JP2012062442A - 塩化ビニル系プラスチゾル組成物及び架橋方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合度が2300〜3000の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー40〜60質量部、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを架橋させるための潜在性硬化剤8〜20質量部を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
従って、前記樹脂を塗布して湿潤(ウェット)状態で放置した場合、或いは、焼き付け後に放置する場合のいずれでも吸湿してしまい、その上から塗料等を塗布して焼き付けを行うと、発泡乃至これに起因する亀裂が生じる。これは、外観品質上の不具合や程度によっては漏水の原因となる。
焼き付け時及び焼き付け後に水分を放出させないために、水分を捕捉することを目的として酸化カルシウムを樹脂に添加する方法があるが、酸化カルシウムの吸湿量を超えてしまうと吸湿効果が得られないという問題がある。
また、焼き付け時間を短縮するために短い時間で昇温させると、上記の不具合等が顕著になるという問題がある。
しかしながら、同文献に示された発明では、水酸基を有する塩化ビニル樹脂とイソシアネートでは反応開始温度が高く、また、ポリアミドと混合可能なブロックイソシアネートについても同様な傾向である為、水分気化する100℃前後での体積膨張を抑え込む物性が不十分であること、仮焼き後であっても焼付温度を120℃以上としても焼き付けが不十分であるため体積膨張を抑え込む物性が不十分である。
即ち、本願の塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、請求項1に記載の通り、重合度が2300〜3000の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー40〜60質量部、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを架橋させるための潜在性硬化剤8〜20質量部を含有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物において、前記潜在性硬化剤は、ポリアミン系、芳香族アミン系及びヒドラジド系の少なくとも何れかであることを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物において、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーとして、脂肪族系骨格構造を有するブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー10〜20質量部を含有することを特徴とする。
また、本発明の架橋方法は、請求項4に記載の通り、請求項1乃至3の何れか1項に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物の架橋方法であって、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーと前記潜在性硬化剤とを100℃以下で反応を開始させることを特徴とする。
重合度が2300未満であるとゲル化する速度が速くなるためゾル内に水分が残りやすく、3000を超えるとゲル化速度が遅くなるため塩化ビニル樹脂としての膜性能が発現しないからである。
また、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーが40質量部を下回ると、伸び性に劣る塩化ビニル樹脂の伸び性を補うのが不充分となり、60質量部を超えると粘稠性が高まるため塗布作業性を著しく悪くなるとともに貯蔵時の粘稠性が悪くなる。また、潜在性硬化剤が8質量部を下回ると、ブロックイソシアネートの架橋反応が不完全となり、水分を押さえ込むためのウレタンの網目構造の形成が不十分となり加熱硬化時の膨れの原因となる。また、潜在性硬化剤が20質量部を超えると貯蔵安定性に悪影響を及ぼすからである。
上記の構成により、本発明の塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、塗布後硬化前においては、伸び性や抗張力の特性が塗料として比較的劣る重合度2300〜3000の塩化ビニル樹脂を使用することにより、ゲル化を遅めて昇温(焼き付け等)時の激しく水分が気化する前(100℃になる前)に徐々に水分を抜くことが可能となる。一方、塗膜内に残存してしまった水分は網目状構造のウレタンにより膨張を抑えられる。更に、この構造により補強された塗膜となる。
上記塩化ビニル単独又は塩化ビニルと共重合可能なコモノマーを重合させたものとして、重合度は2300〜3000とする。
先ず、ポリオールと過剰のポリイソシアネート化合物を反応させ、末端NCO含有ウレタンプレポリマーを得る。
