以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の固定治具3A−3Dを建物ユニット2の四隅に取り付けてトラックの荷台1に積み込んだ状態を説明する平面図である。また、図2は、建物ユニット2の構成を説明する斜視図である。
この建物ユニット2の主構造は、隅角部に配置される4本の柱21,・・・と、その柱21,・・・の上端間に架け渡される天井梁27・・・と、柱21,・・・の下端間に床梁として差し渡される短辺梁22,22及び長辺梁23,23とによってボックス形のラーメン構造体(骨組構造体)に形成される。
この建物ユニット2は、平面視矩形に形成され、長辺梁23,23間には間隔を置いて複数の床小梁251,・・・が差し渡される。また、床小梁251,・・・上には短辺梁22,22間に複数の根太252,・・・が差し渡され、その上には床材25が貼り付けられる。
一方、長辺側の天井梁27,27間には複数の天井小梁281,・・・が架け渡され、それらに天井材28が取り付けられる。また、柱21,21間には壁材26が取り付けられる。
さらに、図3に示すように、柱21と短辺梁22(又は長辺梁23)との接合部には、断面視略コ字形の接合枠材24A(24B)が配置される。すなわち、柱21の側面に接合枠材24A(24B)の端面が当接されて溶接によって接合がおこなわれ、接合枠材24A(24B)に対して短辺梁22(長辺梁23)が溶接によって接合される。
また、四角筒状の鋼管によって形成される柱21の下面は、鋼板によって蓋211がされており、その蓋211の略中央には下面穴21aが設けられている。
この建物ユニット2は、工場で製作され、トラックによって建築現場まで輸送される。そして、建築現場では、複数の建物ユニット2,・・・を並べて連結することによってユニット建物(図示省略)が構築される。
そして、この建物ユニット2を損傷させることなく安全に建築現場まで輸送するために固定治具3A−3Dが使用される。なお、固定治具3A−3Dの構成は略同一であるため、以下では主に固定治具3Aの構成について説明する。
この固定治具3Aは、図1,3に示すように、鋼板などによって成形される板状のプレート部31と、プレート部31と建物ユニット2とを着脱自在に連結するユニット側固定手段としての固定ボルト32と、プレート部31と荷台1とを挟んで締結する締結手段としての締結金具33とを主に備えている。
このプレート部31は、建物ユニット2の右側に取り付けられる固定治具3A,3Bでは平面視四角形に成形されており、建物ユニット2の左側に取り付けられる固定治具3C,3Dでは四角形の一角が斜めに切り取られた平面視五角形に成形されている。このようにプレート部31の形状を変えることによって、取り付け位置をわかり易くすることができる。
また、このプレート部31には、建物ユニット2の下面に配置される下敷き領域31aと、建物ユニット2の側方から突出される張出し領域31bとが形成される。
この下敷き領域31aは、図3に示すように、柱21及び接合枠材24A,24Bの下方に配置される領域である。これに対して張出し領域31bは、建物ユニット2の外側に飛び出している領域である。
この下敷き領域31aには、図3,7に示すように、固定ボルト32を螺入させる雌側ネジ溝が刻設された固定穴32aと、ガイド突起としての柱用突起341及び側面用突起342とが設けられている。
このガイド突起として設けられる柱用突起341及び側面用突起342は、建物ユニット2の所定の位置に当接させるために上方に向けて突出された突起である。
この柱用突起341は、柱21の下面穴21aに対向させる下敷き領域31aの位置に鉤状に成形される。すなわち、柱用突起341の頭部の幅が下面穴21aの直径より小さく成形されており、柱用突起341の頭部を下面穴21aに挿通させた後にプレート部31を短辺梁22方向にスライドさせると、下面穴21aの内側面に柱用突起341のくびれが当接して一点目の位置が決まることになる。
一方、側面用突起342は、プレート部31の側縁から上方に向けて突出された鉤状のフック部である。この側面用突起342には、接合枠材24Bの板厚を跨ぐことが可能な高さのくびれが形成されており、接合枠材24Bを接合させる側の柱21の側面に側面用突起342を当接させると二点目の位置が決まることになる。
