JP2005259965A - 有機半導体素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 樹脂基板上に絶縁性と濡れ性に優れた有機ゲート絶縁層を有し、低いゲート電圧で安定的に駆動する有機半導体素子を提供する。
【解決手段】 少なくとも基板、有機半導体層、有機ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、前記有機ゲート絶縁層の膜厚が50nm以上500nm以下であり、かつ前記有機ゲート絶縁層の少なくとも一部における水に対する表面接触角が5°以上45°以下であり、その表面接触角が5°以上45°以下である箇所に有機半導体層が設けられている有機半導体素子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機半導体素子およびその製造方法に関する。
近年、有機半導体素子を使用したIC技術が注目されている。その主な魅力は、低コストで製造できること、および基板として柔軟な樹脂を用いることができることである。これらの利点から、有機半導体素子は、プラスチック基板を用いた回路、電子タグやディスプレイの表示駆動回路、メモリ等への応用が期待されている。
一般的に有機半導体素子は、基板、ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体層の構成からなり、薄膜電界効果トランジスタ(FET)などとして利用される。
有機半導体を半導体層として用いたFET素子において、ゲート電極に印加する電圧(ゲート電圧、Vg)を変化させると、ゲート絶縁層と有機半導体層との界面における電荷量が過剰もしくは不足になる。その結果ソース電極から有機半導体を経てドレイン電極へと流れるドレイン−ソース電流値(Id)が変化してスイッチングが可能となり、素子としての機能が果たされる。
素子の有機半導体層に用いられる半導体的性質を示す有機化合物としては、ポリアセンなどの低分子化合物、ポリチオフェンなどのπ−共役系高分子およびπ−共役系オリゴマー等が良く知られている。
有機半導体素子における有機半導体層の製法には、電気化学重合、真空堆積、溶液塗布などがある。このうち、安価で容易に得られるという有機半導体素子の利点を生かすためには溶液塗布法が適している。電極、配線など素子を構成する他の部材についても同じ理由で溶液塗布法により形成することが好ましい。
実際、ポリアルキルチオフェン化合物やポリチエニレンビニレン化合物などの有機半導体化合物を溶液塗布することによって高性能の有機半導体素子がこれまでに得られている。(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。
また、有機半導体素子を柔軟な樹脂基板上に設ける場合、ゲート絶縁層や有機半導体層といった基板上の構成要素は低温で製造する必要がある。なぜならば、基板が樹脂である素子を高温雰囲気にさらすと、樹脂基板が軟化や劣化をしてしまうからである。
例えば、バオらは、有機FETを作製するのに、インジウム・錫酸化物からなるゲート電極を設けた樹脂製の基板上にポリイミドをスクリーン印刷で形成し、このポリイミドを120℃という低温で焼成し、有機絶縁層を得ている(非特許文献3参照)。
ただし、このような手法で絶縁性の良好なゲート絶縁層を形成するためには、ゲート絶縁層の膜厚を、例えば500nm以上と厚くする必要がある。そしてゲート絶縁層の膜厚が厚いためにゲート駆動電圧(Vg)が数10〜100Vと大きくなってしまう。
加えて、溶液塗布法かつ低温プロセスで製造された有機ゲート絶縁層は表面部の組成と構造に起因して表面の濡れ性が悪くなってしまうため、その上部に有機半導体層などの部材を溶液塗布で配置した場合に形状の精緻性や密着性に欠けるという問題があった。
特開平10−190001号公報 Assadi,A.,et al.,"Field−effect mobility of poly(3−hexylthiophene)",「Appl. Phys. Lett.」,vol.53(3),p.195−197(1988年) Fuchigami,H.,et al.,"Polythienylenevinylene thin−film transistor with high carrier mobility",「Appl. Phys. Lett.」,vol.63(10),p.1372−1374(1993年) Z.Bao,Y.Feng,A.Dodabalapur,V.R.Raju,and A.J.Lovinger,"Chem.Mater."9,1299−1301(1997年)
上述したように、従来の技術では、低温でゲート絶縁膜を成膜する技術があっても得られる素子の性能は決して好ましいものではなかった。
そこで、本発明は、樹脂基板上に絶縁性と濡れ性に優れた有機ゲート絶縁層を有することにより、低いゲート電圧で安定的に駆動する有機半導体素子を提供するものである。
また、本発明は、上記の有機半導体素子を容易に得ることができる有機半導体素子の製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、少なくとも基板、有機半導体層、有機ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、前記有機ゲート絶縁層の膜厚が50nm以上500nm以下であり、かつ前記有機ゲート絶縁層の少なくとも一部における水に対する表面接触角が5°以上45°以下であることを特徴とする有機半導体素子である。
また、本発明は、有機絶縁材料を含有する溶液を塗布してなる塗布膜を、220℃以下で加熱処理して有機ゲート絶縁層を形成する工程と、前記有機ゲート絶縁層の表面の全体または一部分に紫外線照射、電子線照射、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理のうちの少なくとも一つを含む処理を施して水に対する表面接触角が5°以上45°以下に改質を行う工程と、前記有機ゲート絶縁層の改質が行われた箇所に有機半導体材料を含有する溶液を塗布した後、220℃以下で加熱処理して有機半導体層を形成する工程を含むことを特徴とする有機半導体素子の製造方法である。