上記ポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール(PPG)、ポリエーテルポリオール変性体、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むポリエーテルポリオール;縮合ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールを含むポリエステルポリオール;ポリブタジエン系ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;ポリエーテルポリオールの中でアクリロニトリル単独又はアクリロニトリルとスチレン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及び酢酸ビニルの群から選ばれる少なくも1種との混合モノマーを重合乃至グラフト重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。
芳香族系骨格構造を有するものとして、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート等を使用することができる。
上記ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコールなどの1価アルコール又はこれらの異性体;フェノール、クレゾール、キシロール、p-ニトロフェノール、アルキルフェノールなどのフェノール類;マロン酸メチル、マロン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン化合物;アセトアミド、アクリルアミド、アセトアニリドなどの酸アミド類;コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド類;2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;2-ピロリドン、ε-カプロラクタムなどのラクタム類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトアルドキシムなどのケトン又はアルデヒドのオキシム類;メチルグリコール、エチルグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール等のグリコール誘導体;ジシクロへキシルアミン等のアミン化合物、その他エチレンイミン、重亜硫酸塩、ピラゾール等が挙げられる。尚、膨れを抑制するためのブロック剤の解離温度として100℃以下好ましくは90℃程度が最適である。
ポリアミン系及び芳香族アミン系の潜在性硬化剤としては、脂肪族、環状構造もしくは芳香族ポリアミンから1種又は2種以上とエポキシ化合物の付加反応物にフェノール化合物及び/またはポリカルボン酸化合物を反応させてアミノ基をマスクして不活性化したもの等が挙げられる。
また、ヒドラジン系の潜在性硬化剤としては、ADH(アジピン酸系ヒドラジド)、DDH(ドデカン二酸ジヒドラジド)、SDH(セバチン酸ジヒドラジド)等が挙げられる。
可塑剤は、粘度調整で変量させることができるため、特に量を規定するものではないが、少なすぎると伸びが低下し、多量すぎれば塗料密着性に影響を及ぼすことがある。通常は、添加すべき可塑剤の基本量に対して±20%程度で調整する。
1.塩化ビニル樹脂
(1)重合度2300の塩化ビニル樹脂(東ソー製 R-761)
(2)重合度3000の塩化ビニル樹脂(VITEC社製 90BX)
(3)重合度4000の塩化ビニル樹脂(鐘淵化学社製 PSH-983)
(1)芳香族系骨格構造を有するブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー(三井化学社製 XB-70-T2633)
(2)脂環式骨格構造を有するブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー(ADEKA社製 QR9412)
(1)ポリアミン系の潜在性硬化剤(ADEKA社製 アデカハードナー EH-3731S)
(1)炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社)
(1)DINP:ジイソノニルフタレート(株式会社J・プラス社製)
(1)安定剤:酸化亜鉛(正同化学工業社製 酸化亜鉛2種)
[評価方法]
電着塗装板上に各例の組成物を厚さ3mmになるように塗布した後、100℃の恒温槽に静置し、材料温度が100℃に達してから4分間保持して硬化させた後、爪剥離して凝集破壊を確認し、剥離しなかったものを○として評価した。
[評価結果]
実施例1〜9及び比較例1〜7の全てにおいて剥離はなかった。
[評価方法]
各例をそれぞれ500ml用意し、35℃で10日保管後の粘度変化率(%)を測定した。
[評価結果]
実施例1〜9は粘度変化率30%以下であったが、比較例2,3,5は粘度変化率30%を超えていた。
比較例2,3,5はブロックイソシアネート含有ウレタンポリマーの含有量が60質量部超え又は潜在性硬化剤の含有量が20質量部超えであり貯蔵時に何らかの反応が生じて粘度変化率30%を超えたと考えられる。
[評価方法]
試験温度条件を20℃と100℃で下記Dの評価を行った。
焼き付け条件としては、各例を電着塗装板に挟み込んだものを試験片とし、100℃の恒温槽に静置し、試験片の温度が100℃に達してから4分間保持するものとした。
100℃の試験においては、硬化させた各試料の温度が100℃に達した後に破壊状態と強度(MPa)を確認した。
