JP2012063181A - 焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法 - Google Patents

焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 薄肉鋼における焼入れ状態の非破壊検査に適する焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法を提供する。
【解決手段】磁気センサ10の励磁コイル12に印加される励磁信号の励振周波数として、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、この第1境界周波数と第2境界周波数との間で基準周波数を決定し、検査項目に応じて、基準周波数よりも低周波領域又は高周波領域のいずれかの範囲で決定する。励振コイルの励振周波数を、基準周波数を境に検査項目に対応した適切な励振周波数を求める構成であるため、薄肉鋼の焼入れ部の焼入れ状態を非破壊で精度よく検査することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高周波焼入れ、レーザー焼入れなどにより焼入れされた薄肉鋼の焼入れ状態を非破壊で検査する焼入れ状態検査装置に関する。
特許文献1〜3には、焼入れ処理された鋼の焼入れ深さを非破壊で測定する装置が開示されている。いずれも、励磁コイルとピックアップコイルを磁性体コアに巻回した磁気センサを用いたもので、焼入れ部と非焼入れ部との境界で渦電流が変化することを利用して焼入れ深さを測定している。すなわち、渦電流が流れると発生する反作用磁界が導体の透磁率により変化するため、励磁信号の周波数を変化させて磁気センサからの磁束の浸透深さをコントロールして、その周波数と浸透深さと相関から焼入れ深さを非破壊で推定するものである。
特開2010−78326号公報 特開2006−337250号公報 特開2002−14081号公報
特許文献1〜3に示した技術は、いずれも焼入れ深さを測定するものである。つまり、これらの検査装置で検査対象としている鋼は、所定の厚さを有するものであり、焼入れを行った場合、厚み方向の全てが焼入れされているものではない。深くなるに従って焼入れ効果は小さくなる。従って、所望の焼入れ深さまで焼入れされているか否かを検証するために用いられる。
しかし、薄肉鋼の場合、具体的には厚さ1.2mm以下の薄肉鋼になると、片面側から焼入れ処理をして、瞬時に厚み方向全体に亘りすなわち反対面側まで焼入れすることを目的としている。従って、薄肉鋼の焼入れ状態を検査する場合に焼入れ深さを検査する必要性はない。
一方、上記した技術は、いずれも焼入れすることにより導体内部の磁気特性が不均一となることから、励振周波数を変えて深さ方向の情報の境界点を探るものである。薄肉鋼の場合、深さ方向の焼入れ状態が均一であるが、例えば、薄肉鋼を用いた自動車用シートのシートフレームに部分的に焼入れを行ったり、部分的に異なる条件で焼入れを行ったりした場合に、それらの部位における焼入れ状態を検査するに当たって、上記した深さ方向の情報を探査する技術を応用することが考えられる。すなわち、焼入れ後の薄肉鋼組織が、面方向に部分的に、例えばマルテンサイトになっていたり、マルテンサイトとフェライトの2相組織になっていたりする場合にも磁気特性が異なることから、励振周波数と出力電圧の相関を利用して、降伏応力や表面粗さ等の焼入れ状態を非破壊で検査できる可能性がある。
ところが、薄肉鋼の場合、熱応力による歪みを受けやすく、焼入れ後の表面には微小な凹凸が多く生じている。そのため、この状態で上記した磁気センサを使用すると、ピックアップコイルからの出力電圧にはこの微小凹凸の影響により磁気特性が変化する。すなわち、磁気センサを表面に近接させた場合、この微小凹凸により、磁気センサと薄肉鋼との間にギャップが生じ、透磁率や抵抗率に変化が生じ、電圧変動が生じる。そのため、焼入れに伴う薄肉鋼の降伏応力に対応した出力電圧が得られているのか、微小凹凸(表面粗さ)に対応した出力電圧が得られているのか明確ではない。従って、上記した従来の検査装置は、薄肉鋼の焼入れ状態を非破壊で検査する装置としてそのまま用いることはできない。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、薄肉鋼における焼入れ状態の非破壊検査に適する焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法を提供することを課題とする。特に、本発明は、薄肉鋼の焼入れ部の降伏応力を非破壊で測定するのに適する焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法を提供することを課題とする。また、本発明は、薄肉鋼の表面に焼入れに伴って生じる表面粗さを測定するのに適する焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の焼入れ状態検査装置は、薄肉鋼における焼入れ部の焼入れ状態を非破壊検査する焼入れ状態検査装置であって、磁性体コアに励磁コイル及びピックアップコイルが設けられてなる磁気センサと、前記磁気センサの励磁コイルに印加される励磁信号の励振周波数を決定するための基準となる基準周波数を、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、前記第1境界周波数と第2境界周波数との間で決定する基準周波数決定部と、前記励磁コイルに印加する励振周波数を、検査項目に応じて、前記基準周波数よりも低周波領域又は前記基準周波数よりも高周波領域のいずれかに決定する励振周波数決定部と、測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させ、前記励振周波数決定部により決定された励振周波数で前記励磁コイルを励振して得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧から、前記焼入れ部の前記検査項目に関する焼入れ状態を求める焼入れ状態判定部とを有することを特徴とする。
