[実施例1]画像形成装置全体の構成:図1は本実施例に係る画像形成装置の構成模式図である。この画像形成装置は、電子写真技術を利用してフルカラー画像を形成するレーザービームプリンタである。
本実施例に示す画像形成装置は、現像剤としてのシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のトナーを用いてトナー画像を形成する第1から第4の画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを所定の方向に一列に並設したインライン方式の装置である。各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdは、それぞれ、像担持体としてドラム形状の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)1を有している。各画像形成部Pa〜Pdにおいて、感光ドラム1の外周面(表面)の周囲には、帯電部材としてのドラム帯電器2と、露光手段としての走査露光装置3が設けられている。また感光ドラム1表面の周囲には、現像手段としての現像器4と、ドラムクリーナ6が設けられている。そして感光ドラム1に跨るように搬送部材としての中間転写ベルト7が設けている。この中間転写ベルト7は、駆動ローラ8aと、二次転写対向ローラ8bと、に掛け回してある。中間転写ベルト7の内周面(内面)側には、各感光ドラム1と中間転写ベルト7を挟むように第1の転写部材としての一次転写ローラ5が設けられている。中間転写ベルト7の外周面(表面)側には、二次転写対向ローラ8bと中間転写ベルト7を挟むように第2の転写部材としての二次転写ローラ9が設けられている。
本実施例の画像形成装置は、ホストコンピュータ、ネットワーク上の端末機、外部スキャナなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて制御部100が所定の画像形成シーケンスを実行する。制御部100はCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成シーケンス、定着ローラシワ回復モード、画像形成に必要な各種テーブル及び各種プログラムなどが記憶されている。
本実施例の画像形成装置の画像形成動作を、図1を参照して説明する。制御部100は、プリント指令に応じて実行される画像形成シーケンスに従い各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを順次駆動する。先ず、各感光ドラム1が所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転されると共に、駆動ローラ8aにより中間転写ベルト7が各感光ドラム1の回転周速度と対応した周速度で矢印方向へ回転される。1色目のシアンの画像形成部Paにおいて、感光ドラム1表面はドラム帯電器2によって所定の極性・電位に一様に帯電される。次に走査露光装置3が外部装置から出力される画像データ(画像情報)に応じたレーザ光を感光ドラム1の帯電面に対し走査露光する。これにより感光ドラム1表面の帯電面に画像データに応じた静電潜像(静電像)が形成される。そしてこの静電潜像が現像器4によってシアンのトナーを用いて現像される。これによって感光ドラム1表面上にシアンのトナー画像(現像像)が形成される。同様の帯電、露光、現像の各工程が、2色目のマゼンタの画像形成部Pb、3色目のシアンのイエローの画像形成部Pc、4色目のブラックの画像形成部Pdにおいても行われる。各感光ドラム1表面に形成された各色のトナー画像は感光ドラム表面と中間転写ベルト7表面との間の一次転写ニップ部で一次転写ローラ5によって中間転写ベルト7表面上に順番に重ねて転写される。これにより中間転写ベルト7表面にフルカラーのトナー画像が担持される。トナー画像転写後の感光ドラム1表面は、感光ドラム1表面に残留する転写残トナーがドラムクリーナ6により除去され次の画像形成に供される。
一方、給紙カセット10から記録材Pが繰り出しローラ11により1枚ずつ繰り出されレジストローラ13に搬送される。この記録材Pはレジストローラ13によって中間転写ベルト7表面と二次転写ローラ9の外周面(表面)との間の二次転写ニップ部に搬送される。そしてこの搬送過程において二次転写ローラ9によって中間転写ベルト7表面のトナー画像が記録材P上に転写される。これにより記録材P上に未定着のフルカラーのトナー画像が担持される。
フルカラーのトナー画像を担持した記録材Pは定着部としての定着装置13の後述する定着ニップ部Ntに導入される。そしてこの定着ニップ部Ntで記録材Pを挟持搬送しつつトナー画像に熱とニップ圧を印加し、これにより記録材P上のトナー画像は記録材Pに加熱定着される。定着ニップ部Ntを出た記録材Pは排出ローラ14により排出トレー15上に排出される。
定着装置(定着部)の構成:以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。
