ところで、特許文献2、3に記載の燃料電池の構造体では、U字状のガス流路の「往路部」と「復路部」とが、支持基板の厚さ方向の同じ位置に形成されている。換言すれば、U字状のガス流路が、支持基板の主面に平行な平面内で形成されている。
これに対し、本発明者は、U字状のガス流路の「往路部」と「復路部」とを支持基板の厚さ方向において異なる位置に形成することにより、様々の新たな作用・効果を奏し得る多種多様な燃料電池の構造体を提供し得ることを見出した。
即ち、本発明に係る燃料電池の構造体は、ガス流路が一体焼成により内部に形成された、長手方向を有する平板状の多孔質の支持基板と、前記平板状の支持基板の主面に配置され、少なくとも内側電極、固体電解質、及び外側電極が積層されてなる1つ又は複数の発電素子部とを備える。この構造体は、複数の発電素子部が支持基板の主面上の異なる位置にそれぞれ配置される構成(所謂「横縞型」)を有していても、複数の発電素子部が支持基板の主面上の或る位置に積層される構成(所謂「縦縞型」)を有していてもよい。
また、本発明に係る燃料電池の構造体では、前記ガス流路の流入口及び流出口が前記支持基板の前記長手方向の一方側の端部に形成され、前記ガス流路が、前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延びる往路部と、前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へと延びる復路部と、前記往路部の長手方向の他方側の端部と前記復路部の長手方向の他方側の端部とを接続する中間部と、から構成されている。即ち、U字状のガス流路が形成されている。このガス流路は、燃料ガス用の流路であっても、酸素を含むガス用の流路であってもよい。
本発明に係る燃料電池の構造体の特徴は、前記復路部と前記往路部とが前記支持基板の厚さ方向において異なる位置に形成されたことにある。これによれば、以下に説明するように、多種多様な燃料電池の構造体を提供することができる。この結果、様々の新たな作用・効果を奏し得る。
具体的には、第1に、「前記平板状の支持基板の互いに平行な一対の主面のそれぞれにおける前記長手方向に沿って互いに離れて位置する複数の箇所に、前記発電素子部がそれぞれ配置され、隣り合う前記発電素子部の一方の内側電極と他方の外側電極とが電気的に接続される」場合、即ち、「支持基板の一対の主面の両側について「横縞型」の複数の発電素子部が配置される」場合について説明する。
この第1の場合、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の中央部において前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延び、前記ガス流路の前記中間部が、前記支持基板の厚さ方向の中央部から前記厚さ方向の一方側及び他方側へとそれぞれ延び、前記ガス流路の前記復路部が、前記厚さ方向の一方側及び他方側において前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へとそれぞれ延びるように、前記ガス流路が構成され得る。
第2に、「前記平板状の支持基板の互いに平行な第1、第2主面のうちの第1主面のみにおける前記長手方向に沿って互いに離れて位置する複数の箇所に、前記発電素子部がそれぞれ配置され、隣り合う前記発電素子部の一方の内側電極と他方の外側電極とが電気的に接続される」場合、即ち、「支持基板の第1、第2主面の第1主面のみについて「横縞型」の複数の発電素子部が配置される」場合について説明する。
この第2の場合、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第2主面に近い側において前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延び、前記ガス流路の前記中間部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第2主面に近い側から前記第1主面に近い側へと延び、前記ガス流路の前記復路部が、前記厚さ方向の前記第1主面に近い側において前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へと延びるように、前記ガス流路が構成され得る。
或いは、この場合、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第1主面に近い側において前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延び、前記ガス流路の前記中間部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第1主面に近い側から前記第2主面に近い側へと延び、前記ガス流路の前記復路部が、前記厚さ方向の前記第2主面に近い側において前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へと延びるように、前記ガス流路が構成され得る。以上、第1、第2の場合では、前記内側電極及び外側電極がそれぞれ、燃料極及び空気極であってもよいし、空気極及び燃料極であってもよい。
第3に、「前記平板状の支持基板の互いに平行な第1、第2主面のうちの第1主面には、前記発電素子部が配置され、前記第2主面には、外部と電気的に接続されるインターコネクタが配置される」場合、即ち、「支持基板の第1、第2主面の第1主面のみについて1つの発電素子部又は「縦縞型」の複数の発電素子部が配置される」場合について説明する。この第3の場合では、前記内側電極及び外側電極がそれぞれ、燃料極及び空気極である。ここで、前記インターコネクタ(燃料極側の端子電極)は、化学式La1−xAxCr1−y+zByO3(ただし、A:Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種類の元素、B:Co,Ni,Alから選択される少なくとも1種類の元素、xの範囲:0.05〜0.2、yの範囲:0.02〜0.22、zの範囲:0.02〜0.05)で表わされるランタンクロマイトを含んで構成されることが好適である。
