鎖に疎水性基(撥水性基)を有するポリアミド酸が好ましく用いられる。
前記2種類以上の構成場合、少なくとも一方が撥水性を発現する材料(疎水性樹脂(活性水素基を有していてもよい))であり、他方(活性水素基を有する樹脂)が良好な絶縁性を発揮しつつ撥水性を発現する材料を一体に保持する支持材料としての役割を担う。即ち、少なくとも、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体、撥水性を発現する材料(疎水性樹脂(活性水素基を有していてもよい))と、これを一体に保持する支持材料(活性水素基を有する樹脂)を溶媒中に混合した溶液を基板上に塗布し、溶媒を除去して焼成することにより、電気絶縁性に優れ、且つ濡れ性変化にも優れた濡れ性変化層2を形成することが可能となる。
前記2種類以上の構成とすることにより、濡れ性変化は大きいが成膜性等に問題がある材料を用いることが可能となるため、選択できる材料が多くなる。具体的には、一方の材料の濡れ性変化はより大きいが凝集力が強いために成膜することが困難な材料である場合、この材料を成膜性の良いもう一方の材料と組み合せて混合することで、目的とする前記特性を満たす濡れ性変化層を容易に作製することが可能となる。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法における絶縁層は紫外線照射により表面濡れ性が可変である濡れ性変化層からなり、前述のような撥水性を発現する材料からなる。
[撥水性材料]
撥水性を発現する材料は、紫外線(例えば、200〜300nmのUV光)を付与することにより表面自由エネルギーが大きく変化する(低表面エネルギー状態から高表面エネルギー状態に変化する)材料である。このような材料の場合、図1で示した濡れ性変化層2の所定部分に紫外線を照射して高表面エネルギー部3とし、紫外線非照射部の低表面エネルギー部4と表面自由エネルギーの異なるパターンを形成することにより、次工程の電極形成(ソース電極およびドレイン電極を形成する工程)を確実、且つ容易に行うことができる。
つまり、電極形成工程で用いる導電性材料を含有する溶液が、高表面エネルギー部3(親水性域)には付着しやすく、低表面エネルギー部4(撥水性域あるいは疎水性域)には付着しにくくなる。このため、導電性材料を含有する液体が、紫外線照射により形成された親液性域のパターン形状に従って選択的に付着するので、付着した導電性材料を乾燥・固化することにより電極(ソース電極およびドレイン電極)が形成される。
一般的に、紫外線のような高エネルギー光を照射しない限り、有機材料の表面自由エネルギーを変化させることは困難であることから、本発明における前記濡れ性変化層(絶縁層)を構成する材料は、紫外線の光感度が非常によく、紫外線の照射量をより低下することができるものが好ましく用いられる。また、紫外線を露光した部位にのみ電極が形成できるようにするためには、紫外線が照射されない部位が、より表面自由エネルギーの低い(撥水性を示す)状態であることが望まれる。
撥水性を発現する材料としては、側鎖に撥水性基を有する材料(疎水性基を有する樹脂(疎水性樹脂))が用いられる。ここで疎水性基(撥水性基)とは、前述のように、炭化水素(アルキル基、アルケニル基等:例えば、−CH−、−CHCH等)フッ化炭素(フロロアルキル基、フロロアルケニル基等:例えば、−CF−、−CFCF、−CF(CF、−CFH等)などの基を指す。
また、疎水性樹脂としては、活性水素基を有する樹脂と反応性の高い官能基を有さない(反応しない)ものが好ましく、特にヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)と反応する部位を有していない材料が特に望ましい。
上記ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)と反応性の高い部位を有する材料の例としては、例えば、自己組織化膜を形成可能な材料として知られている種々のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤として、例えば、オクタデシルトリクロロシラン(信越化学などから市販品として購入可能)などのトリクロロシリル化合物が挙げられる。
これらシランカップリング剤の撥水能は非常に高いが、一方で前記活性水素基を有する樹脂(支持材)との反応性も高く、後述の実施例で記載するように、紫外線を照射しても撥水性がほとんど変化しない絶縁層(ゲート絶縁膜)を形成してしまう。このような絶縁層では表面自由エネルギーを利用した電極形成が困難である。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法において使用することができる疎水性基を有する樹脂(疎水性樹脂)は、一般に凝集性が強いために種々の溶剤に対する溶解性はあまり高くない。疎水性基を有する樹脂を単独で(活性水素基を有する樹脂が疎水性樹脂であるものを用いて)溶媒に溶解させてスピンコートやフレキソ印刷など種々の印刷方法によって濡れ性変化層を形成することも可能であるが、前述のように支持材料(活性水素基を有する樹脂)と、疎水性樹脂を混合した(活性水素基を有する樹脂に疎水性樹脂を含有させる)溶液を塗布することにより薄膜を形成することがより望ましい。
[支持材料]
