JP2012012700A - 磁石ユニットおよびマグネトロンスパッタリング装置 - Google Patents

磁石ユニットおよびマグネトロンスパッタリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ターゲット上の浸食を容易に均一に進めることができるマグネットユニットを提供する。
【解決手段】ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨーク412と、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニット402と、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニット401と、前記ヨークを該ヨークの回転中心4111を中心として回転させる回転機構と、を備え、前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの回転中心から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する3n−1本以上の外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
【選択図】図2

Description

本発明は、スパッタリングにおいてターゲットを前面側に支持するカソード電極の背面側に配置される磁石ユニットの構造の改良、および該磁石ユニットを備えたマグネトロンスパッタリング装置に関する。
マグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に配置された磁石ユニットによりターゲット放電面にマグネトロンを発生させ、プラズマを閉じ込めて高密度化する。そして、この装置にて発生したプラズマのイオンがターゲットに衝突することにより、ターゲット物質が弾き飛ばされ、基板に付着して薄膜が成膜される。半導体産業の成膜プロセスで使用されるスパッタは膜の原料を選ばず、例えば白金やタングステンなどの高融点材料や、絶縁材料なども成膜することが可能であり、加えて、スパッタ粒子のエネルギーを変えることが容易で、膜の結晶性制御、磁気特性、絶縁特性、応力などを制御することも可能な方法である。
スパッタプロセスで用いられるスパッタ現象は、ターゲット前面にグロー放電を発生させ、このグロー放電によって生成されたプラズマからターゲット方向にイオンを引き出し、加速させ、ターゲット表面にこのイオンを衝突させることで、ターゲット表面から膜の材料となるスパッタ粒子をはじき出すものである。
そして、スパッタプロセスで使用するスパッタカソードは、次の原理を利用している。真空中に設置されたターゲット後方に隔壁(例えば裏板)を隔てて大気中にカソードマグネットを配置する。そして、カソードマグネットから発生する磁力線により、ターゲット平面上にエンドレストラック状の磁気トンネルを生成させる(なお、磁気トンネルのうち、ターゲット平面に垂直な成分がゼロとなる点の集合を「磁気トラック」と呼ぶ)。この状態でターゲットに電力を投入することで、ターゲット面法線方向に電界が生成される。磁場と電界が直角に交差した領域に電子が閉じ込められ、この閉じ込められた電子が、気体原子と頻繁に衝突することで、気体原子がイオンとなる。ターゲット前面に発生した電界によってイオンが加速され、スパッタリングを起こす。
一方、イオンがターゲット表面の原子を弾き飛ばすことから、使用時間の経過とともにターゲット表面が浸食される。この浸食深さがターゲット厚みに近づくとターゲットを新品に交換しなければならない。浸食速度、形状は、ターゲット前面に発生する電界の大きさや磁束密度、スパッタ中のガス圧、磁気トラックの形状など様々な要因により変化する。浸食速度が速ければターゲットの交換頻度が高くなり、スパッタ装置の稼働率が下がってしまう。一方浸食速度が遅ければターゲット交換頻度は低くなり、スパッタ装置の稼働率を高めることができる。この浸食はターゲット面のうち一部の領域(もしくは一部の径)で選択的に進むことが多く、浸食速度を速めてしまう原因となる。浸食速度、形状に大きな影響を与える要因は磁気トラックであることが知られており、磁気トラックを生成させるためのカソードマグネット形状については、多くの提案がされてきている。
特許文献1(図23)は、カソードマグネット形状についての提案であって、プラズマを閉じこめるための磁場を形成する複数の磁石20と、複数の磁石20A,20Bを回転させる回転機構(不図示)とを有する。複数の磁石20A,20Bはターゲット表面近傍において閉じた曲線をまたぐように延在する磁場を形成するよう配列され、回転中心は閉じた曲線により囲まれた領域内にある。閉じた曲線は複数の凸部と複数の凹部を有し、凸部の各々と回転中心との距離が互いに異なり、かつ凹部の各々と回転中心との距離が互いに異なるようにしたものである。
特開2009−7637号公報
特許文献1では、磁気トラックの曲線の長さを回転中心から遠くなるほど長くし、凸部の頂点までの距離と凹部までの距離をそれぞれ異なるようにすることで、各径における浸食の速度をそろえるものであるが、このような幾何学的な形状のみで磁気回路設計時に浸食箇所と侵食速度を予想するのは困難である。特に、浸食速度を左右するターゲット前面のプラズマ密度は磁束密度にも依存するからである。例えば、磁気トラックが同じ長さでもその場所の磁束密度が異なれば、エロージョンの速度も変わってくる。
この点を図25を用いて説明する。図25は、図23における磁石の配列パターンにより形成される磁場水平位置に対応する曲線を示す図である。特許文献1においては、図25に示す凸部A,B,Cの頂点(回転中心Pから最も離れた位置)をそれぞれa,b,cとすると、回転中心Pから凸部Aの頂点aまでの距離と、回転中心Pから凸部Bの頂点bまでの距離と、回転中心Pから凸部Cの頂点cまでの距離は、互いに異なっている。同様に、凹部D,E,Fの谷底(回転中心Pに最も近い位置)をそれぞれd,e,fとすると、回転中心Pから凹部Dの谷底dまでの距離と、回転中心Pから凹部Eの谷底eまでの距離と、回転中心Pから凹部Fの谷底fまでの距離は、互いに異なっている。
特許文献1で説明されているようなエロージョンを均一に進める方法は、上記凸部A,B,C、凹部D,E,Fの磁束密度が同等であることが前提である。ターゲット面における磁気トラック上の磁束密度をシミュレーションにより求めたところ、図26のように磁気トラック上の磁束密度は必ずしも均一ではないことが確認できた。これは、磁石を湾曲して配置することにより、湾曲部の磁石数密度が変わってしまうからである。
上記のとおり、特許文献1では、回転中心から離れるほど磁気トラックの移動速度が速くなることを踏まえ、回転中心から離れるほど磁気トラックの弧長を長くすることで、ターゲット全体にわたり一様なエロージョンが進むとしている。しかし、特許文献1では、磁気トラック上で磁束密度が一様かまでは言及しておらず、必ずしもエロージョンが一様に進むとは限らない。