図2は定着装置13の横断面構成模式図である。この定着装置13は外部加熱方式の定着装置である。本実施例に示す定着装置13は、定着回転体としての定着ローラ20と、バックアップ部材としての加圧ローラ21と、加熱手段としての加熱ユニット22などを有している。定着ローラ20と、加圧ローラ21と、加熱ユニット22は、何れも長手方向に長い部材である。
定着ローラ20は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなる丸軸状の芯金20Aを有している。そしてこの芯金20Aの外周面上に弾性体としてのシリコーンゴムなどを主成分とする弾性層20Bが形成され、この弾性層20Bの外周面上に表面層としてPTFE、PFA又はFEPなどを主成分とする離型層20Cが形成されている。つまり、定着ローラ20は、表面層としての離型層20Cの下層に弾性体としての弾性層30Bを有している。この定着ローラ20は芯金20Aの長手方向両端部が装置フレーム(不図示)に回転可能に支持されている。
加圧ローラ21は、アルミニウムなどを主成分とする丸軸状の芯金21Aを有している。そしてこの芯金21Aの外周面にシリコーンゴム等を主成分とする弾性層21Bが形成され、この弾性層21Bの外周面上に最外層(表面層)としてPTFE、PFA又はFEPなどを主成分とする離型層21Cが形成されている。この加圧ローラ21は定着ローラ20の下方で定着ローラ20と並列に配置され、芯金21Aの長手方向両端部が装置フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に、かつ上下動可能に支持されている。この芯金21Aの長手方向両端部の軸受は加圧バネ(不図示)により所定の加圧力をもって加圧ローラ21の径方向で定着ローラ20に向けて付勢されている。これにより加圧ローラ21は、加圧ローラ21の外周面(表面)が定着ローラ20の外周面(表面)に接触しその状態に定着ローラ20に加圧される。これによって、加圧ローラ21の弾性層21Bと定着ローラ20の弾性層20Bとを弾性変形させ、定着ローラ20表面と加圧ローラ21表面との間に所定幅の定着ニップ部Ntを形成している。
加熱ユニット22は、加熱体としてのセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)23と、ヒータ23を支持するヒータホルダ24と、ヒータホルダ24の外周にルーズに外嵌されている筒状の可撓性フィルム25などを有している。ヒータ23は、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックを主成分とする薄板状のヒータ基板23Aを有している。このヒータ基板23Aの可撓性フィルム25側の基板面には、銀、パラジウム等を主成分とした抵抗発熱体23Bがヒータ基板23Aの長手方向に沿って設けられている。またこの基板面には、ガラス又はフッ素樹脂、ポリイミド等の耐熱樹脂を主成分とする保護層23Cが抵抗発熱体23Bを覆うように設けられている。可撓性フィルム25は、可撓性フィルム25の内周長がヒータホルダ24の外周長より所定長さ長くなるように形成され、ヒータホルダ24に無張力にてルーズに外嵌されている。ヒータホルダ24の長手方向両端部には、可撓性フィルム25の回転動作中の長手方向への移動が規制するためのフランジ(不図示)が設けられている。可撓性フィルム25の層構成として、ポリイミドを主成分とする無端帯状のフィルム基層の外周面上をPFAを主成分とする無端帯状の表面層で被覆するという二層構造が採用されている。
この加熱ユニット22は定着ローラ20の上方で定着ローラ20と並列に配置されている。そしてヒータホルダ24の長手方向両端部は加圧バネ(不図示)により所定の加圧力をもって可撓性フィルム25の径方向で定着ローラ20に向けて付勢されている。これによって定着ローラ20表面には可撓性フィルム25を挟んでヒータ24が加圧される。これによって定着ローラ20の弾性層20Bを弾性変形させ、定着ローラ20表面と可撓性フィルム25の外周面(表面)との間に所定幅の加熱ニップ部Nkを形成している。加熱手段は加熱ユニット22に限られずハロゲンヒータを内包した加熱ローラを用いてもよい。
図1を参照して、定着装置の加熱定着動作を説明する。制御部100は、プリント指令に応じて実行される画像形成シーケンスに従い駆動源としての定着モータMを回転駆動する。この定着モータMの出力軸の回転は所定のギア列(不図示)を介して定着ローラ20の芯金20Aに伝達される。これにより定着ローラ20は矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転する。定着ローラ20の回転は定着ニップ部Ntにおいて加圧ローラ21表面と定着ローラ20表面との摩擦力によって加圧ローラ21に伝わる。これにより加圧ローラ21は定着ローラ20の回転に追従して矢印方向へ回転する。また定着ローラ20の回転は加熱ニップ部Nkにおいて定着ローラ20表面と可撓性フィルム22表面との摩擦力によって可撓性フィルム25に伝わる。