JP2012051425A - 車重推定装置および車両の運転制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の旋回中において車両重量を適切かつ確実に演算する車重推定装置を提供し、ひいては、適切かつ確実に演算された車両重量から適切に横転抑制制御を行う車両の運動制御装置を提供する。
【解決手段】車重推定装置は、舵角取得手段により取得された車両の操舵輪の舵角、車両の車体速度、および車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタに基づいて舵角ヨーレートを演算する舵角ヨーレート演算手段(ステップ104)と、演算された舵角ヨーレートと取得された実ヨーレートとの偏差であるヨーレート偏差を演算するヨーレート偏差演算手段(ステップ106)と、予め定められたヨーレート偏差と車両の積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の積載量を演算する積載量演算手段(ステップ112)と、を備えている。
【選択図】 図3

Description

本発明は、車重推定装置および車両の運転制御装置に関するものである。
車重推定装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図2に示されているように、車重推定装置においては、エンジントルク検出手段(S2)と、車速検出手段(車速センサ3)と、車両の加減速度検出手段(S3)と、エンジントルク、車速および加速度とから車両走行抵抗の演算式を用いて車両重量を演算する演算手段(S5、S6)とを備えて構成されている。
車両の運転制御装置の一形式として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2の図2に示されているように、車両の運転制御装置においては、車両が横転傾向にあることを示す横転状態値が所定の開始しきい値を超えた場合に、横転抑制制御を実行するように構成された車両用横転抑制制御装置が知られている。この車両用横転抑制制御装置は、車両に発生する実横加速度を検出する実横加速度検出手段と、車両における重力成分を含まない理想的な横加速度に相当する規範横加速度を検出する規範横加速度検出手段(ステップ200)と、実横加速度検出手段によって検出された実横加速度と規範横加速度検出手段によって検出された規範横加速度との実質的な比率を求める比率演算手段(ステップ300)と、比率演算手段によって求められた実横加速度と規範横加速度との実質的な比率に基づいて、開始しきい値を変更する開始しきい値変更手段(ステップ400)と、を有している。
これにより、実横加速度と規範横加速度との比率が車両状態、つまり車両重量と重心高の両方を含んだ車両の横転し易さを示すパラメータとなっていることから、車両重量や重心高などを考慮した開始しきい値を設定することが可能となるようになっている。
実開平05−84834号公報 特開2006−168441号公報
上述した特許文献1に記載の車重推定装置においては、エンジントルクが0である場合、すなわちアクセルペダルが踏み込まれていない場合(例えば車両旋回中であってアクセルペダルが踏み込まれていない場合、制動時である場合)、または4輪スリップしている場合には、車両重量を演算できない、あるいはできたとしても誤差を生じるという問題があった。
一方、車両重量を使用する制御、例えば車両横転抑制制御を行う場合には、常に適切な車両重量の演算が行われていることが必要であり、特に横転が生じる可能性が高い車両の旋回中では車両重量の演算できることが必要である。
また、上述した特許文献2に記載の車両の運転制御装置においては、車両重量や重心高などを考慮した横転抑制制御の開始しきい値を設定することが可能となるが、車両の前後方向の重心位置(車重または車両の積載量)を考慮していないため、車両の積載量(車両の前後方向の重心位置)によっては横転抑制制御を適切に開始できないおそれがある。
そこで、本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、車両の旋回中において車両重量を適切かつ確実に演算する車重推定装置を提供し、ひいては、適切かつ確実に演算された車両重量から適切に横転抑制制御を行う車両の運動制御装置を提供することを目的とする。なお、本明細書において「車両重量」とは無積載の車両に所定の「積載量」の荷物を積載した重量をいう。また、車重は車両重量の省略形である。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両に発生するヨーレートである実ヨーレートを取得する実ヨーレート取得手段と、車両に発生する横加速度を取得する横加速度取得手段と、車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段と、舵角取得手段により取得された車両の操舵輪の舵角、車両の車体速度、および車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタに基づいて舵角ヨーレートを演算する舵角ヨーレート演算手段と、舵角ヨーレート演算手段により演算された舵角ヨーレートと実ヨーレート取得手段により取得された実ヨーレートとの偏差であるヨーレート偏差を演算するヨーレート偏差演算手段と、予め定められたヨーレート偏差と車両の積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の積載量を演算する積載量演算手段と、を備えたことである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、車両の積載量の演算を許可するか否かの判定を行う積載量演算許可判定手段をさらに備え、積載量演算許可判定手段により車両の積載量の演算を許可する旨の判定がされた場合に、積載量演算手段は車両の積載量の演算を行うことである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、横加速度取得手段により取得された横加速度に基づき演算された横加速度ヨーレートと取得された実ヨーレートとの偏差の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、車両のステアリングの操舵速度の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、横加速度取得手段により取得された横加速度が所定値より大きい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、積載量演算手段は、予め定められたヨーレート偏差と車両の前後重心位置偏差との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の前後重心位置偏差を演算し、予め定められた車両の前後重心位置偏差と車両の積載量との関係と、演算された車両の前後重心位置偏差とに基づいて、該車両の前後重心位置偏差に応じた車両の積載量偏差を演算することである。