特に、ターゲットが磁性材料からなるような場合、カソードマグネットからの磁力線の多くがターゲット内部を通り抜けてしまうことから、図24に示す設計どおりに磁気回路上に磁気トラックを生成させることが困難である。このため、予想に反した場所で浸食速度が高くなることで、ターゲット寿命を短くする場合もある。図24(a)には、特許文献1における磁気回路に磁性ターゲット(飽和磁束密度1.0T、厚み3mm、直径160mm)を適用して、ターゲット表面の磁気トラックをシミュレーションした結果を示した。この結果によれば、特に、ターゲットが磁性材料からなるような場合、マグネット中心から左側の領域にて磁気回路上に磁気トラックが重ならない領域が多々ある。更に、このターゲット左領域の磁気トラック上の凹部、凸部のターゲット中心からの径に違いがなくなっている。
更に、磁性ターゲットでは、侵食の進行と共に浸食箇所に磁場が集中することから、図24(b)に示すように浸食最深部と磁気回路が一致していなくても、浸食箇所に磁場が集中してしまう。すなわち特許文献1の方法のように、磁気トラックにおいて磁石ユニットの回転方向に平行な領域を多く含み、その凹部と凸部の径をずらす方法には限界がある。特に、ターゲット径が大きくなると、凹部と凸部の径を多数設けないとターゲット全面に渡り均一に浸食を進めることは困難である。
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、ターゲットの大小、ターゲットが磁性材料かどうかにかかわらず、効率的にターゲットを消費することでターゲートの消費量を抑えることが可能で、ターゲット上の浸食を容易に均一に進めることができるマグネットユニットおよびマグネトロンスパッタリング装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成すべく成された本発明の磁石ユニットおよびマグネトロンスパッタリング装置の構成は以下の通りである。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、
前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、
前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの所定位置から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、
前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、
前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの回転中心から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する3n−1本以上の外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記n本の内部磁石は、180°以下の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記n本の内部磁石は、n/360°の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記外部磁石は、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n角形の形状を有する3n本の外部磁石で構成され、前記3n本の外部磁石とn本の内部磁石とのそれぞれの間には、10mm以上40mm以下の間隙が設けられていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項6記載の発明は、ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの回転中心と異なる放射中心から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する3n−1本以上の外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項7記載の発明は、請求項6載の発明において、前記n本の内部磁石は、180°以下の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記n本の内部磁石は、n/360°の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットである。
また、請求項9記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記外部磁石は、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n角形の形状を有する3n本の外部磁石で構成され、前記3n本の外部磁石とn本の内部磁石とのそれぞれの間には、10mm以上40mm以下の間隙が設けられていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
また、請求項10記載の発明は、真空排気可能な処理室に、処理対象としての基板を載置する基板保持台と、前記基板に対向するように配され、放電用電力が供給されるカソード電極と、前記カソード電極の前面側に支持されたターゲットと、前記ターゲットの前方に前記基板を搬送させる搬送機構と、を備え、前記カソード電極の背面側に、請求項1から9のいずれかに記載の磁石ユニットが配されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置である。
この発明に係る磁石ユニットによれば、磁石ユニットの回転方向に平行な磁気トラックの領域が大幅に減り、磁石ユニットの回転方向に垂直に交わる磁気トラックが増えることで、ターゲット上に発生する浸食が特定領域へ集中することなく進み、ターゲットの寿命を延ばすことが可能になる。
