JP2012031124A - アクリロニトリルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】化石資源由来のプロピレンやプロパンを原料として用いない新規なアクリロニトリル製造方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)及び(2)を有するアクリロニトリルの製造方法;
(1)グリセリンを脱水してアクロレインを得る工程、
(2)得られたアクロレインを300〜400℃でアンモ酸化する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリセリンからアクリロニトリルを製造する方法に関する。
現在、世界で生産されるほとんどのアクリロニトリルは、プロピレンを原料とし、モリブデンを主成分とした触媒存在下において、気相接触アンモ酸化反応により得られている。また、近年、プロピレンに代えてプロパンやグリセリン(グリセロール)を原料としてアクリロニトリルを製造するプロパン法の研究も行われている。
特許文献1には、グリセロールからアクリロニトリルを製造する手法が記載されている。
特表2010−519191号公報
しかしながら、石油由来のプロピレンを原料とした製造方法、天然ガス由来のプロパンを原料とした製造方法は、いずれも化石資源の消費を伴い、廃棄されると大気中のCO2濃度を増加させるので地球温暖化への影響も懸念される。限りある化石資源は将来的な枯渇を懸念されており、石油や天然ガスに依存しないアクリロニトリルの製造方法が期待されている。
特許文献1に記載のバイオマス由来のグリセリンを原料とした製造方法は化石資源の消費を伴わないものの、グリセリンからアクリロニトリルへの収率が十分でない。上記事情に鑑み、本発明は、化石資源由来のプロピレンやプロパンを原料とせず、高収率でアクリロニトリルを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、植物性油脂又は動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際等に多量に副生するグリセリンを原料としてアクリロニトリルを高収率に製造する方法を見出した。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]
以下の工程(1)及び(2)を有するアクリロニトリルの製造方法;
(1)グリセリンを脱水してアクロレインを得る工程、
(2)得られたアクロレインを300〜400℃でアンモ酸化する工程。
[2]
アクロレインをアンモ酸化する際に用いられる触媒であって、少なくともモリブデンを含有し、斜方晶又は三方晶の結晶構造を有する触媒。
本発明により、プロピレンやプロパンを原料とせず、高収率でアクリロニトリルを製造する方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のアクリロニトリルの製造方法は、
以下の工程(1)及び(2)を有するアクリロニトリルの製造方法である;
(1)グリセリンを脱水してアクロレインを得る工程、
(2)得られたアクロレインを300〜400℃でアンモ酸化する工程。
工程(1):グリセリンの脱水工程
工程(1)は、グリセリンを脱水してアクロレインを得る工程(以下、単に「脱水工程」とも言う。)である。本工程においては、例えば、グリセリンを適切な触媒に接触させることにより、グリセリンを脱水し、アクロレインを生成させることができる。反応器に供給する原料の態様は、反応方式、触媒の種類等に応じて適宜設定すればよく、例えば、気体又は液体のグリセリン、グリセリン水溶液、グリセリン水溶液を気化したものが挙げられる。
原料としてのグリセリンの由来は、特に限定されない。例えば、石鹸の廃液を精製したものでもよいし、バイオディーゼル燃料の製造時に副生した粗製グリセリンでもよいし、粗製グリセリンから脂肪酸や金属等の不純物を任意量除去したものでもよい。粗製グリセリンから不純物を除去したものとしては、純度50〜90質量%前後のグリセリンが挙げられ、これらももちろん原料として使用できるが、不純物成分による触媒被毒や製造設備内での配管閉塞等を抑制する観点から、純度95質量%以上の精製グリセリンが好ましい。
反応器にガス状のグリセリンを供給する場合、反応原料ガス中におけるグリセリン濃度は、特に制限はないが、アクリロニトリル生産性とコーク抑制の観点から1〜50モル%であることが好ましい。グリセリンの希釈剤は、不活性ガスであれば特に制限はなく、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス、希ガスが挙げられる。
原料中にはグリセリンと希釈剤以外に、水を含有してもよい。ただし、水の割合が高すぎると、後段のアンモ酸化工程において、触媒中のモリブデン飛散量が増大すること等により、触媒劣化を引き起こすおそれがある。一方、触媒によっては、水の割合が少なすぎると、脱水工程におけるアクロレイン収率が低下する場合がある。上記観点から、原料中の水濃度は、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%35質量%以下であることがより好ましい。なお希釈剤や水が反応に必要な場合であっても、必ずしもグリセリンと水を予め供給してから反応器に供給する必要はなく、グリセリン、希釈剤及び/又は水を別々に反応器に供給し、器内で混ざるようにしてもよい。
脱水工程における反応温度は、用いる触媒種、触媒量、反応形式、原料中の水濃度及びグリセリン濃度、運転開始からの経過時間等により適宜調整可能であるが、250〜450℃が好ましく、アクロレイン選択性とコーク抑制の観点から、250〜370℃がより好ましい。
脱水工程における反応圧力は、低い方がアクロレイン収率は高くなる傾向にあるため好ましい。一方、反応圧力が高すぎるとグリセリンが凝縮する場合がある。反応圧力は、通常、0.001〜1MPaが好ましく、0.01〜0.5MPaがより好ましい。
脱水工程における反応方式は、固定床反応、流動床反応等、特に制限はないが、アクロレインの逐次分解を抑制するため、固定床反応が好ましい。
脱水反応に用いられる触媒としては、例えば、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどの天然又は合成粘土化合物、アルミナ等の担体にリン酸や硫酸を担持させたもの、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、V25、MoO3、WO3、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−WO3などの無機酸化物又は無機複合酸化物、MgSO4、Al2(SO43、K2SO4、AlPO4、Zr3(SO42等の金属の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの固体酸性物質が挙げられる。中でも、MFI型ゼオライトであるHZSM−5や、アルカリ元素を添加したプロトン型の結晶性メタロシリケートを用いると、高いアクロレイン収率とコーク抑制効果が得られる傾向にあるため好ましい。
脱水反応に用いられる触媒は、粉末のままでも、球形、柱状、リング状等に成型された成型体として用いてもよい。また、触媒が粉末、成型体いずれの場合においても、アクロレイン収率や寿命改善などを目的として、含浸やイオン交換による表面処理を施してもよい。中でも、プロトン型のヘテロポリ酸塩H4SiW1240やH4SiW12-xMox40等を溶媒に溶解し、多孔質シリカ担体に含浸させたものを用いると、高いアクロレイン収率が得られる傾向にあるため好ましい。
