以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、重合性単量体、着色剤、ワックス成分を含む重合性単量体組成物を水系分散媒体中に分散させ、該重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合開始剤を用いて重合してトナー粒子を生成する重合工程を有するトナーの製造方法であって、該重合性単量体組成物に下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有させる製造方法で得られたトナー粒子を含有するトナーが帯電特性を改善できることを見出し本発明に至った。
[一般式(1)中、R
1乃至R
4は水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。ただし、R
1乃至R
4の少なくとも1つがラジカル重合性官能基である。Mは水素原子、またはカウンターカチオンを表す。]
上記一般式(1)中、R1乃至R4における炭素数1乃至4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
上記一般式(1)中、R1乃至R4におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記一般式(1)中、R1乃至R4におけるラジカル性重合官能基とは、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。これらラジカル重合性官能基としては例えば、ビニル基、α−シアノビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アクリロイル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
上記一般式(1)中のR1乃至R4で表される置換基は、それぞれ独立に上記したような置換基を表すが、トナー製造時の重合反応を著しく阻害しない限りはさらに置換基により置換されていてもよい。この場合、置換してもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基等のアミノ基、アセチル基等のアシル基、スルホン酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
上記一般式(1)中のR1乃至R4は、少なくとも一つのラジカル性重合官能基を有することを除けば、前記に列挙した置換基および水素原子から任意に選択できるが、製造コストの点で一つがラジカル重合性官能基で、残りが水素原子である場合が好ましい。また、ラジカル性重合官能基がビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基である場合が重合反応性の点で好ましく、帯電特性の点でアクリルアミド基、メタクリルアミド基である場合がより好ましい。
上記一般式(1)中、Mにおけるカウンターカチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン、イットリウム、ランタン、セリウムなどの希土類金属、亜鉛、ジルコニウムなどの遷移金属等の多価イオンがあげられる。またMは、例えば、ホウ素、アルミニウム、珪素等の多価の典型元素であってもよい。さらにMとしては、例えば、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等の第四級アンモニウムイオンが挙げられる。
上記一般式(1)中、Mが、アルミニウム、ジルコニウムのような多価イオンである場合は、電荷を中和するために配位子を伴ってもよい。その場合、一般式(1)の単量体と金属を介し配位するものであれば特に制限は受けない。また、配位形態は配位元素によって決定される。配位子としては例えば、ハロゲン原子、イソシアン酸、チオシアン酸のような単座配位子、アセチルアセトン、エチレンジアミン等の二座配位子、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン四酢酸等の多座配位子が挙げられる。本発明の一般式(1)は、単一物ではなく、上記のような混合物として存在する場合も含まれる。
前記一般式(1)中のMは、前記に列挙したイオンおよび水素原子から任意に選択できるが、トナー製造の容易性の観点から、水素原子、アルカリ金属である場合が好ましい。
次に上記一般式(1)で表される化合物の合成方法に関して詳述する。
上記一般式(1)中のR1乃至R4のいずれか一つがビニル基であり、残りが水素原子であるビニルサリチル酸誘導体は、以下に示す公知の方法により製造することができる。
(i)D. Bailey、外2名、「Jornal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition」、(米国)、John Wiley & Sons、1976年、第14巻、p.2725−2747。
(ii)M. Iwasaki、外3名、「Jornal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition」、(米国)、John Wiley & Sons、1980年、第18巻、p.2755−2771。
(iii)D. Tirrell、外1名、「Makromolekulare Chemie」、(スイス国)、Huethig & Wepf Verlag、1980年、第181巻、p.2097−2109。
(iv)T. S. Lee、外2名、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」、(英国)、Elsevier Science、2007年、第15巻、p.5207−5218(米国)。
上記反応は通常、溶媒中でおこなわれる。使用できる溶媒は特に限定されないが、これらの化合物に対して反応性を有さないトルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピペリドンなどの極性溶媒等が好ましい。
上記反応の反応温度は特に限定されないが、通常は−20℃乃至上記溶媒の沸点程度の温度が好ましい。
また、上記一般式(1)におけるR1乃至R4のいずれか一つがアクリルアミド基、またはメタクリルアミド基であるサリチル酸誘導体は公知の方法に従って合成することができる。以下に合成スキームの一例を示す。
[一般式(2)および(4)において、括弧内の置換基は、芳香環に付記した数字の1乃至4位のいずれの位置に結合してもよく、nは1乃至4である。また芳香環に付記した数字の1乃至4位は前記一般式(1)のR
1乃至R
4に記載した置換基を有してもよい。Mは前記一般式(1)と同意義を有する。また一般式(3)および一般式(4)のR
5は水素原子、メチル基を表す。]
上記スキームでは、原料であるアミノサリチル酸類(2)を溶媒中、塩基の存在下、酸クロライド(3)とアミド化することで、一般式(4)で表されるサリチル酸誘導体を製造する。
