JP2012062380A - ポリエステル樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、長期の耐加水分解性、機械特性に優れたポリエステル組成物に関する。
【解決手段】アルカリ金属元素を2〜100ppm、かつリン元素を10〜250ppmを含有してなるポリエステルであって、さらにポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有してなるポリエステル樹脂組成物であって、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であるポリエステル樹脂組成物により達成される。
【選択図】なし
【解決手段】アルカリ金属元素を2〜100ppm、かつリン元素を10〜250ppmを含有してなるポリエステルであって、さらにポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有してなるポリエステル樹脂組成物であって、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であるポリエステル樹脂組成物により達成される。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐加水分解性の良好なポリエステル樹脂組成物およびフィルムに関する。
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。
しかし、ポリエステルは加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合、或いは湿気のある状態で使用する場合においては加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。特に、太陽電池用フィルムにおいては、屋外にて20年以上の耐用年数が要求されることから、高い耐加水分解性が要求される。
しかし、ポリエステルは加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合、或いは湿気のある状態で使用する場合においては加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。特に、太陽電池用フィルムにおいては、屋外にて20年以上の耐用年数が要求されることから、高い耐加水分解性が要求される。
例えば、特許文献1にはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のリン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されている。しかし、リン酸金属塩のみでは、初期のCOOH末端基は抑制できるが、加水分解によるCOOH末端基増加量を抑制することは難しく、太陽電池用途のように長期間の耐久性を必要とする用途では十分な耐加水分解性が得られない。
また、特許文献2には無機リン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されており、実施例ではリン酸と併用されている。しかし、リン酸と無機リン酸塩の比率とその適用量が不適切であるため、無機リン酸塩が異物化しやすく、短期間の耐加水分解性には優れるものの、太陽電池用途などに必要とされる長期にわたる耐加水分解性が不十分であり、異物によるフィルムの機械物性の低下があった。
また、特許文献2には無機リン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されており、実施例ではリン酸と併用されている。しかし、リン酸と無機リン酸塩の比率とその適用量が不適切であるため、無機リン酸塩が異物化しやすく、短期間の耐加水分解性には優れるものの、太陽電池用途などに必要とされる長期にわたる耐加水分解性が不十分であり、異物によるフィルムの機械物性の低下があった。
特許文献3には、緩衝リンを含有するポリエチレンテレフタレートが記載されており、実施例では他のリン化合物と併用されている。しかし、リン化合物の種類、その比率、適用量などの適正化が不十分であるため、太陽電池用途としては耐加水分解性、機械特性が不十分である。
本発明の目的は、これら従来の欠点を解消せしめ、耐加水分解性、機械特性に優れたフィルム用途として好適なポリエステル組成物を提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、アルカリ金属元素を2〜100ppm、かつリン元素を10〜250ppmを含有してなるポリエステルであって、さらにポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有してなるポリエステル樹脂組成物であって、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であるポリエステル樹脂組成物により達成される。
本発明によれば、長期の耐加水分解性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の組成物を二軸延伸フィルムとすることで、磁材用途、コンデンサーなどの電気材料用途、包装等の用途、特に、長期の耐加水分解性を必要とする太陽電池用フィルム用途に提供することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、アルカリ金属元素を2〜100ppm、かつリン元素を10〜250ppmを含有してなるポリエステルであって、さらにポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有してなるポリエステル樹脂組成物であって、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であるポリエステル樹脂組成物である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、酸成分として95mol%以上が芳香族ジカルボン酸成分であることが耐加水分解性の点から好ましく、中でもテレフタル酸成分であることが機械特性の点から好ましい。また、ポリオキシアルキレングリコールを含まないグリコール成分として95mol%以上が炭素数2〜4の直鎖のアルキレングリコール成分であることが機械特性、熱特性の点から好ましく、中でも成形性、結晶性の点から炭素数2のエチレングリコールであることが好ましいことから、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましい。
