JP2002174625A - 金属疲労識別装置及び金属疲労識別システム - Google Patents

金属疲労識別装置及び金属疲労識別システム

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JP2002174625A
JP2002174625A JP2001303377A JP2001303377A JP2002174625A JP 2002174625 A JP2002174625 A JP 2002174625A JP 2001303377 A JP2001303377 A JP 2001303377A JP 2001303377 A JP2001303377 A JP 2001303377A JP 2002174625 A JP2002174625 A JP 2002174625A
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metal fatigue
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coil
metal
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Application number
JP2001303377A
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English (en)
Inventor
Tokichi Maeda
東吉 前田
Masataka Okubo
正喬 大久保
Masahiko Saito
雅彦 齋藤
Shuhei Saito
周平 齋藤
Kazuyoshi Sekine
和喜 関根
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MAEDA KK
Maeda Ltd
Original Assignee
MAEDA KK
Maeda Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属に亀裂が発生する前の段階において、疲
労の進行状態を定量的に検出し、さらに検出のための操
作も簡略に行える金属疲労識別装置及び金属疲労識別シ
ステムを提供することを目的とする。 【解決手段】 金属材料からなる検査試料11の疲労を
識別する装置であって、交流電流が入力されて磁場を形
成する励磁コイル21と、励磁コイル21により電磁誘
導され検査試料11による前記磁場の変化を出力する誘
導コイル22とを備えた検出コイル部20を有し、検査
試料11の検査時の励磁コイル21への交流電流は、基
準試料12の検査時に検出コイル部20の出力が最大と
なる周波数f0に特定されることにより、上記課題を解
決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】本発明は、金属の疲労を検出する装置及び
システムに関するものであって、特に金属疲労の中でも
亀裂が発生する前段階を検出する装置及びシステムに関
する技術分野に属する。
【0003】
【従来の技術】現在、金属疲労の検出においては、金属
の疲労が進行し破断する前段階の亀裂の発生を危険域と
して捉え、この亀裂の有無を発見することによって、金
属の破断を未然に防止する方法が一般的に行われてい
る。具体的には、X線や超音波による透過、反射などの
技術を利用して、金属内部における亀裂を検出したり、
あるいは磁力を利用して、金属表面の亀裂を検出したり
する方法が用いられている。
【0004】中でも特に、非破壊検査において簡単に金
属の亀裂を検出する方法として、磁気を用いた渦流式の
センサが広く利用されている。これは、励磁コイルに交
流電流を印加して磁場を形成し、検査試料に生じせしめ
た渦流が、亀裂によって変化することを誘導コイルで検
出するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような渦
流式では、亀裂の形状や大きさによって検出できる周波
数が異なるため、感度良く検出するためには、検出時に
励磁コイルに印加する交流電流の周波数を変化させた
り、周波数を複数化したりといった方法が必要であっ
た。そのため、操作や装置構成が複雑になり、特に、非
破壊検査を目的として、機動性を有した測定が必要な場
合には、装置を小型化したり操作性を向上させたりする
ことが望まれていた。
【0006】また、金属疲労の検出において、亀裂が発