本発明の実施形態に関わるマグネトロンスパッタ装置の一例を示す図である。 本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの第1の例を示すものである。 本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの第1の例の磁気トラックと磁力線の関係を示した図である。 本発明の実施形態に関わる第1の例の磁石ユニットによる非磁性ターゲット上の磁気トラックを示した図である。 本発明の実施形態に関わる第1の例の磁石ユニットによる磁性ターゲット上の磁気トラックを示した図である。 本発明の実施形態に関わる第2の例の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第3の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第4の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第5の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、非磁性ターゲット表面に現われる磁気トラック形状(非磁性ターゲット面に平行な磁場成分のうち0mTとなる領域)を示を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、非磁性ターゲット表面に現われる磁気トラック形状(非磁性ターゲット面に平行な磁場成分のうち50mT以上となる領域)を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、非磁性ターゲットに生じた浸食形状を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、磁性ターゲット表面に現われる磁気トラック形状(磁性ターゲット面に平行な磁場成分のうち0mTとなる領域)を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、磁性ターゲット表面に現われる磁気トラック形状(磁性ターゲット面に平行な磁場成分のうち50mT以上となる領域)を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第6の例の磁石ユニットを用いた場合の、磁性ターゲットに生じた浸食形状を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第7の例の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第7の例の磁石ユニットを用いた場合の、ターゲットに生じた浸食形状を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第8の例の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第8の例の磁石ユニットを用いた場合の、ターゲットに生じた浸食形状を示す図である。 本発明の実施形態に関わる第9の例の磁石ユニットを示すものである。 本発明の実施形態に関わる第9の例の磁石ユニットを用いた場合の、ターゲットに生じた浸食形状を示す図である。 従来(特許文献1)における永久磁石の配列パターンを示す平面図である。 (a)従来(特許文献1)における永久磁石の配列パターンで磁性ターゲット表面の磁気トラックをシミュレーションした結果を示した図であり、(b)はターゲットが磁性の場合の浸食領域と磁力線の関係を示す図である。 図24における磁石の配列パターンによより形成される磁場水平位置に対応する曲線を示す図である。 従来(特許文献1)における永久磁石の配列パターンで非磁性ターゲット表面の磁気トラックをシミュレーションした結果を示した図である。
図1は本実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置の一例を示す図である。マグネトロンスパッタ装置(以下、「スパッタリング装置」という。)は真空容器120内にカソード121、基板保持台106を含んでいる。カソードシールド107に覆われたカソード103は、カソードボディ109とカソードベース110によって真空容器120に固定されている。一方ターゲット105はターゲット支持板103上にターゲット把持リング104によって固定されている。ターゲット支持板103には不図示の冷却系統が配置され、ターゲット105の冷却が可能になっている。この本実施形態のスパッタリング装置は、後述する磁石ユニット(図1の磁石ユニット101)を搭載する装置として共通する。
ターゲット105には電力供給ライン111からターゲット支持板103を通してスパッタに必要な電力が投入されるが、カソードベース110や真空容器120は通常、接地電位であることから、絶縁部品108によって地絡を防いでいる。なお、電力供給ラインには不図示の電力源を接続し、直流電力、高周波電力、高周波電力に直流電力の重畳といった電力が投入可能になっている。
磁石ユニット101はマグネットベース(ヨーク)102に固定されている。マグネットベース(ヨーク)102は軸受け113を介して回転駆動源112に接続されており、磁石ユニット101はターゲット105後方で面方向に回転可能となっている
真空容器120には、不図示のプロセスガス流量制御機構を介してプロセスガスをプロセスガス導入口123から供給することができる。一方、大気成分等の不純物ガスの排気や、プロセスガスの排気を行うための排気機構122も真空容器120に設置されている。基板Wは、基板搬送機構125により、ターゲット105前まで搬送される(基板Wの位置)。基板Wを基板保持台106に載置するのであれば、あらかじめ上側に移動していた基板搬送上下機構126に置かれ、基板搬送機構125は退避される。その後、基板搬送上下機構126が下がり、基板保持台106に基板Wが載置され、非図示の基板押さえにて固定される。他方、成膜後に基板Wを退避させる場合には、基板搬送上下機構126により基板Wは基板保持台106からはなれ、基板搬送機構125に載置され、退避される。
次に、本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの特徴的構成について説明する。本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの第1の特徴点は、強磁性板材からなるヨーク(412)上に配置された環状の外部磁石ユニット402と、ヨーク上(412)の外部磁石ユニット402の内部に配置され、外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニット401とから構成される。内部磁石ユニット401は、ヨークの所定位置(回転中心)から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、外部磁石ユニット402は、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n角形以上の形状を有する3n本以上の外部磁石で構成されている点である。本発明の実施形態に関わる磁石ユニットにおいては、n=3として、内部磁石401は、ヨークの回転中心から放射状に伸びる3本の棒状磁石(4011、4012、4013)で構成されている。また、外部磁石402は、3n角形(3*3=9角形)の角形状を有し前記3本の内部磁石(4011、4012、4013)を取り囲むように配置されている。本例では外部磁石ユニット402をN極、内部磁石ユニット401をS極とする。無論、外部磁石ユニット421をS極、内部磁石ユニット401をN極としてもなんら問題はない。外部磁石ユニット402は、3n角形(3*3=9角形)の角形状を有する磁石を1本の磁石で一体に形成してもよく、3n角形(3*3=9角形)の角形状を有する磁石を3n本の磁石に分離して形成してもよい。
