〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。
図2は、本実施形態にかかるカラー画像形成装置(画像形成装置)の概略構成を示す断面図である。
この図に示すように、このカラー画像形成装置は、4色の可視像形成ユニット40(40Y,40M,40C,40B)を記録紙P(被加熱材)の搬送路に沿って配列した所謂タンデム式のプリンタである。具体的には、記録紙Pの供給トレイ55と定着装置1とを繋ぐ搬送路に沿って記録紙Pを搬送する記録紙搬送手段50と、上記搬送路に沿って配設された4組の可視像形成ユニット40Y,40M,40C,40Bとを備えている。そして、記録紙搬送手段50によって上記搬送路に沿って搬送される記録紙Pに、各可視像形成ユニット40Y,40M,40C,40Bによって各色トナーを多重転写した後、定着装置1によってトナーを記録紙Pに定着させてフルカラー画像を形成するようになっている。
記録紙搬送手段50は、駆動ローラ51と、アイドリングローラ52と、これら両ローラによって架張された無端状の搬送ベルト53とを備えている。また、駆動ローラ51を図示しない駆動手段によって回転駆動することで、搬送ベルト53を所定の周速度(本実施形態では355mm/s)で搬送路に沿って回転させ、搬送ベルト53上に静電吸着させた記録紙Pを搬送するようになっている。
各可視像形成ユニット40は、感光体ドラム41の周囲に帯電ローラ42,レーザ光照射手段43,現像器44,転写ローラ45,クリーナー46を備えている。なお、可視像形成ユニット40Y,40M,40C,40Bの現像器44には、イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(B)のトナーがそれぞれ収容されている。そして、各可視像形成ユニット40は、以下の工程によりトナー画像を記録紙P上に形成する。
すなわち、感光体ドラム41表面を帯電ローラ42で一様に帯電した後、画像情報に応じてレーザ光照射手段43により感光体ドラム41の表面をレーザ露光し、静電潜像を形成する。その後、現像器44により感光体ドラム41上の静電潜像を現像してトナー像を顕在化させ、この顕像化されたトナー像をトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された転写ローラ45により記録紙搬送手段50によって搬送される記録紙Pに順次転写する。その後、各色のトナー像を転写された記録紙Pは、駆動ローラ51の曲率により搬送ベルト53から剥離された後、定着装置1に搬送される。そして、定着装置1によって適度な温度と圧力が与えられる。これにより、トナーは溶解し記録紙Pに固定(定着)され堅牢な画像となる。
次に、定着装置1の構成について説明する。図1は、定着装置1の構成を示す模式図である。定着装置1は、記録紙(記録材)の表面に形成された未定着のトナー画像を、熱および圧力によって記録紙上に定着させるものである。なお、この未定着のトナー画像は、例えば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)等の現像剤(トナー)によって形成される。
図1に示すように、定着装置1は、定着ローラ(定着部材)60と、加圧ローラ(加圧部材)70と、外部加熱部材としての無端ベルト(外部加熱ベルト)83と、無端ベルト83を懸架し加熱するための加熱ローラ81,82と、加熱ローラ81,82をそれぞれ加熱するための熱源であるヒータランプ(加熱手段)86,87と、定着ローラ60を加熱するための熱源であるヒータランプ64a,64bと、加圧ローラ70を加熱するための熱源であるヒータランプ74と、定着ローラ60,加圧ローラ70,無端ベルト83の各々の温度を検出する温度検出手段を構成する温度センサとしてのサーミスタ65,75,85と、定着ローラ60をクリーニングするためのウエブクリーニング装置95とを備えている。また、サーミスタ65は、定着ローラ60の長手方向中央部の温度と端部の温度とをそれぞれ検出する。なお、無端ベルト83、加熱ローラ81,82、ヒータランプ86,87は、後述する外部加熱装置80に備えられる。なお、ヒータランプ64a,64b,74,86,87としては、いずれも定格電力が475Wの同じ加熱幅を有するヒータランプ(ハロゲンランプ)を用いた。
本実施例では、ヒータランプの定格電力を全て同じとしたが、これに限定されず、種々組み合わせることが可能である。例えば、ヒータランプ64aを550W、ヒータランプ64bを400W、ヒータランプ74を450W、ヒータランプ86,87を475Wとしてもよく、別の例としては、ヒータランプ64a,74,86,87を550W、ヒータランプ64bを400Wとしてもよい。
定着ローラ60および加圧ローラ70は、所定の荷重(例えば、本実施形態では600N)で互いに圧接されて、これら両ローラ間に定着ニップ部N(定着ローラ60と加圧ローラ70とが互いに当接する部分)を形成している。なお、本実施形態ではニップ幅(定着ニップ部Nの記録紙搬送方向の幅)を8mmとしている。この定着ニップ部Nに未定着トナー画像が形成された記録紙を給紙し、定着ニップ部Nを通過させることで、記録紙にトナー画像が定着されるようになっている。記録紙が定着ニップ部Nを通過する時には、定着ローラ60は記録紙のトナー画像形成面に当接する一方、加圧ローラ70は記録紙におけるトナー画像形成面とは反対側の面に当接するようになっている。
定着ローラ60は、所定の温度(本実施形態では200℃)に加熱されて、定着ニップ部Nを通過する未定着トナー画像が形成された記録紙を加熱するためのものである。定着ローラ60は、その内側から順に、芯金61、弾性層62、離型層63が形成された3層構造からなる。芯金61には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層62にはシリコンゴム、離型層63にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。本実施形態では、定着ローラ60として、アルミ製芯金上に厚さ2mmのシリコンゴム層を被覆し、さらにその上に厚さ40μmのPFAチューブを被覆したものを使用した。
なお、定着ローラ60の内部には、定着ローラ60を加熱するヒータランプ64a,64bの2本のヒータランプが定着ローラ60の長手方向に並ぶように配置されている。一方は中央部を加熱するヒータランプ、他方は両端部を加熱するヒータランプである。制御装置90が電源回路(図示せず)からこれら各ヒータランプに電力を供給(通電)することにより、ヒータランプが発光し、ヒータランプから赤外線が放射される。これにより、定着ローラ60の芯金内周面が赤外線を吸収して加熱され、定着ローラ全体が加熱される。
