以下、本発明に係る画像制御装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式、タンデム方式、中間転写方式を採用した、複写機、プリンタ、ファクシミリの機能を備えた複合機である。又、本実施例の画像形成装置100は、カラートナー像が定着された記録材Sの一部にクリアトナー像を形成することができる。
画像形成装置100内には、第1、第2、第3、第4、第5の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、Peが設置されており、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、Peにおいて異なる種類のトナーによるトナー像が電子写真画像形成プロセスによって形成される。
尚、本実施例では、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、Peの構成及び動作は、使用するトナーの種類が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部に関して設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、d、eは省略して総括的に説明する。
画像形成部Pは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム3を有する。各感光ドラム3上にトナー像が形成される。各感光ドラム3に隣接して、中間転写体20が設置されている。各感光ドラム3上に形成されたトナー像は、各1次転写部N1で中間転写体20上に1次転写され、2次転写部N2で記録材S上に2次転写される。トナー像が転写された記録材Sは、定着装置9で加熱及び加圧され、その上にトナー像が定着された後に、記録画像として画像形成装置100の外部に排出される。
感光ドラム3は、図中矢印R1方向に回転駆動される。画像形成部Pにおいて、感光ドラム3の周りには、次の各手段が設置されている。先ず、帯電手段としての帯電ローラ2である。次に、現像手段としての現像装置1である。次に、1次転写手段としての転写ローラ6である。次に、クリーニング手段としてのクリーナ4である。又、画像形成部Pにおいて、感光ドラム3の図中上方に位置して、露光手段としてのレーザースキャナ5が設置されている。
レーザースキャナ5内には光源装置、ポリゴンミラーなどが設けられている。レーザースキャナ5は、光源装置から発せられたレーザー光を、ポリゴンミラーを回転させることで走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズにより感光ドラム3の母線上に集光して露光する。これにより、感光ドラム3上に画像信号に応じた静電潜像(静電像)が形成される。
現像装置1a、1b、1c、1d、1eには、それぞれ現像剤としてイエロートナー、マゼンダトナー、シアントナー、ブラックトナー、クリアトナーが所定量充填されている。現像装置1a、1b、1c、1d、1eは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d、3e上の静電潜像を現像して、イエロー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像、クリアトナー像を形成する。各現像装置1には、供給装置によりトナーが適時補給される。
中間転写体20は、無端状のベルトで形成され(中間転写ベルト)、テンションローラ13、2次転写対向ローラ14及び駆動ローラ15に掛け回されている。中間転写体20は、図中矢印R2方向に、感光ドラム3の周速度と同じ周速度をもって回転駆動される。
中間転写体20の内周面側には、各感光ドラム3に対向して、上記1次転写ローラ6が配置されている。各1次転写ローラ6は感光ドラム3に向けて押圧され、各感光ドラム3と中間転写体20とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写体20の外周面側には、2次転写対向ローラ14に対向して、2次転写手段としての2次転写ローラ11が配置されている。2次転写ローラ11は、2次転写対向ローラ14に向けて押圧され、中間転写体20と2次転写ローラ11とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成する。2次転写ローラ11は、中間転写体20に対し略平行に軸支されて、中間転写体20の外周面に接触させて配設されている。
感光ドラム3上に形成されたトナー像は、1次転写部N1を通過する過程で、中間転写体20の外周面に1次転写される。このとき1次転写ローラ6には、電圧印加手段としての1次転写電源から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である1次転写バイアスが印加される。感光ドラム3上のトナーは、1次転写バイアスにより1次転写部N1に形成される電界と、感光ドラム3と中間転写体20との間にかかる圧力とにより、中間転写体20上に1次転写される。
中間転写体20上に転写されたトナー像は、2次転写部N2を通過する過程で、記録材S上に2次転写される。このとき、2次転写ローラ11には、電圧印加手段としての2次転写電源から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である2次転写バイアスが印加される。中間転写体20上のトナーは、2次転写バイアスにより2次転写部N2に形成される電界と、中間転写体20と記録材Sとの間にかかる圧力とにより、記録材S上に2次転写される。
記録材Sは、記録材カセット10から送り出されて、レジストローラ12、転写前ガイドを通過して、所定のタイミングで2次転写部N2に給送される。このタイミングに合わせて、2次転写バイアスが2次転写ローラ11に印加される。
1次転写が終了した後に感光ドラム3上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーナ4により除去されて回収される。クリーニングされた感光ドラム3は、次の静電潜像の形成に供される。又、2次転写が終了した後に中間転写体20上に残留したトナー(2次転写残トナー)及びその他の異物は、中間転写体20の表面にクリーニングウエブ(不織布)30が当接させられて拭い取られる。
トナー像が転写された記録材Sは、定着装置9へ導入される。記録材Sは、定着装置9により熱と圧力が加えられることで、その上にトナー像が定着される。
詳しくは後述するように、画像形成装置100は、1回の2次転写工程で記録材Sに転写するトナー像の形成に用いるトナーの種類の数が異なる画像形成モードとして、「全画像形成モード」、「非クリア画像形成モード」及び「クリア画像形成モード」を有する。全画像形成モードでは、第1〜第5の画像形成部Pa〜Peの全てを用いて、中間転写体20上に多重転写された合成トナー像を形成し、この合成トナー像を2次転写工程において記録材Sに一括して転写する。非クリア画像形成モードでは、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdを用いて、中間転写体20上に多重転写された合成トナー像を形成し、この合成トナー像を2次転写工程において記録材Sに一括して転写する。クリア画像形成モードでは、第5の画像形成部Peを用いて、中間転写体20上にクリアトナー像を形成し、このクリアトナー像を2次転写工程において記録材Sに転写する。
又、詳しくは後述するように、本実施例の画像形成装置100は、記録材Sの一方の面に関して、トナー像を転写して定着させる工程の数が異なる画像形成モードとして、「1パスモード」及び「2パスモード」を有する。1パスモードでは、記録材Sの一方の面に関して、トナー像を転写する工程とこれを定着させる工程とをそれぞれ1回ずつ行う。2パスモードでは、記録材Sの一方の面に関して、トナー像を転写してこれを定着させた後に、その上に再度トナー像を転写してこれを定着させる。後述する両面画像形成の場合は、それぞれの面について、1パスモード又は2パスモードで画像を形成することができる。
以下、2パスモードにおいて、記録材Sの一方の面に関して、1回目にトナー像を転写してこれを定着させることを「1層目の画像形成」ともいう。又、以下、2パスモードにおいて、記録材Sの一方の面に関して、1度トナー像が形成されて定着された後に、再度トナー像を転写してこれを定着させることを「2層目の画像形成」ともいう。
片面画像形成時に、1パスモードが設定されている場合は、トナー像が定着された記録材Sは、再供給パス113に導かれることなく、記録画像として画像形成装置100の外部に排出される。一方、片面画像形成時に、2パスモードが設定されている場合は、記録材Sは切り替え手段としてのフラッパー110によって片面供給パス114に導かれ、表裏の反転されずに再供給パス113に導かれて、2層目の画像形成が実行される。
両面画像形成の場合は、定着装置9で1面目にトナー像が定着された後、記録材Sは、フラッパー110により反転パス111に導かれる。その後、記録材Sは、反転ローラ112により反転されて再供給パス(両面パス)113へと導かれる。そして、再び、記録材Sは、レジストローラ12、転写前ガイド、2次転写部N2を通過して2面目にトナー像が転写され、定着装置9で2面目にトナー像が定着される。
両面画像形成時に、1パスモードが設定されている場合は、例えば、上述のような記録材Sの2面目に対する画像形成中にフラッパー110が切り替わり、トナー像が定着された記録材Sは、記録画像として画像形成装置100の外部に排出される。一方、両面画像形成時に、1面目について2パスモードが設定されている場合は、再度、記録材Sは反転ローラ112により反転されて再供給パス113に導かれて、1面目の2層目の画像形成が実行される。2面目についても2パスモードが設定されている場合は、再度、記録材Sは反転ローラ112により反転されて再供給パス113に導かれて、2面目の2層目の画像形成が実行される。
