図1は本発明にかかる空間光変調器を装備したパターン描画装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1に示すパターン描画装置の側面図であり、図3は図1のパターン描画装置の電気的構成を示すブロック図である。このパターン描画装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に光を照射してパターンを描画する装置である。
このパターン描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成されるとともに、本体部の外側(本実施形態では、図2に示すように本体部の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、露光処理を受けるべき未処理基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送ロボット120によって本体部にローディングされる。また、未処理基板Wに対して露光処理(パターン描画処理)が施された後、当該基板Wが搬送ロボット120によって本体部からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。
この本体部では、図1および図2に示すように、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(図1および図2の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっているのに対し、他方端側領域(図1および図2の左手側領域)が基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。この基台130上では、基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置にヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、基台130から上方に2本の脚部材141、142が立設されるとともに、それらの脚部材141、142の頂部を橋渡しするように梁部材143が横設されている。そして、図2に示すように、梁部材143のパターン描画領域側側面にカメラ(撮像部)150が固定されてステージ160に保持された基板Wの表面(被描画面、被露光面)を撮像可能となっている。
このステージ160は基台130上でステージ移動機構161によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構161は基台130の上面にY軸駆動部161Y(図3)、X軸駆動部161X(図3)およびθ軸駆動部161T(図3)をこの順序で積層配置したものであり、ステージ160を水平面内で2次元的に移動させて位置決めする。また、ステージ160をθ軸(鉛直軸)回りの回転させて後述する光学ヘッド3に対する相対角度を調整して位置決めする。なお、このようなステージ移動機構161としては、従来より多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
また、このように構成されたヘッド支持部140のパターン描画領域側で光学ヘッド3がボックス172に対して固定的に取り付けられている。なお、光学ヘッド3は本発明にかかる空間光変調器を装備して基板Wに対して光を照射して露光するものであり、本発明の「露光装置」に相当している。その構成および動作については、後で詳述する。
また、基台130の反基板受渡側端部(図1および図2の左手側端部)においても、2本の脚部材144が立設されている。そして、この梁部材143と2本の脚部材144の頂部を橋渡しするように光学ヘッド3の照明光学系を収納したボックス172が設けられており、基台130のパターン描画領域を上方から覆っている。したがって、パターン描画装置100が設置されるクリーンルーム内に供給されているダウンフローを本体内部に引き入れたとしても、パターン描画領域にダウンフローが供給されない空間SPが形成される。