撥水性を発現する材料(疎水性樹脂)を一体に保持する支持材料(バルク材料)として、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)などの活性水素基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する活性水素基を有する樹脂が好ましく、このような樹脂としては、一般的には、印刷法に好適な有機材料、例えば、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルブチラール、ポリイミド前駆体などが用いられるが、有機−無機からなるハイブリッド材料を用いることも可能である。
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を用いる場合には、例えば、ガンマブチルラクトンやn−メチルピロリドンなどの溶媒に溶解した溶液で用いることもできる。
絶縁層(濡れ性変化層)として良好な電気的絶縁性を必要とする場合には、支持材料として、電気的絶縁性の高いポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸、ポリアミドイミド、エポキシ、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、アセチル化処理を施したプルランなどを用いることができる。あるいは、フェノール樹脂やポリビニルフェノールなどのフェノール誘導体やポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、プルランなどの多糖類に架橋剤を添加して用いることも可能である。
少なくとも活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液(コーティング剤)を塗布・焼成して、撥水性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性が可変である絶縁層(濡れ性変化層)を形成する工程において、一回の塗工で濡れ性変化層を形成する際、支持材料の撥水性が撥水性を発現する材料(疎水性樹脂)よりもより低い(水接触角が低い)材料を用いると、これらを混合した溶液を塗布して溶媒を除去すると、疎水性樹脂が支持材料と分離し、基板に近い側に支持材料が分布し、基板から遠い側に疎水性樹脂が分布した積層構造、あるいはこれに準じた積層構造とすることができる。ここで、上記コーティング剤の塗布・焼成により、積層ライクな構造を作製することが望ましいので、撥水性を発現する材料(活性水素基を有していてもよい疎水性樹脂)ならびに支持材料(活性水素基を有する樹脂)、また活性水素基と反応可能なメラミン誘導体は、共に同じ溶媒に溶解することが望ましい。また、支持材料は、1種類の材料のみではなく、2種類以上の材料からなっていても構わない。例えば、電気的絶縁性を高める材料と、比誘電率の高い、または低い材料を混合する、といった場合が考えられる。
[活性水素基と反応可能なメラミン誘導体]
絶縁層(濡れ性変化層)を形成するために用いられる溶液には活性水素基と反応可能なメラミン誘導体が含有され、焼成により少なくとも活性水素基を有する樹脂と反応して絶縁層が形成される。この際用いる疎水性樹脂に活性水素基が存在すれば同様にメラミン誘導体と反応する。
即ち、焼成により、メラミン誘導体が、前記支持材料(活性水素基を有する樹脂)あるいは撥水性を発現する材料(疎水性基を有する樹脂が活性水素基を有する場合)の活性水素基(−OH、−COOH、−CONH−等)と反応し、それによって2次元乃至は3次元架橋構造を形成する。この結果、網目構造が発達して強固な分子構造となるために電気絶縁性が向上する。
前述のように、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体としては、メラミンとアルデヒド化合物から誘導されるメラミン単分子骨格もしくはポリメラミン骨格からなる誘導体であることが好ましい。
例えば、ポリメラミン骨格からなるメラミン誘導体としては、メチル化ポリメラミンの他に、ブチル化ポリメラミンやイソブチル化ポリメラミン(シグマアルドリッチ社などから購入可能)などのメラミン樹脂が挙げられる。また、メラミン単分子骨格からなるメラミン誘導体としては、メラミン単分子誘導体(三井化学などから購入可能)が挙げられる。
メラミン単分子骨格もしくはポリメラミン骨格からなるメラミン誘導体の含有量は、前記活性水素基を含有する樹脂成分[活性水素基を有する樹脂(疎水性基を有する樹脂が活性水素基を有する場合には含む)]100%重量に対して0.1〜10重量%(固形分濃度比)であることが好ましく、より好ましくは0.3から5重量%である。
[ゲート絶縁膜(濡れ性変化層)の形成方法]
本発明における濡れ性変化層である絶縁層(ゲート絶縁膜)は、少なくとも、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体、および活性水素基を有する樹脂および/または活性水素基を有していてもよい疎水性樹脂を含有する溶液(コーティング剤)を用い、スピンコート、ダイコート、インクジェット、凸版、凹版、平版、オフセット印刷法、スクリーン印刷法など種々印刷方法により塗布して塗膜を形成し、これを、乾燥および/または焼成することにより形成することができる。