上記一般式(2)で表されるアミノサリチル酸類は多種市販されており、容易に入手可能である。また、公知の方法により容易に製造することができる。一般式(2)としては、特に限定されるものでないが、例えば、3−アミノサリチル酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、3,5−ジアミノサリチル酸等が挙げられる。
上記一般式(3)で表される酸クロライドは市販されており、容易に入手可能である。また、公知の方法により容易に製造することができる。
本工程は無溶媒で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐために、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類が挙げられる。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記反応溶媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対し、0.1乃至100質量倍の範囲で用いられ、好ましくは0.5乃至50質量倍の範囲、より好ましくは1.0乃至15質量倍の範囲で使用する場合である。
反応の反応温度は、−80乃至200℃の範囲で行われ、好ましくは−50乃至180℃の範囲、より好ましくは−20乃至150℃の範囲である場合である。通常、反応は24時間以内に完結する。
本反応で用いられる塩基としては、具体的には、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、ピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、酢酸カリウム、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等の有機塩基、n−ブチルリチウム、tert−マグネシウムクロライド等、水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。好ましくは、ピリジン、2−メチルピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミンが挙げられる。上記塩基の使用量は、通常上記一般式(2)1モルに対し、1乃至15倍モルの範囲、好ましくは1.1乃至8倍モルの範囲、より好ましくは1.2乃至4倍モルの範囲である場合である。
また、上記一般式(1)におけるMが水素以外のサリチル酸誘導体はMが水素原子の下記一般式(5)で表される化合物を原料に、公知の方法に従って合成することができる。下記に合成スキームの一例を示す。
[上記般式(5)および(6)におけるR
1乃至R
4は前記一般式(1)と同意義を有する。またPは前記一般式(1)のMで水素原子以外を表す。]
上記スキームでは、サリチル酸誘導体(5)を、溶媒中、塩基または配位元素を含む化合物を、場合により更に配位子とともに添加することにより一般式(6)で表されるサリチル酸塩を得る。
本塩化工程は、反応の急激な進行を防ぐために、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類が挙げられる。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記反応溶媒の使用量は、化合物(1)に対し、0.1乃至100質量倍の範囲で用いられ、好ましくは0.5乃至50質量倍の範囲、より好ましくは1.0乃至15質量倍の範囲で使用する場合である。
本塩化工程の反応温度は、−80乃至100℃の範囲で行われ、好ましくは−50乃至50℃の範囲、より好ましくは−20乃至25℃の範囲である場合である。通常、反応は24時間以内に完結する。
本塩化工程で用いる塩基としては、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、n−ブチルリチウム、tert−マグネシウムクロライド等、水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。上記塩基の使用量は、上記一般式(2)1モルに対し、1乃至15倍モルの範囲、好ましくは1.1乃至8倍モルの範囲、より好ましくは1.2乃至4倍モルの範囲で使用する場合である。
本塩化工程で用いる配位元素を含む化合物としては、例えば、配位元素がアルミニウムである場合、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウムのような無機塩、酢酸アルミニウム、tert−ブトキシアルミニウムのような有機塩、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウムのような有機金属化合物を使用することができる。また配位元素が亜鉛である場合、ジエチル亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛等を用いることができる。配位元素がジルコニウムである場合、ジルコノセンジクロライド、シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)トリクロライド、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム(IV)等を使用することができる。その他、ボロントリフルオライド、ボロントリクロライド等のホウ素化合物、四塩化珪素等のケイ素化合物も使用することができる。これらの化合物はサリチル酸誘導体(5)および配位子との反応性、使用する溶媒への溶解性に応じて選択することが好ましい。
本塩化工程で用いる配位子は、上記配位元素を含む化合物中のカウンターイオンまたは配位子をそのまま使用することで、上記一般式(1)の化合物を配位子を伴う形態で製造することができるが、本工程中にさらに配位子となる化合物を添加することもできる。この場合添加できる配位子としては、例えば、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、ジピバロイルメタン、2−アセチルシクロペンタノン、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン等のアセチルアセトン誘導体、サリチル酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、4−クロロサリチル酸、5−クロロサリチル酸、3,5−ジクロロサリチル酸、3−メトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸等のサリチル酸誘導体、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−7−メトキシ−2−ナフトエ酸等のヒドロキシナフトエ酸誘導体、ベンジル酸、9−ヒドロキシフルオレン−9−カルボン酸等のベンジル酸誘導体が挙げられる。
本発明で用いる上記一般式(1)の好ましい具体例を示すが、下記の例に限定されるものではない。
