JP2012017419A - 遮光性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機樹脂とカーボンブラックとを含む遮光層を有する遮光性フィルムであって、該有機樹脂は、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を含むものであり、該カーボンブラックの比表面積は100m2/g以上である遮光性フィルム。前記遮光層の表面の少なくとも片面が凹凸形状を有し、表面の凹凸形状が転写法により形成されるものであることが好ましい。
【選択図】なし
Description
遮光性フィルムの遮光層を形成する有機樹脂としては、耐熱性等に優れることからポリイミド樹脂が好適に用いられるが、低コスト化等の観点では、未だ改善の余地を残すものである。
例えば、特許文献1に記載の遮光性フィルムは、有機樹脂としてポリイミド樹脂を採用する場合には、原料であるポリアミック酸に黒色材料(カーボンブラック)を分散させたワニスを被コーティング材料に塗布し、加熱処理によって溶剤を揮発させるとともにイミド化反応を行うことにより製造される。このイミド化反応には、通常300℃程度以上の高温が必要であるため、設備面でコストが増大するという問題があった。また、遮光性フィルムは、一般に、光沢度を低減するために表面に凹凸形状を形成する必要がある。この凹凸形状の形成はイミド化(硬化)反応の前に行うことが好ましいが、イミド化工程において光沢度が変化する(高くなる)という問題もあった。
一方、ポリイミド樹脂を用いた遮光性フィルムの製造方法としては、上記ポリアミック酸を用いる方法以外に、例えば、溶融タイプのポリイミド樹脂にカーボンブラックを溶融練り込みする方法が考えられるが、この場合も、溶融温度が高温であるため製造コストの面で不利であった。
このように、従来の技術には、安価で光沢度が低く、光沢度の経時安定性にも優れる遮光性フィルムを開発するための工夫の余地があった。
遮光層の表面の凹凸形状は、一般に、転写材を用いた転写法により形成されるが、用いるカーボンブラックによって、得られる遮光性フィルムの光沢度が異なったり、該フィルムを巻き取りした状態での保存時に光沢度が経時的に変化したりする場合があることを見出した。そして、比表面積が特定の値以上であるカーボンブラックを用いると、転写材の凹凸形状が高い精度で遮光層に転写され、所望の光沢度を容易に実現することができ、保存環境下及び使用環境下で安定して光沢度が維持されることを見出した。このような効果が発現するメカニズムの詳細は不明であるが、次のように推測できる。すなわち、比表面積が特定の値以上であるカーボンブラックは、1次粒子が微細であり、かつ、2次構造が疎であるため、マトリクス成分であるポリイミド樹脂中に、実質的に均一に分散した状態であると考えられる。このため、遮光層の変形し易さがごく微小な範囲においても均一となっており、転写材の微細な凹凸形状が正確に遮光層に反映され易いと考えられる。更に、巻き取り時等に遮光層に応力が加わっても、それが均一に分散されるため、表面の微細な凹凸形状が維持され易いと考えられる。
このように、本発明者は、有機樹脂として溶剤可溶性ポリイミド樹脂を用い、カーボンブラックとして比表面積が特定の値以上のものを用いると、比較的低コストで遮光性フィルムを製造することができ、しかも、得られるフィルムの光沢度が低く、その光沢度が経時安定性に優れることを見出し、更に、このような遮光性フィルムが光学用途等の各種用途に有用であることも見出し、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
以下に本発明を詳述する。
本発明の遮光性フィルムは、遮光層に有機樹脂とカーボンブラックとを含むものであり、有機樹脂は、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を含むものである。なお、上記有機樹脂は、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を含む限り、他の樹脂成分を含有していてもよく、これらの成分は1種又は2種以上を用いることができる。