本発明は、樹脂基板上に絶縁性と濡れ性に優れた有機ゲート絶縁層を有することにより、低いゲート電圧で安定的に駆動する有機半導体素子を提供することができる。
また、本発明は、上記の有機半導体素子を容易に得ることができる有機半導体素子の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る有機半導体素子は、少なくとも基板、有機半導体層、有機ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極からなる有機半導体素子において、記有機ゲート絶縁層の膜厚が50nm以上500nm以下であり、前記有機ゲート絶縁層の少なくとも一部における水に対する表面接触角が5°以上45°以下であることを特徴とする有機半導体素子である。
また、前記有機ゲート絶縁層の水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域以外の箇所に水に対する表面接触角が60°以上である領域を前記有機ゲート絶縁層が備え持つことを特徴とする。
また、有機ゲート絶縁層の水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域に接して有機半導体層を設けたことを特徴とする。
また、基板が有機成分を含むことを特徴とする。
また、有機ゲート絶縁層の膜厚が70nm以上250nm以下であり、有機ゲート絶縁層を構成する化合物の少なくとも一種類が後述の一般式(1)に示すシルセスキオキサン骨格を有していることを特徴とする。
また、有機ゲート絶縁層の膜厚が100nm以上300nm以下であり、有機ゲート絶縁層を構成する化合物の少なくとも一種類がフェノール樹脂骨格を有していることを特徴とする。
また、本発明は、有機絶縁材料を含有する溶液の塗布と、220℃以下の加熱処理で有機ゲート絶縁層を形成する工程と、前記有機ゲート絶縁層表面の全体または一部分に紫外線照射、電子線照射、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理のうちの少なくとも一つを含む処理を施して水に対する表面接触角が5°以上45°以下に改質を行う工程と、前記有機ゲート絶縁層の表面改質が行われた箇所の上に、有機半導体材料を含有する溶液塗布と、220℃以下の加熱処理により有機半導体層を形成する工程を含むことを特徴とする有機半導体素子の製造方法である。
次に、図面に基づいて本発明を説明する。
本発明で得られる有機半導体素子の一般的な構成を図1に示す。1は基板、2はゲート電極、3は有機ゲート絶縁層、4はソース電極、5はドレイン電極、6は有機半導体層である。
この素子は、基板1の表面にゲート電極2が設けられ、その上に有機ゲート絶縁層3が設けられ、有機ゲート絶縁層3の表面にソース電極4とドレイン電極5が間隔をおいて設けられている。そしてソース電極4とドレイン電極5の上とその離間領域である絶縁層3上に有機半導体層6が両電極4、5と接して設けられている。絶縁層3はゲート電極2を覆うように設けられている。ソース電極4とドレイン電極5はそれぞれ絶縁層3上に設けられている。また、有機半導体層6は、ゲート電極2を覆っている絶縁層3上とソース電極4上とドレイン電極5上と、これら全てを覆うように更に配置されている。
以下、図1を参照して本発明の説明を進めるが、本発明の有機半導体素子の構成、形状は図1に限られるものではない。
本発明における基板1としては、絶縁性の材料から選択される。具体的には、ガラス、シリコン基板、アルミナ焼結体などの無機材料、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルム、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリパラキシレン膜等の各種絶縁性樹脂等が使用可能である。特に、有機成分を主体とする樹脂基板を選択すれば、軽量でフレシキブルな有機半導体素子を作製することが可能となる。
本発明における「有機ゲート絶縁層」という用語は、有機成分を有するゲート絶縁層を意味する。有機成分を含有させることで、溶液塗布法かつ低温プロセスで絶縁膜を形成することができる。
この有機ゲート絶縁層3には無機化合物微粒子を含ませてもよい。無機化合物微粒子を絶縁膜中に含ませることで有機半導体素子のゲート駆動電圧(Vg)を更に小さくすることができる。
そのためには比誘電率5以上の無機化合物の微粒子を用いることが好ましい。また、ゲート絶縁層の残留分極特性が発現することは好ましくないので、前記無機化合物は強誘電性を有しない、例えば常誘電体物質を用いることが好ましい。
本発明における有機半導体素子の有機ゲート絶縁層3の膜厚は、50nm以上500nm以下が好ましい。有機ゲート絶縁層3の膜厚が50nmより薄いと有機半導体素子を駆動する際のゲート電圧印加に対して十分な絶縁性が得られないおそれがある。また、ゲート絶縁層3の膜厚が500nmより厚くても有機半導体素子の動作はするが、素子の高集積化を試みる際に小型化の妨げとなる上、ゲート駆動電圧(Vg)が大きくなってしまうおそれがある。
有機ゲート絶縁層3の誘電率が、例えば4以下と低い場合において、低いゲート駆動電圧(Vg)と高い絶縁性の両立を考えると、より好ましいゲート絶縁層3の膜厚は70nm以上250nm以下である。
素子設計上、ゲート絶縁層3の表面が平坦と見なせない場合は、実質的にチャネルが生成する界面とゲート電極間の距離を膜厚とする。