加圧ローラ70も定着ローラ60と同様、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる芯金71の外周表面にシリコンゴム等からなる弾性層72を有し、さらにその上にPFA等の離型層73が形成されている。また、加圧ローラ70の内部には、加圧ローラ70を加熱するヒータランプ74が配置されている。このヒータランプ74によって、定着ローラ60と同様、加圧ローラ70全体が加熱される。
無端ベルト83は、所定の温度(本実施形態では220℃)に加熱された状態で定着ローラ60表面に当接して、定着ローラ60表面を加熱するものである。無端ベルト83は、2本の加熱ローラ81,82によって懸架されている。また、加熱ローラ81,82の内部には、加熱ローラ81,82を加熱するための加熱手段としてのヒータランプ86,87が配置されている。制御装置90が電源回路(図示せず)からヒータランプ86,87に電力を供給することにより、ヒータランプ86,87が発光し赤外線が放射される。これにより、加熱ローラ81,82の芯金内周面が赤外線を吸収して加熱され、加熱ローラ81,82を介して間接的に無端ベルト83が加熱されるようになっている。
本実施形態では、定着ローラ60の外径をφ60mm、加熱ローラ81,82の外径をφ14.8mm、2本の加熱ローラ81,82間の軸間距離を38.55mmとした。なお、本実施形態では加熱ローラを2本設けているが、これに限らず、3本以上の加熱ローラに無端ベルト83を張架するようにしてもよい。
無端ベルト83は、定着ローラ60の回転方向に対し定着ニップ部Nの上流側に設けられ、所定の押圧力(本実施形態では40N)で定着ローラ60に圧接されるようになっている。なお、無端ベルト83を定着ローラ60に圧接させるための機構(外部加熱装置80の構成)については後述する。そして、定着ローラ60との間に加熱ニップ部(定着ローラ60と無端ベルト83とが互いに当接する部分)が形成されている。無端ベルト83は、定着ローラ60の回転時には、定着ローラ60に従動して回転するようになっており、この無端ベルト83の回転に従動して加熱ローラ81,82も回転するようになっている。なお、加熱ニップ部の加熱ニップ幅(加熱ニップ部の定着ローラ回転方向の幅)は、無端ベルト83が定着ローラ60を適切に加熱することができ、かつ無端ベルト83を定着ローラ60に適切に従動回転させることができるように設定される。本実施形態では、加熱ニップ幅を20mmとしている。
無端ベルト83としては、厚さ90μmのポリイミド(宇部興産製、商品名:ユーピレックスS)の基材表面に、離型層としてPFTEとPFAとがブレンドされたフッ素樹脂を厚さ20μmでコーティングしたものを用いている。なお、無端ベルト83の構成はこれに限らず、例えば、ポリイミド以外の耐熱樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる基材の表面に、離型層として耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)を形成した2層構成としてもよい。なお、無端ベルト83の寄り力(無端ベルト83を回転方向に対して垂直な方向に作用する力)を低減するために、ベルト基材の内面に、フッ素樹脂等のコーティングを施してもよく、無端ベルト83の両端部に寄り力規制用の凸部(ビード)を設けてもよい。本実施形態では、無端ベルト83の両端部に耐熱樹脂によるカラーを当てて寄り力を分散させ、かつ無端ベルト83の座屈を低減している。
加熱ローラ81,82は、アルミニウムや鉄系材料等からなる中空円筒状の金属製芯材からなる。なお、無端ベルト83の寄り力を低減するために、金属製芯材の表面に、フッ素樹脂等のコーティングを施してもよい。本実施形態では、加熱ローラ81,82として、厚さ0.75mmのアルミ製芯金表面にPTFEとPFAとがブレンドされたフッ素樹脂を厚さ20μmでコーティングしたものを用いた。
定着ローラ60,加圧ローラ70,無端ベルト83の各々の周面には、温度検知手段としてのサーミスタ65,75,85が配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。そして、各サーミスタにより検出された温度データに基づいて、制御手段としての制御装置90が、定着ローラ60,加圧ローラ70,無端ベルト83の温度を所定の温度に維持するように、各ヒータランプへの供給電力(通電)を制御する。なお、本実施形態では、サーミスタ65は、定着ローラ60の中央部と端部の温度を検出する2つのサーミスタ(図示せず)に分けられている。定着ローラ60の片方の端部、加圧ローラ70の片方の端部、無端ベルト83の中央部の温度を検出するためにそれぞれ接触式のサーミスタを用いており、さらに、定着ローラ60の中央部の温度を検出するために非接触式温度センサを備えている。ただし、温度検知手段の構成はこれに限るものではない。例えば、接触式のサーミスタを用いても良く、表面から放射される赤外線を検出して温度を検知する非接触式の温度センサを用いてもよく、また接触式と非接触式を混在させてもよい。
そして、定着ニップ部Nに所定の定着速度および複写速度で未定着トナー像が形成された記録紙が搬送され、熱と圧力によって定着が行われる。なお、定着速度とはいわゆるプロセス速度のことである。また、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。これらの速度は特に限定されるものではないが、本実施形態では、白黒印字においては、定着速度355mm/sec、複写速度70枚/分、あるいは定着速度300mm/sec、複写速度62枚/分とし、カラー印字においては、定着速度220mm/sec、複写速度50枚/分としている。
なお、定着ローラ60は、駆動モータおよびギヤなどの駆動伝達機構からなる回転駆動装置(回転駆動手段)91によって回転駆動される。また、加圧ローラ70は、定着ローラ60の回転に従動して回転する。したがって、定着ローラ60および加圧ローラ70は、図1に示すように、逆方向に回転される。これにより、記録紙Pが定着ニップ部Nを通過するようになっている。なお、本実施形態では、定着ローラ60を回転駆動し加圧ローラ70をこれに従動回転させる構成としたが、これに限らず、例えば加圧ローラ70を回転駆動させ、定着ローラ60を従動回転させる構成としてもよい。