すなわち、柱用突起341と側面用突起342とを建物ユニット2の柱21に当接させると、プレート部31の位置が決まり、接合枠材24Aと短辺梁22とを貫通する予め設けられた穴(図示省略)の位置と固定穴32aの位置とが合致し、固定ボルト32を容易に挿入することができるようになる。そして、この固定ボルト32によって、短辺梁22と接合枠材24Aとプレート部31とが一体化される。
また、張出し領域31bには、図3に示すように締結金具33などを取り付けるための取付穴33aが設けられている。この取付穴33aの内側面には雌側ネジ溝が刻設されている。
この取付穴33aには、水平位置調整ガイドとしての水平ガイド35又は締結金具33が取り付けられる。最初に取り付けられる水平ガイド35は、図4,5に示すように、上部が直角に折れ曲がった片状部材である。
この水平ガイド35の頭部には、ボルト35aを挿通させる穴(図示省略)が設けられており、この穴を挿通させたボルト35aの先端を取付穴33aに螺入することで水平ガイド35をプレート部31に固定することができる。
また、プレート部31を荷台1に固定する際に取り付けられる締結金具33は、図6,7に示すように、側面視略コ字形の本体部331と、本体部331の上辺に螺入される締結ボルト332とを有している。この締結ボルト332には、本体部331の上辺より上方に上ナット332aが装着され、上辺より下方に下ナット332bが固着される。
さらに、張出し領域31bでは、図3に示すように高さ調整手段としての高さ調整ボルト36を取り付ける箇所が増板36dによって増厚され、高さ調整ボルト36を螺入させるためのネジ穴36bが設けられる。
また、高さ調整ボルト36の先端には、図4,5に示すように、截頭円錐状の台座36aが設けられている。そして、ネジ穴36bの下方には、その台座36aを収容する収容穴36cが設けられる。
そして、この高さ調整ボルト36を回すことによって、プレート部31の下面と荷台1の上面との距離を調整することができる。また、高さ調整ボルト36には、一時的に建物ユニット2の重量を支持できる強度の部材が使用される。
図2は、建物ユニット2の四隅に固定治具3A−3Dを取り付けたトラックに積み込む前の状態を示した斜視図である。この段階では各固定治具3A−3Dには、水平ガイド35と高さ調整ボルト36が取り付けられている。
そして、この建物ユニット2を積み込むトラックの荷台1は、図1に示すように、建物ユニット2の平面形状と略同じ又はそれよりも大きな長方形の平面形状をしている。ここで、荷台1の前方側の縁部を前縁11、右側の縁部を右縁12、後方側の縁部を後縁13、左側の縁部を左縁14とする。また、縁部には、図5の右縁12で示すように、荷台1の上面から垂下される壁が形成される。
次に、本実施の形態の固定治具3A−3Dを使用した建物ユニット2の輸送方法について説明するとともに、本実施の形態の固定治具3A−3D及びそれを使用した建物ユニット2の輸送方法の作用について説明する。
まず、下面を浮かした状態の建物ユニット2の下に作業員が入り、図3に示すようにプレート部31の柱用突起341を柱21の下面穴21aに挿し込んでプレート部31が止まる位置まで横方向にスライドさせる。また、側面用突起342は、長辺梁23側の柱21の側面に当接させる。
このようにしてプレート部31の建物ユニット2に対する位置合わせをすると、建物ユニット2に対して正確な位置にプレート部31が取り付けられ、接合枠材24Aの内側から固定ボルト32を固定穴32aに向けて容易に挿入することができる。そして、固定ボルト32を固定穴32aに捩じ込むと、プレート部31が建物ユニット2に固定される。
また、プレート部31の取付穴33aには、図4に示すようにボルト35aを捩じ込んで水平ガイド35を固定する。さらに、プレート部31のネジ穴36bには、高さ調整ボルト36を取り付ける。この高さ調整ボルト36は、積み込みに使用するフォークリフトの刃の厚さ以上、下方に突出させておく。
このような固定治具3A−3Dの取り付けは、図2に示すように建物ユニット2の四隅に対しておこなう。ここで、水平ガイド35の向きは、荷台1の後縁13側に取り付けられる固定治具3B,3Cでは後方から垂下されるように取り付けられ、荷台1の右縁12側に取り付けられる固定治具3Aでは右側から垂下されるように取り付けられる。また、図2では図示されていないが、荷台1の左縁14側に取り付けられる固定治具3Dでは左側から水平ガイド35が垂下されるように取り付けられる。