共重合成分が5mol%を超えると、融点降下による耐熱性の低下、結晶化度低下により耐加水分解性が低下する原因となる傾向にある。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、アルカリ金属元素を2〜100ppm含有していることが耐加水分解性の点から必要であり、さらには4〜90ppmが好ましく、特には5〜80ppmであることが好ましい。アルカリ金属元素の含有量が2ppm未満では、長期における耐加水分解性が不足する。一方、100ppmを越えると、異物化しやすくなる。
本発明におけるアルカリ金属元素を含む化合物としては、リン酸アルカリ金属塩を用いることが好ましく、リン酸アルカリ金属塩としては、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸一水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられ、中でも、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウムが長期の耐加水分解性の点から好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン元素を10〜250ppm含有していることが長期の耐加水分解性の点から必要であり、さらには20〜200ppmであることが好ましく、特には30〜150ppmであることが好ましい。リン元素量が10ppm未満では、成形時等の溶融耐熱性が低下し、また長期の耐加水分解性が不足する。一方、250ppmを越えるとリンにより重合触媒が失活し、重合反応が遅延しCOOH末端基が増加するため、耐加水分解性が低下する。本発明におけるリン元素を含むリン化合物としては、リン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系等を挙げることができ、中でもリン酸系が好ましい。リン酸系化合物としては、例えばリン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等を挙げることができ、中でもリン酸が最も好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン元素を10〜250ppm含有していることが長期の耐加水分解性の点から必要であり、さらには20〜200ppmであることが好ましく、特には30〜150ppmであることが好ましい。リン元素量が10ppm未満では、成形時等の溶融耐熱性が低下し、また長期の耐加水分解性が不足する。一方、250ppmを越えるとリンにより重合触媒が失活し、重合反応が遅延しCOOH末端基が増加するため、耐加水分解性が低下する。本発明におけるリン元素を含むリン化合物としては、リン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系等を挙げることができ、中でもリン酸系が好ましい。リン酸系化合物としては、例えばリン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等を挙げることができ、中でもリン酸が最も好ましい。
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物に含まれる金属元素量としては、Mg、Ca、Mn、Coから選ばれる2価の金属元素の少なくとも1種、およびSb、Ti、Geから選ばれる重合触媒能を有する金属元素の少なくとも1種の金属元素の合計量が20〜500ppmとすることが、低COOH化、耐熱性の点から好ましく、さらには30〜450ppmであることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有していることが耐加水分解性の点から必要であり、さらには2〜15重量部であることが好ましく、特には3〜10重量部であることが好ましい。2重量部未満では、長期の耐加水分解性が不足する。一方、20重量部を越えるとガラス転移点や融点降下が顕著となり耐熱性などに悪影響を与え、さらに耐加水分解性が低下する。また、製膜安定性や成形品(フィルム)などの寸法安定性を低下させる。ポリオキシアルキレングリコールをポリエステルに添加することによりエステル基濃度が低下するため、ポリエステル中のCOOH末端基が低減されることで耐加水分解性の点で有効な特性が得られる。
本発明におけるポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等が挙げられ、中でも、ポリエチレングリコールがポリエチレンテレフタレートとの親和性に優れるため長期の耐加水分解性の点で好ましい。また、ポリエチレングリコールの数平均分子量としては、400〜6000であることがポリエチレンテレフタレートとの親和性や耐加水分解性の点で好ましい。さらには、600〜4000であることが好ましい。数平均分子量が400未満ではガラス転移点や融点降下が大きくなり耐熱性などに悪影響を与える傾向にあり、耐加水分解性が低下する傾向にある。また、製膜安定性や成形品(フィルムなど)の寸法安定性を低下させる傾向にある。一方、数平均分子量が6000を超えると粘度が高くなりポリエチレンテレフタレートとの反応性、相溶性が劣る傾向となり濁化(相分離)して耐熱性が低下する傾向となり、さらには耐加水分解性の点で好ましくない。
