JP2012017363A - プラスチックレンズ成型用粘着テープおよびこれを用いたプラスチックレンズ成型方法 - Google Patents

プラスチックレンズ成型用粘着テープおよびこれを用いたプラスチックレンズ成型方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂をキャビティに確実に封止しつつ、重合硬化に伴う体積縮小によるレンズ周面のテープシワの発生を確実に抑制する。
【解決手段】重合性モノマーが充填される一対のモールド30,30間をその周方向に沿って連続的に封止するためのプラスチックレンズ成型用粘着テープ100であって、テープ状の基材10に、これをモールド30,30側に粘着させるための粘着層20を有すると共に、粘着層20が、モールド30,30間に充填された重合性モノマーが重合収縮する温度域で凝集力が低下する粘着剤からなる。これによって、樹脂注入時から樹脂の体積が縮小を開始するまでは、十分な粘着力および凝集力を発揮する。また、重合硬化に伴う樹脂の体積縮小時には、凝集力が弱まってテープ基材10の幅方向に作用する力が減少してテープ基材が潰れたりすることがなくなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、高屈折率のプラスチック製メガネレンズや光学用レンズなどのプラスチックレンズを製造する際に用いるプラスチックレンズ成型用粘着テープおよびこれを用いたプラスチックレンズ成型方法に関する。
従来のプラスチックレンズは、例えば以下の特許文献1や2などに示すように、一対のガラスモールド(型)と封止用の粘着テープを用いた注型重合法によって成型されている。
すなわち、従来のプラスチックレンズは、先ず一対のガラスモールドを所定間隔で配置し、封止用の粘着テープによってそのガラスモールド間をその周方向に沿って連続的に封止する。次に、その粘着テープに樹脂注入用のノズルを差し込み、その一対のガラスモールドと封止用の粘着テープによって形成された空間内に樹脂(重合性モノマー)を注入して充填した後、その樹脂を加熱ないし光照射などによって重合硬化することによって製造される。
このような従来のプラスチックレンズの製造方法にあっては、一対のガラスモールド内に注入された樹脂が重合硬化するに際して体積が縮小(収縮)する。そのため、樹脂注入時に比べてガラスモールド間隔が狭まって粘着テープが幅方向(レンズの厚み方向)に押し潰されてしまったり、あるいは図5に示すように粘着テープがガラスモールドの中心方向に引っ張られたりして、粘着テープにシワが発生し、その結果、成型品の周面に粘着テープのシワの跡(レンズシワ)が残ってしまうといった問題がある。
そのため、レンズメーカーなどでは、成型後のレンズ周面にこのようなレンズシワが発生することを見越して、予め目標とするレンズの外径よりも大きなレンズを成型しておき、成型後にレンズ側面を研磨してそのレンズシワを除去している。このため、従来のメガネレンズの製造に際しては、面倒な研磨作業が必要となる上に材料が無駄になるといった問題がある。
そこで、例えば以下の特許文献3では、モノマー重合収縮が最も大きいときの温度下で5mm引張ったときの荷重が3kg以下である粘着テープを用いる方法が提案されている。また、以下の特許文献4では、モールドの周面を封止する粘着テープとして基材厚さが125〜200μmの強度の高いものを用いる方法が提案されている。
特開平1−257016号公報 特開2003−193004号公報 特開2004−202995号公報 特開2006−240210号公報
しかしながら、前記特許文献3に提案されているような方法では、ある程度のテープシワの発生を抑制することは可能と思われるが、十分とはいえない。一方、前記特許文献4に示すような方法では、粘着テープの粘着力が高すぎるとやはりテープシワが発生し、反対に粘着力が低すぎると、注入したときに樹脂がテープの隙間から漏れ出してしまうといった不都合がある。
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、樹脂をモールド内に確実に封止しつつ、重合硬化に伴う体積縮小による成型品周面のテープシワを原因とするレンズシワの発生を確実に抑制できる新規なプラスチックレンズ成型用粘着テープおよびこれを用いたプラスチックレンズ成型方法を提供するものである。
前記課題を解決するために第1の発明は、
重合性モノマーが充填される一対のモールド間をその周方向に沿って連続的に封止するためのプラスチックレンズ成型用粘着テープであって、テープ状の基材に、これを前記モールド側に粘着させるための粘着層を有すると共に、当該粘着層が、前記モールド間に充填された重合性モノマーが重合収縮する温度域で凝集力が低下する粘着剤からなることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープである。
第2の発明は、
第1の発明において、前記基材が、厚さ50〜75μmのポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料からなることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープである。
第3の発明は、
第1または第2の発明において、前記粘着剤が、付加反応型のシリコーン粘着剤5〜30質量部と、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤70〜95質量部と、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤0.05〜0.30質量部とを主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープである。
第4の発明は、
第1乃至第3の発明において、前記粘着層が、前記基材の前記各モールドを粘着する領域にのみ設けられていることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープである。
第5の発明は、
一対のモールドを所定の間隔を隔てて位置させた後、その間隔を保持しつつ前記モールド間を、前記第1〜第4の発明のいずれか1つのプラスチックレンズ成型用粘着テープでその周方向に沿って連続的に封止してキャビティを区画形成する工程と、前記キャビティに重合性モノマーを充填した後、前記重合性モノマーを重合処理する工程とを含むことを特徴とするプラスチックレンズ成型方法である。
本発明によれば、キャビティに充填された樹脂(重合性モノマー)が重合収縮する温度域になると、その反応熱によって粘着層の凝集力が低下するため、樹脂の収縮力によって一方あるいは両方のモールドがテープの粘着層を滑るようにして互いに接近移動することができる。
