JP2012041501A - 酸化物半導体膜製造用塗料組成物 - Google Patents
酸化物半導体膜製造用塗料組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2012041501A JP2012041501A JP2010186227A JP2010186227A JP2012041501A JP 2012041501 A JP2012041501 A JP 2012041501A JP 2010186227 A JP2010186227 A JP 2010186227A JP 2010186227 A JP2010186227 A JP 2010186227A JP 2012041501 A JP2012041501 A JP 2012041501A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oxide semiconductor
- particles
- igzo
- oxide
- semiconductor film
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Paints Or Removers (AREA)
Abstract
【課題】透明で導電性の高い酸化物半導体膜を塗布型プロセスで得ることができる酸化物半導体膜製造用塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物は、酸化物半導体粒子又は酸化物半導体前駆体粒子と、有機材料と、溶媒とを含み、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmであり、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の平均分散粒子径は、10〜300nmであることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物は、酸化物半導体粒子又は酸化物半導体前駆体粒子と、有機材料と、溶媒とを含み、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmであり、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の平均分散粒子径は、10〜300nmであることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、透明酸化物半導体膜を製造する際に用いる酸化物半導体膜製造用塗料組成物に関する。
インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)等を含む酸化物半導体は、これらを用いて薄膜を形成した際には可視光透過率の高い透明膜となり、透明酸化物半導体として有用であるとされている。特に、インジウム、ガリウム、亜鉛から構成されるInGa(ZnO)xO3は、一般にIGZOと呼ばれ、良好な特性を示す(例えば、特許文献1〜4参照。)。
特許文献1、2には、IGZO焼結体をターゲットとして用いたスパッタリング法により、IGZOのアモルファス酸化物薄膜を形成し、これを用いることで、良好な特性を示す透明酸化物半導体膜を製造することができると記載されている。
また、特許文献3には、インジウム、ガリウム、亜鉛の有機金属塩を溶媒中に溶解させ、熱処理により一部を粒子状に析出させて結晶核粒子を生成させた後、この塗料をスピンコート法等により基板上に塗布し、これを1000℃で焼成することにより、溶解していた有機金属塩を、結晶核粒子を起点として結晶化させ、IGZOの配向性結晶膜を得ることができると記載されている。また、これ以外にも、結晶核粒子を生成させることなく、有機金属塩を溶解させた溶液をそのまま塗布し、加熱することにより多結晶膜を得る方法の例は多数見られる。この場合、有機金属塩の選定方法によっては、400℃程度以上での熱処理によって膜を得ている。
また、特許文献4では、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の粉末を粉砕混合し、圧粉成形した後、1500℃の温度で焼結することにより(In,Ga)2O3構造を持つ焼結体を製造でき、スパッタリングターゲットとして好適であると記載されている。
一方、導電膜についても、スズ含有酸化インジウム等の導電性酸化物をスパッタリングや蒸着等のドライプロセスにより導電膜として成膜することが一般的に行われてきたが、ドライプロセスは成膜が高真空中で行われるため、成膜工程が複雑且つ高コストになるという問題点があった。これに対し近年では、導電膜の低コストな製造方法として、湿式塗工に代表されるウェットプロセスが数多く検討されている。湿式塗工材料としては、酸化物微粒子や金属微粒子等の導電性材料を分散樹脂やバインダとともに溶剤中に分散させたものが一般的に用いられている。
即ち、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化スズ、アンチモン含有酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、ガリウム含有酸化亜鉛、インジウム含有酸化亜鉛等の導電性酸化物微粒子については、これら微粒子を溶媒中に分散させた塗料を基材上に塗布し、その後、大気雰囲気下にて熱処理することにより導電膜を製造する方法が知られている。例えば、特許文献5、6には、スズ含有酸化インジウム(ITO)やアルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)の金属酸化物微粉末を溶媒中に分散させた塗料を基材上に塗布し、その後、大気雰囲気下にて熱処理することにより透明導電膜を得ることが開示されている。
IGZO等を用いた半導体膜の作製には、特許文献1、2に示したようなスパッタリング法や、特許文献3に示したような高温加熱することにより、配向性結晶膜を得る方法等の検討が数多く行われているものの、これらの製造方法では、成膜方法が複雑であり、製造コストが高くなってしまう。また、高温の熱処理が必要とされるために基材が限定されてしまう。そのため、生産性が高く、安価で、より低温プロセスでの酸化物半導体膜の製造方法が求められている。
一方で、生産性が高く、低コストな製造方法として湿式塗工に代表される塗布型方式では、例えば透明導電性膜等に用いられる酸化物微粒子や金属微粒子等の導電性材料を、分散樹脂やバインダとともに溶媒中に分散させて塗料とし、これを基板上に塗布して揮発分を蒸発させることによって、酸化物微粒子や金属微粒子と不揮発物とを含む薄膜を得る方法がある。このような塗布型方式を用いた塗布膜は、ITOやAZO等に代表される透明導電膜については数多く検討がなされており、それぞれの導電性粒子に関しても、粒子径や組成等について多岐に渡って最適化が行われている。しかしながら、IGZOに代表される酸化物半導体膜において、現状ではこれらの検討は行われておらず、塗布型方式に用いる粒子状のIGZOに関しての詳細な検討はされていない。