溶剤可溶性ポリイミド樹脂とは、有機溶剤に可溶であるポリイミド樹脂をいい、分子骨格に屈曲性の分子鎖を導入したり、分子内のイミド環同士の距離を増大させる基を導入したりすることにより、溶剤可溶性としたものである。遮光層を形成する際に溶剤可溶性ポリイミドワニスを用いると、イミド化反応は完結しているため、ワニスから脱溶剤するだけで成形体を得ることができる。従って、ポリアミド酸(ポリアミック酸)ワニスを用いる場合と比較して加熱処理の温度を低くすることができ、製造コストを低減することができる。また、塗膜表面の凹凸形状形成後にイミド化反応を行う必要がないため、イミド化工程における表面形状の変化に起因する光沢度の変化を防止することができる。更に、保存時のワニスの粘度変化が少ないため、成型加工性の点でも非常に優れている。
上記脂肪族又は脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
で表されるジアミンが好ましい。係る好ましいジアミンの具体例としては、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等が挙げられる。
上記溶剤可溶性ポリイミド樹脂の製造方法としては、上述した以外に、例えば、テトラカルボン酸無水物とジイソシアナートとを反応させる1段法が挙げられる。
上記溶剤可溶性ポリイミド樹脂を製造する際には、分子量を制御するためにエンドキャップ剤を用いてもよい。
で表される構造単位を有するものも好ましい。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
本発明の遮光性フィルムが有する遮光層は、比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックを含むものである。比表面積をこのような範囲にすることで、転写材の凹凸形状が高い精度で遮光層に転写され、所望の光沢度を容易に実現することができる。カーボンブラックの比表面積は、B.E.T.法により測定することができる。上記比表面積が100m2/g未満であると、カーボンブラック中の導電経路が形成しにくく、少量の添加で高導電性を発現させることが困難になる。上記比表面積として、好ましくは、300m2/g以上であり、より好ましくは、500m2/g以上である。上記カーボンブラックの比表面積はまた、1800m2/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは1500m2/g以下である。1800m2/gを超えると、カーボンブラックの分散濃度や添加量を増加させることが困難となるため、極少量しか添加できず、高導電性が発現しないおそれがある。
1次粒子の大きさを1次粒子径というが、上記カーボンブラックは、透過型電子顕微鏡像により評価した1次粒子径が20〜100nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜50nmである。1次粒子径の個数平均値(平均一次粒子径)が上述の範囲であることが更に好ましい。平均一次粒子径を求めるにあたっては、20個以上の1次粒子の大きさを測定しそれらの測定値の平均を求めることが好ましい。
上記1次粒子は、結晶子の集合形態により、空隙のない密な構造からなるもの、及び、空隙率の高い疎な構造からなる粒子のいずれでもよいが、空隙率の高い疎な構造からなる粒子であることが好ましい。
1次粒子の構造の疎密の程度は、上記平均1次粒子径(透過型電子顕微鏡により評価される、d)に対する、比表面積径dsの比(ds/d)の値から見積もることができる。
比表面積径dsは、B.E.T.法により測定される比表面積値Sより下記式によって算出することができる。
比表面積径(nm)=6000/(ρ×S)
(式中、ρは、真比重を表し、1.8を採用する。Sは、比表面積(m2/g)を表す。)
本発明で用いるカーボンブラックの上記比(ds/d)は特に制限されず、通常、0.01〜1.2のカーボンブラックを用いることができるが、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.02〜0.2である。
本発明の遮光性フィルムは、遮光層が有機樹脂、カーボンブラック及び有機溶剤を含む遮光層形成用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)により形成されることが好ましい。上記樹脂組成物を構成する有機樹脂及びカーボンブラックは、上述したものと同様である。すなわち、有機樹脂は、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を含むものであり、カーボンブラックは、比表面積が100m2/g以上のものである。