本発明における有機半導体素子の有機ゲート絶縁層3の表面の少なくとも一部分における水に対する表面接触角は、5°以上45°以下であることが好ましい。表面接触角が5°以上45°以下である領域を設けて、その上部に有機半導体層や電極などの部材を溶液塗布で配置すると、濡れ性の良さが原因となって、上部部材の形状の精緻性や上部部材と有機ゲート絶縁層の密着性が良好となる。特に表面接触角が5°以上45°以下である領域に接して溶液塗布法で有機半導体層を設けると、密着性の向上に伴って界面でのチャネル生成が効率的になるなど、有機半導体素子全体の性能に良い影響を与える。上記の有機ゲート絶縁層3の水に対する表面接触角は、さらに好ましくは15°以上45°以下である。
加えて、前記有機ゲート絶縁層が、水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域以外の箇所に水に対する表面接触角が60°以上である領域を備え持つことは、より好ましい。有機ゲート絶縁層が濡れ性の良い領域と悪い領域を併せ持っていれば、上部に設ける部材のパターニングに利用することができる。このように濡れ性の違いを利用する場合には、その表面接触角の差が30°以上、好ましくは50°以上110°以下であるとより好ましい。パターニングの例としては、(1)溶液塗布法で表面接触角の低い領域にだけ選択的に有機半導体層を設ける、(2)表面接触角の低い領域に印刷法などの溶液塗布法でソース電極およびドレイン電極を設けて、表面接触角の高い領域には蒸着法で有機半導体層を設ける、といった例があげられる。
水に対する表面接触角は、市販の表面接触角計により容易に測定できる。本発明においては、協和界面科学社の全自動接触角計CA−Wを用いて蒸留水に対する表面接触角を測定した。
本発明における有機ゲート絶縁層3は、原料となる溶液の塗布と220℃以下の加熱処理で形成した後に、外部刺激により全体もしくは一部分の表面接触角の制御を行うことが好ましい。
原料溶液の塗布方法は特に限定されるものではなく、慣用のコーティング方法、例えばスピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、滴下法等により塗布する。これらの方法のうち、塗布量を制御して所望の膜厚の成膜ができるという点で好ましい方法はスピンコーティング法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット法である。また、得られた膜の絶縁性を保つためには塗布溶液に極力ゴミなどを混入させないことが重要であり、事前に原料溶液をメンブランフィルタで濾過することが望ましい。
220℃をこえる温度で塗布膜の加熱処理を行うと膜収縮が大きくなり、かえって絶縁性が損なわれることがある。また、樹脂系の基板材料を選択した際に220℃をこえる熱にさらすと基板が損傷するおそれがある。より好ましい乾燥温度は180℃以下であり、そうすることで本発明の有機半導体素子およびその製造方法に適用できる樹脂基板の選択幅が広がる。
本発明における表面接触角の制御に適した外部刺激は、紫外線照射、電子線照射、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理から選ばれる方法により行なわれる。これらの処理のうち、1つを選択しても良いし、複数の処理を組み合わせても構わない。
処理時間は、上記の外部刺激の強度により調整することができるが、例えば30分間以下が好ましい。処理時間が30分間を越えると、有機ゲート絶縁層3へのダメージが過剰に蓄積されて表面接触角が所望の値になったとしても、絶縁性が失われてしまうおそれがある。つまり、処理時間は短ければ短い方が好ましい。
よって、外部刺激を与える処理方法は、有機ゲート絶縁層3の水に対する表面接触角が所望の値、少なくとも45°以下に、より短時間で変化することを基準にして選択されるが、多くの場合、この点で適しているのは、紫外線処理、あるいは紫外線処理とオゾン処理の組み合わせである。また、この処理方法には、フォトマスクなどを使用することで水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域と、60°以上である領域を精緻に作り分けることが容易となるという利点もある。
紫外線の波長は200〜350nmの範囲が好ましい。この範囲内の紫外線を照射すると有機ゲート絶縁層3の水に対する表面接触角が短時間で低減する。この波長域の紫外線の光源としては、水銀ランプ、KrClエキシマランプ、XeClエキシマランプなどが挙げられる。この波長域では石英の吸収が低いためフォトマスクの基板材料として石英を使用することができる。
また、紫外線処理とオゾン処理を組み合わせた場合は、さらに表面処理時間を短くできる。この場合、光源として150〜300nmの波長を有するものを使用すると紫外線処理とオゾン処理を同時に実施することができる。具体的には、低圧水銀ランプ、Xe2 エキシマランプなどが用いられる。この波長領域においては石英を使用できないが、メタルマスクを使用することによってパターン化が可能となる。
また、いずれの外部刺激を選択した場合においても、水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域と、60°以上である領域を形成する際には、パターニング用のマスクを基板に密着させて処理してもよいし、ある程度の距離を保って処理しても良い。
本発明における有機半導体素子の有機ゲート絶縁層3を構成する有機絶縁材料は、有機成分を含んでいれば特に限定されない。例えば、下記の一般式(1)で示されるような特定のシルセスキオキサン骨格を有する化合物を構成物に含有していると絶縁性能が向上するために好ましい。絶縁性能と誘電率の兼ね合いから、この場合に最適な有機ゲート絶縁層3の膜厚は70nm以上250nm以下である。
Figure 2005259965
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基あるいは置換または非置換のフェニル基であり、R1 〜R4 は同じでも異なっていてもよい。また、mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。)