本発明におけるポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等が挙げられ、中でも、ポリエチレングリコールがポリエチレンテレフタレートとの親和性に優れるため長期の耐加水分解性の点で好ましい。また、ポリエチレングリコールの数平均分子量としては、400〜6000であることがポリエチレンテレフタレートとの親和性や耐加水分解性の点で好ましい。さらには、600〜4000であることが好ましい。数平均分子量が400未満ではガラス転移点や融点降下が大きくなり耐熱性などに悪影響を与える傾向にあり、耐加水分解性が低下する傾向にある。また、製膜安定性や成形品(フィルムなど)の寸法安定性を低下させる傾向にある。一方、数平均分子量が6000を超えると粘度が高くなりポリエチレンテレフタレートとの反応性、相溶性が劣る傾向となり濁化(相分離)して耐熱性が低下する傾向となり、さらには耐加水分解性の点で好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形時の溶融耐熱性や高温に長期間曝される用途での酸化劣化を抑制するために酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、燐系、硫黄系、アミン系化合物等が挙げられる。中でも、ヒンダードフェノール系化合物が熱安定性、ポリエステルとの反応性やポリエステルに悪影響を与えることが少なく好ましい。また、酸化防止剤をポリエステル樹脂組成物に対して0.01〜1重量部添加することが好ましい。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物には、その用途に応じて無機粒子、有機塩粒子、架橋高分子粒子等の公知の粒子を添加してもよく、製膜時、加工時、使用時の走行性やハンドリング性を向上させることができる。無機粒子としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニア、フッ化リチウム等が挙げられる。有機塩粒子としては、蓚酸カルシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル等のビニル系モノマの単独重合体または共重合体が挙げられ、各種粒子のうち1種または2種以上を添加することができる。さらに、必要に応じ結晶核剤、着色防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、離型剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、脂肪酸エステル、ワックス、ポリシロキサン等の消泡剤等を配合することができる。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物の耐熱性を考慮した特性として、成形品の熱安定性のためにはガラス転移点が50℃以上であることが好ましい。また、溶融耐熱性のためには融点が250℃以上であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、COOH末端基量としては20eq/ton以下であることが耐熱性や耐加水分解性の点から好ましく、さらには15eq/ton以下であることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であることが耐加水分解性の点から必要であり、さらには50eq/ton以下、特に40eq/ton以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、COOH末端基量としては20eq/ton以下であることが耐熱性や耐加水分解性の点から好ましく、さらには15eq/ton以下であることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であることが耐加水分解性の点から必要であり、さらには50eq/ton以下、特に40eq/ton以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物の固有粘度としては、0.55〜1.00であることが機械特性の点から好ましく、さらには、0.60〜0.90である。
このポリエステル樹脂組成物は、窒素の含有量が100ppm未満であることが異物生成抑制の点から好ましい。さらには、80ppm以下、特には70ppm以下であることが好ましい。すなわち、窒素元素を含有するカルボジイミド、オキサゾリンなどの末端封止剤を実質的に含有しないことが好ましい。末端封止剤はCOOH末端基と反応するが、その結果、反応時にゲルなどの異物を生成し易く、機械特性が低下する原因になる。
このポリエステル樹脂組成物は、窒素の含有量が100ppm未満であることが異物生成抑制の点から好ましい。さらには、80ppm以下、特には70ppm以下であることが好ましい。すなわち、窒素元素を含有するカルボジイミド、オキサゾリンなどの末端封止剤を実質的に含有しないことが好ましい。末端封止剤はCOOH末端基と反応するが、その結果、反応時にゲルなどの異物を生成し易く、機械特性が低下する原因になる。
以下に、本発明のポリエステル組成物の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、エステル化反応またはエステル交換反応を行う第一の工程、重合触媒、リン化合物、ポリオキシアルキレングリコールなどの添加物を添加する第二の工程、重合反応を行う第三の工程により製造することができ、必要に応じて固相重合反応を行う第四の工程を追加しても良い。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、エステル化反応またはエステル交換反応を行う第一の工程、重合触媒、リン化合物、ポリオキシアルキレングリコールなどの添加物を添加する第二の工程、重合反応を行う第三の工程により製造することができ、必要に応じて固相重合反応を行う第四の工程を追加しても良い。
第一の工程においては、例えばテレフタル酸、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用いて、公知の方法でエステル化反応、またはエステル交換反応を行うことがでる。例えば、エステル交換反応を行う際には、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マンガン、酢酸コバルトなどのエステル交換反応触媒を用いることができる。そのほか、水酸化カリウムなどのアルカリ金属を数ppm添加しておくとジエチレングリコールの副生が抑制され、耐加水分解性も改善される傾向にある。また、重合触媒である三酸化アンチモンやヒンダードフェノール系酸化防止剤などを添加してもよい。
第二の工程は、エステル化反応、またはエステル交換反応が実質的に終了した後から、固有粘度が0.3前後に達するまでの間に重合触媒やリン化合物、さらにポリオキシアルキレングリコールなどの添加物を添加する工程である。
