図1は、本発明にかかる光学デバイスの一実施形態を装備する露光装置の一例を模式的に示す斜視図である。同図では、露光装置2の光軸OAが一点鎖線で示され、光の経路が破線で示され、光の断面が梨地で示されている。同図に示すように、露光装置2は、本発明にかかる光学デバイスの一実施形態である空間光変調器4により変調した光を露光対象である基板Wに照射する。この露光装置2では、光源6からの光が照明光学系8を介して空間光変調器4の入射面4aに入射する。そして、空間光変調器4が光量調整および光変調を行い、変調光を出射面4bから出射する。さらに、この変調光は投影光学系10を介して基板Wに照射される。
光源6は、所定の波長(例えば、830、635、405、あるいは、355ナノメートル(nm))のレーザ光を出射する半導体レーザなどにより構成されている。例えば、355nmのレーザ光を用いる場合は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザの3倍高調波を用いる固体レーザ光源を使用することができる。
照明光学系8は、光源6から出射された光を空間光変調器4の入射面4aの形状に合わせてY方向に伸びる光L1を形成する。そして、この光L1が空間光変調器4の入射面4aに入射する。
この空間光変調器4は、薄板形状またはスラブ形状を有する電気光学結晶基板4cを備えている。この電気光学結晶基板4cは、例えばリチウムナイオベート(LiNbO3)単結晶やリチウムタンタレート(LiTaO3)単結晶などの強誘電体基板で構成されている。そして、空間光変調器4のうち入射面側半分の領域に変調部12が形成され、出射面側半分の領域に変調部14が形成されている。以下、変調部12、14をそれぞれ「第1変調部」および「第2変調部」と称する。
これらの変調部12、14は光軸OAに平行な光進行方向Zに並べて設けられており、入射面4aを介して入射された光L1は第1変調部12および第2第2変調部14の順で通過する。また、電気光学結晶基板4cの表面4dでは第1変調部12側に複数の第1電極(図2Aおよび図2B中の符号16)が設けられるとともに第2変調部14側に複数の第2電極(図3Aおよび図3B中の符号18)が設けられ、裏面4eには電気光学結晶基板4cを挟んで上記第1電極および第2電極に対向して対向電極(図2A、図2B、図3A、図3B中の符号20)が設けられている。そして、次に説明するように露光装置2全体を制御する露光制御部(図4中の符号22)からの各種信号に基づいて駆動部(図4中の符号24)から第1電極および第2電極に電圧が印加されて変調部12、14の各々で回折格子が形成される。変調部12、14は回折格子の回折効率を変化させて光を偏向する点で共通するが、第1変調部12は回折効率の多段階切替によるシェーディング補正によって光量調整を行うのに対し、第2変調部14はON/OFF切替による光変調を行っており、機能は相互に相違している。以下、図2Aおよび図2Bを参照しつつ第1変調部12の構成および動作を説明し、また図3Aおよび図3Bを参照しつつ第2変調部14の構成および動作を説明する。
図2Aは光量調整を行うための変調部の構成を模式的に示す斜視図であり、図2Bは図2Aに示す変調部の部分拡大図である。また、図4は図1に示す露光装置の電気的構成および動作概要を模式的に示す図である。この第1変調部12では、電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対である第1分極部121および第2分極部122が交互に進行方向Zと直交する配列方向Yで配列されている。この第1変調部12は、第1分極部121および第2分極部122からなる分極対123が周期Λ1で配列された分極反転構造124を有している。なお、この実施形態では、第1分極部121および第2分極部122はいずれも進行方向Zと平行に延びる帯状形状を有し、進行方向Zと直交する配列方向Yにおいて同一幅を有している。この点については、第2変調部14においても同様である。