(2)アクロレインのアンモ酸化工程
工程(2)は、工程(1)で得られたアクロレインを300〜400℃でアンモ酸化する工程(以下、単に「アンモ酸化工程」とも言う。)である。本工程においては、例えば、脱水工程で得られたアクロレインを触媒の存在下でアンモニア及び酸素と接触させ、アクリロニトリルに転換する。脱水工程の反応生成物を精製した後、アンモ酸化工程に供してもよい。脱水工程においては多量に水が排出されるので、脱水工程とアンモ酸化工程の間に、水をアクロレインと分離する水分離塔を設けることも可能である。
アンモ酸化工程は固定床反応、流動床反応等、特に反応方式に制限はないが、除熱効率が高く、温度暴走のリスクが低いという観点から、流動床反応が好ましい。
アンモ酸化工程における反応温度は、後述するように触媒により適正な範囲が異なるが、300〜400℃であり、320〜370℃が好ましい。反応温度が300℃以上であると、アクロレインのアンモ酸化反応が良好に進行し、400℃以下であると、生成したアクリロニトリルの逐次分解が抑制される。
アンモ酸化工程における反応圧力は、高くなるにつれてアクリロニトリル収率が低下する一方で、生産性(収量)は向上する傾向にある。反応圧力は、0.001〜1MPaが好ましく、0.02〜0.15MPaがより好ましい。
アンモ酸化工程に用いることのできる触媒としては、例えば、酸化モリブデン、並びに酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化アンチモン及び酸化銅を含む混合物又は複合酸化物が挙げられる。
アンモ酸化工程に用いる触媒(以下、単に「アンモ酸化触媒」とも言う。)としては、1)少なくともモリブデンを含有し、2)斜方晶又は三方晶の結晶構造を有する酸化物であることが特に好ましい。ここで、上述したように、脱水工程とアンモ酸化工程では適正な反応温度範囲が異なるため、脱水反応の適正温度範囲が250℃から350℃であるのに対して、1)及び2)を満たさない触媒を用いた場合のアンモ酸化反応の適正温度範囲は350℃から450℃である。比較的低温の脱水工程で得られたアクロレインは、アンモ酸化工程で過度に加温されることにより熱分解を生じて、アクリロニトリル収率が低下するおそれがあるため、アンモ酸化工程の反応温度は、より低温である脱水工程の反応温度に近い方が好ましい。
本発明者らは、少なくともモリブデンを含有し、斜方晶又は三方晶の結晶構造を有する触媒をアンモ酸化工程に用いると、脱水反応の適正温度範囲に近い300〜400℃でアンモ酸化反応が進行するため、アクロレインの熱分解が抑制され、高い選択性でアクリロニトリルの合成が可能になることを見出した。
また、アクリロニトリル選択性の効果に加えて、触媒寿命の観点からも上記1)及び2)を満たす触媒が好ましい。アンモ酸化反応において、触媒中のモリブデンは、反応温度と水分圧に依存した蒸気圧を有するため、触媒表面から活性成分のモリブデンが飛散することにより、触媒が経時的に劣化することが知られている。上記1)及び2)を満たす触媒を用いると、アンモ酸化反応の適正温度を低下させることができるので、モリブデンの飛散も抑制され、それに伴う経時的な劣化も緩和されるという利点を有する。
また、アンモ酸化触媒は、シリカを主成分とする担体によって担持されることが好ましい。アンモ酸化触媒がシリカを主成分とする担体によって担持されている場合、高い機械的強度を有する傾向にあるため、流動床反応器を用いた気相接触アンモ酸化反応に好適である。シリカを主成分とする担体中のシリカの含有量は、アンモ酸化触媒の構成元素の酸化物と担体からなる担持酸化物の全質量に対して、SiO2換算で20〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%である。シリカの含有量が20質量%以上であると、流動床反応に適用する上で十分な機械的強度を有する傾向にあり、70質量%以下であると、適度な触媒活性を有する傾向にある。
シリカ担体の含有量は、強度と粉化防止の観点で、担持酸化物の全質量に対して20質量%以上が好ましい。シリカ担体の含有量が20質量%未満であると、アンモ酸化触媒を工業的に使用する上でも安定運転が難しくなり、ロスしたアンモ酸化触媒を補充する必要が生じる場合があるため経済的にも好ましくない。逆にシリカ担体の含有量が担持酸化物の全質量に対して70質量%を超えると、充分な活性が得られず、必要な触媒量が増えてしまう傾向にある。特に流動床の場合、シリカの含有量が70質量%を超えると触媒の比重が軽くなりすぎ、良好な流動状態が得られにくくなる傾向にある。
本実施形態のアンモ酸化工程には、例えば、
Mo1abn (I)
(式(I)中、Zは、Te、Sb、Nb、W、Ce、Ta、Ti、P、Bi、Cuからなる群から選択される少なくとも1種以上の金属元素を示し、a、bは、それぞれMo1原子あたりのV、Zの原子比を示し、0<a≦1、0<b≦1であり、nは構成金属の酸化状態によって決まる酸素の原子比を示す。)
で表される組成を有し、結晶系が斜方晶又は三方晶である触媒を用いることができる。
本実施態様における触媒としては、下記式(II)
Mo1aNbbcn (II)
(式(II)中、Zは、Te、Sb、W、Ce、Ta、Ti、P、Bi、Cuからなる群から選択される少なくとも1種以上の金属元素を示し、a、b、cは、それぞれMo1原子あたりのV、Nb、Zの原子比を示し、0<a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1であり、nは構成金属の酸化状態によって決まる酸素の原子比を示す。)
で表される組成を有する触媒がより好ましい。
式(II)において、Mo1原子当たりの原子比a、b、cは、それぞれ、0.1〜0.4、0.02〜0.2、0.1〜0.4であることが好ましい。
Nbは結晶の耐熱性能を高めることで、触媒寿命を長くする効果がある。同様の効果はW、Ce、Taを成分Zとして用いた場合にも期待できる。
アンモ酸化反応に供するガスは純粋なアクロレインガスとは限らず、副生物としてプロピレンが共存する可能性がある。また、グリセリンから得られるアクロレインと新たにフィードするプロピレンを同時にアンモ酸化することで、アクリロニトリルの生産量を高めることもできる。その場合、プロピレンのアンモ酸化反応を促進する観点から、Te、Sbが好適に用いられる。
結晶系が斜方晶又は三方晶の触媒は、水熱合成法において原料調合液のpHをコントロールすることによって調製することができる。また、結晶系が斜方晶の触媒は、原料調合液を噴霧乾燥し、得られた噴霧乾燥粉を焼成することによっても調製することができる。以下に水熱合成法による触媒の調製法を例示する。
(A−1)原料調合液を調製する工程
(A−2)前記原料調合液を加熱して結晶を生成させる工程
(A−3)前記加熱により生成した結晶に、Zを含むスラリー及び/又は溶液を接触させる工程
以下、各工程について説明する。
(A−1)原料調合工程
原料調合工程においては、水等の溶媒に、Mo、Vの原料を溶解、混合又は分散させて、原料調合液を得る。原料の溶解手順、混合手順又は分散手順としては特に限定されない。原料を同じ溶媒中で溶解、混合又は分散させてもよく、或いは原料を個別に溶媒中に溶解、混合又は分散させた後に両者を混合してもよい。また、必要に応じて加熱及び/又は攪拌してもよい。このようにして得られる原料調合液は均一な溶液であるか、若しくはスラリーである。