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の車重推定装置を備え、予め定められた制御閾値と積載量との関係と、積載量演算手段により演算された積載量とに基づいて、該積載量に応じた制御閾値を演算する制御閾値演算手段と、横加速度取得手段により取得された横加速度が制御閾値演算手段により演算された制御閾値以上である場合に、車両の横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う横転抑制制御手段と、を備えたことである。
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ヨーレート偏差演算手段が、舵角取得手段により取得された車両の操舵輪の舵角、車両の車体速度、および車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタに基づいて舵角ヨーレートを演算する舵角ヨーレート演算手段と、舵角ヨーレート演算手段により演算された舵角ヨーレートと実ヨーレート取得手段により取得された実ヨーレートとの偏差であるヨーレート偏差を演算する。積載量演算手段が、予め定められたヨーレート偏差と車両の積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の積載量を演算する。
つまり、事前に実験などで取得し予め設定することができる「車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタ」および「ヨーレート偏差と車両の積載量との関係」と、センサなどを使用して実際に検出することができる車両の操舵輪の舵角および車両の車体速度とから、車両の旋回中において車両の積載量を演算することができる。すなわち、「車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタ」および「ヨーレート偏差と車両の積載量との関係」を予め設定するとともに、車両の操舵輪の舵角および車両の車体速度を取得することができれば、アクセルペダルの踏み込み状態にかかわらず(エンジントルクの有無にかかわらず)、車両の旋回中において車両の積載量を演算することができ、また、誤差を抑制して車両の積載量を演算することができる。
これにより、車両の旋回中においてアクセルペダルが踏み込まれていない場合(例えば車両旋回中であってアクセルペダルが踏み込まれていない場合、制動時である場合)であっても、車両の積載量ひいては車両重量(=車両自体の重量+積載量)を常に適切かつ確実に演算する車重推定装置を提供することができる。
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、車両の積載量の演算を許可するか否かの判定を行う積載量演算許可判定手段をさらに備え、積載量演算許可判定手段により車両の積載量の演算を許可する旨の判定がされた場合に、積載量演算手段は車両の積載量の演算を行う。これにより、車両の積載量の演算が許可される状況下でのみ車両の積載量の演算を行うことができるため、演算結果の信頼性を向上させることができる。
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項2において、横加速度取得手段により取得された横加速度に基づき演算された横加速度ヨーレートと取得された実ヨーレートとの偏差の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、実ヨーレートと横加速度ヨーレートとの偏差が小さい場合すなわち両ヨーレートがほぼ一致している場合である、車両の車輪がほぼグリップしている場合に、車両の積載量の演算を行うことができる。よって、より信頼性の高い演算結果を得ることができる。
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項2において、車両のステアリングの操舵速度の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、急旋回などの場合には、車両の積載量の演算精度が悪化するが、このような場合を除外することで、演算精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項2において、横加速度取得手段により取得された横加速度が所定値より大きい場合に、積載量演算許可判定手段は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、車両の直進中には、車両の積載量の演算精度が悪化するが、このような場合を除外することで、車両の旋回中において演算精度を向上させることができる。
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、積載量演算手段は、予め定められたヨーレート偏差と車両の前後重心位置偏差との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の前後重心位置偏差を演算し、予め定められた車両の前後重心位置偏差と車両の積載量との関係と、演算された車両の前後重心位置偏差とに基づいて、該車両の前後重心位置偏差に応じた車両の積載量偏差を演算する。これにより、ヨーレート偏差とよい相関がある車両の前後重心位置偏差を演算し、車両の前後重心位置偏差とよい相関がある積載量偏差(すなわち積載量)を演算することができる。
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の車重推定装置が、車両の積載量を演算し、制御閾値演算手段が、予め定められた制御閾値と積載量との関係と、積載量演算手段により演算された積載量とに基づいて、該積載量に応じた制御閾値を演算し、横転抑制制御手段が、横加速度取得手段により取得された横加速度が制御閾値演算手段により演算された制御閾値以上である場合に、車両の横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う。これにより、車両の旋回中において適切かつ確実に演算された車両重量を使用して、適切に横転抑制制御を行うことができる。よって、車両のロールを抑制しつつトレース性を確保することができる。