これまで、導電性のみの面で見れば、IGZOはITO等と比べて劣るため、透明導電膜においては適用されてこなかったという現状がある。これは、ITOやAZO等の透明導電膜に使用される導電性酸化物については、置換元素の組成を変えることによりバンドギャップを狭め、できる限り導電性を高め、金属的にすることに重点を置いて検討がなされてきているために、半導体として利用されているIGZOに関しては、焼結体等のバルク検討段階で導電性が低く、検討対象から除外されてきたものである。従って、IGZO粒子を塗布型方式で用いるといった成膜プロセスの検討はされてこなかった。
また、塗布型プロセスにおいて、より低温処理で薄膜を得るためには、半導体特性を持つ粒子を分散樹脂やバインダとともに混合し、無機粒子分散型の塗布膜を得るというプロセスを採用することが最善であると考えられる。しかしながら、この方法を採用するに当たっては、半導体特性を持った無機粒子同士の間に、絶縁性の有機材料が介在することになるため、元来、半導体であるためにITO等の導電性微粒子と比較して、導電性が低い酸化物半導体微粒子を用いれば、良好な半導体特性を持つ膜が得られない。従って、塗料化や成膜の際に、半導体微粒子に最適な組成や成膜プロセスを見出す必要がある。
以上のように、本発明は、成膜方法が簡便であり、製造コストが安価で、より低温プロセスでの成膜が可能である、湿式塗工に代表されるウェットプロセスを用いて、透明酸化物半導体膜を製造する際に用いる酸化物半導体膜製造用塗料組成物を提供する。
本発明者等は、上記従来の課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、塗布型方式で半導体膜の製造を行うために、酸化物半導体微粒子等を、分散樹脂やバインダ等とともに溶媒中に分散させた酸化物半導体膜製造用塗料組成物を得た。
即ち、本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物は、酸化物半導体粒子又は酸化物半導体前駆体粒子と、有機材料と、溶媒とを含み、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmであり、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の平均分散粒子径は、10〜300nmであることを特徴とする。
本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物を用いることにより、透明で導電性の高い酸化物半導体膜を塗布型プロセスで得ることができる。
本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物は、酸化物半導体粒子又は酸化物半導体前駆体粒子(以下、酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子ともいう。)と、有機材料と、溶媒とを含む。また、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmであり、その平均分散粒子径は、10〜300nmである。
本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物を用いることにより、透明で導電性の高い酸化物半導体膜を塗布型プロセスで得ることができる。即ち、塗布型プロセスは、スパッタリング法等と比べて、成膜方法がはるかに簡便であり、製造コストも低く、低温プロセスであるため基材の制限もないため、本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物を用いることにより、酸化物半導体膜を簡便で、低コストで、自由度の大きな製造条件で製造することができる。
上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子は、目的とする半導体特性を有し、塗布液中に分散可能なものであれば特に制限はなく、例えば、特開2009−253142号公報に記載の酸化亜鉛系化合物或いは酸化ガリウム系化合物等を用いることができる。ここで、上記酸化物半導体粒子は、結晶構造中に酸素欠損が存在し、半導体特性を元々有するものであり、一方、上記酸化物半導体前駆体粒子は、結晶構造中に酸素欠損が存在せず、例えば、還元処理されることにより、結晶構造中に酸素欠損が生じ、半導体特性を有することになるものをいう。
上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmである。上記一次粒子径が150nmを超えると、膜内での充填率が低下することになり、半導体特性が低下する。また、上記一次粒子径が3nm未満になると非常に小さい粒子径となるため、粒子の合成自体が難しくなる。
また、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の平均分散粒子径は、10〜300nmであり、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。ここで、平均分散粒子径とは、一次粒子(単一粒子)及び二次粒子等(凝集粒子)を含む実際に分散して存在している粒子の平均粒子径をいう。上記平均分散粒子径が300nmを超えると、可視光(波長:380〜780nm)に対する透明性を考慮した場合、透明な半導体膜を得ることが困難になる。上記平均分散粒子径が10nm未満になると、粒子間で凝集が起き分散が困難となる。
良好な半導体特性を得るためには、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子は、インジウムと、ガリウムと、亜鉛とを含むことが好ましい。酸化物半導体膜をトランジスタとして利用する際には、単位面積あたりのキャリア数が多すぎてもトランジスタとしての機能を発現せず、少なすぎても半導体としての特性が発現せず好ましくない。この観点から、ITO等の導電性の非常に高い酸化物の場合には、キャリア数が多くなりすぎるため、トランジスタに用いる酸化物半導体膜の材料として利用するには好ましくない。この点インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物の場合には、ITOと比べてキャリア数が二桁数程度少ないため、目的とする半導体としての特性を確実に得られるため好ましい。
更に、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の組成は、組成式InGa(ZnO)xO3で表され、且つx=0.5〜7であることが好ましい。上記組成式中のxが7を超えると亜鉛の占める割合が多くなり、ガリウムによって導入されるキャリア数が相対的に減少する結果となり、酸化物全体のキャリア数が減りすぎてしまうため好ましくない。また、上記xが0.5未満となると、キャリア数が増加し、特性面では問題ないが、酸化物の色味が濃くなり、灰色から黒色を呈することとなり、透明膜として利用する際には好ましくない。