モリブデン(Mo)の原料としては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物に代表されるようなモリブデンを含有するイソポリ酸、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、リンモリブデン酸アンモニウム、ケイモリブデン酸アンモニウム等の一連のヘテロポリ酸類、及びこれらのアルカリ金属塩等を用いることが可能であるが、中でもヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物を好適に用いることができる。
バナジウム(V)の原料としては、オキシ硫酸バナジウム・n水和物、酸化バナジウム類、メタバナジン酸アンモニウム、塩化バナジウム、硫化バナジウム、ヨウ化バナジウム、水酸化バナジウム、水素化バナジウム等を用いることができるが、中でもオキシ硫酸バナジウム・n水和物を好適に用いることができる。
原料調合工程における具体的な手順の一例としては、初めに(ア)ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物を蒸留水に溶解させる。このときのMo含有水溶液の濃度範囲は10〜1.0×10-3mol/Lであることが好ましい。また、(ア)とは別に(イ)オキシ硫酸バナジウム・n水和物を蒸留水に溶解させる。このときのV含有水溶液の濃度範囲は5〜1.0×10-3mol/Lであることが好ましい。次に、(イ)の溶液を(ア)に加え十分に攪拌して原料調合液を調製する。また、ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物とオキシ硫酸バナジウム・n水和物を固体の状態で混合した後に蒸留水に溶解させて、攪拌してもよい。また、蒸留水は冷却した状態で、若しくは加熱した状態で原料に加えても何ら問題はない。
次に、工程(A−1)で得られた原料調合液に酸を加えて、原料調合液のpHを酸性に保つ。このときのpHは1.0〜6.0が好ましい。三方晶の触媒を製造する場合はpHを1.0〜3.0、より好ましくは1.7〜2.4に調整する。斜方晶の触媒を製造する場合はpHを2.0〜6.0、より好ましくは、3.0〜5.0に調整する。このときに添加する酸は、硫酸、硝酸、塩酸等の強酸水溶液が好ましく、また、強酸と種々の弱酸の混合した酸でpHを調整してもよい。こうして得られた溶液を、窒素に代表されるような不活性ガスで十分にバブリングして溶存酸素を系内から追い出し、オートクレーブに移す。オートクレーブは、酸性の水溶液に腐食されないものであり、かつ、後述する(A−2−1)水熱合成工程の条件に耐えうるものである限り、特に限定されない。例えば、SUS316製のボトルでもよいし、SUS製のボトルの内壁にフッ素コーティングが施されたボトルでもよいし、フッ素系の樹脂からなる容器が内包されたものでもよい。
(A−2)結晶生成工程
工程(A−2)は、前記原料調合液を加熱して結晶を生成させる工程であり、主に以下の(A−2−1)水熱合成工程、(A−2−2)精製工程、(A−2−3)焼成工程に別けられる。
(A−2−1)水熱合成工程
工程(A−1)で得られた原料調合液を110〜450℃に加熱し、1〜150時間程度保持すると、水熱合成反応が進行して、Mo及びVを含有する結晶性の固体が生成する。目的とする結晶性固体の純度及び収率を高くするという観点から、水熱合成反応の好ましい反応温度は110〜250℃である。また、加熱時間が短かすぎる場合には結晶の生成が見られない場合があり、時間が長すぎると不純物の生成が増大する傾向にあるため、好ましい反応時間は10〜120時間である。反応が十分に進行したことは、X線回折(XRD)により確認することができる。オートクレーブの条件を200℃で4日間にしても、250℃で1日間にしても同じ構造を有する結晶性固体が析出する。
結晶系が三方晶であることは、CuKα線をX線源として得られるX線回折図において、2θ=8.2°±0.2°、9.6°±0.2°、22.2°±0.2°、26.8°±0.2°、30.1°±0.2°、45.3°±0.2°の位置に主たる回折ピークを示すことによって確認することができる。
結晶系が斜方晶であることは、2θ=6.5°、7.9°、9.0°、12.7°、22.2°、27.3°、28.3°の位置に主たる回折ピークを示すことによって確認することができる。
以下にX線回折の測定条件を示す。
X線源 :CuKα1+CuKα2
検出器 :シンチレーションカウンター
管電圧 :40kV
管電流 :200mA
発散スリット :1°
散乱スリット :1°
受光スリット :0.15mm
スキャン速度 :4°/min
サンプリング幅 :0.02°
スキャン方法 :2θ/θ法
(A−2−2)精製工程
次に、オートクレーブを室温まで冷却した後、結晶性固体をろ別する。このとき、水溶性ジカルボン酸で結晶性固体を精製してもよい。ジカルボン酸としては、シュウ酸、酒石酸等を好適に用いることができる。具体的な手順の一例としては、得られた結晶性固体1gに対して1〜10g程度のシュウ酸を、シュウ酸1gにつき25mL程度の水で溶解し、その中に結晶性固体を入れて攪拌する。このとき、シュウ酸水溶液は40〜80℃程度に加熱してもよい。その後、ろ過を行い、得られた結晶を30〜200℃で、常圧若しくは減圧下で乾燥させる。
(A−2−3)焼成工程
工程(A−2−3)は、前記結晶を不活性ガス雰囲気下、200〜800℃で焼成する工程である。結晶性固体を乾燥した後、結晶を後述する(A−3)接触工程にそのまま供してもよいが、接触工程の前に結晶性固体を焼成する工程を行うことが好ましい。接触工程前に結晶性固体を焼成しておくと、結晶性固体のより高い結晶化が促進される傾向にある。焼成は、回転炉、固定炉等で行うことが可能である。空気雰囲気下でも焼成することは可能であるが、結晶性固体中の金属の還元率を調整したい場合は、不活性ガス雰囲気で焼成することが好ましい。焼成温度は、200℃〜800℃が好ましい。十分に焼成するためには、数十分〜1日程度焼成するのが好ましく、1時間〜16時間がより好ましい。
(A−3)接触工程
工程(A−3)は、前記加熱により生成した結晶に、Zを含むスラリー及び/又は溶液を接触させる工程である。
工程(A−3)においては、結晶性固体を粉砕した後、これを、Z源を含むスラリー及び/又は溶液に接触させる。結晶性固体の粉砕には、メノウ鉢、乳鉢等を使用することができる。なお、本明細書中「接触」とは、固体と液体とが接触状態にあること言い、特に、固体の細孔に液体を入り込ませることを意味する。
ZがTeの場合、Z源の例としては、二酸化テルル、三酸化テルル、亜テルル酸、テルル酸等が挙げられ、中でも、溶解性と得られる触媒性能の観点から、テルル酸が好ましい。
ZがSbの場合、Z源の例としては、酸化アンチモン(III)、酸化アンチモン(IV)、酸化アンチモン(V)、メタアンチモン酸(III)、アンチモン酸(V)、アンチモン酸アンモニウム(V)、塩化アンチモン(III)、塩化酸化アンチモン(III)、硝酸酸化アンチモン(III)、アンチモンのアルコキシド、アンチモンの酒石酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、中でも、塩酸水溶液への溶解性の観点から、酸化アンチモン(III)が好ましい。