本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの第2の特徴点は、前記3本の内部磁石(4011、4012、4013)が、180°以下の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とする。なお、後述する図2に示す第1の例の磁石ユニットにおいては、3/360°=120°の角度で、円周方向に等角度間隔で配置されている点である。
本発明の実施形態に関わる磁石ユニットの第3の特徴点は、9角形の角形状を有する外部磁石の各辺が3本の内部磁石の各辺と平行に、等しい間隔(例えば、ターゲット上に磁力線を発生させることが可能な10mm以上40mm以下)の間隙が設けられている事である。以下、上記磁石ユニットの第1の特徴点から第3の特徴点について、図2から図5を用いて説明する。
図2は、本発明を適用できる磁石ユニットの第1の例を示すものである。磁性材料からなるヨーク412に、内部磁石ユニット401が固定されている。固定にはエポキシ系接着剤などが使用され、磁石がずれるようなことは無い。内部磁石ユニット401は、3本の長方形状の磁石要素4011、4012、4013からなり、仮想的に定めた放射軸4101、4102、4103にそれぞれ沿って固定されている。本例の磁石要素4011、4012、4013は、等しい矩形状であり、長辺4011aが40mmから150mm、短辺4011aが、10mmから70mmであることが好ましい。この数値は磁石ユニットの直径が160mmから450mmの場合に適用可能である。
図2に示す第1の例の磁石ユニットはヨーク412上の回転中心4111を中心に回転することが可能である。一方、放射軸4101、4102、4103は放射中心4100から延びており、本例では回転中心4111と放射中心4100が一致した例である。本例の磁石ユニットにおいては、放射軸4101、40102、4103はそれぞれ120度の等角度を持っているが、これに限らず磁石要素4011と磁石要素4012の間の角度を100度、磁石要素4012と磁石要素4013の間の角度を100度、磁石要素4013と磁石要素4011の間の角度を160度の関係でもよいし、磁石要素4011と磁石要素4012の間の角度を90度、磁石要素4012と磁石要素4013の間の角度を120度、磁石要素4013と磁石要素4011の間の角度を150度にした関係でもよい。即ち、上記磁石ユニットの第2の特徴点に記載のように、前記3本の内部磁石(4011、4012、4013)が、180°以下の角度で、円周方向に配置されていればよい。
図2に示す第1の例の磁石ユニットにおいては、外部磁石ユニット402は、3n角形(n=3,3*3=9)の9角形の角形状を有する磁石要素4021、4022、4023、4024、4025、4026、4027、4028。4029とから構成される。外部磁石ユニット402のうち、磁石要素4021、4024、4027は、3本の内部磁石の短辺側(4011b、4013b、4012b)各辺と平行に、等しい間隔(例えば、10mm以上40mm以下)の間隙を有するように設けられている。また、外部磁石ユニット402のうち、磁石要素4022、4023、4025、4026、4028、4029は、3本の内部磁石の長辺側(4011a、4013a、4012a)各辺と平行に、等しい間隔(例えば、10mm以上40mm以下)の間隙を有するように設けられている。この数値は、磁石ユニットの直径が160mmから450mmの場合に適用可能である。
即ち、図2に示す第1の例の磁石ユニットにおいては、外部磁石ユニット402の各磁石要素4021から4029は、内部磁石ユニット401の磁石要素4011から4013に接することなく内部磁石ユニット401の各磁石要素4011、4012、4013の周囲にエポキシ系接着剤などで固定されており、磁石が剥がれたり、移動したりすることはない。これにより、磁気回路403が形成される。なお、内部磁石ユニット401と外部磁石ユニット402の表面(図1のターゲット105に対向する面)における磁極は互いに異なっている。上記のような形状にすることで、図3のように磁石401と磁石402の上方に湾曲した磁力線4304が環状無終端で発生する。磁力線4304のうちターゲット面法線方向に平行な磁場成分がゼロになったところを磁気トラック4303とする。磁気トラック4303は、ターゲット上の電界と磁力線4304とが垂直に交わる領域でもあり、この領域でプラズマが閉じ込められる。
次に、図4によって浸食過程を説明する。図2で示した磁石ユニットによる非磁性ターゲット1051上磁気トラック4303の形状は磁気回路403にほぼ一致する。本例の磁石ユニットにおいて、磁気トラック4303の形状が磁気回路403にほぼ一致する第1の理由としては、ヨーク板の回転中心411と一致した放射中心4100から放射状に伸びる3本の内部磁石ユニット401と、この内部磁石ユニット401を取り囲むように配置された外部磁石ユニット402とにより発生した磁力線はターゲット内部に吸収されることなくターゲット表面に到達することができるからである。磁石ユニットを回転させることで、ターゲット上の磁気トラック4303も回転し、閉じ込められたプラズマも回転する。ターゲット上の浸食はプラズマ直下で主に進行するため、磁石ユニットを回転させることで浸食領域も常に移動する。
磁気トラック4303には領域4301、4302が含まれており、領域4301は磁石ユニットの回転方向にほぼ平行、そして領域4302は磁石ユニットの回転方向に対してほぼ垂直方向に延びている。磁石ユニットの回転により、磁気トラック4303も非磁性ターゲット1051上を回転移動する場合、ターゲット上の径4304の範囲では、領域4302は磁石ユニットの回転方向に、ほぼ垂直方向に延びている。そのため、磁石ユニットの回転により、領域4302は、磁石ユニットの回転方向に対してほぼ垂直方向に円周上を移動することになる。
ターゲットの寿命を短くする浸食速度の増加は、ターゲット上の同一領域にプラズマが集中すること、すなわち、浸食領域がターゲット上の特定領域に連続で存在する時間が長くなるために発生する。したがって本発明のように、磁石ユニットの回転と回転方向に対する磁気トラックの方向を考慮することで、磁気トラック4303上の領域4302はターゲット1051上において連続で存在する時間が非常に短くなる。この結果、浸食速度が遅くなりターゲット寿命を延ばす効果につながる。