また、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子は、歪みを伴うInGa(ZnO)xO3の結晶構造を有することが好ましい。即ち、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子は、アモルファス構造及びIGZO結晶体とは異なる歪みを伴ったInGa(ZnO)xO3の結晶構造(IGZO構造)を持つ。この構造を持つことにより、酸素欠損を生じた際には、より高い導電性を得ることが可能となる。ここで、上記IGZO粒子は、アモルファス構造とIGZO結晶体との中間状態であるIGZO粒子であり、その詳細な結合状態は明らかではないが、IGZO結晶が化学量論比通りに結晶化し切れていないために、結晶格子及び元素配置に著しい歪みが生じている状態であると考えられる。この歪み、及び、格子歪みにより化学量論比通りの配列になっていない箇所があるなどのために、対称性が変化し、粉末X線回折スペクトルにおいてピーク分裂を起こし、IGZO結晶体では現れないピークが現れることとなる。また更に、IGZO結晶体において観察されるピークからは角度ずれを起こし、元素の長距離秩序配列ができていないためにピークがブロードになる。IGZOが化学量論比通りに結晶化していても、微小な結晶の集合体である場合には、結晶格子の結合距離が長くなることがある。この場合には、IGZO結晶において観察されるピークからの一様方向への角度ずれと、元素の長距離秩序配列ができていないためにピークがブロードになることがあるが、ピーク分裂により新たなピークが見られるという現象は伴わない。
上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子が、上記歪みを伴うInGa(ZnO)xO3の結晶構造を有するか否かは、2θが30〜70°の範囲における粉末X線回折スペクトルにおいて、下記(1)及び(2)を確認することにより、決定できる。
(1)明確な回折ピークが観察されることにより、アモルファス構造でないことを確認する。
(2)結晶の歪みによるピーク分裂により、化学量論比通りに結晶化した場合に現れるピークとは異なる位置に、新たなピークが現れる。
(1)明確な回折ピークが観察されることにより、アモルファス構造でないことを確認する。
(2)結晶の歪みによるピーク分裂により、化学量論比通りに結晶化した場合に現れるピークとは異なる位置に、新たなピークが現れる。
即ち、上記(1)及び(2)が確認されると、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子では、2θが30〜70°の範囲における粉末X線回折スペクトルにおいて、一般のInGa(ZnO)xO3の結晶構造で見られるピークのうち、1個以上のピークについて、ピーク分裂が見られることになる。
また、上記新たなピークは、各元素の酸化物、水酸化酸化物、水酸化物、及びこれらの複合体、或いは、各元素の金属又は合金のいずれの構造を特徴付けるピークとも一致しないものである。これは、IGZO構造と、各元素の酸化物、水酸化酸化物、水酸化物、及びこれらの複合体、或いは、各元素の金属又は合金等の構造との混合物ではないことを意味する。
即ち、上記歪みを伴うIGZO構造とは、アモルファスでも完全なIGZO結晶体でもなく、また、各元素の化合物が個々に分離した状態で析出したものでもなく、完全なIGZO結晶体へと移行する際に現れる中間の結合状態であると考えられる。
また、上記酸化物半導体粉末は、上記構造を持つ粉末において、更に還元処理等により酸素欠損によりキャリアをドープしたものである。この構造を持つ粉末において、より高い導電性が得られる理由は定かではないが、その理由の一つには、元素間の結合が未完成であるために、還元処理において酸素欠損を効率的に発生させることができるためではないかと考えられる。ここで、酸素欠損の有無を判断するためには、ヨードメトリー法等により酸素の量を具体的に定量することも可能であるが、より簡便に判断する方法として、粉末の色により判断することが可能である。酸素欠損を持たない粉末は黄色を呈しているのに対し、酸素欠損を持つ粉末は灰色を呈するからである。
また、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の組成が、上記組成式InGa(ZnO)xO3においてx=1であるInGaZnO4で表される組成である場合には、酸化物の状態を安定に保ちつつ、Gaによりドープされるキャリア数が多くなるために最も好ましい。更に、上記組成の場合には、2θが32〜34°、49〜52°及び56〜58°の各位置に各1個ずつピークが見られる。これらのピークは、IGZOが結晶化した際には現れないピークである。また、これらのピークは、In、Ga、Znのうち1種以上が含まれる、いずれの酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、金属、合金のピークとも一致せず、上記組成の粉末はこれらの混合物ではないことが分かる。また、IGZOが結晶化した際に現れるピークは、ブロードな形で角度にずれを生じて観察されるので、上記組成の粉末はIGZO結晶体でもないことが分かる。
本発明において、一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真から観察される一次粒子の直径又は長軸長さから求めるものとし、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた大塚電子社製の濃厚系粒系アナライザー「FPAR−1000」の測定値から求めるものとする。
次に、上記歪みを伴うInGa(ZnO)xO3の結晶構造を有する酸化物半導体粒子の製造方法の一例について説明する。上記酸化物半導体粒子の製造方法の一例は、非晶性の水酸化インジウム粒子と、非晶性の水酸化ガリウム粒子と、非晶性の水酸化亜鉛粒子とを含む非晶性粒子混合体を得る第1工程と、上記非晶性粒子混合体を、酸素存在雰囲気下で、上記非晶性粒子混合体が結晶化を開始する温度以上800℃以下の温度で加熱する第2工程と、上記加熱後の混合体を、還元雰囲気下で、150℃以上金属インジウムが析出する温度未満で還元処理を行う第3工程とを含む。
上記第1工程で用いる具体的な製造方法としては、含まれる全ての金属元素について、結晶性の低い水酸化物の均一な非晶性粒子混合体が得られれば、共沈法、ゾル−ゲル法、加水分解法等のいずれの方法を用いてもよく、別個に作製された各水酸化物粒子の均一分散液を作製した後、それらを所定の割合で混合してもかまわない。
上記第1工程に共沈法を用いる場合は、アルカリ水溶液と、インジウムイオン、ガリウムイオン及び亜鉛イオンを含む水溶液とを、攪拌しながら常温で混合して、非晶性の水酸化インジウム粒子と、非晶性の水酸化ガリウム粒子と、非晶性の水酸化亜鉛粒子とを含む粒子を析出させて非晶性粒子混合体を得ることができる。本明細書で常温とは、20〜30℃の温度をいうものとする。
上記非晶性粒子混合体はその低い結晶性のために、粉末X線回折測定等の構造測定手段では、各化合物がそれぞれ水酸化インジウム、水酸化ガリウム、水酸化亜鉛等の水酸化物となっていることを確認することは難しいが、共沈法の場合であれば、使用した原料組成から水酸化物が生成することを容易に想定することができる。また、化合物中の水酸基の有無については、赤外反射分光測定等により確認することも可能である。
この段階で各水酸化物粒子が均一混合していない場合には、その後の熱処理において組成の均一な化合物が得られにくい。この意味で、各水酸化物の乾燥粉末を別個に作製し、後から混合する方法で得られた混合体は、必然的にサブミクロンサイズの凝集体同士の混合物となり、好ましくない。