重合触媒としては、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液、三酸化アンチモンのエチレングリコールスラリー、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物などを用いることができる。
リン化合物としては、リン酸およびリン酸アルカリ金属塩を添加するがリン酸をリン酸アルカリ金属塩に対して0.4〜4.0倍モルとすることにより異物抑制や長期の耐加水分解性の点で好ましい。リン酸およびリン酸アルカリ金属塩の添加方法としては、リン酸のエチレングリコール溶液を添加した後にリン酸アルカリ金属塩のエチレングリコールスラリーまたはエチレングリコール溶液を添加する。または、前記の逆添加順位、さらには、予めリン酸とリン酸アルカリ金属塩の混合エチレングリコールスラリーまたは混合エチレングリコール溶液を添加する方法がある。中でも、長期の耐加水分解性の点から予めリン酸とリン酸アルカリ金属塩の混合エチレングリコール溶液を添加する方法を採用することが好ましい。この混合液のpHは、2.0〜6.0の酸性に調整することが異物生成抑制の点から好ましく、3.0〜6.0であることが一層好ましい。これらのリン化合物の添加は、重合触媒の添加前後で構わないが、添加間隔は5分以上あけることが重合反応性の点から好ましい。
また、ポリオキシアルキレングリコールは、反応工程の任意の段階で添加できるが、特にエステル化反応、またはエステル交換反応が実質的に終了した後であって、重合触媒、リン化合物などの添加物を添加した後、または重合反応開始前の工程で添加する。
その他の添加物としては、例えば、静電印加特性を付与する目的で酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、またヒンダートフェノール系酸化防止剤などを挙げることができ、本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。特に、エステル化反応を経る場合は、エチレングリコールの添加全量がテレフタル酸に対してモル数で1.5〜1.8倍となるようにエチレングリコールを途中で追添することでCOOH末端基を低減することが可能となり、耐加水分解性向上に有効である。
一方で、フィルムの滑り性を付与するために前記の公知の粒子および添加剤を添加、あるいは触媒を利用した内部析出粒子を本発明の効果を妨げない範囲で含有させてもよい。
第三の工程においては、公知の方法で重合反応を行うことができるが、COOH末端基量を少なくするためには、重合反応温度をポリエステル樹脂組成物の融点+30℃以下とし、固有粘度0.55〜1.00でチップ化する。
また、第四の工程である固相重合工程を採用する際には、固有粘度0.5〜0.65で一旦チップ化した後行うことが有効である。第四の工程においては、固相重合温度をポリエステル樹脂組成物の融点−30℃〜−60℃、真空度133Pa以下で固相重合反応を行うことが好ましい。
また、第四の工程である固相重合工程を採用する際には、固有粘度0.5〜0.65で一旦チップ化した後行うことが有効である。第四の工程においては、固相重合温度をポリエステル樹脂組成物の融点−30℃〜−60℃、真空度133Pa以下で固相重合反応を行うことが好ましい。
このようにして得られたポリエステル樹脂組成物チップは、乾燥工程を経て、通常の押出機、Tダイでシート状に押出し、二軸延伸することができる。この時、押出機へのチップ供給は窒素雰囲気下で行うことが好ましく、Tダイから押出されるまでの時間は短い程良く、目安としては30分以下とすることが、COOH末端基増加を抑制できるので好ましい。
このようにして製造された、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるフィルムは、COOH末端基が低く、短期での耐加水分解性が良好となるばかりでなく、リン酸とリン酸アルカリ金属塩およびポリオキシアルキレングリコールの作用により、太陽電池用フィルムなどの用途で必要とされる長期の耐加水分解性も良好となる。
(A.固有粘度)
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
(B.ポリマー中のアルカリ金属元素の定量)
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。
(C.ポリマー中のリン元素およびアルカリ金属元素以外の金属元素の定量)
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
(D.ポリマー中のポリオキシアルキレングリコールの定量)
モノエタノールアミン分解し、無水酢酸で中和してpH調整後、カリボール滴定して求める。
モノエタノールアミン分解し、無水酢酸で中和してpH調整後、カリボール滴定して求める。
(E.COOH末端基量)
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
(F.耐加水分解性の評価)
チップを155℃の100%RH下で4時間加熱処理し、処理前後のCOOH末端基量の差(ΔCOOH)が、60eq/t以下であるとき良好な耐加水分解を有していると判断した。
なお、処理はPRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製を用いた。
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
(F.耐加水分解性の評価)
チップを155℃の100%RH下で4時間加熱処理し、処理前後のCOOH末端基量の差(ΔCOOH)が、60eq/t以下であるとき良好な耐加水分解を有していると判断した。
なお、処理はPRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製を用いた。
(G.伸度保持率の算出)
二軸延伸されたフィルムを用いて、125℃の100%RH下で48時間加熱処理した処理前後のフィルムの伸度を測定し、処理前のサンプルに対する処理後の伸度保持率を百分率で求めた。
フィルムの伸度は、ASTM−d882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて、下記条件にて測定した。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張速度:200mm/分
測定環境:23℃、65%RH
