JP2005068468A - マグネトロンスパッタリング用ターゲット及びマグネトロンスパッタリング装置 - Google Patents
マグネトロンスパッタリング用ターゲット及びマグネトロンスパッタリング装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 不均一なエロージョン進行を抑制し、ターゲットの利用効率を向上させるマグネトロンスパッタリング用ターゲットを提供する。
【解決手段】 マグネトロンスパッタリング用ターゲット10は、ターゲット11、バッキングプレート12、及びバッキングプレート12の上に左右1箇所ずつ配置された磁性体13によって構成される。第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとの間に左右1箇所ずつ存在する領域D1では、マグネット20が移動しても、常に方向Z1と平行な同一線上がスパッタリングされるため、エロージョンの進行が早くなるが、磁性体13を、領域D1内で方向Z1に平行となるように、バッキングプレート12の上に左右1箇所ずつ配置することで、領域D1でのエロージョン進行に伴う磁束の漏洩を抑制する。
【選択図】 図1
【解決手段】 マグネトロンスパッタリング用ターゲット10は、ターゲット11、バッキングプレート12、及びバッキングプレート12の上に左右1箇所ずつ配置された磁性体13によって構成される。第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとの間に左右1箇所ずつ存在する領域D1では、マグネット20が移動しても、常に方向Z1と平行な同一線上がスパッタリングされるため、エロージョンの進行が早くなるが、磁性体13を、領域D1内で方向Z1に平行となるように、バッキングプレート12の上に左右1箇所ずつ配置することで、領域D1でのエロージョン進行に伴う磁束の漏洩を抑制する。
【選択図】 図1
Description
本発明はマグネトロンスパッタリング装置及びマグネトロンスパッタリング用ターゲットに関し、特にマグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置、及びこの装置に使用するマグネトロンスパッタリング用ターゲットに関する。
薄膜形成技術の一つであるスパッタリング法は、電極用金属薄膜、磁気記録用磁性薄膜、透明導電膜などの形成に広く利用されている。スパッタリング法は、イオンを加速してターゲットに照射し、そのエネルギーによりターゲット構成原子を叩き出し、ターゲットに対向させて配置した基板上に付着させて薄膜を形成する成膜方法である。
スパッタリング法の一つに、マグネトロンスパッタリング法がある。この方法は、ターゲット表面側に、磁界及びこの磁界と直交する電界を形成することでスパッタリングする方法である。磁界と電界との作用による電子の補足効果でターゲット近傍に高密度のプラズマが形成されるため、実用的な成膜速度を得ることができる。
図7は、一般的なマグネトロンスパッタリング用ターゲットの構造、及びそれをマグネトロンスパッタリング装置に適用した状態を模式的に示す断面図である。
薄膜の構成原子を有するターゲット201と、ターゲット201を支持すると共にターゲット201の冷却も行うバッキングプレート202とが、インジウムなどの低融点金属によって接合されることで、マグネトロンスパッタリング用ターゲット200が構成される。
薄膜の構成原子を有するターゲット201と、ターゲット201を支持すると共にターゲット201の冷却も行うバッキングプレート202とが、インジウムなどの低融点金属によって接合されることで、マグネトロンスパッタリング用ターゲット200が構成される。
ターゲット201と対向する位置には、成膜基板220がターゲット201と平行に配置されている。成膜基板220上には、ターゲット201から飛び出した構成原子が付着し、これによって薄膜が形成される。
また、バッキングプレート202の裏面には、マグネット210が設置されている。マグネット210は、第1の永久磁石211a、第2の永久磁石211b、及び両者を磁気的に結合するヨーク212によって構成される。マグネット210は、ターゲット201の表面側に円弧状の磁界214を形成する。ターゲット201は、直流電源あるいは交流電源の供給を受けて、電界215を形成する。
磁界214と電界215との作用を受けた電子は、第1の永久磁石211aと第2の永久磁石211bとの間の領域を周回する軌道上で、サイクロトロン運動を行う。軌道203は、電子がサイクロトロン運動していく軌道の一例である。
サイクロトロン運動する電子が、予め封入されたArなどの不活性ガスと衝突することで、ターゲット201表面上部の磁界214内に高密度のプラズマが発生する。このプラズマを構成するイオンがターゲット201と衝突することで、スパッタリングがなされる。そして、ターゲット201のスパッタリングされた領域には、エロージョン(電気的な侵食)205が形成される。
マグネトロンスパッタリング法の問題点は、エロージョン205が、ターゲット201表面側に生じる磁界214に依存した不均一な形状で進行することである。エロージョン205は、磁界214の(ターゲット201に対する)水平方向成分が存在するターゲット201表面上の領域に発生し、磁界214の同成分が大きい所ほど深い形状となる。
このように、マグネトロンスパッタリング法では、ターゲット201に形成されるエロージョン205の進行の度合いに強弱がある。結果として、ターゲット201の寿命は、エロージョン205の進行が強い部分で決定されることになる。このため、エロージョン205を均一化してターゲット201の利用効率を向上させる手段として、様々な方法が考案されている。