そして、固定治具3A−3Dが取り付けられた建物ユニット2の下方にフォークリフト(図示省略)の刃を差し込み、建物ユニット2を水平に持ち上げる。また、フォークリフトによってトラック近傍まで建物ユニット2を運んだ後に、建物ユニット2を荷台1よりも高い位置まで持ち上げ、荷台1の上方に建物ユニット2を水平状態のまま移動させる。
続いて、建物ユニット2を荷台1に向けて下げると、図4に示すように下方に延設された水平ガイド35の内側面が右縁12に当たり、建物ユニット2の右側の位置調整がおこなわれる。
同様にして、建物ユニット2の左側では、固定治具3Dの水平ガイド35の内側面が左縁14に当たり、建物ユニット2の左側の位置調整がおこなわれる。さらに、建物ユニット2の後方では、固定治具3B,3Cの水平ガイド35,35の内側面が後縁13に当たり、建物ユニット2の前後方向の位置調整がおこなわれる。
このように4箇所の水平ガイド35,・・・の内側面が荷台1の縁部(12,13,14)に接触して荷台1に対する前後左右の位置調整がおこなわれるのであれば、最初から正確な位置合わせをおこなわなくても、フォークリフトを操作しながら建物ユニット2を正確な位置に誘導して容易に積み込みをおこなうことができる。
また、水平ガイド35,・・・で位置合わせをおこなってから荷台1に向けて真下に降ろされた建物ユニット2は、荷台1の所定の位置に収められるため、側方や後方に大きくはみ出すことがない。
そして、固定治具3A−3Dの高さ調整ボルト36,・・・の台座36a,・・・が荷台1の上面に当接すると、建物ユニット2が荷台1の上に載置されることになる。この一時的に高さ調整ボルト36,・・・で建物ユニット2が支持された状態で、建物ユニット2の下方からフォークリフトの刃を抜き取る。
このように高さ調整ボルト36,・・・によって建物ユニット2を荷台1から浮かせた状態にできれば、角材などを荷台1に敷かなくてもフォークリフトの刃を抜くことができる。
また、フォークリフトの刃を抜いた後は、高さ調整ボルト36,・・・の頭部を回して固定治具3A−3Dを荷台1に向けて下げる。すなわち、高さ調整ボルト36を回し続けると、台座36aがプレート部31の収容穴36cに収容され、プレート部31の下面が荷台1の上面に当接することになる。
このように建物ユニット2は、荷台1の上面に下面が接触したプレート部31の上に載置される。すなわち、建物ユニット2と荷台1との間にはプレート部31が介在されており、建物ユニット2の下面が直接、荷台1に接触することがない。
このため、柱21又は短辺梁22若しくは長辺梁23と接合枠材24A,24Bとの接合部に施された防錆処理箇所などが、積み込み時や移動時に荷台1に接触して損傷することがない。
また、フォークリフトを使用して建物ユニット2の積み込みができるので、建物ユニット2を傾けることなく水平状態を保ったままで移動させることができる。
そして、プレート部31が荷台1に当接された後に、固定治具3A−3Dの水平ガイド35のボルト35aを外し、締結金具33に付け替える。この締結金具33を取り付けるに際しては、図7に示すように本体部331が荷台1の右縁12とプレート部31を挟むように配置し、本体部331の下辺の上面を右縁12の下端に当接させる。なお、本体部331と右縁12との間に隙間ができる場合は、荷台幅調整プレート(図示省略)などの板材を介在させてもよい。
続いて、締結ボルト332の先端を下ナット332bが固着された位置まで取付穴33aに捩じ込み、所定のトルクになるまで回す。この締結ボルト332は、本体部331の上辺に螺合されて支持されているので、締結ボルト332を回すと下ナット332bと本体部331の下辺とでプレート部31と荷台1とが挟持されることになる。ここで、上ナット332aは、緩み止めとして装着される。
このように締結金具33の挟持による締結であれば、トラックの荷台1に特殊な加工を施さなくても、建物ユニット2を荷台1の上に固定することができる。また、このような締結金具33であれば締結箇所が限定されないため、容易に建物ユニット2を荷台1に積み込むことができる。
さらに、締結ボルト332によって締め付ける構成の締結金具33であれば、締結ボルト332のトルクを管理することによって、所定の荷締め強度が確保されていることを容易に確認することができる。荷締めロープによって固定する従来の方法では、素材の伸縮が大きく荷締め強度を一定にするのが困難であるが、締結ボルト332によって締め付ける構成であれば、荷締め強度を安定させることができる。