これにより可撓性フィルム25は可撓性フィルム25の内周面(内面)がヒータ23の保護層23C表面と接触しながら定着ローラ20の回転に追従して矢印方向へ回転する。また制御部100は、画像形成シーケンスに従い通電制御部としてのトライアック30をオンする。トライアック30はAC電源40から印加される電力を制御しヒータ23の抵抗発熱体23Bへの通電を開始する。この通電により抵抗発熱体23Bが発熱してヒータ23は急速に昇温し可撓性フィルム25を加熱する。ヒータ23の温度はヒータ基板23Aの裏面(加熱ニップ部Nkと反対側の面)に設けられた温度検知部材としてのサーミスタ26により検知される。制御部100は、サーミスタ26からの出力信号(温度検知信号)を取り込み、この出力信号に基づいてヒータ23を所定の定着温度(目標温度)に維持するようにトライアック30を制御する。これによりヒータ23は所定の定着温度に温調される。
回転動作している定着ローラ20は、加熱ニップ部Nkにおいて定着ローラ20表面がヒータ23により可撓性フィルム25を介して加熱される。これにより定着ローラ20には、記録材Pが担持する未定着のトナー画像(未定着画像)tを定着ニップ部Ntで加熱定着するために必要十分な熱量が与えられる。定着モータMを回転駆動し、かつヒータ23を温調している状態において、未定着のトナー画像tを担持した記録材Pがトナー画像担持面を上向きにして定着ニップ部Ntに導入される。この記録材Pは定着ニップ部Ntで定着ローラ22表面と加圧ローラ21表面とにより挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程においてトナー画像tが定着ローラ20表面で加熱されて溶融すると共にこの溶融したトナー画像tに定着ニップ部Ntによるニップ圧が印加され、これによりトナー画像tは記録材Pの面上に加熱定着される。
本実施例に示す外部加熱方式の定着装置を用いることによるメリットとしては、第1に、定着ローラの弾性層の厚みを厚くしても、伝熱効率が阻害されないというメリットがある。これに対して、筒状の定着ローラを内側からハロゲンヒータ等の加熱源により加熱するタイプの内部加熱方式の定着装置(不図示)では、定着ローラの弾性層を厚くすると伝熱が阻害され、定着ローラ表面の温度上昇が遅くなってしまう。このため定着可能になるまでのウェイトタイムが長くなり、ユーザーの利便性が損なわれる。第2に、定着ローラ20の弾性層20Bの厚みが厚くできると、定着ローラ20表面を柔らかくでき、微小な凹凸を持つ記録材P上のトナー画像tに、定着ローラ20表面を均一に密着させ、ムラなく熱を与えることができるというメリットがある。従って、外部加熱方式の定着装置13を用いることによって、ユーザーの利便性を損なうことなく、溶融ムラの少ない良好な画質を得ることができる。また、定着ローラ20の弾性層20Bが厚く、離型層20Cの厚みが薄いほど、定着ローラ20表面を柔らかくでき、良好な画質を得ることができる。
しかしながら、弾性層20Bが厚く、離型層20Cの厚みが薄い定着ローラ20を用いた外部加熱方式の定着装置13で、加熱定着動作を繰り返すと、定着ローラ20の離型層20Cに微小なシワが発生する可能性がある。このシワは、離型層20Cの厚みが薄い場合に発生しやすく、特に離型層20Cの厚みが20μm以下の場合に発生しやすい。また、離型層20Cの形成方法は、大別して、コーティング製法とチュービング製法の2つの製法があるが、離型層20Cがコーティング製法によって形成されている場合にシワは発生しやすい。チュービング製法とは、離型層20Cを形成するための材料(以下、離型層の材料と記す)を押し出し成型などでチューブ状に成形し、このチューブ状の成形物を弾性層20Bの外周面に被せて離型層20Cとするものである。コーティング製法とは、スプレーやディッピングなどの製法で、弾性層20Bの外周面上に離型層20Cの材料を塗布して離型層20Cとするものである。一般に、コーティング製法により離型層20Cとして得られる薄膜は、チュービング製法に比べて離型層20Cの材料の配向などが起こりにくく、柔軟な傾向がある。本実施例では離型層20Cをコーティングによって形成している。そして離型層20Cの材料はフッ素化合物を主成分とする。
定着ローラ表面のシワ発生メカニズムの説明:定着ローラ20は、下記の熱膨張と収縮を繰り返し行なうことによって、定着ローラ20の表面層20Cにシワが発生する。図3の(A)はシワが発生した離型層20Cの横断面模式図、(B)は折り目がついた離型層20Cの横断面模式図である。
(1)熱膨張:定着装置が加熱定着動作を行うとき、定着ローラ20の温度が上がると、定着ローラ20は熱膨張する。シリコーンゴム等を主成分とする弾性層20Bの熱膨張はフッ素樹脂等からなる離型層20Cに比べて大きい。このため、離型層20Cは弾性層20Bの熱膨張によって弾性層20Bの周方向へ引っ張られて伸びる。弾性層20Bの厚みが厚いほど、定着ローラ20の外径は膨張する。