次に、外部加熱装置80の構成について図3(a)および図3(b)に基づいて説明する。図3(a)は無端ベルト83を定着ローラ60に当接させた状態を示す断面図であり、図3(b)は無端ベルト83を定着ローラ60から離間させた状態を示す断面図である。なお、本実施形態において無端ベルト83を定着ローラ60から離間させるとは、加熱ローラ81,82を、定着ローラ60の表面から移動(定着ローラ60より離間)させて、図3(a)に示した当接状態(無端ベルト83に定着ローラ60を加熱するとともに定着ローラ60に従動回転するための張力である第1の張力が付与されている状態)よりも無端ベルト83を定着ローラ60から遠ざける方向に移動させ、無端ベルト83に作用する張力を第1の張力よりも弱い第2の張力にすることを意味しており、必ずしも無端ベルト83が定着ローラ60から完全に離れている必要はない。
図3(a)および図3(b)に示すように、外部加熱装置80は、無端ベルト83、加熱ローラ81,82、ヒータランプ86,87、フレーム101、アーム102、支点104,105、偏心カム103、バネ106を備えている。
フレーム101は、加熱ローラ81,82の両端側にそれぞれ設けられており、図示しない軸受等を介して加熱ローラ81,82を回転可能に支持するものである。つまり、加熱ローラ81,82は、所定の軸間距離を隔てて互いに対向するように、図示しない軸受を介してフレーム101に回転可能に軸支されている。これにより、加熱ローラ81,82間の平行度が確保されている。本実施形態においては、加熱ローラ81,82の平行度公差は100μm以下となっている。また、このフレーム101は、アーム102に支点104で軸支され、加熱ローラ81,82の軸方向に垂直な方向に対して回転可能になっている。
アーム102の一端は、図示しない定着装置1のフレームに取り付けられた支点105を中止として回転可能なように支持されている。また、アーム102はバネ106によって定着ローラ60に接する方向に付勢されている。
偏心カム103は、アーム102の他端に当接するように備えられている。この偏心カム103は、カム駆動装置110によって回転駆動される。また、カム駆動装置110の動作は制御装置90によって制御される。これにより、制御装置90がカム駆動装置110を制御して偏心カム103を回転させ、アーム102を定着ローラ60から離れる方向へ移動させたり(図3(b)参照)、当接する方向へ移動させたりできるようになっている(図3(a)参照)。そして、アーム102の動きに連動して無端ベルト83を定着ローラ60へ圧接させたり押圧を解除して離間させたりできるようになっている。
次に、定着装置1のウォームアップ時における制御装置90の処理について、図4および図5を参照しながら説明する。図4はウォームアップ時における制御装置90の処理の流れを示すフロー図であり、図5はウォームアップ時における無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の表面温度の変化を示すグラフである。なお、本実施形態では、室温かつ定着ローラ60の回転が停止した状態からウォームアップ動作を開始し、無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の表面温度がそれぞれ所定の目標温度に達するまでウォームアップ動作を行った。また、本実施形態では、ウォームアップの各部材の目標温度について、定着ローラ60の中央部の目標温度(第4目標温度T4)を195℃、定着ローラ60の端部の目標温度(第6目標温度T6)を185℃、加圧ローラ70の端部の目標温度(第5目標温度T5)を140℃、無端ベルト83の中央部の目標温度(第3目標温度T3)を215℃とし、目標温度に到達後に5秒間空転させてウォームアップを完了するものとした。
ウォームアップを行う際、制御装置90は、まず、外部加熱装置80の加熱ローラ81,82に備えられたヒータランプ86,87に電力を供給し、外部加熱装置80において無端ベルト83の加熱を開始させる(S1)。この際、制御装置90は、定着装置1において無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の加熱のために用いることのできる加熱用電力(ヒータランプ64a,64b,74,86,87に供給可能な電力)を全てヒータランプ86,87に投入する。
次に、制御装置90は、無端ベルト83の表面温度、すなわちサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したかどうかを判断する(S2)。ここで、第1目標温度T1は、無端ベルト83における残留応力(内部応力)が緩和される温度以上、かつ後述する第2目標温度以下に設定することが好ましい。例えば、ポリイミド等の樹脂からなる無端ベルトを用いる場合には、第1目標温度T1を、無端ベルトが加熱によって軟化し、内部応力(残留応力)が緩和され、無端ベルト83についた型が緩和あるいは除去される温度(ただし無端ベルトが溶融しない程度の温度)に設定すればよい。また、ステンレスやニッケル等の金属材料からなる無端ベルトを用いる場合には、第1目標温度T1を、無端ベルトの内部応力(残留応力)が緩和され、無端ベルト83についた型が緩和あるいは除去される温度に設定すればよい。なお、第1目標温度T1は、待機時の温度付近、あるいは待機時の温度よりも若干低い温度に設定してもよい。また、第1目標温度T1は、無端ベルト83や周辺部品に熱的損傷を与えない程度の高温であることが好ましい。本実施形態では、第1目標温度T1を185℃とした。
S2においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達していないと判断した場合、制御装置90は、ヒータランプ86,87への電力供給を継続し、サーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達することを引き続き監視する。