この特定のシロキサン骨格を有する材料とは、主鎖が無機シロキサンユニット、側鎖が炭素を有する置換基である。つまり、有機無機ハイブリッド型のラダー型骨格をゲート絶縁膜の主成分とすることにより、低温の乾燥処理でも緻密で絶縁性の高い薄膜が得られる。本発明でいう「ラダー型」とは一般に言われている分岐が少ないという意味を示す表現である。一般式(1)で示される構造は分岐がごく少ないシルセスキオキサン骨格を表している。骨格がラダー型であれば、ランダムに分岐したシルセスキオキサンと比べて膜中の空隙は低減され、緻密性が向上する。
また、本発明におけるシルセスキオキサン骨格の側鎖に相当する炭素を有する置換基R1 〜R4 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基、もしくは置換または非置換のフェニル基であり、R1 〜R4 は箇所によって同じ官能基であっても違う官能基であっても良い。例えば、メチル基、エチル基のような非置換アルキル基、非置換のフェニル基、ジメチルフェニル基やナフチル基といった置換フェニル基などが挙げられる。また、置換基R1 〜R4 には炭素原子、水素原子の他に酸素原子や窒素原子や金属原子など各種の原子が含まれていて良いが、ハロゲン原子を含んだ置換基は絶縁性低下の原因となるので好ましくない。
本発明におけるシルセスキオキサン骨格を説明する。一般式(1)では、置換基R1 、R2 を有するシスセスキオキサンユニット(以後、第一ユニット)がm個繰り返したものと、置換基R3 、R4 を有するシスセスキオキサンユニット(以後、第二ユニット)がn個繰り返したものが接続した構造式が示されている(mおよびnは0以上の整数であり、m+nは1以上の整数である)が、これは第一ユニットの繰り返しと、第二ユニットの繰り返しが分離していることを意味するのではない。両ユニットは、分離して接続していてもランダムに入り交じって接続していても良い。
一般式(1)に示すような特定のシルセスキオキサン骨格を有する化合物を主体として、本発明における有機ゲート絶縁層3を形成するためには、下記の一般式(2)および/または一般式(3)に示すポリオルガノシルセスキオキサン化合物を含む溶液を基板1上に塗布して、加熱乾燥させて、外部刺激により全体または一部の表面改質を行えばよい。
Figure 2005259965
(式中、R1 、R2 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基あるいは置換または非置換のフェニル基のいずれかであり、R1 とR2 は同じでも異なっていてもよい。R5 は炭素原子数1〜4個のアルキル基または水素原子であり、xは1以上の整数である。)
Figure 2005259965
(式中、R3 、R4 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基あるいは置換または非置換のフェニル基のいずれかであり、R3 とR4 は同じでも異なっていてもよい。R6 は炭素原子数1〜4個のアルキル基または水素原子であり、yは1以上の整数である。)
加熱処理は220℃以下で行われる。この加熱により化合物の末端で重合反応が行われ、原料であるシルセスキオキサン化合物はラダー状に接続され、緻密化し絶縁性を発現する。ただしこの時、乾燥温度は有機物が完全に消失するほど高くないので原料化合物は完全なシリカ構造にまでにはならずに大部分の置換基が残存しているシルセスキオキサン骨格となる。より好ましい加熱処理温度は140℃以上180℃以下である。140℃未満で加熱すると重合反応が不充分となるおそれがある。220℃以上で加熱すると使用する基板によっては損傷するおそれがある。
また、乾燥工程に際してオリゴマーであるシルセスキオキサン化合物が互いに架橋しあう反応を補助する目的で、塗布溶液にはギ酸などの酸を少量添加しても良い。
酸の添加量は特に限定されるものではないが、ギ酸の場合は、塗布溶液に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン化合物の固形分重量に対して1重量%から30重量%の範囲で添加すると架橋反応が促進される。添加量が1重量%より少ないと架橋反応の促進効果が十分でなくなり、逆に添加量が30重量%より多いと乾燥後の膜の絶縁性を阻害するおそれがある。
架橋反応、溶剤除去は220℃以下の低温で行われるため、その温度領域で蒸発、揮発、焼失しない安定剤は溶液系から極力除去する。
有機ゲート絶縁層3に無機化合物粒子を含ませる場合は、あらかじめ無機化合物粒子を一般式(2)および/または一般式(3)に示すポリオルガノシルセスキオキサン化合物の溶液に分散させた上で基板上に塗布し、乾燥させて有機ゲート絶縁層3を得る。この場合も、溶液に酸を添加すれば架橋反応を補助する効果が期待できる。
塗布溶液の溶媒にはアルコール類やエステル類など任意のものを使用できる。無機化合物粒子を用いる場合は粒子の分散性を考慮して溶媒を選択すればよい。また基板への濡れ性などを考慮して溶媒を選択すればよい。
また、本発明における有機半導体素子の有機ゲート絶縁層3を構成する材料が構成物としてフェノール樹脂骨格を有している化合物が挙げられる。フェノール樹脂骨格を有していると、外部刺激に対して敏感に表面接触角が低下するようになり、好ましい。絶縁性能と誘電率の兼ね合いから、この場合に最適な有機ゲート絶縁層3の膜厚は100nm以上300nm以下である。
フェノール樹脂骨格を有する化合物の例としては、ノボラック型樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノールなどが挙げられる。例えば、ノボラック型樹脂は、フェノール類とホルマリンと蓚酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を加熱反応させることで得ることができる。これらの樹脂に適当な架橋剤を添加することで硬化後の膜強度を向上させても良い。