(2)収縮:定着装置の加熱定着動作が終了し、定着ローラ20の温度が下がると、定着ローラ20は収縮し元の外径に戻る。弾性層20Bの熱膨張によって周方向へ引っ張られて伸び過ぎた離型層20Cは、定着ローラ20が収縮しても元の周長に戻らず、図3(A)のように弛んでシワになってしまう。
定着ローラの膨張と収縮の繰り返しによる離型層の塑性変形:再び、定着装置が次の加熱定着動作を行うときに、定着ローラ20の弾性層20Bが熱膨張することにより離型層20Cは上述のように伸びる。そして定着装置の加熱定着動作が終了して、定着ローラ20の弾性層20Bが冷えると離型層20Cはまた弛んでシワになる。このように定着ローラ20は上記(1)〜(2)で説明したように膨張と収縮を繰り返す。
定着ローラ20が収縮するときに発生している離型層20Cのシワは、離型層20Cが弛むことにより発生するので、定着装置が加熱定着動作を行うときには熱膨張によって伸びるため問題はない。しかし、離型層20Cのシワは、離型層20Cにおいてシワが発生し弱くなった同じ位置に繰り返し発生するため、定着ローラ20が膨張と収縮を繰り返すうちにシワは深くなる。最終的に、離型層20Cのシワは離型層20Cの材料の弾性限界を超えて折り曲がり、その状態に塑性変形する。即ち、図3(B)のように、離型層20Cに“折り目”がついてしまい、離型層20Cはシワの形状で安定するようになってしまう。すると、定着装置が加熱定着動作を行うときに、定着ローラ20の弾性層20Bが熱膨張をしてシワを伸ばそうとする力よりも、シワの形状を維持する応力が強くなり、弾性層20Bが熱膨張をしても、離型層20Cのシワが伸びきらなくなってしまう。このため、記録材Pにプリントされた画像に、定着ローラ20の表面のシワ形状が転写される不具合が発生してしまう。
定着ローラ回復モード(表面層形状回復モード)の説明:図4を参照して、定着ローラ20の離型層20Cを元の平滑な状態に回復する定着ローラ回復モードを説明する。図4は本実施例の画像形成装置の定着ローラ回復モードのフローチャートである。
S1では、定着ローラ回復モードをユーザーが選択したか否かを判断する。S1において、定着ローラ回復モードが選択された場合(Yes)、S2に進む。定着ローラ回復モードの選択は、画像形成装置に設けられている操作パネル(不図示)や、外部装置から行われる。例えば画像形成装置の画像形成動作が終了したとき、ユーザーがプリントされた画像に異常を感じ、定着ローラ20の表面層20Cの表面性回復が必要と判断すると、操作パネルに表示されている定着ローラ回復モードを選択する。或いは外部装置の所定の設定画面に表示されている定着ローラ回復モードを選択する。このように本実施例の画像形成装置は定着ローラ回復モードが選択可能である。定着ローラ回復モードの選択はユーザーに限られず画像形成装置で自動的に設定できるようにしてもよい。例えば画像形成装置に設けられている記録材センサ(不図示)からの出力信号(記録材検知信号)に基づいてプリント枚数をカウントする。そしてこのカウントしたプリント枚数が所定の定着ローラ回復モード用基準プリント枚数に達したとき定着ローラ20の表面性回復が必要と判断し、自動的に画像形成シーケンスから定着ローラ回復モードに移行するようにする。
S2では、メモリに記憶されている所定の目標温度−周速度設定テーブルから定着ローラ回復用の所定の目標温度(以下、表面性回復目標温度と記す)を取り込む。そしてプリント指令による定着装置13の加熱定着動作における所定の定着温度を表面性回復目標温度に設定する。この表面性回復目標温度は、定着ローラ20の離型層20Cの材料の融点よりも低い温度としてある。また、目標温度−周速度設定テーブルから定着ローラ回復用の所定の周速度(以下、表面性回復周速度と記す)を取り込み、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作における定着ローラ20の周速度(プロセススピード)を表面性回復周速度に設定する。この表面性回復周速度は、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作における定着ローラ20の周速度よりも遅い速度としてある。つまり、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作におけるプロセススピードよりも遅いプロセススピードで定着ローラ20を回転するようにプロセススピードを切り替えるようにしている。定着ローラ20の周速度が遅ければ、加熱ニップ部Nkにおいて、ヒータ23から定着ローラ20へ熱伝達する時間が長くなり、定着ローラ20へ与える熱量が多くなる。従って、定着ローラ回復モードでは、上述のようにプロセススピードを切り替えることにより、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作において定着ローラ20に与える熱量Qnよりも大きい熱量Qhを定着ローラ20に与えることができる。
S3では、表面性回復周速度に対応した所定の回転速度で定着モータMを回転駆動し定着ローラ20の回転を開始する。またトライアック30をオンして、このトライアック30でAC電源40から印加される電力を制御しヒータ23の発熱抵抗層23Bへの通電を開始する。