前記基準周波数決定部は、前記第1境界周波数と第2境界周波数との平均値を前記基準周波数を決定することが好ましい。前記基準周波数決定部は、予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片に、前記磁気センサを近接させて種々の周波数で励磁して得られる、前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅と、前記薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、それぞれ他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を、前記第1境界周波数と第2境界周波数として求めることが好ましい。
前記焼入れ状態判定部は、測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の基準電圧に対する変化率を求める電圧変化率演算部を有し、前記電圧変化率演算部により求められる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の焼入れ状態を求める構成であることが好ましい。
前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域で励振周波数を決定し、前記焼入れ状態判定部は、前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の降伏応力を求める構成であることが好ましい。前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記第1境界周波数を前記励振周波数として決定することが好ましい。
前記薄肉鋼試験片について予め測定して得られた出力電圧の変化率と降伏応力との相関データを記憶した記憶部を有し、前記焼入れ状態判定部は、前記焼入れ部の出力電圧の変化率をもとに、前記焼入れ部の降伏応力を前記相関データから読み込む構成であることが好ましい。前記電圧変化率演算部は、前記基準電圧として、前記薄肉鋼又は前記薄肉鋼試験片における非焼入れ部について、前記磁気センサを用いて測定した前記ピックアップコイルからの出力電圧を用いて前記変化率を求めることが好ましい。前記焼入れ状態判定部は、前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅を求める電圧振幅演算部を有し、前記電圧振幅演算部により求められる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の焼入れ状態を判定する構成であることが好ましい。
前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域で励振周波数を決定し、前記焼入れ状態判定部は、前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の表面粗さを求める構成であることが好ましい。前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記第2境界周波数を前記励振周波数として決定することが好ましい。
前記薄肉鋼試験片について予め測定して得られた出力電圧の振幅と表面粗さとの相関データを記憶した記憶部を有し、前記焼入れ状態判定部は、前記焼入れ部の出力電圧の振幅をもとに、前記焼入れ部の表面粗さを前記相関データから読み込む構成であることが好ましい。
本発明は、前記薄肉鋼の板厚が1.2mm以下のものに適用することが好ましい。
また、本発明の焼入れ状態検査方法は、薄肉鋼における焼入れ部の焼入れ状態を非破壊検査する焼入れ状態検査方法であって、磁性体コアに励磁コイル及びピックアップコイルが設けられてなる磁気センサを使用し、前記磁気センサの励磁コイルに印加される励磁信号の励振周波数を決定するための基準となる基準周波数を、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、前記第1境界周波数と第2境界周波数との間で決定し、前記励磁コイルに印加する励振周波数を、検査項目に応じて、前記基準周波数よりも低周波領域又は前記基準周波数よりも高周波領域のいずれかに決定し、測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させ、決定された前記励振周波数で前記励磁コイルを励振して得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧から、前記焼入れ部の前記検査項目に関する焼入れ状態を求めることを特徴とする。