また、建物ユニット2の下端で固定する方法であれば、荷締めロープを建物ユニット2に架け渡す場合のように、押し当てられるロープの締め付け力によって建物ユニット2が変形したり、損傷したりすることがない。
さらに、固定治具3A−3Dの締結金具33は、荷台1の高さで締結がおこなえるため、荷締めロープを建物ユニット2に架け渡す場合のように高所作業をおこなう必要がない。
また、建物ユニット2と荷台1との間にはプレート部31が介在するだけなので、角材を敷く従来の方法に比べて貨物の高さを低く設定することができ、輸送経路の選択肢を増やすことができる。
さらに、荷締めロープを建物ユニット2に架け渡す場合のようにロープが当たる箇所を緩衝材などで養生する必要がないため、その分の高さも低くすることができる。
以下、前記した実施の形態の固定治具とは別の形態の実施例1について、図8−10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例1で説明する固定治具4は、前記実施の形態で説明したプレート部31を建物ユニット2側に固定する固定ボルト32などのユニット側固定手段を備えていない。
実施例1の固定治具4は、図8に示すように、鋼板などによって平面視長方形に成形される板状のプレート部41と、建物ユニット2の柱21の下端の蓋211に形成された下面穴21aに挿入される柱用突起44と、建物ユニット2に引っ掛け可能となるフック部42と、プレート部41と荷台1とを挟んで締結する締結手段としての締結金具43とを主に備えている。
このプレート部41には、建物ユニット2の下面に配置される下敷き領域41aと、建物ユニット2の側方から突出される張出し領域41bとが形成される。
また、柱用突起44は、プレート部41の下敷き領域41aに上方に向けて突出される。この柱用突起44は、柱21の下面穴21aに対向させる下敷き領域41aの位置に円柱状に成形される。
柱用突起44の直径は、下面穴21aの直径より僅かに小さく成形されており、柱用突起44を下面穴21aに挿入することによって、プレート部41の位置合わせをおこなうことができる。
また、柱用突起44は、輸送中の建物ユニット2の水平方向への移動に対するせん断抵抗(滑り止め)となる。さらに、トラックの加速時や減速時などに、慣性力によって建物ユニット2が傾いて柱21の下面が浮き上がりそうになったときには、柱用突起44が下面穴21aの内縁に接触することで浮き上がりが阻止される。すなわち、柱用突起44には、滑り止め機能と、浮き上がり防止機能とがある。
フック部42は、プレート部41の下敷き領域41aに上方に向けて突出される。このフック部42は、プレート部41の側縁から上方に向けて突出される基部42bと、基部42bの上部に直交してプレート部41の側縁に平行に延伸される上辺部42aとによって、横向きのL字状に成形される。
このフック部42の基部42bは、接合枠材24Bの板厚を跨ぐことが可能な高さ以上、プレート部41の上面高さより上方に突出している。また、上辺部42aの下面が、建物ユニット2の床梁(長辺梁23)の下フランジの上面に接触することで引っ掛かりとなる。
上述したように輸送中に建物ユニット2が浮き上がりそうになったときには、長辺梁23又は接合枠材24Bの下フランジ上面がフック部42の上辺部42aの下面に当たることで浮き上がりが阻止される。さらに、建物ユニット2が回転しそうになったときには、長辺梁23又は接合枠材24Bの側面がフック部42の基部42bに当たることで建物ユニット2の回転が阻止される。すなわち、フック部42には、浮き上がり防止機能と、回転防止機能とがある。
フック部42と柱用突起44との位置関係、及び柱用突起44と下面穴21aとの隙間の大きさは、柱用突起44を下面穴21aに挿入した状態でフック部42を建物ユニット2の床梁(長辺梁23又は短辺梁22)の下フランジに引っ掛けたときに、プレート部41が落下しないように調整されている。
すなわち、柱用突起44は下面穴21aに挿入されているだけなので、建物ユニット2を吊り上げると抜け落ちそうになる。他方、プレート部41の長手方向の一端はフック部42によって長辺梁23に支持されているので落ちることがなく、プレート部41は柱用突起44側が下がって傾くことになる。このようにしてプレート部41が傾くと、柱用突起44も傾いて下面穴21aの内縁に接触して柱用突起44がこの内縁で支持されることになる。この結果、建物ユニット2を吊り上げてもプレート部41は落下しないことになるが、落下するかしないかは、フック部42と柱用突起44との位置関係、及び柱用突起44と下面穴21aとの隙間の大きさによって決まるため、これらの調整をおこなう。