フェノール樹脂と組み合わせて使用される架橋剤としては、2官能以上のエポキシ化合物、オキセタン化合物、イソシアネート化合物やメラミン系架橋剤、置換尿素系架橋剤などが挙げられる。この中でも紫外線照射による外部刺激によって敏感に表面接触角が低下するという点からエポキシ化合物、メラミン系架橋剤、置換尿素系が好ましい。
前記架橋剤の混合量は前記樹脂100重量部に対して10〜200重量部である。混合量が10重量部未満であると硬化時間が長過ぎ、200重量部をこえると未反応の架橋部位が多過ぎて膜の特性が保てない。
前記樹脂と前記架橋剤を効率良く架橋させるために、触媒を併用することができる。フェノール樹脂と併用される触媒は架橋剤の種類によって選択され、例えば前記メラミン系架橋剤、置換尿素系架橋剤を架橋剤として使用する場合には主に酸性触媒が用いられる。
酸性触媒の例としては蟻酸、酢酸、蓚酸などのカルボン酸類やp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などのスルホン酸類、三フッ化ホウ素、五フッ化リンなどのルイス酸が用いられる。スルホン酸やルイス酸は一般的に有機溶媒への溶解性が低い上に、室温で不安定であることから、それらのアミン塩や錯体を用いることもできる。
前記触媒の混合量は、前記樹脂と前記架橋剤の総量100重量部に対して0.1〜10重量部である。混合量が0.1重量部未満であると硬化が不十分で耐溶剤性や膜強度が低下する、10重量部を越えると膜の吸水性などが上昇し膜の特性が保てない。
前記樹脂などを溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、又は二種以上の組み合わせて使用することができる。
前記の溶剤の中で、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル及びシクロヘキサノンがレベリング性の向上の観点から好ましい。
また、基板が有機溶剤によってダメージを受ける場合や、選択する印刷方法によって任意に粘度を調整したい場合などには、希釈剤として液状のエポキシやアクリルを単独もしくは溶剤と併用して使用することができる。
前記樹脂を含む溶液を塗布した後の熱処理は、220℃以下で行われる。架橋反応を促進してより強度と絶縁性のあるフェノール樹脂骨格を形成する目的においては、熱処理温度が100℃以上200℃以下であると好ましい。
本発明におけるゲート電極2、ソース電極4及びドレイン電極5の材料は特に限定されず、樹脂基板上に低温で形成できるものであればよい。例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機材料、或いは導電性インク等の原料が用いられ、これらの材料は電極形成プロセスが簡便な塗布法により電極に形成されることができる。また、金、白金、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、ニッケル、等の金属や、これらの金属を用いた合金や、ポリシリコン、アモリファスシリコン、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の無機材料が電極材料として用いられ、これらの無機材料は蒸着のような真空堆積法やペースト化物の塗布によって電極に形成することができる。もちろん上記の材料に限られるわけではなく、また、上記の材料を2種以上併用しても差し支えなく、あるいは少なくとも何れか一方種と別の種とからなる2種以上の併用も差し支えない。
また、本発明におけるソース電極4及びドレイン電極5は有機ゲート絶縁層3の領域間における表面接触角の差を利用してパターニング配置をしてもよい。この場合は、配置する箇所としない箇所の表面接触角の差が大きいほど、より精緻なパターニングが可能となる。
また、図1で例示した有機半導体素子の構成では、ソース電極4及びドレイン電極5が有機ゲート絶縁層3の上方に配置されているが、その他に有機ゲート絶縁層の上方にゲート電極を配置した有機半導体の構成も良く知られている。この場合は、有機ゲート絶縁層3の領域間における表面接触角の差を利用してゲート電極2をパターニング配置することができる。
本発明における有機半導体層6としては、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等の材料からなるのが望ましい。具体的な材料としては、ペンタセン、テトラセン、アントラセン等のポリアセン類、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シアニン色素、およびベンゼン環の間にビシクロ環を導入して溶剤に可溶化させたベンゾポルフィリン誘導体などのビシクロ化合物等が挙げられるが、有機半導体としての性質を有していればこれらの材料に限られない。
有機半導体層6の形成工程は、蒸着、塗布、溶液からの付着など、種々の薄膜形成方法を用いることができるが、本発明において有機ゲート絶縁層3の一部における表面接触角を45°以下にした利点を生かすためには、溶液塗布による形成が好ましい。また、樹脂基板への影響を低減するために、溶液塗布後の加熱処理は220℃以下であることが好ましい。
本発明による有機半導体素子は、作成プロセス中にかかる温度が低く樹脂基板等に容易に作成できるため、そのトランジスタ特性を生かしたIC情報電子タグやアクティブマトリクス型表示装置における、例えば画素毎のオンオフを制御するスイッチング素子部など種々の装置に応用できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例の範囲にとどまるものではない。
まず、以下の手順で有機ゲート絶縁層の原料となる樹脂溶液を調製した。
(樹脂溶液Aの調製)
エタノール46.5g、1−ブタノール46.5gよりなる混合溶媒に、市販のフレーク状のメチルシルセスキオキサン(MSQ)(昭和電工製、商品名GR650)7.0gを溶解させることで、7重量%濃度の溶液を調製した。ここに、架橋反応を促進させる目的で、ギ酸を0.7g添加した。この液を樹脂溶液Aとする。