一方、S2においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したと判断した場合、制御装置90は、カム駆動装置110の動作を制御し、無端ベルト83に作用する張力を変動させる張力変動動作を行わせる(S3)。ここで、張力変動動作とは、無端ベルト83の張力を小さくする弛緩動作と、弛緩動作時の張力よりも大きくする張力付与動作とを各1回以上含む動作である。つまり、張力変動動作では、弛緩動作と張力付与動作とを行うサイクルを少なくとも1サイクル以上行う。また、弛緩動作時の無端ベルト83の張力は、ベルトに付いた型を効果的に緩和させるためには、画像形成時(定着処理時)の張力よりも小さいことが好ましく、無端ベルト83の自重に起因する張力以外は作用しない程度であることがより好ましい。また、本実施形態では、張力付与動作時の無端ベルト83の張力を、画像形成時の張力(無端ベルト83を定着ローラ83に当接させたときの張力)としているが、これに限るものではない。張力付与動作時の無端ベルト83の張力は、ベルトに付いた型を効果的に緩和させるためには、弛緩動作時の張力より大きければよく、無端ベルト83に損傷や塑性変形が生じない範囲内で大きくすることが好ましい。
次に、制御装置90は、無端ベルト83の表面温度、すなわちサーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達したかどうかを判断する(S4)。ここで、第2目標温度T2は、第1目標温度T1以上、かつ無端ベルト83のウォームアップ目標温度未満に設定される。本実施形態では、第2目標温度T2を190℃とした。
そして、制御装置90は、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達していない場合には、ヒータランプ86,87への電力供給を継続し、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達することを引き続き監視する。
一方、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達すると、制御装置90は、回転駆動装置91の動作を制御して定着ローラ60の回転を開始させる(S5)。これにより、無端ベルト83から定着ローラ60への熱伝達が促進され、図5に示すように無端ベルト83の温度が低下し、定着ローラ60および加圧ローラ70の温度が上昇していく。なお、ヒータランプ86,87への電力供給は継続されるので、無端ベルト83の温度は一旦低下するものの、その後再び加熱されて温度上昇していく。
その後、制御装置90は、無端ベルト83の温度がウォームアップ目標温度である第3目標温度T3に到達することを監視する(S6)。そして、無端ベルト83の温度が第3目標温度T3に到達すると、制御装置90は、それまで外部加熱装置80のヒータランプ86,87のみに供給していた加熱用電力を、ヒータランプ86,87と定着ローラ60のヒータランプ64aとに配分する(S7)。
その後、制御装置90は、定着ローラ60の中央部の温度がウォームアップ目標温度である第4目標温度T4に到達することを監視する(S8)。そして、定着ローラ60の中央部の温度が第4目標温度T4に到達すると、制御装置90は、それまでヒータランプ64a,86,87に供給していた加熱用電力を、定着ローラ60のヒータランプ64b、加圧ローラ70のヒータランプ74、および外部加熱装置80のヒータランプ86,87に配分する(S9)。
その後、制御装置90は、加圧ローラ70の温度がウォームアップ目標温度である第5目標温度T5に到達することを監視する(S10)。そして、加圧ローラ70の温度が第5目標温度T5に到達すると、加圧ローラ70のヒータランプ74への電力供給を停止し、加熱用電力を定着ローラ60のヒータランプ64bおよび外部加熱装置80のヒータランプ86,87に配分する(S11)。
その後、制御装置90は、定着ローラ60の端部の温度がウォームアップ目標温度である第6目標温度T6に到達することを監視する(S12)。そして、定着ローラ60の端部の温度が第6目標温度T6に到達すると、この状態のまま定着ローラ60を所定時間(本実施形態では5秒間)空転させてからウォームアップ動作を完了する。
次に、本実施形態にかかる定着装置1による無端ベルト83の回転不良の低減効果を調べるために行った実験の結果について説明する。
(実施例)
表面全域にわたってトナー等の固着物・堆積物がフィルム状に固着した無端ベルト83を用い、室温からウォームアップ動作を行った。なお、第1目標温度T1を185℃に設定し、無端ベルト83の検出温度が185℃になったときにカム駆動装置110を動作させて無端ベルト83の張力付与動作を行った。なお、ここでは、弛緩動作と張力付与動作とをそれぞれ1回行った。また、第2目標温度T2を190℃に設定し、無端ベルト83の検出温度が190℃になったときに定着ローラ60の回転を開始させた。図6は、この場合の定着ローラ60、加圧ローラ70、無端ベルト83の温度プロファイルを示すグラフである。
(比較例)
上記実施例と同様の無端ベルト83を用い、室温からウォームアップ動作を行った。なお、張力変動動作作は行わず、無端ベルト83の表面温度が175℃に到達した時に定着ローラ60の回転を開始させた。図7は、この場合の定着ローラ60、加圧ローラ70、無端ベルト83の温度プロファイルを示すグラフである。
図6に示したように、上記実施例の場合、無端ベルト83の温度が190℃に到達して定着ローラ60の回転を開始させると、スリップ等を生じることなく無端ベルト83が即座に従動回転を開始した。これにより、定着ローラ60、加圧ローラ70、無端ベルト83の温度をスムーズに上昇させることができ、ウォームアップ動作開始から約295秒でウォームアップ動作が完了した。
一方、図7に示したように、比較例の場合、無端ベルト83の温度が175℃になったときに定着ローラ60の回転を開始させたが、その時点では無端ベルト83が僅かに動いただけでほとんど回転しなかった。その後、無端ベルト83の温度がウォームアップ目標温度220℃に到達しても回転しない状態が続き、ウォームアップ開始から90秒程度経過した時に初めて無端ベルト83が回転した。そして、この回転によって無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給が増えて、無端ベルト83の温度が低下し始め、定着ローラ60の温度が上昇した。このように、比較例では無端ベルト83の回転不良が生じた結果、ウォームアップ開始からウォームアップ終了までに約305秒かかった。このように、ウォームアップスペックが300秒以内とすれば、回転不良によりスペックアウトしてしまう場合がある。