生した状態というのは破壊の一歩手前の状態であり、そ
の時点で金属疲労を検出しても、余寿命の推定という観
点では不十分であった。そのため、亀裂が発生する前の
さらに早期の段階で疲労を発見し、疲労の有無だけでな
くその度合いも識別できることが望まれていた。
【0007】このような従来の課題を考慮して、本発明
は、金属に亀裂が発生する前の段階において、疲労の進
行状態を定量的に検出し、さらに検出のための操作も簡
略に行える金属疲労識別装置及び金属疲労識別システム
を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明の金属疲労識別装置は、次のような手段を採
用する。
【0009】すなわち、請求項1では、金属材料からな
る検査試料の疲労を識別する装置であって、交流電流が
入力されて磁場を形成する励磁コイルと、励磁コイルに
より電磁誘導され検査試料による前記磁場の変化を出力
する誘導コイルとを備えた検出コイル部を有し、検査試
料の検査時の励磁コイルへの交流電流は、基準試料の検
査時に検出コイル部の出力が最大となる周波数f0に特
定される。
【0010】この手段では、金属材料からなる検査試料
の亀裂が発生する前の疲労を、励磁コイルにより形成さ
れた磁場の変化として捉え、誘導コイルの出力から検出
して識別がなされる。特に、あらかじめ基準試料を検査
して検出コイル部の出力が最大となる周波数f0を求
め、この周波数f0に特定して検査試料を検査すること
により、SN比が高められ検出精度が向上される。
【0011】また、請求項2では、請求項1記載の金属
疲労識別装置において、基準試料は、検査試料と同質で
金属疲労のない試料であることを特徴とする。
【0012】この手段では、検査試料と基準試料の金属
疲労に起因する変化のみが感度良く検出される。
【0013】また、請求項3では、請求項1または2記
載の金属疲労識別装置において、検出コイル部には磁芯
として高透磁性部材が備えられ、この高透磁性部材と基
準試料と励磁コイルと誘導コイルとを有する系が同調回
路を形成するときの周波数が、前記周波数f0として選
択される。
【0014】この手段では、励磁コイルと誘導コイルと
高透磁性部材と基準試料とを全体として相互インダクタ
ンスを有する系において、同調回路が形成されるとき検
出コイル部の出力が最大となるため、このときの周波数
を特定の周波数f0として決定する。そして、この周波
数f0を用いて検査試料が検査されるため、高感度に金
属疲労の検出がなされる。
【0015】また、請求項4では、請求項1から3のい
ずれかに記載の金属疲労識別装置において、検査試料の
検査時の励磁コイルへの交流電流は、前記周波数f0の
半値幅の範囲内から選ばれることを特徴とする。
【0016】この手段では、基準試料の検査時に検出コ
イル部の出力が最大となる周波数f0において、振幅が
半値となる周波数(振幅が3dB低下する周波数)をf
0−Δf0、f0+Δf0とすると、検査試料の検査時
の励磁コイルへの交流電流は、f0±Δf0の範囲内か
ら選ばれて、金属疲労の検出がなされる。
【0017】また、請求項5では、請求項1から4のい
ずれかに記載の金属疲労識別装置において、金属材料と
して、磁性材料及び非磁性材料を適用対象とすることを
特徴とする。
【0018】この手段では、適用対象となる金属材料
は、磁性の有無に拘わらず、鉄鋼、アルミニウム、ステ
ンレスを始めとする全ての金属材料から選ばれる。
【0019】また、請求項6では、請求項1から5のい
ずれかに記載の金属疲労識別装置において、検出コイル
部は、携帯可能なケーシング内に収納され、このケーシ
ング内には、励磁コイルに入力する交流電流の周波数を
設定する周波数設定部と、検出コイル部の入出力から乗
算値を出力する検出回路部と、この検出回路部の出力を
定量化して表示する表示部と、電源部と、外部装置と接
続するための端子部とが備えられることを特徴とする。
【0020】この手段では、検査試料の検出に必要な機
能が全てケーシングに収納されているため、検査時の機
動性が向上される。また、表示部により定量的に認識で
きるため、検査のその場で金属疲労の度合いが識別され
る。また、端子部により外部装置との接続が容易になさ
れる。
【0021】また、前記課題を解決するために、本発明
の金属疲労識別システムは、次のような手段を採用す
る。
【0022】すなわち、請求項7では、交流電流が入力
されて磁場を形成する励磁コイルと励磁コイルにより電
磁誘導され検査試料による前記磁場の変化を出力する誘