(樹脂溶液Bの調製)
フェノールノボラック樹脂(数平均分子量770g/mol)5.9gと、架橋剤としてのヘキサメトキシメチルメラミン(三井サイテック製、商品名サイメル303)4.1gを、54gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と45.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合溶媒に室温で完全に溶解した。得られた溶液に酸触媒(芳香族スルホン酸系)の2−プロパノール溶液(三井サイテック製、商品名キャタリスト4040)0.5gを添加した。この液を樹脂溶液Bとする。
次に、以下の手順で有機半導体層の原料となる有機半導体前駆体溶液を調製した。
(有機半導体前駆体溶液Cの調製)
エチル−4,7−ジヒドロ−4,7−エタノ−2H−イソインドール−1―カルボキシレート(0.109g,0.5mmol)とTHF(15mL)の混合物に水素化リチウムアルミニウム粉(0.144g,3.76mmol)を0℃で加えた。反応混合物を0℃で2時間攪拌した後、水中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。抽出溶液にp−トルエンスルホン酸(0.010g)を加え、室温で12時間攪拌した。さらにp−クロラニル(0.150g,0.61mmol)を加えて、室温で12時間攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、純水、飽和食塩水の順で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濃縮後、アルミナカラムクロマトグラフィーと再結晶により精製を行い、0.096gのテトラベンゾポルフィリンのビシクロ体粉末を得た。この化合物は極性有機溶媒に可溶であり、塗布後に加熱することで有機半導体であるテトラベンゾポルフィリンの膜を得ることができる。
このテトラベンゾポルフィリンのビシクロ体をクロロホルムに溶解し、1重量%濃度の有機半導体前駆体溶液Cを得た。
(有機半導体前駆体溶液Dの調製)
市販のアルドリッチ社製、レジオレギュラータイプのポリ(3−ヘキシルチオフェン)粉末を再沈殿法により精製したものをクロロホルムに溶解し、1重量%濃度の有機半導体前駆体溶液Dを得た。
実施例1
図2は、本発明の実施例1の有機半導体素子を示す概略断面図である。図2(a)は有機半導体素子の断面図、図2(b)は有機半導体素子の平面図を示す。1はポリイミド製の樹脂基板、2はゲート電極、3は水に対する表面接触角が5°以上45°以下である有機ゲート絶縁層、4はソース電極、5はドレイン電極、6は有機半導体層である。
図2(b)において、本来のソース電極4およびドレイン電極5は有機半導体層6の下部に配置されているので露出していないが、わかりやすくするために表記した。また、図中のLはソース電極4とドレイン電極5の間の距離を、Wはソース、ドレイン電極の長さを意味している。
まず、基板1の表面にメタルマスクを用いた真空蒸着法によりゲート電極2を作製した。電極材料はアルミニウムである。蒸着の際の到達真空度は、3×10-5Paである。基板温度は室温に設定した。
次に、このゲート電極2の表面に樹脂溶液Aをスピンコート法(回転数5000rpm)で塗布した。次に、この塗布膜をホットプレート上に移して、100℃で5分、180℃で20分間加熱した。
協和界面科学社の全自動接触角計CA−Wを用いて、この乾燥膜の蒸留水に対する表面接触角を測定したところ、82°であった。続いて、この乾燥膜の全面に低圧水銀灯(500W)で20分間照射を行なった後、再び膜表面の接触角を測定したところ15°まで低減していた。触針式段差計での測定によると表面改質後の薄膜の膜厚は約230nmであった。こうして、有機ゲート絶縁層3を得た。この有機ゲート絶縁層3は、一般式(1)に示したシスセスキオキサン骨格のR1 、R2 、R3 、R4 が全てメチル基である化合物を主体としている。
微小電流計を用いて、この有機ゲート絶縁層3の絶縁特性について測定した結果を図3に示す。図3の横軸は膜に印加した直流電圧値、縦軸は観測されたリーク電流値である。この結果によると、本実施例の有機ゲート絶縁層3は電圧値0〜20Vの範囲内で高い絶縁性を有しており、そのリーク電流は常に1×10-7A/cm2 を下回っていた。
次に、有機ゲート絶縁層3の表面にメタルマスクを用いてソース電極4及びドレイン電極5を真空蒸着法により作製した。電極材料は金である。蒸着の際の到達真空度は、3×10-5Paである。基板温度は室温に設定した。ソース電極とドレイン電極間の距離Lは0.1mm、ソース、ドレイン電極の長さWは30mmとした。また、金蒸着膜の膜厚は100nmにした。
さらに有機ゲート絶縁層3、ソース電極4およびドレイン電極5の上部に有機半導体前駆体溶液Cをスピンコート法(回転数1000rpm)で塗布した。次に、この塗布膜をホットプレート上に移して、200℃で5分間加熱してテトラベンゾポルフィリンよりなる有機半導体層6を形成した。この有機半導体層6は特にパターニングはしなかった。以上により、本実施例の有機半導体素子を得た。
この有機半導体素子のVg−Id曲線をパラメータアナライザ装置(Agilent社製、商品名4156C)を用いて測定したところ、この実施例による有機半導体素子はゲート電圧(Vg)の変化にともない、ソース電極/有機半導体/ドレイン電極間を流れるドレイン電流値(Id)が変化するスイッチング特性を示していた。
実施例2
実施例1と同様の手法で図2に示す構造の有機半導体素子を作製した。
基板1、ゲート電極2、ソース電極4、ドレイン電極5、有機半導体層6の作製方法は実施例1と同一である。しかしながら、有機ゲート絶縁層3はことなる方法で作製した。
まず、基板1上に配置されたゲート電極2の表面に樹脂溶液Bをディップコータ(引き上げ速度1mm/秒)で塗布し、次にこの膜を熱風循環式オーブンに入れて、180℃で20分間加熱した。