太陽電池用途における耐用年数20年以上に相当する伸度保持率50%以上を合格とした。
二軸延伸されたフィルムを用いて、125℃の100%RH下で48時間加熱処理した処理前後のフィルムの伸度を測定し、処理前のサンプルに対する処理後の伸度保持率を百分率で求めた。
フィルムの伸度は、ASTM−d882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて、下記条件にて測定した。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張速度:200mm/分
測定環境:23℃、65%RH
太陽電池用途における耐用年数20年以上に相当する伸度保持率50%以上を合格とした。
(H.窒素含有量)
JIS K2609(施行日1990/8/1) 石油及び石油製品−窒素分試験方法に記載のケルダール法により測定した。
JIS K2609(施行日1990/8/1) 石油及び石油製品−窒素分試験方法に記載のケルダール法により測定した。
(I.ポリエステル樹脂組成物のガラス転移点(Tg)および融点(Tm))
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて測定した。測定においては窒素雰囲気中で20℃〜285℃まで16℃/分の速度で昇温した後液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃〜285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でTgおよびTmを測定した。
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて測定した。測定においては窒素雰囲気中で20℃〜285℃まで16℃/分の速度で昇温した後液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃〜285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でTgおよびTmを測定した。
(J.pH測定)
エチレングリコール100重量部に対して、リン化合物とリン酸アルカリ金属塩の添加量を目標値となるよう調整し、電位差自動滴定装置AT−510(京都電子工業(株)製)を用い測定した。
エチレングリコール100重量部に対して、リン化合物とリン酸アルカリ金属塩の添加量を目標値となるよう調整し、電位差自動滴定装置AT−510(京都電子工業(株)製)を用い測定した。
(実施例1)
第一工程として、テレフタル酸ジメチル(以下.DMT)95重量部、エチレングリコール(以下、EG)54.6重量部、酢酸マンガン・4水和物(以下、酢酸Mn)0.06重量部、三酸化アンチモン(以下、AO)0.03重量部、酸化防止剤としてペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート](商品名:IRGANOX−1010、BASF社製)(以下、IR1010)0.10重量部を140℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノール(以下、MA)を留出させ、エステル交換(以下、EI)反応を終了した。
第二工程として、EI反応終了後、リン酸(以下、PA)0.020重量部とリン酸二水素一ナトリウム・2水和物0.027重量部をEG0.5重量部に溶解したEG溶液(pH4.7)を添加し、余剰なEGを30分間攪拌しながら留出させ、反応を終了した。その後、EI反応物を重合反応装置に移行した。
第三工程として、重合反応装置を窒素雰囲気下で攪拌しながら数平均分子量4000のポリエチレングリコール(以下、PEG4000)を5重量部添加し、10分攪拌した。その後、減圧および昇温し、EGを留出させながら重合反応を行なった。なお、重合反応は90分かけて常圧〜133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃〜最終到達温度285℃まで昇温し、攪拌トルクが所定の値に達した時点で反応装置内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。その後、直ちに攪拌機を停止し、反応系内を微加圧として反応装置下部のバルブを開けて、ガット状のポリエステル樹脂組成物を水槽に吐出した。水槽で冷却されたポリエステル樹脂組成物ガットをカッターにてカッティングし、チップとした。このようにして得られた、ポリエステル樹脂組成物の固有粘度0.72、COOH末端基量7.0eq/tonであった。また、Na元素量40ppm、リン元素量117ppm、PEG量5.0重量%、ΔCOOH25.3eq/tと良好な耐加水分解性であった。
ポリエステル樹脂組成物チップを乾燥し、チップを窒素雰囲気下で押出機に供給し、押出温度280℃でTダイからキャスティングドラム(20℃)にて急冷、静電印加法にてシート化した後に、縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で縦延伸したのち、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、熱処理を210℃で3秒行い、二軸延伸フィルムを得た。
第一工程として、テレフタル酸ジメチル(以下.DMT)95重量部、エチレングリコール(以下、EG)54.6重量部、酢酸マンガン・4水和物(以下、酢酸Mn)0.06重量部、三酸化アンチモン(以下、AO)0.03重量部、酸化防止剤としてペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート](商品名:IRGANOX−1010、BASF社製)(以下、IR1010)0.10重量部を140℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノール(以下、MA)を留出させ、エステル交換(以下、EI)反応を終了した。
第二工程として、EI反応終了後、リン酸(以下、PA)0.020重量部とリン酸二水素一ナトリウム・2水和物0.027重量部をEG0.5重量部に溶解したEG溶液(pH4.7)を添加し、余剰なEGを30分間攪拌しながら留出させ、反応を終了した。その後、EI反応物を重合反応装置に移行した。