導コイルとを有する検出コイル部を備え、基準試料を検
査して、検出コイル部の出力が最大となる特定の周波数
f0を求め、この特定の周波数f0を周波数設定部に設
定して検査試料を検査し、検出コイル部の入出力の変化
から検査試料の金属疲労の度合いを識別する金属疲労識
別システム。
【0023】この手段では、あらかじめ基準試料を用い
て周波数f0を求めた後、その周波数f0に固定したま
ま検査試料を検査しているため、検査試料を検査する段
階で、周波数を変化させたり、複数設定したりする操作
が不要となり、操作の煩わしさが解消される。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の金属疲労識別装置
の基本的な実施の形態について図面に基づいて説明す
る。図1は実施の形態(1)の検出コイル部付近の概念
図、図2は実施の形態(1)の検出コイル部付近の等価
回路図、図3は実施の形態(1)で基準試料による周波
数の特定を説明するモデル図、図4は実施の形態(1)
の金属疲労識別装置のブロック図、図5は実施の形態
(1)の金属疲労識別装置の構成図、図6は実施の形態
(1)の検出コイル部の出力の変化を説明するモデル
図、図7は実施の形態(1)の外観の一例を示す斜視
図、図8は実施の形態(1)を用いたシステムのフロー
チャートを示している。
【0025】実施の形態(1)の金属疲労識別装置10
0は、金属材料からなる検査試料11の疲労を識別する
装置であって、交流電流が入力されて磁場を形成する励
磁コイル21と、励磁コイル21により電磁誘導され検
査試料11による前記磁場の変化を出力する誘導コイル
22とを備えた検出コイル部20を有し、検査試料11
の検査時の励磁コイル21への交流電流は、基準試料1
2の検査時に検出コイル部20の出力が最大となる周波
数f0に特定される。
【0026】なお、ここ言う金属疲労とは、従来から一
般的に言われている金属の透磁率、導電率の低下した状
態を指している。また、検査試料11とは、金属の疲労
を検出しようとする試料を、基準試料12とは、検査試
料11と同質で未疲労の試料を意味しており、これらを
総合して試料10とする。
【0027】検出コイル部20は、いわゆる渦流型のセ
ンサ構造を呈しており、図1に示すように1次側となる
励磁コイル21が高透磁性部材である磁芯23に巻回さ
れ、この励磁コイル21の磁束に鎖交して電磁誘導され
るよう2次側となる誘導コイル22が設けられている。
また、誘導コイル22は同一構成の一対の誘導コイル2
2a、22bが差動で出力されるように接続されてい
る。具体的には励磁コイル21と誘導コイル22の構成
としては、例えば磁芯23の外周に励磁コイル21を巻
回し、その外周面に誘導コイル22を巻回する構成や、
またはその逆の構成や、一列に並設する構成等が挙げら
れる。磁芯23には、透磁率の高いフェライトが好適で
あるが、この素材に限定されるものではない。
【0028】検出コイル部20の磁芯23の一方端に対
向する位置で、励磁コイル21が形成する磁場中が、被
検査部24となり、ここに試料10が配置される。この
試料10は、被検査部24の任意の位置に設置可能であ
るが、磁芯23に接触(リフトオフ=0)させ、磁芯2
3の中心線と試料10の接触面とが垂直になるよう設置
することが好ましい。これにより、試料10の設置位置
による検出誤差が防止されるとともに、検出感度も大幅
に向上する。
【0029】なお、検出コイル部20のコイル仕様(径
や巻数等の諸条件)は、異なる材質の検査試料11であ
っても共用化することができるが、材質に応じてコイル
仕様を最適化しておくと、検出の精度をさらに向上させ
ることができる。
【0030】このように構成された検出コイル部20付
近の状態を、図2(なお、図1、2、5では差動で出力
することを意味する●を回路図に図示している)の等価
回路図を用いて説明する。検出コイル部20では、1次
側の励磁コイル21が2つの励磁コイル21a、21b
から構成されそれぞれインダクタンスL1a、L1bを
有する。一方2次側の誘導コイル22は差動で出力され
るよう接続された2つの誘導コイル22a、22bから
構成されそれぞれインダクタンスL2a、L2bを有し
ている。そしてこれらのコイルと磁芯23とで構成され
る電磁誘導の回路に、基準試料12を磁芯23に接触さ
せて付加している。なおここでは、誘導コイル22a、
22bのそれぞれに並列にコンデンサC2a、C2bを
接続し、全体として相互インダクタンスMを有する系を
形成して、同調回路を形成させている。そして、この相