プレート部41を荷台1に固定する際に取り付けられる締結金具43は、図8,9に示すように、側面視略コ字形の本体部431と、本体部431の上辺に螺入される締結ボルト432とを有している。
本体部431の下辺の端部には、図8,9に示すように、返し止め431aが取り付けられている。この返し止め431aは上方への突起となるため、締結金具43が荷台1の縁部(右縁12)から離れる方向に移動した際の引っ掛かりとなる。
また、締結ボルト432には、本体部431の上辺より上方に凸ナット432aが装着され、上辺より下方に下ナット432bが固着される。凸ナット432aは、ボルト軸周辺の上部が上方に突出しており、その凸ナット432aに嵌合される凹ナット432cと組み合わされて二重ロックナットが構成される。凸ナット432aと凹ナット432cとを組み合わせた二重ロックナットは、締結後に緩みがほとんど起きない。また、二重ロックナットの上部にクリップスペーサ432dを装着することで、二重ロックナットの抜け上がりを完全に防ぐことができる。
次に、図10を参照しながら、実施例1の固定治具4を使用した建物ユニット2の輸送方法の作用について説明する。
まず、クレーンで吊るなどして下面を浮かした状態の建物ユニット2の柱21の横から、図10(a)に示すように、短辺梁22と長辺梁23との間にフック部42が入り込むようにプレート部41を差し込む。
続いて、プレート部41の上面から上方に向けて突出している柱用突起44を、柱21の下面穴21aに下から挿入する。このときフック部42は、長辺梁23側が開放された向きになっている。
そして、図10(a)の矢印方向にプレート部41を回すと、図10(b)に示すようにフック部42が長辺梁23側の接合枠材24Bの下フランジに引っ掛かった状態になる。
この状態のプレート部41は、長手方向の一端はフック部42が長辺梁23に引っ掛かって支持されているが、他端はどこにも支持されていないため少し傾くことになる。しかしながら、プレート部41が傾くと、柱用突起44も傾いて下面穴21aの内縁に当たり、それ以上にはプレート部41は傾かなくなる。また、その状態で、吊られた建物ユニット2を移動させても、プレート部41が落下することはない。
このようにして建物ユニット2の四隅の柱21,・・・の下面にプレート部41,・・・を取り付け、図8に示すようにトラックの荷台1の上に降ろすと、建物ユニット2は荷台1の上面に下面が接触したプレート部41の上に載置されることになる。すなわち、建物ユニット2と荷台1との間にはプレート部41,・・・が介在されており、建物ユニット2の下面が直接、荷台1に接触することがない。
そして、図8,10(c)に示すように本体部431が荷台1の右縁12とプレート部41を挟むように締結金具43を配置し、本体部431の下辺の上面を右縁12の下端に当接させる。
続いて、締結ボルト432の先端を下ナット432bが固着された位置まで取付穴43aに捩じ込み、所定のトルクになるまで回す。この締結ボルト432は、図9に示すように本体部431の上辺に装着された二重ロックナット(432a,432c)によって支持されているので、締結ボルト432を回すと下ナット432bと本体部431の下辺とでプレート部41と荷台1とが挟持されることになる。そして、二重ロックナット(432a,432c)の緩み止めとしてクリップスペーサ432dを装着する。
このように実施例1の固定治具4を使う場合は、建物ユニット2の下に作業員が入らなくても、簡単にプレート部41を建物ユニット2に取り付けることができる。
また、締結作業は、締結金具43によってプレート部41と荷台1を挟持させるときにだけおこなえばよいので、迅速に積み込み作業をおこなうことができる。
さらに、このような固定治具4であれば、クレーンやフォークリフトなどいずれの積み込み装置を使う場合でも適用できる。ここで、フォークリフトを使って建物ユニット2の積み込み又は荷降ろしをする場合は、建物ユニット2を荷台1に降ろす際に、公知のジャッキを荷台1の複数個所に設置しておき、建物ユニット2の下面と荷台1との間にフォークリフトの刃を出し入れできるようにしておけばよい。