本発明による車重推定装置(車両の運動制御装置)を適用した車両の一実施の形態を示す概要図である。 図1に示す液圧ブレーキ装置を示す概要図である。 図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される制御プログラムのフローチャート例である。 ヨーレート偏差と積載量との関係を示すグラフである。 ハンドル角度とヨーレートとの関係を示すグラフであり、実線は実ヨーレートを示し、破線は無積載の舵角ヨーレートを示す。 積載量と制御閾値との関係を示すグラフである。 ヨーレート偏差とスタビリティファクタ偏差との関係を示すグラフである。 スタビリティファクタ偏差と前後重心位置偏差との関係を示すグラフである。 前後重心位置偏差と積載量偏差との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る車重推定装置(車両の運動制御装置)を適用した車両の一実施形態を図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図であり、図2は液圧ブレーキ装置Aの構成を示す概要図である。この車両Mは、車体前部に搭載した駆動源であるエンジン11の駆動力が駆動輪である後輪に伝達される形式のものである。車両Mは、荷物、貨物などを積載可能な車両(例えば、トラック)である。なお、前輪は車両の進行方向を任意に変えるための操舵輪である。また、車両Mは後輪駆動車でなく、他の駆動方式の車両例えば前輪駆動車、四輪駆動車でもよい。
車両Mは、エンジン11、変速機12、プロペラシャフト13、ディファレンシャルギヤ14、左右前輪Wfl,Wfrおよび左右後輪Wrl,Wrrを備えている。エンジン11の駆動力は、変速機12で変速され、プロペラシャフト13およびディファレンシャルギヤ14を介して左右後輪Wrl,Wrrにそれぞれ伝達されるようになっている。
車両Mは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を直接付与して車両を制動させる液圧ブレーキ装置Aを備えている。液圧ブレーキ装置Aは、図2に示すように、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrr、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル31、真空式制動倍力装置32、マスタシリンダ33、リザーバタンク34、液圧自動発生装置であるブレーキアクチュエータ35、およびブレーキ制御ECU36を備えている。
液圧ブレーキ装置Aを詳述する。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転をそれぞれ規制するものであり、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられている。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧および制御液圧の少なくともいずれかが供給されると、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrの各ピストン(図示省略)が摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転する回転部材であるディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。
真空式制動倍力装置32は、エンジン11の吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル31の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である。
マスタシリンダ33は、ドライバによるブレーキペダル31の操作力を変換して基礎液圧を形成し、その基礎液圧によって車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに摩擦制動力を発生させ得る装置である。本実施形態では、マスタシリンダ33は、真空式制動倍力装置32により倍力されたブレーキ操作力を基礎液圧に変換し、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給する。
リザーバタンク34は、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ33にそのブレーキ液を補給するものである。
ブレーキアクチュエータ35は、マスタシリンダ33と各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられて、ブレーキペダル31の操作の有無に関係なく自動的に形成した制御液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与し、対応する車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに摩擦制動力を発生させ得る装置である。
図2を参照してブレーキアクチュエータ35の構成を詳述する。ブレーキアクチュエータ35は、独立して作動する液圧回路である複数の系統から構成されている。具体的には、ブレーキアクチュエータ35は、前後配管である第1系統35aと第2系統35bを有している。第1系統35aは、マスタシリンダ33の第1液圧室33aと左後輪Wrl,右後輪WrrのホイールシリンダWCrl,WCrrとをそれぞれ連通して、左後輪Wrl,右後輪Wrrの制動力制御に係わる系統である。第2系統35bは、マスタシリンダ33の第2液圧室33bと左前輪Wfl,右前輪WfrのホイールシリンダWCfl,WCfrとをそれぞれ連通して、左前輪Wfl,右前輪Wfrの制動力制御に係わる系統である。
第1系統35aは、差圧制御弁41、左後輪液圧制御部42、右後輪液圧制御部43、および第1減圧部44を含んで構成されている。
差圧制御弁41は、マスタシリンダ33と、左後輪液圧制御部42の上流部および右後輪液圧制御部43の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁(常開リニアソレノイド弁)である。この差圧制御弁41は、ブレーキ制御ECU36により連通状態(非差圧状態)と差圧状態を切り替え制御されるものである。差圧制御弁41は非通電して通常連通状態とされているが、通電して差圧状態(閉じる側)にすることによりホイールシリンダWCrl,WCrr側の液圧をマスタシリンダ33側の液圧よりも所定の制御差圧分高い圧力に保持することができる。この制御差圧はブレーキ制御ECU36により制御電流に応じて調圧されるようになっている。これにより、ポンプ44aによる加圧を前提に制御差圧に相当する制御液圧が形成されるようになっている。
左後輪液圧制御部42は、ホイールシリンダWCrlに供給する液圧を制御可能なものであり、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁42aと2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁42bとから構成されている。増圧弁42aは、差圧制御弁41とホイールシリンダWCrlとの間に介装されており、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって差圧制御弁41とホイールシリンダWCrlとを連通または遮断できるようになっている。減圧弁42bは、ホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ44cとの間に介装されており、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがってホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ44cとを連通または遮断できるようになっている。これにより、ホイールシリンダWCrl内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