S4では、サーミスタ26から出力信号を取り込み、この出力信号が表面性回復目標温度に達したか否かを判断する。表面性回復目標温度に達した場合(Yes)、サーミスタ26の出力信号が表面性回復目標温度を維持するようにトライアック30によりヒータ23の抵抗発熱体23Bへの通電を制御し、しかる後にS5に進む。
S5では、定着ローラ20が少なくとも一回転以上即ち定着ローラ20の外周一周分以上の所定の長さ分回転したか否かを判断する。定着ローラ20がこの所定の長さ分回転した場合(Yes)、S6に進む。
S6では、定着モータMの回転駆動を停止すると共に、トライアック30をオフする。これにより、定着ローラ20の回転が停止すると共に、ヒータ23への通電が停止される。
定着ローラ回復モードによる定着ローラ表面の回復メカニズム:定着ローラ回復モードによって、定着ローラ20の離型層20Cが元の平滑な状態に回復するメカニズムを説明する。前述したように、元々は平滑だった離型層20Cは、熱膨張、収縮の繰り返しの変形によって、平滑な形状を維持する限界応力を超えて塑性変形し、シワ形状を維持するようになってしまっている。そこで、離型層20Cについてしまったシワ形状を維持する応力を超えた力で、離型層20Cのシワを押し伸ばし、平滑な状態へ塑性変形させることで、離型層20Cを元の平滑な状態に回復させることができる。ただし、プリント指令による定着装置の加熱定着動作では、定着ローラが熱膨張をしてシワを伸ばそうとする力や、可撓性フィルムを介してヒータで加圧して押し伸ばす力よりも、シワの形状を維持する応力が強いため、離型層のシワが伸びきらない。離型層20Cを元の平滑な状態に回復させる上で、シワの形状を維持する応力の強さが問題となる。離型層20Cに使われる樹脂材料の応力は、この樹脂材料の融点以下の温度でも、温度が高くなるほど減少する。このため、離型層20Cを、曲げたり、伸ばしたりしやすくなる。定着ローラ回復モードでは、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合に与える熱量Qnよりも大きい熱量Qhを定着ローラ20の離型層20Cに与えている。このため、加熱ニップ部Nk内で、離型層20Cの温度が上がり、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合よりも離型層20Cの応力が低い状態になる。離型層20Cにシワが発生している場合、シワの形状を維持しようとする応力も弱くなり、容易に押し伸ばすことができるようになる。
また、定着ローラ回復モードにおいて、定着ローラ20の周速度を、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作よりも遅い周速度に切り替えている。つまり、ヒータにより定着ローラ表面の加熱を行うときの単位面積当りの熱量が記録材にトナー画像を加熱定着するときよりも大きくなる即ちプリント指令による定着装置の加熱定着動作の場合よりも大きくなるように定着ローラの周速度を切り替えている。これにより、加熱ニップ部Nkにおいて、定着ローラ20の離型層20Cを、可撓性フィルム25を介してヒータ23で加熱しながら加圧する期間を長くすることができる。これにより、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作よりも離型層20Cを押し伸ばす量を増やすことができる。
すなわち、定着ローラ回復モードでは、第一に、離型層20Cのシワ形状を維持する応力を弱くすることで、離型層20Cのシワ形状を維持しようとする応力の限界を超えて押し伸ばすことができる。第二に、離型層20Cを加圧する期間を長くすることによって、離型層20Cのシワ形状を維持できる変形量の限界を超えて押し伸ばすことができるため、離型層20Cを平滑な形状へ塑性変形させることができる。平滑な形状に塑性変形した離型層20Cには、平滑な形状を維持しようとする応力が発生するため、加熱ニップ部Nkの圧力(ニップ圧)から開放されても、平滑な状態を維持させることができる。離型層20Cに与える熱量は大きいほうが効果は大きく、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合よりも大きな熱量を与える必要がある。ただし、ヒータ23の温度は、離型層20Cの融点よりも低い温度とする必要がある。
離型層20Cを離型層20Cの樹脂材料の融点以上の温度で加熱すれば、離型層20Cの応力はさらに小さくなる。ところが、加熱ニップ部Nkにおいて、溶けた離型層20Cが可撓性フィルム25表面に融着したり、定着ローラ20から溶けた離型層20Cが剥がれて定着ローラ20が破損したりする可能性がある。また、定着ローラ20から溶けた離型層20Cが剥がれることにより、シリコーンゴムなどからなる弾性層30Bが劣化するなど、離型層20Cのシワ以外の問題が発生する可能性がある。