次に本発明で用いられるトナーの製造方法について説明する。本発明の前記一般式(1)の化合物の添加量によって、現像システムに応じた最適のトナー摩擦帯電量の制御が可能となる。本発明のトナーにおける前記一般式(1)の化合物の添加量は、重合性単量体の総量に対し、通常0.1乃至50質量%、好ましくは0.3乃至30質量%、さらに好ましくは0.5乃至20質量%である場合が好ましい摩擦帯電量を得ることができる。
本発明のトナーの製造方法は、以下の工程を有することを特徴とする。
(i)着色剤分散工程:着色剤と重合性単量体とを含む混合物を分散処理して着色剤分散体を調製する工程。
(ii)溶解工程:該着色剤分散体に、その他トナー用添加剤を加えて、重合性単量体組成物を調製する工程。
(iii)造粒工程:該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系分散媒体中に分散させて、該重合性単量体組成物の液滴を形成する工程。
(iv)重合工程:水系分散媒体中に液滴として分散している重合性単量体組成物を重合開始剤により重合して、トナー粒子を形成させる工程。
を有する。
上記製造工程中、本発明の前記一般式(1)の化合物は、(i)の顔料分散工程か(ii)の溶解工程のどちらかで添加することができるが、一般式(1)で表される化合物の早期重合を抑制するため、(ii)の溶解工程で添加することが好ましい。
上記製造工程(i)における着色剤分散体は、例えば、以下のようにして得られる。重合性単量体中に着色剤を添加混合する。さらにボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の公知の分散機により機械的剪断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散された着色剤分散体を得る。
上記製造工程(i)で使用される重合性単量体は、具体的にはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリルレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリルレート系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは使用用途に応じて、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。重合トナー用顔料分散体用途では、重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン系単量体を単独で、または他の重合性単量体と混合して使用すること好ましい。特に好ましいのはスチレンである。
上記第(i)工程で使用される着色剤は、磁性トナーとして用いる場合には、以下に挙げられる磁性材料が好ましく用いられる。すなわち、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。
上記着色剤としての磁性材料としては、例えば、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジウム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。上述した磁性材料を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用する。本発明の目的に特に好適な磁性材料は四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
これらの磁性体は平均粒径が0.1乃至2μm(好ましくは0.1乃至0.3μm)の範囲で、795.8kA/m印加での磁気特性が保磁力は1.6乃至12kA/mの範囲、飽和磁化は5乃至200Am2/kg(好ましくは50乃至100Am2/kg)の範囲、残留磁化は2乃至20Am2/kgの範囲である場合がトナーの現像性の点で好ましい。
これら磁性材料の添加量は結着樹脂100質量部に対して、磁性体10乃至200質量部の範囲、好ましくは20乃至150質量部の範囲で使用する場合である。
一方、非磁性トナーとして用いる場合の着色剤としては、従来より知られている種々の染料や顔料など、公知の着色剤が用いることができる。
例えばマゼンタ用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Vat Red 1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
シアン用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Blue 2、3、15:1、15:3、16、17、C.I.Vat Blue 6、C.I.Acid Blue 45、またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、155、180、C.I.Vat Yellow 1、3、20などが挙げられる。
黒色着色剤としては、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、および上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
これらの着色剤の使用量は、着色剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対して総量で0.1乃至60質量部の範囲、好ましくは0.5乃至50質量部の範囲での使用が適当である。
本発明のトナー粒子の製造方法における第(ii)工程では、該着色剤分散体に、その他トナー用添加剤を加えて、重合性単量体組成物を調製する。
上記第(ii)工程で使用されるトナー用添加剤としては、重合性単量体、架橋剤、ワックス成分、極性樹脂、重合開始剤等、重合法によってトナー粒子を形成することができる各種成分が含まれる。
上記第(ii)工程で使用されるトナー用添加剤としての重合性単量体は、重合性単量体総量での理論ガラス転移温度(Tg)の調整のために使用される。具体的には上記第(i)工程で列挙した重合性単量体が使用できるが、好ましくはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリルレート系単量体である場合である。これらは、単独または、Tgが、トナー粒子製造に用いる重合性単量体総量で、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる。Tgが40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方、75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、透明性が低下する。
上記第(ii)工程では、架橋剤を、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、結着樹脂の分子量を制御するために用いることもできる。本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部の範囲、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いることがよい。