右後輪液圧制御部43は、ホイールシリンダWCrrに供給する液圧を制御可能なものであり、左後輪液圧制御部42と同様に増圧弁43aと減圧弁43bとから構成されている。増圧弁43aおよび減圧弁43bがブレーキ制御ECU36の指令により制御されて、ホイールシリンダWCrr内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
第1減圧部44は、ポンプ44a、ポンプ用モータ44b、調圧リザーバ44cを含んで構成されている。ポンプ44aは、調圧リザーバ44c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁41と増圧弁42a,43aとの間に供給するようになっている。このポンプ44aは、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ44bによって駆動されるようになっている。
調圧リザーバ44cは、ホイールシリンダWCrl,WCrrから減圧弁42b、43bを介して抜いたブレーキ液を一旦溜めておく装置である。また、調圧リザーバ44cは、マスタシリンダ33と連通しており、調圧リザーバ44c内のブレーキ液が所定量以下である場合には、マスタシリンダ33からブレーキ液が供給される一方で、所定量より多い場合には、マスタシリンダ33からのブレーキ液の供給が停止されるようになっている。
これにより、差圧制御弁41によって差圧状態が形成されるとともにポンプ44aが駆動されている場合(例えば、横転抑制制御、横滑り防止制御、トラクションコントロールなどの場合)、マスタシリンダ33から供給されているブレーキ液を調圧リザーバ44c経由で増圧弁42a,43aの上流に供給することができるようになっている。
第2系統35bは、差圧制御弁51、左前輪液圧制御部52、右前輪液圧制御部53、および第2減圧部54を含んで構成されている。
差圧制御弁51は、マスタシリンダ33と、左前輪液圧制御部52の上流部および右前輪液圧制御部53の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁である。この差圧制御弁51は、差圧制御弁41と同様に、ブレーキ制御ECU36によりホイールシリンダWCfl,WCfr側の液圧をマスタシリンダ33側の液圧に対してよりも所定の制御差圧分高い圧力に保持できるようになっている。
左前輪液圧制御部52および右前輪液圧制御部53は、ホイールシリンダWCfl,WCfrに供給する液圧をそれぞれ制御可能なものであり、左後輪液圧制御部42と同様に、それぞれ増圧弁52aと減圧弁52b、増圧弁53aと減圧弁53bから構成されている。増圧弁52aと減圧弁52b、増圧弁53aと減圧弁53bがブレーキ制御ECU36の指令によりそれぞれ制御されて、ホイールシリンダWCfl内およびホイールシリンダWCfr内の液圧がそれぞれ増圧・保持・減圧され得るようになっている。
第2減圧部54は、第1減圧部44と同様に、ポンプ54a、ポンプ用モータ44b(第1減圧部44と共用)、調圧リザーバ54cを含んで構成されている。ポンプ54aは、調圧リザーバ44cと同様な調圧リザーバ54c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁51と増圧弁52a,53aとの間に供給するようになっている。このポンプ54aは、ブレーキ制御ECU36の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ44bによって駆動されるようになっている。
このように構成されたブレーキアクチュエータ35は、通常ブレーキの際には全ての電磁弁が非励磁状態にされて、ブレーキペダル31の操作力に応じたブレーキ液圧、すなわち基礎液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。なお、**は、各輪に対応する添え字であって、fl,fr,rl,rrのいずれかであり、左前、右前、左後、右後を示している。以下の説明及び図面において同じである。
また、ポンプ用モータ44bすなわちポンプ44a,54aを駆動するとともに差圧制御弁41,51を励磁すると、マスタシリンダ33からの基礎液圧に制御液圧を加えたブレーキ液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。
さらに、ブレーキアクチュエータ35は、増圧弁42a,43a,52a,53a、および減圧弁42b,43b,52b,53bを制御することでホイールシリンダWC**の液圧を個別に調整できるようになっている。これにより、ブレーキ制御ECU36からの指示により、例えば、周知のアンチスキッド制御、前後制動力配分制御、ESC(Electronic Stability Control)である横滑り防止制御(具体的には、アンダステア抑制制御、オーバステア抑制制御)、トラクションコントロール、車間距離制御、横転抑制制御等を達成できるようになっている。
また、液圧ブレーキ装置Aは、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrを備えている。車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転に応じた周波数のパルス信号をブレーキ制御ECU36に出力している。
なお、液圧ブレーキ装置Aは、ブレーキペダル31が踏まれるとオンされ、踏み込みが解除されるとオフされるストップスイッチ31aを備えている。このストップスイッチ31aのオン・オフ信号はブレーキ制御ECU36に入力されるようになっている。
さらに、車両Mは、図1に示すように、ステアリング37aおよびステアリングセンサ37bを含んで構成されるステアリング装置37を備えている。ステアリング37aは、操舵輪(左右前輪)に連結されてドライバの操作によりその操舵輪の向きを任意に変えるものである。ステアリングセンサ37bは、ステアリング37aの操作量(回転角度)を検出するものである。ステアリング装置37のステアリングギヤ機構のトータルギヤ比は、予め決められた値に設定されており、ステアリング37aの回転角度(ハンドル角)/操舵輪の操舵角で示される値である。よって、このステアリングセンサ37bは操舵輪の操舵角を検出する舵角センサである。
さらに、車両Mは、ヨーレートセンサ38、および横加速度センサ39を備えている。ヨーレートセンサ38は、車体の重心近傍位置に組み付けられており、車両に発生している実際のヨーレートを検出するものである。横加速度センサ39は、車体の重心近傍位置に組み付けられており、車両に発生している実際の横加速度を検出するものである。