目的とするゲート絶縁膜の膜厚に応じてコーティング剤の溶媒の粘度は調整される。ただし、ゲート絶縁膜の厚みがデバイスの電気特性に直接関わるため、3μm以下の薄膜を形成することに好適な手法が望ましい。コーティング剤を塗布した状態では溶媒が膜中に残っているため、乾燥ならびに焼成を行う必要がある。例えば、熱エネルギーの付与、紫外線の照射、真空乾燥などの処理を行うことが必要である。
なお、電子デバイスへの用途においてコーティング剤を用いる場合には、形成される膜中に残存する溶媒の影響を考慮して沸点の低い溶媒を選ぶのが望ましい。なお、溶媒は1種類に限らず、混合溶媒を用いることも可能である。
[ゲート絶縁膜(濡れ性変化層)の構造]
濡れ性変化層からなるゲート絶縁膜の構造は、一層構造でもよいし、二層以上の積層構造からなっていてもよい。
一層構造のゲート絶縁膜の場合には、電気絶縁性を兼ね備えた濡れ性変化層から構成される。これが2種類以上の材料から形成されているものも好ましく用いられ、例えば、少なくとも1種類は電気絶縁性に優れた材料であって、他の材料の少なくとも1種類は濡れ性変化の大きい材料からなる構成でもよい。さらに、デバイス特性を向上させる目的で、誘電率が6を超えるような材料や3よりも小さい材料を混合してもよい。このような層は、例えば、全ての材料を1種類ないしは複数の溶媒に溶解させ、この溶液を基板上に塗布し、溶媒を除去した後に形成することが可能である。
次に、積層構造のゲート絶縁膜の場合について説明する。
この場合は電気絶縁性に優れた層と、濡れ性変化層が積層された構造からなる。但し、濡れ性変化層の絶縁性が良好な場合には、絶縁膜層を兼ねることができる。
電気絶縁性に優れた層と濡れ性変化層が積層構造となっている場合は、濡れ性変化層は、紫外線照射により影響を受けることを防ぐため、高絶縁層を形成する材料よりも吸収係数が大きい材料からなることが望ましい。また、デバイスの特性向上のために、濡れ性変化層の誘電率が6を超える材料や3よりも小さい材料から形成されていても構わない。また当然のことながら電気絶縁性に優れた層は、濡れ性変化層よりも絶縁性の高い材料からなる層である。ここで絶縁性とは、体積抵抗がより大きいことを示しているのであって、誘電率の値は6を超えていても構わないし、一方で3よりも小さくてもよい。
これらが2種類以上の材料から形成されるのが望ましいので、例えば、1種類あるいは複数の電気絶縁性に優れた材料からなる電気絶縁層と、1種類ないしは複数の濡れ性変化の大きな材料から構成される濡れ性変化層とが積層された構成でもよい。
[ゲート絶縁膜の厚み]
本実施の形態における濡れ性変化層からなるゲート絶縁膜(例えば、図1の濡れ性変化層2、図3のゲート絶縁層2)の厚さは30nm〜3μmが好ましく、50nm〜1μmがさらに好ましい。30nmより薄い場合にはバルク体としての特性(絶縁性、ガスバリア性、防湿性等)が損なわれ、3μmより厚い場合には表面形状が悪化するため好ましくない。
[基板]
本発明の薄膜トランジスタに用いられる基板は、ガラスでも市販のフィルムでも構わないが、電子デバイス用途としてコーティング剤を用いる場合には、無アルカリガラス基板が望ましい。フィルムも、表面粗さの低いものが望ましい。フィルムとしては、ポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリエチレンナフトレート(PEN)基板などを用いることができる。なお、最近開発の進んだ、ステンレス基板なども場合によっては用いることが可能である。
[電極層]
本発明の薄膜トランジスタに用いられるソース電極およびドレイン電極(ソース・ドレイン電極)、ゲート電極ならびにこれらの配線は、導電性材料を含有する溶液を用いて塗布(例えば、印刷法)し、乾燥(加熱、紫外線照射等によって固化する)ことによって形成される。
なお、導電性材料を含有する溶液には下記のものが含まれる。
(1)導電性材料を溶媒に溶解したもの
(2)導電性材料の前駆体若しくは前駆体を溶媒に溶解したもの
(3)導電性材料粒子を溶媒に分散したもの
(4)導電性材料の前駆体粒子を溶媒に分散したもの
導電性材料を含有する溶液の具体例としては、Ag、Au、Ni等の金属微粒子を有機溶媒や水に分散したもの、ドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液、等を例示することができる。
[電極層の作製方法]
電極材料を含有する溶液を、紫外線の照射により変化した親液性域(例えば、図1の濡れ性変化層2の表面自由エネルギーの高い部位3)に付与する方法として、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等の各種塗布法を用いることができるが、濡れ性変化層の表面エネルギーの影響を受けやすくするためには、より小さな液滴を供給できるインクジェット法が特に好ましい。
プリンタ等に使用されるレベルの通常のヘッドを用いた場合、インクジェット法の解像度は30μm、位置合わせ精度は±15μm程度であるが、濡れ性変化層における表面自由エネルギーの高い部位と表面自由エネルギーの低い部位との表面エネルギーの差を利用することにより、それよりも微細なパターンを形成することが可能となる。
なお、ゲート電極を形成する場合にも同様の手法が適用でき、その場合には、ゲート電極を設ける下部に濡れ性変化層を形成し、紫外線の照射によって変化させた所定の親液性域に表面自由エネルギー差を利用して電極材料を含有する溶液を塗布し、ゲート電極を形成することが可能である。
[半導体層]