これによって、樹脂モノマー等の注入時から樹脂の体積が縮小を開始するまでは、粘着層は十分な粘着力および凝集力を発揮するため、キャビティに樹脂モノマー等を確実に封止できる。また、重合硬化に伴う樹脂の体積縮小時には、粘着層の凝集力が弱まってテープ基材に作用する幅方向の力が減少してテープ基材が潰れたりすることがなくなるため、成型品(レンズ)周面のテープシワを原因とするレンズシワの発生を確実に抑制できる。
本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープ100の実施の一形態を示す拡大断面図である。 本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープの使用方法を示す概念図である。 テープの凝集力と樹脂温度と樹脂体積との関係を示すグラフ図である。 本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープを用いた際の作用を示す概念図である。 従来のプラスチックレンズ成型用粘着テープを用いた際の不都合(テープシワ)を示す概念図である。 本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープ100の他の実施形態を示す拡大断面図である。
次に、本発明の実施の一形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープ100の実施の一形態を示す拡大断面図、図2は、その使用方法を示す説明図である。
図示するように、このプラスチックレンズ成型用粘着テープ100は、テープ状の基材10に、これをモールド30,30側に粘着させるための粘着層20を有する構造となっている。
基材10は、その幅方向への圧縮力に対して強度の高い材料から構成されている。具体的には、厚さ50〜75μmのポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料が最適である。ただし、その幅方向への圧縮力に対して高い強度を発揮できるものであれば、他の材料を用いることもできる。例えば、ステンレススチールや軟質アルミニウムなどの金属箔や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、ポリイミド、アラミド、シクロオレフィン、フッ素系樹脂などの樹脂フィルムや、アルミニウム箔と樹脂フィルムをラミネートした複合フィルムや、アルミナや二酸化ケイ素等の金属酸化物薄膜を樹脂フィルム表面に形成したフィルムと樹脂フィルムをラミネートした複合フィルムなどを用いることもできる。
ここで、基材10としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合に、その厚さを50〜75μmの範囲に限定したのは、50μm未満では、基材の剛性が弱いため、2つのモールド間の隙間を保持することができなかったり、後述するように樹脂(重合性モノマー)の重合収縮に対する力に抗しきれずに、その幅方向に縮まってテープシワを作る原因となるからである。反対に、75μmを超えると、テープのラップ部分において隙間が発生してしまい重合性モノマーの液漏れが発生する恐れがあるからである。
一方、粘着層20は、この粘着テープ100とモールド30,30とで区画形成された空間(キャビティ)に樹脂(重合性モノマー)を注入したときに、その樹脂を漏れないようにその隙間を確実に封止できる粘着力を有すると共に、キャビティに充填された樹脂(重合性モノマー)が重合収縮する温度域で凝集力が低下する粘着剤から構成されている。
なお、本発明で言う粘着剤の凝集力の指標としては、一般的に、貯蔵弾性率、せん断力、保持力などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、所定の周波数の条件下で温度を連続的に変化させながら測定、評価する。せん断力は、例えば、幅35mm、長さ35mmの粘着テープの基材側を両面テープを用いてステンレス鋼板に固定した試料を2つ用意し、露出した粘着剤層面同士を重ね合わせ、19.6Nローラーを押し付けて5往復して貼付し、各温度条件下に所定時間放置後、引張り試験機を用いて、JIS Z 0237に準拠し、ステンレス鋼板の一方を固定し、他方を所定の速度で引張ることにより、測定、評価する。保持力は、JIS Z 0237に準拠し、50mm×100mmのステンレス鋼板に、幅25mm、長さ25mmの粘着テープを貼り付け、19.6Nローラーを押し付けて1往復して貼付し、9.8Nの荷重を付加して24時間放置後のズレ量または落下時間を測定、評価する。
具体的には、この粘着層20を構成する粘着剤は、付加反応型のシリコーン粘着剤5〜30質量部と、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤70〜95質量部と、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤0.05〜0.30質量部とを主成分とする材料からなっている。
そして、このような成分からなる粘着層20は、後述するように十分な粘着力を発揮してモールド30,30内に樹脂を確実に封止しつつ、重合硬化に伴う樹脂の体積縮小時には、凝集力が弱まってテープ基材10に作用する幅方向の力が減少するといった特性を発揮する。
ここで、付加反応型のシリコーン粘着剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR3700、KR3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37−B9204や、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD4584、SD4585、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
この付加反応型のシリコーン粘着剤の配合量を5〜30質量部に限定したのは、5質量部未満では、粘着力が低くなりすぎてしまい、モールドからテープが剥がれてしまうため、重合性モノマーの液漏れが発生するという不都合があるからである。反対に30質量部を超えると、凝集力が十分に低下せず、モールドが滑るように移動できなくなってしまうため、テープがモールドの中心方向に引張られ、幅方向にシワが発生し、成型品の周面にレンズシワが入るという不都合があるからである。
また、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR100、KR101−10や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610−SM、XR37−B6722や、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH4280などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