2.定着装置
図2は、定着装置9の概略断面を示す。定着装置9は、定着部材としての定着ローラ40と、加圧部材としての加圧ローラ41とを有する。定着ローラ40は、内部に発熱体であるハロゲンヒータ40Aを有する外径80mmのローラである。加圧ローラ41は、内部に発熱体であるハロゲンヒータ41Aを有する外径60mmのローラである。
定着ローラ40は、アルミニウムや鉄などにより円筒状に形成された芯金40Bを有する。又、定着ローラ40は、シリコーンゴムから成り芯金40Bの外周面に位置する弾性層40Cを有する。又、定着ローラ40は、PFA(テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂のチューブから形成されて弾性層40Cの外周面を被覆する離型層40Dを有する。
定着ローラ40の表面温度は、温度検知手段としてのサーミスタ42Aによって検知される。検知された表面温度は、画像形成装置100のコントローラ部302(図3)に入力される。そして、コントローラ部302により、定着ローラ40の表面温度が所定の温度範囲になるように制御される。又、コントローラ302は、種々の記録材Sに対応するため、記録材Sの種類(坪量)によって、温調温度を135〜200℃の範囲、定着速度を100mm/sから300mm/sまでの範囲で可変制御する。これにより、トナーの溶融、固着に対して最適な熱量をコントロールできるようにしている。
加圧ローラ41は、アルミニウムや鉄などにより円筒状に形成された芯金41Bを有する。又、加圧ローラ41は、シリコーンゴムから成り芯金41Bの外周面に位置する弾性層41Cを有する。又、加圧ローラ41は、PFA若しくはPTFEなどのフッ素樹脂のチューブから形成されて弾性層41Cの外周面を被覆する離型層41Dを有する。加圧ローラ41は、付勢手段としての付勢部材である加圧バネによって付勢されて、定着ローラ40に図中下方より圧接する。これにより、定着ローラ40と加圧ローラ41とは、総圧力約784N(約80kgf)で互いに圧接する。又、定着ローラ40と加圧ローラ41とは圧接しながら回転可能なように配置されている。
加圧ローラ41の表面温度は、定着ローラ41の場合と同様にして、温度検知手段としてのサーミスタ42Bによって検知され、その検知結果に応じてコントローラ部302(図3)により制御される。
駆動源としてのモータによって駆動されて定着ローラ40が図中時計方向に回転すると、加圧ローラ41は図中反時計方向へ定着ローラ40に追従して回転する。トナー像Tが形成された記録材Sは、定着ローラ40と加圧ローラ41とが接触して形成された定着ニップ(定着部)N3で、定着ローラ40と加圧ローラ41とによって挟持されると共に搬送されて、加熱及び加圧される。これにより、トナー像Tは、記録材S上に定着される。
尚、定着部材及び/又は加圧部材の加熱手段は、ハロゲンヒータに限定されるものではない。又、定着部材及び/又は加圧部材には、例えばエンドレスベルトなどのベルト状の押圧部材を使用しても良い。
3.画像形成モード
カラートナーに加えてクリアトナーを用いる本実施例の画像形成装置100は、複数のモードを有する。表1は、記録材Sの一方の面に関する、複数のモードの組み合わせを示す。本実施例にて特徴的な画像制御(以下「本発明制御」ともいう。)は、2パスモードの2層目の画像形成において少なくともクリアトナー像を含むトナー像を形成する場合に適用される。1パスモード時は、1度のみの定着動作になるので、本発明制御は用いない。2パスモード時の2層目の画像形成時に、1層目の画像形成時に形成した画像に発生する光沢ムラを防止するために、本発明制御を用いる。
3−1.2パスモード
2層目の画像形成の目的の1つは、1層目の画像形成で形成された画像よりも低光沢の質感を出すことである。つまり、1回目に記録材Sに定着された1層目の画像は、2層目の画像形成の際に定着装置9の定着ローラ40の表層により再度加熱されることになるので、光沢が通常よりも高くなる。これに対して、2層目の画像は、2回目の定着の際にしか定着装置9を通過せず、定着ローラ40の表層に1回しか接触しないので、光沢は相対的に低くなる。
主に、2層目の画像形成としてクリアトナーを用いた画像形成を行って、このクリアトナーで形成した画像の透明部分の光沢を下げて質感を出す処理が用いられる。しかし、2層目の画像形成においても、カラートナーを用いた画像形成を行っても良い。この場合、カラートナーの量をクリアトナーの量に置き換えて、2層目の画像形成において追加するクリアトナーの塗布量を決定する。
3−2.全画像形成モード、非クリア画像形成モード及びクリア画像形成モード
本実施例の画像形成装置100では、画像形成装置100のコントローラ部302(図3)からの指令で、「全画像形成モード」、「非クリア画像形成モード」及び「クリア画像形成モード」の3種の画像形成モードの制御が行われる。コンピュータ500(図3、図4)から画像形成装置100にデータが出力される際に、画像情報と共に画像形成装置100に伝達される情報により、コントローラ部302が上記3種のいずれの画像形成モードで画像形成を行うかを判断する。
3−2−1.全画像形成モード
最大5つの画像形成部Pa〜Peが動作し、5種類のトナーによるトナー像が、記録材S上に一括して転写され、これが記録材Sに定着される。
即ち、第1〜第5の画像形成部Pa〜Peの各感光ドラム3a〜3e上に形成されたイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像、クリアトナー像が、各1次転写部N1a〜N1eにおいて、順次に中間転写体20上に1次転写される。これにより、5種類のトナーが重畳転写された、目的の画像に対応した合成トナー像が形成される。尚、合成トナー像は、記録材Sの4辺端部より一定の余白部を残して形成される。本実施例では、先端余白部は2〜3mm程度である。この合成トナー像は、上述のようにして2次転写部N2において、記録材Sに一括して2次転写される。その後、この合成トナー像は、定着装置9において記録材Sに定着される。
3−2−2.非クリア画像形成モード
第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdにおけるカラートナー(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー)によるトナー像の形成が行われるが、第5の画像形成部Peにおけるクリアトナーによるトナー像の形成は行われない。第5の画像形成部Peの感光ドラム3eは、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdの各感光ドラム3a〜3dと同様に回転はするが、クリアトナー像の形成は行われない。そのため、第5の画像形成部Peの1次転写部N1eにおけるクリアトナー像の記録材Sに対する1次転写は行われない。その他の動作は、全画像形成モードと実質的に同じである。
3−2−3.クリア画像形成モード
非クリア画像形成モードとは逆で、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdにおけるカラートナーによるトナー像の形成は行われずに、第5の画像形成部Peのみが動作して、クリアトナーによるトナー像の形成が行われる。第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdの各感光ドラム3a〜3dは、第5の画像形成部Peの感光ドラム3eと同様に回転はするが、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像の形成は行われない。
本発明制御が適用されるのは、表1中に「○」で示した画像形成モードの組み合わせのときである。即ち、本発明制御は、1回トナー像が形成されて定着された記録材S上に、再度トナー像を形成して、これを定着させる動作を行う場合に適用される。又、2層目の画像形成においてクリアトナーを用いない場合には、本発明制御は適用されない。
尚、理解を容易とするために、本実施例では、片面画像形成を行うものとし、又2パスモードでは1層目の画像形成を非クリア画像形成モードで行い、2層目の画像形成をクリア画像形成モードで行うものとする(表1中下から4行目の場合に相当)。実施例2〜4についても同様である。
4.トナー
本実施例において用いたトナーについて説明する。
カラートナー(有色トナー)の母体(バインダ)としてはポリエステル系の樹脂を使用した。又、カラートナーの製造法としては粉砕法を用いた。尚、トナーの製造方法としては、懸濁重合法、界面重合法、分散重合法などの重合法を用いてもよい。もちろん、トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。
クリアトナー(透明トナー)の母体としてはカラートナーと同じポリエステル樹脂を用いた。クリアトナーはカラートナーと異なり、カラー顔料を混ぜずに製造した。
カラートナーの母体(バインダ)は、ガラス転移点(Tg)が45℃〜60℃のポリエステル樹脂が一般的である。又、クリアトナーは、必ずしも透明ではない。例えば、本実施例で用いたクリアトナーは未定着状態において白色である。これは、トナーの粒径が5〜10μm程度になるように粉砕されているからである。なぜなら、5〜10μm程度に粉砕されたクリアトナーの表面において、光は散乱されてしまい、透過及び吸収する光が少なくなる。そのため人の目に白く見える。