本発明の薄膜トランジスタの半導体層(例えば、図1、図3の半導体層6)に用いられる半導体材料としては、CdSe、CdTe、Si等の無機半導体や、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリフランおよびその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリンおよびその誘導体等のイオン性導電性高分子、等の有機半導体を用いることができる。
特に、上記の群から選ばれる少なくとも1種の有機半導体材料を溶媒に分散または溶解した塗工液を用いた場合に、濡れ性変化層(例えば、図1の濡れ性変化層2)を有する本発明の構成において特性向上の効果がより顕著に現れる。
半導体材料を含有する液体をチャネル部に付与する方法として、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング、インクジェット法等の各種塗布法を用いることができるが、より小さな液滴を供給できるインクジェット法が特に好ましい。いわゆるコーヒーステイン効果を利用することで、より微細なパターンを形成することが可能となる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実験例1]
活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(メチル化ポリメラミン樹脂)、および活性水素基を有する樹脂(ポリアミド酸)を含有する下記溶液を調製し、これを用いて形成した薄膜性状と、イミド化率およびメラミン添加有無の効果の関係について調べた。
熱重合型ポリイミド材料(ポリアミド酸)CT4112(京セラ化学社製)をn−メチルピロリドンに溶解した溶液(濃度10重量%)に、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させ溶液とした。なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、CT4112のn−メチルピロリドン溶液100重量部に対して3重量部となるように添加した。
上記溶液をスピンコート法により、良く洗浄したガラス基板上に、厚みが500nmとなるように塗布し、100℃、120℃、130℃、150℃、170℃、220℃の各温度にてそれぞれ不活性ガス雰囲気下で焼成し、溶媒を除去して各薄膜(ポリイミド膜)を得た。続いて、高圧水銀ランプを用いて各ポリイミド膜上にUV光を照射した(UV露光量は10J/cmに調整した。)。
続いて、ナノメートルサイズの銀微粒子を溶媒中に分散させたインク(ナノ銀インク)を、シリンジを用いてそれぞれのポリイミド膜面に吐出し、80℃にてプレ乾燥させた。
下記表1にナノ銀インクを吐出・乾燥したポリイミド膜と銀インクについて目視観察にて評価した結果を示す。
表1における評価基準は下記による。
○:ポリイミド膜ならびに銀に、問題は見られない。
△:ポリイミド膜の一部に問題が見られる。あるいは、銀の形状不良や、銀表面に異常が見られる。
×:ポリイミド膜が溶解している。
[実験例2]
実験例1においてメチル化ポリメラミン樹脂を添加しなかった以外は実験例1と同様にして薄膜(ポリイミド膜)を得た。この薄膜にナノ銀インクを吐出し、80℃にてプレ乾燥させた後、実験例1と同様にポリイミド膜と銀インクについて目視観察にて評価した。結果を下記表1に示す。
表1に示されるように、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(略、メラミン)を添加していないポリイミド膜では、イミド化率が55%未満では、銀インクによって膜面に異常が見られる。一方で、メラミンを添加した系では、少なくとも40%以上では膜面に異常は観察されなかった。このようにメラミンを添加することで、低温で焼成したイミド化率が低いポリイミド膜に対してもインク耐性が得られる。すなわち、イミド化率が低くてもメラミンを添加することにより網目構造が発達して強固な分子構造となるために電気絶縁性の向上も図れる。
[実験例3]
活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(メチル化ポリメラミン樹脂)、および活性水素基を有する樹脂(ポリアミド酸)を含有する下記溶液を調製し、これを用いて150℃で形成した薄膜性状と、UV露光量およびメラミン誘導体添加有無の効果の関係について調べた。
熱重合型ポリイミド材料(ポリアミド酸)CT4112(京セラ化学社製)をn−メチルピロリドンに溶解した溶液(濃度10重量%)に、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させ溶液とした。
なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、CT4112のn−メチルピロリドン溶液を100重量部に対して0.1重量部、0.5重量部、1重量部、5重量部、10重量部となるように変えて添加した。
上記溶液をスピンコート法により、良く洗浄したガラス基板上に、厚みが500nmとなるように塗布し、150℃にて不活性ガス雰囲気下で焼成し、溶媒を除去して薄膜(ポリイミド膜)を得た。続いて、高圧水銀ランプを用いて下記表2に示すUV露光量に調整して各ポリイミド膜上にUV光を照射した。