ZがNbの場合、Z源の例としては、ニオブ酸、NbCl5、NbCl3、Nb(OC255が挙げられ、中でも、溶解性の観点から、ニオブ酸をジカルボン酸化合物溶液に溶解させて得られるニオブのジカルボン酸化合物の水溶液が好ましい。
ZがWの場合、Z源の例としては、酸化タングステン、酸化タングステン(III)、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(VI)、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩が挙げられる。上記の中でも、メタタングステン酸アンモニウムが好ましい。
ZがCeの場合、Z源の例としては、硝酸セリウム六水和物等の硝酸塩、塩化セリウム7水和物、セリウムの硫酸塩及び炭酸塩が挙げられる。
ZがTaの場合、Z源の例としては、タンタル酸、酸化タンタル、タンタルのアルコキシド、ほう化タンタル、五塩化タンタル、五臭化タンタル、五フッ化タンタルが挙げられる。
ZがTiの場合、Z源の例としては、四塩化チタン、ほう化チタン、フッ化チタン、水酸化チタン、よう化チタン、酸化チタン(IV)硫酸塩水和物が挙げられる。
ZがPの場合、Z源の例としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウムが挙げられる。
ZがBiの場合、Z源の例としては、硝酸ビスマス、クエン酸ビスマス、酢酸ビスマス、塩化ビスマス、炭酸酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、五フッ化ビスマスが挙げられる。
ZがCuの場合、Z源の例としては、塩化第一銅(I)、塩化第二銅(II)、塩化第二銅アンモニウム(II)、オレイン酸第二銅(II)、クエン酸第二銅(II)、酢酸第二銅(II)、シュウ酸第二銅(II)、酒石酸第二銅(II)、硝酸第二銅(II)、硫酸銅(II)が挙げられる。
Zを含むスラリー又は溶液に用いられる溶媒としては、一般的には水でよいが、Z源が水に対して溶解性が乏しい場合には、有機溶媒でも、酸と水の混合物である酸性水溶液でもよい。酸性水溶液を調製する場合、添加する酸は、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸でも、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸でも構わない。Z源の種類にも依るが、酸性水溶液のpHが1.0〜5.0程度になるように酸の添加量を調整することが好ましい。Z源溶液の濃度は5.0〜1.0×10-4mol/Lが好ましい。
粉砕した結晶性固体をZ源を含むスラリー及び/又は溶液に接触させる方法の一つである含浸は、固体と液体を接触させることによって実現できるが、均一にしみ込ませる観点で、接触させる液体の体積は固体の0.1〜10倍が好ましい。より適切な液体量を求めるためには、固体の細孔体積を計算によって求め、液体量を細孔体積の0.5〜2倍に設定するのが好ましい。なお操作性の観点からは、固体を入れた容器に液体を添加するのが好ましいが、液体中に固体を添加してもよい。含浸は両者の接触によって達成できるが、より多くの細孔に十分な量の液体を入り込ませる観点で、結晶性固体とZを含むスラリー及び/又は溶液の混合物を撹拌した後、数分〜1時間程度静置するのが好ましい。
含浸操作後、得られた複合金属酸化物を乾燥することが好ましい。十分に乾燥できる限り、室温で乾燥しても、加温してもよい。また常圧下で乾燥しても、減圧下で乾燥してもよい。さらに、乾燥した後、不活性ガス雰囲気下、200〜500℃の範囲で数時間加熱してもよい。
上述したとおり、斜方晶の結晶構造を有する触媒は、噴霧乾燥法によって調製することもできる。噴霧乾燥法による触媒の調製法は、以下の工程を有する。
(B−1)原料を調合する工程
(B−2)工程(B−1)で得られた原料調合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程
(B−3)工程(B−2)で得られた触媒前駆体を焼成し、アンモ酸化用触媒を得る工程
上記式(II)で表される触媒を例にとって、噴霧乾燥法による触媒の調製法を説明する。
(工程B−1:原料を調合する工程)
モリブデン(Mo)の原料としては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物に代表されるようなモリブデンを含有するイソポリ酸、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、リンモリブデン酸アンモニウム、ケイモリブデン酸アンモニウム等の一連のヘテロポリ酸類、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられ、中でも、ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物を好適に用いることができる。
バナジウム(V)の原料としては、オキシ硫酸バナジウム・n水和物、酸化バナジウム類、メタバナジン酸アンモニウム、塩化バナジウム、硫化バナジウム、ヨウ化バナジウム、水酸化バナジウム、水素化バナジウム等が挙げられ、中でも、メタバナジン酸アンモニウムを好適に用いることができる。
ニオブ(Nb)の原料としては、ニオブ酸、NbCl5、NbCl3、Nb(OC255が挙げられ、中でも、溶解性の観点から、ニオブ酸をジカルボン酸化合物溶液に溶解させて得られるニオブのジカルボン酸化合物の水溶液が好ましい。
ZがTeの場合、Z源の例としては、二酸化テルル、三酸化テルル、亜テルル酸、テルル酸等が挙げられ、中でも、溶解性と得られる触媒性能の観点から、テルル酸が好ましい。
ZがSbの場合、Z源の例としては、酸化アンチモン(III)、酸化アンチモン(IV)、酸化アンチモン(V)、メタアンチモン酸(III)、アンチモン酸(V)、アンチモン酸アンモニウム(V)、塩化アンチモン(III)、塩化酸化アンチモン(III)、硝酸酸化アンチモン(III)、アンチモンのアルコキシド、アンチモンの酒石酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、中でも、塩酸水溶液への溶解性の観点から、酸化アンチモン(III)が好ましい。
ZがWの場合、Z源の例としては、酸化タングステン、酸化タングステン(III)、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(VI)、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩が挙げられる。上記の中でも、メタタングステン酸アンモニウムが好ましい。
ZがCeの場合、Z源の例としては、硝酸セリウム六水和物等の硝酸塩、塩化セリウム7水和物、セリウムの硫酸塩及び炭酸塩が挙げられる。
ZがTaの場合、Z源の例としては、タンタル酸、酸化タンタル、タンタルのアルコキシド、ほう化タンタル、五塩化タンタル、五臭化タンタル、五フッ化タンタルが挙げられる。
ZがTiの場合、Z源の例としては、四塩化チタン、ほう化チタン、フッ化チタン、水酸化チタン、よう化チタン、酸化チタン(IV)硫酸塩水和物が挙げられる。
ZがPの場合、Z源の例としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウムが挙げられる。