以上のように、本実施形態では、定着装置1のウォームアップ動作を行う際、無端ベルト83の温度がこの無端ベルト83の残留応力が緩和される温度に設定される第1目標温度T1に到達したときに無端ベルト83の張力を変動させる。すなわち、無端ベルト83の張力を緩める弛緩動作と、無端ベルト83の張力を強める張力付与動作とをそれぞれ1回以上行う。これにより、残留応力が緩和される温度以上に加熱された無端ベルト83の張力が変動することによって無端ベルト83に変形が生じ、またその復元時に作用する復元力によって無端ベルト83に変形が生じ、無端ベルト83についた型を低減することができる。その結果、無端ベルト83についた型によって駆動トルクが増大したり定着ローラ60との間でスリップが生じたりする回転不良が生じることを抑制できる。
そして、無端ベルト83の回転不良を抑制できるので、無端ベルト83から定着ローラ60(被加熱部材)への熱供給を効率よく行わせることができ、ウォームアップ時間を短縮できる。また、印字中(画像形成動作中)に熱供給を十分に行えるので、定着不良に起因する画像品位の低下を抑制できる。
なお、図3(b)に示した例では、無端ベルト83の張力を弱めた時(離間時)に無端ベルト83が定着ローラ60に対して被接触の状態になっているが、これに限らず、無端ベルト83に作用する張力を変化させることができる構成であればよい。例えば、無端ベルト83の張力を弱めた時(離間時)に無端ベルト83の一部が定着ローラ60に対して接触していてもよい。この場合、加熱ローラ81,82の当接状態から離間状態への移動距離を短くできるので、定着装置1の構成を小型化することができる。また、無端ベルト83を移動させて定着ローラ60と無端ベルト83との接触面積を変化させることにより、無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給量を制御する構成としてもよい。
また、本実施形態では、無端ベルト83の温度が第1目標温度T1に到達したときに、無端ベルト83の弛緩動作および張力付与動作を行うサイクルを1サイクル以上行うものとしているが、上記サイクルの数は任意に設定すればよい。ただし、上記サイクルの数を多くすることにより無端ベルト83の型の低減効果を向上させることができる一方で、上記サイクル数を多くしすぎるとウォームアップ時間が増大や熱供給効率の低下による消費電力の低下が生じてしまう場合がある。このため、上記サイクルの数は、1回以上5回以下であることが好ましく、2回以上3回以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態では、第1目標温度と第2目標温度をそれぞれ185℃と190℃としたが、これに限定されず、適宜別の温度に設定することが可能である。例えば、第1目標温度を170℃、第2目標温度を175℃、或いは第1目標温度を170℃、第2目標温度を180℃とすることができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施形態1では、ウォームアップ動作を開始してから無端ベルト83の温度が第1目標温度T1に到達したときにカム駆動装置110を動作させて無端ベルト83の張力変動動作を行っていたが、本実施形態ではこれに加えて、定着ローラ60の回転を開始させた後、無端ベルト83が適切に従動回転しなかった場合にも無端ベルト83の張力変動動作を行う。つまり、本実施形態では、制御装置90が、無端ベルト83の回転状態を判定する回転状態判定部としての機能を有しており、定着ローラ60の回転を開始させた後、無端ベルト83が適切に従動回転しなかった場合に無端ベルト83の張力変動動作を行うようになっている。
具体的には、制御装置90は、サーミスタ85による無端ベルト83の温度検知結果をモニタリングし、温度変化の状態に基づいて無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転しているか否かを判定する。
図8は、制御装置90による無端ベルト83の回転状態の判別方法を説明するための説明図である。なお、この図に示した実線は無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転している状態を示しており、点線は定着ローラ60との間でスリップを生じながら従動回転している状態(回転速度が正常時よりも遅い状態)を示しており、破線は回転不良が生じて無端ベルト83が回転していない状態を示している。
この図に示したように、本実施形態では、無端ベルト83の温度が第1目標温度T1に到達した時にカム駆動装置110を作動させ、その後、無端ベルト83の温度が第2目標温度T2に到達した時に定着ローラ60の回転を開始させる。この際、無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転している場合には無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給量が増大して無端ベルト83の温度が一時的に低下する。その後、無端ベルト83は、加熱ローラ81,82を介して継続して供給される熱量を定着ローラ60へ逐次供給する。これにより、無端ベルト83の温度は、回転開始によって一旦低下した後、回転開始前よりも昇温率は小さくなるものの温度が上昇していく。
一方、無端ベルト83が回転しない場合には、定着ローラ60への熱供給量が極端に少ないので、無端ベルト83の温度は低下することなく回転開始前とほぼ同様の昇温率で温度上昇し続ける。また、スリップしながら回転している場合(本来の周速よりも遅い速度で回転している場合)には無端ベルト83の温度は適切に従動回転している場合に比べて少ししか低下せず、回転していない場合には無端ベルト83の温度は低下しない。
そこで、制御装置90は、無端ベルト83の温度が第2目標温度T2に到達して定着ローラ60の回転を開始させた後、所定時間以内に無端ベルト83の温度が第2目標温度T2よりも所定温度だけ低く設定される閾値Tth以下に低下したか否かを判断する。そして、所定時間以内に無端ベルト83の温度が閾値Tth以下に低下しなかった場合には回転不良が生じていると判定する。逆に、所定時間以内に無端ベルト83の温度が閾値Tth以下に低下した場合には適切に従動回転していると判定する。
図9はウォームアップ時における制御装置90の処理の流れを示すフロー図であり、図10はウォームアップ時における無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の表面温度の変化を示すグラフである。なお、本実施形態では、室温かつ定着ローラ60の回転が停止した状態からウォームアップ動作を開始し、無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の表面温度がそれぞれ所定の目標温度に達するまでウォームアップ動作を行った。