この第3の場合、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第1主面に近い側において前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延び、前記ガス流路の前記中間部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第1主面に近い側から前記第2主面に近い側へと延び、前記ガス流路の前記復路部が、前記厚さ方向の前記第2主面に近い側において前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へと延びるように、前記ガス流路が構成され得る。以下、この構成による作用・効果について説明する。
この構成では、第1主面の近傍に配置された往路部を流れる燃料ガスは、第1主面に配置された発電素子部の燃料極での反応により燃料が消費され且つ水蒸気を発生しながら中間部へと進行する。即ち、往路部内での燃料ガスの濃度は、長手方向の一方側から他方側への位置の移動につれて徐々に減少していくと考えられる。従って、燃料ガスが中間部を介して復路部に進入する際には、燃料ガスは薄くなっている。加えて、第2主面側には発電素子部が配置されていないので、第2主面の近傍に配置された復路部を流れる燃料ガスは、発電素子部での反応により燃料を消費されることなく流出口へと進行する。以上より、第2主面に配置されたインターコネクタの内側面は、薄い且つ均一な燃料ガスに曝される。
他方、一般に、インターコネクタ(燃料極側の端子電極)の材料としては、ランタンクロマイトが採用される。これは、燃料極側の端子電極の内側面が還元雰囲気に曝され且つ外側面が酸化雰囲気に曝されることに基づく。酸化・還元の両雰囲気で安定な導電性セラミックスとしては、現状では、ランタンクロマイトが優れている。ランタンクロマイトは、強い還元雰囲気に曝されると膨張する性質を有する。従って、ランタンクロマイトから構成される板状物体の一方の面を強い還元雰囲気に曝し、他方の面を酸化雰囲気に曝すと、両面間の膨張差に起因してその物体に反りが発生する。この点、上記構成によれば、インターコネクタの内側面が、弱い還元雰囲気に曝される。従って、インターコネクタが反り難い。
加えて、インターコネクタの内側面が、均一な還元雰囲気に曝される。従って、インターコネクタの内部やインターコネクタと接合する他の材料との界面等において前記膨張に起因して発生し得る応力の分布が抑制されて、前記応力の分布に起因するインターコネクタの破壊や剥離を抑制することができる。なお、上述したランタンクロマイトの膨張については、例えば、Electrochemistry_68, No.2 (2000)_p526-530等に詳細に記載されている。
また、上記第3の場合、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第2主面に近い側において前記流入口から前記支持基板の長手方向の他方側へと延び、前記ガス流路の前記中間部が、前記支持基板の厚さ方向の前記第2主面に近い側から前記第1主面に近い側へと延び、前記ガス流路の前記復路部が、前記厚さ方向の前記第1主面に近い側において前記支持基板の長手方向の他方側から前記流出口へと延びるように、前記ガス流路が構成され得る。
上述した種々の燃料電池の構造体において、前記ガス流路の前記往路部が、前記支持基板の厚さ方向の「前記発電素子部が配置される前記支持基板の主面」に近い側に配置されない場合、前記ガス流路の前記往路部の内壁が、前記支持基板を構成する多孔質材料より気孔率が小さい材料で構成され得る。前記「気孔率が小さい材料」の膜は、例えば、コーティング等により形成され得る。以下、この構成による作用・効果について説明する。
支持基板は多孔質材料で構成されている。従って、往路部を流れるガスの一部は、中間部まで到達することなく、支持基板を構成する多孔質材料内の多数の気孔を通って復路部にショートカットする。このようにショートカットするガスの割合は、多孔質材料の気孔率が大きい場合、流入口から流入するガスの圧力が高い場合等に大きくなり易い。ショートカットするガスの割合が大きくなると、中間部まで到達するガスが少なくなり、発電素子部において発電に寄与できる領域が狭くなる。このことは、燃料電池の発電出力の低下に繋がる。従って、ショートカットするガスの割合が大きいことが問題となる場合、係るショートカットを抑制する対策を施す必要がある。
この構成は、係る知見に基づく。この構成によれば、往路部を流れるガスのショートカットが抑制される。従って、ショートカットするガスの割合が減少して、中間部まで到達するガスの割合が増大する。この結果、ガスのショートカットに起因する燃料電池の発電出力の低下を抑制することができる。
上記のように、前記ガス流路の前記往路部の内壁が前記「気孔率が小さい材料」で構成される場合、前記「気孔率が小さい材料」は、燃料ガスの改質反応を促す触媒成分を含んでいてもよい。燃料ガスの改質反応(例えば、都市ガスから水素分子を生成する反応)は吸熱反応である。従って、この構成によれば、ガス流路の流入口から「改質前のガス」(例えば、都市ガス)を供給することにより、往路部を流れるガスに改質反応(=吸熱反応)が発生する。
この結果、往路部内にて、発電素子部にて使用され得る「改質後のガス」(例えば、水素分子)が得られる。「改質後のガス」は、発電素子部での発電反応に供される。この発電反応は、発電素子部の内部抵抗と熱力学的なエントロピー項に起因する発熱反応である。この発熱反応に起因して発電素子部の温度が上昇する。一方、往路部では改質反応に伴う吸熱反応が発生している。この吸熱反応に起因して往路部の温度が低下する。即ち、発電素子部と往路部との間で温度差が発生する。係る温度差により、発電素子部の熱の一部が往路部に移動する。このため、熱的なバランスを保ちやすい構造が得られる。即ち、作動中の燃料電池の構造体全体の定常的な温度を適切な範囲に維持することができる。