そこで、本実施形態にかかるパターン描画装置100では、上記空間SPの反搬送ロボット側にステージ160と光学ヘッド3のボックス172とに挟まれた空間SPに向けて温調された気体を吹き出す気体吹出部190が配置されている。この実施形態では、本体部の左手側壁を構成するカバー102を貫通するように2つの気体吹出部190が上下に取り付けられている。これらの気体吹出部190は空調器191に接続されており、露光制御部181から指令に応じて作動して空調器191で温調された空気を空間SPに向けて吹き出す。これによって、気体吹出部190から吹き出された温調気体が横向きに流れて空間SPを通過する。これによって上記空間SPの雰囲気が入替えられてパターン描画領域での温度変化が抑制される。また、このように上記空間SPを通過した空気は搬送ロボット120に流れ込むが、この実施形態では、搬送ロボット120の下方部に排気口192が設けられるとともに、排気口192が配管193を介して空調器191に接続されている。したがって、排気口192を設けたことで搬送ロボット120を取り囲む雰囲気は排気されて同雰囲気内で下向きの気流、つまりダウンフローが形成される。したがって、搬送ロボット120でパーティクルが舞い上がり散乱するのが効果的に防止される。
次に光学ヘッド(露光装置)3の構成および動作について説明する。この実施形態では、光学ヘッド3はボックス172に対して固定的に取り付けられており、光学ヘッド3の直下位置で移動している基板Wに対して光を落射することでステージ160に保持された基板Wを露光してパターンを描画する。なお、本実施形態では、光学ヘッド3はX方向に複数チャンネルで光を同時に照射可能となっており、X方向が「副走査方向」に相当している。また、ステージ160をY方向に移動させることで基板Wに対してパターンを2次元的に描画することが可能となっており、Y方向が「主走査方向」に相当している。
図4は光学ヘッドの内部構成を簡略化して示す図であり、同図(a)は光学ヘッド3の光軸OAおよび副走査方向Xに沿って光学ヘッド3を上方(すなわち、図1中の(+Y)側)から見た場合の光学ヘッド3の内部構成を示し、同図(b)は主走査方向Yに沿って図1の装置手前側(左下側)から光学ヘッド3側を見た場合(すなわち、光学ヘッド3の(−X)側から(+X)方向を向いて見た場合)の光学ヘッド3の内部構成を示している。
図4に示す光学ヘッド3は、所定の波長(例えば、830、635、405、あるいは、355ナノメートル(nm))の光ビームを出射する半導体レーザなどにより構成された光源部31を有している。なお、355nmのレーザ光を用いる場合は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザの3倍高調波を用いる固体レーザ光源となる。この光源部31はコリメータレンズ(図示省略)を有しており、半導体レーザから出射される光ビームはコリメータレンズを介して平行光とされて図示を省略するミラーを介して照明光学系32に入射する。
この照明光学系32は3枚のシリンドリカルレンズ321〜323により構成されており、光源部31から出射してきた光ビームはシリンドリカルレンズ321〜323の順で通過して空間光変調器33に入射する。これらのうちシリンドリカルレンズ321はX方向にのみ負のパワーを有しており、シリンドリカルレンズ321を通過した光は光軸OAに垂直な光束断面が円形から次第にX方向に長い楕円形へと変化する。一方、光軸OAおよびX方向に垂直なY方向に関して、シリンドリカルレンズ321を通過した光の光束断面の幅は(ほぼ)一定とされる。また、シリンドリカルレンズ322はX方向にのみ正のパワーを有しており、シリンドリカルレンズ321を通過した光ビームはシリンドリカルレンズ322によりビーム整形される。つまり、シリンドリカルレンズ322を通過した光は、光束断面がX方向に長い一定の大きさの楕円形とされてシリンドリカルレンズ323へと入射する。このシリンドリカルレンズ323は、Y方向にのみ正のパワーを有し、Y方向のみに着目した場合には、図4(b)に示すように、シリンドリカルレンズ323を通過した光LIは集光しつつ電気光学結晶基板331の(−Z)側の端面(以下、「入射面」という)331aへと入射する。また、X方向に関しては、図4(a)に示すように、シリンドリカルレンズ323からの光ビームは平行光ビームとして空間光変調器33に入射する。