ZがBiの場合、Z源の例としては、硝酸ビスマス、クエン酸ビスマス、酢酸ビスマス、塩化ビスマス、炭酸酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、五フッ化ビスマスが挙げられる。
ZがCuの場合、Z源の例としては、塩化第一銅(I)、塩化第二銅(II)、塩化第二銅アンモニウム(II)、オレイン酸第二銅(II)、クエン酸第二銅(II)、酢酸第二銅(II)、シュウ酸第二銅(II)、酒石酸第二銅(II)、硝酸第二銅(II)、硫酸銅(II)が挙げられる。
Mo化合物、V化合物、成分Z化合物(Nb以外)、必要によりその他原料となる成分を水に添加し、加熱して水性混合液(あ)を調製する。この時、容器内は窒素雰囲気でもよい。次に、Nb化合物とジカルボン酸を水中で加熱撹拌して混合液(B0)を調製する。更に、混合液(B0)に、過酸化水素を添加し、水性混合液(い)を調製する。この時、H22/Nb(モル比)は0.5〜20であり、1〜10であることが好ましい。
目的とする組成に合わせて、水性混合液(あ)、水性混合液(い)を好適に混合して、水性混合液(う)を得る。得られた水性混合液(う)を、空気雰囲気下で熟成処理し、スラリーを得る。
水性混合液(う)の熟成とは、水性混合液(う)を所定時間静置するか撹拌することを言う。工業的に複合酸化物触媒を製造する場合、通常は噴霧乾燥機の処理スピードが律速となり、一部の水性混合液(う)が噴霧乾燥された後、全ての混合液の噴霧乾燥が終了するまでに時間を要する。この間、噴霧乾燥処理されていない混合液の熟成は継続される。従って、熟成時間には、噴霧乾燥前の熟成時間だけでなく、噴霧乾燥開始後から終了までの時間も含まれる。
熟成時間は、目的物の収率の観点で、90分以上50時間以内が好ましく、90分以上6時間以内がより好ましい。
熟成温度は、Mo成分の縮合やVの析出を防ぐ観点で、25℃以上が好ましい。また、Nbと過酸化水素を含む錯体の加水分解が起こりすぎないようにし、好ましい形態のスラリーを形成する観点で65℃以下が好ましい。上記観点から、熟成温度は、25℃以上65℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
熟成時の容器内雰囲気は、十分な酸素濃度を有することが好ましい。酸素が十分でないと、水性混合液(う)の実質的な変化が生じにくくなる可能性がある。従って、容器内の気相部酸素濃度は1vol%以上であることがより好ましい。
気相酸素濃度は、一般的な方法、例えば、ジルコニア式酸素濃度計を用いて測定することができる。気相酸素濃度を測定する場所は、水性混合液(う)と気相との界面近傍であることが好ましい。例えば、同一地点での気相酸素濃度の測定を1分以内に3度行い、3度の測定結果の平均値をもって気相酸素濃度とすることが好ましい。
気相酸素濃度を低減させるための希釈ガスは特に限定されないが、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気等が挙げられ、工業的には、窒素が好ましい。また、気相酸素濃度を増加させるためのガスとしては、純酸素または高酸素濃度の空気が好ましい。
熟成により、水性混合液(う)に含まれる成分の酸化還元状態に何らかの変化が生じると考えられる。何らかの変化が起こっていることは、熟成中に水性混合液(う)の色の変化、酸化還元電位の変化等が生じることからも示唆される。その結果、酸素濃度1〜25vol%の雰囲気で90分以上50時間以内の熟成の有無によって得られる酸化物触媒にも違いが現れる。例えば、熟成中、液中成分の形態変化を正確に同定するのは極めて困難であるが、熟成時間の異なる触媒を製造し、目的物の収率を評価することで、収率の良い触媒に施した熟成時間が好ましく、この時何らかの好ましい形態のスラリーが形成されていたと考えることができる。
水性混合液(う)の酸化還元電位は水性原料液(い)の電位600mV/AgClが支配的であり、水性原料液(い)に含まれるシュウ酸Nbパーオキサイドと他の金属成分が何らかの酸化還元反応を起こすことにより経時的な電位の低下が生じると考えている。好ましい酸化還元電位は、450〜530mV/AgClであり、より好ましくは470〜510mV/AgClである。
上記の水性混合液(う)に含まれる成分の酸化還元状態に何らかの変化に影響する酸化還元反応の進行を遅くし過ぎず、スラリー段階での酸化還元状態が過酸化気味になるのを防ぐ観点で、熟成中の酸素濃度は1vol%以上とする。一方、酸化還元反応が進行しすぎて、スラリーが過還元気味になるのを防ぐ観点で、熟成中の酸素濃度は25vol%以下が好ましい。いずれにせよ、気相酸素がスラリーの酸化還元状態に影響を及ぼすため、酸素濃度を適正な範囲に維持する必要がある。その範囲は、5〜23vol%が好ましく、10〜20vol%がより好ましい。
複合酸化物がシリカ担持品の場合、シリカゾルを含むように原料調合液が調製される。シリカゾルは適宜添加することができる。またシリカゾルの一部を粉体シリカの水分散液とすることもできる。粉体シリカの水分散液も適宜添加することができる。
また、アンチモンを用いる場合は、水性混合液(あ)又は調合途中の水性混合液(あ)の成分を含む液に、過酸化水素を添加することが好ましい。このとき、H22/Sb(モル比)は0.01〜5であり、0.05〜4であることが好ましい。また、このとき、30℃〜70℃で、30分〜2時間撹拌を続けることが好ましい。
(工程B−2:乾燥工程)
原料調合工程で得られたスラリーを乾燥することによって、乾燥粉体を得る。乾燥は公知の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥又は蒸発乾固によって行うことができる。噴霧乾燥を採用し、微小球状の乾燥触媒前駆体を得ることが好ましい。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式、又は高圧ノズル方式によって行うことができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。噴霧乾燥装置の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。乾燥機出口温度は100〜160℃が好ましい。
(工程B−3:焼成工程)
乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成に供することによって複合酸化物触媒を得る。焼成装置は、回転炉(ロータリーキルン)を使用することができる。焼成器の形状は特に限定されないが、管状であると、連続的な焼成を実施することができる。焼成管の形状は特に限定されないが、円筒であるのが好ましい。加熱方式は外熱式が好ましく、電気炉を好適に使用できる。焼成管の大きさ、材質等は焼成条件や製造量に応じて適当なものを選択することができるが、好ましくは内径70〜2000mm、より好ましくは100〜1200mmである。焼成管の長さは、好ましくは200〜10000mm、より好ましくは800〜8000mmである。焼成器に衝撃を与える場合、肉厚は衝撃により破損しない程度の十分な厚みを持つという観点から2mm以上が好ましく、より好ましくは4mm以上であり、また衝撃が焼成管内部まで十分に伝わるという観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。材質は耐熱性があり衝撃により破損しない強度を持つものである以外は特に限定されず、SUSを好適に使用できる。