前記第1境界周波数と第2境界周波数との平均値を前記基準周波数を決定することが好ましい。予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片に、前記磁気センサを近接させて種々の周波数で励磁して得られる、前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅と、前記薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、それぞれ他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を、前記第1境界周波数と第2境界周波数として求めることが好ましい。測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の基準電圧に対する変化率を求め、この変化率から、前記焼入れ部の焼入れ状態を求めることが好ましい。検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域で励振周波数を決定し、前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の降伏応力を求めることが好ましい。
前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅を求め、この振幅から、前記焼入れ部の焼入れ状態を判定することが好ましい。検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域で励振周波数を決定し、前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の表面粗さを求めることが好ましい。
本発明は、磁気センサの励磁コイルに印加される励磁信号の励振周波数として、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、この第1境界周波数と第2境界周波数との間で基準周波数を決定し、検査項目に応じて、基準周波数よりも低周波領域又は高周波領域のいずれかの範囲で決定する構成である。そして、焼入れ状態判定部が、薄肉鋼に磁気センサを近接させて得られる、焼入れ部におけるピックアップコイルの出力電圧を用いて、薄肉鋼の焼入れ部の焼入れ状態の判定、特に、降伏応力と表面粗さを求める構成である。
薄肉鋼の場合、深さ方向の焼入れ状態が均一であるが、薄肉鋼の焼入れ部は、上記したように、熱応力の影響により表面に微小な凹凸が生じやすいが、本発明では、予め、励振コイルの励振周波数を上記した基準周波数を求め、この基準周波数を境に検査項目に対応した適切な励振周波数を求める構成であるため、薄肉鋼の焼入れ部の焼入れ状態を非破壊で精度よく検査することができる。
特に、薄肉鋼の降伏応力を検査する場合、上記した基準周波数よりも低周波領域に属する励振周波数で励磁する。低周波領域の励振周波数は導体内部に深く入ることができるため、焼入れにより生じた表面粗さ(微小凹凸)の影響が小さくなり、導体内部の情報が分かり、降伏応力を同定しやすくなる。一方、表面粗さを検査する場合、上記した基準周波数よりも高周波領域に属する励振周波数で励磁する。高周波領域の励振周波数は導体内部に浸透しにくくなるため、薄肉鋼の表面粗さの検査に適している。
本発明は、このように検査項目(降伏応力を検査するか、あるいは、表面粗さを検査するか)に応じて、印加する適切な励振周波数を予め決定するが、この際、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、この第1境界周波数と第2境界周波数との間で基準周波数を決定している。具体的には、予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片に、磁気センサを近接させて種々の周波数で励磁して得られる、ピックアップコイルの出力電圧の振幅と、薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を求め、これを上記第1境界周波数及び第2境界周波数としている。すなわち、この2つの励振周波数は、磁気特性の違いによって大きく変化する境界に位置する周波数であるため、この第1境界周波数及び第2境界周波数を利用することが最も好ましいということになる。但し、実際には測定誤差等もあるため、薄肉鋼の表面付近を探査するか、より内部の情報を探査するかにより、上記したように、第1境界周波数及び第2境界周波数を中心とした所定の範囲で励振周波数を使い分けることが好ましい。
図1は、本発明の一の実施形態に係る焼入れ状態検査装置の概略構成を示した図である。 図2は、出力電圧の変化率と降伏応力との相関データの一例を示した図である。 図3は、出力電圧の振幅と表面粗さ(歪量)との相関データの一例を示した図である。 図4は、図3の横軸(電圧の振幅)を対数目盛りに変換して示した図である。 図5は、試験例で用いた自動車用シートのサイドフレーム(試料)の測定点を示した図である。 図6は、測定点1における出力電圧の測定結果を示した図である。 図7は、測定点4における出力電圧の測定結果を示した図である。 図8は、測定点6における出力電圧の測定結果を示した図である。 図9(a)は測定点1〜6における出力電圧の変化率と励振周波数との関係を示した図であり、図9(b)は測定点3〜6について、励振周波数200Hz以下の領域を拡大して示した図である。 図10(a)〜(d)は、直径30mmの範囲を焼入れし、その周辺領域を焼入れしていない試料について、図1に示した磁気センサを、該磁気センサと試料とのギャップを変えて、周辺領域から直径30mmの焼入れ部を経て再び周辺領域へと直線的に移動した際の出力電圧を示した図である。