図5は空間光変調器を示す図であり、同図(a)はYZ平面における空間光変調器33の部分断面図であり、同図(b)は同図(a)中のB−B線断面図であり、同図(c)は同図(a)中のC−C線断面図である。また、図6および図7は図5の空間光変調器の部分構成を示す分解組立斜視図である。さらに、図8は図5の空間光変調器に設けられた変調部の構成を示すブロック図である。ただし、図5(b)および図5(c)では、電極基板側の構成と、電気回路基板側の構成とをそれぞれ明確にするため、両者を分離して図示しているが、実際の装置は図5(a)に示すように一体化されている。また、図6および図7においては、空間光変調器33の構成理解のため、装置構成の一部(後で説明する第1電極、スルーホール、パッドなど)を拡大して図示しているため、これらを実際よりも少ない個数で図示している。
この空間光変調器33は、本発明にかかる空間光変調器の第1実施形態に相当し、薄板状またはスラブ状の電気光学結晶基板331を有している。この実施形態では、電気光学結晶基板331はリチウムナイオベート(LiNbO3)(すなわち、ニオブ酸リチウムであり、LNと略称される。)の単結晶にて形成されており、その厚み(方向Yにおける高さ)は例えば数十ミクロン、好ましくは30ミクロン以下となっている。この電気光学結晶基板331では、電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対である第1分極部および第2分極部が交互に配列されており、電気光学結晶基板331はいわゆる周期分極反転構造を有している。そして、後で説明するように第1電極333と第2電極335の間で電位差を発生させて電界を周期分極反転構造内で生じさせると、当該電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対となる。なお、ここで用いる電気光学結晶基板331はLNの他にリチウムタンタレート(LiTaO3:LT)などもあり、結晶軸は共に分極反転方向(電界を加える方位)がポッケルス定数(電気光学定数)の値の大きなr33のZ軸方向となる。
また、空間光変調器33はシリコンで構成された電極基板332を有している。この電極基板332の下方主面332bにはSiO2などの絶縁材料で構成される保護膜PT0が形成される一方、上方主面332aには配線領域Raと、上記のように構成された電気光学結晶基板331を載置するための載置領域Rbとが設けられている。そして、複数の第1電極333の各々が配線領域Raから載置領域RbまでZ軸方向に延設されている。より詳しくは、各第1電極333の(−Z側端部)は配線領域RaでZ方向に延び、載置領域Rbに達している。この載置領域Rbでは各第1電極333の(+Z側端部)がZ方向にほぼ平行に延設されている。なお、本実施形態では各第1電極333のうち配線領域Ra上に位置する部位、つまり各第1電極333の(−Z側端部)は後述する誘電結合の被誘導部であり、以下において「被誘導パターン部」と称する。また、載置領域Rb上に位置する部位、つまり各第1電極333の(+Z側端部)は電気光学結晶基板331に対向しており、周期分極反転構造を制御するための電極部として機能するため、以下において「電極部」と称する。
また、配線領域Raでは、図6に示すように、第1電極333が配置されいない表面を覆うように櫛形状のシールドパターン層SD1が配置されている。このシールドパターン層SD1は金属材料などの導電性材料で構成されており、シールドパターン層SD1の端部SD1aがアース接続パッドとして機能し、後述する他のシールドパターン層や第2電極とともに接地電位が与えられてアース回路が形成される。このようにシールドパターン層SD1の一部(Z方向に延設された部分)は互いに隣接する2本の第1電極333の間に非接触状態で入り込み、X方向において両電極333を電磁的に遮断しており、本発明の「第1シールド部」として機能している。
これらの第1電極333およびシールドパターン層SD1を覆うようにSiO2などの絶縁材料で構成される保護膜PT1が電極基板332の上方主面332a全体に形成されて第1電極333を保護するとともに、保護膜PT1の表面(上方主面)を平坦化している。なお、図6中の符号PT1aはシールドパターン層SD1のアース接続パッドに対応する端部に設けられた切欠部であり、この切欠部PT1aを設けたことでシールドパターン層SD1の端部SD1aを露出させてアース接続パッドとして供している。
この保護膜PT1の上方主面のうち配線領域Raを覆うように金属材料などの導電性材料で構成されたシールドパターン層SD2が配置されている。このようにシールドパターン層SD2は保護膜PT1を介して各第1電極333の被誘導パターン部は上方から電磁的に遮断しており、本発明の「第2シールド部」として機能している。なお、図6中の符号SD2aはシールドパターン層SD1のアース接続パッドSD1aを露出させるために設けた切欠部であり、本実施形態では保護膜PT1の切欠部PT1aとほぼ同一形状を有している。