エロージョンを均一化する方法の一つとして、マグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング法がある。この方法は、大面積基板に成膜する場合に適している。図8は、マグネトロンスパッタリング用ターゲットの一例の構造、及びそれをマグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に適用した状態を模式的に示す上面図である。
マグネトロンスパッタリング用ターゲット100は、ターゲット101とバッキングプレート102によって構成され、両者はインジウムなどの低融点金属によって接合されている。
ターゲット101と対向する位置には、成膜基板(図示しない)がターゲット101と平行に配置されている。また、バッキングプレート102の裏面には、マグネット110が配置されている。マグネット110は、第1の永久磁石111a及び第2の永久磁石111bを有しており、両者のマグネトロンスパッタリング用ターゲット100に面した側は、それぞれ逆磁極となっている。この例では、第1の永久磁石111aがN極、第2の永久磁石111bがS極であるため、第1の永久磁石111aからマグネトロンスパッタリング用ターゲット100を介して第2の永久磁石111bへと至る磁界が発生する。その結果、ターゲット101の表面側には円弧状の磁界が形成される。
そして、この磁界の形状から図の破線で示したエロージョン領域104が自ずと決定される。エロージョン領域104は、上記磁界の(ターゲット101に対する)水平方向成分が存在するようなターゲット101表面上の領域である。スパッタリングは、このエロージョン領域104に従って行われる。
図9は、図8のA2−A2方向断面図である。図8と同じものには同じ番号を付し、説明を省略する。
マグネット110は、第1の永久磁石111aと第2の永久磁石111bとをヨーク112で磁気的に結合することによって構成される。このマグネット110は、ターゲット101の表面側に、上記説明した円弧状の磁界114を形成する。ターゲット101に直流電源あるいは交流電源が供給されると、この磁界114と直交する方向に電界115が形成されてスパッタリングが行われる。ターゲット101と対向する位置に配置された成膜基板120上には、ターゲット101から飛び出した構成原子が付着することで、薄膜が形成される。
マグネット110は、第1の永久磁石111aと第2の永久磁石111bとをヨーク112で磁気的に結合することによって構成される。このマグネット110は、ターゲット101の表面側に、上記説明した円弧状の磁界114を形成する。ターゲット101に直流電源あるいは交流電源が供給されると、この磁界114と直交する方向に電界115が形成されてスパッタリングが行われる。ターゲット101と対向する位置に配置された成膜基板120上には、ターゲット101から飛び出した構成原子が付着することで、薄膜が形成される。
スパッタリングの際、マグネット110は、図の実線で示した位置(図8では、隠れ線で示した位置)と2点鎖線で示した位置の間を、方向Z2に従ってターゲット101と平行に往復移動する。このため、エロージョン領域104(図8参照)も、ターゲット101の面内で往復移動することになる。その結果、ターゲット101は通常のマグネトロンスパッタリング法と比べて、比較的均一にスパッタリングされることになる。
また、従来のマグネトロンスパッタリング用ターゲットの中には、再びスパッタリングされることがない再付着粒子の脱落に起因するダストの発生を抑制する目的で、磁性体を、ターゲット裏面に配置された磁石の上方もしくはそれより外側に位置するように、ターゲットもしくはバッキングプレートの内部に埋め込むような構成としたものもある(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−20066号公報(段落番号〔0024〕〜〔0028〕、図1)
しかし、上記のようなマグネトロンスパッタリング用ターゲット100では、原理上、マグネット110を移動させても、他の部分よりも早くエロージョンが進行する領域が存在する。
第1の永久磁石111aと第2の永久磁石111bとの間に左右1箇所ずつ存在する、破線で囲まれた領域D2(図8参照)は、方向Z2に従って往復移動するエロージョン領域104によってスパッタリングされる領域のうち、特にエロージョン領域104の左右端部によってスパッタリングされる領域を示す。領域D2では、マグネット110が移動しても、常に方向Z2と平行な同一線上がスパッタリングされるため、領域D2に形成されるエロージョンの進行は、他の部分のエロージョンよりも早くなる。特に、ターゲット101が強磁性体の場合に顕著になり、ターゲット101の利用効率が極めて悪化するという問題があった。
領域D2に形成されるエロージョンの断面形状は、ターゲット101が非磁性体であるか、強磁性体であるかにより大きく異なる。図10は、ターゲットが非磁性体の場合に形成されるエロージョンの断面形状を示した概略図であり、図11は、ターゲットが強磁性体の場合に形成されるエロージョンの断面形状を示した概略図である。図10と図11は、共に図8のA3−A3方向断面図を示す。
ターゲット101が非磁性体の場合、領域D2に形成されるエロージョン105aは、比較的なだらかな形状となる。しかし、ターゲット101がNiやCoなどの強磁性体の場合は、領域D2に形成されるエロージョンが急速に進行していくため、非磁性体の場合のようになだらかな形状とはならず、急峻な形状のエロージョン105bが形成される。
図12は、ターゲットに強磁性体を用いた場合のエロージョン及び磁界を模式的に示す、図8のA3−A3方向断面図である。図8と同じものには同じ符号を付し、説明を省略する。また、成膜基板120及び電界115の図示は省略する。