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一の実施形態に焼入れ状態検査装置1の概略構成を示した図であり、磁気センサ10、基準周波数決定部20、励振周波数決定部21、焼入れ状態判定部30等を有して構成される。
磁気センサ10は、略U字型の磁性体コア11を有し、そのうちの2つの脚部11aのそれぞれに励磁コイル12、ピックアップコイル13が巻き付けられて形成されている。
基準周波数決定部20は、磁気センサ10の励磁コイル12に印加される励磁信号の励振周波数を決定するための基準となる基準周波数を決定する。そのためには、まず、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、次に、この第1境界周波数と第2境界周波数との間で基準周波数を決定する。
具体的には、予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片を種々の降伏応力、表面粗さとなるように焼入れ処理し、それぞれに磁気センサ10を近接させて種々の周波数で励磁し、ピックアップコイル13の出力電圧を得る。そして、この出力電圧の振幅と、薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を特定し、その2つの励振周波数を、上記した出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数として求める。次に、第1境界周波数と第2境界周波数との間で基準周波数を決定する。好ましくは、第1境界周波数と第2境界周波数との平均値を基準周波数として決定する。例えば、第1境界周波数が200Hz、第2境界周波数が500Hzと求められたならば、基準周波数をその平均値である350Hzと決定するが、その詳細については、後述する。
励振周波数決定部21は、検査項目に応じて、基準周波数決定部20により決定された基準周波数よりも低周波領域か、又は基準周波数よりも高周波領域のいずれかを、磁気センサ10の励磁コイル12に供給する励磁信号の励振周波数として決定する。すなわち、検査項目が薄肉鋼の降伏応力の場合には、薄肉鋼の内部情報が必要であるため、磁気センサ10からの磁束を薄肉鋼の内部にまで浸透させるべく、基準周波数よりも低周波領域の中で励振周波数を決定する。一方、検査項目が薄肉鋼の表面付近の情報、例えば表面粗さの場合には、薄肉鋼の表面に集中して渦電流を流す必要があるため、基準周波数よりも高周波領域の中で励振周波数を決定する。高周波領域を使うことで、表面の凹凸による電圧低下を誘導させ、この電圧低下を凹凸の代用特性として検出する。
励振周波数は、基準周波数よりも低周波領域又は高周波領域の範囲で決定できるが、上記した第1境界周波数及び第2境界周波数は、磁気特性の違いによって大きく出力特性が変化する境界に位置する周波数であるため、基準周波数(上記の例では350Hz)よりも低周波領域で決定する場合には第1境界周波数(上記の例では200Hz)を採用し、基準周波数(上記の例では350z)よりも高周波領域で決定する場合には第2境界周波数(上記の例では500Hz)を利用することが好ましい。
ここで、ピックアップコイル13は、本実施形態では2つ設けられており、出力電圧は2つのピックアップコイル13の出力電圧の和を用いている。これにより出力電圧の変化をより大きく捉えることができる。
焼入れ状態判定部30は、磁気センサ10を近接させて得られるピックアップコイル13の出力電圧から、焼入れ状態を求める。焼入れ状態判定部30は、ピックアップコイル13の出力電圧を受信し、その出力電圧から焼入れ状態を求めることができるものであればよく、上記した基準周波数決定部20及び励振周波数決定部21と一体化した装置(コンピュータ等)であってもよいし、基準周波数決定部20及び励振周波数決定部21とは異なる独立した装置(コンピュータ等)であってもよい。
焼入れ状態判定部30は、焼入れ部におけるピックアップコイル13の出力電圧の基準電圧に対する変化率を求める電圧変化率演算部31を有している。そして、電圧変化率演算部31により求められる焼入れ部の出力電圧の変化率から、焼入れ部の焼入れ状態を求める。
電圧変化率演算部31で用いる基準電圧は、磁気センサ10で測定した非焼入れ部におけるピックアップコイル13の出力電圧である。非焼入れ部の出力電圧は、上記した予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの焼入れされていない薄肉鋼試験片について測定したものを使用できる。非焼入れ部としては、焼入れされた測定対象の薄肉鋼の中の焼入れされていない部分(この場合、この部分が薄肉鋼試験片に相当する)で測定して得たものでもよい。薄肉鋼試験片としては、特に、測定対象の薄肉鋼と同じ形状に形成されたもの(例えば、シートフレームのサイドフレーム形状に形成されたもの)を用い、測定対象の薄肉鋼の焼入れ部分と同じ部分で測定した薄肉鋼試験片の出力電圧を基準電圧として用いることが好ましい。
焼入れ状態判定部30が設けられている装置(コンピュータ等)には、種々のデータを記憶する記憶部40が設けられており、この記憶部40には、上記した磁気センサ10を用いて予め測定して得られた出力電圧の変化率と降伏応力との相関データが記憶されている。