互インダクタンスMを有する系が、同調回路となるとき
の周波数f0が求められる。すなわち、この図2に示す
回路で図3に示すように、励磁コイル21側に入力する
交流電流の周波数fを変化させ、誘導コイル22側から
の出力V2を観察し、V2が最大となったときのfを同
調周波数f0として求めるのである(以下この操作を初
期調整と記す)。そして、基準試料12に替えて検査試
料11を磁芯23に接触させて、先の同調周波数f0を
入力し、このときの相互インダクタンスMの変化の度合
いを検出することで、検査試料11の金属疲労の度合い
が検出される。
【0031】なお、同調周波数f0は厳密に設定するこ
とで検出精度は向上されるが、操作の効率等を考慮する
と同調周波数f0の半値幅の範囲内から選んで設定して
良い。すなわち、検出コイル部20からの出力V2の振
幅がピーク値を示す同調周波数f0から、振幅が3dB
低下する周波数をf0−Δf0、f0+Δf0とした場
合に、f0±Δf0の範囲から選ばれた周波数を検査試
料11の検出に用いて良い。
【0032】基準試料12は、測定しようとする検査試
料11が決まった段階で、検査試料11と同質でかつ未
疲労の試料が準備される。そして、この基準試料12を
用いて検査前に上述の初期調整を行うことで、検出コイ
ル部20の製造上のバラツキを吸収した上で、同調周波
数f0を決定するができる。そのため、金属疲労識別装
置100は個体差が補正された精度の良い測定が行うこ
とができる。また、同調周波数f0は、基準試料12で
最大出力V2が得られる周波数であるため、同質の検査
試料11を検査した際にSN比が高く、検出の感度にも
優れている。また、このように同調周波数f0を求める
操作によって、検出コイル部20に形成される同調回路
が1種のフィルタとして利用されるため、フィルタ類や
移相器等の回路が不要となり装置の構成が簡素化でき、
全体として小型化、低価格化が図れる。
【0033】この検出コイル部20を有する金属疲労識
別装置100のブロック図を図4に示す。検出コイル部
20の後段に設けられる検出回路部50には、励磁コイ
ル21に入力される信号が分岐され基準の基準信号41
として入力されるとともに、誘導コイル22から出力さ
れた検出信号25が入力される。また、その他に金属識
別装置100には、検出コイル部20に入力される交流
電流の周波数fを調整し設定するため周波数設定部40
と、検出回路部50の出力を数値化して表示する表示部
60と、電源となる電源部30とが設けられている。さ
らに、外部装置80を接続するための端子部70も設け
られている。
【0034】検出回路部50は、図5に示すように増幅
器51と乗算器52とを備えており、入力された検出信
号25が増幅されて基準信号41との乗算処理が施され
る。図6は、未疲労の基準試料12と金属疲労を生じて
いる検査試料11の、誘導コイル22側の出力レベル
(検出信号25)を比較した状態を模式的に示すグラフ
である。図6中のS1は基準試料12の場合を、S2は
検査試料11の場合を示している。図6では、横軸の周
波数(kHz)を共用し、図6中の上のグラフは、S1
とS2の出力レベルの振幅(V)を比較したもの、図6
中の下のグラフは、S1とS2の出力レベルの位相
(°)を比較したものを示している。検査試料11に金
属疲労が生じている場合には、透磁率と導電率が低下し
ているため、検出コイル部20において相互インダクタ
ンスMの変化を引き起こす。そのため、検査試料11の
検出信号25(S2)は、基準試料の検出信号25(S
1)と比較すると、振幅においては、出力V2のピーク
値の変化(ΔV2)とピーク周波数の変化(Δf)が表
れる。また、位相においても、位相のずれ(Δθ)が表
れる。従って、これらΔV2、Δf、Δθとして表出す
る変化の大きさは、金属疲労劣化の進行度を測る識別信
号として捉えることができるのである。なお、図6に示
すこれらの変化の増減の傾向、及びその度合いは一例で
あるため、これに限定されるものではない。
【0035】出力V2の振幅のピーク値、ピーク周波
数、位相において変化を受けた状態の検出信号25(S
2)は、乗算器52に入力されて、基準信号41と乗算
処理されることで検出回路部50の出力に反映される。
この乗算処理された結果を表示部60で乗算値として定
量的に表示することにより、金属の疲労の状態が数値化
される。そして、金属の疲労の度合いの識別は、基準試
料12の検査時に表示される乗算値D0と、検査試料1
1の検査時に表示される乗算値Dxを比較することによ