第1変調部12の表面125(電気光学結晶基板4cの表面4dの入射面側領域)には、3本の第1電極16が配列方向Yに所定間隔だけ離間して並設されており、それぞれ独立して駆動部24から電圧印加を受ける。また、第1変調部12の裏面126(電気光学結晶基板4cの裏面4eの入射面側領域)上には、対向電極20が設けられ、接地されている。このため、第1変調部12の分極反転構造124内では、駆動部24から第1電圧が印加された第1電極16に対応する領域でのみ第1電極16と対向電極20の間で生じる電界により分極方位に従った屈折率変化が発生して回折格子が形成される。このような領域(本発明の「第1領域」の一例に相当)は第1電極16毎に存在する。そして、後で詳述するように第1電圧の値を変更することで回折格子の回折効率が変化し、上記領域をそのまま進んで第1変調部12から出射する0次光(非回折光)L2の光量も変化する。本実施形態では、3本の第1電極16に印加する第1電圧をそれぞれ制御することで3チャンネル分の光L2の光量調整を独立して行い、光L2の全部について光量を均一に調整することが可能となっている。このように第1変調部12は光量調整機能を有している。なお、上記のように構成された第1変調部12では、第1電圧印加によって周期分極反転構造124内で形成される回折の傾向はラマン‐ナス回折型となっている。
図3Aは光変調を行うための変調部の構成を模式的に示す斜視図であり、図3Bは図3Aに示す変調部の部分拡大図である。この第2変調部14では、電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対である第1分極部141および第2分極部142が交互に進行方向Zと直交する配列方向Yで配列されている。この第2変調部14は、第1分極部141および第2分極部142からなる分極対143が周期Λ2で配列された分極反転構造144を有している。
第2変調部14の表面145(電気光学結晶基板4cの表面4dの出射面側領域)には、6本の第2電極18が配列方向Yに所定間隔だけ離間して並設されており、それぞれ独立して駆動部24から電圧印加を受ける。また、第2変調部14の裏面146(電気光学結晶基板4cの裏面4eの出射面側領域)上に対向電極20が延設されている。このように対向電極20は変調部12、14の共通電極として機能する。そして、第2変調部14の分極反転構造144内では、駆動部24から第2電圧(0[V]以外の電圧)が印加された第2電極18に対応する領域でのみ第2電極18と対向電極20の間で生じる電界により分極方位に従った屈折率変化が発生して回折格子が形成される。このような領域(本発明の「第2領域」の一例に相当)は第2電極18毎に存在する。そして、後で詳述するように露光データに応じて所定の第2電圧を第2電極18に印加することで電圧印加を受けた領域内で回折格子が形成される。この場合、上記領域を進む光L2が分極反転構造144内で回折され、回折光として第2変調部14から出射される。一方、第2電極18への電圧印加を行わない領域では電界は発生せず、当該領域を進む光はそのまま真っ直ぐに分極反転構造144内を直進して第2変調部14から0次光(非回折光)として出射する。このように6本の第2電極18に対する電圧印加をそれぞれ制御することで6チャンネル分の光変調を行い、6本の変調光L3を基板Wに向けて出射することが可能となっている。つまり、第2変調部14は光変調機能を有している。なお、上記のように構成された第2変調部14では、第2電圧印加によって周期分極反転構造144内で形成される回折の傾向はラマン‐ナス回折型となっている。
また、第1変調部12で回折した光が第2変調部14に入射して空間光変調器4から出射すると、これが消光比を低下させる要因となる。そこで、本実施形態では、次式、
Λ1<Λ2 … 式(1)
Λ1=n×Λ2… 式(2)
ただし、nは2以上の自然数
が満足されるように変調部12、14は構成されている。
図1に戻って、露光装置2の説明を続ける。空間光変調器4の出射側に設けられた投影光学系10では、レンズ10a、アパーチャ10bおよびレンズ10cがこの順番で配置されている。レンズ10aの前側焦点は、空間光変調器4の出射面4bの位置に設定され、レンズ10aの後側焦点にアパーチャ10bが設けられており、空間光変調器4の出射面4bから光軸OA(光進行方向Z)に平行に出射された変調光L3はアパーチャ10bを通過してレンズ10cに入射する。さらに、レンズ10cの前側焦点はアパーチャ10bの位置に設定され、レンズ10cの後側焦点はステージ(図示省略)に保持された基板Wの表面上に設定されており、変調光L3はレンズ10cを介して基板Wの表面上に照射される。これに対して、空間光変調器4から出射された回折光は、光軸OAに対して傾いた状態で空間光変調器4から出射されるため、アパーチャ10bを通過できずに遮蔽される。