図2は、出力電圧の変化率と降伏応力との相関データの一例を示す。これは、厚さ0.6mmの薄肉鋼について、励振周波数を50Hz〜1kHzまで変化させて、焼入れ後の降伏応力が32kgf/mm、59kgf/mm、83kgf/mm の部位のピックアップコイル13からの各出力電圧と、当該薄肉鋼を焼入れ処理する前に測定したピックアップコイル13からの出力電圧との比を、(焼入れ無の出力電圧)/(焼入れ有の出力電圧)で求め、それをパーセンテージで求めて変化率として横軸にプロットし、縦軸に降伏応力をプロットしたデータである。
図2は、降伏応力を求めるものであり、上記したように、薄肉鋼の内部に磁気センサ10の磁束が浸透する必要がある。そこで、降伏応力を求める場合には、基準周波数よりも低周波領域で励振した相関データを用いることが好ましい。後述のように、本実施形態では、第1境界周波数を200Hz、第2境界周波数を500Hz、基準周波数を350Hzとしている。従って、降伏応力を求める際には、350Hzよりも低周波領域に属する励振周波数を用いることが好ましい。この場合、第1境界周波数200Hzを大きく下回ると薄肉鋼の厚み範囲を超えた情報まで含むことになるため、第1境界周波数200Hzかその付近の周波数を用いることが好ましい。
従って、例えば、測定対象の薄肉鋼の所定部位の出力電圧の変化率が150%と得られた場合には、図2の200Hzの変化を示す太線で示した直線と交わる約80kgf/mmが降伏応力として求められる。
本実施形態の焼入れ状態判定部30は、さらに、電圧振幅演算部32が設定されている。電圧振幅演算部32は、ピックアップコイル13から出力される出力電圧の振幅(ピーク間振幅)を求める。磁気センサ10は、測定対象領域の薄肉鋼の表面に近接(接している場合も含む)させた状態で相対的にスライドさせるように走査するため、その場合の出力電圧は例えば図6〜図8に示したような波形となる。そこで、電圧振幅演算部32は、例えば、その出力電圧波形の中で最も高いピーク値と最も低いピーク値との差を振幅として出力する。あるいは、各波形の上限側のピーク値と下限側のピーク値をそれぞれ数点ずつまとめて平均値を求め、上限側の平均値と下限側の平均値との差を振幅として出力するようにしてもよい。
焼入れ状態判定部30は、電圧振幅演算部32により電圧の振幅が求められたならば、その値に基づき、焼入れ状態を判定する。具体的には、記憶部40に、上記した薄肉鋼試験片について予め測定して得られた出力電圧の振幅と表面粗さ(歪量(薄肉鋼試験片の中の非焼入れ部の面を基準とした焼入れ部の歪量))との相関データを記憶させておき、焼入れ状態判定部30が、測定対象の薄肉鋼の焼入れ部の出力電圧の振幅を、上記相関データに照合して表面粗さを特定する。
図3は、出力電圧の振幅と歪量との相関データの一例を示す。これは、厚さ0.6mmの薄肉鋼について、励振周波数を50Hz〜1kHzまで変化させて、電圧の振幅に対する歪量をプロットしたものである。図3から分かるように、50Hz,100Hz,200Hzの励振周波数は、電圧の振幅が最大で約0.4Vであるのに対し、500Hz,1kHzでは最大で約1Vであり、大きく離れている。
すなわち、表面粗さ(歪量)と出力電圧の振幅の相関をとると、出力電圧の振幅に対する表面粗さの変化率が、200Hzと500Hzとの間では大きく離れているのに対し、200Hzに対して50Hzや100Hzは変化率が小さい。500Hzに対して1kHzも変化率が小さい。よって、この例では、200Hz及び500Hzが磁気特性の違いによって大きく変化する境界に位置する周波数と判定できる。
図3の各励振周波数に対応して示した各線を分解すると、電圧振幅の小さな領域では、非線形のR(曲線部)になっており、電圧振幅の高い領域ほど直線(Rを挟んだ後に存在するため、便宜上「第2の直線」と称する)に近い変化となっている。そして、各R部に接線を引くと、50Hz,100Hz,200Hzの線は、この接線と第2の直線とが近接しているが、500Hz,1kHzになると、R部の接線と第2の直線とのなす角度が200Hzの場合の数倍以上の離れている。そこで、この閾値を任意に設定し、例えば、接線と第2の直線とのなす角の角度が4倍以上相違する2つの周波数を境界に位置する周波数として求めるようにする。その結果、図3では、200Hzと500Hzがピックアップされ、相対的に低周波側に位置する200Hzが第1境界周波数、高周波側に位置する500Hzが第2境界周波数となる。そして、200Hzと500Hzの平均値である350Hzが基準周波数として求められる。
すなわち、図3中、Rが支配的な範囲及びRの接線が支配的な範囲は、導体内部の焼入れによる電圧低下が顕著に表れる周波数帯域と考えられ、第2の直線が支配的な範囲は、表面の微小凹凸による電圧低下が顕著に生じる周波数帯域と考えられる。
図4は、図3のグラフの横軸(電圧の振幅)を対数目盛りに変換したグラフであるが、50Hz,100Hz,200Hzの励振周波数が中途で大きく折れ曲がってるのに対し、500Hz,1kHzはほぼ直線である。従って、この線形度合い(折れ曲がり角度)について所定の閾値を設け、2つの境界周波数を設定することもできる。折れ曲がり角度の差は、導体内部の焼入れによる電圧低下を捉える周波数帯域と、表面の微小凹凸による電圧低下を捉える周波数帯域とを区別する基準となる。つまり、図4は、内部の焼入れによる電圧低下を捉える場合は200Hz以下であり、350Hz以上は内部の焼入れによる電圧低下を捉えているのではなく、表面の微小凹凸による電圧低下を捉えていることを示している。なお、焼入れによる内部の降伏応力に関係する200Hz以下の周波数帯域は、電圧低下に伴って振幅が小さくなるが、そのことが、図4で顕著に示される。