エロージョン105cは、ある時点までに形成された領域D2のエロージョンを示す(簡略化のため、他の部分のエロージョンは省略する)。エロージョン105cによって、ターゲット101には、傾斜を持つ側壁101a及び101bが形成される。ここで、磁束114aは、ターゲット101表面側に形成される磁界114のうち、ターゲット101の側壁101aから側壁101bへと漏洩する磁束を示す。
エロージョン105cが進行していくに従って磁束114aが増加し、元々存在する磁束に対して磁束114aが加わることで、エロージョン105cの位置での磁束密度が増大する。そして、増加した磁束密度によってエロージョン105cの部分がさらに集中的にスパッタリングされる。その結果、図11に示したような、狭く急峻な形状のエロージョン105bが形成され、ターゲット利用効率を大きくすることができない。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、不均一なエロージョン進行を抑制することができるマグネトロンスパッタリング用ターゲットを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、スパッタリングに要するコストを低減することができるマグネトロンスパッタリング装置を提供することである。
本発明では上記課題を解決するために、マグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に使用するマグネトロンスパッタリング用ターゲットにおいて、ターゲットを支持するバッキングプレート上に、マグネットを構成する第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で、かつ上方で、マグネットが移動する方向と平行に配置された磁性体を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットが提供される。
上記のように構成されたマグネトロンスパッタリング用ターゲットにエロージョンが形成されると、磁性体が磁束の一部を通しているため、磁性体を配置した位置のエロージョン部分から漏洩する磁束の増加を防ぐ。
また、本発明では上記課題を解決するために、マグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置において、ターゲットを支持するバッキングプレート上に、マグネットを構成する第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で、かつ上方で、マグネットが移動する方向と平行に配置された磁性体を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットを有するマグネトロンスパッタリング装置が提供される。
上記のように構成されたマグネトロンスパッタリング装置を用いてスパッタリングを行うと、マグネトロンスパッタリング用ターゲットの磁性体を配置した位置のエロージョン部分から漏洩する磁束の増加が抑制される。
本発明のマグネトロンスパッタリング用ターゲットは、ターゲットを支持するバッキングプレート上に、第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で、かつ上方で、マグネットが移動する方向と平行に磁性体を配置したことで、不均一なエロージョン進行を抑制し、ターゲットの利用効率を向上させることができる。
また、このようなマグネトロンスパッタリング用ターゲットを用いた本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットの利用効率を向上させることが可能なため、スパッタリングに要するコストを低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のマグネトロンスパッタリング用ターゲットの構造、及びそれをマグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に適用した状態を模式的に示す上面図である。
図1は、本実施の形態のマグネトロンスパッタリング用ターゲットの構造、及びそれをマグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に適用した状態を模式的に示す上面図である。
マグネトロンスパッタリング用ターゲット10は、ターゲット11、バッキングプレート12、及びバッキングプレート12上に配置される磁性体13によって構成される。ターゲット11は、純度99.99%のNi製で、サイズは幅1080mm×長さ690mm×厚さ3mmである。また、バッキングプレート12は銅製である。ターゲット11は、バッキングプレート12の上側に配置され、両者はインジウムにより接合されている。磁性体13は、純度99%のNi製で、サイズは幅10mm×長さ690mm×厚さ3mmであり、バッキングプレート12の所定の位置に左右1箇所ずつ設けられた窪みに対して、それぞれ配置される。なお、バッキングプレート12と磁性体13もインジウムによって接合される。磁性体13を配置する位置については後述する。
ターゲット11と対向する位置には、成膜基板(図示しない)がターゲット11と平行に配置されている。また、バッキングプレート12の裏面には、マグネット20が配置されている。マグネット20は、第1の永久磁石21a、及び第1の永久磁石21aを包囲するように配置される第2の永久磁石21bを有しており、両者のマグネトロンスパッタリング用ターゲット10に面した側は、それぞれ逆磁極となっている。本実施の形態では、第1の永久磁石21aがN極、第2の永久磁石21bがS極であるため、第1の永久磁石21aからマグネトロンスパッタリング用ターゲット10を介して第2の永久磁石21bへと至る磁界が発生する。その結果、ターゲット11の表面側には円弧状の磁界が形成される。