なお、本実施形態では、上記した第1変調部12によるシェーディング補正を高精度に行うために、図1および図4に示すように、キャリブレーション光学系28が設けられている。このキャリブレーション光学系28は、フォトダイオードなどで構成される光検出器30と、基板W上に露光されて形成される像を光検出器30の検出面(図示省略)上に結像する結像レンズ32とで構成されている。この像には、Y方向に長く、チャンネル毎に第2変調部14から出射された変調光L3を投影光学系10により基板W上に露光することで形成されるスポット像を含んでいる。そこで、キャリブレーション光学系28をY方向に移動させる移動機構(図示省略)が設けられている。そして、キャリブレーション光学系28は移動され、一のスポットを撮像して変調光L3の光量を取得し、その光量に関連する光量情報を露光制御部22に出力する。この移動および光量取得を繰り返すことで露光制御部22は6チャンネル分の光量情報を取得可能となっている。
露光制御部22はそれらの光量情報に基づきシェーディング補正のための階調信号、つまりシェーディング補正用階調信号を作成し、図4に示すように、上記した変調部12、14を駆動する駆動部24に与える。また、露光制御部22は、上記シェーディング補正用階調信号以外に、シェーディング補正のON/OFF切替を行うためのシェーディングタイミング信号を駆動部24に与えて上記した光量調整を第1変調部12で実行させ、また第2電極18に印加するための第2電圧と、露光データに基づく光変調のON/OFF切替を行うためのON/OFF変調信号とを駆動部24に与えて上記した光変調を第2変調部14で実行させる。
駆動部24は、光量調整を行うための第1印加電圧を第1電極16に印加する第1電圧印加回路34と、光変調のための第2電圧を第2電極18に印加する第2電圧印加回路36とを有している。第1電圧印加回路34は第1電極16毎に設けられるとともに、第2電圧印加回路36は第2電極18毎に設けられており、本実施形態における第1電圧印加回路34および第2電圧印加回路36の個数はそれぞれ「3」および「6」である。
各第1電圧印加回路34は、デジタル/アナログ(以下「D/A」と略する)変換器34a、アンプ34bおよびON/OFFスイッチ34cを有している。D/A変換器34aには露光制御部22からシェーディング補正用階調信号が与えられ、当該D/A変換器34aによってアナログ信号に変換された後、アンプ34bにより増幅されて第1電圧が作成される。この第1電圧の第1電極16への印加/印加停止を、ON/OFFスイッチ34cが露光制御部22から与えられるシェーディングタイミング信号に応じて切り替える。なお、本実施形態では、露光制御部22はシェーディング補正用階調信号を11ビットの階調で作成し、第1電圧を例えば20[V]ないし50[V]の範囲で変更可能となっている。また、第1電圧印加回路34により第1電圧を第1電極16に与えることで第1変調部12で行われる変調は比較的低速であり、10[kHz]ないし100[kHz]程度にとどまる。というのも、ON/OFFスイッチ34cは高速で切替可能であるが、上記したようにシェーディング補正を行うためには階調制御が必要だからである。つまり、階調制御のためのD/A変換の応答速度はスイッチ切替のそれに比べて遅く、これが階調制御を律速してしまう。これに加え、第1電圧が比較的高いために高速駆動が難しいという要因もある。ただし、第1電圧が高いため、ノイズレベル(通常20[mV]程度)に対し、階調分解能を決める電圧が高くなり、安定した階調分解能が得られるという作用効果が奏せられる。
各第2電圧印加回路36はON/OFFスイッチ36aを有している。このON/OFFスイッチ36aには、露光制御部22から第2電圧と1ビットのON/OFF変調信号とが入力されている。そして、ON/OFFスイッチ36aがON/OFF変調信号に応じて第2電圧の第2電極18への印加/印加停止を切り替える。本実施形態では、露光制御部22は第1電圧よりも低い電圧、例えば2[V]ないし10[V]の範囲内で固定化された電圧を第2電圧としてON/OFFスイッチ36aに与えている。このため、第2変調部14で行われる変調は第1変調部12に比べて高速であり、10[MHz]ないし50[MHz]程度である。
このように構成された露光装置2では、装置外部から与えられる露光データおよびメモリ(図示省略)に予め記憶されている露光プログラムにしたがって露光装置2の露光制御部22が装置各部を制御して基板Wに対する露光処理を実行するが、その露光処理前にキャリブレーション処理を実行してもよい。というのも、光源6から出射した光は照明光学系8によりY方向に伸びる光L1に整形され、空間光変調器4の入射面4aに入射するが、光L1の幅方向の光量分布は一様でなく、例えば図5中の破線で示すように光軸OA付近で盛り上がっていることが多いからである。