ここで、基準周波数決定部20は、上記のようにして変化率の大小から境界となる周波数を求める焼入れ状態判定部30(電圧振幅演算部32を含む)の機能を利用したものであり、焼入れ状態判定部30の境界周波数を求める機能が、本実施形態の基準周波数決定部20となっている。
表面粗さを求める場合、基準周波数よりも高周波領域に属する周波数を励振周波数として用いるように、励振周波数決定部21により決定される。例えば、上記の例では基準周波数が350Hzであるため、それよりも高周波領域の周波数、好ましくは第2境界周波数である500Hzが励振周波数として決定される。そして、磁気センサ10を用いて500Hzで励磁コイル12を励振し、測定対象の薄肉鋼に近接させてピックアップコイル13で検出された電圧の振幅変化を電圧振幅演算部32により求める。焼入れ状態判定部30は、検出された電圧振幅として、例えば、0.5Vを検出すると、図3の500Hzの線から約0.8mmが歪量として検出されることになる。同様に、例えば0.8Vを検出すると、図3の500Hzの線から約1mmが歪量として検出されることになる。
このようにして表面粗さを非破壊で容易に求めることができる。なお、図3及び図4に示したように、焼入れにより生じた歪量と降伏応力との相関を予め実測しておく。例えば、歪量1mmの場合は80kgf/mm 、歪量0.4mmの場合は60kgf/mm というように測定しておく。もちろん、降伏応力が同じでも、歪量が部位により異なる場合もあるが、目安としては利用できる。そこで、電圧の振幅から歪量を求めたならば、さらに、この歪量から降伏応力の値を求めるようにしてもよい。このようにして求めた降伏応力を、上記した図2に示した出力電圧の変化率から求めた降伏応力の値と比較することにより、図2から求めた降伏応力が正しいか否かの検証として利用できる。
(試験例)
図5に示した形状の自動車用シートの厚さ0.6mmサイドフレーム(試料)を2つ準備し、それぞれ測定点1〜6について、励磁電流500mA、励振周波数50Hz、100Hz、200Hz、500Hz、1kHzで励磁コイル12を励磁し、ピックアップコイル13に発生する誘導起電力(出力電圧)を測定した。
図6は測定点1における結果を示し、図7は測定点4における結果を示し、図8は測定点6における結果を示す。2つの試料の一方(試料1)の測定点4,6は焼入れ処理が施されており、他方の試料(試料2)の測定点4,6は焼入れ処理が施されていない。測定点1はいずれも焼入れ処理が施されていない。
測定点1は、滑らかな表面となっている。図6に示したように、試料1,2のいずれも焼入れされていない測定点1は、いずれの周波数を比較しても、2つ試料間で大きな変化はない。このことは、両者間の電圧の変化率はほぼ100%前後であることからもわかる。
測定点4は、表面が滑らかとなっている。図7に示したように、いずれの周波数においても、焼入れ処理された試料1の出力電圧の方が焼入れ処理されていない試料2よりも低くなっている。50Hz〜200Hzは、(焼入れ無(試料2)の出力電圧)/(焼入れ有(試料1)の出力電圧)が128〜135%であるが、500Hz,1kHzでは、112〜119%であり、200Hz以下の方が出力電圧の変化率が大きい。
測定点6は、焼入れされた試料1の表面には微小凹凸が生じている。焼入れされていない試料2の表面は滑らかである。図8に示したように、出力電圧は、いずれの周波数でも、焼入れ処理された試料1の方が焼入れ処理されていない試料2よりも低くなっている。出力電圧の変化率は、50Hz,200Hz,500Hzがほぼ同じ150%前後であり、100Hzは180%とさらに大きい変化率になっている。これに対し、1kHzは、126%と変化率が小さくなっており、測定点6でも測定点4と同様に出力電圧の変化率は、周波数の小さい方が顕著に現れている。
図9(a)は測定点1〜6における出力電圧の変化率と励振周波数との関係を示したグラフであり、図9(b)は測定点3〜6について、励振周波数200Hz以下の領域を拡大して示したグラフである。これらのグラフから、出力電圧の変化率は、励振周波数の低い領域において、焼入れ有無の違いが顕著に判定できることがわかる。これは、低周波領域の方が、磁気センサ10の磁束が導体の内部に浸透するからである。薄肉鋼の降伏応力を検査する場合には薄肉鋼の内部情報を知る必要があるため、上記実施形態で説明したように基準周波数よりも低周波領域の励振周波数を設定しているが、それが有効であることがこの試験からも裏付けられる。
一方、図6〜図8を見ると、表面が滑らかな測定点1と測定点4は、焼入れ処理の有無に拘わらず、出力電圧は極めて小さな振幅で推移している。測定点6も焼入れ処理されていない試料2の表面は滑らかであるため、出力電圧の振幅は小さい。しかし、焼入れ処理されて微小凹凸が生じた試料1は振幅変化が顕著に大きくなっている。従って、図8の測定点6の試料1の出力電圧波形の振幅は、微小凹凸の影響によるものと判断できる。よって、出力電圧波形の振幅が所定の閾値以上であるか否かにより、微小凹凸の有無を判定できるし、振幅の大きさにより、上記実施形態で説明したように、微小凹凸の歪量を検査することができる。
図8から明らかなように、振幅の大きさは50〜200Hzでは、最大で0.4V程度であるが、500Hz、1kHzでは1V前後の振幅がある。このデータをまとめたのが図3及び図4であるが、図8を見ても、200Hz以下と500Hz以上との間で、振幅に顕著な差があることがわかる。これは、高周波領域ほど導体の表面探査に適することを示すものであり、表面粗さ(歪量)を求めるには、500Hz以上が適していることがわかる。