上記樹脂組成物は、有機樹脂、カーボンブラック及び有機溶剤を必須とする限り、その他の成分を含んでいてもよく、それらの成分は1種又は2種以上を用いることができる。
すなわち、転写法による表面凹凸形成により、転写性に優れるために所望の表面凹凸が高い精度で転写され易く、所望の光沢度を有し、光沢度安定性に優れる遮光層が得られる。
なお、遮光層形成用樹脂組成物中に分散させた場合のカーボンブラックの均一分散性は透過型電子顕微鏡(TEM)を使用することにより評価することができる。
上記カーボンブラックを分散する手法、すなわちカーボンブラックが分散した形態の樹脂組成物の製造方法としては、種々の方法を好適に用いることができ、例えば、有機樹脂を溶剤に溶解させた樹脂バインダー溶液にカーボンブラックを混合し、分散処理する方法;カーボンブラックを分散させた分散液に有機樹脂を溶解する方法;有機樹脂を微粒子状に分散した分散体にカーボンブラックを混合し、分散処理する方法;有機樹脂とカーボンブラックとの混合物を溶融、混練処理する方法等が挙げられ、カーボンブラック及び有機樹脂に応じて適宜選択し、用いることができる。
この場合、上記樹脂組成物の製造方法としては、有機樹脂が溶解した溶液(樹脂バインダー溶液)に、カーボンブラックが分散した分散液を、混合・分散させる方法を用いることが好適である。これにより、例えば、この樹脂組成物を用いて塗布等により遮光層(黒色層)を形成した場合に、遮光層としてより均質な黒色性を得ることができ、優れた遮光性を発揮することが可能になる。
カーボンブラックが分散した分散液を調製する際、ポリビニルピロリドン等の分散剤を使用することも好ましい形態である。
上記粘度は、例えば、B型粘度計等により測定することができる。
上記表面調整剤としては、例えば、シリコン系表面調整剤(シリコン系添加剤)が好ましい。シリコン系表面調整剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−300、BYK−301、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(いずれも商品名)等が挙げられる。これらの中でも、極性が高い点から、BYK−306、BYK−310、BYK−333、BYK−370、BYK−375等が好ましい。表面張力低下能が高い点からは、BYK−306、BYK−307、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−377、BYK−341、BYK−375等が好ましい。また、極性が高く、かつ表面張力低下能が高い点から、BYK−306、BYK−333、BYK−375が特に好ましい。
上記遮光層における各成分の含有量としては、溶剤可溶性ポリイミド樹脂、又は、それを更に架橋したりイミド化を進めた樹脂(固形分)は、遮光層の総量100質量%に対して60〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは、80〜95質量%である。カーボンブラックは、遮光層の総量100質量%に対して、1〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは3〜40質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは5〜20質量%である。
また、上記遮光層における溶剤の含有量は、遮光層の総量100質量%に対して、1質量%未満であることが好ましい。
本発明の遮光性フィルムは、上記遮光層形成用樹脂組成物により形成される遮光層(すなわち、上記遮光層形成用樹脂組成物から構成される遮光膜を脱溶剤(乾燥)して得られる層)を備えてなるものである。このような遮光性フィルムは、所望の波長の光を散乱・吸収等することにより、該波長の光を遮光する機能を有するものである。例えば、レンズユニットに装着される場合、光電変換センサーが感受する、可視光領域、紫外領域、赤外領域等の光を遮光する機能を有し、レンズユニット内部での光学ノイズの発生及び拡大を抑え、生じた光学ノイズを除去するものである。