離型層20C自体が、部分的に削れて傷がついたり、凸凹になったりした状態を元の平滑な状態に回復する目的であれば、離型層20Cを溶融させて凸凹を埋め、レべリングさせる必要がある。
本実施例の定着ローラ回復モードは、離型層20Cが折り曲がってできたシワを回復させるものであり、そのためには離型層20Cの応力を解消するようにすればよい。従って、離型層20C自体が、部分的に削れて傷がついたり、凸凹になったりした状態を元の平滑な状態に回復する場合とは、目的、メカニズムが異なる。本実施例の定着ローラ回復モードによる離型層20Cの回復は、離型層20Cの融点よりも十分低い温度でも達成可能であるため、離型層20Cは溶融させない方が望ましい。
また定着ローラ回復モードでは、定着ローラ回復モードのプロセススピードをプリント指令による定着装置13の加熱定着動作におけるプロセススピードよりも遅くし、加熱ニップ部Nにおいてヒータ23による定着ローラ20表面の加熱時間を長くしている。これにより、離型層20Cの樹脂材料の融点よりも低い温度でも、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合に与える熱量Qnよりも大きい熱量Qhを離型層20Cに与えることができる。
実験結果:本実施例の画像形成装置における定着ローラ回復モードの効果を実験により確認した。実験に用いた画像形成装置は、プロセススピードが90mm/sで、14枚/分のフルカラープリント出力が可能なレーザービームプリンタである。実験に用いた画像形成装置に搭載した定着装置の構成を説明する。ヒータ23は、厚み1.0mm幅7.0mmのアルミナからなるヒータ基板23A上に、銀とパラジウムからなる厚み10μm、幅4.0mmの抵抗発熱体23Bを備えたものである。そしてこの抵抗発熱体23Bを保護層として厚み60μmのガラス層23Cで覆っている。可撓性フィルム25は、内径20mm、厚み30μmのポリイミド樹脂からなるフィルム基層上に、厚み20μmのPFA樹脂からなる離型層を備えている。定着ローラ20は、アルミ製の外径14mmの芯金20A上に、厚み3.0mmの熱伝導率0.2 W/m・Kのシリコーンゴムからなる弾性層20Bを形成し、この弾性層20B上に厚み10μmのPFA樹脂からなる離型層20Cを設けたものである。離型層20CのPFA樹脂の融点は315℃である。加圧ローラ21は、アルミ製の外径14mmの芯金21A上に、厚み3.0mmの熱伝導率0.2 W/m・Kのシリコーンゴムからなる弾性層21Bを形成し、この弾性層21B上に厚み20μmのPFA樹脂からなる離型層21Cを設けたものである。ヒータ23は加圧力98N(10kgf)で定着ローラ20表面に加圧されている。可撓性フィルム25表面と定着ローラ20表面との間に形成される加熱ニップ部Nkの幅は5.0mmである。加圧ローラ21は加圧力147N(15kgf)で定着ローラ20表面に加圧されている。定着ローラ20表面と加圧ローラ21表面との間に形成される定着ニップ部Ntの幅は6.0mmである。定着ニップ部Ntから記録材搬送方向下流側60mmの位置には、排出ローラ14が設けられ、定着ニップ部Ntを通過した記録材は、排出ローラ14に送られ、排出される。
実験に用いた画像形成装置では、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作を行うときのヒータ23は定着温度180〜200℃で温調される。この定着温度のとき、加熱ニップ部Nk通過直後の定着ローラ20の表面温度は150〜170℃である。
この画像形成装置を用い、気温15℃、湿度15%の環境下において、記録材として一般的なLBP印刷用紙、坪量80g/m2、A4(幅210mm縦297mm)サイズの記録紙を用い、印字率5%の文字画像を50000枚プリントした。すると、プリントされた画像にシワのような模様が現れるようになった。定着ローラ20の表面を観察したところ、定着ローラ20の表面がシワになっていた。この定着ローラ20表面のシワを、定着ローラ回復モードによって回復させる試験を行った。定着ローラ回復モードが開始されると、プロセススピードを20mm/sに設定して定着装置13の定着ローラ20の回転を開始した。ヒータ23は目標温度220℃を維持するように温調した。
プリント指令による定着装置13の加熱定着動作に比べて、ヒータ23の目標温度は20〜40℃高く設定され、加熱ニップ部Nkにおいて、ヒータ23が定着ローラ20表面を加熱する時間は1周あたり4.5倍となる。定着ローラ回復モードでは、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合に比べて離型層20Cに大きい熱量を与えられる。
ヒータ23の温度が目標温度に立ち上がった後、定着ローラ20表面5周分にあたる220mm、11秒間、定着ローラ20を回転しながら目標温度を維持する。このときの加熱ニップ部Nk通過直後の定着ローラ20の表面温度は210℃であり、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作の場合に比べて40〜60℃高くなった。しかし、離型層20CのPFA樹脂の融点315℃に比べて、十分低い温度である。