上記第(ii)工程で使用できるワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックスおよびそれらの誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはそれらの化合物の酸アミド、エステル、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックス等が挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
上記ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、さらには3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が難しくなり、15.0質量部を超えるとトナー中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー表面に多く存在することとなり、所望の帯電特性を阻害する可能性があり好ましくない。
上記第(ii)工程では極性樹脂として、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いることができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー母粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー母粒子の表面に薄層を形成したり、トナー母粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在したりするように制御することができる。この時、着色剤や荷電制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中への着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
上記第(ii)工程で用いられる重合性開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができる。具体的には2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロリトニル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、4,4−アゾビス−4−シアノバレロニトリル、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシピバレート等の過酸化物、アルカリ金属、金属水酸化物、グリニャール試薬等の求核試薬、プロトン酸、ハロゲン化金属、安定カルボニウムイオン等が挙げられる。重合開始剤の濃度は単量体に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
これら重合性開始剤は第(ii)工程において、重合性単量体組成物にあらかじめ添加することができるが、早期重合を抑制するために、第(iii)工程における重合性単量体組成物の液滴形成工程で懸濁液中に添加することもできる。
本発明のトナー粒子の製造方法における第(iii)工程では、上記第(ii)工程で得られた重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系分散媒体中に分散させて、該重合性単量体組成物の液滴を形成する。
上記第(iii)工程で使用される分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機および無機分散剤を使用することができるが、中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので好ましく使用することができる。こうした無機分散剤の例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至20質量部の範囲で単独で使用するが好ましい。
これら無機分散剤を用いる場合には、市販のものをそのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることもできる。例えば、リン酸カリウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この際、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。しかし、重合反応終期に残留している重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するかイオン交換樹脂で脱塩したほうがよい。なお、無機分散剤は、重合終了後に、酸あるいはアルカリで溶解してほぼ完全に取り除くことができる。
上記第(iii)工程の液滴の形成においては、高剪断力を与えることができる各種分散機を用いることができる。例えば、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)、クレアミクス(エムテクニック社製)等が挙げられる。
上記第(iii)工程で形成される液滴の粒径は、重量平均粒径が2.0乃至15.0μmの範囲である場合が好ましく、3.0乃至10.0μmの範囲である場合がより好ましい。液滴の粒径が小さすぎると重合後のトナー粒子が小さくなり過ぎ、カブリや転写性が悪化してしまい、液滴の粒径が大きすぎると重合後のトナー粒子が大きくなり過ぎ、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなる。
本発明のトナー粒子の製造方法における第(iv)工程では、水系分散媒体中に液滴として分散している重合性単量体組成物を重合開始剤により重合して、トナー粒子を形成させる。
上記第(iv)工程での、重合温度は40℃以上、一般には50乃至90℃の温度範囲に設定して重合を行う。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が相分離により折出して、内包化がより完全となる。
重合反応が完了した後は、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過し、十分に洗浄した後、乾燥する。このようにして懸濁重合法による重合トナー粒子が得られる。
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体が外部添加されていてもよい。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は3.0乃至15.0μmの範囲、好ましくは4.0乃至12.0μmの範囲である場合がよい。D4が3.0μm未満の場合には、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。D4が15.0μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまい好ましくない。
