JP2012049392A - 転位の出現深さを特定する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 半導体層の表面からエッチングする。そのときに、エッチピットの内部に平坦底面fa,fbが出現するまでエッチングするか、あるいは、半導体層2を貫通する転位に沿って形成されるエッチピットが半導体層2を貫通する時間以上に亘ってエッチングする。その後にエッチピットの内部の出現した平坦底面fa,fbの深さを特定する。その深さが転位の出現深さに等しいことから、転位の出現深さが特定できる。
【選択図】図1
Description
特許文献1に、表面にエッチピットが形成された半導体層を異方性エッチングして結晶基板を露出させる技術が開示されている。表面にエッチピットが形成された半導体層を異方性エッチングすると、露出した結晶基板の表面に、半導体層の表面に形成されたエッチピットの形状が転写される。露出した結晶基板の表面を再びエッチングすると、結晶基板内に存在している転位が結晶基板の表面に達している位置で新たなエッチピットが形成される。特許文献1の技術によると、露出した結晶基板の表面に、半導体層内の転位が半導体層の表面に達した位置を示すエッチピットと、結晶基板内の転位が結晶基板の表面に達した位置を示すエッチピットの両者が形成される。以下では、半導体層内の転位が半導体層の表面に達した位置を示すエッチピットを第1種類のエッチピットといい、結晶基板内の転位が結晶基板の表面に達した位置を示すエッチピットを第2種類のエッチピットという。
特許文献1の技術によって、第1種類のエッチピットと第2種類のエッチピットが対になって観察されれば、半導体層を貫通して結晶基板内に侵入している転位が存在することがわかる。第1種類のエッチピットが観察されて第2種類のエッチピットが観察されなければ、半導体層と結晶基板の界面から出現した転位が存在することがわかる。第2種類のエッチピットが観察されて第1種類のエッチピットが観察されなければ、結晶基板内だけを伸びている転位が存在することがわかる。
しかしながら、第1種類のエッチピットが観察されて第2種類のエッチピットが観察されなければ、半導体層と結晶基板との界面で出現した転位が存在すると判別してしまう。第1種類のエッチピットが観察されて第2種類のエッチピットが観察されない場合、実際には、半導体層と結晶基板との界面で転位が出現していることもあれば、半導体層の中間深さで転位が出現していることもある。従来の技術では両者を区別することができない。
この方法は、半導体層が結晶基板の表面に積層されていない場合にも有効であり、エッチピットが半導体層を貫通する以前にエッチングを終了する場合にも有用である。平坦底面が出現するまでエッチングすれば、その平坦底面の深さが転位の出現深さであると特定することができる。
本明細書に開示する技術では、エッチピットの底面に出現する平坦底面の深さに着目する。半導体層の表面において隣接するエッチピットの外形同士が重なりあっても、平坦底面の深さを特定することをさまたげない。エッチピットの底面に平坦底面が出現するまでエッチングを継続する方法の有用性と実用性は、上記知見が得られたことによって、初めて認められたものである。
炭化珪素の単結晶基板上に炭化珪素単結晶層を結晶成長させた場合には、とりわけ有用である。特許文献1の技術では、界面でエッチングストップすることが難しく、界面で出現した転位なのか、結晶基板に存在している転位が半導体層にまで連続して形成された転位なのかを正確に判別することが難しい。本明細書に開示されている技術によれば、確実に判別することができる。
結晶基板の表面に半導体層を結晶成長させた場合には、界面で出現した転位なのか、結晶基板中の転位が半導体層にまで連続した転位なのかの判別が可能となり、転位を減少させるための対策を的確に立案することが可能となる。
(特長1)半導体層をエッチングする時間を、出現深さを特定したい転位の種類に応じて設定する。
(特長2)エッチピットの内部に平坦底面が出現したか否かを、半導体層の表面の光学顕微鏡像から特定する。
図面を参照して、本実施例の転位出現深さ特定方法を説明する。図1は、炭化珪素の単結晶基板4上に、炭化珪素単結晶の半導体層2をエピタキシャル成長させた積層基板6の断面図を示している。図中a,b,cは、積層基板6に存在している転位を示しており、この場合はいずれも貫通らせん転位である場合を例示している。なお、図1は、模式図であり、厚さ方向を誇張して示している。縦横の寸法比は、実際のものと相違する。
(a1)に示す転位aは、結晶成長の途中で出現した転位を例示しており、半導体層2の表面から中間深さにまで伸びている。界面8には達していない。転位aの出現深さは、半導体層2内の中間深さである。
(b1)に示す転位bは、結晶成長の開始時に出現した転位を例示しており、半導体層2の表面から界面8にまで伸びている。結晶基板4内には、転位が存在しない。転位bの出現深さは、界面8の深さである。