また、シールドパターン層SD2の上面全体には、絶縁材料で構成される保護膜PT2が配置されている。なお、図6中の符号PT2aはシールドパターン層SD2のアース接続パッドに対応する端部に設けられた切欠部であり、この切欠部PT2aを設けたことでシールドパターン層SD2の端部SD2aを露出させてシールドパターン層SD2用のアース接続パッドとして供している。
一方、載置領域Rbでは図6に示すように、載置領域Rbに相当する位置(図中の破線で示す位置)PT1b上に電気光学結晶基板331が載置されている。こうして、図5(a)に示すように各第1電極333の電極部が保護膜PT1を介して電気光学結晶基板331の下方主面331bと対向して配置される。
電気光学結晶基板331の上方主面には、当該上方主面全体を覆うように第2電極335が形成されている。また、この第2電極335の上方主面全体には、絶縁材料で構成される保護膜PT3が配置されている。なお、この保護膜PT3の端部には切欠部PT3aが設けられており、これによって第2電極335の端部335aを露出させて第2電極335用のアース接続パッドとして供され、接地電位が与えられる。これに対し、上記した複数の第1電極333の各々に対しては、光変調に応じた電圧が電気回路基板336の上方主面に設けられた配線337を介して誘導結合によって変調部338から付与される。
この電気回路基板336は後述する下方スルーホール層3361、パターン層3362および上方スルーホール層3363を積層してなるセラミック多層基板である。そして、電気回路基板336の上方主面、つまり上方スルーホール層3363の上方主面上には、被誘導パターン部と同一形状を有する、導電材料で構成される配線337が被誘導パターン部(第1電極333のうち配線領域Ra上に位置する部位)と一対一で対応して形成されている。このため、互いに一対一で対向する第1電極333と配線337とは誘導結合によって電気的に接続され、本実施形態では配線337が誘導パターン部として機能する。例えば、幅約0.2mm、厚さ10〜30μmで構成した第1電極333および配線337が厚み1〜2μmの絶縁層(保護膜PT0、PT4)を挟んで近接する場合、低インピーダンスの配線(誘導パターン部)337に対して変調部338から高周波の電圧(約0〜10V)が印加されると、高インピーダンスの第1電極(被誘導パターン部)333に誘導電圧が発生する。このように配線337と第1電極333とは誘導電圧による接続、つまりワイヤレス接続の一態様で配線337から第1電極333への信号の伝達が実行される。
また、電極基板332側と同様に電気回路基板336の上方主面では、図7に示すように、配線337が配置されいない表面を覆うように櫛形状のシールドパターン層SD3が配置されている。このシールドパターン層SD3は金属材料などの導電性材料で構成されており、シールドパターン層SD3の端部SD3aがアース接続パッドとして機能し、上記シールドパターン層SD1、SD2および第2電極335とともに接地電位が与えられてアース回路が形成される。このようにシールドパターン層SD3の一部(Z方向に延設された部分)は互いに隣接する配線337の間に非接触状態で入り込み、X方向において両配線337を電磁的に遮断しており、本発明の「第3シールド部」として機能している。
これらの配線337およびシールドパターン層SD3を覆うようにSiO2などの絶縁材料で構成される保護膜PT4が電気回路基板336の上方主面全体に形成されて配線337を保護するとともに、保護膜PT4の表面を平坦化している。なお、図7中の符号PT4aはシールドパターン層SD3のアース接続パッドに対応する端部に設けられた切欠部であり、この切欠部PT4aを設けたことでシールドパターン層SD3の端部SD3aを露出させてアース接続パッドとして供している。
また、本実施形態では、変調部338から配線337を介して第1電極333に電圧を印加するとともに配線337を下方から電磁的に遮断するために、電気回路基板336は次のように構成されている。この電気回路基板336は、各配線337に対応するアイランド状の導電パターン3362aと、これらの導電パターン3362aを除いて電気回路基板336全面に広がるアースパターン3362bとを有するパターン層3362を、下方スルーホール層3361および上方スルーホール層3363で挟み込んだ多層構造を有している。これらのスルーホール層3361、3363はセラミック材料で構成されている。そして、スルーホール層3361、3363では、導電パターン3362aに対応する位置にスルーホール3361a、3363aがそれぞれ設けられるとともに、その内部に導電材料(図示省略)が充填されている。また、シールドパターン層SD3に対応する位置にも、スルーホール3361b、3363bがそれぞれ設けられるとともに、その内部に導電材料(図示省略)が充填されている。