さらに、車両Mは、ブレーキ制御ECU36を備えている。ブレーキ制御ECU36は、車両の運動(車両の姿勢)を制御(例えば横転抑制制御、ABS制御、ESC(横滑り防止制御))するための制御装置であり、舵角センサ37b、ヨーレートセンサ38、横加速度センサ39からの各検出信号や、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度をそれぞれ検出する各車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの各検出信号を受け取り、各種物理量を算出するものである。ブレーキ制御ECU36は、舵角センサ37bが出力するドライバによるステアリング37aの操作量に応じた操舵角ξを算出したり、ヨーレートセンサ38が出力する車両に発生している実際のヨーレートに応じた検出信号に基づいて実ヨーレート(実際のヨーレート)を算出したり、横加速度センサ39が出力する車両に発生している実際の横加速度に応じた検出信号に基づいて実際の横加速度を算出したりする。また、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの検出信号に基づいて、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度や車速(車体速度)も算出するようになっている。
そして、ブレーキ制御ECU36は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、図3のフローチャートに対応したプログラムを実行して、車両が横転しないように横転抑制制御を行う。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
次に、上記のように構成した車両の運動制御装置の作動を図3のフローチャートに沿って説明する。ブレーキ制御ECU36は、車両Mのイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。ブレーキ制御ECU36は、図3のステップ100にてプログラムの実行を開始する毎に、横加速度Gy、各車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrr、車体速度V、ハンドル角度θ、および実ヨーレート(実Yr)を取得する(ステップ102)。
具体的には、ブレーキ制御ECU36は、横加速度センサ39からの横加速度の方向および大きさを表す信号を車両に発生する実際の横加速度Gyとして取得する(横加速度取得手段)。なお、車両のロール傾向の検出方法は、横加速度Gyを検出する方法だけでなく、車両の重心回りのロール角速度をロール角速度センサによって検出しその値を積分することによって検出するようにしてもよい。また、車高センサ、上下方向加速度センサなどによって検出した車高、上下加速度などから検出することもできる。
ブレーキ制御ECU36は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrr、および車体速度Vを取得する(車輪速度取得手段、車体速度取得手段)。具体的には、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからそれぞれ入力された各パルス列信号に基づいて同各パルス列信号の周期に反比例した値をそれぞれ各車輪速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrとして計算する。そして、これら各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出する。なお、左右前輪Wfl,Wfrまたは左右後輪Wrl,Wrrの各車輪速を平均した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。また、変速機12の出力軸の回転をピックアップして同回転速度に反比例する周期を有するパルス列信号を出力する車速センサをブレーキ制御ECU36に接続して、ブレーキ制御ECU36は車速センサから入力されたパルス列信号に基づいて同パルス列信号の周期に反比例した値を車体速度Vとして算出するようにしてもよい。
ブレーキ制御ECU36は、車両Mのハンドル角度θを算出する。すなわち、ハンドル角度θは、下記数1に示すようにステアリングセンサ37bから入力された2相パルス列信号に基づいて、両パルス列信号のレベルが変化する毎に操舵軸(ステアリング37a)の回動方向(2相のパルス列信号のレベルの変化の仕方によって検出される)に応じて前回のハンドル角度θを所定角度Δθずつ増減することにより算出される。
(数1)
ハンドル角度θ=前回のハンドル角度θ+加算値×Δθ
上記数1の加算値は、ステアリング37aの回転方向を示すものであり、ステアリングセンサ37bから入力された2相パルス列信号の前回値および今回値の変化の仕方に基づいて決定される。例えば、前回値と今回値が(0,0)と同じであれば加算値は0であり、(0,0)の前回値が(0,1)となれば加算値は+1であり、(0,0)の前回値が(1,0)となれば加算値は−1である。
イグニッションスイッチ(図示しない)を投入した直後に、このハンドル角度θの初期値は0にリセットされ、これに基づきその後のハンドル角度θの計算が実行される。また、ハンドル角度θは初期値からの相対的な角度を表すのみで、絶対的な角度を表していないので、ハンドル角度θの中立点を算出してこの算出した中立点に基づいて補正されてはじめて中立点からの絶対角度であるハンドル角度θが算出される。
また、ブレーキ制御ECU36は、ハンドル角度θと予め設定されているトータルギヤ比nとを下記数2に代入して操舵輪の舵角ξ(操舵輪の切れ角)を算出している(舵角取得手段)。
(数2)
操舵輪の切れ角ξ=ハンドル角度θ/n
なお、操舵輪の切れ角ξとは、車両Mが直進する方向に対する操舵輪の操舵方向の角度のことをいう。
ブレーキ制御ECU36は、ヨーレートセンサ38からのヨーレートの方向及び大きさを表す信号を車両に発生する実際のヨーレートである実ヨーレート(実Yr)として取得する(実ヨーレート取得手段)。なお、実ヨーレートを左右前輪Wfl,Wfr(または左右後輪Wrl,Wrr)の車輪速度に基づいて算出するようにしてもよい。
ブレーキ制御ECU36は、上述の各パラメータの取得が終了すると、ステップ104において、舵角ヨーレート(舵角Yr)を演算する(舵角ヨーレート演算手段)。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、先に取得した車体速度Vおよび操舵輪の舵角ξを下記数3に代入して舵角Yrを演算する。
Figure 2012051425
ここで、Lは車両Mのホイールベースであり、A0は車両Mの積載量が0であるときのスタビリティファクタである。このスタビリティファクタA0は車両Mの積載量が0である場合に実験などで取得した値である。