尚、ガラス転移点(Tg)は、特に限定されるわけではない。クリアトナーの樹脂の種類や分子量を変更すると、溶融特性が変わる。そのため、同じ定着条件で同量のトナーを定着すると、異なる光沢が得られる。具体的には、ガラス転移点(Tg)の低い母体(つまり、溶けやすい母体)を用いれば、光沢度が高くなりやすい。又、ガラス転移点の高い母体(つまり、溶け難い母体)を用いれば、光沢度が低くなりやすい。本実施例においては、カラートナーとクリアトナーのガラス転移点は略同等であった。しかし、クリアトナーのガラス転移点をカラートナーよりも高くすることも、低くすることもできる。又、同じガラス転移点のトナーであっても、例えば定着スピードを遅くすることや定着温度を高くすることによって、トナーに与えるエネルギーを多くすれば、光沢度が高くなる傾向にある。
5.画像データ
次に、カラートナー又はクリアトナーによりトナー像を形成するための画像データについて説明する。以下、「カラー画像データ」とは、カラートナー像を記録材Sに形成するために用いられる画像データのことを指す。又、「クリア画像データ」とは、クリアトナー像を記録材Sに形成するために用いられる画像データのことを指す。
カラー画像データは、シアン画像データ、マゼンタ画像データ、イエロー画像データ、ブラック画像データの4種類の画像データから成る。シアン画像データは、画像形成装置100が記録材Sに形成するシアントナーの量を指定するデータである。同様に、マゼンタ画像データ、イエロー画像データ、ブラック画像データも対応するトナーの量を指定するデータである。
カラー画像データについて、シアン画像データを例に挙げて説明する。マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の画像データについても同じである。
本実施例において、シアン画像データは、画像形成装置100の解像度(dot per inch)に応じた画像を形成するのに必要な画素分のデータ(画素値)から成る。又、本実施例において、1画素に対応するデータの値は8ビットで表現される。8ビットを用いて表現できる値は0〜255である。そのため、8ビットを用いることにより256段階の階調を表現することができる。このように、シアン画像データは、各画素の濃度を表現する画素値(0〜255)がシアン画像を形成するために必要な画素分集まったデータを指す。尚、簡便のため、8ビットを用いて表現することのできる最大の値である255を100%として表す。画像形成装置100は、入力される画素値(0〜100%)に応じて、記録材Sに載せるトナーの量を変える。本実施例において、画像形成装置100に全ての画素に対応する画素値が100%のシアン画像データが入力されたとき、画像形成装置100は1cm2あたり0.5mgの重量のシアントナーを用いて画像形成する。以下、1cm2に画像形成した場合のトナーの重量を載り量という。
上記カラー画像データと同様に、クリア画像データは、各画素の濃度を表現する値(0〜255)がクリア画像を形成するために必要な画素分集まったデータを指す。
尚、最大濃度や最大載り量は、画像設計、トナーの特性、定着装置の定着条件、記録材の種類などによって決定される。そのため、本実施例に記載するものに限定されるものではない。
以下、簡便のために、画像上の同じ位置に対応する画素値を加算して表現する。つまり、シアン画像データの画素値が20%であり、同じ位置に対応するマゼンタの画素値が40%であるとき、カラー画像データの画素値は60%と表現する。
6.カラートナーの載り量を抑制する処理
画像形成装置100は、入力されるカラー画像データに基づき画像形成を行う。このとき、入力されるデータを色調が一致するように、所謂、ガンマ補正などの画像補正を行う。画像形成装置100は、補正されたデータを用いて、各々の画素ごとのトナー量を算出し画像形成を行う。そして、各色のトナーを重ね合わせて、様々な色を表現する。このとき、理論上は、カラー画像データとしては、最大で400%の画像データ量となる(つまり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像データがそれぞれ100%である時)。
上述のように、理論上は、カラー画像データの1画素あたりの最大値は400%である。しかしながら、実際の画像形成において、400%のトナーが用いられることは少ない。なぜなら、コントローラ部302(図3)は、UCRや、GCRといった方法を実行することによって、カラー画像データの1画素あたりの最大値を180%〜240%になるよう変更するためである。
UCRとは、「Under Color Removal」(下色除去)のことである。カラー原稿を4色分解するときに、シアン、マゼンタ、イエローの3色が重なった部分にはグレーの成分が発生する。その成分をスミ版(ブラック版)に置き換える時の方式で、ある程度以上の濃さのグレー成分をスミ版に置き換え、トータルの画像データ量を減らすことを目的としている。
GCRとは、「Gray Component Replacement」(グレー置換)のことである。色分解画像において、シアン、マゼンタ、イエローの比率が同じ点は、黒又はグレーになる。この部分をブラックに置き換えることによって、網点の比率を下げることが可能になり、網点総面積率が低くなる。
これらの処理を用いることによって、画像形成の際に消費するトナー量を少なくすることができる。
7.画像形成に用いた各種条件
本実施例では、記録材Sとして、坪量150g/m2のA2グロスコート紙を用いて、トナーの載り量0.5mg/cm2で、カラートナー各色ともに、濃度1.8が得られた。このトナーの載り量0.5mg/cm2を1色の最大載り量とした。
カラートナー像を形成する際のプロセススピードは100mm/s、定着ローラ40の制御温度(目標温度)は160℃、加圧ローラ41の制御温度(目標温度)は100℃とした。
クリアトナー像を形成する際のプロセススピードは300mm/s、定着ローラ40の制御温度(目標温度)は160℃、加圧ローラ41の制御温度(目標温度)は100℃とした。
本実施例では、上述のように、クリアトナーとしては、カラートナーと同じポリエステル樹脂を母体に用いて、カラー顔料を混ぜずに製造したものを用いた。そのため、本実施例では、カラートナーとクリアトナーのガラス転移点(Tg)は略同一となる。
しかしながら、クリアトナー像を形成する際のプロセススピードはカラートナー像を形成する際のプロセススピードよりも早く、トナーに与えられるエネルギーは少なくなる。そのため、同じガラス転移点のトナーであっても、クリアトナーに与えられるエネルギーは、カラートナーに与えられるエネルギーよりも少なくなる。従って、クリアトナー像が形成された部分の光沢度は、カラートナー像が形成された部分の光沢度より低くなる傾向がある。本実施例では、クリアトナー像がカラートナー像と比べてマットになるように、2層目の画像形成時に積極的に定着処理時のエネルギーを減らして、クリアトナー像が形成された領域がマットになるようにしている。具体的には、2層目の画像形成における画像形成条件は、プロセススピードを300mm/sに速めることによって、定着処理で加熱する熱量を下げて、クリアトナー像の光沢度を低く抑える。
尚、仮に同じプロセススピードであっても、トナーに加える総熱量の違いで、光沢度に差を出すことができる。つまり、2回定着処理を受けたカラートナーの光沢度の方が、1回定着処理を受けたクリアトナーの光沢度よりも高くなる傾向がある。
本実施例では、クリアトナーを形成した部分の光沢度が低くなるように、上述のように画像形成条件を設定した。又、クリアトナーを形成した部分の光沢度が低くなるように、上述のようにカラートナーとクリアトナーの母体を同一とした。
尚、クリアトナーの母体として、カラートナーの母体よりも低いガラス転移点のものを用いることもできる。その場合、2回定着処理を受けたカラートナーの光沢度よりも、1回定着処理を受けたクリアトナーの光沢度を高くすることもできる。
8.画像光沢の部分調整
次に、2パスモードにおいて1層目の画像形成を非クリア画像形成モードで行い、2層目の画像形成をクリア画像形成モードで行うことで、クリアトナーを用いて画像光沢の部分調整を行う際の画像形成動作について説明する。以下、本実施例では、当該画像形成動作を、単に「2パスモード」ともいう。
2パスモードが選択されたとき、コントローラ部302(図3)は、記録材Sにカラートナー像を形成し定着させた後、カラートナー像が定着された記録材Sに、クリアトナー像を形成し定着させるように、画像形成装置100を制御する。つまり、コントローラ部302は、2パスモードを選択し、1層目の画像形成をカラー画像が記録材Sに形成され定着される非クリア画像形成モードで行い、2層目の画像形成をクリア画像が記録材Sに形成され定着されるクリア画像形成モードで行う。このように2パスモードにおいて、画像形成装置100は、記録材Sの一方の面へのトナー像の形成と画像加熱処理を複数回に分けて実行することで、成果物を出力する。
具体的には、先ず、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdを用いて中間転写体20上に形成された、カラートナーによる1層目のトナー像を記録材Sに形成する。カラートナー像が形成された記録材Sは、定着装置9に導入される。これにより、カラートナー像が、記録材Sに定着される。
そして、定着装置9を出た、1層目のトナー像が定着された記録材Sは、フラッパー110により針路が変更されて、片面供給パス114を通して、表裏が反転されずに再供給パス113に導かれる。
その後、1層目のトナー像が定着された記録材Sは、レジストローラ12、転写前ガイドを通過して、再び2次転写部N2に搬送される。
そして、この1層目のトナー像が定着された記録材Sに、第5の画像形成部Peを用いて中間転写体20上に形成された、クリアトナーによる2層目のトナー像を形成する。クリアトナー像が形成された記録材Sは、定着装置9に導入される。これにより、クリアトナー像が、記録材Sに定着される。