また、好ましいトナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1またはD4/D1ともいう)は1.35以下、特に1.30以下である場合がより好ましい。重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.35を超える場合は、カブリや転写性が低下してしまうとともに、高解像度が得られにくくなる。
なお、本発明のトナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1は、トナー粒子の製造における、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
以下に本発明で用いられる測定方法について示す。
(1)組成分析
製造した化合物の構造決定は以下の装置を用いて行った。
1H NMR
核磁気共鳴分光分析装置(ECA−400、日本電子社製)
ESI−TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)
(2)トナーの重量平均粒径D4、および個数平均粒径D1の測定
コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機社製)およびパーソナルコンピューターを接続した。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を用いるが、例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。具体的な測定手順は、コールター社発行のコールターマルチサイザーのカタログ(2002年2月版)や、測定装置の操作マニュアルに記載されているが、以下の通りである。
前記電解水溶液100乃至150mlに測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーの100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上64.0μm以下のトナー粒子の体積、個数を測定する。得られたデータを16のチャンネルに振り分け、重量平均粒径D4、個数平均粒径D1および、D4/D1を求めた。
(3)トナーの帯電量の測定
摩擦帯電量の測定は、それぞれの二成分現像剤20gを50ccのポリ容器に入れ、常温常湿環境(23℃/60%)で一昼夜放置後、1分間に200回の振とう速度で一定時間振とうさせ、図1の装置を用いて測定した。
底に500メッシュのスクリーン3を取り付けた金属製の測定容器2に摩擦帯電量を測定しようとする現像剤約0.3gを入れ金属製のフタ4をする。このときの測定容器2全体の質量をW1(g)とする。次に、吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を−2.0kPa(ゲージ圧)とする。この状態で2分間吸引し、トナーを吸引除去する。このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。吸引後の測定容器全体の質量をW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(μC/g)は下記式に基づいて算出される。
摩擦帯電量(μC/g)=(C×V)/(W1−W2)
帯電量の評価は下記基準によって判断した。
A:摩擦帯電量が−20μC/g以下
B:摩擦帯電量が−19.9から−10.0μC/g
C:摩擦帯電量が−9.9から−5.0μC/g
D:摩擦帯電量が−4.9μC/g以上
摩擦帯電量が−10.0μC/g以下であれば良好な帯電量のトナーであると判断した。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、文中「部」および「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[合成例1]
<例示化合物(7)の合成>
下記のようにして、一般式(1)においてR3がメタクリルアミド基、R1、R2、R4、Mが水素原子である例示化合物(7)を得た。
5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸(東京化成工業社製)10部に窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド200部(関東化学社製)を加え、トリエチルアミン17.9部(キシダ化学社製)に溶解させた。混合物を5℃以下に氷冷し、メタクリロイルクロライド(東京化成工業社製)18.5部を滴下した。滴下終了後、室温で4時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、再結晶法(アセトン−クロロホルム溶液)により析出した固体を濾別して例示化合物(7)で表される化合物22.8部を得た。
得られた前記例示化合物(7)に対して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(LC−20A、島津製作所社製)を用いて純度検定を行い、上記装置により同定を行った。以下に分析結果を示す。また、図2に例示化合物(7)の1H NMRスペクトルを示した。
[例示化合物(7)についての分析結果]
HPLCの結果:純度=95.9面積%、保持時間9.88分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果:
m/z=220.065[M−H]-
1H NMR(400MHz、ACETONE、室温)の結果:
δ[ppm]=10.89(1.0H、s)、9.10(1.0H、s)、8.32(1.0H、t、J=2.67Hz)、7.86(1.0H、td、J=5.72、2.80Hz)、6.93(1.0H、d、J=9.16H、z)、5.86(1.0H、s)、5.47(1.0H、s)、2.02(3.0H、s)。
[合成例2]
<例示化合物(11)の合成>
上記合成例1と同様の操作を行い、一般式(1)においてR2がメタクリルアミド基、R1、R3、R4、Mが水素原子である例示化合物(11)を得た。以下に分析結果を示す。また、図3に例示化合物(11)の1H NMRスペクトルを示した。
[例示化合物(11)についての分析結果]
HPLCの結果:純度=97.9面積%、保持時間10.6分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果:
m/z=220.102[M−H]-
1H NMR(400MHz、DMSO、室温)の結果:
δ[ppm]=10.02(1.0H、s)、7.73(1.0H、d、J=8.39Hz)、7.46(1.0H、d、J=2.29Hz)、7.25(1.0H、d、J=10.68Hz)、5.84(1.0H、s)、5.58(1.0H、s)、1.96(3.0H、s)。
[合成例3]
<例示化合物(24)の合成>
上記一般式(1)においてR3がビニル基、R1、R2、R4が水素原子、Mがナトリウムである例示化合物(24)を得た。