ブレーキ制御ECU36は、ステップ106において、先に取得した実ヨーレート(実Yr)と先に演算した舵角ヨーレート(舵角Yr)との偏差であるヨーレート偏差ΔYrを演算する(ヨーレート偏差演算手段)。
そして、ブレーキ制御ECU36は、ステップ108において、車両Mの積載量の演算を許可するか否かの判定を行う(積載量演算許可判定手段)。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、先に取得された横加速度に基づき演算された横加速度ヨーレート(横GYr)と先に取得された実ヨーレート(実Yr)との偏差を算出する。その算出された偏差が所定値(例えば3deg)より小さいか否かを判定する。なお、横加速度ヨーレートは、横加速度Gy/車体速度Vで演算される。
また、ブレーキ制御ECU36は、ステアリング37aの操舵速度の絶対値が所定値(例えば200deg/s)より小さいか否かを判定する。ステアリング37aの操舵速度は、単位時間あたりのハンドル回転角度であるので、ステアリング37aの操作時間と先に取得されたハンドル角θとから演算することができる。なお、ブレーキ制御ECU36は、操舵輪の舵角速度の絶対値が所定値(例えば10deg/s)より小さいか否かを判定するようにしてもよい。
また、ブレーキ制御ECU36は、先に取得された実際の横加速度Gyが所定値(例えば0.2G)より大きいか否かを判定する。
ブレーキ制御ECU36は、以上の3つの判定のうちの何れか1つでも「否」判定である場合には、車両Mの積載量の演算を許可しない旨の判定をする。すなわち、3つの判定について全て「適」判定をする場合のみ演算を許可する旨の判定をする。なお、ブレーキ制御ECU36は、前述した3つの判定を行う代わりに、そのうちのいずれか2つの判定を行うようにしてもよいし、いずれか1つの判定を行うようにしてもよい。
ブレーキ制御ECU36は、先のステップ108にて車両Mの積載量の演算を許可する旨の判定をした場合には、ステップ110にて「YES」と判定し、プログラムをステップ112に進めて、車両Mの積載量を演算する。一方、ブレーキ制御ECU36は、先のステップ108にて車両Mの積載量の演算を許可しない旨の判定をした場合には、ステップ110にて「NO」と判定し、プログラムをステップ120に進めて、車両Mの積載量の演算、横転抑制制御の実行を行わないで上述した許可判定を所定の短時間毎に繰り返す。
ブレーキ制御ECU36は、ステップ112において、予め定められたヨーレート偏差ΔYrと車両Mの積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算されたヨーレート偏差ΔYrとに基づいて、該ヨーレート偏差ΔYrに応じた車両Mの積載量を演算する(積載量演算手段)。
ヨーレート偏差ΔYrと車両Mの積載量との関係は、図4に示すように、ヨーレート偏差ΔYrが大きくなるほど積載量が大きくなる関係にある。これは、次の理由による。車両Mにおいて、各車輪のトータルの横力が大きいほど車両は曲がりやすい(旋回しやすい)。トラックなど積載可能な車両については、積載量が大きいほど後輪の荷重が前輪よりも大きくなり後輪の横力が大きくなる。よって、積載量が大きいほど車両が曲がりやすくなる。このことから明らかなように、車両の積載量が大きくなると車両の重心の前後位置が後方に変位することを前提にすれば、車両の積載量が大きくなれば車両の実ヨーレートが大きくなる。詳しくは、車両の積載量が0である場合の舵角ヨーレートと比べて、実ヨーレートが大きくなる。すなわち、ヨーレート偏差ΔYrが大きくなる。
図5に示すように、車両が無積載時である場合には、ヨーレートは破線で示すように、ハンドル角が大きくなるほどヨーレート(実ヨーレート)が大きくなる。このとき、そのヨーレートは、舵角ヨーレートで示すこともでき、上述したようにその舵角ヨーレートは無積載時のスタビリティファクタA0、車体速度Vおよび操舵輪の舵角ξから算出される。
一方、車両が積載状態である場合には、ヨーレートは実線で示すように、ハンドル角が大きくなるほどヨーレート(実ヨーレート)が大きくなるとともに、無積載状態と比べて積載量が増大し前後重心位置も後方に変位するため、ヨーレート(実ヨーレート)は増大する。積載量が増大し、前後重心位置が後方に変位すれば横力が変動しコーナリングフォースも変動する。その結果、車両のステア特性、ひいてはスタビリティファクタが変化する。
すなわち、積載状態の車両の重心の前後位置変動によるスタビリティファクタの変動を、車両の旋回時に実際に発生するヨーレート(実ヨーレート)と無積載状態の舵角ヨーレートとの差で捉え、そのスタビリティファクタの変動から積載量の変動を捉え、これにより積載量を取得するようになっている。
図5から明らかなように、あるハンドル角における無積載状態の舵角ヨーレートと実ヨーレートとの間に偏差(例えば図5の矢印で示す)が生じる場合には、積載量が増大されていることを意味している。積載量が0である場合には、実線で示す実ヨーレートではなく、破線で示す舵角ヨーレートとなるはずである。図5では、ある積載量での実ヨーレートを示しているが、積載量を変更すれば、その実ヨーレートは異なる。よって、偏差が異なれば、積載量は異なり、偏差と積載量は図4に示すような関係となる。
なお、図4において、ヨーレート偏差ΔYrと車両Mの積載量との関係を示すグラフは、ヨーレート偏差ΔYrが小さい範囲では、積載量は0である。これは、図5に示す、無積載の舵角ヨーレートの誤差範囲を吸収することで、積載量の算出誤差を抑制するためである。また、ヨーレート偏差ΔYrが所定値より大きい範囲では、積載量は一定値である。これは、図5に示すように、ハンドル角度が一定角度より大きくなると偏差はほぼ一定となるためである。
そして、ブレーキ制御ECU36は、ステップ114において、予め定められた横転抑制制御の開始閾値(以下、制御閾値という。)と積載量との関係と、先にステップ112にて演算された積載量とに基づいて、該積載量に応じた制御閾値を演算する(制御閾値演算手段)。
制御閾値と車両Mの積載量との関係は、図6に示すように、積載量がWbからWaまでの間の範囲においては、積載量が大きくなるほど制御閾値が小さくなる関係にある。積載量がWbであるとき制御閾値はGybに設定され、積載量がWaであるとき制御閾値はGyaに設定される。WbはWaより小さい値であり、GybはGyaより大きい値である。具体的な一例としては、Wbは4000Kgであり、Waは8000Kgであり、Gyaは0.4Gであり、Gybは0.6Gである。なお、制御閾値と車両Mの積載量との関係は、操舵速度が大きい場合や、車体速度が大きい場合には、全体として制御閾値が小さい値となる。すなわち、図6の制御閾値−積載量特性ラインが下方に移動する。
これにより、積載量(車両総重量)が大きい場合には制御閾値が小さい値に設定されるため、小さい横加速度でも横転抑制制御を開始することができる。よって、積載量が大きい場合には、横転抑制制御を旋回当初から確実に開始することができる。一方、積載量(車両総重量)が小さい場合には制御閾値が大きい値に設定されるため、横加速度がある程度大きくなってからでも横転抑制制御を開始することができる。よって、横転抑制制御の開始をできるだけ遅延させることで、その開始までにすでに行われている制御(例えばESC制御)をより長く行うことができる。