定着装置9の定着ニップN3を通った記録材Sは、フラッパー110をストレートに通過し、排出ローラ(図示せず)により搬送されて、画像形成装置100の外部に排出される。
このように、2パスモードでは、記録材Sに定着されたカラートナー像の上から、その一部にクリアトナー像を形成し、これを加熱することで画像光沢の部分調整を行う。つまり、クリアトナー像は、1層目の画像形成においてカラートナー像が転写、定着された記録材Sに対し、画像光沢の部分調整を行うために、2層目の画像形成において転写、定着される。即ち、記録材Sの画像領域のうち部分的にクリアトナーを積層して定着することで画像光沢の部分調整を行うものである。このため、クリアトナー像のトナー濃度として所望の光沢度となるトナー載り量を設定する。クリアトナーの最大載り量は、カラートナーの最大載り量と一致している必要は無く、所望の光沢が得られる載り量を最大載り量として良い。
尚、本実施例では、上述のように2層目の画像形成において、クリアトナー像のみを形成するものとするが、前述のように、2層目の画像形成においてクリアトナー像に加えてカラートナー像を形成してもよい。これにより、1層目の画像形成において記録材Sにカラートナー像が定着された上に、2層目の画像形成においてクリアトナー像、又はカラートナー像とクリアトナー像が形成される。
9.コントローラ部の動作
図3は、本実施例の画像形成装置100の概略制御態様を示す。
画像形成装置100は、コントローラ部302、並びに、コントローラ部302に繋がる画像読取部301、画像形成手段303及び操作部304などを有する。コントローラ部302は、記憶手段としてのメモリ305を有する。又、コントローラ部302は、データ伝達手段306を介して、サーバー307、PC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータ500と相互にデータの入出力を行う。
画像形成装置100がプリント動作を行う場合、例えばコンピュータ500は、サーバー307の画像情報をプリントするという命令を受けると、この画像情報をカラー画像とクリア画像に分離し、画像形成装置100に送信する。このデータを受け取ったコントローラ部302は、一時、このデータをメモリ305に格納する。そして、コントローラ302は、クリア画形成を行うか否かを判断する。又、コントローラ部302は、クリア画像形成を行う場合、後述する薄塗り処理の設定が行われているか否かによって、対応する変換テーブル(LUT)で画像データを変換して、画像形成手段303に対してプリント指令を出す。
又、本実施例の画像形成装置100は、コピー動作も可能であり、操作部304からコピー動作の指示を入力すると、コントローラ部302は画像読取部301に原稿を読み取る指令を出す。画像読取部301は、読み取った画像をコントローラ302に送信する。このデータを受け取ったコントローラ部302は、一時、このデータをコントローラ部302のメモリ305に格納する。そして、コントローラ部302は、上記プリント動作と同様に、クリア画像の有無と、後述する薄塗り処理の有無によって、対応する変換テーブル(LUT)で画像データを変換して、画像形成手段303にプリント指令を出す。
10.光沢ムラ
次に、上述のような2パスモードにおいて、1層目の画像形成でトナー像が定着された領域であって、2層目の画像形成においてクリアトナー像が形成されない領域に発生する光沢ムラについて説明する。
前述したように、カラートナー像を記録材Sに形成し定着処理を行った後に、クリアトナー像を一部に形成し定着処理を行うと、クリアトナー像が形成されないカラートナー像の領域に、画像不良が発生することが知られている。この画像不良とは、0.1〜3mm程度のブツブツとした光沢ムラとして目視できる。
このような現象は、定着ニップN3中に入り込んだ少量の空気(気泡、気体)が定着ローラ40と定着済みのトナー像との間に挟まり、定着ローラ40と定着済みのトナー像の表面との接触を妨げることが原因であると考えられる。
更に説明すると、図14は、定着装置9の定着ニップN3に記録材Sが通過する際の様子を模式的に示している。図14において、T1は1層目の定着済みカラートナー像、T2は2層目の未定着クリアトナー像とする。定着ニップN3に圧力と熱を加えると、定着ニップN3における記録材S及び定着ローラ40の移動方向A1及びA2における定着ニップN3の上流側の端部に、未定着トナー像から空気50が発生する。この空気50が挟まることで定着ローラ40との接触が妨げられた1層目の定着済みカラートナー像T1の領域51に、光沢ムラが生じることになる(図14(a))。
この空気50は、トナー像の表面の凹凸に、平滑な定着ローラ40を押し付けた時に密閉される空気である。より詳細に説明すると、未定着トナー像を定着する際には空気は未定着トナー像のトナーの隙間から逃げることができるので、1回目の定着工程では問題とはならない。しかし、2回目の定着工程では、1回目の定着工程で既に定着された画像はある程度平滑な状態にあるため、空気が逃げられずに画像不良が発生してしまうと考えられる。
仮に、1層目のカラートナー像が形成されていない部分であれば、発生した空気50の移動が容易で、例えば記録材Sとしての紙の繊維の中などにも入り込むことができ、問題は発生しない(図14(b))。
そこで、特許文献2では、次のような制御を行うことを提案する。即ち、記録材のカラートナー像が定着された面の一部の所定の領域(クリア画像領域)にクリアトナーを載せる場合に、このクリア画像領域を除くトナー像形成可能な領域のうち少なくともカラートナー像が定着された領域にもクリアトナーを載せる。そして、クリア画像領域以外のクリアトナーを載せる領域に載せるべき単位面積あたりのクリアトナーの量を、クリア画像領域に載せるべき単位面積あたりのクリアトナーの量よりも少なくなるように制御する。本明細書では、この制御のことを「薄塗り処理」という。又、薄塗り処理により、上記クリア画像領域以外のクリアトナーを載せる領域を「薄塗り領域」という。
このような薄塗り処理をすることによっても、発生した空気50は、1層目の定着済みカラートナー像T1上の薄塗り処理による未定着クリアトナーの層T3があれば、このトナーの層のトナーの隙間から逃げることができる。従って、この空気50は、定着性に影響を与えずに移動することができる(図14(c))。
11.従来の課題
2パスモードにおいて画像上の光沢差をつける際の光沢ムラの問題は、薄塗り処理を行うことで防止できる。しかし、特許文献2の方法では、2層目の画像形成時に、例えばクリア画像データの画素値が20%以下の領域については、クリア画像データの画素値を一律に20%にかさ上げする。このような従来の薄塗り処理では、次のような課題があることが分かった。
即ち、2層目の画像形成時のクリア画像データの画素値が20%以下の領域が同じ表現になることである。つまり、2層目の画像形成時のクリア画像データの画素値が一定値(例えば20%)以下となる領域については、その領域のクリア画像データの画素値を一律の値(例えば20%)にするため、この値以下のデータが成果物に反映されない。そして、場合によっては、不自然な表現になってしまうことがある。
12.本発明制御の概要
概略、本実施例では、2層目の画像形成においてクリアトナー像を形成する予定の領域(クリア画像領域)とは異なる領域に、少量のクリアトナーを塗布(薄塗り処理)する。そして、この際、2層目の画像形成においてクリアトナー像を形成する予定であった領域(クリア画像領域)の光沢度を更に低下させる制御(本発明制御)を行う。つまり、本実施例では、2層目の画像形成においてクリアトナー像を形成する予定の領域(クリア画像領域)に塗布するクリアトナーの量を、当該クリア画像領域の元々の予定量よりも増加させる制御を行う。これにより、クリア画像領域と薄塗り処理でクリアトナーを載せた領域との光沢差が、相対的に、薄塗り処理を行わない場合の元々のクリア画像領域とそれ以外の領域(1層目の画像形成でカラートナー像が定着された領域)との光沢差に近い値になる。
即ち、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Sに定着されたカラートナー像の上にクリアトナー像を形成するクリアトナー像形成手段を有する。又、画像形成装置100は、形成されたクリアトナー像を記録材Sに定着させる定着手段を有する。本実施例では、クリアトナー像形成手段は、第5の画像形成部Pe、中間転写体20、2次転写ローラ11などによって構成される。又、本実施例では、定着手段は定着装置9で構成される。又、本実施例では、各画像形成部Pa〜Pe、中間転写体20、2次転写ローラ11、定着装置9、その他の要素によって、上記クリア画像形成手段と定着手段とを含む画像形成手段303が構成される。そして、本実施例では、上記画像形成手段303を制御する画像制御装置が、コントローラ部302によって構成される。画像制御装置は、クリアトナー像の各画素のトナー載り量を指定する画像データを変換する薄塗り処理用の変換手段を有する。薄塗り処理用の変換手段は、トナー載り量がゼロであることを指定する最小値から最大値まで徐々に増加する値を取り得る入力データを、ゼロより大きいトナー載り量を指定する最小値から最大値まで徐々に増加する値を取り得る出力データに変換するものである。そして、画像制御装置は、薄塗り処理用の変換手段により変換された画像データに従って、薄塗り処理動作を制御する。即ち、入力データが指定するトナー載り量がゼロであるカラートナー像の上の領域にも、出力データの最小値が指定するゼロより大きいトナー載り量でクリアトナーを載せるように、クリアトナー像形成手段によるクリアトナー像の形成を制御する。典型的には、薄塗り処理用の変換手段は、入力データの最小値から最大値までの全範囲(最大値を除く)において、変換後の出力データが指定するトナー載り量が、変換前の入力データが指定するトナー載り量より大きくなるように設定される。本実施例では、出力データの最大値が指定するトナー載り量は、入力データの最大値が指定するトナー載り量と等しい。