また、改質反応を促す触媒成分の塗布量(膜厚等)を往路部において長手方向に沿って連続的又は断続的に変更することにより、上述した発熱と吸熱とのバランスを任意に調整することが可能である。例えば、往路部の入口(流入口)付近に改質反応を促す触媒成分を多く塗付することにより、往路部の入口(流入口)付近、即ち、支持基板の保持部分の温度を下げることができる。この結果、支持基板と、支持基板の保持に使用されるセラミックス材料、ガラス材料、金属材料等との間の接合部分に作用する熱膨張差に起因する熱応力を低減することができる。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCの構造体は、長手方向を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。なお、支持基板10の「主面」とは、支持基板の外表面を構成する複数の平面のうちで、他の平面よりも面積が大きい平面を指す。
このSOFCの構造体の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが5〜50cmで長手方向に直交する幅方向の長さが1〜10cmの長方形である。このSOFCの構造体の全体の厚さは、1〜10mmである。このSOFCの構造体の全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このSOFCの構造体の、図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2、並びに、図1に示す3A−3A線、3B−3B線、3C−3C線に対応する断面図である図3を参照しながら、このSOFCの構造体の詳細について説明する。
図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。図3は、支持基板10の幅方向における「支持基板の厚さ方向に平行な平面内を通る燃料ガス流路11」を含む位置(3か所)において、支持基板10を厚さ方向に平行な面で切断して得られる断面を示す。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。支持基板10は、燃料ガス流路11を含んでその全体が一体焼成されてなる。図3に示すように、支持基板10の内部には、支持基板10の幅方向における複数個所(本例では、3か所)において、「支持基板10の厚さ方向に平行な平面内を通る燃料ガス流路11」がそれぞれ形成されている。各燃料ガス流路11の流入口11in及び流出口11outは共に、支持基板10の長手方向の一方側の端部(端面)に形成されている。
各燃料ガス流路11は、流入口11inから長手方向の他方側へと延びる往路部11aと、支持基板10の長手方向の他方側から流出口11outへと延びる一対の復路部11b,11bと、往路部11aの長手方向の他方側の端部と一対の復路部11b,11bの長手方向の他方側のそれぞれの端部とを接続する一対の中間部11c,11cと、から構成されている。
より具体的には、往路部11aは、支持基板10の厚さ方向の中央部において流入口11inから支持基板10の長手方向に沿って長手方向の他方側へと直線的に延びている。一対の中間部11c,11cは、支持基板10の厚さ方向の中央部から厚さ方向の一方側及び他方側へとそれぞれ直線的に延びている。一対の復路部11b,11bは、支持基板10の厚さ方向の一方側及び他方側において支持基板10の長手方向の他方側から支持基板10の長手方向に沿って流出口11outへと直線的にそれぞれ延びている。即ち、復路部11aと往路部11bとは支持基板10の厚さ方向において異なる位置に形成されている。
各燃料ガス流路11内の燃料ガスは、往路部11aにて流入口11inから長手方向の他方側に向けて厚さ方向の中央部を進み、その後、一対の中間部11c,11cにて厚さ方向の一方側及び他方側へとそれぞれ進み、その後、一対の復路部11b,11bにて長手方向の他方側から流出口11outに向けてそれぞれ進む。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板10の厚さは、1〜10mmである。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図1、図2に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)には、複数(本例では、4つ)の同形の直方体状の燃料極20が長手方向において所定の間隔をおいてそれぞれ、前記上面(平面)から突出するように設けられている。燃料極20は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極20は、後述する固体電解質膜40に接する燃料極活性部22と、燃料極活性部22以外の残りの部分である燃料極集電部21とから構成される。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
各燃料極20(より具体的には、各燃料極集電部21)の上面の所定箇所には、薄板状のインターコネクタ30が形成されている。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。インターコネクタ30を上方からみた形状は、燃料極20が存在する範囲に亘って幅方向に延びる長方形である。インターコネクタ30は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
複数の燃料極20が突出した状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成された部分を除いた全面、並びに、支持基板10の長手方向の他方側の端面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、複数の燃料極20が突出した状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面、並びに、支持基板10の長手方向の他方側の端面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、「電気的接続部」に対応する。