上記遮光性フィルムの構造として具体的には、例えば、(1)基材と、遮光層(片面)と、必要に応じてその他の機能を有する層とからなる積層フィルムである形態、(2)基材と、遮光層(両面)と、必要に応じてその他の機能を有する層とからなる積層フィルムである形態、(3)遮光層単層フィルムである形態が好適である。上記その他の機能を有する層としては、ハードコート層、赤外線遮断層等が例示される。
これらの形態の模式図を図4に示す。図4(a)は(1)の形態を、(b)は(2)の形態を、(c−1)及び(c−2)は(3)の形態を示す。なお、図4(a)及び(b)では、基材と遮光層とからなる積層フィルムを模式的に示しているが、必要に応じ、更にその他の機能を有する層を有していてもよい。
なお、上記(1)、(2)の形態の遮光性フィルムにおいては、用途での使用時に基材を剥離して用いる場合に備えて、剥離可能な基材も好ましく採用し得る。凹凸形状を有するフィルムやガラスも剥離可能な基材として好ましい。
上記基材はまた、耐リフロー性を有する材料を用いることも好ましい。耐リフロー性を有する材料として具体的には、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物、ガラスフィルム及びポリエーテルケトン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
なお、本明細書において、遮光層の厚みとは、マイクロメーターで遮光層を測定した厚みを意味する。
さらに両面とも光沢度が上記範囲であることが好ましい。
上記光沢度は、日本電色工業社製 光沢計 VG−2000を用いて、測定角度(θ)60度で測定する。
この場合、フィルムの線粗さ(JIS 2001)のRa(算術平均粗さ)は、0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。フィルムの最大高さRzに関しては、10μm以上であることが好ましい。より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上である。また、平均高さRcに関しては、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは8μm以上、更に好ましくは10μm以上、最も好ましくは15μm以上である。
算術平均粗さ(Ra)とは、図1に示すように、基準長さにおける絶対値の平均を表したものであり、下記式(i)から求めることができる。なお、式中、Rnとは、粗さ曲線の平均線の高さを0としたときのn点目の計測線の高さを表す。
Rz=Rp+Rv (ii)
なお、寸法変化率を測定するときの試料の大きさは、適宜選択すればよく、例えば、縦50.0mm×横10.0mm×厚さ35〜80μmサイズの試料を用いることができる。
また上記寸法変化率としてより好ましくは、260℃で2分加熱した際に、加熱前に対する加熱後の各長さの変化率(寸法変化率)が10%以下であることが好ましい。測定条件としては、空気雰囲気下で行うことが好ましい。すなわち、上記遮光性フィルムは、該フィルムを空気雰囲気下で260℃で2分間加熱したときに、加熱前に対する加熱後における縦、横、厚みのそれぞれの寸法変化率が10%以下であることが好ましい。260℃2分間の加熱にて寸法変化が小さい(寸法変化率が10%以下である)ことによって、上記遮光性フィルムをレンズユニットに用いる場合に、半田リフロー工程に充分に耐え得るものとすることができる。この場合における寸法変化率としては、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
このように、本発明の遮光性フィルムの遮光層の表面凹凸形状が、転写法により形成されるものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記乾燥工程については、通常の乾燥方法により行えばよいが、乾燥温度としては、100〜250℃であることが好ましい。