第三工程として、重合反応装置を窒素雰囲気下で攪拌しながら数平均分子量4000のポリエチレングリコール(以下、PEG4000)を5重量部添加し、10分攪拌した。その後、減圧および昇温し、EGを留出させながら重合反応を行なった。なお、重合反応は90分かけて常圧〜133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃〜最終到達温度285℃まで昇温し、攪拌トルクが所定の値に達した時点で反応装置内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。その後、直ちに攪拌機を停止し、反応系内を微加圧として反応装置下部のバルブを開けて、ガット状のポリエステル樹脂組成物を水槽に吐出した。水槽で冷却されたポリエステル樹脂組成物ガットをカッターにてカッティングし、チップとした。このようにして得られた、ポリエステル樹脂組成物の固有粘度0.72、COOH末端基量7.0eq/tonであった。また、Na元素量40ppm、リン元素量117ppm、PEG量5.0重量%、ΔCOOH25.3eq/tと良好な耐加水分解性であった。
ポリエステル樹脂組成物チップを乾燥し、チップを窒素雰囲気下で押出機に供給し、押出温度280℃でTダイからキャスティングドラム(20℃)にて急冷、静電印加法にてシート化した後に、縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で縦延伸したのち、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、熱処理を210℃で3秒行い、二軸延伸フィルムを得た。
この時の押出機のフィルターは400メッシュの金網を使用し、ポリマー供給からTダイからの吐出まで、滞留時間は約5分であった。
さらに、得られた二軸延伸フィルムを125℃の100%RH下で48時間加熱処理して処理前後でフィルム伸度を比較し、伸度保持率を算出したところ、72%であった。特性を表1に示す。
さらに、得られた二軸延伸フィルムを125℃の100%RH下で48時間加熱処理して処理前後でフィルム伸度を比較し、伸度保持率を算出したところ、72%であった。特性を表1に示す。
(実施例2)
実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸二水素一カリウムに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。
得られた特性は表1に示すとおり、実施例1とほぼ同等の性能を示した。
実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸二水素一カリウムに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。
得られた特性は表1に示すとおり、実施例1とほぼ同等の性能を示した。
(実施例3〜8、比較例1〜3)
実施例1のリン酸とリン酸二水素一ナトリウムの添加量、リン酸アルカリ金属種および2価の金属化合物、重合触媒種を適宜変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。得られた特性は、表1、3に示すとおりである。
実施例3においては、リン酸二水素一ナトリウムの添加量を減らした結果、ΔCOOHが若干大きくなる傾向にあるが、太陽電池用シートとして満足なものであった。
これに対し、実施例4ではリン酸の添加量を減らした結果、ΔCOOHは若干低下したが、伸度保持率が低下しているものの太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例5においては、実施例1のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量をともに減らしたと同時にEI反応触媒を酢酸マグネシウム(以下、酢酸Mg)、重合触媒をチタン(チタニウムジイソプロポキシドビスエチルアセトアセテート)に変更した結果、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率が若干低下したものの太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例6においては、実施例1のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量をともに増量すると同時にEI反応触媒を酢酸カルシウム(以下、酢酸Ca)、重合触媒を二酸化ゲルマニウム(以下、二酸化Ge)に変更した結果、重合反応が若干遅延したが、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量の増加はほとんどなく、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率もやや低下しているが太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例7においては、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸一水素二ナトリウムに変更すると同時にEI反応触媒を酢酸コバルト(以下、酢酸Co)に変更した結果、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率は若干低下したが太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例8においては、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸三カリウムに変更した結果、リン酸三カリウムは強アルカリであり、リン酸との混合溶液のpHは5.8であった。この結果、ΔCOOHがやや減少したが、伸度保持率は低下したが太陽電池用シートとして満足なものであった。
また、比較例1は、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムを増量し過ぎたため、異物が観察され、またリン酸二水素一ナトリウムが機能せず、ΔCOOHが大きくなり、さらに伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例2は、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムを添加しなかったため、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足して太陽電池用シートとして不十分であった