り行われる。金属に疲労が生じている場合には、Dxは
D0を基点として正または負に変化する。(一般的には
強磁性体ではDxはD0より低下し、非磁性体では上昇
することが多い。)従って、基準試料11と検査試料1
2の乗算値を比較することにより、金属疲労の有無及び
その進行度を定量的に評価することができるのである。
金属材料の種類により乗算値Dxは乗算値D0より大き
くなる場合も小さくなる場合もある。なお、ここでは乗
算値として結果を取り出しているが、振幅のピーク値
(V2)、ピーク周波数(f)、位相(°)をそれぞれ
取り出して、基準試料11と検査試料12とを比較して
もよい。
【0036】上述の乗算値は、金属疲労のデータとして
蓄積することで、識別の精度を向上させることができる
とともに、金属疲労箇所の余寿命の推定などに有効に活
用できる。
【0037】このように構成された金属疲労識別装置1
00の各部は、携帯可能なケーシング90に収納されて
いる。図7に外観の一例を示している。図7は、ハンデ
ィタイプで上置き型に構成した例で、先端に突出した磁
芯23を試料10に接触させて検査し、表示部60の表
示で試料10の金属疲労の度合いを定量的に識別できる
ように構成している。また、ケーシング90の側面に
は、外部装置への出力を可能とする端子部70としてプ
ラグインタイプの端子や、周波数設定部40の調整器4
2としてボリュームが配置されている。また、電源部3
0には、携帯に便利な電池が使用されている。
【0038】これにより、例えば、基準試料12を用い
た初期調整をあらかじめ行い同調周波数f0に設定して
おくと、ケーシング90だけ自由に持ち運んで、任意の
場所で検査試料11の測定を行うことができ、運搬や操
作がきわめて容易となる。そのため、実験室等で試験片
を試料として検査するだけでなく、稼働設備の現場にそ
のまま持ち込み、金属疲労が懸念される箇所を非破壊で
リアルタイムに測定することも可能となる。
【0039】なお、図7で示した金属疲労識別装置10
0の形態は一例であり、ケーシング90の形もこれに限
定されるものではない。また、必ずしも一括した形態で
なくても良く、2部材またはそれ以上で構成しても良
い。
【0040】この金属疲労識別装置100の適用対象
は、金属材料であり、磁性材料、非磁性材料に拘わらず
すべて金属の疲労を検出することができ、例えば、鉄
鋼、アルミニウム、ステンレス、また航空機に使用され
る特殊な金属等にも適用できる。
【0041】次に、本発明の金属疲労識別装置100を
用いた金属疲労識別システムの手順について図8に沿っ
て説明する。
【0042】まずステップ1で、基準試料12を被検査
部24に設置する。これは検査試料11に応じた初期調
整を行うためであり、基準試料12には、検査試料11
と同質で金属疲労のない試料が選ばれる。なお、設置に
際しては、磁芯23に垂直に接触するように設置され
る。
【0043】次にステップ2で、端子部70に外部装置
80として、オシロスコープ82を接続する。また、振
幅と位相を定量的に確認するために、端子部70とオシ
ロスコープ82との間にロックインアンプ81を接続し
ても良い。
【0044】次にステップ3で、周波数設定部40を調
整して、励磁コイル21に入力される交流電流の周波数
fを動かし、オシロスコープ82で誘導コイル22の出
力電圧V2を観察する。
【0045】次にステップ4により、誘導コイル22側
の出力電圧V2がピーク値になる点、すなわち同調周波
数f0を求めて、このf0に周波数設定部40を設定
し、同時に表示部60に表示された数値D0を読みと
る。そして、外部装置80との接続を取り外す。
【0046】次にステップ5により、被検査部24に検
査試料11を設置する。基準試料12と同様に磁芯23
に垂直に接触するように設置する。
【0047】次にステップ6により、表示部60の数値
Dxを読みとり、基準試料11を検査した時の表示部6
0の値D0と比較し、検査試料11の金属疲労の度合い
を識別する。
【0048】なお、同じ材質の検査試料11であれば、
ステップ5からの作業を繰り返し、順次検査が行われ
る。また、ステップ5の測定時に、基準試料12の測定
と同じ外部装置80を接続したままで検査を行っても良
い。
【0049】
【実施例】次に、実施例を用いて、本発明の金属疲労識
別装置及び金属疲労識別システムをさらに詳細に説明す
る。
【0050】(実施例1)本発明の金属疲労識別装置1
00による金属疲労の検出を確認するために、試験片を
用いた実験を行った。実験方法は、JISZ2273