尚、薄塗り処理を行わない場合(通常の画像形成)には、通常用の変換手段が用いられる。通常用の変換手段は、トナー載り量がゼロであることを指定する最小値から最大値まで徐々に増加する値を取り得る入力データを、トナー載り量がゼロであることを指定する最小値から最大値まで徐々に増加する値を取り得る出力データに変換するものである。
換言すれば、本実施例では、画像制御装置は、次のようにクリアトナー像の形成動作を制御する。即ち、記録材Sの任意の領域に形成される前記クリアトナー像の単位面積当たりのトナー量をAとする。又、予め決定された単位面積当たりのトナー量の設定値(閾値)をBとする。又、前記クリアトナー像の領域に前記クリアトナー像形成手段により最終的に形成されるクリアトナー像の単位面積当たりのトナー量をCとする。このとき、画像制御装置は、前記Aの値が前記Bよりも小さい場合には、前記Cの値は、前記Aの値が0のときは前記Bとなり、前記Aの値が0以外のときは前記B以上になるように制御する。又、画像制御装置は、前記Aの値が前記B以上の場合には、前記Cの値は、前記A以上になるように制御する。
より具体的には、薄塗り処理を行う際のクリア画像データの変換処理に用いる変換手段としての変換テーブル(LUT)を、中間調の差違が再現できるように、入力値に対して出力データが徐々に増加するようにし、出力後の変換値を大きくする。これにより、薄塗り処理で載せるクリアトナーの量を元々のクリア画像データにおける諧調を失わないように段階的に補正して、薄塗り処理を行う際の面内光沢差の低下を防止することができる。以下、更に詳しく説明する。
13.トナー量と光沢度との関係
本実施例では、2パスモードにおいて2層目の画像形成ではクリアトナーを用いて部分的に光沢を調整する。前述のように、特に、本実施例では、記録材Sの画像領域のうち、光沢度を高める領域(第1の領域)にはクリアトナー像を形成しない。反対に、上記第1の領域とは異なる領域(第2の領域)にはクリアトナー像を形成する。これにより、クリアトナー像が形成されない第1の領域の光沢度は高く、クリアトナーが形成される第2の領域の光沢度は低くなる。このように、第1の領域と第2の領域とで光沢度の差を持たせることによって、画像光沢の部分的な調整をする。
このような条件下におけるトナー量と光沢度との関係について説明する。
先ず、記録材Sとして光沢度が35%であるA2グロスコート紙(坪量が150g/m2)にカラー画像データの画素値200%(載り量1.0mg/cm2)で均一に画像を形成する。このカラートナー像を、目標温度160℃、プロセススピード100mm/sの条件で記録材Sに定着した時の光沢度は38%(60度グロス測定)である。更に、この1回定着したカラートナー像を、目標温度160℃、プロセススピード300mm/sの条件で再度定着した部分の光沢度は50%(60度グロス測定)である。
次に、A2グロスコート紙(坪量が150g/m2)にカラー画像データの画素値200%(載り量1.0mg/cm2)で均一に画像を形成する。このカラートナー像を、目標温度160℃、プロセススピード100mm/sの条件で記録材Sに定着する。そして、この画像の上にクリア画像データの画素値100%(載り量0.5mg/cm2)で均一に画像を形成する。そして、このクリアトナー像を、目標温度160℃、プロセススピード300mm/sの条件で記録材Sに定着した部分の光沢度は10%(60度グロス測定)である。
尚、光沢度(グロス)の測定には、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計(PG−1M)を用いた(JISZ8741鏡面光沢度−測定方法に準拠)。
14.クリア画像変換処理
図5は、本実施例の画像形成装置100のコントローラ部302による画像形成制御の概略フローを示す。
本実施例の画像形成装置100は、光沢差優先モードと画質優先モードとを持っている。光沢差優先モードは、薄塗り制御を行わない通常の画像形成動作を行うモードである。この光沢差優先モードでは、前述のように、光沢ムラの発生する可能性がある。画質優先モードは、薄塗り制御を実行するモードである。以下に、この画質優先モードが選択された場合の制御について詳しく説明する。
尚、本実施例では、図5における2パスモードとは、記録材Sにカラー画像を形成し定着した後に、その上にクリア画像を形成し定着するモードである。例えば、カラー画像とクリア画像を同時に定着し、その後にクリア画像の定着を行う場合は、本実施例では2パスモードには該当しない。
コントローラ部302は、画像形成の指令が出されると、画像優先モードが設定されているか否か(S101)、更に2パスモードが設定されているか否か(S102)を判断する。画像形成モードと2パスモードが同時に設定されている場合に、薄塗り処理を実行するための処理に進む(S103〜S106)。それ以外のときは通常の画像形成動作を行う(S107)。
薄塗り処理を行う場合は、コントローラ部302は、先ず、クリア画像データを読み込み(S103)、この画像データを予め設定された変換テーブルに従って変換する(S104)。コントローラ部302は、変換後のデータをメモリ305に格納する(S105)。その後、コントローラ部302は、クリア画像データを画像形成手段303に出力し、画像形成動作を行わせる(S106)。
尚、カラー画像データについても、前述のように、ICRやGCRといった画像変換工程を行って、プリント指令と共に、変換後のカラー画像データを画像形成手段303に送信して、画像形成を実行させるが、図5においては煩雑さを避けるために記載を省略した。
より具体的には、コントローラ部302は、画質優先モードで且つ2パスモードの場合に、前述した従来の問題に対処すべく、次のような処理を実行する。即ち、クリア画素データの画素値を一定値に一律に変換するのでなく、画素値0〜100%において入力データに対して出力データが段階的に大きくなるように設定された変換テーブル(LUT)でクリア画像データを変換する。これにより、例えば、元々20%のクリア画像を出力したいクリア画像領域は、薄塗り処理を行った場合に、薄塗り領域には埋もれることなく、20%+αの載り量(後述する表2の例では28%の載り量)で画像形成されることになる。これにより、段階的に諧調を設けた光沢差による微妙な表現が可能となる。例に挙げた20%の画素値に限らず、元々の差分の情報を失わずに再現可能である。
コントローラ部302は、入力されたカラー画像データを、前述のICRやGCRといった画像変換工程を行ってから、画像形成手段303に送信する。又、コントローラ部302は、入力されたクリア画像データを、カラー画像データとは別に扱う。例えば、図6に示すように、クリア画像データは、画素毎に0〜255(0〜100%)の画素値を持っている。コントローラ部302は、入力されたクリア画像データの各画素値に対して、クリア画像データ変換処理を実行する。コントローラ部302は、メモリ305に予め記憶されている変換テーブル(LUT)に従って、クリア画像データ変換処理を実行する。コントローラ部302は、変換後のクリア画像データをメモリ305に格納する。その後、プリント指令と共に、変換後のクリア画像データを画像形成手段303に送信して、画像形成を実行させる。
上記クリア画像データ変換処理について更に説明する。本実施例では、説明を簡略化するために、図7に示すように入力と出力との関係が直線的な比例関係となるように変換テーブルを作成した。
クリア画像データの画素値の入力データをCi[%]、変換後の出力データをCo[%]とし、薄塗り処理の効果が出る最小載り量を得るための画素値をCs[%]とし、次の数式により、データを変換した。
Co=Cs+((100−Cs)/100)×Ci
例えば、薄塗り処理の効果が出る最小載り量を得るための画素値Csが20%であるとすると、図7に示す関係となる。このとき、入力データCiが0%場合は、出力データCoは20%、入力データCiが10%の場合は、出力データCoは28%、入力データCiが100%の場合は、出力データCoは100%のままとなる。
尚、変換テーブルは、当然、上記の式に限定されるものではない。薄塗り処理の効果が出る最低載り量が得られる画素値を下限として、入力されるクリア画像データの画素値が増加するほど、出力されるクリア画像データの画素値が大きくなる関係であれば、元々のクリア画像の諧調を維持することが可能である。
又、例えば、記録材Sと光沢差の関係により、人が目視判定する方法も考えられる。一例として、クリア画像のハーフトーンの諧調画像で、薄塗り処理の有無による光沢差について、主観評価を行って算出した、変換テーブルの入力データと出力データとの関係を図8に示す。
本実施例では、幅広く様々な出力に対応するために、図7に示すような変換テーブルを用いた。しかし、記録材Sや画像条件に合わせてより自然な成果物を作成するために、個別の変換テーブルを設定することも可能である。
上記薄塗り処理の効果が出る最小載り量が得られる画素値Csについて更に説明する。薄塗り処理の効果が出る最小載り量が得られる画素値(最低画素値)は、条件によって変わることを、複数回の試行で確認した。例えば、記録材Sの種類以外にも、表面状態、坪量、透気度にも左右される。そこで、トナー像から発生する空気の量に影響する水分量(周辺の温度、湿度)などに応じて最低画素値を設定すれば、元々の光沢度差の狙いに近い表現が可能となる。