一方、領域4301は回転方向に対してほぼ平行であるものの、その長さは短く、ターゲット上の径4304の範囲より回転中心からの距離が長い。そして、径4304の範囲よりその移動速度も速くなっている。このようなことから磁気トラックの連続で存在する時間は短く、浸食速度が遅くなり、寿命を延ばす効果につながる。
このように、本発明の実施形態に係わる磁石ユニットにおいては、内部磁石ユニット4010をヨークの回転中心から放射状に伸びる3本の磁石要素4011、4012、4013で構成し(上記第1の特徴点)、3本内部磁石要素(4011、4012、4013)を、120°角度で、円周方向に等角度間隔で配置し(上記第2の特徴点)、9角形の角形状を有する外部磁石の各辺を3本の内部磁石の長辺・短円の各辺と平行に、等しい間隔の間隙を有するように配置(上記第3の特徴点)を有することにより、磁気トラック4303の領域4301では、磁石ユニットの回転方向にほぼ平行となり、磁気トラック4303の領域4302では磁石ユニットの回転方向にほぼ垂直となるようにすることができる。そのため、ターゲットの大小かどうかにかかわらず、効率的にターゲットを消費することでターゲートの消費量を抑えることのでき、ターゲット上の浸食を容易に均一に進めることができる・
以上の内容は、ターゲットの大小に関わらず有効であることは明白であり、磁石ユニットの設計を非常に容易にさせる効果がある。
図5は、本発明の第1の例の磁石ユニットを磁性ターゲットに用いた場合の、磁気トラックの形状を示した図である。図5によって浸食過程を説明する。図5で示した磁石ユニットによる磁性ターゲット1502上には磁気トラック4313が発生する。磁石ユニットを回転させることで磁気トラック4313を回転させ磁性ターゲット1502上の浸食の集中を防いでいる。磁気トラック4313には領域4311、4312が含まれており、領域4311は磁石ユニットの回転方向に対してほぼ平行、そして領域4312は磁石ユニットの回転方向に対して垂直方向から若干ずれた角度で延びている。このように、非磁性ターゲット1501上での磁気トラック4303と磁性ターゲット1502上の磁気トラック4313の形状が異なる理由は、磁性ターゲット1502の飽和磁束密度が非磁性ターゲット1501よりも高く、磁石ユニットからの磁力線が磁性ターゲット1502内部で多く通過するためであると考えられる。
磁石ユニットの回転により、磁気トラック4313が磁性ターゲット1052上を回転移動する場合、領域4312は回転方向に対して垂直方向から若干角度をもって延びているものの、磁石ユニット回転方向に対してほぼ垂直方向に円周上を移動することになる。そのため、磁気トラック4313の領域4312はターゲット1052(径4314の範囲)において連続で存在する時間が非常に短くなる。この結果、浸食速度が遅くなりターゲット寿命を延ばす効果につながる。
一方、領域4311は回転方向に対してほぼ平行であるものの、ターゲット1052上の径4304の範囲より、回転中心からの距離が長く、そのため、径4314の範囲よりその移動速度も速くなっている。この結果、浸食領域の存在時間は短くなり、浸食速度を遅くすることにつながり、寿命を延ばす効果につながる。すなわち、本発明を適用することで、ターゲットの大小に関係なく、かつ、磁性ターゲット、非磁性ターゲットのどちらでもターゲット寿命を延ばすことが可能であることが分かる。
このように、本発明の実施形態の係わる第1例に示す磁石ユニットおいては、ターゲットが磁性材料及び非磁性材料かどうかにかかわらず、磁石ユニットの回転方向と平行に伸びるトラック領域4302,4312及び磁石ユニットの回転方向と垂直に伸びるトラック領域4301,4311を形成することが可能となる。そのため、ターゲットの大小に関係なく、かつ、磁性ターゲット、非磁性ターゲットのどちらでもターゲット寿命を延ばすことが可能である。特に、第1の例の磁石ユニットにおいては、ヨークの回転中心4111と放射状に伸びる内部磁石ユニット401の放射中心4100とが一致している。さらに、外部磁石ユニット402を、3*3=9の9角形状とし、外部磁石ユニット402の各磁石要素を、内部磁石ユニット401の各磁石要素と平行に一定間隔を有するように配置した。これにより、磁石要素4011、4012、4013の3本全てを最大限に長くすることが可能になり、磁石ユニットの回転方向と垂直に延びるトラック領域の範囲も長くなり、均等な浸食を得ることができるという技術的意義を有する。
図6及び図7は、上記第1の例の磁石ユニットを変形した第2の例及び第3の例の磁石ユニットを示す。外部磁石ユニット442、452をN極、内部磁石ユニット441,451をS極とする。無論、外部磁石ユニット442、452をS極、内部磁石ユニット441,451をN極としてもなんら問題はない。図6に示されるように内部磁石ユニット441を磁石ユニット(4411、4412、4413)外周へいくほど広げるようにすることも有効である。このような方法では、磁気トラックのうち例えば図4や図5の領域4302、4312に対応する範囲で回転方向に対してより垂直方向に近づけることが可能になる。
図6に示す第2の例の磁石ユニット411においては、内部磁石ユニット441が、ヨーク412の回転中心4111と同じ放射中心4100から伸びる3本の矩形磁石要素で構成されている点で、前記第1の例のマグネットユニットと同じである。そして、図6に示す内部磁石ユニット441は、回転中心4111と同軸の放射中心4100から放射状に伸びる3本の磁石要素4411、4412、4413から構成されている点でも、前記第1の例の磁石ユニットと同じである。しかし、図6に示す第2の例の磁石ユニット411では、放射軸4101と磁石要素4411の長辺4411aと、放射軸4102と磁石要素4412の長辺4412a、放射軸4103と磁石要素4413の長辺4413aとが、それぞれ外周へいくほど広がるようになっている点で前記第1の例の磁石ユニットと異なる。図6では、放射中心4100から遠のくにつれて、放射軸4101と長辺4411a、放射軸4102と長辺4412a、放射軸4103と長辺4413a、との間隔が大きくなっている。なお、放射中心4100から遠のくにつれて、放射軸4101と長辺4411a、放射軸4102と長辺4412a、放射軸4103と長辺4413a、との間隔が小さくなるようにしてもよい。内部磁石ユニット441の磁石要素4411の短辺4411bと外部磁石ユニット442の磁石要素4421、内部磁石ユニット441の磁石要素4412の短辺4412bと外部磁石ユニット442の磁石4427,内部磁石ユニット441の磁石要素4413の短辺4413bと外部磁石ユニット442の磁石4424、との間隔が、それぞれ一定の間隔を有するように平行して設けられている点は、前記第1の例の磁石ユニットと同様である。本発明の第2の例の磁石ユニット411を磁性ターゲットに用いた場合、図5に示すような磁気トラックが形成される。領域4311は磁石ユニット411の回転方向に対してほぼ平行、そして領域4312は磁石ユニット411の回転方向に対して垂直方向から若干ずれた角度で延びている。図6に示す第2の例の磁石ユニット411を用いることによって、磁石ユニット411の回転方向に対して垂直方向から若干ずれた角度で延びている領域4312の磁気トラックを垂直方向に修正することができる。