また、この際の結晶性の低い水酸化物は、得られた混合体粉末の2θ=30〜70°の範囲における粉末X線回折スペクトルにおいて、ブロードなピークで特徴付けられ、水酸化インジウム、水酸化酸化インジウム、水酸化ガリウム、水酸化酸化ガリウム、水酸化亜鉛等のいずれの水酸化物構造にも一致せず、構造からは水酸化物の同定が不可能であり、結晶が未発達なアモルファス構造に近いものである。この混合体粉末において、粉末X線回折スペクトルに各金属元素の水酸化物構造によるピークが観察され、結晶性の水酸化物粒子となっていることが同定可能な場合には、この後の工程において、各金属元素を含む化合物が別個に生成することとなるため、原料として使用することは好ましくない。
通常、複数の金属元素を含む酸化物を得る際には、各金属元素を含む何らかの化合物、例えば、酸化物粉末、水酸化物粉末、塩化物粉末、有機金属塩等を所定の割合で混合し、これを酸素存在下で熱処理することによって、複合酸化物を得ることができる。IGZO結晶体粉末についても、前述のような粉末の混合体を出発原料として1300〜1400℃以上の高温において熱処理を施すことにより、作製することが可能である。しかしながら、上記歪みを伴うIGZO構造を持つ粉末については、結晶性の低い水酸化物の微粒子混合体を出発物質とした場合にのみ得られる。
例えば、同じ水酸化物の混合体であっても、各金属元素において、粉末X線回折スペクトルで個々の水酸化物構造が判別可能である結晶性の水酸化物の混合体を用いれば、200〜300℃程度以上の熱処理によってOHが脱水した後、各金属元素の酸化物粒子が別個に生成し、酸化物の混合体粉末となる。更に、熱処理温度を上げて行けば、結晶化温度である1300〜1400℃以上で加熱することによって、IGZOの結晶体粉末となる。このような場合における結晶化の途中段階では、結晶化したIGZO粉末と、まだ結晶化していない残留している個々の酸化物粉末との混合体となり、歪みを伴うIGZO構造を持つ粒子は得ることができない。
従って、歪みを伴うIGZO構造を持つ粒子を得るには、前述した、各金属元素の結晶性の低い水酸化物の混合体粉末を前駆体として用いることが必要である。
前述の組成式InGa(ZnO)xO3においてx=1であるInGaZnO4で表される組成である場合には、結晶性の低い水酸化物の混合体粉末を用い、空気中(酸素存在下)熱処理を行った場合には、約260℃以上でアモルファス酸化物が得られ、約480℃で目的とする歪みを伴うIGZO構造へ変態し、1350〜1400℃以上でInGaZnO4結晶体となる。これらの変化は、粉末X線回折スペクトルから明らかに観測される。また、水酸化物からアモルファス酸化物への変態温度、歪みを伴うIGZO構造への変態温度、IGZO結晶体への変態温度は、それぞれ、示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)を行うことにより、不連続な重量変化が起こる温度として厳密に決定できる。
上記第2工程では、歪みを伴うIGZO構造を持つ酸化物粒子を得るために、第1工程で得られた非晶性粒子混合体を、酸素存在下において、上記非晶性粒子混合体が結晶化を開始する温度以上800℃以下の範囲で加熱処理を行う。非晶性粒子混合体は、前述したように加熱処理温度によって、「非晶性酸化物→歪みを伴うIGZO→IGZO結晶体」の順に変態していく。従って、歪みを伴うIGZO構造を得るための熱処理温度は、非晶性酸化物の状態から変態する程度に高く、且つ、結晶化温度より低ければよいが、より導電性の高い粉末を得るためには、非晶性酸化物から目的の状態への変態温度により近い、低い温度で熱処理することが好ましい。従って、この際の下限の熱処理温度は、非晶性粒子混合体が結晶化を開始する温度(変体温度)となり、上限値はIGZO結晶化温度より十分に低いものであることが好ましく、本例では800℃とした。上記変態温度は、InGa(ZnO)xO3のx値により異なるため、厳密には水酸化物の状態から空気中でTG/DTA測定を行い、その結果から温度を選定する。x=1のInGaZnO4の場合には、480℃程度で非晶性酸化物からの構造変化が起こり、1350℃以上で完全に結晶化するため、480℃以上1350℃未満で熱処理を行えばよいが、より導電性の高い粉末を得るものとして、480℃以上800℃以下であることが好ましく、480℃以上650℃以下であることが特に好ましい。
上記第3工程において還元処理により酸素欠損を生じさせる方法としては、混合体を溶液中に分散させ、還元剤を用いて還元する溶液還元法や、還元性ガスの存在下で熱処理を行う気相還元法等があるが、最も簡便な方法として、還元ガス雰囲気下における熱処理が好適に用いられる。還元ガスとしては、水素ガスを含むことが好ましく、150℃以上で還元処理を行う。この際の還元処理の上限温度は、金属インジウムが析出しない範囲で、即ち金属インジウムが析出する温度未満で、できる限り高い温度で行う。還元処理の上限温度については、組成及び第2工程における熱処理温度により異なり、この際の温度が高すぎれば金属インジウムが析出することとなるため、好ましくない。例えば、x=1のInGaZnO4の組成において、第2工程で500℃の熱処理を行った場合には、約320℃以上で金属インジウムが析出する。この場合に関しては、約200℃以上で還元処理を行えば、酸素欠損は生じるが、上限に近い温度である約300℃で還元処理を行うことが好ましい。
次に、本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物の構成成分である有機材料と溶媒について説明する。
上記有機材料は、前述の酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の粒子同士を結合させるとともに、粒子と基板との密着性を強化して、半導体膜としての強度を向上させるため、分散樹脂とバインダとを含むことが好ましい。
上記分散樹脂は、塗料化した際に粒子同士の凝集を防止するために用い、上記分散樹脂としては、界面活性剤や高分子分散剤等を用いることができる。上記界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリエチレングリコール型、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール型、多鎖型高分子等の非イオン性界面活性剤;アミン塩型、アルキルアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩型等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤がある。上記高分子分散剤としては、例えば、ポリウレタン、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸及びその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等がある。また、上記高分子分散剤の一つとして顔料に親和性のあるブロック共重合体を用いることもできる。上記顔料に親和性のあるブロック共重合体には、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等がある。