このキャリブレーション処理では、キャリブレーション用の基板Wを所定の露光位置にセットした後、全チャンネルのシェーディングタイミング信号をOFF状態とするとともに全チャンネルのON/OFF変調信号をOFF状態とする。これらの状態で光源6を点灯させると、光L1は空間光変調器4を通過し、投影光学系10により基板W上に露光される。露光制御部22は、光源6を一定時間点灯させ続けたまま、キャリブレーション光学系28をY方向に走査させる。この走査中に光検出器30から出力される検出信号を露光制御部22は連続的あるいは断続的に受け取り、基板Wに形成される像の明るさを検出する。これによって、露光制御部22は、露光された領域の中央領域の光量と、それを挟む両側領域の光量から光L1の光量分布特性を求める。なお、第1変調部12の電気光学結晶基板4c内において光L1が透過するチャンネルを3つに分け、それらをY方向の上流側から順に「第1チャンネルCH1」、「第2チャンネルCH2」および「第3チャンネルCH3」と称すると、上記中央領域および両側領域はそれぞれ第1変調部12の電気光学結晶基板4cのうち、第2チャンネルCH2、第1チャンネルCH1および第3チャンネルCH3に相当する領域である。
こうして光の光量分布特性が求まると、基板Wを搬送する搬送ロボットによって、あるいはオペレータ操作によってキャリブレーション用基板を取り外した後で露光対象の基板Wをセットする。それに続いて、露光制御部22は光源6を点灯させた後で上記光量分布特性に応じて各第1電極16に与える第1電圧を制御して光量を所望の階調に調整しながら、露光データに基づいて各第2電極18への第2電圧の印加を制御して光変調を行う。
以上のように、本実施形態によれば、第2変調部14で露光データに基づく光変調を行うとともに、第2変調部14に対して光源6側で隣接される第1変調部12でシェーディング補正を行っている。このため、第2変調部14に入射される光は均一な光量を有し、その結果、第2変調部14から出射される各チャンネルch1〜ch6の変調光L3の光量を一定に整えて露光処理を行う、いわゆるバイナリーON/OFF変調を高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、第1変調部12および第2変調部14を1つの電気光学結晶基板4cに形成している。これらの変調部12、14については互いに異なる電気光学結晶基板に形成して空間的に分離した形で配置してもよいが、結合ロスの抑制の観点から本実施形態のように単一の電気光学結晶基板4cに形成するのが好適である。また、このように変調部12、14を分離した場合、それらの間にレンズや導波路などの光学素子を設ける必要がある。したがって、光学素子の削減や透過損の抑制という観点からも本実施形態は優れており、安定的に高い光量で露光処理を行うことが可能となっている。さらに、空間光変調器(光学デバイス)4の小型化にも寄与する。
また、本実施形態では、変調部12、14における回折の傾向がいずれもラマン−ナス回折型となるように構成するとともに、上記式(1)および式(2)が満足されるように構成されている。このため、高い消光比で光変調を行うことができる。
また、本実施形態では、第1変調部12で光量調整を行うとともに第2変調部14で光変調を行うように構成している。つまり、光量調整機能と光変調機能を分離した形で実行している。このため、次のような作用効果を有している。
空間光変調器4に入射する光L1の光量が幅方向Yにおいて不均一である(例えば図5中の破線参照)ことに起因する問題を解決する手段として、例えば特許文献1に記載の光変調器と、図6に示す構成を有する駆動部38とを組み合わせた露光装置(以下「比較装置」という)が考えられる。この特許文献1に記載の光変調器は、図6に示すように、上記第2変調部14と同様に構成されている。そして、第1変調部12と同様に、電極18に対して印加する電圧を階調制御することでチャンネルch1〜ch6毎に変調光L3の光量を調整することができる。そこで、第1電圧印加回路34と同じ構成を有する第3電圧印加回路が第2電極18毎に設けられた駆動部38を設け、この駆動部38により空間光変調器4を駆動する、つまり単一の変調部14が光量調整機能と光変調機能とを兼ね備えるように構成することで、上記実施形態と同様に、バイナリーON/OFF変調を高精度に行うことができる。