粉体が通過するための穴を中心部に有する堰板を焼成管の中に、粉体の流れと垂直に設けて焼成管を2つ以上の区域に仕切ることもできる。堰板を設置することにより焼成管内滞留時間を確保しやすくなる。堰板の数は1つでも複数でもよい。堰板の材質は金属が好ましく、焼成管と同じ材質のものを好適に使用できる。堰板の高さは確保すべき滞留時間に合わせて調整することができる。例えば、内径150mm、長さ1150mmのSUS製の焼成管を有する回転炉で250g/hrで粉体を供給する場合、堰板は好ましくは5〜50mm、より好ましくは10〜40mm、更に好ましくは13〜35mmである。堰板の厚みは特に限定されず、焼成管の大きさに合わせて調整することが好ましい。例えば、内径150mm、長さ1150mmのSUS製の焼成管を有する回転炉の場合、好ましくは0.3mm以上30mm以下、より好ましくは0.5mm以上15mm以下である。
乾燥粉体の割れ、ひびなどを防ぐと共に、均一に焼成するために、焼成管を回転させるのが好ましい。焼成管の回転速度は、好ましくは0.1〜30rpm、より好ましくは0.5〜20rpm、更に好ましくは1〜10rpmである。
乾燥粉体の焼成には、乾燥粉体の加熱温度を、400℃より低い温度から昇温を始めて、550〜800℃の範囲内にある温度まで連続的に又は断続的に昇温するのが好ましい。
斜方晶の結晶を得る観点から、窒素などの実質的に酸素を含まない不活性ガス雰囲気で乾燥粉体を焼成する。焼成の少なくとも一部を、不活性ガスを流通させながら実施することが好ましい。不活性ガスの供給量は乾燥粉体1kg当たり、50Nリットル以上であり、好ましくは50〜5000Nリットル、更に好ましくは50〜3000Nリットルである(Nリットルは、標準温度・圧力条件、即ち0℃、1気圧で測定したリットルを意味する)。この時、不活性ガスと乾燥粉体は向流でも並流でも問題ないが、乾燥粉体から発生するガス成分や、乾燥粉体とともに微量混入する空気を考慮すると、向流接触が好ましい。
焼成工程は、1段でも実施可能であるが、焼成が前段焼成と本焼成からなり、前段焼成を250〜400℃で行い、本焼成を550〜800℃で行うことが好ましい。前段焼成と本焼成を連続して実施してもよいし、前段焼成を一旦完了してからあらためて本焼成を実施してもよい。また、前段焼成及び本焼成のそれぞれが数段に分かれていてもよい。
前段焼成は、好ましくは不活性ガス流通下、加熱温度250℃〜400℃、好ましくは300℃〜400℃の範囲で行う。250℃〜400℃の温度範囲内の一定温度で保持することが好ましいが、250℃〜400℃範囲内で温度が変動したり、緩やかに昇温、降温されていても構わない。加熱温度の保持時間は30分以上、好ましくは3〜12時間が好ましい。
前段焼成温度に達するまでの昇温パターンは直線的に上げてもよいし、上又は下に凸なる弧を描いて昇温してもよい。
前段焼成温度に達するまでの昇温時の平均昇温速度には特に限定はないが、一般に0.1〜15℃/min程度であり、好ましくは0.5〜5℃/min、更に好ましくは1〜2℃/minである。
本焼成は、好ましくは不活性ガス流通下、550〜800℃、好ましくは580〜750℃、より好ましくは600〜720℃、更に好ましくは620〜700℃で実施することができる。620〜700℃の温度範囲内の一定温度で保持することが好ましいが、620〜700℃の範囲内で温度が変動したり、緩やかに昇温、降温しても構わない。本焼成の時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜15時間である。堰板で区切る場合、触媒前駆体及び/又は酸化物触媒は少なくとも2つ、好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜15の区域を連続して通過する。温度の制御は1つ以上の制御器を用いて行うことができるが、前記所望の焼成パターンを得るために、これら堰で区切られた区域ごとにヒーターと制御器を設置し、制御することが好ましい。例えば堰板を焼成管の加熱炉内に入る部分の長さを8等分するように7枚設置し、8つの区域に仕切った焼成管を用いる場合、触媒前駆体及び/又は酸化物触媒の温度が前記所望の焼成温度パターンとなるよう8つの区域を各々の区域について設置したヒーターと制御器により設定温度を制御することが好ましい。なお、不活性ガス流通下の焼成雰囲気には、所望により、酸化性成分(例えば酸素)又は還元性成分(例えばアンモニア)を添加してもかまわない。
本焼成温度に達するまでの昇温パターンは直線的に上げてもよいし、上又は下に凸なる弧を描いて昇温してもよい。
本焼成温度に達するまでの昇温時の平均昇温速度には特に限定はないが、一般に0.1〜15℃/min、好ましくは0.5〜10℃/min、更に好ましくは1〜8℃/minである。
また、本焼成終了後の平均降温速度は0.01〜1000℃/min、好ましくは0.05〜100℃/min、更に好ましくは0.1〜50℃/min、特に好ましくは0.5〜10℃/minである。また、本焼成温度より低い温度で一旦保持することも好ましい。保持する温度は、本焼成温度より10℃、好ましくは50℃、より好ましくは100℃低い温度である。保持する時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは10時間以上である。
前段焼成を一旦完了してからあらためて本焼成を実施する場合は、本焼成で低温処理を行うのが好ましい。
低温処理に要する時間、すなわち触媒前駆体及び/又は酸化物触媒の温度を低下させた後、昇温して焼成温度にするまでに要する時間は、焼成器の大きさ、肉厚、材質、触媒生産量、連続的に触媒前駆体及び/又は酸化物触媒を焼成する一連の期間、固着速度・固着量等により適宜調整することが可能である。例えば、内径500mm、長さ4500mm、肉厚20mmのSUS製焼成管を使用する場合においては、連続的に触媒を焼成する一連の期間中に好ましくは30日以内、より好ましくは15日以内、更に好ましくは3日以内、特に好ましくは2日以内である。
例えば、内径500mm、長さ4500mm、肉厚20mmのSUS製の焼成管を有する回転炉により6rpmで回転しながら35kg/hrの速度で触媒前駆体を供給し、本焼成温度が645℃である場合、温度を400℃まで低下させた後、昇温して645℃にする工程を1日程度で行うことができる。1年間連続的に焼成する場合、このような低温処理を1ヶ月に1回の頻度で実施することで、安定して酸化物層温度を維持しながら焼成することができる。
得られた結晶系が斜方晶であることは、2θ=6.5°、7.9°、9.0°、12.7°、22.2°、27.3°、28.3°の位置に主たる回折ピークを示すことによって確認することができる。
以下にX線回折の測定条件を示す。
X線源 :CuKα1+CuKα2
検出器 :シンチレーションカウンター
管電圧 :40kV
管電流 :200mA
発散スリット :1°
散乱スリット :1°
受光スリット :0.15mm
スキャン速度 :4°/min
サンプリング幅 :0.02°
スキャン方法 :2θ/θ法
以下に本実施形態を、実施例と比較例によって更に詳細に説明するが、本実施形態の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
(脱水反応用触媒調製例1)
シリカ担持ヘテロポリ酸の脱水反応用触媒を次のようにして調製した。