以上、説明した「横縞型」のSOFCの構造体を作動させる際には、支持基板10の長手方向の一方側の端部(即ち、流入口11in及び流出口11outが露呈している端部)に、流入口11inに燃料ガスを供給するためのガス供給管(図示せず)、及び、流出口11outから排気される燃料ガスを回収するためのガス排気管(図示せず)が接続される。ガス供給管とガス排気管とは一体であってもよいし、別体であってもよい。そして、図4に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e−
(於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図5に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図4に示すように、このSOFCの構造体全体から(具体的には、図4において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの構造体の製造方法の一例について図6〜図14を参照しながら簡単に説明する。図6〜図14において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、全体の斜視図である図6、並びに、図6に示す7A−7A線、7B−7B線、7C−7C線に対応する断面図である図7に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図6に示す8−8線に対応する部分断面を表す図8〜図14を参照しながら説明を続ける。
図8に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図9に示すように、支持基板の成形体10gの上下面における所定の複数箇所のそれぞれに、燃料極の成形体(21g+22g)が積層・形成される。各燃料極の成形体(21g+22g)は、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリー用いて、印刷法等を利用して積層・形成される。
次に、図10に示すように、各燃料極の成形体21gの外側面の所定箇所に、インターコネクタの成形膜30gが形成される。各インターコネクタの成形膜30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図11に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)が積層・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成された部分を除いた全面、並びに、支持基板の成形体10gの他方側の端面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図12に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図13に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図14に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体が得られる。以上、図1に示したSOFCの構造体の製造方法の一例について説明した。
(作用・効果)
以上、説明したように、上記本発明の実施形態に係る「横縞型」のSOFCの構造体では、複数(本例では、3つ)の燃料ガス流路11が支持基板10内に形成されている。各燃料ガス流路11の流入口11in及び流出口11outは共に、支持基板10の長手方向の一方側の端部(端面)に形成されている。各燃料ガス流路11は、往路部11aと、一対の復路部11b,11bと、一対の中間部11c,11cとから構成されている。
往路部11aは、支持基板10の厚さ方向の中央部において流入口11inから支持基板10の長手方向に沿って長手方向の他方側へと直線的に延び、一対の復路部11b,11bは、支持基板10の厚さ方向の一方側及び他方側において支持基板10の長手方向の他方側から支持基板10の長手方向に沿って流出口11outへと直線的にそれぞれ延び、一対の中間部11c,11cは、往路部11aの長手方向の他方側の端部と一対の復路部11b,11bの長手方向の他方側のそれぞれの端部とを接続するために、支持基板10の厚さ方向の中央部から厚さ方向の一方側及び他方側へとそれぞれ延びている。即ち、復路部11aと往路部11bとが、支持基板10の厚さ方向において異なる位置に形成されている。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、この支持基板10の内部の全体が多孔質材料で構成されているが、図15に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aの内壁が、支持基板10を構成する多孔質材料より気孔率が小さい膜12で覆われていてもよい。膜12は、例えば、コーティング等により形成され得る。この膜12を設けることにより、以下の作用・効果が発揮され得る。
支持基板10は多孔質材料で構成されているので、往路部11aを流れるガスの一部は、中間部11c,11cまで到達することなく、前記多孔質材料内の多数の気孔を通って復路部11b,11bにショートカットする。ショートカットするガスの割合が大きくなると、中間部11c,11cまで到達するガスが少なくなり、発電素子部Aにおいて発電に寄与できる領域が狭くなる。このことは、燃料電池の発電出力の低下に繋がる。従って、ショートカットするガスの割合が大きいことが問題となる場合、係るショートカットを抑制する対策を施す必要がある。
図15に示す構成は、この問題に対処するものである。この構成によれば、往路部11aを流れるガスのショートカットが抑制される。従って、ショートカットするガスの割合が減少して、中間部11c,11cまで到達するガスの割合が増大する。この結果、ガスのショートカットに起因する燃料電池の発電出力の低下を抑制することができる。