しかしながら、図6に示す比較装置における電圧と光量との関係を示す特性曲線は、図7Aに示すように、チャンネル毎に異なる。つまり、複数のチャンネルch1〜ch6のうち中央部のチャンネルch3、ch4に対する特性曲線は符号C34で示した通りであり、最も中央部から離れたチャンネルch1、ch6に対する特性曲線は符号C16で示した通りであり、中間のチャンネルch2、ch5に対する特性曲線は符号C25で示した通りである。各チャンネルch1〜ch6に入射された時点での光の光量が相違しているため、それを反映して電極18に電圧を印加しない、つまりOFF状態での各チャンネルch1〜ch6からの変調光L3の光量(以下「OFF状態光量」という)が本来的に相違している。そのため、OFF状態光量が最も少ないチャンネルch1、ch6に合わせて階調制御を行うという制限が生じる。したがって、当該制限がない場合には、チャンネルch2〜ch5においても、チャンネルch1、ch6と同様に、電圧可動範囲V16で階調制御を行うことができるが、上記制限によってチャンネルch2、ch5では電圧可動範囲V25に狭まり、さらにチャンネルch3、ch4では電圧可動範囲V34に狭まっている。その結果、全チャンネルch1〜ch6について階調制御を行うためには、電圧可動範囲V34となり、分解能が低下するという問題がある。
これに対し、上記実施形態では、各チャンネルch1〜ch6に入射された時点での光の光量は均一であるため、図7Bに示すように、いずれのチャンネルch1〜ch6とも特性曲線は曲線CCにほぼ一致し、OFF状態光量が同一であるため、広い電圧可動範囲V16で階調制御することができる。その結果、比較装置に比べて高い分解能が得られ、より高精度な制御を行うことができる。
また、比較装置では、階調制御と変調制御とを同一の第3電圧印加回路で行うため、動作速度はD/A変換器38aの階調制御に律速されてしまう。一方、上記実施形態では、上記したように階調制御と変調制御とを分離し、光変調を行う第2変調部14を駆動するための第2電圧印加回路36をON/OFFスイッチ36aのみで構成しているため、高速変調が可能となっている。また、回路構成がシンプルであるため、比較装置に比べてチャンネル数の増大に有利である。つまり、ON/OFFスイッチ36aを構成するトランジスタなどのスイッチング素子の高密度実装が可能となり、配線の短縮化によって高速駆動が可能となる。なお、光量調整を行う第1変調部12を駆動するための第1電圧印加回路34では階調制御の高速性が要求されないので、特に上記実施形態では上記問題は発生しない。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、第1電極16および第2電極18をそれぞれ3本および6本設けているが、電極の本数はこれらに限定されるものはなく、任意であり、例えば単一チャンネルの光変調器
も本発明にかかる光学デバイスに含まれる。また、変調部12、14の機能がそれぞれ光量調整および光変調であることを考慮すれば、第2電極18の本数はチャンネル数に設定するのに対し、第1電極16の本数については第2電極18の本数以下に設定するのが好適である。
また、上記実施形態では、第1電極16を第1変調部12の表面125(電気光学結晶基板4cの表面4dの入射面側領域)上に直接配置しているが、この直接配置は光機能を発揮させる上での必須構成事項ではなく、例えば絶縁層を介して第1電極16を電気光学結晶基板4cの表面4d上に配置してもよい。この点に関しては、第2変調部14の表面145(電気光学結晶基板4cの表面4dの出射面側領域)に対する第2電極18の配置、および電気光学結晶基板4cの裏面4eに対する対向電極20の配置関係についても同様である。
また、上記実施形態では、光の進行方向Zにおいて変調部12、14をこの順序で配置しているが、当該配置順序を入れ替えてもよい。
また、上記実施形態では、変調部12,14のいずれも回折の傾向がラマン‐ナス回折型となるように形成しているが、変調部12,14の組み合わせはこれに限定されるものではなく、例えば第1変調部12については回折の傾向がラマン‐ナス回折型となるように形成し、第2変調部14については回折の傾向がブラッグ回折型となるように形成してもよい。この場合、分極対123の周期Λ1と、分極対143の周期Λ2とは、上記式(1)式および式(2)式を満足するように構成してもよいし、次式、
Λ1>Λ2 … 式(3)
Λ2=n×Λ1… 式(4)
ただし、nは2以上の自然数
が満足されるように変調部12、14を構成してもよい。