「金属材料の疲れ試験方法通則」に準じて実施した。ま
ず、鉄鋼(材質:S20C)の未疲労金属を用いて試験
片を作製した。この試験片を被検査部24に設置し、磁
芯23を垂直に接触させた。そして、端子部70にロッ
クインアンプ81を介してオシロスコープ82を接続
し、誘導コイル22の出力電圧を観察した。周波数設定
部40のボリュームにて、励磁コイル21に印加される
交流電流の周波数を変化させたところ、周波数2.09
kHzにて、出力電圧がピーク値となったので、f0=
2.09kHzとし、その状態で周波数設定部40での
調節を終了した。この時、乗算値D0=222であり、
ロックインアンプ81に表示される検出回路50の振幅
及び検出コイル部20の入出力における位相の差は、振
幅A=0.308V、位相φ=89.26°であった。
この測定を行った試験片は210mm×11(一部3
5)mm、厚み6mmであった。
【0051】次に、試験片を疲労機(サーボパルサー式
2柱縦型試験機)にセットし、10Hzで187万2千
回の疲労試験を行った。この状態では試験片には破断が
生じていなかった。そして、再度被検査部24に設置
し、先の測定と同じポイントを磁芯23に接触させ、初
期調整のf0=2.09kHzを入力して検査をおこな
った。その結果を図9に示す。図9では、試験片での測
定個所と測定値を関連させて示している。測定は、ポイ
ントX〜Y間で間隔を開けて行っている。測定された乗
算値としては、中央のポイントAが最も低く、Da=1
66(〜25%低下)であり、ロックインアンプ81に
表示される検出回路部50の振幅及び検出コイル部20
の入出力における位相の差は、振幅A=0.255V
(〜19%低下)、位相φ=84、58°(4.68°
の差)であった。そして、中央から両端側に近くなるに
従って乗算値は上昇し、ポイントX、Yでは未疲労に近
い乗算値を示した。
【0052】このように、試験片を疲労試験にかけ、未
疲労の状態と金属疲労が発生した状態を比較することに
よって、明らかに表示部に表示される乗算値に低下がみ
られ、金属の疲労の度合いに従って乗算値の低下の度合
いも変わることことも確認できた。これにより、本発明
の金属疲労識別装置、及び金属疲労識別システムは、金
属の疲労を識別するのにきわめて有効な手段であること
がわかった。
【0053】
【発明の効果】以上、詳述してきたように、本発明の金
属疲労識別装置は、検査試料の検査時に励磁コイルに入
力される交流電流の周波数を、基準試料の検査時に検出
コイル部の出力が最大となる周波数に特定することを特
徴としている。これにより、金属に生じた疲労を亀裂が
発生する前の段階で検出することができ、疲労箇所の余
寿命の推定や、稼働設備の問題点の把握を容易に行うこ
とができる。そして、金属疲労を早期に把握することに
より、設備の効率的活用や、耐用年数の延伸など経済的
効果も得られる。
【0054】また、検出コイル部の出力が最大となる周
波数(同調周波数)に特定することで、SN比が向上し
精度良く検出できるだけでなく、回路構成が簡略化でき
るため、装置全体として小型化が容易に行え低価格化も
図れる。
【0055】また、本発明の金属疲労識別システムは、
基準試料による初期調整が完了すれば、測定は検査試料
が被検査部に配置されるようにセットするだけでよくき
わめて簡単に行われるため、運搬性や機動性に優れ、稼
働装置の測定現場でも速やかに検査が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態(1)の検出コイル部付近の概念図
である。
【図2】実施の形態(1)の検出コイル部付近の等価回
路図である。
【図3】実施の形態(1)で基準試料による周波数の特
定を説明するモデル図である。
【図4】実施の形態(1)の金属疲労識別装置のブロッ
ク図である。
【図5】実施の形態(1)の金属疲労識別装置の構成図
である。
【図6】実施の形態(1)の検出コイル部の出力の変化
を説明するモデル図である。
【図7】実施の形態(1)の外観の一例を示す斜視図で
ある。
【図8】実施の形態(1)を用いたシステムのフローチ
ャートである。
【図9】実施例1による実験結果を示す説明図である。
【符号の説明】
