JP2012046457A - 葛の根由来の抽出物を含む化粧品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】廃棄されていた葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、既存のカッコン抽出物よりも強い美白作用と抗酸化作用を示すとともに、葛澱粉精製済みの葛根抽出物中に6−ゲラニル−クメストロールが豊富に含有されていることを見出した。6−ゲラニル−クメストロールには強い美白作用、抗酸化作用、抗炎症作用が示唆され、葛澱粉精製済みの葛根抽出物を使うことで、美白作用や抗酸化作用、抗炎症作用に優れた新規の化粧品を提供することができる。
【選択図】なし
Description
−ゲラニル−クメストロールを比較的多量に含有することを明らかにした。
6−ゲラニル−クメストロールは、非特許文献1において示されるようにKim,Jong Minらにより2008年に葛の根より初めて単離された物質であるが、本物質の生理作用についてはKim,Jong Minらによる最終糖代謝物質の生成抑制作用以外、報告はない。
(項目1)
葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する化粧料。
(項目2)
葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する美白剤。
(項目3)
葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する抗酸化剤。
(項目4)
葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する抗炎症剤。
(項目5)
化粧料、美白剤、抗酸化剤、または、抗炎症剤の成分として用いる葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を得る方法であって、以下:
(a)葛根より澱粉を精製する工程、および
(b)工程(a)の精製によって得られた残渣について、有機溶媒を用いて抽出物を得る工程、
を包含する、方法。
(項目6)
6−ゲラニル−クメストロールを含有する化粧料。
(項目7)
6−ゲラニル−クメストロールを含有する美白剤。
(項目8)
6−ゲラニル−クメストロールを含有する抗酸化剤。
(項目9)
6−ゲラニル−クメストロールを含有する抗炎症剤。
(項目10)
化粧料、美白剤、抗酸化剤、または、抗炎症剤の成分として6−ゲラニル−クメストロールを含む抽出物を得る方法であって、以下:
(a)葛根より澱粉を精製する工程、および
(b)工程(a)の精製によって得られた残渣について、有機溶媒を用いて抽出物を得る工程、
を包含する、方法。
6−ゲラニル−クメストロールまたは6−ゲラニル−クメストロールを含む抽出物を化粧料に配合することで、美白作用および抗酸化作用に優れた化粧料を提供することができる。
葛澱粉精製後の葛根を乾燥させ、その生重量の15倍のエタノールに2日間、浸漬した。2日後、エタノール抽出液と残渣を、ろ紙を用いて分離した。得られたエタノール抽出液を減圧濃縮することでエタノールを完全に除き、葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を得た。同様に掘り出した葛の根をサイコロ状に切り取り乾燥させて得られるカッコンを、その生重量の15倍のエタノールに2日間、浸漬して得られる抽出液を濃縮することで、カッコン抽出物を得た。
各濃縮物の抗酸化作用を調べるため1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(以下DPPHと略記する。)を用い、以下の手順でラジカル消去活性を測定した。
(1)DPPHをエタノールに溶解し0.1mMに調整した。
(2)各サンプルの試験濃度が規定量になるようにエタノールで希釈した。
(3)(1)、(2)の溶液を1対1で混合し20分間、25℃、暗所で反応させた。
(4)517nmの吸光度を次式に代入して、DPPHラジカル消去率を算出した。
カッコ内の±の値は各サンプル3検体において試験した時の標準偏差の値を示している。また、それぞれの値は、各サンプル3検体において試験した時の平均値を示す。いずれの添加濃度においても葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、カッコン抽出物よりも強いDPPHラジカル消去作用を示した。しかも、本発明の葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、葛澱粉を精製過程に発生する葛根を利用するため、経済的にも優位な美白剤を提供することができる。
実施例1の濃縮物について美白作用を調べるため、以下の手順でチロシナーゼ阻害試験を行った。チロシナーゼは色素沈着の原因となるメラニン合成のキー酵素であり、チロシナーゼを抑制する物質は美白効果が期待できる。