例えば、本実施例で使用したA2グロスコート紙(坪量150g/m2)の場合は、30℃、80%RHの環境で、画素値20%程度に対応するクリアトナーの載り量にて薄塗り処理を行わないと、光沢ムラが発生することがあった。これに対して、光沢度45%のA2グロスコート紙(坪量256g/m2)を20℃、30%RHの環境で使用したところ、画素値10%に対応するクリアトナーの載り量での薄塗り処理でも、光沢ムラを防止することが可能であった。
即ち、上記画素値Cs、即ち、前述のBの値は、変更可能である。つまり、薄塗り処理用の変換手段のゼロより大きいトナー載り量を指定する出力データの最小値は可変である。例えば、上記画素値Cs、即ち、前述のBの値は、トナー像が形成される記録材Sの物性値、2層目のクリアトナー像が形成される領域の1層目のカラートナー像の単位面積当たりの量、又はユーザーが任意に決定する補正値によって決定することができる。
上述のように上記画素値Cs(即ち、前述のBの値)は、光沢ムラが防止できる範囲でできるだけ小さい方が、本来のクリアトナーを用いた画像光沢の部分調整の効果がより得易い。これに限定されるものではないが、上記画素値Cs(即ち、前述のBの値)は、10%以上30%以下に設定することで好結果が得られ、一般的には15%以上25%以下、最も典型的には20%に設定する。
15.評価試験
次に、本実施例の効果を示す画像の光沢差についての評価試験について説明する。
先ず、シアン単色(載り量0.5mg/cm2)の画像にクリアトナーで複数の諧調をつけたサンプルを用意し、被験者に主観評価をしてもらった。光沢度が最も低い部分(クリアトナー100%の領域)を「光沢ランク1」、最も高い部分(クリアトナー0%の領域)を「光沢ランク10」と定義し、その間を埋めるように主観的に10段階のランクに分類してもらった。使用した記録材Sは以下の4種類である。
A1グロスコート紙(坪量209g/m2)
A2グロスコート紙(坪量150g/m2)
上質紙(坪量80g/m2)
再生紙(坪量64g/m2)
図9は、それぞれの記録材Sに対して、決定した光沢ランクに対応する光沢度の測定値をプロットしたものである。目安として、光沢ランクの差が1の場合は、互いのサンプルを隣接させれば光沢差が判別可能だが、通常では判別が困難で、同程度の質感に見える。しかし、光沢ランクの差が2以上あれば(光沢度の差が10%程度あれば)、光沢差があると大部分の被験者が認識可能であった。
次に、この作成した光沢ランクサンプルを基準指標として、自然画、人物画、幾何学模様の様々な画像に光沢差をつけたサンプルを作成し、代表的な領域数ヶ所について、光沢度を計測し、平均を取って、対応する基準指標の光沢ランクを求めた。結果を表2に示す。尚、上記代表的な領域は、「クリアトナー無し部」(画素値0%)、「薄いクリアトナー部」(画素値20%)、「濃いクリアトナー部」(画素値70%)とした。記録材Sとしては、A2グロスコート紙(秤量150g/m2)を用いた。
表2において「薄塗り処理無し」と表記されているものが、本実施例及び特許文献2の処理を用いないサンプルについての結果である。この場合、光沢差が表現できているが、前述のように、光沢ムラが生じることがある。
表2において「従来例」と表記されているものが、特許文献2に従って一律20%の薄塗り処理を行ったサンプルについての結果である。この場合、濃いクリアトナー部の光沢差は判別可能だが、薄いクリアトナー部は、薄塗り処理によるクリアトナーに埋もれてしまって判別ができなくなっている。
これに対して、表2において「実施例1」と表記されているものが本実施例に従って本発明処理を行ったサンプルについての結果である。本実施例によれば、従来例と比較して光沢ランクの差が広がっていることが分かる。このように、本実施例では、従来と比較して、中間調の光沢度の表現を行うことが可能になったことが確認できた。
尚、表2には、便宜的に、後述して説明する実施例2、実施例3に従って本発明制御を行ったサンプルについての結果も合わせて記載しているが、これらについては該当する実施例において説明する。
以上、本実施例によれば、クリアトナーを用いて画像光沢の部分調整を行う際の光沢ムラの問題を防止するために薄塗り処理を行った場合に、本来ユーザーが所望した光沢差が小さくなることを抑制し、元々の光沢差を保つことを図れる。従って、本実施例によれば、画像上の光沢差を犠牲にせずに、クリアトナーを用いて画像光沢の部分調整を行う場合の問題を防止することができる。即ち、本実施例によれば、トナー像を定着した後の記録材Sに対してトナー像を再度形成する際に生じる画像不良を防止しつつ、画像形成装置100のトナー定着回数差による光沢差を利用してユーザーが所望した光沢表現が可能となる。従って、有色トナー像の定着後の記録紙Sに、再度クリアトナー像を形成することにより、例えばウォーターマーク、アイキャッチ、セキュリティマークなどの表現を追加する際に非常に有利である。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
2パスモードにおいて画像上の光沢差をつける際の光沢ムラの問題は、薄塗り処理を行うことで防止できる。しかし、特許文献2の方法では、2層目の画像形成時に、例えばクリア画像データの画素値が20%以下の領域については、クリア画像データの画素値を一律に20%にかさ上げする。このような従来の薄塗り処理では、実施例1にて説明した課題の他、次のような課題があることが分かった。
即ち、2層目の画像形成時のクリア画像の中間調の効果が消えることである。つまり、クリア画像領域におけるクリア画像の濃度が高い部分では、クリア画像領域以外の領域との光沢差を区別が可能である。しかし、クリア画像領域のクリア画像に諧調を持たせて、徐々に光沢が変化していく効果を狙った場合に、その効果が現れにくくなったり、不自然になったりする場合がある。具体的には、クリア画像の画素値が70%程度を超える場合は光沢差が判別可能だが、画素値が60%程度を下回る中間調の場合は、クリア画像領域とクリア画像領域以外の領域との光沢差が判別しにくくなる。このため、これら領域間の境界がなくなり、クリアパターンが判別できないことがある。
前掲の表2を参照すると、実施例1では、クリアトナー無し部(画素値0%)と薄いクリアトナー部(画素値20%)との光沢差が曖昧である。
そこで、実施例1ではクリアトナー像の画素値の最大値は100%のままとしたが、本実施例では、光沢差を一定に保つために、これを100%よりも高くして、よりクリアトナーの載り量を上げる。
ただし、クリアトナーの載り量が増えるにつれて光沢度の低下割合は減少していくので、LUTの変換処理は、画素値の入力データに対して、徐々に画素値の出力データの傾き(差分)を大きくしていくことが望ましい。
即ち、前述のAの値と前述のCの値との関係について、Aの値の増加の割合よりもCの値の増加の割合の方が大きい(傾きが大きい)関係とする。換言すれば、Aの最大値よりもCの最大値の方が大きい関係とする。つまり、薄塗り処理用の変換手段の入力データの最大値が指定するトナー載り量よりも、該変換手段の出力データの最大値が指定するトナー載り量の方が大きい。
図10は、本実施例に従う変換テーブルの一例を示す。この変換テーブルによれば、クリア画像の画素値0%(クリアトナーを載せない部分)を画素値20%に変換するようにした場合、例えば元々のクリア画像の画素値が40%の部分は、+20%以上の45%に変換される。画素値100%については、画素値130%に変換することで、元々の光沢差に近い表現を行うことができる。
尚、本実施例では、簡単のため、直線で変換式を結んだが、前述のように、光沢度の変化割合を鑑みて変換テーブルを作成することができる。
本実施例では、クリア画像の画素値100%の場合の載り量が約0.5mg/cm2になるように制御を行っている。図6は、画素値に対する感光ドラム3上の載り量との関係を示す。このとき、例えば130%の画素値に対して感光ドラム3上には載り量が約0.58mg/cm2のトナー像が形成されることになる。
本実施例によれば、実施例1と比較して、クリア画像データの画素値の大きい領域の光沢度も更に低下させる。これにより、クリア画像データの画素値の小さい領域に薄塗り処理を行うことで光沢が低下して、諧調表現や光沢差の効果が薄くなる問題を抑制することができる。
本実施例の制御によれば、光沢ムラの発生を防止できると共に、前掲の表2に示すように、薄いクリアトナー部(画素値20%)でもクリアトナー無し部(画素値0%)との差が判別しやすくなる。又、濃いクリア部(画素値70%)ではより光沢差がつけられるようになる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
2パスモードにおいて画像上の光沢差をつける際の光沢ムラの問題は、薄塗り処理を行うことで防止できる。しかし、特許文献2の方法では、2層目の画像形成時に、例えばクリア画像データの画素値が20%以下の領域については、クリア画像データの画素値を一律に20%にかさ上げする。このような従来の薄塗り処理では、実施例1、2にて説明した課題の他、次のような課題があることが分かった。
即ち、2層目に形成するクリア画像の効果の低下である。つまり、クリア画像領域以外の領域もクリアトナー像の画素値を一律20%にかさ上げして画像形成してしまうことで、一般的なグロスコート紙では、全体的に光沢が記録材Sの光沢度よりも低下する。これにより、クリア画像領域とクリア画像領域以外の領域との間で光沢差を付けるという効果が薄れてしまうことがある。このとき、クリア画像の濃度が高い部分との光沢差は判別可能だが、薄塗り処理を行わない場合と比較すると、効果が見劣りすることがある。
そこで、本実施例では、実施例2と同様の処理を行うのに加えて、2層目の画像形成時の定着条件を変更する。これにより、高光沢部を維持しつつ、クリアトナーにより光沢差を付ける効果が、薄塗り処理によって大きく損なわれないようにする。