その後、ヒータ23への通電を停止して、定着ローラ20の回転も停止する。この定着ローラ回復モードの後、定着ローラ20の表面を観察したところ、定着ローラ20の表面のシワはなくなっていた。プリント指令による定着装置13の加熱定着動作にて、プリントを行って確認したところ、プリントされた画像にシワのような模様はなくなっていた。その後、印字率5%の文字画像を10000枚プリントしたが、シワは発生しなかった。
定着ローラ回復モードは、定着ローラ20が冷えている状態から開始しても、定着ローラ20表面のシワを伸ばすことができる。また定着ローラ20が熱くなっていて、弾性層20Bが大きく熱膨張した状態から開始しても、定着ローラ20表面のシワを伸ばすことができる。定着ローラ20の熱膨張が小さくても、大きくても、定着ローラ回復モードの結果、離型層20Cは平滑な形状に塑性変形し、以後、離型層20Cを平滑に保とうとする応力が働く。定着ローラ20の弾性層20Bが大きく熱膨張していた場合、定着ローラ20が冷えると定着ローラ20の外径が大きく収縮し、離型層20Cも弛んでしまう。しかし離型層20Cには平滑な形状を保とうとする応力が働いているので、図3(A)のような緩いシワ状態になり、図3(B)のように深いシワにはならない。離型層20Cが図3(A)のような緩いシワ状態になっても、プリント指令による定着装置13の加熱定着動作での熱膨張で離型層20Cのシワは伸びるので、プリントされた画像には不具合は生じない。
以上説明したように、定着ローラ回復モードでは、定着ローラ20の離型層20Cに優れたシワ伸ばし効果が得られた。シワ伸ばし効果は一時的なものではなく、定着ローラ回復モードを行ったときから離型層20Cに平滑な形状を保とうとする応力が働かなくなるまでの一定期間維持される。定着ローラ20の離型層20C再びシワが発生したとしても、再び定着ローラ回復モードを選択すれば良い。
[実施例2]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、定着ローラ回復モードが異なる点を除き、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。本実施例の画像形成装置における定着ローラ回復モードは、ヒータ温度が表面性回復目標温度に達したとき、定着ローラをステップ送りするようにした点に特徴がある。図5は本実施例の画像形成装置の定着ローラ回復モードのフローチャートである。
S21からS24は、それぞれ、実施例1の画像形成装置における定着ローラ回復モードのフローチャートのS1からS4の処理と同じである。
S25では、定着ローラをステップ送りする。所定の時間Tsの期間、定着モータMの回転駆動を停止して、定着ローラ20の回転を停止させる。所定の時間Ts経過後に、定着モータMを回転駆動し定着ローラ20の回転を開始して、定着ローラ20を定着ニップ部Ntの幅分(6mm)回転させた後、再び定着モータMの回転駆動を停止して、定着ローラ20の回転を停止させる。上記定着モータMの回転駆動の停止と回転駆動とを所定の回数繰り返し行なうことにより、定着ローラ20を定着ローラ20の外周一周分以上ステップ送りする。
S26は実施例1の画像形成装置における定着ローラ回復モードのフローチャートのS5の処理と同じであり、S27は実施例1の画像形成装置における定着ローラ回復モードのフローチャートのS6の処理と同じである。
本実施例の画像形成装置の定着ローラ回復モードでは、定着ローラ20をステップ送りすることにより、加熱ニップ部Nkにおける定着ローラ20と可撓性フィルム25との接触時間が長く取れる。これにより加熱ニップ部Nkにおいて、ヒータ23から定着ローラ20へ熱伝達する時間が長くなり、ヒータ23から定着ローラ20に与える熱量が多くなる。つまり、定着ローラ20を回転させるよりも表面性回復目標温度より低いヒータ温度で実施例1の定着ローラ回復モードの場合よりも多くの熱量Qhを定着ローラ20へ与えることができる。
本実施例の画像形成装置における定着ローラ回復モードの効果を実験により確認した。実験に用いた画像形成装置は、実施例1と同様であり、50000枚プリントした際に発生した定着ローラ20表面のシワに対する、定着ローラ回復モードの効果をテストした。定着ローラ回復モードが開始されると、画像形成装置の画像形成動作を開始し、定着装置13の定着ローラ20の回転も開始され、ヒータ15は表面性回復目標温度200℃で温調される。
本実施例では、ヒータ23の温度が表面性回復目標温度200℃に立ち上がった後、定着ローラ20の回転を停止する。定着ローラ20の回転を3秒間停止した後に、定着ニップNtの幅6mm分定着ローラ20を回転させて、再び定着ローラ20の回転を停止する。これを15回繰り返して、定着ローラ20の表面二周分にあたる90mm、定着ローラ20をステップ送りしながら表面性回復目標温度を200℃に維持した後、ヒータ23への通電を停止して、定着ローラ20の回転を停止する。