続いて、ナノメートルサイズの銀微粒子を溶媒中に分散させたインク(ナノ銀インク)を、シリンジを用いてそれぞれのポリイミド膜面に吐出し、80℃にてプレ乾燥させた。
下記表2にナノ銀インクを吐出・乾燥したポリイミド膜と銀インクについて目視観察にて評価した結果を示す。
表2における評価基準は下記による。
○:ポリイミド膜ならびに銀に、問題は見られない。
△:ポリイミド膜の一部に問題が見られる。あるいは、銀の形状不良や、銀表面に異常が見られる。
×:ポリイミド膜が溶解している。
[実験例4]
実験例3においてメチル化ポリメラミン樹脂を添加しなかった以外は実験例3と同様にして薄膜(ポリイミド膜)を得た。この薄膜にナノ銀インクを吐出し、80℃にてプレ乾燥させた後、実験例3と同様に目視観察にて評価した。結果を下記表2に示す。
表2に示されるように、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(略、メラミン)の添加量が0.1重量%以下では、ナノ銀インクに対する耐性は見られない。一方、メラミンの添加量が1重量%以上では、ナノ銀インクに対する耐性が見られ、ポリイミド膜面に異常は見られない。0.5重量%では、UV露光量が多くなければポリイミド膜面に異常は見られないが、7J/cm程度になると、ポリイミド膜が一部溶解する。これはUV照射によって膜がダメージを受けたためと考えられる。
[実験例5] [電極材料インクに対する接触角変化]
活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(メチル化ポリメラミン樹脂)、および活性水素基を有する樹脂(ポリアミド酸)および活性水素基を有していてもよい疎水性樹脂(疎水性基を有するポリイミド酸)を含有する下記溶液を調製し、これを用いて150℃で焼成した薄膜に対する電極インクの接触角とUV露光量の関係(パラメータ:メラミン添加量)について調べた。
熱重合型ポリイミド材料(ポリアミド酸)CT4112(京セラ化学社製)をn−メチルピロリドンに溶解した溶液(濃度10重量%)に、下記構造式(A)で示される側鎖付きポリイミド前駆体(ポリアミド酸)が溶解しているn−メチルピロリドン溶液(濃度5重量%)を加え(固形分として0.5重量部)、スターラーにより良く攪拌させた。続いて、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、CT4112のn−メチルピロリドン溶液を100重量部に対して、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、5重量部、10重量部となるように添加した。
上記溶液をスピンコート法により、良く洗浄したガラス基板上に、厚みが700nmとなるように塗布し、150℃にて不活性ガス雰囲気下で焼成し、溶媒を除去し各薄膜を得た。高圧水銀ランプを用いて各膜上にUV光を照射し、ナノ銀インクの接触角を、接触角計(協和界面科学)により液滴法にて測定した。結果を図2に示す。
[実験例6]
実験例5においてメチル化ポリメラミン樹脂を添加しなかった以外は実験例5と同様にして薄膜を得、この薄膜上にUV光を照射し、ナノ銀インクの接触角を、接触角計(協和界面科学)により液滴法にて測定した。結果を図2に示す。
図2に示すように、メチル化ポリメラミン樹脂(略、メラミン)を添加していない膜では、未露光時の接触角は約28°であり、UV露光量とともに接触角は低下し、9J/cmでは5°程度となって、膜面上でほぼ完全に濡れ広がる。これに対して、メラミン添加量が増すにつれて、未露光時の接触角は大きく変化しないのに対し、接触角の落ち方が速くなる。例えば、0.5重量%の添加では、未露光時の接触角が25°であり、膜面上で完全に濡れ広がる露光量は4J/cmとなる。これはメラミンを添加していない場合の1/2未満である。すなわち、メラミンの添加によって、未露光時の接触角をほとんど変えることなく、接触角低下の露光量を減らせることが分かる。ここで、メラミン添加量は、前記濡れ性変化層(絶縁膜)を形成するために用いる溶液の組成によって好適な量に調整され一義的に決まるものではないが、添加量が多いと撥水性が低下する傾向があるので、1重量%以下の添加量とするのが望ましい。
なお、メチル化ポリメラミン樹脂のほかに、シグマアルドリッチ社から購入可能な他のメラミン樹脂(例えば、ブチル化ポリメラミンやイソブチル化ポリメラミン)を用いても同様の効果が得られることが判明した。また、三井化学から購入可能なメラミン単分子(例えば、ヘキサメトキシメチルメラミンなど)を用いても、同様の効果が得られる。
また、CT4112(ポリアミド酸)のような熱重合型(熱硬化型)ポリイミドに替えて、OH基を有し、熱による脱水重合型の反応を生じることができるポリビニルフェノール(丸善石油化学社製)や、フェノール樹脂(群栄化学社製)を用いても、同様の効果が見られた。これらは電気絶縁性材料として有用な樹脂である。
[実験例7]
活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(メチル化ポリメラミン樹脂)、および活性水素基を有する樹脂(フェノール樹脂)および活性水素基を有していてもよい疎水性樹脂(疎水性基を有するポリイミド酸)を含有する下記溶液を調製し、これを用いて220℃で焼成した薄膜に対する接触角(電極インク)と、UV露光量の関係について調べた。