(1)リン酸緩衝液(PH6.8)に、最終添加濃度としてチロシナーゼが10U/ml、L−チロシンが1mMになるように溶解し、試験物質はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、混合した。
(2)混合後、37℃で60分間インキュベートした。
(3)475nmの吸光度の値を次式に代入してチロシナーゼ阻害率を算出した。
チロシナーゼ阻害率=100×{(A−B)−(C−D)}/(A−B)
A:コントロール(試験物質無添加)の反応60分後の吸光度の値
B:コントロール(試験物質無添加)の反応前の吸光度の値
C:試験物質添加試料の反応60分後の吸光度の値
D:試験物質添加試料の反応前の吸光度の値。
カッコ内の±の値は各サンプル3検体において試験した時の標準偏差の値を示している。また、それぞれの値は、各サンプル3検体において試験した時の平均値を示す。いずれの添加濃度においても葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、カッコンエキス抽出物と比べても非常に強いチロシナーゼ阻害作用を示した。
食品用澱粉を抽出後の葛の根を影干しし、乾燥した葛澱粉精製済みの葛根4kgを得た。この葛根をメタノール中に2週間、浸漬した。ろ過することで得られた抽出液を減圧濃縮し、この濃縮物を水に溶解してから、ヘキサン、酢酸エチルを用いて順次、溶媒分画してから減圧下、濃縮することで、酢酸エチル溶出画分(12.2g)を得た。この酢酸エチル溶出画分から沈殿物を除き得られた濃縮物(5.5g)を、シリカゲル150gを使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより分離した。溶出溶媒には、0〜100%酢酸エチル/ヘキサン溶出溶媒を300mlずつ用い、10%おきに酢酸エチルの濃度を増やすステップワイズ法により溶出した。得られた画分の内、50%酢酸エチル/ヘキサン画分から沈殿物をろ紙を用いて取り除くことで以下の構造を有する。
化合物A (6−ゲラニル−クメストロール(38.9mg))を単離した。
−ダイゼインを、70%酢酸エチル/ヘキサン画分から同様に精製することで(化5)に示すダイゼインを単離した。7−O−メチル−ダイゼインおよびダイゼインは葛根の他、大豆にも含まれるイソフラボン化合物である。
(実施例5:スペクトルデータの測定)
化合物Aの質量分析(MS)、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)のスペクトルデータを以下に示す。
高分解能質量分析(MS)m/z 404.1630(C25H24O5,理論値404.1624)
赤外吸収スペクトル(IR): 3422,1726,1626,1262,1178cm−1
核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,500MHz,DMSO−D6):δ7.69(d,J8.5Hz,1H),7.65(s,1H),7.13(d,J2.0Hz,1H),6.93(s,1H),6.93(dd,J8.5 2.0Hz,1H),5.36(t,J7.0Hz,1H),5.13,(J6.0Hz,1H),3.34(d,J7.5Hz,2H),2.13(m,2H),2.07(m,2H),1.70(s,2H),1.66(s,3H),1.59(s,3H)
核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR,125.8MHz,DMSO−D6):δ159.4(C),158.9(C),157.6(C),156.9(C),155.9(C),152.8(C),136.1(C),130.7(C),126.4(C),123.9(CH),121.5(CH),120.8(CH),120.5(CH),114.6(C),113.9(CH),103.8(C),102.3(CH),101.9(C),98.5(CH),39.2(CH2),27.2(CH2),26.0(CH2),25.4(CH3),17.5(CH3),15.8(CH2)
これらのスペクトルデータから化合物Aの分子構造は、6−ゲラニル−クメストロールであると決定した。
実施例1により得られた葛澱粉を精製済みの葛根から得られる濃縮物とカッコンの濃縮物に含まれる6−ゲラニル−クメストロールの含有量を調べるためUPLCにより分析し、その含有量を比較することにした。UPLCの分析はBEH C18 column(2.1 mm id×50 mm)のカラムを使い、0.8ml/minの流速で、60%メタノール/水(0〜1分)および、60〜100%メタノール/水(1〜4分)、100%メタノール(4〜5分)の混合溶液を順次用いて分析した。試験溶液は、いずれもメタノールを用いて、10mg/mlに調整し2μlずつ投入した。分析中は245nmの紫外線スペクトル(UV)の吸収をモニターした。それぞれの濃縮物に含まれる6−ゲラニル−クメストロールの含有量は3.4分に現れるピークエリア面積を標準物質と比較する事で定量した。