なお、図9(a)を見ると、励振周波数1kHzになると、出力電圧の変化率が小さくなる。その一方、上記した基準周波数350Hzを下回る領域、特に、200Hz以下において変化率が顕著に現れ、基準周波数350Hzを上回る領域、特に500Hz以上において電圧の振幅変化が顕著に現れている。よって、本発明のような薄肉鋼を対象とする場合、いずれの場合でも励振周波数は1kHz以下の範囲で選択することが好ましい。
図10は、直径30mmの範囲を焼入れし、その周辺領域を焼入れしていない試料について、図1に示した磁気センサ10を、周辺領域から直径30mmの焼入れ部を経て再び周辺領域へと直線的に走査した際の出力電圧を示した図である。横軸の0mmが直径30mmの焼入れ部の中心点である。図10(a)〜(d)は、磁気センサ10の先端面と試料表面とのギャップを変化させて測定しており、(a)は試料表面に接触させた場合、(b)はギャップを1mmに設定した場合、(c)はギャップを2mmに設定した場合、(d)はギャップを5mmに設定した場合である。
図10から、ギャップ1mm以下の場合には焼入れ領域の変化を検出できるが、ギャップが2mm以上となると焼入れ領域の変化を検出できないことがわかる。逆に言えば、焼入れにより、1mm程度の微小凹凸が生じている場合、磁気センサを当接した際にその凸部と基準面との間で1mm程度の隙間が生じるが、その場合でも焼入れによる出力電圧の変化を検出することができるといえる。
なお、検査対象の薄肉鋼としては、例えば、自動車のシートフレームなどに用いられる安価で加工性のよい、冷間圧延鋼板や熱間圧延鋼板などとすることができる。厚さは、1.2mm以下のものが好ましい。これより厚い鋼の場合、厚み方向の全てを焼入れすることが困難となり、所定の深さまでしか焼入れできず、本発明の検査対象として適さない。また、図10から、これ以上厚さが増した場合において、表面に微小凹凸が生じていると、磁気センサの磁束が浸透しにくくなり、出力電圧の変化を捉えることが困難になるからである。従って、本発明により焼入れ状態、特に降伏応力及び表面粗さを検査する対象となる薄肉鋼は、厚さ1.0mm以下がより好ましく、厚さ0.8mm以下がさらに好ましく、厚さ0.6mm以下が最も好ましい。
1 焼入れ状態検査装置
10 磁気センサ
11 磁性体コア
12 励磁コイル
13 ピックアップコイル
20 基準周波数決定部
21 励振周波数決定部
30 焼入れ状態判定部
31 電圧変化率演算部
32 電圧振幅演算部
40 記憶部

Claims (20)

  1. 薄肉鋼における焼入れ部の焼入れ状態を非破壊検査する焼入れ状態検査装置であって、
    磁性体コアに励磁コイル及びピックアップコイルが設けられてなる磁気センサと、
    前記磁気センサの励磁コイルに印加される励磁信号の励振周波数を決定するための基準となる基準周波数を、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、前記第1境界周波数と第2境界周波数との間で決定する基準周波数決定部と、
    前記励磁コイルに印加する励振周波数を、検査項目に応じて、前記基準周波数よりも低周波領域又は前記基準周波数よりも高周波領域のいずれかに決定する励振周波数決定部と、
    測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させ、前記励振周波数決定部により決定された励振周波数で前記励磁コイルを励振して得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧から、前記焼入れ部の前記検査項目に関する焼入れ状態を求める焼入れ状態判定部と
    を有することを特徴とする焼入れ状態検査装置。
  2. 前記基準周波数決定部は、前記第1境界周波数と第2境界周波数との平均値を前記基準周波数を決定する請求項1記載の焼入れ状態検査装置。
  3. 前記基準周波数決定部は、予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片に、前記磁気センサを近接させて種々の周波数で励磁して得られる、前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅と、前記薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、それぞれ他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を、前記第1境界周波数と第2境界周波数として求める請求項1又は2記載の焼入れ状態検査装置。
  4. 前記焼入れ状態判定部は、測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の基準電圧に対する変化率を求める電圧変化率演算部を有し、
    前記電圧変化率演算部により求められる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の焼入れ状態を求める構成である請求項1〜3のいずれか1に記載の焼入れ状態検査装置。
  5. 前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域で励振周波数を決定し、
    前記焼入れ状態判定部は、前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の降伏応力を求める構成である請求項4記載の焼入れ状態検査装置。