また、電気回路基板336の下方主面、つまり下方スルーホール層3361の下方主面上には、次の5種類のパターンが形成されている。つまり、導電パターン3362aに対応する接続パッド339aと、スルーホール3361bを下方から覆う接続パッド339bと、変調部338に対応する複数の接続パッド339cと、接続パッド339a、339c間を接続する接続ライン339dと、接続パッド339b、339c間を接続する接続ライン339eとが形成されている。このため、接続パッド339cの一部は接続ライン339d、接続パッド339a、スルーホール3361a内の導電材料、導電パターン3362a、スルーホール3363a内の導電材料を介して配線337に電気的に接続される。
一方、別の接続パッド339cは接続ライン339e、接続パッド339b、スルーホール3361b内の導電材料、アースパターン3362b、スルーホール3363b内の導電材料を介してシールドパターン層SD3に電気的に接続される。この実施形態では、この電気経路に沿って接地電位を印加してアース回路を形成しており、上記したようにシールドパターン層SD3によってX方向において両配線337を電磁的に遮断するとともに、アースパターン3362bによって下方から配線337を電磁的に遮断しており、アースパターン3362bがシールドパターン層SD4、つまり本発明の「第4シールド部」として機能している。
なお、図7中の符号PT5は、接続パッド339cを除く導電要素(339a、339b、339d、339e)を電気回路基板336の下面とともに覆う保護膜PT5であり、他の保護膜PT1〜PT4と同様に、SiO2などの絶縁材料で構成されている。また、符号PT5aは接続パッド339cを露出させるための開口部であり、当該開口部PT5aを介して変調部338が接続パッド339cに対して機械的・電気的に接続されている。
この変調部338は複数の電子部品3381を有しており、それらの電子部品3381を接続パッド339cに予め接合されたバンプ339fを介して接続パッド339cと接続し、図8に示す電気構成を構成している。このため、変調部338は上記したように構成された電気回路基板336を介して第1電極333と電気的に接続され、次に説明するように露光制御部181からの各種信号およびデータに応じてそれぞれ独立して第1電極333に電圧を付与する。
変調部338には、図3および図8に示すように、露光制御部181から露光タイミング信号、露光位置信号および露光データが与えられる。この変調部338は、第1電極333毎、つまりチャンネル毎に、2つのラッチ回路3384、3385、ディジタル・アナログ変換回路(DAC)3386およびオペアンプ3387を直列接続したアナログ電圧駆動回路3388と、デコーダ3389とが設けられている。露光制御部181から与えられた露光データが各アナログ電圧駆動回路3388の第1ラッチ回路3384に与えられるとともに、露光位置信号がデコーダ3389を介して各アナログ電圧駆動回路3388の第1ラッチ回路3384に与えられ、チャンネル毎に光のON/OFF制御が決定され、それを示す信号が第2ラッチ回路3385に与えられる。そして、全アナログ電圧駆動回路3388の第2ラッチ回路3385に露光制御部181から露光タイミング信号が与えられると、そのタイミングで各第2ラッチ回路3385からDAC3386を介してオペアンプ3387にアナログ信号が与えられ、オペアンプ3387からの出力電圧(V1または0V)が配線337を介して第1電極333に付与される。
空間光変調器33では、第2電極335は接地されるのに対し、各チャンネルを構成する第1電極333は上記のように露光制御部181からの露光データなどに応じてそれぞれ独立して変調部338から電圧付与を受ける。このため、電気光学結晶基板331の周期分極反転構造内では、変調部338から所定電位V1(0V以外の電位)が付与された第1電極333に対応する領域でのみ第1電極333と第2電極(共通電極)335の間で生じる電界により分極方位に従った屈折率変化が発生して回折格子が形成される。その結果、当該チャンネルでは回折光DLが発生する。一方、それ以外のチャンネルでは入射光がそのまま0次光L0として電気光学結晶基板331を通過する。