本実施例では、薄塗り処理を行う場合、2層目の画像形成時の定着装置9の定着速度を、薄塗り処理を行わない場合(1層目の画像形成時)と比較して遅くする。これにより、2層目の画像形成時における定着性を向上させる。又、定着性を向上させるためには、定着速度を遅くするだけではなく、定着温度を上げることや加圧力を上げることも可能である。例えば、160℃の定着ローラ40の温調温度を200℃にすることでも、速度を遅くすることと同等の効果が得られる。
即ち、薄塗り処理を行う場合における2層目の画像形成時には、定着工程における定着条件は、次のように設定される。即ち、薄塗り処理を行わない場合(1層目の画像形成時)と比較して、定着装置9による記録材Sの搬送速度(定着速度)が遅いか又は定着装置9の温度(定着温調)が高い設定である。つまり、画像制御手段は更に、カラートナー像を記録材に定着させるときよりも、クリアトナー像を記録材に定着させるときの方が、記録材の搬送速度が遅くなるか又は前記定着手段の温度が高くなるように、定着手段を制御する。
具体的には、本実施例では、薄塗り処理を行う場合、2層目の画像形成時の定着装置9の定着速度を、薄塗り処理を行わない場合(1層目の画像形成時)の100mm/sから60mm/sに減速する。その他の制御は実施例2と同一である。本実施例では、最終的な定着ローラ40での記録材Sに加える熱量が上がるため、薄塗り処理の影響で全体的に光沢度が低くなっていたものを、通常の光沢度の値に近く戻すことができる。
本実施例の制御によれば、光沢ムラの発生を防止できると共に、表2に示すように、A2グロスコート紙(秤量150g/m2)を用いた場合においても、薄塗り処理を行わない場合の光沢感に近づけることができる。
尚、本実施例では、実施例2と同様の処理を行うのに加えて、定着速度を遅くする制御を行った。しかし、実施例1と同様の処理を行うのに加えて、定着速度を遅くする制御を行ってもよい。この場合、実施例2で説明したように、中間調のクリア画像の光沢差が若干曖昧になるが、実施例1よりも画像全体の光沢感を薄塗り処理を行わない場合の光沢感により近づける効果を得ることができる。
実施例4
1.画像形成装置の全体的構成及び動作
実施例1〜3では、画像形成装置100は、転写材Sにトナー像を転写してこれを定着させる画像形成手段を1つ(1組)だけ有していた。従って、記録材Sの一方の面に関して、2パスモードで画像形成を行う場合、記録材Sを定着工程後に再供給パス113を介して再度同じ転写部、定着部に搬送することが必要であった。
これに対して、本実施例では、画像形成装置100は、カラー画像を形成する画像形成手段を備えたカラー画像形成装置(カラー画像形成ユニット)と、クリア画像を形成する画像形成手段を備えたクリア画像形成装置(クリア画像形成ユニット)とが分かれている。
図11は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。本実施例では、画像形成装置100は、カラー画像形成装置110と、クリア画像形成装置120とを有する。カラー画像形成装置110は、カラートナー像を記録材Sに転写してこれを定着させる。クリア画像形成装置120は、カラー画像が定着された記録材Sにクリアトナー像を転写してこれを定着させる。
従って、本実施例の画像形成装置100では、2パスモードでは、カラー画像形成装置110で記録材Sの1層目にカラー画像が形成され定着された後、記録材Sはクリア画像形成装置120に搬送され、2層目にクリア画像が形成され定着される。
カラー画像形成装置110の構成及び動作は、第5の画像形成部Peが設けられていないことを除いて図1の画像形成装置100と同様である。図11の画像形成装置100において、図1に示す画像形成装置100のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。即ち、カラー画像形成装置110では、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdの感光ドラム3a〜3dに形成された各色のトナー像は、中間転写体20に1次転写される。中間転写体20に形成されたトナー像は、記録材Sに2次転写される。その後、記録材Sは、定着装置9において加熱及び加圧され、その上にトナー像が定着される。尚、図1の画像形成装置100において、2パスモードで記録材Sを表裏反転させずに再供給パス113に搬送するために設けられていた片面供給パス114は、カラー画像形成装置120には設けられていなくて良い。
又、クリア画像形成装置120の構成及び動作も、図1の画像形成装置100と共通する部分が多い。ただし、記録材Sは、カラー画像形成装置120から搬送されてくるので、記録材カセット10は設けられていない。クリア画像形成装置120において、カラー画像形成装置110に設けられた要素と同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には、同一符号に添え字eを付した上で、その詳細な説明は省略する。即ち、クリア画像形成装置120には、画像形成部として、クリアトナー像を形成するクリア画像形成部Peしか設けられていない。クリア画像形成部Peの感光ドラム3eに形成されたクリアトナー像は、中間転写体20eに1次転写される。中間転写体20eに形成されたトナー像は、カラー画像形成装置110からクリア画像形成装置120に搬送されてきた記録材Sの1層目のカラー画像が定着された面に2次転写される。その後、記録材Sは、定着装置9eにおいて加熱及び加圧され、その上にクリアトナー像が定着される。尚、カラー画像形成装置110と同様、図1の画像形成装置100における片面供給パス114は、クリア画像形成装置120には設けられていなくて良い。又、実施例3と同様に2層目の画像形成時に定着条件を変更する場合は、クリア画像形成装置120の定着装置9eは、定着動作時の駆動速度をカラー画像形成装置110の定着装置9と異なる定着条件に設定できるようにする。
ここで、本実施例の画像形成装置100において、1パスモードで画像形成する際は、カラー画像が定着された記録材Sはクリア画像形成装置120に搬送され、クリア画像の形成はされずに、記録画像として画像形成装置100の外部に排出される。尚、この場合のクリア画像形成装置120の定着装置9eの温調条件は、コントローラ部312(図12)からの信号により変更可能であり、例えば常温から160℃までの温度に自由に設定可能である。
2.コントローラ部の動作
図12は、本実施例の画像形成装置100の概略制御態様を示す。
実施例1〜3では、画像形成装置100内の画像制御装置としてのコントローラ部で、薄塗り処理を行うか否かの判断や画像データの変換を行った。しかし、画像形成装置100に画像データを入力する際にコンピュータ500によって予め画像データの変換を行って、変換後の画像データを画像形成装置100に入力しても良い。
本実施例では、画像形成装置100は、カラートナー像の形成を行うカラー画像形成装置110と、クリアトナー像の形成を行うクリア画像形成装置120とに分かれている。カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120は、各々に設けたれているコントローラ部302、312によって制御される。カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120は相互に情報を伝達しており、記録材Sの搬送や画像形成のタイミングを同期させている。
そして、本実施例では、コンピュータ500が薄塗り処理を行うと判断した場合には、入力された画像データの処理がコンピュータ500により行われ、カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120のそれぞれに伝達される。その際に、コンピュータ500は、画像パターンを判別し、画像データの変換を行い、変換後の画像データをカラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120に送信する。薄塗り処理の内容自体は、2層目の画像形成をクリア画像形成装置120で行うことを除いて、実質的に実施例1、2又は3と同じであって良い。
又、実施例3と同様に2層目の画像形成時の定着条件の変更を行う場合は、コンピュータ500が薄塗り処理を行うと判断した場合、クリア画像形成装置120に対して、定着条件の変更をするように指示を出す。
図12に示す本実施例の画像形成装置100の概略制御態様について更に説明する。カラー画像形成装置110は、コントローラ部302、並びに、コントローラ部303に繋がる画像読取部301、画像形成手段303及び操作部304などを有する。コントローラ部302は、記憶手段としてのメモリ305を有する。又、コントローラ部302は、データ伝達手段306を介して、クリア画像形成装置120、サーバー307、PC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータ500と相互にデータの入出力を行う。
同様に、クリア画像形成装置120は、コントローラ部312、並びに、コントローラ部312に繋がる画像読取部311、画像形成手段313及び操作部314などを有する。コントローラ部312は、記憶手段としてのメモリ315を有する。又、コントローラ部312は、データ伝達手段316を介して、カラー画像形成装置110、サーバー307、PC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータ500と相互にデータの入出力を行う。
画像形成装置100がプリント動作を行う場合、例えばコンピュータ500は、サーバー307の画像情報をプリントするという命令を受けると、この画像情報をカラー画像とクリア画像に分離し、カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120に送信する。