本発明の遮光性フィルムの製造方法として具体的には、遮光層形成樹脂組成物を転写材となる鋳型フィルム(1)(たとえばマットPETフィルム)に塗布し乾燥した後、鋳型フィルム(1)の非接触側の表面に、鋳型フィルム(2)を積層した状態で加圧ロールによる転写処理を行った後、両面の鋳型フィルム(1)、(2)を剥離することによって、遮光層単層からなる遮光性フィルムを得ることができる。また、遮光層形成樹脂組成物を転写材となる鋳型フィルム(1)に塗布し乾燥した後、鋳型フィルム(1)の非接触側の表面に、マットロール(ロール表面が転写材)による転写処理を行った後、鋳型フィルム(1)を剥離することによって、遮光層単層からなる遮光性フィルムを製造することができる。
また、基材フィルムの両面に順次、遮光層形成樹脂組成物からなる膜を形成し、転写材として鋳型フィルムを積層する方法あるいはマットロールを転写材とする方法により、基材の両面に、凹凸表面を有する遮光層を備える遮光フィルムを製造することができる。
なお、表面凹凸形成させる際、遮光層形成樹脂組成物からなる塗布膜における溶剤含有量は特に限定されず、組成物中の有機樹脂の種類、分子量、膜の粘性等により適宜選択すればよい。表面凹凸形成後に溶剤が残留する場合は、適宜乾燥すればよい。
本発明の遮光性フィルムによれば、製造工程において高温での加熱処理を要するイミド化(硬化)工程が不要であるため、イミド化反応に起因する表面凹凸形状の変化を防止することができる。
本発明の遮光性フィルムは、レンズとともにレンズユニットを構成することもできる。このようなレンズユニットは、上述した遮光層形成用樹脂組成物から形成される遮光層を有する遮光性フィルムを用いて構成されるため、耐リフロー性及び耐熱性を有し、光学用途やオプトデバイス用途に特に有用であり、その他、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等として用いることができるものである。
なお、上記レンズユニットにおいては、上記遮光性フィルムとレンズとを備えることとなるが、これらの数としては、それぞれ一つ以上備えられていればよく、レンズユニットの用途等に応じて、装着する数を適宜設定することができ、複数備えていてもよい。
上記レンズユニットの詳細については、特願2008−326148の第98〜123段落の記載に準ずる。
このような、上記遮光性フィルムとレンズとを備えるレンズユニットもまた、本発明の1つである。
調製例1
混合溶媒(N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/キシレン=8/1/1)に、酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを、酸成分/ジアミン成分がモル比で等モルとなるよう混合し、180℃で加熱することにより、数平均分子量15,000のポリイミド樹脂が10質量%で溶解する可溶性ポリイミド樹脂溶液PI(1)を調製した。
なお、得られた溶液の一部について、溶媒を除去し、溶液中の樹脂成分を粉末化して、KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、環状イミド結合に由来する5.6μmの吸収を認めたが、アミド結合に由来する6.06μmの吸収を認めることはできず、樹脂成分はほぼ100%イミド化していることが確かめられた。
また、数平均分子量は、GPCにより評価した。
酸成分及びジアミン成分を表1に示す化合物とし、混合比を表1のように変更した以外は調製例1と同様にして、表1に示す数平均分子量のポリイミド樹脂が10質量%で溶解するポリイミド樹脂溶液PI(2)〜(4)を調製した。いずれの調製例においても、KBr錠剤法により、樹脂成分がほぼ100%イミド化していることが確認された。
調製例5
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応機に、N,N−ジメチルアセトアミド188部、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K−30)2部、カーボンブラックとして、表2に示す、CB−1を10部添加混合した。
攪拌速度600rpmにて10分予備分散した後、ジルコニアビーズ600部を投入し、攪拌速度1200rpmとし、50℃まで昇温して50℃到達後、3時間攪拌した。攪拌速度1200rpmで攪拌しながら45℃まで冷却後、SUS製500メッシュで吸引濾過しビーズを分離することにより、カーボンブラックが5質量%の割合で分散含有されてなる分散液(CB分散液(1))を調製した。