ここで、図15に示す膜12は、燃料ガスの改質反応を促す触媒成分を含んでいてもよい。燃料ガスの改質反応(例えば、都市ガスから水素分子を生成する反応)は吸熱反応である。従って、この構成によれば、燃料ガス流路11の流入口11inから「改質前のガス」(例えば、都市ガス)を供給することにより、往路部11aを流れるガスに改質反応(=吸熱反応)が発生する。
この結果、往路部11a内にて、発電素子部Aにて使用され得る「改質後のガス」(例えば、水素分子)が得られる。ここで、「改質後のガス」は、発電素子部Aでの発電反応に供される。この発電反応は発熱反応であるので、この発熱反応に起因して発電素子部Aの温度が上昇する。一方、往路部11aでは改質反応に伴う吸熱反応が発生するので、この吸熱反応に起因して往路部11aの温度が低下する。即ち、発電素子部Aと往路部11aとの間で温度差が発生する。係る温度差により、発電素子部Aの熱の一部が往路部11aに移動する。このため、熱的なバランスを保ちやすい構造が得られる。即ち、作動中の燃料電池の構造体全体の定常的な温度を適切な範囲に維持することができる。
なお、改質反応を促す触媒成分の塗布量(膜厚等)を往路部11aにおいて長手方向に沿って連続的又は断続的に変更することにより、上述した発熱と吸熱とのバランスを任意に調整できる。例えば、往路部11aの入口(流入口11in)付近に改質反応を促す触媒成分を多く塗付することにより、往路部11aの入口(流入口11in)付近、即ち、支持基板10の保持部分の温度を下げることができる。この結果、支持基板10と、支持基板10の保持に使用されるセラミックス材料、ガラス材料、金属材料等からなるマニフォールド等との間の接合部分に作用する熱膨張差に起因する熱応力を低減することができる。
また、上記実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに「横縞型」の複数の発電素子部Aが設けられているが、支持基板10の片側面のみに「横縞型」の複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。以下、支持基板の一対の主面のうち、発電素子部が設けられている主面を「素子形成主面」と呼び、発電素子部が設けられていない主面を「素子非形成主面」と呼ぶ。なお、「素子非形成主面」の全面は、固体電解質膜40で覆われている。
このように支持基板10の片側面のみに「横縞型」の複数の発電素子部Aが設けられている場合、図16に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aが、支持基板10の厚さ方向の中央よりも「素子非形成主面」に近い側において流入口11inから支持基板10の長手方向の他方側へと延び、燃料ガス流路11の中間部11cが、支持基板10の厚さ方向の「素子非形成主面」に近い側から「素子形成主面」に近い側へと延び、燃料ガス流路11の復路部11bが、厚さ方向の中央よりも「素子形成主面」に近い側において支持基板10の長手方向の他方側から流出口11outへと延びるように、燃料ガス流路11が構成され得る。
図16に示す構成の場合、図17に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aの内壁が、前記膜12で覆われていてもよい。これによれば、上述した「往路部11a内のガスのショートカットの抑制効果」が発揮され得、ガスのショートカットに起因する燃料電池の発電出力の低下を抑制することができる。また、膜12が燃料ガスの改質反応を促す触媒成分を含んでいる場合、上述した発熱と吸熱とのバランスを任意に調整することにより、作動中の燃料電池の構造体全体の定常的な温度を適切な範囲に維持することができる。
また、支持基板10の片側面のみに「横縞型」の複数の発電素子部Aが設けられている場合、図18に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aが、支持基板10の厚さ方向の中央よりも「素子形成主面」に近い側において流入口11inから支持基板10の長手方向の他方側へと延び、燃料ガス流路11の中間部11cが、支持基板10の厚さ方向の「素子形成主面」に近い側から「素子非形成主面」に近い側へと延び、燃料ガス流路11の復路部11bが、厚さ方向の中央よりも「素子非形成主面」に近い側において支持基板10の長手方向の他方側から流出口11outへと延びるように、燃料ガス流路11が構成され得る。
以上、上記実施形態(図3を参照)、並びに、上述した図15〜図18に示す構成では、支持基板10の両側面又は片側面に「横縞型」の複数の発電素子部Aが設けられているが、図19に示すように、支持基板10の一方の主面(「素子形成主面」)に1つの発電素子部Aが設けられ、他方の主面(「素子非形成主面」)に緻密材料からなる薄板状のインターコネクタ80(燃料極側の端子電極)が設けられていてもよい。図19に示す構成において、発電素子部Aが厚さ方向に複数積層されていてもよい。この場合、「縦縞型」の複数の発電素子部が構成される。
図19に示す構成では、支持基板10が上述した燃料極集電部21を兼ねている。支持基板10の「素子形成主面」と固体電解質膜40との間に、燃料極活性部22が介装されている。「素子形成主面」上の固体電解質膜40の上には、空気極60が積層されている。ここで、燃料極活性部22と、固体電解質膜40と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する。支持基板10の「素子非形成主面」の全面が、緻密な材料からなるインターコネクタ80より覆われている。