図7に示す第3の例の磁石ユニットにおいては、内部磁石ユニット451は、ヨーク412の回転中心4111と同じ放射中心4100から伸びる3本の矩形磁石要素4511、4512、4513で構成されている点は、前記第1の例のマグネットユニットと同じである。第3の例の磁石ユニット412においては、矩形磁石要素4511、4512、4513にそれぞれ長方形状の磁石要素4514、4515、4516を取り付けた点にある。磁石要素4514は矩形磁石要素4511の短辺4511bより大きいことが望ましい。磁石要素4515は矩形磁石要素4512の短辺4512bより大きいことが望ましい。磁石要素4516は矩形磁石要素4513の短辺4513bより大きいことが望ましい。その他の構成は前記第1の例の磁石ユニットと同様である。本発明の第3の例の磁石ユニット412を磁性ターゲットに用いた場合、図5に示すような磁気トラックが形成される。領域4311は磁石ユニット412の回転方向に対してほぼ平行、そして領域4312は磁石ユニット412の回転方向に対して垂直方向から若干ずれた角度で延びている。図7に示す第3の例の磁石ユニット412を用いることによって、磁石ユニット412の回転方向に対して垂直方向から若干ずれた角度で延びている領域4312の磁気トラックを垂直方向に修正することができる。
図8は、本発明を適用できる第4の例の磁石ユニットを示すものである。第4の例の磁石ユニットと上記で述べた第1の例の磁石ユニットとの違いは、放射中心5100が回転中心4111と異なる点(オフセンターと呼ぶ)である。オフセンター方向は、回路403が回転中心4111に近づく方向が望ましい。加えて図9に示すような磁石ユニット501のような適用例も可能である。内部磁石ユニット401も放射中心5200と回転中心4111がオフセンターしており、オフセンターの方向と、距離が磁石ユニットと異なる例である。いずれにせよ図8の第4の例、図9の第5の例に示すように、放射中心5100または放射中心5200と回転中心4111をオフセンターさせることを特徴としている。オフセンター位置(距離と方向)は外部磁石ユニット402に接しないところまでとすればよい。この範囲であれば磁気回路403によって生成される磁気トラック(高密度プラズマ領域)はターゲット中心まで近づき、ターゲット中心まで確実に浸食を進めることが可能になるとともに、磁石ユニット設計時にターゲット中心の浸食の度合いを調整することができるという技術的効果を奏する。
もしも、オフセンターを外部磁石ユニット402上、もしくは、外部磁石ユニット402より外側に設定した場合、ターゲット上で回転する磁気トラックに沿って発生する高密度プラズマが、ターゲット中心に重なり、ターゲット中心領域の浸食速度が異常に高くなってしまう。したがって、オフセンターの最適設置位置は、磁気回路403上、または、内部磁石ユニット401上で、かつ、磁気回路403と接する面より5mm内側までが望ましい。5mm以上内側に入ってしまうと、高密度プラズマがターゲット中心よりも遠ざかり、ターゲット中心の浸食が進まず、ゴミの原因となる膜の再付着がターゲット中心に発生するからである。
一方、図10は、本発明を適用できる第6の例の磁石ユニットを示すものである。ヨーク712上に放射中心7100から放射軸7101、7102、7103が放射状に延びている。この放射軸に沿って磁石要素7011、7012、7013が固定され、内部磁石ユニット701を構成している。内部磁石ユニット701の周囲には外部磁石ユニット702が内部磁石ユニット701に接することなく配置され、回路703を形成している。磁石ユニットは磁石要素7011の幅を広くすることで、内部磁石ユニット701の面積を増やした例である。磁石要素7011のみ幅を増やすだけでも、磁石ユニットによってターゲット上に生成される磁気トラック上の磁束密度を増やし、安定して放電させることが可能になる。なお、内部磁石ユニット701をN極とすれば外部磁石ユニット702はS極となる。その逆でもなんら問題ない。
本発明を適用できる図10で示される形態について、磁気トラック形状、磁束密度の確認並びに、浸食形状の確認を行った。鉄が主成分(日本工業規格SS400)のヨーク712は直径370mm厚み10mmである。ヨーク712上に、内部磁石ユニット701を構成する磁石要素7011が長さ100mm幅70mm高さ37mm、磁石要素7012が長さ150mm幅40mm高さ37mm、そして磁石要素7013が長さ150mm幅40mm高さ37mmでエポキシ系接着剤にて固定されている。内部磁石ユニット701の表面はS極(すなわち、ヨーク712との接着面はN極)とした。外部磁石ユニット702(表面はN極)は内部磁石ユニット701に接することなく20mmの幅を保ちヨーク712上にエポキシ系接着材にて固定されている。なお、内部磁石ユニット701、外部磁石ユニット702共に最大エネルギー積50MGOeの磁石を適用した。内部磁石ユニット701を構成する磁石要素7011、7012、7013は、放射中心7100からそれぞれ120°の角度をなして延びる放射軸7101、7102、7103に沿った位置関係になっている。そして、オフセンター距離は25mmとした。
磁石ユニット上には直径380mm、厚み6.5mmの非磁性ターゲット(材質Cr)を固定した。このとき磁石ユニットの表面と非磁性ターゲット1501表面の距離が35mmとなるように固定した。
非磁性ターゲット1501表面に現われる磁気トラック形状を確認した結果、図11のようになった。また、非磁性ターゲット1501面に平行な磁場成分のうち50mT以上となる領域は図12のようになった。磁気トラック周辺のターゲット面方向磁束密度が50mT以上あれば放電(着火)を安定して行えるため、本発明を適用できる磁石ユニットでは安定して放電を行える。なお、ターゲット上でターゲット面方向に磁束密度測定手段(例えば、ガウスメーター)を進ませながら磁束密度をコンピューターなどで採取し、そのうちターゲット面法線方向に平行な磁束密度がゼロとなったポイントを抽出することで磁気トラック(図11)が得られる。そして、ターゲット面に平行な磁束密度でかつ50mT以上のポイントを抽出すると図12のような結果が得られる。