CB−1の代わりに、表2に示すカーボンブラックを用いたこと以外は調製例5と同様にして、カーボンブラックが5質量%の割合で分散含有されてなる分散液(CB分散液(2)及び(3))を調製した。
なお、CB分散液(2)は、CB−2を分散含有するものであり、CB分散液(3)は、CB−3を分散含有するものである。
<平均1次粒子径>
透過型電子顕微鏡像(10万倍)より、任意に20個選んで、数平均粒子径を算出した。透過型電子顕微鏡としては、日本電子製 JEM2100F(加圧電圧200kV)を用いた。
B.E.T.法により窒素吸着量より求めた。
測定装置は、マウンテック製 Macsorb1210を用いた。
<比表面積径/平均1次粒子径>
比表面積径を比表面積値より、下記式により算出し、算出値の平均1次粒子径に対する比を算出した。
比表面積径(nm)=6000/(ρ×S)
(式中、ρは、真比重を表し、1.8を採用した。Sは、比表面積(m2/g)を表す。)
実施例1
(遮光層形成用樹脂組成物の調製)
攪拌機を備えた反応機に、室温で、ポリイミド樹脂溶液PI(1)1000部及びCB分散液(1)250部を添加混合し、攪拌した後、加圧濾過することにより、遮光層形成用樹脂組成物(1)を調製した。
(遮光性フィルムの作製)
得られた遮光層形成用樹脂組成物(1)を、帝人デュポン社製マットペットフィルム(銘柄:PSG、厚さ100μm)にスロットダイ方式(塗工幅25cm)で塗布し、150℃で1時間乾燥させた後、樹脂膜(1)の形成されたフィルム(1)(樹脂膜付きフィルム(1))を得た。
次に、樹脂膜付きフィルム(1)のマットペットフィルム非接触面に、鋳型フィルムを用いた転写ロール法により、転写を行い、遮光性フィルム(1)を作製した。
すなわち、1対の転写ロール(ロールA、ロールB)が備えられた熱カレンダー装置を用い、樹脂膜付きフィルム(1)と鋳型フィルムとを、樹脂膜(1)のマットペットフィルム非接触面が鋳型フィルムと接触する(積層状態となる)よう、転写ロール間に供給することにより、樹脂膜付きフィルム(1)のマットペットフィルム非接触面に転写を行った。更に、両面の鋳型フィルムから剥離することにより、遮光層単層からなる遮光フィルム(1)を得た。
得られた遮光フィルムについて60°光沢度を測定した結果、マットペットフィルム非接触面である鋳型フィルム転写面側の表面は3、マットペットフィルム接触面側は3であった。
なお、鋳型フィルムとしては、帝人デュポン社製マットペットフィルム(銘柄:PSG、厚さ100μm)を用いた。
また、転写時に於いて、樹脂膜(マットペットフィルム非接触面)側に転写ロールAとして、ゴム製のロールを用い、鋳型フィルム側に転写ロールBとしてSUS製のロールを用い、転写工程において、転写ロールAの表面は180℃に、転写ロールBの表面は140℃に、それぞれ加熱保持された。また、他の転写条件は、以下の通りである。
樹脂膜、鋳型フィルムの供給速度:いずれも、1m/min
転写時の転写ロール間にかかる圧力:線圧で20N/mm
ポリイミド樹脂溶液の種類、CB分散液の種類及び配合量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして遮光層形成用樹脂組成物を調製し、更に、遮光性フィルム(2)、(3)及び(c1)を夫々作製した。
(遮光層形成用樹脂組成物の調製)
攪拌機を備えた反応機に、室温で、ポリイミド樹脂溶液(4)1000部、CB分散液(2)360部を添加混合し、攪拌した後、加圧濾過することにより、遮光層形成用樹脂組成物(4)を調製した。
(遮光性フィルムの作製)
得られた遮光層形成用樹脂組成物(4)を、帝東レ・デュポン社製カプトンフィルム(Vタイプ、厚さ25μm)を基材として、実施例1と同様にして、基材の両面に順次、樹脂膜(4−1)、(4−2)を形成することにより樹脂膜(4−1)/基材/樹脂膜(4−2)の3層構成の樹脂フィルム(4)を得た。
次に、樹脂フィルム(4)の両面に、帝人デュポン社製マットペットフィルム(銘柄:PSG、厚さ100μm)を積層した状態で、実施例1と同様にして、転写ロールによる転写処理を行うことにより、遮光性フィルム(4)を作製した。
(ポリアミド酸溶液の調製)