そして、輸送中は、柱用突起44によって建物ユニット2の水平方向の移動が阻止される。また、トラックの加速時や減速時に建物ユニット2が傾いて浮き上がりそうになっても、柱用突起44が下面穴21aの内縁に接触して浮き上がりを防止することができる。さらに、フック部42によっても浮き上がりを防止することができる。そして、フック部42の基部42bに床梁(23)又は接合枠材24Bの側面が当たることによって建物ユニット2の回転も防止できる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施例1の固定治具と類似する別の形態の実施例2について、図11を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例2で説明する固定治具4Aは、プレート部41に設けられる柱用突起44Aが実施例1の柱用突起44とは異なっている。この柱用突起44Aは、柱21下端の蓋211の下面穴21bに対向させる下敷き領域41aの位置に円柱状に成形される。
柱用突起44Aの外周面には、雄側ネジ溝441が形成された部分と、ネジ溝のない円滑な曲面の部分とがある。また、この柱用突起44Aを挿入する下面穴21bには、柱用突起44Aの雄側ネジ溝441が螺入可能な雌側ネジ溝が形成されている。
この雄側ネジ溝441を形成する位置は、雄側ネジ溝441と雌側ネジ溝とが噛みあった状態で、建物ユニット2の下面がプレート部41の上面に接触する位置とする。すなわち、雄側ネジ溝441は、図11(b)に示すようにプレート部41を回転させることで下面穴21bに捩じ込むことになるが、約45度回転させるとフック部42の基部42bが接合枠材24Bの側面に当たってプレート部41の回転が不能となる。
このように回転が不能となったときの状態が輸送中も維持されることになるので、この状態でプレート部41の上面と建物ユニット2の最下面とが離隔していると、輸送中の建物ユニット2は柱用突起44A,・・・にのみ支持された状態となってしまう。
このため、プレート部41の回転が不能となる位置で建物ユニット2の下面がプレート部41の上面に接するように雄側ネジ溝441の位置を調整する。この実施例2では、柱21の蓋211の下面が建物ユニット2の最下面となるため、雄側ネジ溝441は柱用突起44Aの根元付近に形成されている。
次に、図11を参照しながら、実施例2の固定治具4Aを使用した建物ユニット2の輸送方法の作用について説明する。
まず、クレーンで吊るなどして下面を浮かした状態の建物ユニット2の柱21の横から、図11(a)に示すように、短辺梁22と長辺梁23との間にフック部42が入り込むように固定治具4Aのプレート部41を差し込む。
続いて、プレート部41の上面から上方に向けて突出している柱用突起44Aを、柱21の下面穴21bに下から挿入する。この柱用突起44Aの上部にはネジ溝は形成されていないため、雄側ネジ溝441の上縁までは真っ直ぐに挿入することができる。また、このときフック部42は、長辺梁23側が開放された向きになっている。
そして、図11(b)の矢印方向にプレート部41を回すと、雄側ネジ溝441が下面穴21bに捩じ込まれ、フック部42が長辺梁23側の接合枠材24Bの下フランジに当たって回転が止まる。
このように柱用突起44Aの雄側ネジ溝441を下面穴21bの雌側ネジ穴に捩じ込んでおけば、吊り上げられた建物ユニット2を移動させても固定治具4Aのプレート部41が落下することはない。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施例2とは別の形態によって固定治具の落下を防止する実施例3について、図12及び図13を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例3で説明する固定治具4Bは、図12(a)に示すようにプレート部41に設けられる柱用突起44Bに、実施例2の柱用突起44Aとは異なる形態の脱落防止手段が施されている。
すなわち、図12(b)に示すように、プレート部41の上面から柱21下端の蓋211の厚さよりも上方の位置の柱用突起44B周面には、弾性突起部としての板バネ部47,47が設けられている。
この板バネ部47は、柱用突起44Bの外周に直方体状に切り欠かれた収容溝471に半円状に湾曲させた板バネを収容することによって形成される。この板バネ部47,47の横方向への突出量は、横方向からの加圧による変形がない状態での板バネ部47,47の頂点間の距離が、下面穴21aの内径よりも大きくなるように設定される。