また、上記実施形態では、基板Wに形成される像の一部を撮像する光検出器30により光量検出を行っているが、Y方向に延びるラインセンサや2次元CCDなどにより像全体を一括して撮像して光量検出を行ってもよい。
また、上記実施形態では、基板W上の光量、つまり第2変調部14から出射された光L3の光量を検出し、当該光量に基づいて第1変調部12に与える第1電圧を決定しているが、第1変調部12への入射光L1または第1変調部12からの出射光(第2変調部14への入射光)L2を取り出し、取り出された光の光量に基づいて第1電圧を決定してもよい。検出すべき光量も1種類に限定されるものではない。つまり、第1変調部12への入射光、第1変調部12からの出射光、第2変調部14への入射光および第2変調部14からの出射光のうちの少なくとも1つの光量に基づいて第1電圧を決定すればよい。
また、本発明にかかる光学デバイスについては種々の装置に適用可能であるが、上記したように光源から出射する光を変調して基板表面などの被露光部を照射する露光装置2に好適に適用可能となっている。さらに、当該露光装置2についても、種々の装置に適用することができる、例えば当該露光装置を描画装置に適用してもよく、この適用によって高精度なパターン描画が可能となる。以下、図8ないし図10を参照しつつ本発明にかかる露光装置を用いたパターン描画の一例について説明する。
図8は本発明を適用可能な描画装置の一例を示す正面図である。図9は図8の描画装置の平面図である。図10は図8の描画装置の電気的構成を示すブロック図である。描画装置は、プリアライメント処理された半導体ウエハなどの基板Wを処理ステージ101に搬送し、当該処理ステージ101で基板Wを保持したまま光を基板Wの表面に照射してパターンを描画する装置である。
描画装置は、露光ユニット100、プリアライメントユニット200、搬送ユニット300およびデータ作成ユニット500を有している。そして、これらのうち露光ユニット100、プリアライメントユニット200および搬送ユニット300の主要構成要素が、本体フレーム601で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部に配置されている。
描画装置の本体内部は、処理領域602と受け渡し領域603とに区分されている。これらの領域のうち処理領域602には、主として、露光ユニット100の主要構成である処理ステージ101、ステージ移動部102、ステージ位置計測部103、光学ユニット104、アライメント部105が配置されている。そして、露光ユニット100の露光制御部106が露光ユニット100の各部を制御することで光ビームを基板Wに露光してパターンを描画する。一方、受け渡し領域603には、図9に示すようにプリアライメントユニット200および搬送ユニット300が配置されている。プリアライメントユニット200は、プリアライメント処理を行う。また、搬送ユニット300は処理領域602に対する基板Wの搬出入を行う搬送ロボット301を有している。
また、描画装置の本体外部には、図8に示すようにアライメント部105に照明光を供給する照明部107が配置される。また、図8および図9への図示を省略しているが、同本体外部には上記露光制御部106およびデータ作成ユニット500が配置されている。
さらに、描画装置の本体外部で、受け渡し領域603に隣接する位置には、キャリアCを載置するためのキャリア載置部604が配置される。そして、搬送ロボット301がキャリアC、プリアライメントユニット200および処理ステージ101にアクセスして基板Wを次のように搬送する。つまり、搬送ロボット301は、キャリア載置部604に載置されたキャリアCに収容された未処理の基板Wを取り出し、プリアライメントユニット200に搬入する。このプリアライメントユニット200は、プリアライメント処理を行って基板Wの外周部に形成されるノッチWa(図9)が予め設定した基準方向に向くように基板Wを位置決めする。こうしてプリアライメント処理を受けた基板Wを当該プリアライメントユニット200から処理ステージ101に搬送し、描画を行う。そして、描画終了後に描画処理済の基板Wを処理ステージ101からキャリアCに搬出する。
処理ステージ101は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する保持部である。処理ステージ101の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、処理ステージ101上に載置された基板Wを処理ステージ101の上面に固定保持することができるようになっている。そして、処理ステージ101はステージ移動部102により移動させる。