比較例3は、実施例1のリン酸を増量し過ぎた結果、重合反応の遅延が認められ、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量が大きくなり、またΔCOOHも大きくなり、伸度保持率が不足したため、太陽電池用シートとして不十分であった。
実施例1のリン酸とリン酸二水素一ナトリウムの添加量、リン酸アルカリ金属種および2価の金属化合物、重合触媒種を適宜変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。得られた特性は、表1、3に示すとおりである。
実施例3においては、リン酸二水素一ナトリウムの添加量を減らした結果、ΔCOOHが若干大きくなる傾向にあるが、太陽電池用シートとして満足なものであった。
これに対し、実施例4ではリン酸の添加量を減らした結果、ΔCOOHは若干低下したが、伸度保持率が低下しているものの太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例5においては、実施例1のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量をともに減らしたと同時にEI反応触媒を酢酸マグネシウム(以下、酢酸Mg)、重合触媒をチタン(チタニウムジイソプロポキシドビスエチルアセトアセテート)に変更した結果、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率が若干低下したものの太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例6においては、実施例1のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量をともに増量すると同時にEI反応触媒を酢酸カルシウム(以下、酢酸Ca)、重合触媒を二酸化ゲルマニウム(以下、二酸化Ge)に変更した結果、重合反応が若干遅延したが、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量の増加はほとんどなく、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率もやや低下しているが太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例7においては、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸一水素二ナトリウムに変更すると同時にEI反応触媒を酢酸コバルト(以下、酢酸Co)に変更した結果、ΔCOOHが若干大きくなり、伸度保持率は若干低下したが太陽電池用シートとして満足なものであった。
実施例8においては、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムをリン酸三カリウムに変更した結果、リン酸三カリウムは強アルカリであり、リン酸との混合溶液のpHは5.8であった。この結果、ΔCOOHがやや減少したが、伸度保持率は低下したが太陽電池用シートとして満足なものであった。
また、比較例1は、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムを増量し過ぎたため、異物が観察され、またリン酸二水素一ナトリウムが機能せず、ΔCOOHが大きくなり、さらに伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例2は、実施例1のリン酸二水素一ナトリウムを添加しなかったため、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足して太陽電池用シートとして不十分であった
比較例3は、実施例1のリン酸を増量し過ぎた結果、重合反応の遅延が認められ、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量が大きくなり、またΔCOOHも大きくなり、伸度保持率が不足したため、太陽電池用シートとして不十分であった。
(比較例4、5)
実施例5のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。得られた特性は、表3に示すとおりである。
比較例4は、リン酸二水素一ナトリウムおよびリン量が少なすぎたため、十分な溶融耐熱性が得られず、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例5は、リン量が少なすぎたため、十分な溶融耐熱性が得られず、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
実施例5のリン酸およびリン酸二水素一ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。得られた特性は、表3に示すとおりである。
比較例4は、リン酸二水素一ナトリウムおよびリン量が少なすぎたため、十分な溶融耐熱性が得られず、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例5は、リン量が少なすぎたため、十分な溶融耐熱性が得られず、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
(実施例9〜13、比較例6、7)
実施例1のPEG4000の数平均分子量や添加量およびポリオキシエチレングリコールの種類を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。また、ポリオキシエチレングリコールの添加量を変更した水準についてはDMTおよびEGの量を適宜変更した。得られた特性は、表2、3に示すとおりである。
実施例9においては、PEGの添加量を2重量部に減量。実施例10においては、15重量部に増量、また実施例11においては、PEGの数平均分子量を400に、実施例12においては、PEGの数平均分子量を6000に、さらに実施例13においては、ポリオキシエチレングリコールのPEGを数平均分子量3000のポリテトラメチレングリコールに変更した結果、TgやTmを満足し、ΔCOOHとともに伸度保持率も十分で太陽電池用シートとして満足なものであった。