図4に戻って、光学ヘッド3の構成説明を続ける。上記のように構成された空間光変調器33の出射側(図4の右手側)に、Y方向にのみ正のパワーを有するシリンドリカルレンズ34、レンズ351、アパーチャ3521を有するアパーチャ板352、レンズ353がこの順序で配置されている。シリンドリカルレンズ34はY方向にのみ正のパワーを有しており、空間光変調器33からの0次光L0または回折光DLは、図4(b)に示すように、シリンドリカルレンズ34にてY方向に関してほぼ平行な光とされ、正のパワーを有するレンズ351に入射する。
ここで、レンズ351の前側焦点は第1電極333の(+Z)側の端部近傍における電気光学結晶基板331内の位置とされ、レンズ351の後側焦点にアパーチャ3521が位置するようにアパーチャ板352が配置される。したがって、電気光学結晶基板331中で回折を受けず、レンズ34を通過してX方向およびY方向の双方にほぼ平行とされる0次光L0は、図4(b)中に細い実線にて示すように、レンズ351を介してアパーチャ3521に集光し、当該アパーチャ3521を通過してレンズ353に入射する。このレンズ353は、前側焦点がアパーチャ3521の近傍に位置し、後側焦点がステージ160に保持された基板Wの表面上となるように配置されており、0次光L0はレンズ353を介して基板Wの表面上に照射されて露光される。一方、回折光DLは、図4(b)中に破線にて示すように、光軸OAに対して所定角度だけ傾いて電気光学結晶基板331から出射されるため、アパーチャ3521から離れた位置、つまりアパーチャ板352の表面で遮蔽される。
このように、本実施形態では、レンズ351、アパーチャ板352およびレンズ353により、いわゆるシュリーレン光学系35が構成されている。このシュリーレン光学系35は両側テレセントリック光学系と同等の配置であり、図4に示すように、複数のチャンネルを有する光学ヘッド3で基板Wに露光する場合にも、その露光面(基板Wの表面)に対して各チャンネルの0次光LOの主光線(図4中の2点鎖線)は垂直であり、露光面のピント方向Zの変動に対して倍率の変化を受けない。その結果、高精度な露光が可能となる。このように第1実施形態では0次光を用いて基板Wへのパターン描画を行っている。また、上記のように配置されたレンズ34およびシュリーレン光学系35が本発明の「光学系」として機能しており、空間光変調器33からの光を基板Wの表面(被露光面、被描画面)に案内している。
なお、上記のように構成されたパターン描画装置100は装置全体を制御するためにコンピュータ200を有している。このコンピュータ200はCPUやメモリ201等を有しており、露光制御部181とともに電装ラック(図示省略)内に配置されている。また、コンピュータ200内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、ラスタライズ部202、伸縮率算出部203、データ修正部204およびデータ生成部205が実現される。例えば1つのLSIに相当するパターンのデータは外部のCAD等により生成されたデータであり、予めLSIデータ211としてメモリ201に準備されており、当該LSIデータ211に基づき次のようにしてLSIのパターンが基板W上に描画される。
ラスタライズ部202は、LSIデータ211が示す単位領域を分割してラスタライズし、ラスタデータ212を生成してメモリ201に保存する。こうしてラスタデータ212の準備後、または、ラスタデータ212の準備と並行して、上記のようにしてカセット110に収納されている未処理の基板Wが搬送ロボット120により搬出され、搬送ロボット120によってステージ160に載置される。
その後、ステージ移動機構161によりステージ160がカメラ150の直下位置に移動して基板W上の各アライメントマーク(基準マーク)を順番にカメラ150の撮像可能位置に位置決めし、カメラ150によるマーク撮像が実行される。カメラ150から出力される画像信号は電装ラック内の画像処理回路(図3において図示省略)により処理され、アライメントマークのステージ160上の位置が正確に求められる。そして、これらの位置情報に基づきθ軸駆動部161Tが作動してステージ160を鉛直軸回りに微小回転させて基板Wへのパターン描画に適した向きにアライメント(位置合わせ)される。ここで、ステージ160を光学ヘッド3の直下位置に移動させた後で当該アライメントを行ってもよい。