ステージ移動部102は、処理ステージ101を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、及び回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる機構である。ステージ移動部102は、支持プレート122上で処理ステージ101を鉛直軸Z回りに微小回転させる回転機構121と、支持プレート122を支持するベースプレート124と、支持プレート122を副走査方向Xに移動させる副走査機構123と、ベースプレート124を主走査方向Yに移動させる主走査機構125とを備える。副走査機構123および主走査機構125は露光制御部106からの指示に応じて処理ステージ101を移動させる。なお、このようなステージ移動部102としては、従来多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
ステージ位置計測部103は、処理ステージ101の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部103は、露光制御部106と電気的に接続されており、露光制御部106からの指示に応じて処理ステージ101の位置を計測する。ステージ位置計測部103は、例えば処理ステージ101に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、処理ステージ101の位置を計測する機構により構成されているが、その構成動作はこれに限定されるものではない。
光学ユニット104は、2つの露光ヘッド1a、1bを有している。露光ヘッド1a、1bは図1に示す露光装置2と同一構成を有しており、光源6から出射された光ビームをCAD(Computer Aided Design)データで記述されたパターンに対応する描画データ(「露光データ」に相当)に基づき変調する。なお、露光ヘッドの設置数はこれに限定されず任意である。
アライメント部105は基板Wの表面に形成されるアライメントマーク(図示省略)を撮像する。アライメント部105は、鏡筒、対物レンズ、およびCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを有する撮像部151を備える。本実施形態では、CCDイメージセンサとしてエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)を用いているが、これに限定されるものではない。また、アライメント部105は、図示しない昇降機構によって所定の範囲内で昇降可能に支持されている。
照明部107は鏡筒とファイバ171を介して接続され、アライメント部105に対して照明用の光を供給する。照明部107から延びるファイバ171によって導かれる光は、撮像部151の鏡筒を介して基板Wの上面に導かれ、その反射光は、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これによって、基板Wの上面が撮像されて撮像データが取得されることになる。撮像部151はマーク位置計測部152と電気的に接続されており、取得した撮像データをマーク位置計測部152に出力する。マーク位置計測部152は当該撮像データに基づいてアライメントマークの座標位置を求め、露光制御部106に出力する。
データ作成ユニット500は、CPU(Central Processing Unit)や記憶部510等を有するコンピュータで構成されており、露光制御部106とともに電装ラック内に配置されている。また、データ作成ユニット500内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、データ作成部520、アライメント座標導出部530およびラスタライズ部540が実現される。本実施形態では、基板Wの表面に重ね合わせて描画するパターンは外部のCAD等により生成されたベクトル形式の設計データで記述されており、その設計データがデータ作成ユニット500に入力されると、記憶部510に書き込まれて保存される。そして、データ作成部520が設計データ511を補正して補正設計データを作成し、アライメント座標導出部530およびラスタライズ部540に送る。