インターコネクタ80は、化学式La1−xAxCr1−y+zByO3(ただし、A:Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種類の元素、B:Co,Ni,Alから選択される少なくとも1種類の元素、xの範囲:0.05〜0.2、yの範囲:0.02〜0.22、zの範囲:0.02〜0.05)で表わされるランタンクロマイトを含んで構成される。これは、燃料極側の端子電極の内側面が還元雰囲気に曝され且つ外側面が酸化雰囲気に曝されることに基づく。酸化・還元の両雰囲気で安定な導電性セラミックスとしては、現状では、ランタンクロマイトが優れている。
図19に示す構成では、燃料ガス流路11の往路部11aが、支持基板10の厚さ方向の中央よりも「素子形成主面」に近い側において流入口11inから支持基板10の長手方向の他方側へと延び、燃料ガス流路11の中間部11cが、支持基板10の厚さ方向の「素子形成主面」に近い側から「素子非形成主面」に近い側へと延び、燃料ガス流路11の復路部11bが、厚さ方向の中央よりも「素子非形成主面」に近い側において支持基板10の長手方向の他方側から流出口11outへと延びるように、燃料ガス流路11が構成されている。この構成により、以下の作用・効果が発揮される。
図19に示す構成では、「素子形成主面」の近傍に往路部11aが形成されている。従って、往路部11aを流れる燃料ガスは、「素子形成主面」に配置された発電素子部Aの燃料極活性部22での反応により燃料を消費されながら中間部11cへと進行する。即ち、往路部11a内での燃料ガスの濃度は、長手方向の一方側から他方側への位置の移動につれて徐々に減少していく。従って、燃料ガスが中間部11cを介して復路部11bに進入する際には、燃料ガスは薄くなっている。
加えて、復路部11bは「素子非形成主面」の近傍に形成されている。従って、復路部11bを流れる燃料ガスは、発電素子部での反応により燃料を消費されることなく流出口11outへと進行する。以上のことから、「素子非形成主面」に配置されたインターコネクタ80の内側面は、薄い且つ均一な燃料ガスに曝される。
他方、上述したように、インターコネクタ80の材料としては、ランタンクロマイトが採用される。ランタンクロマイトは、強い還元雰囲気に曝されると膨張する性質を有する。従って、ランタンクロマイトから構成される板状物体の一方の面を強い還元雰囲気に曝し、他方の面を酸化雰囲気に曝すと、両面間の膨張差に起因してその物体に反りが発生する。この点につき、図19に示す構成によれば、インターコネクタ80の内側面が、弱い還元雰囲気に曝される。従って、インターコネクタ80が反り難い。
加えて、インターコネクタ80の内側面が、均一な還元雰囲気に曝される。従って、インターコネクタ80の内部やインターコネクタ80と接合する支持基板10との界面等において前記膨張に起因して発生し得る応力の分布が抑制され得る。従って、前記応力の分布に起因するインターコネクタ80の破壊や剥離を抑制することができる。
また、上述した図19に示すように、支持基板10の片側面(「素子形成主面」)のみに1つの発電素子部A(又は「縦縞型」の複数の発電素子部A)が設けられ、支持基板10の他方の面(「素子非形成主面」)にインターコネクタ80が設けられている場合、図20に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aが、支持基板10の厚さ方向の中央よりも「素子非形成主面」に近い側において流入口11inから支持基板10の長手方向の他方側へと延び、燃料ガス流路11の中間部11cが、支持基板10の厚さ方向の「素子非形成主面」に近い側から「素子形成主面」に近い側へと延び、燃料ガス流路11の復路部11bが、厚さ方向の中央よりも「素子形成主面」に近い側において支持基板10の長手方向の他方側から流出口11outへと延びるように、燃料ガス流路11が構成されてもよい。
図20に示す構成の場合、図21に示すように、燃料ガス流路11の往路部11aの内壁が、前記膜12で覆われていてもよい。これによれば、上述した「往路部11a内のガスのショートカットの抑制効果」が発揮され得、ガスのショートカットに起因する燃料電池の発電出力の低下を抑制することができる。また、膜12が燃料ガスの改質反応を促す触媒成分を含んでいる場合、上述した発熱と吸熱とのバランスを任意に調整することにより、作動中の燃料電池の構造体全体の定常的な温度を適切な範囲に維持することができる。
また、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。加えて、上記実施形態においては、「内側電極」及び「外側電極」がそれぞれ燃料極及び空気極となっているが、逆であってもよい。
以下、支持基板10の長手方向の一方側の端部(即ち、流入口11in及び流出口11outが露呈している端部)の形状について付言する。上記実施形態では、図1、図3等に示すように、(段差がない)1つの平面によって構成される端面上に、流入口11inと一対の流出口11outとが支持基板10の厚さ方向に沿って配置されている。この構成では、支持基板10の全厚を小さくするためには、隣り合う流入口11inと流出口11outとを1つの平面上に近接して配置する必要がある。1つの平面上に隣り合う流入口11inと流出口11outとが近接して配置されると、流入口11inから流入するガスと流出口11outから流出する排ガスとの混合を防止するためのガスシールを施すための処理が困難になる。
係る問題に対処するためには、図22に示す端部形状を有する支持基板10の長手方向の一方側の端部に、図23に示すマニフォールド90を取り付けることが好ましい。このマニフォールド90は、流入口11inに燃料ガスを供給するためのガス供給管の機能と、流出口11outから排気される燃料ガスを回収するためのガス排気管の機能とを兼ね備えている。図24は、図22に示す支持基板10の長手方向の一方側の端部に図23に示したマニフォールド90を取り付けた状態における、図1における3A−3A線、3B−3B線、3C−3C線に対応する部分断面図である。
図22に示す支持基板10の長手方向の一方側の端面には、上下一対の流出口11out,11outに干渉しない範囲内の厚さ方向中央部において、幅方向に延びて両端が貫通する長溝13が形成されている。長溝13の断面は、長方形状を呈している。長溝13の底面(平面)には、流入口11inが形成されている。即ち、流入口11inは、上下一対の流出口11out,11outが形成された平面より長手方向の内側に位置する平面に形成されている。