6−ゲラニル−クメストロールの美白作用を調べるため、6−ゲラニル−クメストロールについてチロシナーゼ阻害試験を実施した。チロシナーゼ阻害試験は実施例3に示した試験方法により実施した。6−ゲラニル−クメストロールのチロシナーゼ阻害活性は美白剤として市販されているアルブチンのチロシナーゼ阻害活性と比較した。
カッコ内の±の値は各サンプル3検体において試験した時の標準偏差の値を示している。また、それぞれの値は、各サンプル3検体において試験した時の平均値を示す。いずれの添加濃度においても6−ゲラニル−クメストロールは、美白剤として広く利用されているアルブチンよりも強いチロシナーゼ阻害作用を示した。本研究により初めて、6−ゲラニル−クメストロールが既存のチロシナーゼ阻害剤であるアルブチンよりも強くチロシナーゼの活性を阻害することが明らかとなった。6−ゲラニル−クメストロールは肌の色素沈着の原因となるメラニン合成のキー酵素であるチロシナーゼの活性を強く抑制することができることから美白剤としても使用することができる。また、強いチロシナーゼ阻害作用を示す6−ゲラニル−クメストロールを高濃度で含む葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、美白剤としても有望である。
6−ゲラニル−クメストロールの抗酸化作用を調べるため、6−ゲラニル−クメストロールについてDPPHラジカル消去試験を実施した。DPPHラジカル消去試験は実施例2に示した試験方法により実施した。6−ゲラニル−クメストロールのDPPHラジカル消去活性を、葛澱粉精製済みの葛根抽出物から一緒に精製した7−O−メチル−ダイゼインおよびダイゼインと比較した。
本研究により初めて、6−ゲラニル−クメストロールが強いDPPHラジカル消去活性を示すことを明らかにした。葛澱粉精製済みの葛根に特異的に多く含まれる6−ゲラニル−クメストロールは、葛根全般に多く含まれる7−O−メチル−ダイゼインやダイゼインと比較しても強いDPPHラジカル消去活性を示すことから、6−ゲラニル−クメストロールを高濃度で含む葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、抗酸化剤としても有望である。
6−ゲラニル−クメストロールおよび7−O−メチル−ダイゼイン、ダイゼインについて、マウス耳を用いた炎症抑制試験を実施した。炎症抑制試験は以下の試験方法で実施した。
(1)マウス(CD1系)の片耳に、500nmolになるようにメタノール溶液として塗布した。
(2)30分後、マウスの両耳に起炎剤として12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)0.5μgをアセトン溶液として塗布した。
(3)7時間後、マウスの両耳から直径6〜7mmの円板を打ち抜き、その重量を次式に代入して、炎症抑制率を算出した。
本試験の結果、TPAによってマウス耳に引き起こされる炎症を6−ゲラニル−クメストロールは55%、7−O−メチル−ダイゼインは24%、ダイゼインは30%抑制した。本研究により初めて、6−ゲラニル−クメストロールが強い抗炎症作用を示すことを明らかにした。葛澱粉精製済みの葛根に特異的に多く含まれる6−ゲラニル−クメストロールは、葛根全般に多く含まれる7−メチル−ダイゼインやダイゼインと比較しても強い抗炎症作用を示すことから、6−ゲラニル−クメストロールを高濃度で含む葛澱粉精製済みの葛根抽出物は、抗炎症剤としても有望である。
Claims (10)
- 葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する化粧料。
- 葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する美白剤。
- 葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する抗酸化剤。
- 葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を含有する抗炎症剤。
- 化粧料、美白剤、抗酸化剤、または、抗炎症剤の成分として用いる葛澱粉を精製済みの葛根から得られる抽出物を得る方法であって、以下:
(a)葛根より澱粉を精製する工程、および
(b)工程(a)の精製によって得られた残渣について、有機溶媒を用いて抽出物を得る工程、
を包含する、方法。 - 6−ゲラニル−クメストロールを含有する化粧料。
- 6−ゲラニル−クメストロールを含有する美白剤。
- 6−ゲラニル−クメストロールを含有する抗酸化剤。
- 6−ゲラニル−クメストロールを含有する抗炎症剤。
- 化粧料、美白剤、抗酸化剤、または、抗炎症剤の成分として6−ゲラニル−クメストロールを含む抽出物を得る方法であって、以下:
(a)葛根より澱粉を精製する工程、および
(b)工程(a)の精製によって得られた残渣について、有機溶媒を用いて抽出物を得る工程、
を包含する、方法。
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