この過酸化物硬化型粘着剤の配合量を70〜95質量部に限定したのは、70質量部未満では、凝集力が十分に低下せず、モールドが滑るように移動できなくなってしまうため、テープがモールドの中心方向に引張られ、幅方向にシワが発生し、成型品の周面にレンズシワが入るという不都合があるからである。反対に95質量部を超えると、粘着力が低くなりすぎてしまい、モールドからテープが剥がれてしまうため、重合性モノマーの液漏れが発生するという不都合があるからである。
また、付加反応型のシリコーン粘着剤の架橋剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のX−92−122、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のCR50、東レ・ダウコーニング株式会社製のBY24−741などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
この架橋剤の配合量を0.05〜0.30質量部に限定したのは、0.05質量部未満では、粘着力が低下し、重合性モノマーの膨張による液漏れが発生し、レンズ成型品が欠けるという不都合があるからである。反対に0.30質量部を超えると、凝集力が高くなりすぎて、モールドが滑るように移動できなくなってしまうため、テープがモールドの中心方向に引張られ、幅方向にシワが発生し、成型品の周面にレンズシワが入るという不都合があるからである。
粘着テープの製造方法としては、付加型のシリコーン粘着剤および過酸化物型のシリコーン粘着剤をトルエン、キシレン等の有機溶剤に溶解した粘着剤溶液に、付加型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤を添加し、この溶液を基材フィルムに、乾燥後の厚さが均一になるようにコンマコーターやリップコーター等で塗工した後、所定温度で乾燥・硬化させる方法が挙げられる。ただし、特にこのような方法に限定されるものではなく、シリコーン系粘着剤層を基材フィルムに形成するために採用されている通常の製造方法は、いずれも採用することができる。
なお、モールド30,30は、その形状・材質などは特に限定されるものでないが、一般的には円板状をしたガラス(二酸化ケイ素)製のものや金属製のものが多用される。
また、プラスチックレンズの原料となる樹脂モノマーも特に限定されるものではなく、メガネレンズの場合では、従来公知の材料が用いられる。例えば、超高屈折率(1.65≦Ne)のメガネレンズの場合には、エピスルフィド系樹脂(三井化学株式会社製MR−174、三菱瓦斯化学株式会社製IU−20)やチオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR−7)のモノマーなどが用いられる。また、高屈折率(1.58≦Ne<1.65)のメガネレンズの場合は、チオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR−6、三井化学株式会社製MR−8)やポリエステルメタクリレート(株式会社トクヤマ製TS−26)、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製Panlite)のモノマーなどが用いられる。また、中屈折率(1.55≦Ne<1.58)のメガネレンズの場合は、ウレタンメタクリレート(株式会社クレハ製K−23)やエポシキメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製MCR−50)、ジアリルカーボネート(PPGインダストリーズ社製HIRI)、ジアリルフタレート系樹脂(NK−55)などのモノマーが用いられる。さらに、低屈折率(Ne<1.55)のメガネレンズの場合は、ウレタン系樹脂(PPGインダストリーズ社製TRIVEX)やウレタンメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製MCR−10)、メタクリレート(株式会社クレハ製K−55)、アリルジグリコールカーボネート(PPGインダストリーズ社製CR−39)、ジアリルカーボネート(PPGインダストリーズ社製CR−607)、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリ酸メチル)などのモノマーを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
次に、このような構成をした本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を用いたプラスチックレンズの成型方法およびその作用・効果を説明する。
先ず、図2に示すように円板状をした一対のモールド30,30を所定の間隔を隔てて位置させた後、本発明の粘着テープ100によってその間隔を保持しつつモールド30,30間をその周方向に沿って連続的に封止する。これによって、図示するようにモールド30,30同士がほぼ平行に連結されると共に、その間に平板状または円筒状の空間(キャビティ)Cが区画形成される。
そして、このようなキャビティCが形成されたなら、図示するようにこの粘着テープ100の一端を剥がして隙間を開け、その隙間からキャビティCにノズル(図示せず)を差し込み、そのノズルからキャビティCに樹脂を注入して充填する。その後、再びその隙間を粘着テープ100で塞いでから、充填された樹脂を加熱ないし光照射などによって重合反応させて硬化(重合体)させる。
図3は、このときの粘着テープ100の凝集力と、重合反応による樹脂の温度変化と、樹脂の体積変化との関係を示したものである。
図中実線で示すように、重合反応前の樹脂温度は室温程度であるが、重合反応が始まるとその反応熱によって樹脂の温度は徐々に上昇し、重合反応が終了するとその反応熱がなくなって樹脂の温度は徐々に室温まで低下する。なお、この重合反応による樹脂の最高温度は、周囲の温度や樹脂の種類などによって異なるが、一般には120℃〜130℃程度となるものが多い。
また、図中一点破線で示すように、樹脂の体積は注入初期(モノマー)の室温付近(15℃〜25℃程度)の時を基準に考えた場合、加熱ないし光照射によって樹脂温度が高まると、まず一旦、樹脂が膨張して体積が少し増加し、この加熱ないし光照射などによって重合反応が開始すると、その反応熱によって、樹脂の温度はさらに上昇すると共に、その体積が徐々に減少(重合収縮)する。そして、温度が60℃〜70℃を超えたあたりから、樹脂の体積が最初の基準の体積よりも小さくなり始め、重合反応が終了した時(ポリマー)に最も低くなる。なお、この重合反応による樹脂の体積収縮率も樹脂の種類などによって異なるが、一般にはモノマー状態の体積の90〜98%程度となるものが多い。