具体的には、楠本化成社製の高級脂肪酸誘導体(商品名:ED112)、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩(商品名:ED113)、高級脂肪酸のアミドアミン塩(商品名:ED115)、リン酸エステル塩のアニオン性界面活性剤(商品名:ED151、ED152)、ポリカルボン酸のアミドアミン塩(商品名:ED211)、顔料に親和性のある共重合体(商品名:ED330);第一工業製薬社製のリン酸エステル塩のアニオン性界面活性剤(商品名:プライサーフA212C、プライサーフA213B、プライサーフA215C、プライサーフA219B、プライサーフAL)、アルキルエーテルの非イオン性界面活性剤(商品名:ノイゲンTDS−50)、多鎖型高分子非イオン性界面活性剤(商品名:ディスコール202、ディスコール206);ビックケミー社製のアルキルアンモニウム塩のカチオン性界面活性剤(商品名:BYK120)、顔料に親和性のあるブロック共重合体(商品名:BYK112、BYK172、BYK174、BYK180、BYK2150、BYK2155、BYK2163、BYK2164、BYK2000、BYK2001、BYK2025);ルーブリゾール社製のポリエステル系樹脂(商品名:Solsperse18000、Solsperse28000、Solsperse33000、Solsperse71000)、ポリウレタン系樹脂(商品名:Solsperse765000)等を用いることができる。
上記バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は紫外線硬化性樹脂等を使用できる。加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。また、ガラス転移温度又は融点まで加熱することにより軟らかくなり、目的の形に成形できる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、アイオノマー樹脂等がある。また、紫外線の照射により光重合を起こして硬化する紫外線硬化性樹脂としては、ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー、モノマーがある。
また、上記バインダとして紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合を開始させる光重合開始剤を更に含有させる。光重合開始剤には、ベンゾフェノン系、アルキルフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、チタノセン系等の光重合開始剤がある。これらの光重合開始剤は複数を組み合わせて使用することができる。
本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物の成分として前述の酸化物半導体前駆体粒子を用い、塗料を基材に塗布後に還元処理を行う場合には、還元処理を行う際に150℃以上の熱処理温度が必要となるため、上記バインダの分解開始温度は150℃以上、更に好ましくは200℃以上であることが好ましい。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール、ジエチルエーテル、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等の1種又は2種以上を用いることができる。上記溶媒を適切に選択することにより、本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物の粘度調整を行うことができる。
上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子と、上記有機材料とからなる固形分の濃度は、5〜40重量%であることが好ましく、20〜35重量%であることがより好ましい。固形分濃度が5重量%を下回ると基板上に膜を形成する際に膜厚が薄くなり最低限必要な塗膜強度が得られないからであり、一方、固形分濃度が40重量%を超えると、基板上に膜を形成する際に膜厚が厚くなり透明性が低下するからである。
また、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子及び上記有機材料からなる固形分の全体の重量に対して、上記酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子の重量割合は、65〜95重量%であることが好ましい。上記重量割合が65重量%を下回ると、膜化した際に、酸化物半導体粒子/酸化物半導体前駆体粒子間の距離が広がり、その間に絶縁性の有機材料が介在することによって良好な半導体膜を得ることができなくなるからであり、一方、上記重量割合が95重量%を超えると、塗料化として必要である有機材料の割合が低くなるため分散安定性が得られないことや基板上に膜を形成する際に最低限必要な塗膜強度が得られないからである。
本発明の酸化物半導体膜製造用塗料組成物を作製するには、上記材料を混合して固形分を上記溶媒中に分散させればよい。その分散操作に用いる分散機については、一般的な顔料分散に用いる分散機が使用できる。例えば、ペイントシェイカー、ボールミル、ビーズミル等を用いることができる。
上記酸化物半導体膜製造用塗料組成物を基板上に塗布する塗布方法としては、例えば、スピンコート、ディップコート、バーコート等を用いることができる。また、パターン状に塗布する塗布方法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等を採用できる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下のようにしてx=1のInGaZnO4の組成のIGZOを作製した。
以下のようにしてx=1のInGaZnO4の組成のIGZOを作製した。
先ず、水酸化ナトリウム10gを200mLの水に溶解し、アルカリ溶液を作製した。これとは別に、塩化亜鉛を3.7g、塩化インジウム六水和物5.0g、及び塩化ガリウム1.8gを200mLの水に溶解し、金属塩溶液を作製した。この金属塩溶液を強攪拌しながら上記アルカリ溶液を滴下し、約30分の時間をかけてpH6となるように調整し、沈殿物を析出させた。この沈殿物が析出した懸濁液を1時間攪拌し続けた後、水洗、ろ過し、各金属の結晶性の低い水酸化物の混合体粒子を得た。以上の操作は全て常温で行った。
ここで、上記混合体粒子のX線回折(XRD)測定を行った。その結果、インジウム、ガリウム、亜鉛の各水酸化物及び水酸化酸化物、或いは、水酸基、塩素、ナトリウム等の原料組成を含む化合物のいずれにも同定できず、2θが30〜70°の範囲において、ブロードなピークで特徴付けられる非晶性を示すものであることが分かった。
次に、この混合体粒子を500℃で1時間、空気中で加熱処理を行い、黄色を呈した歪みを伴うIGZO構造を持つ粒子を得た。この粒子のXRD測定を行った結果、IGZOが結晶化した際に現れるべきピークは、角度ずれを伴いブロードなピークとして観測された。この際の角度ずれは、単純に結晶格子サイズが変化した際に現れるような、一様方向へのずれではなく、種々の方向へ、それぞれ異なった大きさのずれを伴うものであった。また、ピーク分裂により2θ=33.1°、50.4°、57.9°に新たなピークが観測され、このピークは、結晶化した際のIGZO、各金属が含まれる酸化物、水酸化酸化物、水酸化物、金属、合金のいずれのピークとも一致せず、歪みを伴うIGZO構造となっていることを確認した。