そして、ブレーキ制御ECU36は、先にステップ102にて取得された横加速度がステップ114にて演算された制御閾値以上である場合には、ステップ116にて「YES」と判定しプログラムをステップ118に進めて、車両Mの横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う。一方、ブレーキ制御ECU36は、先にステップ102にて取得された横加速度がステップ114にて演算された制御閾値未満である場合には、ステップ116にて「NO」と判定しプログラムをステップ120に進めて、車両Mの横転抑制制御の実行を行わないで上述した横加速度と制御閾値との比較を繰り返す。
ブレーキ制御ECU36は、ステップ118において、横転抑制制御を行う。このとき、例えば、ステップ102で取得した実ヨーレートや舵角から、車両が右旋回中であるか左旋回中であるかが判定され、その旋回方向に応じた対象輪に対して制動力が発生させられるようにブレーキアクチュエータ35を制御する。横転抑制制御とは、少なくとも一輪以上の車輪に制動力を付与するように制御することである。例えば、外側の前後輪に制動力を付与するように制御する。また、ブレーキアクチュエータ35のポンプの能力が大きければ、四輪全てに制動力を付与するように制御する。
なお、ブレーキ制御ECU36は、「車重推定装置」であり、「車両の運転制御装置」である。
上述した説明から明らかなように、本実施形態によれば、ヨーレート偏差演算手段(ステップ106)が、舵角取得手段(ステップ102)により取得された車両の操舵輪の舵角、車両の車体速度、および車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタに基づいて舵角ヨーレートを演算する舵角ヨーレート演算手段(ステップ104)と、舵角ヨーレート演算手段(ステップ104)により演算された舵角ヨーレートと実ヨーレート取得手段(ステップ102)により取得された実ヨーレートとの偏差であるヨーレート偏差を演算する。積載量演算手段(ステップ112)が、予め定められたヨーレート偏差と車両の積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段(ステップ106)により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の積載量を演算する。
つまり、事前に実験などで取得し予め設定することができる「車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタ」および「ヨーレート偏差と車両の積載量との関係」と、センサなどを使用して実際に検出することができる車両の操舵輪の舵角および車両の車体速度とから、車両の旋回中において車両の積載量を演算することができる。すなわち、「車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタ」および「ヨーレート偏差と車両の積載量との関係」を予め設定するとともに、車両の操舵輪の舵角および車両の車体速度を取得することができれば、アクセルペダルの踏み込み状態にかかわらず(エンジントルクの有無にかかわらず)、車両の旋回中において車両の積載量を演算することができ、また、誤差を抑制して車両の積載量を演算することができる。
これにより、車両の旋回中においてアクセルペダルが踏み込まれていない場合(例えば車両旋回中であってアクセルペダルが踏み込まれていない場合、制動時である場合)であっても、車両の積載量ひいては車両総重量(=車両自体の重量+積載量)を常に適切かつ確実に演算する車重推定装置を提供することができる。
また、車両の積載量の演算を許可するか否かの判定を行う積載量演算許可判定手段(ステップ108,110)をさらに備え、積載量演算許可判定手段により車両の積載量の演算を許可する旨の判定がされた場合に、積載量演算手段(ステップ112)は車両の積載量の演算を行う。これにより、車両の積載量の演算が許可される状況下でのみ車両の積載量の演算を行うことができるため、演算結果の信頼性を向上させることができる。
また、横加速度取得手段(ステップ102)により取得された横加速度に基づき演算された横加速度ヨーレートと取得された実ヨーレートとの偏差の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段(ステップ108)は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、実ヨーレートと横加速度ヨーレートとの偏差が小さい場合すなわち両ヨーレートがほぼ一致している場合である、車両の車輪がほぼグリップしている場合に、車両の積載量の演算を行うことができる。よって、より信頼性の高い演算結果を得ることができる。
また、車両のステアリングの操舵速度の絶対値が所定値より小さい場合に、積載量演算許可判定手段(ステップ108)は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、急旋回などの場合には、車両の積載量の演算精度が悪化するが、このような場合を除外することで、演算精度を向上させることができる。
また、横加速度取得手段(ステップ102)により取得された横加速度が所定値より大きい場合に、積載量演算許可判定手段(ステップ108)は、車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行う。これにより、車両の直進中には、車両の積載量の演算精度が悪化するが、このような場合を除外することで、車両の旋回中において演算精度を向上させることができる。
また、上述した車重推定装置が車両の積載量を演算し(ステップ112)、制御閾値演算手段(ステップ114)が、予め定められた制御閾値と積載量との関係と、積載量演算手段(ステップ112)により演算された積載量とに基づいて、該積載量に応じた制御閾値を演算し、横転抑制制御手段(ステップ118)が、横加速度取得手段により取得された横加速度が制御閾値演算手段により演算された制御閾値以上である場合に、車両の横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う。これにより、車両の旋回中において適切かつ確実に演算された車両重量を使用して、適切に横転抑制制御を行うことができる。よって、車両のロールを抑制しつつトレース性を確保することができる。