図23に示すマニフォールド90の取り付け面91には、支持基板10の端部全体を挿入するための凹部92と、外部から導入された燃料ガスを流入口11inへと供給するためのガス供給路93とが形成されている。凹部92とガス供給路93とは、凹部92の側面の一部に(1か所)形成された連通路94を介して連通している。
また、マニフォールド90には、流出口11outから排出された排ガスを回収するためのガス排気路95が形成されている。凹部92とガス排気路95とは、凹部92の底面(平面)に形成された複数の連通路96を介して連通している。凹部92の底面において、複数の連通路96は、支持基板10の端部全体をマニフォールド90の凹部92に挿入した際に、各連通路96が対応する流出口11outと同軸的に連通する位置にそれぞれ配置されている。
図24に示すように、支持基板10の端部全体は、前記端部における上下一対の流出口11out,11outが形成された平面がマニフォールド90の凹部92の底面(平面)に当接するように、マニフォールド90の凹部92に挿入される。この結果、各流出口11outが、対応する連通路96と同軸的にそれぞれ接続されることにより、ガス排気路95と連通する。他方、溝13と凹部92の底面とで空間S1が区画・形成される。空間S1は、溝13の底面に形成された流入口11inと連通するとともに、上述した連通路94と連通する。この結果、流入口11inが、ガス供給路93と連通する。なお、マニフォールド90が支持基板10に取り付けられた状態では、実際には、ガス供給路93と外部とを区画するため、図23に示すような蓋部材97が取り付けられる。
ここで、支持基板10の端部における上下一対の流出口11out,11outが形成された平面と、マニフォールド90の凹部92の底面(平面)とが当接する部位(当接面)において、ガスシール機能が確実に達成され得る。この結果、流入口11inから流入するガスと流出口11outから流出する排ガスとの混合が防止され得る。この構成によれば、支持基板10の全厚が小さくて、隣り合う流入口11inと流出口11outとの厚さ方向の位置が近接していても、上述したガスシール機能が容易に達成され得る。
以上、図22〜図24に示す接続構造は、「支持基板の長手方向の一方側の端部であって前記支持基板の内部に形成されたガス流路の流入口及び流出口が形成された端部と、前記流入口に燃料ガスを供給する機能と前記流出口から排気される燃料ガスを回収する機能とを備えるとともに前記端部に取り付けられたマニフォールドと、の接続構造であって、
前記支持基板の端部において、前記流入口は、前記流出口が形成された平面より長手方向の内側に位置する平面に形成され、
前記マニフォールドの取り付け面には、前記支持基板の端部を挿入するための凹部が形成されていて、
前記マニフォールドには、外部から導入された燃料ガスを前記流入口へと供給するためのガス供給路と、前記流出口から排出された排ガスを回収するためのガス排気路とが形成されていて、
前記凹部と前記ガス供給路とは、前記凹部の側面に形成された第1連通路を介して連通し、前記凹部と前記ガス排気路とは、前記凹部の底面である平面に形成された第2連通路を介して連通していて、
前記支持基板の端部が前記マニフォールドの凹部に挿入されることにより前記端部と前記マニフォールドとが接続された状態において、前記支持基板の端部における前記流出口が形成された平面が前記マニフォールドの凹部の底面である平面に当接し、前記第2連通路が前記流出口と連通し、前記支持基板の端部と前記凹部とで区画・形成された空間が、前記流入口、及び前記第1連通路と連通している、接続構造。」と表される。
図25に示す端部形状を有する支持基板10の長手方向の一方側の端部に、図26に示すマニフォールド90を取り付けても同様の作用・効果が得られる。即ち、図25に示す支持基板10の長手方向の一方側の端面には、上下一対の流出口11out,11outに干渉しない範囲内の厚さ方向中央部において、幅方向に両端まで延びる突出部14が形成されている。突出部14の断面は、長方形状を呈している。突出部14の頂面(平面)には、流入口11inが形成されている。即ち、流入口11inは、上下一対の流出口11out,11outが形成された平面より長手方向の外側に位置する平面に形成されている。
図26に示すマニフォールド90の取り付け面91には、支持基板10の端部全体を挿入するための凹部92と、流出口11outから排出された排ガスを回収するためのガス排気路95とが形成されている。凹部92とガス排気路95とは、凹部92の側面の一部に(2か所)形成された連通路96を介して連通している。
また、マニフォールド90には、外部から導入された燃料ガスを流入口11inへと供給するためのガス供給路93とが形成されている。凹部92とガス供給路93とは、凹部92の底面(平面)に形成された複数の連通路94を介して連通している。凹部92の底面において、複数の連通路94は、支持基板10の端部全体をマニフォールド90の凹部92に挿入した際に、各連通路94が対応する流入口11inと同軸的に連通する位置にそれぞれ配置されている。
図27に示すように、支持基板10の端部全体は、前記端部における流入口11inが形成された平面がマニフォールド90の凹部92の底面(平面)に当接するように、マニフォールド90の凹部92に挿入される。この結果、各流入口11inが、対応する連通路94と同軸的にそれぞれ接続されることにより、ガス供給路93と連通する。他方、突出部14を含む支持基板10の端面と凹部92とで空間S2,S2が区画・形成される。空間S2,S2は、上下一対の流出口11out,11outとそれぞれ連通するとともに、上述した連通路96と連通する。この結果、上下一対の流出口11out,11outが、ガス排気路95と連通する。なお、マニフォールド90が支持基板10に取り付けられた状態では、実際には、ガス排気路95と外部とを区画するため、図26に示すような蓋部材97が取り付けられる。