一方、図中破線で示すように、本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100は、室温付近(15℃〜25℃程度)で最も高い粘着力および凝集力を発揮するが、温度が上昇するにつれてその凝集力が徐々に低下するといった特性を有している。
従って、本発明の粘着テープ100を用いた場合には、キャビティCに充填された樹脂の重合反応が始まって、その樹脂が初期の基準の体積よりも収縮する重合温度域(一般的には60℃〜70℃)になると、その反応熱によって粘着テープ100の粘着層20の凝集力が低下する。このため、図4に示すように、樹脂の収縮力によって粘着テープ100がキャビティCの中心方向に変形される力よりも粘着テープ100のモールド30,30に対する凝集力の方が小さくなるため、モールド30、30がその凝集力に抗して粘着層20表面を滑るようにして互いに接近移動することになる。
これによって、樹脂注入時には十分な粘着力を発揮するため、キャビティC内に樹脂を確実に封止することができる。そして、重合硬化に伴う樹脂の体積縮小時には、粘着力が弱まってテープ基材10に作用する力が減少してテープ基材10が潰れるように変形することがなくなるため、成型後のレンズ周面のテープシワの発生を確実に抑制することができる。
なお、本実施の形態では、テープ基材10の片面(粘着面)全体に粘着層20を設けた構成としたが、図6に示すように基材10の各モールド30,30を粘着する領域(両サイド)にのみこの粘着層20を設けるようにしても良い。このような構成にすれば、粘着層20を構成する粘着剤の使用量を減らせると共に、粘着剤の一部が成型品に付着するといった不都合も回避することができる。
本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープの構成について、実施例によって具体的に説明する。但し、本発明の粘着テープはこれに限定されるものではない。
〔試験例1〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SD4560)5質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製PSA610−SM)95質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製X−92−122)0.05質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東レ株式会社製ポリエステル(PET)フィルム基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープ(以降は、粘着テープと記すこともある)を得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面のシワ、及び液漏れが生じておらず、レンズ側面の研磨が不要の良品レンズであった。よって、この粘着テープは、レンズ成型に必要な特性を有していると言える。
〔試験例2〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSR1512)30質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR100)70質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.30質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように帝人デュポン株式会社製PETフィルム基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面のシワ、及び液漏れが生じておらず、レンズ側面の研磨が不要の良品レンズであった。よって、この粘着テープは、レンズ成型に必要な特性を有していると言える。
〔試験例3〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SD4560)5質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR101−10)95質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.05質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように帝人デュポン株式会社製PETフィルム基材(厚さ75μm)に塗工・乾燥し、総厚95μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面のシワ、及び液漏れが生じておらず、レンズ側面の研磨が不要の良品レンズであった。よって、この粘着テープは、レンズ成型に必要な特性を有している。
〔試験例4〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SD4560)4質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR101−10)96質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製のX−92−122)0.10質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東洋紡績株式会社製PET基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、液漏れが発生し、プラスチックレンズの一部が欠けてしまったが、レンズ側面のシワは生じず、レンズ側面の研磨を施すことにより使用可能なレベルのレンズを得ることができた。
〔試験例5〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SD4560)31質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR101−10)69質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製のX−92−122)0.10質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東洋紡績株式会社製PET基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面にシワが発生してしまったが、液漏れは生じず、レンズ側面の研磨を施すことにより使用可能なレベルのレンズを得ることができた。