アライメント座標導出部530は上記補正設計データに含まれるアライメントマークの座標を導出し、露光制御部106に送信する。これを受けて露光制御部106はアライメント部105によるアライメント処理を実行する。
ラスタライズ部540は、アライメント座標導出部530によるアライメントマークの座標導出処理および露光制御部106によるアライメント処理と並行して補正設計データをラスタライズしてランレングスデータ(描画データ)512を生成して記憶部510に保存する。そして、露光制御部106からのデータ要求に応じてランレングスデータ512が記憶部510から露光制御部106に出力され、当該ランレングスデータ512にしがたって基板Wの表面へのパターン描画が実行される。
上記のように構成された描画装置では、搬送ロボット301がキャリア載置部604に載置されたキャリアCから基板Wを搬出し、プリアライメントユニット200に搬送し、プリアライメント処理を行う。プリアライメント処理が完了すると、搬送ロボット301がプリアライメントユニット200から処理ステージ101への基板Wの搬送を開始する。そして、基板搬送動作を行っている間に、データ作成ユニット500がランレングスデータを作成する。
そして、搬送ロボット301により基板Wが処理ステージ101に載置されて基板Wのローディング動作が完了すると、露光制御部106はアライメント処理を行う。すなわち、ステージ移動部102により処理ステージ101が撮像部151の直下位置に移動して各アライメントマークを順番に撮像部151の撮像可能位置に位置決めし、撮像部151によるマーク撮像が実行される。この撮像部151から出力される画像信号はマーク位置計測部152により処理され、アライメントマークの処理ステージ101上の位置が正確に求められる。そして、これらの計測位置情報に基づき回転機構121が作動して処理ステージ101を基板Wの表面の面法線と平行な軸、つまり鉛直軸回りに微小回転させて基板Wの表面をパターン描画に適した向きにアライメント(位置合わせ)する。
アライメント処理が完了すると、露光制御部106はデータ作成ユニット500に対してデータ要求を行い、記憶部510から読み出されるランレングスデータ512にしがたって基板Wの表面に対するパターン描画を行う。
以上のように、本発明にかかる光学デバイスを装備する露光装置によって露光ヘッド1a、1bを構成しているため、基板Wに照射される光の各々が所望の光量に調整され、その結果、基板Wの表面にパターンを高精度に描画することができる。
以上説明したように、この実施形態においては、分極対123の周期Λ1および分極対143の周期Λ2がそれぞれ本発明の「第1周期」および「第2周期」の一例に相当し、周期分極反転構造124、144がそれぞれ本発明の「第1周期分極反転構造」および「第2周期分極反転構造」の一例に相当している。また、電気光学結晶基板4cの表面4dが本発明の「入射面および出射面と異なる一方主面」に相当し、電気光学結晶基板4cの表面4eが本発明の「一方主面と対向する他方主面」に相当している。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明は、例えば、第1変調部と第2変調部は、同一の強誘電体基板の内部に設けられてもよい。
また強誘電体基板は、光が入射される入射面と、入射面と進行方向に対向する出射面と、入射面および出射面と異なる一方主面と、一方主面と対向する他方主面とを有し、一方主面と他方主面とが平行な平板形状であり、第1電極が第1変調部の一方主面上に設けられ、第2電極が第1電極とは独立して第2変調部の一方主面上に設けられ、対向電極が第1変調部および第2変調部の他方主面上に設けられ、駆動部は、第1電極と対向電極との間に電界を発生させて第1周期分極反転構造内に回折格子を形成し、第2電極と対向電極との間に電界を発生させて第2周期分極反転構造内に回折格子を形成してもよい。
また、第1電極は複数個、進行方向と直交する幅方向に互いに離間して並設されるとともに、第2電極は複数個、幅方向に互いに離間して並設され、駆動部は、複数の第1電極にそれぞれ独立して電圧を与えて第1周期分極反転構造内の複数の第1領域でそれぞれ回折格子の回折効率を調整して変調光のシェーディング補正を行うとともに、複数の第2電極にそれぞれ独立して電圧を与えて第2周期分極反転構造内の複数の第2領域で光変調を行ってもよい。
また、第1電極の個数は第2電極の個数以下であってもよい。
また、進行方向に進む光は進行方向と直交する方向に延びる線状光であり、第1配列方向および第2配列方向は線状光の幅方向であってもよい。