図3に示す伸縮率算出部203は、画像処理回路にて求められた基板W上のアライメントマークの位置、および基板Wの向きの修正量を取得し、アライメント後のアライメントマークの位置、並びに、主走査方向Yおよび副走査方向Xに対する基板Wの伸縮率(すなわち、主面の伸縮率)を求める。
一方、データ修正部204はラスタデータ212を取得し、伸縮の検出結果である伸縮率に基づいてデータの修正を行う。なお、このデータ修正については、例えば特許第4020248号に記載の方法を採用することができ、1つの分割領域のデータ修正が終了すると、修正後のラスタデータ212がデータ生成部205へと送られる。データ生成部205では、変更後の分割領域に対応する描画データ、すなわち、1つのストライプに相当するデータが生成される。
こうして生成された描画データは、データ生成部205から露光制御部181へと送られ、露光制御部181が変調部338、ヘッド移動機構171およびステージ移動機構161の各部を制御することにより1ストライプ分の描画が行われる。なお、露光動作については上記したとおり変調部338による電界発生制御により行われる。そして、1つのストライプに対する露光記録が終了すると、次の分割領域に対して同様の処理が行われ、ストライプごとの描画が繰り返される。こうして、基板W上の全ストライプの描画が終了して基板Wの表面への所望パターンの描画が完了すると、ステージ160は描画済み基板Wを載置したまま基板受渡位置(図1および図2の右側領域)に移動した後、基板搬送ロボット120により基板Wがカセット110へと戻され、次の基板Wが取り出されて上記したと同様の一連の処理が繰り返される。さらに、カセット110に収納されている全ての基板Wに対するパターン描画が終了すると、カセット110がパターン描画装置100から搬出される。
以上のように、上記実施形態によれば、複数の第1電極333が配置された電極基板332の下方主面(他方主面)に対向して電気回路基板336が配置されるとともに、当該電気回路基板336に対し、複数の第1電極333の配線領域Ra上に位置する端部、つまり被誘導パターン部に一対一で対応するように複数の配線337が形成されて誘導結合により複数の第1電極333とそれぞれ電気的に接続される。そして、変調部338から各配線337を介して対応する第1電極333に付与する電圧が制御され、これによって複数の第1電極333と第2電極335との間で発生する電界がそれぞれ制御される。このように誘導結合を用いているため、例えば特許文献2に記載された発明、つまり両者をワイヤーボンディング接続により電気的に接続していた従来技術に比べ、ワイヤーボンディング接続の本数を大幅に削減することができる。例えば約4,000チャンネルの場合について検討してみる。特許文献2に記載の発明では、4,000本のワイヤーを光路とほぼ直交する方向に、2,000本ずつ振り分けて配置する必要があり、ボンディングパッドも2,000個ずつ振り分けて設ける必要があり、片側に100μm角のボンディングパッドをパッド間隔200μmで配列すると、光路方向(上記実施形態におけるZ方向)における配線領域の長さは
0.2mm×2000=400mm
にもなってしまう。2,000個のボンディングパッドを2列で千鳥状に配置したとしても、光路方向における配線領域の長さは200mmまでしか短縮されない。これに対し、上記実施形態でシールドパターン層SD1、SD2および第2電極335に接地電位を与えるために、アース接続パッドSD1a、SD2a、SD3a、335aに対するワイヤーボンディングが必要となるものの、その本数は数本程度である。このように本実施形態を採用することでワイヤーボンディング接続の本数を大幅に削減することができるとともに、ボンディングパッドの個数を激減させることができ、空間光変調器33を小型化することができる。
また、配線337は空間光変調器33の光路と干渉しないことから、配線領域Raを任意の位置に設定することが可能であり、本実施形態では図4に示すように入射光の光路直下に配線領域Raが設けられている。このような配置構造を採用することで特許文献2に記載の発明のように光路方向に対して直交する方向に空間光変調器を拡張する必要がなくなり、空間光変調器のさらなるコンパクト化を図ることができる。なお、配線領域Raは入射側のみならず出射側に設けたり、振り分けて配置してもよく、ワイヤーボンディング接続を採用していた従来技術(例えば特許文献2に記載の技術)に比べて設計自由度を高めることができる。