ウォームアップを行う際、制御装置90は、まず、外部加熱装置80の加熱ローラ81,82に備えられたヒータランプ86,87に電力を供給し、外部加熱装置80において無端ベルト83の加熱を開始させる(S21)。この際、制御装置90は、定着装置1において無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の加熱のために用いることのできる加熱用電力(ヒータランプ64a,64b,74,86,87に供給可能な電力)を全てヒータランプ86,87に投入する。
次に、制御装置90は、無端ベルト83の表面温度、すなわちサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したかどうかを判断する(S22)。
S2においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達していないと判断した場合、制御装置90は、ヒータランプ86,87への電力供給を継続し、サーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達することを引き続き監視する。
一方、S22においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したと判断した場合、制御装置90は、カム駆動装置110の動作を制御し、無端ベルト83に作用する張力を変動させる張力変動動作を行わせる(S23)。
次に、制御装置90は、無端ベルト83の表面温度、すなわちサーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達したかどうかを判断する(S24)。
そして、制御装置90は、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達していない場合には、ヒータランプ86,87への電力供給を継続し、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達することを引き続き監視する。
そして、サーミスタ85の検出温度が第2目標温度T2に到達すると、制御装置90は、回転駆動装置91の動作を制御して定着ローラ60の回転を開始させる(S25)。
さらに、制御装置90は、上述した方法により、無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転しているか否かを判定する(S26)。そして、適切に従動回転していないと判定した場合、制御装置90は、カム駆動装置110の動作を制御し、張力変動動作を行わせる(S27)。
その後、制御装置90は、無端ベルト83の温度が第3目標温度T3に到達したか否かを判断する(S28)。そして、到達していないと判断した場合には、S26以降の処理を再び行う。
一方、到達したと判断した場合、制御装置90は、無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転しているか否かを判定する(S29)。そして、適切に従動回転していないと判定した場合、制御装置90は、カム駆動装置110の動作を制御し、張力変動動作を行わせる(S30)。一方、S29において適切に従動回転していると判定した場合、およびS30において張力変動動作を行った後、制御装置90は、それまで外部加熱装置80のヒータランプ86,87のみに供給していた加熱用電力を、ヒータランプ86,87と定着ローラ60のヒータランプ64aとに配分する(S31)。なお、S26において無端ベルト83が適切に従動回転していることを確認できている場合には、S29,S30の処理を省略してもよい。
その後、制御装置90は、定着ローラ60の中央部の温度がウォームアップ目標温度である第4目標温度T4に到達したか否かを判断する(S32)。そして、第4目標温度T4に到達していない場合にはS29以降の処理を再び行う。一方、第4目標温度T4に到達した場合、制御装置90は、それまでヒータランプ64a,86,87のみに供給していた加熱用電力を、定着ローラ60のヒータランプ64b、加圧ローラ70のヒータランプ74、および外部加熱装置80のヒータランプ86,87に配分する(S33)。
その後、制御装置90は、加圧ローラ70の温度がウォームアップ目標温度である第5目標温度T5に到達することを監視する(S34)。そして、加圧ローラ70の温度が第5目標温度T5に到達すると、加圧ローラ70のヒータランプ74への電力供給を停止し、加熱用電力を定着ローラ60のヒータランプ64bおよび外部加熱装置80のヒータランプ86,87に配分する(S35)。
その後、制御装置90は、定着ローラ60の端部の温度がウォームアップ目標温度である第6目標温度T6に到達することを監視する(S36)。そして、定着ローラ60の端部の温度が第6目標温度T6に到達すると、この状態のまま定着ローラ60を所定時間(本実施形態では5秒間)空転させてからウォームアップ動作を完了する。
以上のように、本実施形態では、定着ローラ60の回転を開始した後、制御装置90が、無端ベルト83が適切に従動回転しているか否かを判断する。そして、適切に従動回転していない場合には、カム駆動装置110を動作させて無端ベルト83の張力変動動作を行わせる。
これにより、無端ベルト83についた型を低減し、駆動トルクが増大したり定着ローラ60との間でスリップが生じたりするなどの回転不良が生じることを抑制できる。
さらに、定着ローラ60および無端ベルト83が回転することにより、無端ベルト83および定着ローラ60における他方の部材との接触領域が変化するので、これらの部材上にトナー等の固着物・堆積物がある場合であっても、これらの固着物・堆積物に起因するスリップ等の回転不良を防止できる。
なお、無端ベルト83の回転不良の有無を判定する方法は、上記した方法に限るものではなく、無端ベルト83の回転状態(回転不良の有無)を適切に判定できる方法であればよい。例えば、無端ベルト83の温度変化によって回転状態を判断する場合には、定着ローラ60の回転を開始してからの無端ベルト83の温度変化を検出し、昇温率、温度降下から上昇に転じる時の温度のボトム値、あるいは温度上昇・下降に関する他の指標をパラメータにして判定してもよい。