ケイタングストモリブデン酸(H4SiW11MoO40・nH2O)30gを水40gに撹拌溶解させた。得られたヘテロポリ酸水溶液を多孔性粉末シリカ(キャリアクトQ−10、富士シリシア製、細孔径10nm、細孔容積1.0cc/g)70gに含浸させ、50℃に設定された乾燥機内で12時間乾燥することにより脱水反応用触媒を得た。
(脱水反応用触媒調製例2)
MFI型ゼオライト(SiO2/Al23=400)の脱水反応用触媒を次のようにして調製した。
非凝集ゼオライト(MFI型ZSM−5、SiO2/Al23モル比=400、平均粒子径3.0μm、ゼオライトの凝集割合10%以下)20gを、大気下700℃で2時間マッフル炉にて静置焼成して、物理吸着水を十分に除去することにより脱水反応用触媒を得た。
(脱水反応用触媒調製例3)
Mo−V系複合酸化物の脱水反応用触媒を次のようにして製造した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物10.6gを蒸留水100mLに溶解させた(溶液(ア))。また、溶液(ア)とは別にオキシ硫酸バナジウム・n水和物3.77gを蒸留水100mLに溶解させた(溶液(イ))。次に、溶液(イ)を溶液(ア)に加え、30分程度攪拌した。得られた原料調合液に2mol/Lの硫酸水溶液を加え、pHを3.3に調整した。得られた調合液を、1000cc/minの窒素で10分間バブリングし、調合液中の溶存酸素を系内から追い出した後、テフロン(登録商標)ボトルが内包されたオートクレーブに移した。次に、175℃で一日放置した後、室温まで冷却して結晶性固体を得た。この結晶性固体を60℃に加熱した10質量%のシュウ酸水溶液100mL中で、30分攪拌した。残存した固体を窒素下、450℃で2時間焼成を行った。前記操作を繰り返し実施することで脱水反応用触媒10gを得た。
(アンモ酸化用触媒調製例1)
まず、以下の方法でニオブ混合液(B0)を調製した。
水10kgにNb25として80.0質量%を含有するニオブ酸0.765kgとシュウ酸二水和物〔H224・2H2O〕2.633kgを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.50(mol−Nb/Kg−液)であった。この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した混合液を得た。この混合液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ混合液を得た。このニオブ混合液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.71であった。
るつぼにこのニオブ混合液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb250.771gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.580(mol−Nb/Kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにこのニオブ混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.570(mol−シュウ酸/Kg)であった。
2KMnO4+3H2SO4+5H224→K2SO4+2MnSO4+10CO2+8H2
次に、Mo−V−Nb−Sb−W−Ce系アンモ酸化用触媒を次のようにして製造した。
水1.902kgにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を427.1g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を59.4g、硝酸セリウム6水和物5.25g及び三酸化二アンチモン〔Sb23〕を84.6g加え、攪拌しながら95℃で1時間加熱して水性原料液(I)を得た。
ニオブ混合液(B0)408.0gに、H22として30質量%を含有する過酸化水素水を54.9g添加し、室温で10分間攪拌混合して、水性原料液(II)を調製した。
得られた水性原料液(I)を70℃に冷却した後にSiO2として34.0質量%を含有するシリカゾル787.9gを添加し、更に、H22として30質量%含有する過酸化水素水98.7gを添加し、55℃で30分間撹拌を続けた。次に、水性原料液(II)、WO3として50質量%のメタタングステン酸アンモニウム水溶液33.7g、粉体シリカ202.1gを水2.728kgに分散させた分散液を順次添加して水性混合液(III)を得た。水性混合液(III)は水性原料液(II)を添加後から2時間30分、50℃で熟成し、スラリーを得た。
得られたスラリーを、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、出口温度は120℃であった。
得られた乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製焼成管に充填し、5.0NL/minの窒素ガス流通下、管を回転させながら、680℃で2時間焼成してアンモ酸化用触媒を得た。
得られたアンモ酸化用触媒の結晶構造を以下の手法で同定した。X線回折の測定装置としてはRIGAKU RINT2500VHF/PCを用いた。
X線源 :CuKα1+CuKα2
検出器 :シンチレーションカウンター
管電圧 :40kV
管電流 :200mA
発散スリット :1°
散乱スリット :1°
受光スリット :0.15mm
スキャン速度 :4°/min
サンプリング幅 :0.02°
スキャン方法 :2θ/θ法
得られたアンモ酸化用触媒は2θ=6.5°、7.9°、9.0°、12.7°、22.2°、27.3°、28.3°の位置にピークを有し、斜方晶を含むことを確認した。
(アンモ酸化用触媒調製例2)
Mo−V系アンモ酸化用触媒を次のようにして製造した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物10.6gを蒸留水100mLに溶解させた(溶液(ウ))。また、溶液(ウ)とは別にオキシ硫酸バナジウム・n水和物3.77gを蒸留水100mLに溶解させた(溶液(エ))。次に、溶液(エ)を溶液(ウ)に加え、30分程度攪拌した。得られた原料調合液に2mol/Lの硫酸水溶液を加え、pHを3.3に調整した。得られた調合液を、1000cc/minの窒素で10分間バブリングし、調合液中の溶存酸素を系内から追い出した後、テフロン(登録商標)ボトルが内包されたオートクレーブに移した。次に、175℃で一日放置した後、室温まで冷却して結晶性固体を得た。この結晶性固体を60℃に加熱した10質量%のシュウ酸水溶液100mL中で、30分攪拌した。残存した固体を窒素下、450℃で2時間焼成を行った。前記操作を繰り返し実施することでアンモ酸化用触媒10gを得た。
アンモ酸化用触媒調製例1と同様の手法でX線回折測定を実施し、得られたアンモ酸化用触媒は2θ=6.5°、7.9°、9.0°、12.7°、22.2°、27.3°、28.3°の位置にピークを有する斜方晶であることを確認した。
(アンモ酸化用触媒調製例3)
Mo−V系アンモ酸化用触媒を次のようにして製造した。