カラー画像データを受け取ったカラー画像形成装置110のコントローラ部302は、一時、このデータをメモリ305に格納する。そして、コントローラ302は、画像形成手段303に対してプリントの指令を出す。
このとき、クリア画像形成装置120もカラー画像形成装置110の動作に同期して動作する。クリア画像データを受け取ったクリア画像形成装置120のコントローラ部312は、一時、このデータをメモリ315に格納する。そして、コントローラ部312は、画像形成手段313に対してプリント指令を出す。
カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120の画像形成準備が完了すると、プリントが開始され、記録材Sにカラー画像、クリア画像の順に画像形成が行われる。本実施例では、コンピュータ500、コントローラ302、312などによって、画像制御装置が構成される。
尚、上述のように、本実施例では、コンピュータ500内で画像処理の演算を行った後、カラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120に対して、演算後の画像データを送信する。しかし、必ずしも画像データを出力するコンピュータ500が演算を行わなくても良い。例えば、コンピュータ500からカラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120にそれぞれ画像データが送られた後、カラー画像形成装置110のコントローラ部302で薄塗り処理を実行するか否かを判断することができる。カラー画像形成装置110のコントローラ303は、例えば、ユーザーの設定、カラー画像データなどから、薄塗り処理を実行するか否かを判断することができる。そして、薄塗り処理が必要である場合、クリア画像形成装置120に対して薄塗り処理を行う指令を出すことができる。そして、クリア画像形成装置120のコントローラ部312は、薄塗り処理を実行する場合、クリア画像データを、例えば図7、8又は10の変換テーブルに従って実施例1〜3と同様にして変換する処理を行う。
又、本実施例の画像形成装置100は、コピー動作も可能であってよい。コピー動作を行う際は、上述のように、カラー画像形成装置110が薄塗り処理を実行するか否かの判断をし、薄塗り処理が必要である場合には、クリア画像形成装置120でクリア画像データの変換処理を行うようにすることができる。例えば、カラー画像形成装置110の操作部304からコピー動作の指示を入力すると、コントローラ部302は画像読取部301に原稿を読み取る指令を出す。画像読取部301は、読み取った画像をコントローラ302に送信する。このデータを受け取ったコントローラ部302は、一時、このデータをコントローラ部302のメモリ305に格納する。そして、コントローラ部302は、薄塗り処理を実行するか否かを判断して、薄塗り処理が必要である場合、クリア画像形成装置120に対して薄塗り処理を行う指令を出す。これにより、クリア画像形成装置120のコントローラ部312は、薄塗り処理を実行する場合、クリア画像データを変換テーブルに従って変換して、画像形成手段313にプリント指令を出す。或いは、本実施例ではクリア画像装置120にも画像読取部311が付属しているので、この画像読取部311を用いてクリア画像形成装置120側で読み取ったデータを単色データに変換し、カラー画像、クリア画像を形成することも可能である。この際も、薄塗り処理の設定が行われている場合、クリア画像形成装置120のコントローラ120で画像データを変換テーブルに従って変換することができる。
ここで、図13を参照して、コンピュータ500について更に説明する。図13は情報処理装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)とされるコンピュータ500のハードウエア構成を示すブロック図である。
コンピュータ500は画像形成装置100(カラー画像形成装置110、クリア画像形成装置120)と接続されることによって画像形成システムを構成する。本実施例においてコンピュータ500と画像形成装置100はEthernet(登録商標。以下同様。) I/F512を介して相互に通信可能に接続されている。コンピュータ500は、画像形成装置500に対して印刷命令を送信可能な外部端末である。そのため、MFPに対して印刷命令を送信可能な他の端末をコンピュータ500の代替として用いてもよい。例えばWS(Work Station)やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯可能な情報端末であってもよい。
コンピュータ500において、CPU501(Central Possessing Unit)、RAM502(Random Access Memory)、ROM503(Read Only Memory)はバス504に接続されている。同様に、HDD505(Hard Disk Drive)、ネットワークコントローラ506、ビデオコントローラ507、I/Oコントローラ508はバス504に接続されている。尚、バス504に接続されている各種ユニットはバス504を介して相互に通信することができる。CPU501は例えばROM503に保存されているプログラムをRAM502に展開して実行する。又、CPU501はバス504を介して、HDD505、ネットワークコントローラ506、ビデオコントローラ507、I/Oコントローラ508に対して制御命令などを送信する。又、CPU501はバス504を介して、HDD505、ネットワークコントローラ506、ビデオコントローラ、I/Oコントローラ508からの状態を示す信号及び画像データなどのデータを受信する。このようにしてCPU501はコンピュータ500を構成する各種ユニットを制御することができる。
コンピュータ500は画像形成装置100とEthernet I/F512を介して接続される。コンピュータ500がEthernet I/F512を介して画像形成装置100と通信する場合、通信経路はLAN(Local Aria Network)内部に限るものではなく、インターネットを経由しても良い。又、コンピュータ500には入力デバイスとしてのキーボード510、マウス511がPS/2 I/F509を介して接続されている。又、コンピュータ500には表示手段としてのディスプレイ513が接続されている。
本実施例において、CPU501はHDD505にインストールされた基本ソフトであるOS(Operation System)に従いコンピュータ500を構成する各種ハードウエアを制御する。これにより、ユーザはコンピュータ500を構成するハードウエアを意識することなく、GUI(Graphical User Interface)を操作することによって、コンピュータ500に所望の動作を実行させることができる。又、ユーザはOS上で実行されているHDD505にインストールされたアプリケーションプログラムから外部の画像形成装置100に対して印刷命令を送信することができる。印刷命令を画像形成装置100に対して送信する際、画像形成装置100の機種によって制御方法が異なる。そのため、コンピュータ500は画像形成装置100の機種に対応するドライバプログラムを用いて画像形成装置100に応じた制御命令を生成する。HDD505にインストールされたドライバプログラムはOSの一部に組み込まれることによって、接続された周辺機器に応じた制御命令を作成することができる。本実施例では、コンピュータ500にはクリア画像データの変換などを実行するためのプログラムがHDDにインストールされている。本実施例において、クリア画像データの変換などはHDD505にインストールされたドライバプログラムが実行する。
尚、本実施例のように、コンピュータ500で薄塗り処理を行うか否かの判断や画像データの変換を行う構成は、図1に示す実施例1〜3の画像形成装置100に本発明を適用する場合にも同様に適用することができる。図4は、上述と同様のハードウエア構成を有するコンピュータ500を実施例1〜3の画像形成装置100に接続した態様を示している。
更に説明すると、本実施例では、画像形成装置100に画像データを出力するコンピュータ500に入力された画像データは、コンピュータ500の内部のRAM502に格納される。ユーザーがキーボード510、マウス511などによりプリント指示を出すと、CPU501は、コンピュータ500の内部のRAM502に格納された画像データは薄塗り処理を行うものであるか否かを判断する。この判断基準は、ユーザーが予め設定したモードに従う。
図5をも参照して、CPU501は、画像形成の指令が出されると、画像優先モードが設定されているか否か(S101)、更に2パスモードが設定されているか否か(S102)を判断する。画像形成モードと2パスモードが同時に設定されている場合に、薄塗り処理を実行するための処理に進む(S103〜S106)。それ以外のときは通常の画像形成動作を行う(S107)。
薄塗り処理を行う場合は、CPU501は、先ず、クリア画像データを読み込み(S103)、この画像データを予め設定された変換テーブルに従って変換する(S104)。CPU501は、変換後のデータをRAM502に格納する(S105)。その後、CPU501は、カラー画像データをカラー画像形成装置110へ出力し、クリア画像データをクリア画像形成装置120に出力し、画像形成動作を行わせる(S106)。この際に、実施例3と同様に2層目の画像形成時に定着条件を変更する場合は、クリア画像形成装置120に対して定着性を向上させる指令を出す。
以上、本実施例のように、画像形成装置100がカラー画像形成装置110とクリア画像形成装置120とから成る場合にも、実施例1〜3と同様の効果を達成することができる。