I.S.T社製ポリ(アミド)イミドワニスPyre−ML RC5083(固形分18.5%)を、固形分が10質量%となるようN−メチル−2−ピロリドンで稀釈することにより、ポリアミド酸溶液PA(1)を調製した。
(遮光層形成用樹脂組成物の調製)
攪拌機を備えた反応機に、室温で、ポリアミド酸溶液PA(1)1000部、CB分散液(1)500部を添加混合し、攪拌した後、加圧濾過することにより、遮光層形成用樹脂組成物(c2)を調製した。
(遮光性フィルムの作製)
得られた遮光層形成用樹脂組成物(c2)を、帝人デュポン社製マットペットフィルム(銘柄:PSG、厚さ100μm)にスロットダイ方式(塗工幅25cm)で塗布し、130℃で10分乾燥させた後、樹脂膜(c2)の形成されたフィルム(c2)(樹脂膜付きフィルム(c2))を得た。
樹脂膜付きフィルム(c2)のマットペットフィルム非接触面に、実施例1と同様にして、鋳型フィルムを転写材として転写ロールによる転写処理を行い、鋳型フィルムを剥離することにより、転写樹脂膜(c2)を得た。
次に、転写樹脂膜(c2)を250℃のイナートオーブンに入れ、窒素雰囲気下で、250℃より350℃まで昇温(昇温速度約10℃/min)し、350℃到達より1時間加熱保持することにより、遮光性フィルム(c2)を作製した。
転写樹脂膜(c2)における鋳型フィルム転写面の60°光沢度は3であったが、遮光性フィルム(c2)における鋳型フィルム転写面の60°光沢度は7であった。
なお、実施例4で得られた遮光性フィルム(4)においては全体の膜厚から基材フィルムの厚みを差し引き、2で割った値を遮光層厚みとした。
マイクロメーター(ミツトヨ社製、No.293−230)により測定した。
得られたフィルム(転写樹脂膜及び遮光性フィルム)に関し、転写処理した表面の光沢度を測定した。
光沢度は、堀場製作所社製ハンディ光沢時計(グロスチェッカ IG−331)を用いて、測定角度(θ)60度における光沢度を測定することにより求めた。なお、上記光沢度は、5ヶ所で測定し、ばらつきの範囲を測定値として記載した。
遮光性フィルムの巻取り状態での経時安定性の代替評価として、本試験を行った。
各実施例及び比較例で作製した各遮光フィルムを、5cm角に細断し、3枚重ね、平滑なガラス板上に配置し、底面が8cm角の正方形で平滑なガラス面からなる重さ0.5kgのおもりをのせた状態で、35℃、60%RHの恒温恒湿雰囲気下で48時間保持した。
保持する前後における、60°光沢度の変化量により、以下の基準で安定性を評価した。
○:光沢度の変化量が、±2以下
×:光沢度の変化量が、±2より大きい
なお、測定試料は、積み重ねた3枚の内、2枚目のフィルムとし、該フィルムの転写ロールによって転写材である鋳型フィルムを積層した側の表面について光沢度を測定した。
測定装置としてディジタル超絶縁計/微小電流計DSM−8104(日置電機社製)を用い、測定電極として平板試料用電極SME−8310(日置電機社製)を用いて以下に示す測定条件にて測定した。
測定電圧:0.1V
積分時間(SAMPL):300ms
Discharge10秒→Charge45秒→Measure(測定)15秒
2:基材
3:遮光性フィルム
4:レンズ
5:赤外カットフィルター
6:バレル
7:センサーレンズ
8:コバ
Claims (5)
- 有機樹脂とカーボンブラックとを含む遮光層を有する遮光性フィルムであって、
該有機樹脂は、溶剤可溶性ポリイミド樹脂を含むものであり、
該カーボンブラックの比表面積は100m2/g以上である
ことを特徴とする遮光性フィルム。 - 前記遮光層は、前記有機樹脂、前記カーボンブラック及び有機溶剤を含む遮光層形成用樹脂組成物により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の遮光性フィルム。 - 前記遮光層の表面の少なくとも片面が凹凸形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層の表面の凹凸形状が転写法により形成されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層は、表面抵抗値が1×1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遮光性フィルム。
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