(c1)に示す転位cは、結晶基板4内に存在していた転位が半導体層2内に延長された転位を示している。転位cの出現深さは、界面8よりも深く、結晶基板4内にある。
(a2)と(a3)を比較すると明らかに、エッチピットA3の深さはエッチピットA2の深さに等しい。転位aの出現深さまでエッチングが進行すると(その状態が(a2)に示されている)、それよりも深部には転位が存在しないので、それよりも深部にはエッチングが進行しない。その反面、エッチピットの側面ではエッチングが進行する。エッチピットA3,B3,C3の表面における径は同一である。
結果として、エッチピットA3の内部には、平坦底面faが出現する。エッチピットA3の深さ(平坦底面faの深さ)は、エッチピットA2の深さに等しく、エッチピットB3,C3の深さよりも浅い。平坦底面faの深さは、転位aの出現深さを示している。平坦底面faの深さを特定すれば(レーザ顕微鏡で観察できる。段差膜厚計で観察することもできる)、転位aの出現深さを特定することができる。
(b3)と(b4)を比較すると明らかに、エッチピットB3が界面8に達すると、それよりも深部の結晶基板4には転位が存在しないので、それよりも深部の結晶基板4内にまではエッチングが進行しない。その反面、エッチピットの側面ではエッチングが進行する。エッチピットB4,C4の表面における径は同一である。
結果として、エッチピットB4の内部には、平坦底面fbが出現する。エッチピットB4の深さ(平坦底面fbの深さ)は、界面8の深さに等しい。平坦底面fbの深さが界面8の深さに等しければ、そのエッチピットの位置にある転位は、界面8で出現した転位であると特定することができる。
(a2)と(a3)と(a4)を比較すると明らかに、転位aの出現深さまでエッチングが進行すると(その状態が(a2)に示されている)、それよりも深部には転位が存在しないので、それよりも深部にはエッチングが進行しない。エッチピットA3の平坦底面faの深さと、エッチピットA4の平坦底面faの深さは同じである。なお、エッチピットの側面ではエッチングが進行する。エッチピットA4,B4,C4の表面における径は同一である。
図2は、エッチピットA4,B4,C4の平面図を示している。エッチピット内に平坦底面があれば、観察することができた。
1)平坦底面が観察され、その深さが半導体層2の中間深さにあれば、その平坦底面内に半導体層2の結晶成長の途中で出現した転位があった。
2)平坦底面が観察され、その深さが界面8の深さにあれば、その平坦底面内に半導体層2の結晶成長開始時に出現した転位があった。
3)平坦底面が観察さなければ、そのエッチピット内に結晶基板4内の転位から延長してきた転位があった。
(a3)の工程でエッチングを終了しても有用な結果が得られる。すなわち、(a3)に例示する平坦底面faが観察されれば、それによって転位aの出現深さが特定される。半導体層内の中間深さで出現している転位の出現深さを特定する場合には、エッチピットが半導体層を貫通する時間以上に亘ってエッチングを継続する必要もなければ、半導体層が結晶基板上に結晶成長している必要もない。
(結晶基板4)結晶基板4には、厚さ350μmの炭化珪素単結晶基板を用いた。不純物濃度は、1×1019cm-3であった。
(半導体層2)結晶基板4の表面上に、13μmの炭化珪素単結晶層をエピタキシャル成長させた。不純物濃度は、5×1015cm-3であった。表面は、Si面であった。半導体層2内には、貫通らせん転位、貫通刃状転位、基底面内転位が存在していた。結晶欠陥の密度は、103〜104cm-2であった。
(エッチッグ剤)エッチング剤には、KOHを500℃に加熱して溶融させた溶融KOHを用いた。
(エッチング処理)溶融KOHを収容しているろつぼに、積層基板6を浸漬して積層基板6の表面からエッチングした。
図3は、エッチング時間を30分とした場合の半導体層2の表面の光学顕微鏡像から、エッチピットの輪郭をトレースした図を示しており、隣接するエッチピットが重なり合う現象が観察されるものの、エッチピット毎に、平坦底面が存在するか否かが判別可能であった。図中32は平坦底面であり、図中34は結晶基板4内に進入したエッチピットであった。
その結果から、転位の種類毎に、半導体層2の表面における開口径Wの成長速度と、深さDの成長速度が判明した。図4が、その結果を集約したものである。
1)貫通らせん転位に沿って進行するエッチピットの場合、表面開口径Wの成長速度は、1.8μm/分であった。エッチピットの最深部が半導体層2内に留まっている間の深さDの成長速度は0.7μm/分であり、エッチピットの最深部が結晶基板4内に進入した後の深さDの成長速度は0.5μm/分であった。なお、転位が存在しない深さでは、エッチピットが進行しない。転位が存在しない深さでは、深さDの成長速度はゼロとなる。
2)貫通刃状転位または基底面内転位に沿って進行するエッチピットの場合、表面開口径Wの成長速度は、1.0μm/分であった。エッチピットの深さDの成長速度は、0.2μm/分であった。なお、転位が存在しない深さでは、エッチピットが進行しない。転位が存在しない深さでは、深さDの成長速度はゼロとなる。