比較例6は、実施例1のPEGを添加しなかったため、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量が大きくなり、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例7は、実施例1のPEG添加量を多く添加したためポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量は小さく良好であるが、Tg、Tmの低下、ΔCOOHが大きい。そのため製膜性に問題が認められ、また耐熱性が低下したため伸度保持率が低く太陽電池用シートとして不十分であった。
実施例1のPEG4000の数平均分子量や添加量およびポリオキシエチレングリコールの種類を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。また、ポリオキシエチレングリコールの添加量を変更した水準についてはDMTおよびEGの量を適宜変更した。得られた特性は、表2、3に示すとおりである。
実施例9においては、PEGの添加量を2重量部に減量。実施例10においては、15重量部に増量、また実施例11においては、PEGの数平均分子量を400に、実施例12においては、PEGの数平均分子量を6000に、さらに実施例13においては、ポリオキシエチレングリコールのPEGを数平均分子量3000のポリテトラメチレングリコールに変更した結果、TgやTmを満足し、ΔCOOHとともに伸度保持率も十分で太陽電池用シートとして満足なものであった。
比較例6は、実施例1のPEGを添加しなかったため、ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量が大きくなり、ΔCOOHが大きくなり、伸度保持率が不足し太陽電池用シートとして不十分であった。
比較例7は、実施例1のPEG添加量を多く添加したためポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量は小さく良好であるが、Tg、Tmの低下、ΔCOOHが大きい。そのため製膜性に問題が認められ、また耐熱性が低下したため伸度保持率が低く太陽電池用シートとして不十分であった。
(実施例14)
実施例1の固有粘度を0.60としたポリエステル樹脂組成物チップを第四の工程において、真空度133Pa下で常温から160℃まで5時間かけて昇温し、160℃で6時間乾燥結晶化させた後、220℃まで5時間かけ昇温し、220℃で8時間固相重合を行い、固有粘度0.88、COOH末端基5.0eq/tのポリマーチップを得た。次いで、実施例1と同様に二軸延伸フィルムとした。得られた特性は表2に示すとおり、実施例1よりも、伸度保持率は大きく、太陽電池用シートとして満足なものであった。得られた特性は、表2に示すとおりである。
いずれの実施例、比較例においても、窒素含有物質を原料として使用していないにも関わらず、窒素含有量が60ppm検出された。これは、テレフタル酸やエチレングリコールなどの原料に、不純物として窒素化合物が残存していたものか、窒素雰囲気での溶融成形中に、気体の窒素がポリエステル樹脂組成物に溶け込んだものと推測する。
実施例1の固有粘度を0.60としたポリエステル樹脂組成物チップを第四の工程において、真空度133Pa下で常温から160℃まで5時間かけて昇温し、160℃で6時間乾燥結晶化させた後、220℃まで5時間かけ昇温し、220℃で8時間固相重合を行い、固有粘度0.88、COOH末端基5.0eq/tのポリマーチップを得た。次いで、実施例1と同様に二軸延伸フィルムとした。得られた特性は表2に示すとおり、実施例1よりも、伸度保持率は大きく、太陽電池用シートとして満足なものであった。得られた特性は、表2に示すとおりである。
いずれの実施例、比較例においても、窒素含有物質を原料として使用していないにも関わらず、窒素含有量が60ppm検出された。これは、テレフタル酸やエチレングリコールなどの原料に、不純物として窒素化合物が残存していたものか、窒素雰囲気での溶融成形中に、気体の窒素がポリエステル樹脂組成物に溶け込んだものと推測する。
Claims (8)
- アルカリ金属元素を2〜100ppm、かつリン元素を10〜250ppmを含有してなるポリエステルであって、さらにポリエステル樹脂組成物100重量部に対してポリオキシアルキレングリコールを2〜20重量部含有してなるポリエステル樹脂組成物であって、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、60eq/ton以下であるポリエステル樹脂組成物。
- アルカリ金属元素を含む化合物がリン酸アルカリ金属塩であり、かつアルカリ金属がNaまたはKであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
- リン元素を含む化合物の一種がリン酸であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリオキシアルキレングリコールが数平均分子量400〜6000のポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂組成物の固有粘度が0.55〜1.00、COOH末端基量が20eq/ton以下で、かつ155℃の100%RH下で4時間の加熱処理における、処理前後のCOOH増加量が、50eq/ton以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂組成物中にMg、Ca、Mn、Coから選ばれる2価の金属元素の少なくとも1種、およびSb、Ti、Geから選ばれる重合触媒能を有する金属元素の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなる太陽電池用フィルム。
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JP2010206489A JP2012062380A (ja) | 2010-09-15 | 2010-09-15 | ポリエステル樹脂組成物およびフィルム |
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