一方、ターゲット1501に生じた浸食形状を図13に示した。図13では回転中心から片側の浸食形状を示したものである。全域にわたりほぼ一様に浸食が進んでいる。本発明のように回転方向に対してほぼ垂直な磁気トラック領域を積極的に設けることでターゲット中心から外側までを容易に一様に浸食させることが可能になる。
実施例1で示された磁石ユニットに対して、今度は鉄コバルト合金(飽和磁束密度2.4T)の磁性ターゲット1502を近接配置したときの磁性ターゲット1502上の磁気トラック形状、磁束密度の確認並びに、浸食形状の確認を行った。なお、ターゲットの大きさは直径380mm、厚み3mmで、磁石ユニットの表面と磁性ターゲット1502表面との距離は16mmである。
このとき、磁性ターゲット1502表面に現われる磁気トラック形状を確認した結果、図14のようになった。また、磁性ターゲット1502面に平行な磁場成分のうち50mT以上となる領域は図15のようになり、本発明を適用できる磁石ユニットでは磁性ターゲット上でも安定して放電を行える磁束密度が得られていることも確認できた。
そして、磁性ターゲット1502に生じた浸食形状を図16に示した。図16では回転中心から片側の浸食形状を示したものであり、全域にわたりほぼ一様に浸食が進んでいることがわかる。本発明のように回転方向に対してほぼ垂直な磁気トラック領域を積極的に設けることでターゲット中心から外側までを容易に一様に浸食させることが可能になる。
図17は、図2に示す第1の例の磁石ユニットを変形した第7の例の磁石ユニットを示す。図17の第7の例の磁石ユニットの特徴点は、内部磁石ユニット401(S極)が、ヨークの回転中心から少なくともn(n=3)の方向に放射状に伸びる3本の磁石要素で構成され、外部磁石ユニット402(N極)は、前記3本の磁石要素を取り囲むように配置された3n−1(3×3−1=8)角形の形状を有する3n−1(3×3−1=8)本の磁石要素で構成されており、前記3本の磁石要素(4011、4012、4013)が、90度、90度、180度の角度で円周方向に配置されている点である。なお、図17に示す第7の例の磁石ユニットにおいても、外部磁石ユニット402の各磁石要素は、3本の磁石要素の各磁石要素と平行に、等しい間隔(例えば、10mm以上40mm以下)の間隙を有するように設けられている。図17のように放射角度をそれぞれ90度、90度、180度で組み合わせた場合についても非磁性ターゲットにて浸食形状を確認したが、図18のようにターゲット全域にわたりほぼ均等に浸食を進めることができた。
図19は、図2に示す第1の例の磁石ユニットを変形した第8の例の磁石ユニットを示す。図19では、内部磁石ユニット401(S極)は、ヨークの回転中心から少なくともn(n=3)の方向に放射状に伸びる3本の磁石要素で構成され、外部磁石ユニット402(N極)は、前記3本の磁石要素を取り囲むように配置された3n(3×3=9)角形の形状を有する3n(3×3=9)本の外部磁石で構成されており、前記3本の磁石要素(4011、4012、4013)が、75度、75度、210度の角度で、円周方向に配置されている点である。なお、図19に示す第8の例の磁石ユニットにおいても、外部磁石ユニット402の各磁石要素は、3本の磁石要素の各磁石要素と平行に、等しい間隔(例えば、10mm以上40mm以下)の間隙を有するように設けられている。図19のように放射角度をそれぞれ75度、75度、210度とすると、図20のようにターゲット中心部の浸食速度が他領域に比較して大きくなり、短時間でターゲット寿命を迎えてしまった。これは放射角度を180度よりも大きくすることで、回転中心を取り囲むような磁気トラックを形成しプラズマの存在時間を増大させてしまったため、浸食速度が大きくなったからである。
なお第8の例の磁石ユニットでは、放射中心4100を回転中心4111から遠ざける(すなわちオフセンター距離を大きくする)ことで、上記のようなことはなくなるが、次に述べるとおり、磁石ユニット設計の観点から対応が困難である。オフセンター距離を大きくすることで、磁気回路は磁石ユニット上部半分に納めなければならない。しかし、磁石ユニット上部半分のみでは磁気回路に割り当てることのできる領域が狭くなり、各磁石要素の幅や、磁気回路幅を狭くしなければならない。このような制約により、磁石ユニットからの磁束密度が低下し、磁性ターゲットなどへの使用に支障をきたすからである。
図21は、第9の例の磁石ユニットを示す。図21では、内部磁石ユニット401(S極)は、ヨークの回転中心と異なる放射中心4100から少なくともn(n=4)の方向に放射状に伸びる4本の内部磁石で構成され、外部磁石ユニット402(N極)は、前記4本の内部磁石を取り囲むように配置された3n(3×4=12)角形の形状を有する3n(3×4=12)本の外部磁石で構成されており、前記4本の内部磁石(4011、4012、4013、4014)が、90°の角度で、円周方向に配置されている点が特徴である。なお、図21に示す第9の例の磁石ユニットにおいても、外部磁石ユニット402の各磁石要素(4021、4022、4023、4024、4024,4025、4026、4027、4028、4029、40210、40211、41212)は、4本の内部磁石(4011、4012、4013、4014)の各磁石要素と平行に、等しい間隔(例えば、10mm以上40mm以下)の間隙を有するように設けられている。図22は放射方向を4方向とした場合の浸食断面図である。ターゲットを非磁性材料(クロム)にした場合にはターゲット全面に渡りほぼ均一に浸食が進んだものの、ターゲットをNiFe磁性材料とした場合、ターゲット上一部の領域に浸食が集中してしまった。このようになった理由は、次のように述べられる。磁性材料ターゲットを使用するとターゲット内部に磁束が多く通るため、ターゲット上の磁気トラックは図21のように湾曲の幅が小さくなってしまう。言い換えれば、磁気トラックのうち、回転方向に対して垂直に向かう領域が減ってしまい、回転方向に対して平行な領域が増えてしまった。このため浸食が進むに従って侵食部分に磁束が集中しプラズマ密度が高くなり、さらに侵食を加速させてしまった。したがって、ターゲット材に非磁性材料を適用する場合には放射方向が4方向でも有効であるが、飽和磁束密度1.5T以上の材料を利用する場合には、放射方向は3方向が望ましい。
スパッタプロセスで使用するマグネトロンにおいて、ターゲット上に生成される磁気トラックは荷電粒子を効率よく閉じ込めるため、無終端の環状であることが一般的である。上記のように、磁気トラックのうち回転方向に対して垂直に向かう領域を増やすほど、さらにはその本数を増やすほど、侵食の集中が抑えられターゲット利用効率の向上が見込まれる。しかし、その本数を増やしすぎると磁気回路の幾何学的な制限から回転方向に対して垂直に向かう領域が減少するため、今度は、回転方向に対して平行な領域が増えてしまい、侵食の集中が発生する。加えて、磁気トラックは無終端である必要から、回転方向に対して垂直に向かう本数を減らせば回転方向に対して平行な領域が増えるため侵食の集中が発生する。これらのことを踏まえれば、非磁性ターゲットにおいては、磁気トラックのうち回転方向に対して垂直に向かう本数は5本から8本が望ましく、磁性ターゲットにおいては5本か6本が望ましいといえる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。基板サイズや基板の種類が異なるものであっても、本発明が有効であることは明白である。