この乾燥膜の蒸留水に対する表面接触角を測定したところ、65°であった。続いて、この乾燥膜の全面に低圧水銀灯で3分間照射を行なった後、再び膜表面の接触角を測定したところ20°まで低減していた。触針式段差計での測定によると表面改質後の薄膜の膜厚は約240nmであった。こうして、フェノール樹脂骨格を含む有機ゲート絶縁層3を得た。微小電流計を用いた測定によると、有機ゲート絶縁層3は電圧値0〜20Vの範囲内で高い絶縁性を有しており、そのリーク電流は常に1×10-7A/cm2 を下回っていた。
次に、実施例1と同様にしてソース電極4、ドレイン電極5、有機半導体層6を配置して本発明の有機半導体素子を得た。
この実施例による有機半導体素子はゲート電圧(Vg)の変化にともない、ソース電極/有機半導体/ドレイン電極間を流れるドレイン電流値(Id)が変化するスイッチング特性を示していた。
実施例3
図4は、本発明の実施例3の有機半導体素子を示す概略図である。図4(a)は有機半導体素子の断面図、図4(b)は有機半導体素子の平面図を示す。1はポリイミド製の樹脂基板、2はゲート電極、3は水に対する表面接触角が5°以上45°以下である有機ゲート絶縁層、4はソース電極、5はドレイン電極、6は有機半導体層、7は水に対する表面接触角が60°以上である有機ゲート絶縁層である。また、図4(b)においては、本来隠れているソース電極4とドレイン電極5を表記した。
本実施例の有機半導体素子における基板1、ゲート電極2は実施例1と同様の手法で作製した。次に、実施例1と同様の手法で樹脂溶液A由来の乾燥薄膜をゲート電極の表面に形成した。
この乾燥膜の蒸留水に対する表面接触角は82°であった。続いて、この乾燥膜の表面に30mm×0.1mmの開口部を持つメタルマスクを接触して配置し、低圧水銀灯で20分間照射を行なった。ここで再び膜表面における接触角を測定したところ、開口部での接触角は15°まで低減していた。一方、メタルマスクで覆われていた箇所における接触角は82°のまま変わらなかった。触針式段差計での測定によると表面改質後の薄膜の膜厚は開口部、被覆部ともに約230nmであった。こうして、水に対する表面接触角が15°である領域3と、82°である領域7を併せ持つ有機ゲート絶縁層を得た。微小電流計を用いた測定によると、本実施例の有機ゲート絶縁層3、7はいずれの箇所も電圧値0〜20Vの範囲内で高い絶縁性を有しており、そのリーク電流は常に1×10-7A/cm2 を下回っていた。
次に、有機ゲート絶縁層の表面にメタルマスクを用いてソース電極4及びドレイン電極5を真空蒸着法により作製した。電極材料は金である。蒸着の際の到達真空度は、3×10-5Paである。基板温度は室温に設定した。この際、ソース電極4及びドレイン電極5は有機ゲート絶縁層の水に対する表面接触角が15°である領域3を挟むように配置した。すなわち、ソース電極とドレイン電極間の距離Lは0.1mm、ソース、ドレイン電極の長さWは30mmとした。また、金蒸着膜の膜厚は100nmにした。
さらに、有機ゲート絶縁層3、ソース電極4およびドレイン電極5の上部に有機半導体前駆体溶液Dを少量滴下した。この時、滴下液は有機ゲート絶縁層のうち水に対する表面接触角が15°である領域3と、ソース電極4とゲート電極5の上部に凝集した。この状態で10分間放置した後に、この高分子膜をホットプレート上に移して、130℃で5分間加熱してポリ(3−ヘキシルチオフェン)よりなる有機半導体層6を形成した。この有機半導体層6は有機ゲート絶縁層のうち水に対する表面接触角が15°である領域3とソース電極4とゲート電極5の上部にのみ形成された。以上により、本発明の有機半導体素子を得た。
この実施例による有機半導体素子はゲート電圧(Vg)の変化にともない、ソース電極/有機半導体/ドレイン電極間を流れるドレイン電流値(Id)が変化するスイッチング特性を示していた。
比較例1
実施例1と同様の手法で図2に示す構造の有機半導体素子を作製した。
基板1、ゲート電極2、ソース電極4、ドレイン電極5、有機半導体層6の作製方法は実施例1と同一である。また、有機ゲート絶縁層3の形成における樹脂溶液Aの塗布と乾燥工程も実施例1と同様に行ったが、低圧水銀灯による外部刺激は与えなかった。
この比較例の有機ゲート絶縁層の蒸留水に対する表面接触角は82°であり、膜厚は約240nmであった。また、微小電流計による測定によると、この比較例の有機ゲート絶縁層は電圧値0〜20Vの範囲内で高い絶縁性を示しており、そのリーク電流は常に1×10-7A/cm2 を下回っていた。
この比較例による有機半導体素子はゲート電圧(Vg)の変化にともない、ソース電極/有機半導体/ドレイン電極間を流れるドレイン電流値(Id)が変化するスイッチング特性を示していた。
比較例2
実施例2と同様の手法で図2に示す構造の有機半導体素子を作製した。
基板1、ゲート電極2、ソース電極4、ドレイン電極5、有機半導体層6の作製方法は実施例1と同一である。また、有機ゲート絶縁層3の形成における樹脂溶液Bの塗布と乾燥工程も実施例1と同様に行ったが、低圧水銀灯による外部刺激は与えなかった。
この比較例の有機ゲート絶縁層の蒸留水に対する表面接触角は65°であり、膜厚は約250nmであった。また、微小電流計による測定によると、この比較例の有機ゲート絶縁層は電圧値0〜20Vの範囲内で高い絶縁性を示しており、そのリーク電流は常に1×10-7A/cm2 を下回っていた。
この比較例による有機半導体素子はゲート電圧(Vg)の変化にともない、ソース電極/有機半導体/ドレイン電極間を流れるドレイン電流値(Id)が変化するスイッチング特性を示していた。
(性能の比較)
表1に実施例1〜3、比較例1〜2で作製した有機半導体素子のキャリア移動度、オン/オフ比を示す。
表1に記載のキャリア移動度μは以下の式(I)を用いて計算した。
Figure 2005259965