なお、上述した実施形態においては、ヨーレート偏差ΔYrと積載量との関係(図4に示す)を使用して、ヨーレート偏差ΔYrから積載量を演算するようにしたが(ステップ112)、これに代えて、車両の前後重心位置(前後方向の重心位置)から積載量を演算するようにしてもよい。具体的には、まず、ヨーレート偏差ΔYrとスタビリティファクタ偏差との関係(図7に示す)と、演算されたヨーレート偏差ΔYrとから、スタビリティファクタ偏差を演算する。次に、スタビリティファクタ偏差と前後重心位置偏差との関係(図8に示す)と、演算されたスタビリティファクタ偏差とから、前後重心位置偏差を演算する。そして、前後重心位置偏差と積載量偏差との関係(図9に示す)と、演算された前後重心位置偏差とから、積載量偏差(すなわち積載量)を演算する。
上述したように、積載状態の車両の重心の前後位置変動によるスタビリティファクタの変動は、車両の旋回時に実際に発生するヨーレート(実ヨーレート)と無積載状態の舵角ヨーレートとの差で捉えることができる。換言すると、図7に示すように、スタビリティファクタ偏差とヨーレート偏差とはよい相関関係がある。さらに、上述したように、無積載状態と比べて積載量が増大すると前後重心位置も後方に変位するため、ヨーレート(実ヨーレート)は増大し、その結果ヨーレート偏差が増大する。換言すると、図8に示すように、前後重心位置偏差とスタビリティファクタ偏差とはよい相関関係がある。さらに、上述したように、トラックなど積載可能な車両については、積載量が大きいほど後輪の荷重が前輪よりも大きくなり後輪の横力が大きくなる。よって、積載量が大きいほど車両が曲がりやすくなる。換言すると、図9に示すように、積載量偏差と前後重心位置偏差とはよい相関関係がある。
これにより、ブレーキ制御ECU36(積載量演算手段)は、予め定められたヨーレート偏差と車両の前後重心位置偏差との関係と、ヨーレート偏差演算手段(ステップ106)により演算されたヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた車両の前後重心位置偏差を演算し、予め定められた車両の前後重心位置偏差と車両の積載量との関係と、演算された車両の前後重心位置偏差とに基づいて、該車両の前後重心位置偏差に応じた車両の積載量偏差を演算する。これにより、ヨーレート偏差とよい相関がある車両の前後重心位置偏差を演算し、車両の前後重心位置偏差とよい相関がある積載量偏差(すなわち積載量)を演算することができる。
11…エンジン、31…ブレーキペダル、32…真空式制動倍力装置、33…マスタシリンダ、34…リザーバタンク、35…ブレーキアクチュエータ、36…ブレーキ制御ECU、37b…ステアリングセンサ、38…ヨーレートセンサ、39…横加速度センサ、41,51…差圧制御弁、42…左後輪液圧制御部、43…右後輪液圧制御部、44…第1減圧部、52…左前輪液圧制御部、53…右前輪液圧制御部、54…第2減圧部、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…車輪、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速センサ、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ。

Claims (7)

  1. 車両(M)に発生するヨーレートである実ヨーレートを取得する実ヨーレート取得手段(ステップ102)と、
    前記車両に発生する横加速度を取得する横加速度取得手段(ステップ102)と、
    前記車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段(ステップ102)と、
    前記舵角取得手段により取得された前記車両の操舵輪の舵角、前記車両の車体速度、および前記車両の積載量が0であるときのスタビリティファクタに基づいて舵角ヨーレートを演算する舵角ヨーレート演算手段(ステップ104)と、
    前記舵角ヨーレート演算手段により演算された前記舵角ヨーレートと前記実ヨーレート取得手段により取得された前記実ヨーレートとの偏差であるヨーレート偏差を演算するヨーレート偏差演算手段(ステップ106)と、
    予め定められた前記ヨーレート偏差と前記車両の積載量との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算された前記ヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた前記車両の積載量を演算する積載量演算手段(ステップ112)と、
    を備えたことを特徴とする車重推定装置。
  2. 請求項1において、
    前記車両の積載量の演算を許可するか否かの判定を行う積載量演算許可判定手段(ステップ108)をさらに備え、
    前記積載量演算許可判定手段により前記車両の積載量の演算を許可する旨の判定がされた場合に、前記積載量演算手段は前記車両の積載量の演算を行うことを特徴とする車重推定装置。
  3. 請求項2において、前記横加速度取得手段により取得された前記横加速度に基づき演算された横加速度ヨーレートと取得された前記実ヨーレートとの偏差の絶対値が所定値より小さい場合に、前記積載量演算許可判定手段は、前記車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことを特徴とする車重推定装置。
  4. 請求項2において、前記車両のステアリングの操舵速度の絶対値が所定値より小さい場合に、前記積載量演算許可判定手段は、前記車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことを特徴とする車重推定装置。
  5. 請求項2において、前記横加速度取得手段により取得された前記横加速度が所定値より大きい場合に、前記積載量演算許可判定手段は、前記車両の積載量の演算を許可する旨の判定を行うことを特徴とする車重推定装置。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか一項において、前記積載量演算手段は、
    予め定められた前記ヨーレート偏差と前記車両の前後重心位置偏差との関係と、ヨーレート偏差演算手段により演算された前記ヨーレート偏差とに基づいて、該ヨーレート偏差に応じた前記車両の前後重心位置偏差を演算し、
    予め定められた車両の前後重心位置偏差と前記車両の積載量との関係と、演算された前記車両の前後重心位置偏差とに基づいて、該車両の前後重心位置偏差に応じた前記車両の積載量偏差を演算することを特徴とする車重推定装置。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の車重推定装置を備え、
    予め定められた制御閾値と前記積載量との関係と、前記積載量演算手段により演算された前記積載量とに基づいて、該積載量に応じた前記制御閾値を演算する制御閾値演算手段(ステップ114)と、
    前記横加速度取得手段により取得された前記横加速度が前記制御閾値演算手段により演算された前記制御閾値以上である場合に、前記車両の横転を抑制するように制御する横転抑制制御を行う横転抑制制御手段(ステップ118)と、
    を備えたことを特徴とする車両の運転制御装置。
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