例えば、内部磁石ユニットの磁極と外部磁石ユニットの磁極は互いに異極であることを条件に、内部磁石ユニットには、S極、N極のどちらでも設定できる。磁石ユニットの直径を150mmまで小さくしたり、逆に450mmまで広げたりしても本発明は有効であり、マグネットの材質として最大エネルギー積を26MGOeに下げたものを使用しても、最大エネルギー積の異なるマグネット材料を組み合わせても有効である。更には、ターゲット材にルテニウムや白金、パラジウムなどの金属から二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの絶縁体、そしてNiFeやFeCoBなどの強磁性体、CoCrPtBなどの比較的弱い磁性をもつターゲットにも適用できる。
101 磁石ユニット
102 マグネットベース(ヨーク)
103 ターゲット支持板
112 回転駆動源
105 ターゲット
120 真空容器
401 内部磁石ユニット
402 外部磁石ユニット
4100 放射中心
4111 回転中心
441 内部磁石ユニット
442 外部磁石ユニット
451 内部磁石ユニット,
452 外部磁石ユニット

Claims (10)

  1. ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、
    前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、
    前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの所定位置から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、
    前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  2. ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、
    前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、
    前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの回転中心から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、
    前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する3n−1本以上の外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  3. 前記n本の内部磁石は、180°以下の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  4. 前記n本の内部磁石は、n/360°の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  5. 前記外部磁石は、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n角形の形状を有する3n本の外部磁石で構成され、前記3n本の外部磁石とn本の内部磁石とのそれぞれの間には、10mm以上40mm以下の間隙が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  6. ターゲットを支持するカソード電極の背面側に、強磁性板材からなるヨークと、該ヨーク上に配置された環状の外部磁石ユニットと、前記ヨーク上の前記外部磁石ユニットの内部に配置され、前記外部磁石ユニットと極性が異なる内部磁石ユニットと、前記ヨークを該ヨークの回転中心を中心として回転させる回転機構と、を備え、
    前記外部磁石ユニットおよび前記内部磁石ユニットによって前記ターゲット上に発生した磁力線の接線が前記ターゲット面と平行になるような領域の集合としての磁気トラックを形成するマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニットであって、
    前記内部磁石ユニットは、前記ヨークの回転中心と異なる放射中心から少なくともn(nは3以上の正の整数)の方向に放射状に伸びるn本の内部磁石で構成され、
    前記外部磁石ユニットは、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n−1角形以上の形状を有する3n−1本以上の外部磁石で構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  7. 前記n本の内部磁石は、180°以下の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とする請求項6記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  8. 前記n本の内部磁石は、n/360°の角度で、円周方向に配置されていることを特徴とする請求項6記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  9. 前記外部磁石は、前記n本の内部磁石を取り囲むように配置された3n角形の形状を有する3n本の外部磁石で構成され、前記3n本の外部磁石とn本の内部磁石とのそれぞれの間には、10mm以上40mm以下の間隙が設けられていることを特徴とする請求項6記載のマグネトロンスパッタリング装置の磁石ユニット。
  10. 真空排気可能な処理室に、
    処理対象としての基板を載置する基板保持台と、
    前記基板に対向するように配され、放電用電力が供給されるカソード電極と、
    前記カソード電極の前面側に支持されたターゲットと、
    前記ターゲットの前方に前記基板を搬送させる搬送機構と、
    を備え、
    前記カソード電極の背面側に、請求項1から9のいずれかに記載の磁石ユニットが配されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。

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