この板バネ部47,47は、下面穴21aを通過する際には弾性変形して下面穴21aの内径以下になるため通過することができるが、下面穴21aの上方に突き出ると、バネの復元力によって下面穴21aの内径よりも横方向に突出することになる。この状態でプレート部41が下方に移動すると、板バネ部47,47が下面穴21aの周縁に当たって引っ掛かるので、固定治具4Bの落下は防止される。
また、柱用突起44Bに蓋211が接触する高さには収容溝471が設けられておらず欠損がないため、柱用突起44Bの滑り止め機能が損なわれることはない。
弾性突起部の同様の構成として、図12(c)に示すようにねじりバネ部47Aを使用することもできる。ねじりバネ部47Aを使用する場合は、柱用突起44Bの内部にねじりバネ部47Aのコイル部473を収容し、アーム部472,472を上述した板バネ部47,47と同様に柱用突起44Bの横方向に突出させればよい。
続いて、弾性突起部としてのピストンバネ部48について図13(a)を参照しながら説明する。このピストンバネ部48は、柱用突起44Cの外周に円柱状に穿孔された収容孔481に設けられる。この収容孔481は、プレート部41の上面から柱21下端の蓋211の厚さよりも上方の位置に横方向に向けて延伸される。
また、ピストンバネ部48は、収容孔481の奥側に配置されるコイル部48bと、収容孔481の開口側のコイル部48bの端部に取り付けられるキャップ部48aとによって構成される。このキャップ部48aは、先端がドーム状に形成されている。
ピストンバネ部48の横方向への突出量は、横方向からの加圧による収縮がない状態でのキャップ部48aの突出量と柱用突起44Cの直径との合計が、下面穴21aの内径よりも大きくなるように設定される。
このピストンバネ部48は、下面穴21aを通過する際にはコイル部48bが縮んでキャップ部48aが収容孔481に収容されるので下面穴21aを通過することができる。そして、ピストンバネ部48が下面穴21aの上方に突き出ると、バネの復元力によって下面穴21aの内径よりも横方向にキャップ部48aが突出して下面穴21aの周縁に引っ掛かることができるような状態になるので、プレート部41の落下を防止することができる。
また、図13(b)では、上述したバネを使用する形態とは異なる形態の弾性突起部の形態について説明する。この図13(b)で説明する弾性突起部としてのゴム製のOリング部49は、柱用突起44Dの外周に環状に形成されたリング溝491に嵌め付けられる。
このOリング部49は、下面穴21aを通過する際には弾性変形して下面穴21aの内径以下になるため通過することができるが、下面穴21aの上方に突き出ると、ゴムの復元力によって下面穴21aの内径よりも横方向に突出することになる。この状態でプレート部41が下方に移動すると、Oリング部49が下面穴21aの周縁に当たって引っ掛かるのでプレート部41の落下を防止することができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施の形態の固定治具とは別の形態の実施例4について、図14を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例4で説明する固定治具は、通常の建物ユニット2よりも小さな建物ユニット2Aを輸送する際の構成である。上述した固定治具3A−3D,4,4Aのプレート部31,41のいずれも利用することができるが、ここではプレート部41を使って説明する。
サイズの小さい建物ユニット2Aは、図14に示すようにトラックの荷台1よりも一回り以上小さく、縁部(右縁12,左縁14)との離隔が大きくなりすぎて、締結金具43を使って直接、プレート部41を荷台1に固定することができない。
そこで、プレート部41の張出し領域41bを、延長バー45を使って拡張する。この延長バー45は、荷台1の横幅と略同じ長さの帯状の鋼板である。延長バー45の厚さは、プレート部41の厚さと略同じに成形される。
そして、図14に示すように、プレート部41の張出し領域41bと延長バー45とに跨る連結板46を使って、プレート部41と延長バー45とを連結する。
ここで、上述したプレート部41の取付穴43a(図8参照)には、雌側のネジ溝を設けるか否かについて特に限定はしていなかったが、実施例4では、取付穴43bに雌側のネジ溝が形成されている。また、延長バー45にもネジ溝が形成されたネジ穴45aを設ける。