閾値Tthは、各種ローラやベルトの構成、ヒータランプの構成等によって適宜設定できるが、例えば、T1やT2と同じか、T1及びT2よりも低い温度180℃としてもよい。また、回転しない場合とスリップ状態での回転とを区別して判別する場合には、回転しない場合の閾値Tth1として188℃、スリップしながら回転している時の閾値Tth2として183℃とすることも可能である。即ち、定着ローラ60の回転開始後に、閾値Tth1以下に温度低下しなければ、“無端ベルトは回転していない”と判定し、閾値Tth1以下かつ閾値Tth2より高い場合は、“無端ベルトはスリップして回転している”と判定し、閾値Tth2以下に温度低下すれば、適切に従動回転していると判定する。
また、無端ベルト83の温度検出結果に基づいて判定する方法に限らず、定着ローラ60あるいは加圧ローラ70の温度検出結果に基づいて判定してもよい。無端ベルト83が適切に従動回転している場合には、無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給量が大きくなるので、定着ローラ60および加圧ローラの温度は急激に昇温する。これに対して、無端ベルト83が適切に回転していないと、定着ローラ60への熱供給量が少なくなるので定着ローラ60および加圧ローラ70の温度の変化率は小さくなる。そこで、定着ローラ60あるいは加圧ローラ70の温度変化に基づいて無端ベルト83の回転状態を判別するようにしてもよい。また、無端ベルト83、定着ローラ60、加圧ローラ70のうち2つ以上の温度検出結果に基づいて判定してもよい。また、予め定めた基準温度や別の温度情報との差分を用いて判定してもよく、定着ローラ60の中央部および端部の両方の温度変化率や差分温度を用いて判定してもよい。
また、本実施形態では、無端ベルト83の回転状態を判定するのに温度情報を用いたが、これに限らず、その他の方法を用いてもよい。例えば、外部加熱ベルトに設けた凹凸、穴、切り欠き、色や模様などの状態変化を光学的に検出して回転状態を判定してもよい。また、外部加熱ベルトに設けた凹凸、穴、切り欠きなどを機械的な方法で検出して回転状態を判定してもよい。また、無端ベルト83に付与した磁気情報の変化や磁気パターンを捉えることで回転状態を判定してもよい。
また、本実施形態では、実施形態1と同様、無端ベルト83の温度が第1目標温度T1に到達したときにカム駆動装置110を動作させて無端ベルト83の張力変動動作を行っているが、これに限るものではない。例えば、定着ローラ60の回転動作を開始した後、無端ベルト83が適切に回転しなかった場合にのみ張力変動動作を行うようにしてもよい。
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1,2と同様の機能を有する部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
例えば、画像形成装置を一旦起動させてウォームアップ動作を行った後、待機状態に遷移している状態から再起動を行うような場合、ウォームアップ動作を再度行うことになる。このような場合、初めに起動した時のウォームアップ動作で無端ベルト83が定着ローラ60に適切に従動回転できていると判断できれば、再起動時に無端ベルト83に型がついている可能性は低いので型に起因する回転不良が生じる恐れはなく、張力変動動作を行う必要はないと考えられる。
そこで、本実施形態では、一旦ウォームアップ動作を完了した後、再びウォームアップ動作を行う場合など、無端ベルト83に付いた型に起因する回転不良が生じる恐れが低い場合に無端ベルト83の張力変動動作を省略する。具体的には、ウォームアップ開始後、無端ベルト83の表面温度が第1目標温度T1に到達した時点における定着ローラ60の中央部の表面温度が100℃以上の場合には、張力変動動作を省略する。
図11はウォームアップ時における制御装置90の処理の流れを示すフロー図であり、図12はウォームアップ時における無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の表面温度の変化を示すグラフである。
ウォームアップを行う際、制御装置90は、まず、外部加熱装置80の加熱ローラ81,82に備えられたヒータランプ86,87に電力を供給し、外部加熱装置80において無端ベルト83の加熱を開始させる(S41)。この際、制御装置90は、定着装置1において無端ベルト83,定着ローラ60,加圧ローラ70の加熱のために用いることのできる加熱用電力(ヒータランプ64a,64b,74,86,87に供給可能な電力)を全てヒータランプ86,87に投入する。
次に、制御装置90は、無端ベルト83の表面温度、すなわちサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したかどうかを判断する(S42)。
S42においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達していないと判断した場合、制御装置90は、ヒータランプ86,87への電力供給を継続し、サーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達することを引き続き監視する。
一方、S42においてサーミスタ85の検出温度が第1目標温度T1に到達したと判断した場合、制御装置90は、定着ローラ60の中央部の温度が所定温度(ここでは100℃)T8以上であるか否かを判断する(S43)。そして、定着ローラ60の中央部の温度が所定温度T8未満の場合、制御装置90は、カム駆動装置110の動作を制御し、無端ベルト83に作用する張力を変動させる張力変動動作を行わせる(S44)。
そして、S44において張力変動動作を行った後、およびS43において定着ローラ60の中央部の温度が所定温度T8以上であると判断した場合、制御装置90は、S45〜S53の処理を行う。なお、S45〜S53の処理は実施形態1で説明した図4におけるS4〜S12の処理と同様なので、ここではその説明を省略する。
以上のように、本実施形態では、ウォームアップ動作を開始した後、無端ベルト83の温度が第1目標温度T1に到達したときに、制御装置90が定着ローラ60の中央部の温度が所定温度以上であるか否かを判断する。そして、所定温度以上の場合には無端ベルト83の張力変動動作を省略する。
これにより、無端ベルト83に型が付いている可能性が低い場合に、張力変動動作を省略してウォームアップ時間を短縮することができる。