続いて、以上のようにして得られた歪みを伴うIGZO構造を持つ粒子を、水素を流量200mL/分で流しながら、250℃で還元処理を行い、灰色を呈した酸素欠陥を持つIGZO粒子を得た。
得られたIGZO粒子のXRD測定を行ったところ、結晶構造には何ら変化がなく、歪みを伴うIGZO構造のままであった。このIGZO粒子のTEM写真から求めた一次粒子径は30〜40nmであった。
また、シクロヘキサノンとトルエンとを重量比で1:1に混合した混合溶媒Sと、分散剤としてアビシア社製の「Solsperse56000」とを準備した。
次に、上記IGZO粒子と、混合溶媒Sと、上記分散剤とを混合し、得られた混合物にビーズを入れ、ペイントシェイカー(TOYOSEIKI社製)で2時間分散処理を行って分散体Aを得た。分散体Aの各成分の重量割合は、IGZO粒子:35重量%、混合溶媒S:63.2重量%、分散剤:1.8重量%とした。
分散体A中の上記IGZO粒子の平均分散粒子径を大塚電子社製の濃厚系粒系アナライザー「FPAR−1000」を用いて測定したところ、200nmであった。
続いて、光重合開始剤としてCiba社製のアルキルフェノン系光重合開始剤「IRGACURE107」と、紫外線硬化性樹脂としてSATOMER社製の多官能アクリレート「SR399」とを準備した。
次に、上記混合溶媒Sと、上記光重合開始剤と、上記紫外線硬化性樹脂とを混合し、バインダ溶液Aを得た。バインダ溶液Aの各成分の重量割合は、混合溶媒S:85.2重量%、光重合開始剤:0.8重量%、紫外線硬化性樹脂:14重量%とした。
次に、最終的に上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が30重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が81重量%となるように、分散体A13.9gと、バインダ溶液A6.1gとを混合し、得られた混合物にビーズを入れ、メディア型分散機としてペイントシェイカー(TOYOSEIKI社製)で3時間分散処理を行ってIGZO粒子含有の塗料Aを得た。
続いて、厚さ1.0〜1.2mm、面積76×52mmのガラス基板上に、塗料Aを約1g滴下し、スピンコーター(MIKASA社製)を用いて400rpmにて50秒間スピンコートを行い、ガラス基板上に塗布膜を形成した。
次に、この塗布膜を、100℃で2分間乾燥し、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製)を用いて、高圧水銀ランプで500mj/cm2の条件で紫外線照射を3回繰り返して行い、酸化物半導体前駆体膜Aを得た。酸化物半導体前駆体膜Aは、還元処理前で酸素欠損を有していないものである。また、表面抵抗計(三菱化学社製「ハイレスタ」)を用いて、酸化物半導体前駆体膜Aの表面抵抗を測定したところ、1.0×1013Ω/スクエアであった。
続いて、酸化物半導体前駆体膜Aを、水素を流量200mL/分で流しながら還元雰囲気下で、250℃にて1時間、加熱して還元処理を行って、酸素欠損を有する酸化物半導体膜Aを得た。表面形状測定装置(日本真空技術社製「DEKTAK3ST」)を用いて、酸化物半導体膜Aの膜厚を測定したところ、1.0μmであった。
次に、上記と同様にして酸化物半導体膜Aの表面抵抗を測定したところ、8.7×107Ω/スクエアであった。
最後に、紫外可視分光光度計(日本分光社製「V−570型」)を用いて、酸化物半導体膜Aの全光線透過率とヘイズとを測定した。
(実施例2)
実施例1と同様にして作製した分散体Aとバインダ溶液Aとを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が35重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が70重量%となるように、分散体Aとバインダ溶液Aとを混合して塗料を調製し、その塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体膜を作製した。
実施例1と同様にして作製した分散体Aとバインダ溶液Aとを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が35重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が70重量%となるように、分散体Aとバインダ溶液Aとを混合して塗料を調製し、その塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体膜を作製した。
また、実施例1と同様にして、酸化物半導体前駆体膜と酸化物半導体膜の表面抵抗、全光線透過率及びヘイズを測定した。
(実施例3)
実施例1と同様にして作製した分散体Aとバインダ溶液Aとを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が10重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が88重量%となるように、分散体Aとバインダ溶液Aとを混合して塗料を調製し、その塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体膜を作製した。
実施例1と同様にして作製した分散体Aとバインダ溶液Aとを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が10重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が88重量%となるように、分散体Aとバインダ溶液Aとを混合して塗料を調製し、その塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体膜を作製した。
また、実施例1と同様にして、酸化物半導体前駆体膜と酸化物半導体膜の表面抵抗、全光線透過率及びヘイズを測定した。
(比較例1)
実施例1の製造方法において、空気中での加熱処理の温度を500℃から1500℃へ変更し、還元処理温度を250℃から450℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、IGZO粒子を作製した。
実施例1の製造方法において、空気中での加熱処理の温度を500℃から1500℃へ変更し、還元処理温度を250℃から450℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、IGZO粒子を作製した。
得られたIGZO粒子のXRD測定を行ったところ、InGaZnO4構造であった。また、TEM写真から求めた上記IGZO粒子の一次粒子径は160〜300nmであった。
上記IGZO粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして分散体Bを作製した。
分散体B中の上記IGZO粒子の平均分散粒子径を実施例1と同様にして測定したところ、358nmであった。