半導体層2の厚みは13μmであり、貫通らせん転位に沿って形成されるエッチピットの深さ方向への成長速度が0.7μm/分であることから、貫通らせん転位が界面8よりも深くまで伸びているか否かを判定するためには、20分以上エッチングすればよいことがわかった。
図6(1)は、図5のエッチピットで観察されたエッチング時間とエッチピットの深さ(平坦底面が観察された場合は平坦平面)の関係を示しており、図6(2)のWは、エッチング時間とエッチピットの表面における開口径Wの関係を示しており、図6(2)のBは、エッチング時間とエッチピットの平坦底面の径Bの関係を示している。
明らかに、エッチピットの深さ方向への進行は7μmの深さで停止、その後は、半導体層2の表面に平行な方向にのみエッチングが進行し、その結果、平坦底面が形成されたことを示している。このことは、そのエッチピットが形成された位置には、半導体層2の表面から7μmの深さで出現した貫通らせん転位が存在していたことを示す。
図8の(1)は、エッチング時間とエッチピットの深さ(図7の(5)以降は平坦底面の深さ)の関係を示しており、図8の(2)のWは、エッチング時間とエッチピットの表面における開口径Wの関係を示しており、図8の(2)のBは、エッチング時間とエッチピットの平坦底面の径Bの関係を示している。
明らかに、エッチピットの深さ方向への進行は13μmの深さで停止、その後は、半導体層2の表面に平行な方向にのみエッチングが進行し、その結果、平坦底面が形成されたことを示している。このことは、半導体層2の表面から13μmの深さ(界面8の深さに等しい)で出現した貫通らせん転位が存在していたことを示す。この場合は、結晶基板4には転位が存在せず、結晶成長の開始時点で出現した転位が存在していたことがわかる。
図10の丸印は、図9のエッチピットで観察されたエッチング時間とエッチピットの深さ(この場合には平坦底面が観察されない)の関係を示している。なお、図10には、図6の(1)と図8(1)の図も重ね表示されている。
明らかに、図9のエッチピットは、界面8を越えて深さ方向に進行する。ただし、図4に示すように、エッチピットの最深部が結晶基板4内に進入する以前では、深さDの成長速度が0.7μm/分であるものが、結晶基板4内に進入すると0.5μm/分の成長速度に減速する。エッチピットの最深部が界面8で停止せず、平坦底面が形成されないままに結晶基板4内に進入するエッチピットが形成される位置では、結晶基板4内の転位から半導体層2内にまで連続して伸びた転位が存在していることがわかる。
深さDの成長速度と開口Wの成長速度の比(エッチピットの側面の傾斜角を決定する)から、そのエッチピットは、貫通刃状転位または基底面内転位に沿って進行した転位であることがわかる。
また、平坦底面が観察され、その深さが7μmであることから、そのエッチピットが形成された位置には、半導体層2の表面から7μmの深さで出現した貫通刃状転位または基底面内転位が存在していたことがわかる。
(2)上記実施例では、KOHを500℃に加熱して溶融させた溶融KOHをエッチング剤に用いた。エッチング剤はそれに限定されない。Cl2ガスを用いたドライエッチングを採用することも可能であるし、NaOHのアルカリ溶液を用いたウエットエッチングを用いることも可能である。
(3)上記の実施例では、結晶構造と半導体層の表面がなす角度(オフ角)がゼロの場合を説明している。オフ角を考慮することによって、オフ角がゼロ以外の場合にも対応可能である。
4:結晶基板
6:積層基板
8:界面
a:半導体層2の中間深さで出現する転位
b:界面8で出現する転位
c:結晶基板4から半導体層2まで伸びている転位
A:転位aに沿って形成されるエッチピット
B:転位bに沿って形成されるエッチピット
C:転位cに沿って形成されるエッチピット
W:エッチピットの表面における開口部の径
D:エッチピットの深さ(平坦底面の深さ)
B:平坦底面の径
t:エッチング時間
Claims (3)
- 半導体層の表面からエッチピットの内部に平坦底面が出現するまでエッチングする工程と、
前記工程でエッチピットの内部の出現した平坦底面の深さを特定する工程と、
前記工程で特定された平坦底面の深さから前記半導体層に存在する転位の出現深さを特定する工程と、
を備えている転位の出現深さの特定方法。 - 結晶基板上に結晶成長した半導体層の表面からエッチングする工程であり、その半導体層を貫通する転位に沿って形成されるエッチピットがその半導体層を貫通する時間以上に亘ってエッチングする工程と、
前記工程でエッチピットの内部の出現した平坦底面の深さを特定する工程と、
前記工程で特定された平坦底面の深さから前記半導体層に存在する転位の出現深さを特定する工程と、
を備えている転位の出現深さの特定方法。 - 前記半導体層が炭化珪素単結晶層であり、
前記半導体層の表面がSi面であり、
溶融KOHを用いてエッチングすることを特徴とする請求項1または2に記載の転位の出現深さの特定方法。
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