  6. 前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記第1境界周波数を前記励振周波数として決定する請求項5記載の焼入れ状態検査装置。
  7. 前記薄肉鋼試験片について予め測定して得られた出力電圧の変化率と降伏応力との相関データを記憶した記憶部を有し、
    前記焼入れ状態判定部は、前記焼入れ部の出力電圧の変化率をもとに、前記焼入れ部の降伏応力を前記相関データから読み込む構成である請求項5又は6記載の焼入れ状態検査装置。
  8. 前記電圧変化率演算部は、前記基準電圧として、前記薄肉鋼又は前記薄肉鋼試験片における非焼入れ部について、前記磁気センサを用いて測定した前記ピックアップコイルからの出力電圧を用いて前記変化率を求める請求項5〜7のいずれか1に記載の焼入れ状態検査装置。
  9. 前記焼入れ状態判定部は、前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅を求める電圧振幅演算部を有し、
    前記電圧振幅演算部により求められる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の焼入れ状態を判定する構成である請求項1〜7のいずれか1に記載の焼入れ状態検査装置。
  10. 前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域で励振周波数を決定し、
    前記焼入れ状態判定部は、前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の表面粗さを求める構成である請求項9記載の焼入れ状態検査装置。
  11. 前記励振周波数決定部は、検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記第2境界周波数を前記励振周波数として決定する請求項10記載の焼入れ状態検査装置。
  12. 前記薄肉鋼試験片について予め測定して得られた出力電圧の振幅と表面粗さとの相関データを記憶した記憶部を有し、
    前記焼入れ状態判定部は、前記焼入れ部の出力電圧の振幅をもとに、前記焼入れ部の表面粗さを前記相関データから読み込む構成である請求項10又は11記載の焼入れ状態検査装置。
  13. 前記薄肉鋼の板厚が1.2mm以下である請求項1〜12のいずれか1に記載の焼入れ状態検査装置。
  14. 薄肉鋼における焼入れ部の焼入れ状態を非破壊検査する焼入れ状態検査方法であって、
    磁性体コアに励磁コイル及びピックアップコイルが設けられてなる磁気センサを使用し、
    前記磁気センサの励磁コイルに印加される励磁信号の励振周波数を決定するための基準となる基準周波数を、出力特性が大きく変化する低周波側の第1境界周波数と高周波側の第2境界周波数を求め、前記第1境界周波数と第2境界周波数との間で決定し、
    前記励磁コイルに印加する励振周波数を、検査項目に応じて、前記基準周波数よりも低周波領域又は前記基準周波数よりも高周波領域のいずれかに決定し、
    測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させ、決定された前記励振周波数で前記励磁コイルを励振して得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧から、前記焼入れ部の前記検査項目に関する焼入れ状態を求めることを特徴とする焼入れ状態検査方法。
  15. 前記第1境界周波数と第2境界周波数との平均値を前記基準周波数を決定する請求項14記載の焼入れ状態検査方法。
  16. 予め測定対象の薄肉鋼と同じ材質及び厚さの薄肉鋼試験片に、前記磁気センサを近接させて種々の周波数で励磁して得られる、前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅と、前記薄肉鋼試験片の表面粗さとの変化率が、それぞれ他の励振周波数との関係よりも大きい2つの励振周波数を、前記第1境界周波数と第2境界周波数として求める請求項14又は15記載の焼入れ状態検査方法。
  17. 測定対象の前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の基準電圧に対する変化率を求め、この変化率から、前記焼入れ部の焼入れ状態を求める請求項14〜16のいずれか1に記載の焼入れ状態検査方法。
  18. 検査項目が、測定対象の薄肉鋼の降伏応力である場合に、前記基準周波数よりも低周波領域で励振周波数を決定し、
    前記基準周波数よりも低周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の変化率から、前記焼入れ部の降伏応力を求める請求項17記載の焼入れ状態検査方法。
  19. 前記薄肉鋼に前記磁気センサを近接させて得られる、前記焼入れ部における前記ピックアップコイルの出力電圧の振幅を求め、この振幅から、前記焼入れ部の焼入れ状態を判定する請求項14〜18のいずれか1に記載の焼入れ状態検査方法。
  20. 検査項目が、測定対象の薄肉鋼の表面粗さである場合に、前記基準周波数よりも高周波領域で励振周波数を決定し、
    前記基準周波数よりも高周波領域に属する前記励振周波数を印加して得られる前記焼入れ部の出力電圧の振幅から、前記焼入れ部の表面粗さを求める請求項19記載の焼入れ状態検査方法。
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