一方、連結板46には、取付穴43b及びネジ穴45aに対向する位置にネジ穴46a,46aがそれぞれ設けられている。連結板46のネジ穴46a,46aの位置を取付穴43b及びネジ穴45aの位置に合わせて、プレート部41と延長バー45の上から連結板46を被せ、ネジ穴46a,46aにそれぞれボルト46b,46bを捩じ込むことで、延長バー45とプレート部41とが一体になるように連結する。
延長バー45の両端には、締結金具43の締結ボルト432の先端を挿入する取付穴45bがそれぞれ設けられており、この取付穴45bを使って上述したように締結金具43による締結をおこなう。
このように輸送する建物ユニット2Aの大きさが荷台1よりも小さくて、プレート部41と荷台1の縁部(12,14)とが離れてしまう場合でも、延長バー45を組み合わせて張出し領域を拡張させることで、建物ユニット2Aを荷台1に固定することができる。
このような実施例4の構成であれば、プレート部41を建物ユニット2Aの大きさに合わせて製作しなおす必要がない。また、この実施例4では、プレート部41の横に延長バー45を並べて連結板46によって両者を連結する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、プレート部41の上に延長バー45を重ねてボルト46bによって両者を接合する構成でもよい。すなわち、プレート部41がそのまま利用できる構成であればよい。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態では、ボックスラーメン構造の建物ユニットを輸送する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、壁構造の建物ユニットや鉄骨構造の建物ユニットを輸送する場合にも本発明を適用できる。
また、前記実施の形態又は実施例では、締結手段として締結ボルト332(432)を使用する締結金具33(43)について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば開閉式のレバーを操作して圧接させる構成の締結手段であってもよい。
さらに、前記実施の形態又は実施例では、締結ボルト332(432)を荷台1の上面側に配置してプレート部31(41)に押し当てる構成について説明したが、これに限定されるものではなく、荷台1の下面側に配置された締結ボルトの先端を荷台1の下面側に押し当てる構成であってもよい。
また、前記実施の形態では水平ガイド35を使用する場合について説明し、実施例では水平ガイド35を使用しない場合について説明したが、これに限定されるものではなく、水平ガイド35は必要に応じて使用すればよい。
さらに、前記実施の形態では、水平ガイド35と締結金具33とを同じ取付穴33aに装着する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、プレート部31の異なる位置にそれぞれ装着する構成であってもよい。この場合は、締結金具33を取り付ける際に、水平ガイド35を取り外す必要はない。
また、前記実施の形態では、荷台1の後縁13側に取り付けられる固定治具3B,3Cには、水平ガイド35が後方から垂下されるように取り付けられているが、これに限定されるものではなく、固定治具3B,3Cにおいても荷台1の右側又は左側から水平ガイド35が垂下されるように取り付けてもよい。この場合は、4箇所の固定治具3A−3Dによって、荷台1に対する左右方向の位置調整をおこなうことができる。
また、前記実施の形態では、高さ調整手段として高さ調整ボルト36を使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、機械ジャッキ、油圧ジャッキ、エアジャッキなどを高さ調整手段として使用することもできる。なお、建物ユニット2の積み下ろしをクレーンでおこなう場合は、高さ調整手段を設ける必要はない。
さらに、前記実施の形態及び実施例で説明した固定治具3A−3D,4,4Aには、水平位置調整機構は設けられていないが、荷台1と建物ユニット2との水平方向の位置関係を調整する水平位置調整機構を固定治具に設けることができる。例えば、高さ調整ボルト36のプレート部31に対する水平方向の取り付け位置(平面位置)をボルトなどで前後左右に微調整できるような水平位置調整機構を設けることができる。また、水平ガイド35の下部に、荷台1の縁部に向けての突出量が調整可能な調整ボルトを設けて水平位置調整機構とすることもできる。