10 試料 11 検査試料 12 基準試料 20 検出コイル部 21 励磁コイル 22 誘導コイル 23 磁芯 24 被検査部 25 検出信号 30 電源部 40 周波数設定部 41 基準信号 42 調整器 50 検出回路部 51 増幅器 52 乗算器 60 表示部 70 端子部 80 外部装置 81 ロックインアンプ 82 オシロスコープ 90 ケーシング 100 金属疲労識別装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 齋藤 雅彦 神奈川県大和市深見東三丁目1番7号 株 式会社マエダ内 (72)発明者 齋藤 周平 神奈川県大和市深見東三丁目1番7号 株 式会社マエダ内 (72)発明者 関根 和喜 神奈川県横浜市金沢区紫町391F501 Fターム(参考) 2G053 AA14 AB01 AB07 AB27 BA02 BB11 BC02 BC07 BC14 CA03 CA18 CC04 DA01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料からなる検査試料の疲労を識別
    する装置であって、交流電流が入力されて磁場を形成す
    る励磁コイルと、励磁コイルにより電磁誘導され検査試
    料による前記磁場の変化を出力する誘導コイルとを備え
    た検出コイル部を有し、検査試料の検査時の励磁コイル
    への交流電流は、基準試料の検査時に検出コイル部の出
    力が最大となる周波数f0に特定される金属疲労識別装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の金属疲労識別装置におい
    て、基準試料は、検査試料と同質で金属疲労のない試料
    であることを特徴とする金属疲労識別装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の金属疲労識別装
    置において、検出コイル部には磁芯として高透磁性部材
    が備えられ、この高透磁性部材と基準試料と励磁コイル
    と誘導コイルとを有する系が同調回路を形成するときの
    周波数が、前記周波数f0として選択される金属疲労識
    別装置。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載の金属
    疲労識別装置において、検査試料の検査時の励磁コイル
    への交流電流は、前記周波数f0の半値幅の範囲内から
    選ばれることを特徴とする金属疲労識別装置。
  5. 【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載の金属
    疲労識別装置において、金属材料として、磁性材料及び
    非磁性材料を適用対象とすることを特徴とする金属疲労
    識別装置。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の金属
    疲労識別装置において、検出コイル部は、携帯可能なケ
    ーシング内に収納され、このケーシング内には、励磁コ
    イルに入力する交流電流の周波数を設定する周波数設定
    部と、検出コイル部の入出力から乗算値を出力する検出
    回路部と、この検出回路部の出力を定量化して表示する
    表示部と、電源部と、外部装置と接続するための端子部
    とが備えられることを特徴とする金属疲労識別装置。
  7. 【請求項7】 交流電流が入力されて磁場を形成する励
    磁コイルと励磁コイルにより電磁誘導され検査試料によ
    る前記磁場の変化を出力する誘導コイルとを有する検出
    コイル部を備え、基準試料を検査して、検出コイル部の
    出力が最大となる特定の周波数f0を求め、この特定の
    周波数f0を周波数設定部に設定して検査試料を検査
    し、検出コイル部の入出力の変化から検査試料の金属疲
    労の度合いを識別する金属疲労識別システム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009052997A (ja) * 2007-08-27 2009-03-12 Maeda:Kk 金属疲労識別装置および金属疲労識別方法
JP2010519522A (ja) * 2007-02-23 2010-06-03 エーファーカー ディ ケルシュアグル ゲーエムベーハー 交番電磁場に影響を与える物体、特に金属製の物体を、識別するための方法および装置
JP2012063181A (ja) * 2010-09-14 2012-03-29 Delta Tooling Co Ltd 焼入れ状態検査装置及び焼入れ状態検査方法

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