フェノール樹脂(群栄化学工業社製)をγ―ブチルラクトンに溶解した溶液(濃度12重量%)に、前記構造式(A)で示される側鎖付きポリイミドの前駆体材料(ポリアミド酸)が溶解しているn−メチルピロリドン溶液(濃度5重量%)を加え(固形分として0.5重量部)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。続いて、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、フェノール樹脂のγ―ブチルラクトン溶液を100重量部に対して1重量部添加した。
上記溶液をスピンコート法により、良く洗浄したガラス基板上に、厚みが700nmとなるように塗布し、220℃にて不活性ガス雰囲気下で焼成し、薄膜を得た。高圧水銀ランプを用いて膜上にUV光を、時間を変えて照射した。
続いて、この膜に対するナノ銀インクの接触角を、接触角計(協和界面科学)により液滴法にて測定した。結果を下記表3に示す。ここでは、未露光時の接触角を100%としたときの、各露光量での接触角が何%となっているかを示した。
[実験例8]
実験例7において前記構造式(2)で示される側鎖付きポリイミドの前駆体材料(ポリアミド酸)が溶解しているn−メチルピロリドン溶液をオクタデシルトリクロロシラン(信越化学社製)のエタノール溶液(0.5重量%)に変えて添加した。結果を表3に示す。ここでは、未露光時の接触角を100%としたときの、各露光量での接触角が何%となっているかを示した。
表3の結果から、オクタデシルトリクロロシランの有するトリクロロシラン基の反応性は高く、フェノール樹脂のOH基と反応が進むため、メチル化ポリメラミン樹脂を添加したことによる露光量低減の効果がほとんど見られなくなる。即ち、本発明において活性水素基を有する樹脂に含有される疎水性樹脂が、活性水素基を有する樹脂と反応性の高い官能基を有さないことが重要であることが分かる。
[実験例9]
活性水素基と反応可能なメラミン誘導体(メチル化ポリメラミン樹脂)、および活性水素基を有する樹脂(ポリアミド酸)と疎水性樹脂(疎水性基を有するポリイミド酸)を含有する下記溶液を調製し、これを用いて150℃で焼成した薄膜の紫外線照射による電極の形成性(電極パターニング)と、UV露光量およびメラミン添加量の有無による効果について調べた。
熱重合型ポリイミド材料(ポリアミド酸)CT4112(京セラ化学社製)をn−メチルピロリドンに溶解した溶液(濃度10重量%)に、前記構造式(2)で示される側鎖付きポリイミド前駆体(ポリアミド酸)が溶解しているn−メチルピロリドン溶液(濃度5重量%)を加え(固形分として0.5重量部)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。続いて、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、CT4112のn−メチルピロリドン溶液100重量部に対して1重量部となるように添加した。
上記溶液をスピンコート法により、良く洗浄したガラス基板上に、厚みが700nmとなるように塗布し、150℃にて不活性ガス雰囲気下で焼成し、溶媒を除去しポリイミド膜を得た。
このポリイミド膜上に、ライン形状のフォトマスク越しに高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV光)をUV露光量が、1J/cm、3J/cm、5J/cm、7J/cm、9J/cm、となるように制御して照射し、各膜上に表面エネルギーの大きい部位を形成した。なお、紫外線(UV光)を照射しないポリイミド膜を参照に用いた。
各ポリイミド膜上に形成した表面エネルギーの大きい部位に、インクジェット法を用いてナノ銀インクを吐出した。なお、ここではナノ銀インクを用いたが、ニッケルインクやナノ金インクを用いることができる。
吐出されたインクを200℃のオーブンで焼成した後、5μm間隔のラインが形成できているか金属顕微鏡観察により確認した。結果を下記表4に示す。
表4における評価基準は下記による。
○:問題なく形成できている
△:形成できていないところがある
×:形成できていないか、あるいは10%以下の形成率
[実験例10]
実験例9においてメチル化ポリメラミン樹脂を添加しなかった以外は実験例9と同様にしてポリイミド膜を得た。この薄膜上に実験例9と同様にUV露光量が、1J/cm、3J/cm、5J/cm、7J/cm、9J/cm、となるように制御して照射した。紫外線(UV光)照射領域にナノ銀インクを吐出し、200℃のオーブンで焼成した後、5μm間隔のラインが形成できているか金属顕微鏡観察により確認した。結果を下記表4に示す。
表4の結果は、実施例3で得られた紫外線露光量とナノ銀インクの接触角の結果に良好に対応している。すなわち、メラミンを添加した膜では、3J/cmで表面自由エネルギーの高い面が形成されるので、電極ラインが形成可能となる。一方、メラミンを添加していない膜では、9J/cm程度以上照射しないと表面自由エネルギーの高い面が形成されない。このように、メラミンを添加することで、電極パターン形成にかかるUV露光量を1/3程度にまで低減することが可能である。
[実施例1]