上記文献記載の方法を用いて得られた例示化合物(7)16部にメタノール150部および水100部に溶解させた。反応混合物を5℃以下に氷冷し、水酸化ナトリウム4部を水50部に溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で4時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、クロロホルム100部で3回抽出した。有機層を水100部で2回洗浄し、有機層を濃縮して例示化合物(24)で表される化合物19.7部を得た。以下に分析結果を示す。
[例示化合物(24)についての分析結果]
HPLCの結果:純度=96.8面積%、保持時間15.8分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果:
m/z=186.123[M−Na]-
1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:
δ[ppm]=10.36(1H、s)、7.93(1.0H、d、J=2.29Hz)、7.64(1.0H、dd、J=8.70、2.29Hz)、6.99(1.0H、d、J=8.70Hz)、6.66(1.0H、dd、J=17.40、10.99Hz)、5.67(1.0H、d、J=17.85Hz)、5.22(1.0H、d、J=10.99Hz)。
[トナー製造例]
<トナー(A)の製造>
表1に記載の例示化合物(7)を用いてトナーを製造した。まず、高速撹拌装置T.K.ホモミクサーを備えた2リットル用の四つ口フラスコ中に、Na3PO4水溶液を添加し、回転数を10,000rpmに調整し、60℃に加温した。ここにCaCl2水溶液を徐々に添加していき、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
一方、下記組成をボールミルを用いて3時間分散させた後、エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度 70℃、数平均分子量(Mn) 704)12部および重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3部を添加して重合性単量体組成物を調製した。
・スチレン 82.0部
・アクリル酸2−エチルヘキシル 18.0部
・ジビニルベンゼン 0.1部
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.5部
・ポリエステル樹脂 5.0部
[プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物(ガラス転 移点 65℃、重量平均分子量(Mw) 10000、数平均分子量(Mn) 600 0)]
・例示化合物(7) 0.05部
次いで10,000rpmを維持しつつ造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃に維持し5時間重合を継続させ、その後液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、液温を30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
次に、重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら希塩酸を添加し、pH1.5に調整して2時間撹拌し、Ca3(PO4)2を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた。濾過器で固液を分離し、重合体微粒子を得た。
得られた重合体微粒子の水への再分散と固液分離を、Ca3(PO4)2を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分除去されるまで繰り返し行い、最終的に固液分離を行って得られた重合体微粒子を乾燥させることでトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(数平均一次粒径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(数平均一次粒径200nm)をヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で5分間乾式混合して、トナー(A)とした。
<トナー(B)乃至(N)の製造>
表1に示すように例示化合物(7)の代わりに、例示化合物(8)乃至(13)および(16)乃至(18)および(23)、(24)、(27)、(28)をそれぞれ用い、着色剤種を変える以外は同様の方法で、トナー(B)乃至(N)を得た。
得られた本発明のトナーの粒度分布および帯電性の結果を表1に示す。
[比較トナーの製造例]
<トナー(O)乃至(Q)の製造>
トナー(A)の製造における例示化合物(7)0.05部を用いないで、表2に示す着色剤種に変える以外はトナー合成例と同様な方法によりトナー(O)乃至(Q)を得た。
<トナー(R)および(S)の製造>
トナー(A)の製造における例示化合物(7)0.05部をアルキルサリチル酸アルミニウム化合物 2部(オリエント化学工業社製 ボントロンE−88)に変え、表2に示す着色剤種に変える以外はトナー合成例と同様な方法によりトナー(R)および(S)を得た。
<トナー(T)乃至(V)の製造>
・ハイマーUNI−3000[三洋化成工業社製、ポリスチレン系バインダー樹脂]
100部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度 70℃、数平均 分子量(Mn) 704) 7部
・Pigment Yellow 74 6部
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級機で分級し、重量平均径7.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(数平均一次粒径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(数平均一次粒径200nm)をヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で5分間乾式混合して、トナー(T)とした。
表2に示す着色剤種に変え、アルキルサリチル酸アルミニウム化合物 2部(オリエント化学工業社製 ボントロンE−88)を加える以外は上記と同様な方法によりトナー(U)および(V)を得た。
得られたトナーの粒度分布および帯電性の結果を表2に示す。
表1に示されるように、本発明に係る製造方法を用いて重合した実施例のトナーは、良好な帯電特性を有していることがわかった。一方、表2の比較例のトナーについて見ると、初期の段階から帯電性が低く、飽和帯電量も低いことがわかった。
以上の通り、本発明の製造方法を用いることで帯電特性が良好となる。また本発明の製造方法を用いたトナーは帯電量の絶対値、帯電の立ち上り特性とも改善して有用である。