また、第1電極333ごとに電気光学結晶基板331内での回折を制御して光変調しているため、第1電極333の個数を増やすとともに、それに応じて配線337を増やすとともに、接続ライン339d、接続パッド339a、スルーホール3361a、導電パターン3362a、スルーホール3363aを設ければよい。これらの構成要素339d、339a、3361a、3362a、3363aはいずれも従来より多用されている半導体製造技術をそのまま用いて製造することができる。したがって、チャンネル数に拘わらず、これらの構成要素339dなどのいずれについても、それぞれ一連工程で複数個を同時に一括して形成することができる。したがって、光変調のチャンネル数、つまり第1電極333の個数が多くなったとしても、少ない工数で空間光変調器を製造することが可能である。
また、上記実施形態では、電極基板332の上方主面332a全体に保護膜PT1を形成して第1電極333を保護するのみならず、保護膜PT1の上方平面を平坦化している。このため、載置領域Rbにおいて電気光学結晶基板331を安定して載置することができる。
また、上記実施形態では、各第1電極333を取り囲むようにシールドパターン層SD1、SD2を設けるとともに、各配線337を取り囲むシールドパターン層SD3、SD4を設けているので、クロストークを効果的に低減させることができ、空間光変調器33を正常に制御することができる。
上記のように本実施形態において、電気光学結晶基板331の下方主面および上方主面がそれぞれ本発明の「一方主面」および「他方主面」に相当している。また、電極基板332の上方主面332aおよび下方主面332bがそれぞれ本発明の「一方主面」および「他方主面」に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、配線(誘導パターン部)337と、第1電極333の配線領域Ra上に位置する部位(被誘導パターン部)の形状を同一にしたペア構造を採用しているが、第1電極333333および配線337の形状や大きさを同一とすることは本発明の必須構成要件ではなく、誘導結合によって電気的に接続することが可能である限り、任意の形状、大きさおよび配置関係でペア構造をとるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、シールドパターン層SD1〜SD4および第2電極335に同一電位(接地電位)を与えているが、このように電位を統一することは本発明にとって必須事項ではない。
また、上記実施形態では、電気光学結晶基板331の上方主面に第2電極(共通電極)335を設けた空間光変調器33に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこのタイプに限定されるものではなく、例えば特許文献1に記載されているように電気光学結晶基板の一方主面に第1電極と第2電極(共通電極)を並存させた空間光変調器に対しても本発明を適用することができる。すなわち、複数の第1電極の各々に付与する電圧を制御することで複数の第1電極と第2電極との間で発生する電界をそれぞれ制御して電気光学結晶基板内での回折を制御して電気光学結晶基板を通過する光を変調させる空間光変調器全般に対して本発明を適用することが可能である。
また、上記実施形態では、電極基板332がシリコン基板により構成されているが、これ以外の材料で構成してもよいが、シリコン基板や半導体基板により電極基板332を構成した場合、電極基板332の上方主面332aのうち第1電極333を形成する表面部分に対して不純物を注入してn型領域やp型領域を形成し、これらを第1電極として機能させてもよい。また、シリコン基板や半導体基板により電極基板332を構成した場合、上記したように半導体製造技術を用いて空間光変調器33の各部を形成することができ、製造工数の短縮や高い微細加工精度が得られるなどの有利な作用効果が得られる。
また、空間光変調器33により変調された光を照射して露光する対象物は、プリント配線基板や半導体基板等の感光性材料が塗布された、あるいは、感光性を有する他の材料であってもよく、光の照射による熱に反応する材料であってもよく、空間光変調器により変調された光を被露光面に照射して露光処理を行う露光装置全般に対して本発明を適用することができる。