次に、分散体Bと、実施例1と同様にして作製したバインダ溶液Aとを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤と、上記紫外線硬化性樹脂とからなる固形分の濃度が30重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が81重量%となるように、分散体Bとバインダ溶液Aとを混合して塗料を調製し、その塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体膜を作製した。
また、実施例1と同様にして、酸化物半導体前駆体膜と酸化物半導体膜の表面抵抗、全光線透過率及びヘイズを測定した。
(比較例2)
比較例1と同様にして作製したIGZO粒子と、シクロヘキサノンとトルエンとを重量比で1:1に混合した混合溶媒Sと、分散剤としてアビシア社製の「Solsperse56000」とを準備した。
比較例1と同様にして作製したIGZO粒子と、シクロヘキサノンとトルエンとを重量比で1:1に混合した混合溶媒Sと、分散剤としてアビシア社製の「Solsperse56000」とを準備した。
次に、上記IGZO粒子と、混合溶媒Sと、上記分散剤とを混合し、得られた混合物にビーズを入れ、ペイントシェイカー(TOYOSEIKI社製)で2時間分散処理を行って分散体Cを得た。分散体Cの各成分の重量割合は、IGZO粒子:28.5重量%、混合溶媒S:70重量%、分散剤:1.5重量%とした。
分散体C中の上記IGZO粒子の平均分散粒子径を実施例1と同様にして測定したところ、192nmであった。
次に、分散体Cのみを用いて、上記IGZO粒子と、上記分散剤とからなる固形分の濃度が30重量%、上記固形分の全体の重量に対して、上記IGZO粒子の重量割合が95重量%となる塗料Bを調製した。
続いて、厚さ1.0〜1.2mm、面積76×52mmのガラス基板上に、塗料Bを約1g滴下し、スピンコーター(MIKASA社製)を用いて400rpmにて50秒間スピンコートを行い、ガラス基板上に塗布膜を形成した。
次に、この塗布膜を、100℃で2分間乾燥し、還元処理前で酸素欠損を有していない酸化物半導体前駆体膜Bを得た。
続いて、酸化物半導体前駆体膜Bを、水素を流量200mL/分で流しながら還元雰囲気下で、250℃にて1時間、加熱して還元処理を行って、酸素欠損を有する酸化物半導体膜Bを得た。しかし、この酸化物半導体膜Bは、ガラス基板から直ぐに剥離してしまい、膜としての体を示さなかった。このため、塗膜特性(表面抵抗、全光線透過率及びヘイズ)の測定はできなかった。
以上の実施例1〜3及び比較例1、2の塗膜特性を、IGZO粒子の一次粒子径、固形分濃度及び固形分中のIGZO粒子の重量割合とともに表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜3で作製した酸化物半導体膜の塗膜特性は、比較例1に比べて優れていることが分かる。
以上のように、本発明によれば、透明で導電性の高い酸化物半導体膜を塗布型プロセスで得ることができる。
Claims (8)
- 酸化物半導体粒子又は酸化物半導体前駆体粒子と、有機材料と、溶媒とを含み、
前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の一次粒子径は、3〜150nmであり、
前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の平均分散粒子径は、10〜300nmであることを特徴とする酸化物半導体膜製造用塗料組成物。 - 前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子は、インジウムと、ガリウムと、亜鉛とを含む請求項1に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
- 前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の組成は、組成式InGa(ZnO)xO3で表され、且つx=0.5〜7である請求項2に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
- 前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子は、歪みを伴うInGa(ZnO)xO3の結晶構造を有する請求項3に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
- 2θが30〜70°の範囲における粉末X線回折スペクトルにおいて、一般のInGa(ZnO)xO3の結晶構造で見られるピークのうち、1個以上のピークについて、ピーク分裂が見られる請求項4に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
- 前記組成式においてx=1であるInGaZnO4で表される組成を有し、
2θが30〜70°の範囲における粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが32〜34°、49〜52°及び56〜58°の各位置に各1個ずつピークが見られる請求項3に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。 - 前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子と、前記有機材料とからなる固形分の濃度が、5〜40重量%である請求項1〜6に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
- 前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子と、前記有機材料とからなる固形分の全体の重量に対して、前記酸化物半導体粒子又は前記酸化物半導体前駆体粒子の重量割合が、65〜95重量%である請求項1〜7に記載の酸化物半導体膜製造用塗料組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010186227A JP2012041501A (ja) | 2010-08-23 | 2010-08-23 | 酸化物半導体膜製造用塗料組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010186227A JP2012041501A (ja) | 2010-08-23 | 2010-08-23 | 酸化物半導体膜製造用塗料組成物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012041501A true JP2012041501A (ja) | 2012-03-01 |
Family
ID=45898162
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010186227A Pending JP2012041501A (ja) | 2010-08-23 | 2010-08-23 | 酸化物半導体膜製造用塗料組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2012041501A (ja) |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06187832A (ja) * | 1992-12-15 | 1994-07-08 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 透明導電膜の製造方法 |