上記アンモ酸化用触媒調製例2で得られた原料調合液に2mol/Lの硫酸水溶液を加え、pHを2.1に調整した。得られた調合液を、1000cc/minの窒素で10分間バブリングし、調合液中の溶存酸素を系内から追い出した後、テフロン(登録商標)ボトルが内包されたオートクレーブに移した。次に、175℃で一日放置した後、室温まで冷却して結晶性固体を得た。この結晶性固体を60℃に加熱した10質量%のシュウ酸水溶液100mL中で、30分攪拌した。残存した固体を窒素下、450℃で2時間焼成を行った。前記操作を繰り返し実施することでアンモ酸化用触媒10gを得た。
アンモ酸化用触媒調製例1と同様の手法でX線回折測定を実施し、得られたアンモ酸化用触媒は2θ=8.1°、9.6°、12.5°、22.2°、26.7°、30.1°、45.1°の位置にピークを有する三方晶であることを確認した。
(アンモ酸化用触媒調製例4)
酢酸銅(II)・5水和物253gを水2700g中に溶かし、溶液(オ)を製造した。ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物860g、メタバナジン酸アンモニウム172g及びパラタングステン酸アンモニウム・5水和物115gを95℃で水5500g中に順次溶かし、溶液(カ)を製造した。引き続き溶液(オ)を一度で撹拌して溶液(カ)に入れ、かつ水性混合物を出口温度110℃で噴霧乾燥した。得られた粉末を粉末1kg当り水0.15kgと配合した。得られた湿潤粉末を空気雰囲気下のロータリーキルン内で、2.2℃/minの昇温速度で400℃まで加熱し、続いて400℃で6時間焼成し、焼成により得られた粉末を0.1〜50μmの粒子直径に分級した。
得られた分級粉末を回転ドラム内で直径4〜5mmを有する非多孔質の表面粗面性のステアタイトビーズ上にステアタイトビーズ200g当り粉末50gの量で同時に水18gを加えて塗布した。続いて粉末の被膜を、空気を用いて110℃で乾燥することによりアンモ酸化用触媒を得た。
アンモ酸化用触媒調製例1と同様の手法でX線回折測定を実施し、得られたアンモ酸化用触媒が斜方晶、三方晶のいずれも含まないことを確認した。
[実施例1]
脱水反応用触媒調製例1で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率50.9%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例1で得られたアンモ酸化用触媒1.0gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は340℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は95.1%であった。
[実施例2]
脱水反応用触媒調製例1で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率50.7%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例2で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は330℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は93.1%であった。
[実施例3]
脱水反応用触媒調製例1で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率50.8%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例3で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は340℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は94.1%であった。
[実施例4]
脱水反応用触媒調製例1で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率50.8%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例4で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は380℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は78.7%であった。
[比較例1]
脱水反応用触媒調製例1で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率50.7%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例4で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は420℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は63.9%であった。
[実施例5]
脱水反応用触媒調製例2で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率40.7%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例1で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は340℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は91.9%であった。
[実施例6]
脱水反応用触媒調製例3で得られた脱水反応用触媒4.0gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度280℃、原料混合ガス中のグリセリン濃度4.0vol%となるようにグリセリン100%液を気化させ、グリセリン:水:ヘリウム=4:30:66の原料混合ガスを流量F=34(mL/min)で流した。この時の圧力はゲージ圧で0.1kg/cm2であり、接触時間は4.0秒であった。反応ガスを水の入った捕集瓶で捕集し、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、グリセリン転化率100%、アクロレイン収率19.7%であった。
脱水反応用固定床型反応管とアンモ酸化用固定床型反応管を連結し、アンモ酸化用触媒調製例1で得られたアンモ酸化用触媒0.5gを内径10mm固定床型反応管に充填した。アンモ酸化用の固定床型反応管には、脱水反応用反応管から導かれる反応ガスに加えて、アンモニア0.75mL/min、酸素0.95mL/min、He3.5mL/minを導入した。反応温度は340℃とした。この時の圧力はゲージ圧で0.05kg/cm2であった。反応ガスの分析をガスクロマトグラフィーによって行ったところ、アクロレインからのアクリロニトリル収率は92.4%であった。
本発明の製造方法は、プロピレンやプロパン以外の原料であるグリセリンからアクリロニトリルを製造する工業的製造プロセスに有用に利用できる。

Claims (2)

  1. 以下の工程(1)及び(2)を有するアクリロニトリルの製造方法;
    (1)グリセリンを脱水してアクロレインを得る工程、
    (2)得られたアクロレインを300〜400℃でアンモ酸化する工程。
  2. アクロレインをアンモ酸化する際に用いられる触媒であって、少なくともモリブデンを含有し、斜方晶又は三方晶の結晶構造を有する触媒。
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