定着ローラ回復モードにおけるヒータ23の表面性回復目標温度は、実施例1の画像形成装置における定着ローラ回復モードの表面性回復目標温度に比べて0〜20℃高いだけで大きく変わらない。ただし、加熱ニップ部Nkにおいて、ヒータ23が定着ローラ20表面の単位面積当りの加熱時間は、本実施例の定着ローラ回復モードでは、実施例1の定着ローラ回復モードの場合の55倍となっている。本実施例の定着ローラ回復モードでは、実施例1の定着ローラ回復モードに比べて、定着ローラ20の離型層20Cに大きい熱量を与えることができる。このときの加熱ニップ部Nk通過直後の定着ローラ20の表面温度は195℃であった。
この定着ローラ回復モードの後、定着ローラ20の表面を観察したところ、定着ローラ20の表面のシワはなくなっていた。プリント指令による定着装置13の加熱定着動作にて、プリントを行って確認したところ、プリントされた画像にシワのような模様はなくなっていた。
[実施例3]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、定着ローラ回復モードが異なる点を除き、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。本実施例の画像形成装置における定着ローラ回復モードは、ユーザーが設定したプリント枚数に応じた画像形成動作が終了する毎に制御部100は定着ローラ回復モードを自動的に選択するようにした点に特徴がある。またヒータの温度が所定の表面性回復目標温度に達したとき定着ローラの回転を停止するようにした点に特徴がある。図6は本実施例の画像形成装置の定着ローラ回復モードのフローチャートである。
S31では、ユーザーが設定した予定プリント枚数の画像形成動作が終了したか否かを判断する。予定プリント枚数の画像形成動作が終了した場合(Yes)に、S32に進む。
S32〜S34は、それぞれ、実施例1の画像形成装置における定着ローラ回復モードのフローチャートのS2からS4の処理と同じである。
S35では、所定の時間Ts(3秒間)の期間、定着モータMの回転駆動を停止して、定着ローラ20の回転を停止させる。
S36では、トライアック30をオフする。これによりヒータ23への通電が停止される。
本実施例の画像形成装置の定着ローラ回復モードでは、ヒータ温度を表面性回復目標温度に維持したまま、定着ローラ20の回転を所定の時間Ts停止させる。これにより定着ローラ20を静止した状態で定着ローラ20表面を加熱できるため、実施例1の定着ローラ回復モードよりも多くの熱量Qhを定着ローラ20表面に与えることができる。これによって、定着ローラ20の表面のうち、加熱ニップ部Nkで加熱ニップ部Nkの幅分だけ定着ローラ20表面のシワを伸ばすことができる。毎回のプリント後に定着ローラ20の回転を所定の時間Ts停止させることで、加熱ニップ部Nk幅分ずつ定着ローラ20表面のシワを伸ばすことができる。定着ローラ20の回転停止位置、及び定着ローラ20表面の加熱位置はランダムであるが、毎回のプリントの後に繰り返されることで、最終的に定着ローラ20表面の全周分のシワが伸ばされる。定着ローラ20表面のうち、同じ位置ばかり停止・加熱されないように、停止・加熱を行った位置を記憶して、停止・加熱を行った位置をずらすように定着ローラ20の回転を制御するようにしてもよい。
定着ローラ20表面のシワは徐々に悪化するので、毎回のプリントで一部分ずつ回復させていけば、定着ローラ20表面のシワが悪化する前に、定着ローラ20の表面性を回復させることができ、定着ローラ20表面にシワが発生することを予防することができる。
本実施例の画像形成装置における定着ローラ回復モードの効果を実験により確認した。実験に用いた画像形成装置は、実施例1と同様であり、毎回のプリント終了後に、定着ローラ20表面性回復のために、上記の停止・加熱を行う。記録材Pへのトナー画像tの加熱定着が終了し、記録材Pが定着ニップ部Ntを抜けた後、ヒータ23の表面性回復目標温度を200℃に変更する。
ヒータ温度が表面性回復目標温度に立ち上がった後、定着ローラ30の回転を停止する。ヒータ温度を表面性回復目標温度に維持しながら3秒間停止した後に、ヒータ23の通電を停止する。このときの加熱ニップ部Nk通過直後の定着ローラ20の表面温度は195℃であった。
この画像形成装置を用いて、10枚の連続プリントを、10分間繰り返す、間欠通紙耐久試験を行った。気温15℃、湿度15%の環境下において、印字率5%の文字画像を印字し、記録材Pとして、一般的なLBP印刷用紙、坪量80g/m2、A4(幅210mm縦297mm)サイズ紙を用いた。比較として、プリント終了後の停止・加熱を行わない画像形成装置でも同様の間欠通紙耐久試験を行った。停止・加熱を行っていない画像形成装置は、50000枚プリントしたところ、プリントされた画像にシワのような模様が現れるようになった。停止・加熱を行っている本実施例の画像形成装置は、50000枚プリントしても、プリントされた画像にシワのような模様が現れることはなく、良好な画像が得られた。