JP2007042690A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-15 | Fujifilm Holdings Corp | ナノ粒子分散液、それを用いた半導体デバイスの製造方法及び半導体デバイス |
JP2009147192A (ja) * | 2007-12-17 | 2009-07-02 | Fujifilm Corp | 結晶性無機膜とその製造方法、半導体装置 |
JP2010093165A (ja) * | 2008-10-10 | 2010-04-22 | Konica Minolta Holdings Inc | 電極の製造方法、これを用いた薄膜トランジスタ素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子 |
JP2012004030A (ja) * | 2010-06-18 | 2012-01-05 | Sekisui Chem Co Ltd | 金属酸化物半導体薄膜形成用分散組成物、及び、金属酸化物半導体薄膜の製造方法 |
-
2010
- 2010-08-23 JP JP2010186227A patent/JP2012041501A/ja active Pending
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06187832A (ja) * | 1992-12-15 | 1994-07-08 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 透明導電膜の製造方法 |
JP2007042690A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-15 | Fujifilm Holdings Corp | ナノ粒子分散液、それを用いた半導体デバイスの製造方法及び半導体デバイス |
JP2009147192A (ja) * | 2007-12-17 | 2009-07-02 | Fujifilm Corp | 結晶性無機膜とその製造方法、半導体装置 |
JP2010093165A (ja) * | 2008-10-10 | 2010-04-22 | Konica Minolta Holdings Inc | 電極の製造方法、これを用いた薄膜トランジスタ素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子 |
JP2012004030A (ja) * | 2010-06-18 | 2012-01-05 | Sekisui Chem Co Ltd | 金属酸化物半導体薄膜形成用分散組成物、及び、金属酸化物半導体薄膜の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI699335B (zh) | 複合鎢氧化物超微粒子及其分散液 | |
TWI715747B (zh) | 近紅外線遮蔽材料微粒子及其製造方法暨近紅外線遮蔽材料微粒子分散液 | |
WO2012057053A1 (ja) | インジウム錫酸化物粉末、その製造方法、分散液、塗料、及び機能性薄膜 | |
KR101319656B1 (ko) | 인듐 주석 산화물 분말 및 그의 분산액 | |
TW201922622A (zh) | 表面處理紅外線吸收微粒子、表面處理紅外線吸收微粒子粉末、使用該表面處理紅外線吸收微粒子之紅外線吸收微粒子分散液、紅外線吸收微粒子分散體及該等之製造方法 | |
US20130344335A1 (en) | Application and synthesis of doped vanadium dioxide powder and dispersing agent | |
WO2017159791A1 (ja) | 近赤外線遮蔽材料微粒子分散体、近赤外線遮蔽体および近赤外線遮蔽用合わせ構造体、並びに、それらの製造方法 | |
US20150090943A1 (en) | Antimony-doped tin oxide powder and method of producing the same | |
JP4018974B2 (ja) | 錫酸化物粉末、その製造方法及びこれを使用した高密度インジウム錫酸化物ターゲットの製造方法 | |
JP5585812B2 (ja) | 近赤外線遮蔽材料微粒子分散体、近赤外線遮蔽体、および近赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、並びに近赤外線遮蔽材料微粒子 | |
JP6004418B2 (ja) | Vo2含有組成物及びvo2分散樹脂層の製造方法 | |
JP2004111106A (ja) | 導電性粉末及びその製造方法並びにそれを用いた導電性塗料及び導電性塗膜 | |
JP2011198518A (ja) | 導電性微粒子およびその製造方法、可視光透過型粒子分散導電体 | |
JPWO2004089829A1 (ja) | 複合化酸化インジウム粒子およびその製造方法ならびに導電性塗料、導電性塗膜および導電性シート | |
JP2006010759A (ja) | 近赤外線遮蔽材料微粒子分散体および近赤外線遮蔽体並びに近赤外線遮蔽材料を通過する可視光の色調調整方法 | |
KR101768311B1 (ko) | 열변색 특성 및 투명도가 우수한 도핑된 열변색 나노입자의 제조 방법 및 그를 이용한 열변색 필름 제조방법 | |
TW201934338A (zh) | 日照遮蔽用夾層構造體及其製造方法 | |
TW202130584A (zh) | 近紅外線吸收材料粒子、近紅外線吸收材料粒子分散液、近紅外線吸收材料粒子分散體 | |
JP4120887B2 (ja) | 日射遮蔽用In4Sn3O12複合酸化物微粒子及びその製造方法並びに日射遮蔽膜形成用塗布液及び日射遮蔽膜及び日射遮蔽用基材 | |
JP4906027B2 (ja) | 複合化酸化インジウム粒子およびその製造方法、ならびに導電性塗料、導電性塗膜および導電性シート | |
JP2012041501A (ja) | 酸化物半導体膜製造用塗料組成物 | |
JP2005322626A (ja) | 導電性酸化物針状粉末 | |
JP2012140306A (ja) | 近赤外線吸収粒子、その製造方法、分散液および樹脂組成物 | |
JP4793537B2 (ja) | 可視光透過型粒子分散導電体、導電性粒子、可視光透過型導電物品、およびその製造方法 | |
JP2011178640A (ja) | 酸化物半導体粉末及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20130807 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140416 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140422 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20140812 |