熱重合型ポリイミド材料(ポリアミド酸)CT4112(京セラ化学社製)をn−メチルピロリドンに溶解した溶液(濃度10重量%)に、前記構造式(A)で示される側鎖付きポリイミド前駆体(ポリアミド酸)が溶解しているn−メチルピロリドン溶液(濃度5重量%)を加え(固形分として0.5重量部)を加え、スターラーにより良く攪拌させた。続いて、メチル化ポリメラミン樹脂(シグマ−アルドリッチ社製)(濃度100重量%の液体状樹脂)を加え、スターラーにより良く攪拌させゲート絶縁層形成用の溶液とした。なお、メチル化ポリメラミン樹脂は、CT4112樹脂のn−メチルピロリドン溶液100重量部に対して1重量部となるように添加した。
メタルマスクを用いた真空蒸着法により、ガラス基板上にAlを成膜し、膜厚50nmのゲート電極を作製した。
ゲート電極が設けられたガラス基板に上記ゲート絶縁層形成用の溶液をスピンコート塗布し、150℃にて不活性ガス雰囲気下で焼成して膜厚700nmのゲート絶縁膜(ポリイミド膜:本実施例では1層からなる絶縁膜構成)を形成した。
次に、ゲート絶縁膜表面にフォトマスクを介して紫外線(高圧水銀ランプ)を照度4J/cm
となるように照射し、低表面エネルギー状態にあるゲート絶縁膜上に表面エネルギーの大きい部位(高表面エネルギー部)を形成した。
形成された高表面エネルギー部にインクジェット法を用いて、ナノメートルサイズの銀微粒子を溶媒中に分散させたインク(ナノ銀インク)を吐出した後200℃で焼成し、電極間距離が5μm(即ち、チャネル長が5μm)のソース電極およびドレイン電極を形成した。
次に、有機半導体材料として下記構造式(B)で示されるトリアリールアミンを用い、インクジェット法により成膜し、膜厚30nmの有機半導体層を形成した。
上記により、基板/ゲート電極(Al)/絶縁膜(ゲート絶縁膜)/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体層、からなる構造(図3参照)を有する有機トランジスタを作製した。
なお、図3の各符号において、2はゲート絶縁層、5aはソース電極、5bはドレイン電極、6は半導体層、7はフィルム基板、41は電子素子、42はゲート電極層を示す。
[比較例1]
実施例1においてメチル化ポリメラミン樹脂を添加しないでゲート絶縁層形成用の溶液とし、これを用いた以外は実験例3と同様にして、基板/ゲート電極(Al)/絶縁膜(ゲート絶縁膜)/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体層、からなる構造を有する薄膜トランジスタ(有機トランジスタ)を作製した。
[有機トランジスタの評価]
実施例1および比較例1で作製した薄膜トランジスタ(有機トランジスタ)の特性(オンオフ比、電界効果移動度)を評価した。なお、評価方法は、米国電気・電子技術学会(IEEE)の定める試験方法(IEEE standard test methods for the characterization of organic transistors and materials)に準拠して行った。
評価結果を下記表5に示す。
表5から、ポリアミド酸にメチル化ポリメラミン樹脂(略、メラミン)を添加した溶液を用いて形成したゲート絶縁膜から構成された薄膜トランジスタでは、電極のパターニング性は良好であり、3×10-3 (cm /V秒)の電界効果移動度を有する。この値は、メタルマスクを介した真空蒸着により作製したAuからなるソース電極及びドレイン電極を用いて作製した有機トランジスタと比較して、遜色なかった。
一方、ポリアミド酸にメラミンを添加しない溶液を用いて形成したゲート絶縁膜から構成された薄膜トランジスタでは、オフ電流が大きくオンオフ比は3桁であった。電界効果移動度も10-4(cm /V秒)のオーダーであり、メラミンを添加した系よりも約2桁小さかった。
評価結果から、ポリアミド酸(CT4112)を用いた場合に、150℃でのイミド化率は50%程度であり、絶縁膜中にフリーのCOOH基が多数含まれている。これがトラップサイトとなり移動度が低下するものと推定される。また、オンオフ比が低いのは、主にオフ電流が大きいためであることが判明した。これは、イミド化率が低いため電気絶縁性の低い膜となっているためと考えられる。
即ち、メチル化ポリメラミン樹脂(略、メラミン)を添加しない場合には、絶縁膜のイミド化率が十分でないことの影響が薄膜トランジスタ(有機トランジスタ)の特性に直接反映し、オンオフ比や、電界効果移動度が悪化する。一方、メラミンを添加した場合にはメラミン(活性水素基と反応可能)と活性水素基を有するアミド酸が反応して架橋構造を形成することができ、且つ絶縁特性が維持されることからイミド化率が十分でない低温にてゲート絶縁膜を形成しても、優れたオンオフ比や電界効果移動度を示す薄膜トランジスタを得ることができる。
以上、本発明におけるゲート絶縁層形成用の溶液にメラミン誘導体を添加剤することの効果についてまとめると、
(1)ゲート絶縁層形成用の溶液成分の添加材料が、支持基材材料の活性水素基[−OH、−COOH、−CONH−等]と反応するタイプの材料(例えば、オクダデシルトリクロロシラン)である場合、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体を添加した効果が見られない。
(2)ゲート絶縁層形成用の溶液成分の添加材料が、支持基材材料の活性水素基(−OH、−COOH、−CONH−等)と反応しないタイプの材料である場合、活性水素基と反応可能なメラミン誘導体を添加した効果が発揮され、紫外線露光部位が撥水性域から親水性域に変化し、それに必要な紫外線照射量が減少する。