[評価結果]
比較例1,4,6は雰囲気温度100℃で0.3MPa未満において凝集破壊が生じた。比較例1はブロックイソシアネート含有ウレタンポリマーの含有量が30質量部未満、比較例4は潜在性硬化剤の含有量が8質量部未満であり、十分な強度を維持するためのウレタン構造が不足していたためである。比較例6は塩化ビニル樹脂の重合度が3000を超えており、ゲル化が不充分となり塩化ビニル樹脂としての塗膜機能を発現しなかったためである。
[評価方法]
JISK6850(1999)に基づいて行った。具体的には、電着塗装を施した25mm幅の鋼板端部に各例を塗布した後、140℃×30分間焼き付けを行った。各例の塗布体積が25mm×25mm、厚さ3mmになるように2枚の鋼板を貼り合わせて試験片とし、スペーサで試験片の両端を同じ厚さにした後で、各鋼板が平行となるように保った状態で、端部を互いに反対方向に速度50mm/minで引っ張った後の各例の破壊状態及び強度を確認した。
[評価結果]
実施例1〜9及び比較例1〜7の全てが1.2MPa以下では破壊が生じていなかった。
[評価方法]
各例を10cm×10cmの離型紙で覆った鋼板に塗布した後、140℃で60分焼き付けを行って2mm厚のシートとし、2号ダンベル片形状に打ち抜き、引張り速度50mm/minで引っ張り、破断時の伸び率(%)を算出した。
[評価結果]
実施例1〜9の全てが150%以上の伸びを有していた。これに対して、比較例1,4,6は150%以上の伸びを有していなかった。比較例1はブロックイソシアネート含有ウレタンポリマーの含有量が40質量部未満であり、比較例4は潜在性硬化剤の含有量が8質量部未満であり、いずれもウレタン構造による伸び性が十分に得られなかったためである。比較例6は塩化ビニル樹脂の重合度が3000を超えたものであったために塩化ビニル樹脂として伸び性が十分発揮できなかったためである。
また、実施例4及び5、並びに、実施例8及び9は、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーとして脂肪族系骨格構造のものを含有するもの(実施例5、9)と、そうでないものと(実施例4、8)であるが、脂肪族系骨格構造を塩化ビニル樹脂100質量部に対して10〜20質量部含有するもの(実施例5、9)の方が、そうではないもの(実施例4、8)に対して伸びを有することがわかった。
[評価方法]
各例を10cm×10cmの離型紙で覆った鋼板に塗布した後、140℃で60分焼き付けを行って2mm厚のシートとし、2号ダンベル片形状に打ち抜き、引張り速度50mm/minで引っ張り、破断時の伸び率を算出した。冷却後、島津社製 AGSを用いて50mm/minの速度で引張り破断時の強度を測定した。本強度と破断部位の断面積から抗張力を算出した。
[評価結果]
実施例1〜9及び比較例1〜7の全てが0.8MPa以上の抗張力を有していた。
[評価方法]
各例を電着塗装鋼板の上にウェットで1mm厚になるよう塗布した後、30℃×80%湿度条件下で10日間放置後取り出し、140℃×20分間焼き付けを行い、吸湿による異常発泡の有無を確認した。また、25℃×90%湿度条件下で同様に吸湿による異常発泡の有無を確認した。尚、表1中の評価は、「○」は「異常なし」、「×」は「ふくれが発生」である。
[評価結果]
実施例1〜9の全てが吸湿膨れはなかった。これに対して、比較例1,3はブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーの含有量が40〜60質量部の範囲外であったため、また、比較例7は、塩化ビニル樹脂の重合度が2300以下であったため、25℃90%湿度条件下で吸湿膨れが確認された。
また、比較例4では、30℃80%湿度条件下及び25℃90%湿度条件下の両方で吸湿膨れが確認された。潜在性硬化剤の含有量が8質量部未満のためである。
Claims (4)
- 重合度が2300〜3000の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー40〜60質量部、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを架橋させるための潜在性硬化剤8〜20質量部を含有することを特徴とする塩化ビニル系プラスチゾル組成物。
- 前記潜在性硬化剤は、ポリアミン系、芳香族アミン系及びヒドラジド系の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物。
- 前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーとして、脂肪族系骨格構造を有するブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー10〜20質量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の塩化ビニル系プラスチゾル組成物の架橋方法であって、前記ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーと前記潜在性硬化剤とを100℃以下で反応を開始させることを特徴とする架橋方法。
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