ただし、Wはチャネル幅(cm)、Lはチャネル長(cm)、Ci はゲート絶縁層のキャパシタンス(F/cm2)(単位面積あたり)である。飽和領域におけるドレイン−ソース(Ids)電流(A)の平方根とゲート電圧(VG )(V)の間の関係から、測定値からIds=0へ外挿することによって、見かけのしきい値電圧(V0 )が決定される。飽和領域におけるIdsは、与えられたVG におけるドレイン−ソース電圧(Vds)とドレイン−ソース電流の間の関係を観測することによって決定される。飽和領域におけるIdsとは、ドレイン−ソース電圧を上げてもIdsがもはや増大しないときのIdsである。飽和領域におけるIdsはVG とともに変動する。このV0 を決定する方法は公知の方法により行う。
また、表1に記載のオン/オフ比は、ゲート電圧(VG )がドレイン電圧(VD )以上であるときに飽和状態で流れるドレイン電流の、VG が0のときに流れるドレイン電流に対する比である。
Figure 2005259965
表1の結果から、実施例1および実施例2による有機半導体素子は、それぞれ同一の有機ゲート絶縁層素材を有する比較例1および比較例2と比べてオン/オフ比が大きいことがわかる。これは本発明における有機半導体素子の特長であり、有機ゲート絶縁層表面の濡れ性制御がVG =0の時のいわゆるオフ電流の抑制に効果を示したためであると考えられる。
本発明の有機半導体素子は、絶縁性と濡れ性に優れた有機ゲート絶縁層を有し、低いゲート電圧で安定的に駆動するので、そのトランジスタ特性を生かしたIC情報電子タグやアクティブマトリクス型表示装置における、例えば画素毎のオンオフを制御するスイッチング素子部など種々の装置に利用することができる。
本発明の有機半導体素子の一実施形態の一部を拡大して模式的に示す縦断面図である。 本発明の実施例1、2および比較例1、2の有機半導体素子の一部を拡大して模式的に示す概略図である。 本発明の実施例1における有機ゲート絶縁層の電気特性を示す図である。 本発明の実施例3の有機半導体素子の一部を拡大して模式的に示す概略図である。
符号の説明
1 基板
2 ゲート電極
3 有機ゲート絶縁層
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 有機半導体層
7 有機ゲート絶縁層

Claims (9)

  1. 少なくとも基板、有機半導体層、有機ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を有する有機半導体素子において、前記有機ゲート絶縁層の膜厚が50nm以上500nm以下であり、かつ前記有機ゲート絶縁層の少なくとも一部における水に対する表面接触角が5°以上45°以下であることを特徴とする有機半導体素子。
  2. 前記有機ゲート絶縁層の水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域以外の領域の水に対する表面接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
  3. 前記有機ゲート絶縁層の水に対する表面接触角が5°以上45°以下である領域に接して有機半導体層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の有機半導体素子。
  4. 前記基板が有機成分を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の有機半導体素子。
  5. 前記有機ゲート絶縁層を構成する少なくとも一種類の化合物が、下記一般式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の有機半導体素子。
    Figure 2005259965
    (式中、R1 、R2 、R3 、R4 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基あるいは置換または非置換のフェニル基であり、R1 〜R4 は同じでも異なっていてもよい。また、mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。)
  6. 前記有機ゲート絶縁層を構成する少なくとも一種類の化合物が、フェノール樹脂骨格を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の有機半導体素子。
  7. 有機絶縁材料を含有する溶液を塗布してなる塗布膜を、220℃以下で加熱処理して有機ゲート絶縁層を形成する工程と、前記有機ゲート絶縁層の表面の全体または一部分に紫外線照射、電子線照射、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理のうちの少なくとも一つを含む処理を施して水に対する表面接触角が5°以上45°以下に改質を行う工程と、前記有機ゲート絶縁層の改質が行われた箇所に有機半導体材料を含有する溶液を塗布した後、220℃以下で加熱処理して有機半導体層を形成する工程を含むことを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
  8. 前記有機ゲート絶縁層を構成する有機絶縁材料の少なくとも一種類の化合物が、下記一般式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格を有していることを特徴とする請求項7記載の有機半導体素子の製造方法。
    Figure 2005259965
    (式中、R1 、R2 、R3 、R4 は置換または非置換の炭素原子数1〜5個のアルキル基あるいは置換または非置換のフェニル基であり、R1 〜R4 は同じでも異なっていてもよい。また、mおよびnは0以上の整数であり、mとnの和は1以上の整数である。)
  9. 前記有機ゲート絶縁層を構成する有機絶縁材料の少なくとも一種類の化合物が、フェノール樹脂骨格を有していることを特徴とする請求項7記載の有機半導体素子の製造方法。
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