なお、(1)、(2)において、支持基材材料とは、活性水素基を有する樹脂(例えば、フェノール樹脂やポリアミド酸など加熱処理等により電気絶縁性を発揮する材料を指す。
活性水素基と反応しないタイプの材料とは、活性水素基(−OH、−COOH、−CONH−等)を有していてもよい疎水性樹脂、例えば、疎水性基を有するポリアミド酸やフェノール樹脂を指す。
上記本発明により、イミド化率の低いポリイミドからなるゲート絶縁層であってもUV光照射によって電気絶縁性が損なわれることなく、ゲート絶縁層の表面自由エネルギーを制御し、その表面自由エネルギー差を利用してインクジェット法などの印刷法でソース電極およびドレイン電極のパターニングを行い薄膜トランジスタを製造することができる。
本発明の製造方法により作製された薄膜トランジスタは、例えば、液晶、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミック、電気泳動等の各種表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化によって電子ペーパー等のディスプレイへの応用も可能である。
(図1)
1 UV光
2 濡れ性変化層
3 高表面エネルギー部
4 低表面エネルギー部
5 ソース・ドレイン電極
6 半導体層
(図3)
2 ゲート絶縁層
5a ソース電極
5b ドレイン電極
6 半導体層
7 フィルム基板
41 電子素子
42 ゲート電極層
特開2006−134959号公報 特開2005−310962号公報 特開2008−41951号公報 特開2006−60048号公報

Claims (13)

  1. 基板上にゲート電極およびゲート絶縁層が順次形成され、該ゲート絶縁層が形成されたゲート電極上に適宜の間隔でソース電極およびドレイン電極が対向配置され、該間隔を含む領域に半導体層が形成された薄膜トランジスタの製造方法において、
    少なくとも活性水素基と反応可能なメラミン誘導体および活性水素基を有する樹脂を含有する溶液を塗布・焼成して、撥水性を有すると共に紫外線照射により表面濡れ性が可変であるゲート絶縁層を形成する工程と、
    前記ゲート絶縁層に紫外線を照射して該紫外線露光部位を撥水性域から親水性域に変化させる工程と、
    前記親水性域に電極材料を含有する溶液を印刷法で塗布・乾燥してソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
    を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
  2. 前記活性水素基を有する樹脂が、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH−)から選ばれる少なくとも一つの官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  3. 前記活性水素基を有する樹脂が、ポリイミド前駆体および/またはフェノール誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  4. 前記活性水素基を有する樹脂が、疎水性樹脂であるか、または疎水性樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  5. 前記疎水性樹脂が、疎水性基を有するポリイミド前駆体であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  6. 前記含有される疎水性樹脂が、前記活性水素基を有する樹脂と反応性の高い官能基を有さないことを特徴とする請求項4または5に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  7. 前記ポリイミド前駆体および疎水性基を有するポリイミド前駆体が、ポリアミド酸であることを特徴とする請求項3または5に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  8. 前記活性水素基と反応可能なメラミン誘導体が、メラミンとアルデヒド化合物から誘導されるメラミン単分子骨格もしくはポリメラミン骨格からなる誘導体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  9. 前記ポリメラミン骨格からなるメラミン化合物が、メチル化ポリメラミンであることを特徴とする請求項8に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  10. 前記メラミン誘導体の含有量が、前記活性水素基を含有する樹脂成分100重量%に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  11. 前記紫外線が、200nm以上300nm以下の波長帯であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  12. 前記印刷法が、インクジェット法であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  13. 請求項1乃至12のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
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