なお、本実施形態では、定着ローラ60の中央部の温度が所定温度(本実施形態では100℃)以上か否かを張力変動動作の要否の判断基準としているが、判断基準はこれに限るものではなく、無端ベルト83についた型によって回転不良が生じるおそれがあるか否かを判断できる基準であればよい。例えば、定着装置1の構成に応じて、上記所定温度を100℃とは異なる温度(例えば、120℃、150℃、80℃など)に設定してもよい。
また、定着ローラ60の中央部の温度に基づいて判断する構成に限らず、定着ローラ60の端部の温度、加圧ローラ70の温度、加熱ローラ81,82の温度、あるいは複数の部材の温度条件を組み合わせて判断してもよい。
また、定着装置1の動作状態、記録紙の通過枚数や通紙予定枚数などの通紙条件、定着装置1に備えられる各部材の検出温度と目標温度との差分情報などを判断基準としてもよい。また、制御装置90が、ウォームアップ動作あるいは画像形成動作を前回行ったときからの経過時間、あるいは無端ベルト83の温度が所定温度以下に低下してからの経過時間を計時し、その計時結果に基づいて張力付与動作の要否の判断してもよい。
また、ウォームアップ動作が既に行われて無端ベルト83の回転動作が行われているときの定着ローラ60あるいは無端ベルト83の温度状態をメモリなどに記憶しておき、その後にウォームアップ動作を行うときの定着ローラ60や無端ベルト83の温度とを比較することによって張力付与動作の要否の判断してもよい。
また、低電力モード状態からの復帰動作かどうか、印字途中の用紙ジャムからの復帰動作かどうか、それまでの印字枚数や残りの印字枚数およびトータルの印字枚数、用紙の種類、環境条件、画像形成装置や定着装置の稼動時間などの定着動作の動作条件を示す種々のパラメータを用いて判定してもよい。
また、上記各実施形態では、ウォームアップを開始した後、ウォームアップを完了するまでの期間に無端ベルト83の張力変動動作を行っているが、これに限らず、例えばウォームアップを完了した後、記録紙が定着ニップ部に搬送されるまでの期間に張力変動動作を行うようにしてもよい。これにより、画像形成動作中における無端ベルト83から定着ローラ60への熱供給を適切に行わせることができる。
例えば、制御装置90が実施形態2と同様の方法で無端ベルト83の回転状態を判定する構成とし、ウォームアップ期間中に無端ベルト83が適切に従動回転していることを確認できなかった場合などには、ウォームアップを完了した後、記録紙が定着ニップ部に搬送されるまでの期間に張力変動動作を行うようにしてもよい。
また、例えば、ウォームアップ動作が完了しても無端ベルト83が適切に従動回転しなかった場合、最初の記録紙が通紙されるまでの印字待機状態で定着ローラ60が停止している状態において、所定時間間隔(例えば2分間隔)毎に無端ベルト83の張力変動動作を行ってもよい。また、この場合、所定時間間隔毎に張力変動動作を行う処理を、ウォームアップ完了後、所定時間(例えば10分間)経過するまでの期間で行うようにしてもよい。また、所定時間間隔毎に行う張力変動動作における弛緩動作および張力付与動作の回数は任意に設定すればよい。
また、上述した各種パラメータ(各部材の温度条件、経過時間、動作条件等)に基づいて、カム駆動装置110の動作回数(弛緩動作および張力付与動作を行う回数)や作動条件を変更するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、カム駆動装置110の動作を制御して無端ベルト83を定着ローラ60に当接させたり離間させたりすることで無端ベルト83の張力を変動させる構成について説明したが、これに限らず、無端ベルト83の張力を変動させることができる張力変動手段を備えていればよい。例えば、無端ベルト83を張架する部材として、加熱ローラ81,82に加えてテンションローラ(図示せず)を備え、このテンションローラの位置を移動させることにより無端ベルト83の張力を変動させてもよい。また、テンションローラに代えて、パッド状の部材を備えてもよい。また、加熱ローラ81と82との間の軸間距離を変動させることによって無端ベルト83の張力を変動させてもよい。また、定着ローラ60の加熱ローラ81,82に対する相対位置を移動させることによって無端ベルト83の張力を変動させてもよい。
また、上記各実施形態では、定着ローラ60の内部および加圧ローラ70の内部にヒータランプをそれぞれ備えているが、これに限るものではない。例えば、加圧ローラ70にはヒータランプを設けない構成としてもよい。また、定着ローラ60および加圧ローラ70にヒータランプを設けない構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、加熱ローラ81,82の内部に備えられたヒータランプ86,87によって無端ベルト83を加熱しているが、これに限らず、無端ベルト83の表面から加熱したり、無端ベルト83自体が発熱するような構成でもよく、無端ベルト83の温度を所定の温度に加熱できる加熱手段を備えていればよい。
また、上記各実施形態では、制御装置90は制御用集積回路基板から構成されているものとしたが、これに限らず、CPU等のプロセッサを用いてソフトウェアによって実現するものであってもよい。この場合、例えば、制御装置90は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などから構成される。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御装置90の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記制御装置90に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって達成される。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、制御装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークは、特に限定されるものではなく、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体は、特に限定されるものではなく、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号(データ信号列)の形態でも実現され得る。
また、本実施形態では、本発明をカラー画像形成装置に適用する場合について説明したが、これに限らず、本発明はモノクロ画像(単色画像)を形成する画像形成装置に適用することもできる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。