ここで、支持基板10の端部における流入口11inが形成された平面と、マニフォールド90の凹部92の底面(平面)とが当接する部位(当接面)において、ガスシール機能が確実に達成され得る。この結果、流入口11inから流入するガスと流出口11outから流出する排ガスとの混合が防止され得る。この構成によっても、支持基板10の全厚が小さくて、隣り合う流入口11inと流出口11outとの厚さ方向の位置が近接していても、上述したガスシール機能が容易に達成され得る。
以上、図25〜図27に示す接続構造は、「支持基板の長手方向の一方側の端部であって前記支持基板の内部に形成されたガス流路の流入口及び流出口が形成された端部と、前記流入口に燃料ガスを供給する機能と前記流出口から排気される燃料ガスを回収する機能とを備えるとともに前記端部に取り付けられたマニフォールドと、の接続構造であって、
前記支持基板の端部において、前記流入口は、前記流出口が形成された平面より長手方向の外側に位置する平面に形成され、
前記マニフォールドの取り付け面には、前記支持基板の端部を挿入するための凹部が形成されていて、
前記マニフォールドには、外部から導入された燃料ガスを前記流入口へと供給するためのガス供給路と、前記流出口から排出された排ガスを回収するためのガス排気路とが形成されていて、
前記凹部と前記ガス排気路とは、前記凹部の側面に形成された第1連通路を介して連通し、前記凹部と前記ガス供給路とは、前記凹部の底面である平面に形成された第2連通路を介して連通していて、
前記支持基板の端部が前記マニフォールドの凹部に挿入されることにより前記端部と前記マニフォールドとが接続された状態において、前記支持基板の端部における前記流入口が形成された平面が前記マニフォールドの凹部の底面である平面に当接し、前記第2連通路が前記流入口と連通し、前記支持基板の端部と前記凹部とで区画・形成された空間が、前記流出口、及び前記第1連通路と連通している、接続構造。」と表される。
また、上記実施形態では、支持基板10の主面上に燃料極20が形成(積層)され、インターコネクタ30が燃料極20の外側面に形成(積層)されているが、図28〜図30に示すように、燃料極20が支持基板10の主面に形成された凹部内に埋設され、且つインターコネクタ30が燃料極20の外側面に形成された凹部内に埋設されていてもよい。以下、上記実施形態に対する、図28〜図30に示す形態の主たる相違点について簡単に説明する。
図28〜図30に示す形態では、支持基板10の主面(上下面)には、複数の凹部12が長手方向において所定の間隔をおいて形成されている(図30を参照)。各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の4つの側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸化性イオン(酸素イオン)伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
図28に示すように、この例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図28を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図28では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図28では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図28では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図28では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、図28〜図30に示す形態では、燃料極20を埋設するための複数の凹部12のそれぞれが、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁を有している。換言すれば、支持基板10において各凹部12を囲む枠体がそれぞれ形成されている。従って、この構造体は、支持基板10が外力を受けた場合に変形し難い。
また、支持基板10の各凹部12内に燃料極20及びインターコネクタ30等の部材が隙間なく充填・埋設された状態で、支持基板10と前記埋設された部材とが共焼結される。従って、部材間の接合性が高く且つ信頼性の高い焼結体が得られる。
また、インターコネクタ30が、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bに埋設され、この結果、直方体状のインターコネクタ30の4つの側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。従って、燃料極集電部21の外側平面上に直方体状のインターコネクタ30が積層される(接触する)構成が採用される場合に比べて、燃料極20(集電部21)とインターコネクタ30との界面の面積を大きくできる。従って、燃料極20とインターコネクタ30との間における電子伝導性を高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記実施形態では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに、複数の発電素子部Aが設けられている。これにより、支持基板の片側面のみに複数の発電素子部が設けられる場合に比して、構造体中における発電素子部の数を多くでき、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記実施形態では、固体電解質膜40が、燃料極20の外側面、インターコネクタ30の外側面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、燃料極20の外側面とインターコネクタ30の外側面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。