〔試験例6〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSR1512)10質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR100)90質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.10質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるようにパナック株式会社製PET/PET複合基材(厚さ39μm)に塗工・乾燥し、総厚59μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面のシワ発生を完全には抑制できなかったが、液漏れは生じなかった。得られたレンズの品質は試験例1〜3よりも若干低かったが、レンズ側面の研磨を施すことにより良品レンズを得ることができた。
〔試験例7〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSR1512)10質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR100)90質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.10質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東海アルミ箔株式会社製アルミニウム/ポリエステルフィルム複合基材(厚さ77μm)に塗工・乾燥し、総厚97μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、液漏れを完全には抑制できずに、プラスチックレンズの一部が少し欠けてしまったが、レンズ側面のテープシワは生じなかった。得られたレンズの品質は試験例1〜3よりも若干低かったが、レンズ側面の研磨を施すことにより良品レンズを得ることができた。
〔試験例8〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSR1512)10質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR100)90質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.04質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東レ株式会社製ポリエステル(PET)フィルム基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、液漏れを完全には抑制できずに、プラスチックレンズの一部が少し欠けてしまったが、レンズ側面のテープシワは生じなかった。得られたレンズの品質は試験例1〜3よりも若干低かったが、レンズ側面の研磨を施すことにより良品レンズを得ることができた。
〔試験例9〕
付加反応型のシリコーン粘着剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSR1512)10質量部、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR100)90質量部、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤(東レ・ダウコーニング株式会社製BY24−741)0.31質量部をトルエン中にて均一攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東レ株式会社製ポリエステル(PET)フィルム基材(厚さ50μm)に塗工・乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、レンズ成型において、レンズ側面のシワ発生を完全には抑制できなかったが、液漏れは生じなかった。得られたレンズの品質は試験例1〜3よりも若干低かったが、レンズ側面の研磨を施すことにより良品レンズを得ることができた。
Figure 2012017363
100…プラスチックレンズ成型用粘着テープ
10…基材
20…粘着層
30…モールド
C…キャビティ

Claims (5)

  1. 重合性モノマーが充填される一対のモールド間をその周方向に沿って連続的に封止するためのプラスチックレンズ成型用粘着テープであって、
    テープ状の基材に、これを前記モールド側に粘着させるための粘着層を有すると共に、
    当該粘着層が、前記モールド間に充填された重合性モノマーが重合収縮する温度域で凝集力が低下する粘着剤からなることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
  2. 請求項1に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
    前記基材が、厚さ50〜75μmのポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料からなることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
  3. 請求項1または2に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
    前記粘着剤が、付加反応型のシリコーン粘着剤5〜30質量部と、過酸化物硬化型のシリコーン粘着剤70〜95質量部と、前記付加反応型のシリコーン粘着剤に有効な架橋剤0.05〜0.30質量部とを主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
    前記粘着層が、前記基材の前記各モールドを粘着する領域にのみ設けられていることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
  5. 一対のモールドを所定の間隔を隔てて位置させた後、その間隔を保持しつつ前記モールド間を、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープでその周方向に沿って連続的に封止してキャビティを区画形成する工程と、
    前記キャビティに重合性モノマーを充填した後、前記重合性モノマーを重合処理する工程とを含むことを特徴とするプラスチックレンズ成型方法。
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