これにより、第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとの間には、第2の永久磁石21bに沿って第1の永久磁石21aを周回する環状のエロージョン領域14が形成される。エロージョン領域14は、上記磁界の(ターゲット11に対する)水平方向成分が存在するようなターゲット11表面上の領域であり、この領域に従ってスパッタリングが行われる。
スパッタリングの際、マグネット20は、図の隠れ線に示した位置から2点鎖線で示した位置まで、方向Z1に従ってターゲット11と平行に往復移動する。マグネット20の往復移動により、エロージョン領域14もターゲット11の面内で往復移動する。
図2は、図1のA1−A1方向断面図である。図1と同じものには同じ番号を付し、説明を省略する。
マグネット20は、第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとをヨーク22で磁気的に結合することによって構成される。このマグネット20に電源が供給されると、ターゲット11の表面側には、上記説明したような円弧状の磁界24、及びこの磁界24と直行する方向の電界25が形成されて、スパッタリングが行われる。そして、ターゲット11と対向する位置に配置された成膜基板30上には、ターゲット11から飛び出した構成原子が付着することで、薄膜が形成される。
マグネット20は、第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとをヨーク22で磁気的に結合することによって構成される。このマグネット20に電源が供給されると、ターゲット11の表面側には、上記説明したような円弧状の磁界24、及びこの磁界24と直行する方向の電界25が形成されて、スパッタリングが行われる。そして、ターゲット11と対向する位置に配置された成膜基板30上には、ターゲット11から飛び出した構成原子が付着することで、薄膜が形成される。
ここで、磁性体13を配置する位置について説明する。
第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとの間に左右1箇所ずつ存在する、破線で囲まれた領域D1(図1参照)は、方向Z1に従って往復移動するエロージョン領域14によってスパッタリングされる領域のうち、特にエロージョン領域14の左右端部によってスパッタリングされる領域を示す。領域D1では、マグネット20が移動しても、常に方向Z1と平行な同一線上がスパッタリングされることになるため、領域D1に形成されるエロージョンの進行は、他の部分に形成されるエロージョンよりも早くなる(特に、領域D1の(ターゲット11の長手方向に対する)中央付近では、磁界24の水平方向成分が大きいため、進行がさらに早くなる)。
第1の永久磁石21aと第2の永久磁石21bとの間に左右1箇所ずつ存在する、破線で囲まれた領域D1(図1参照)は、方向Z1に従って往復移動するエロージョン領域14によってスパッタリングされる領域のうち、特にエロージョン領域14の左右端部によってスパッタリングされる領域を示す。領域D1では、マグネット20が移動しても、常に方向Z1と平行な同一線上がスパッタリングされることになるため、領域D1に形成されるエロージョンの進行は、他の部分に形成されるエロージョンよりも早くなる(特に、領域D1の(ターゲット11の長手方向に対する)中央付近では、磁界24の水平方向成分が大きいため、進行がさらに早くなる)。
このような不均一なエロージョン進行を抑制するため、磁性体13を、方向Z1と平行かつ領域D1の(ターゲット11の長手方向に対する)中央付近に位置するように、バッキングプレート12上に左右一箇所ずつ配置する(座標で示した正確な位置については後述する)。さらに、このとき磁性体13がバッキングプレート12の上面に接するように配置する。
図3は、図1のA1−A1方向断面にて、特に右側に配置した磁性体付近でのエロージョン及び磁界を示す模式図である。図1と同じものには同じ符号を付し、説明を省略する。また、成膜基板30及び電界25の図示は省略する。
エロージョン15は、ある時点までに形成された、領域D1に形成されるエロージョンを示している(簡略化のため、他の部分に形成されるエロージョンは省略する)。エロージョン15によって、ターゲット11には、傾斜を持つ側壁11a及び11bが形成される。ここで、磁束24aは、ターゲット11表面上に形成される磁界24のうち、側壁11aから側壁11bへと漏洩する磁束を示す。
磁性体13を上記のように配置したことで、本来、側壁11aから漏洩する磁界の一部が磁性体13を通るようになるため、磁束24aは、磁性体13を配置しないときと比べて少なくなる。その結果、エロージョン15の進行に伴う磁束密度の急激な変化を抑えることが可能になる。なお、磁性体13を、バッキングプレート12の上面より下側に位置するように配置することも可能であるが、バッキングプレート12の上面に接するように配置することで最良の効果が得られる。
次に、上記のように構成されるマグネトロンスパッタリング用ターゲット10における磁束の漏洩抑制効果を確認するため、図1及び図2に示したように、マグネトロンスパッタリング用ターゲット10をマグネトロンスパッタリング装置に設置してスパッタリングを行い、ターゲット11表面上の磁束密度分布が、エロージョン進行に従ってどのように変化するかを測定した。なお、比較のために、磁性体13を配置しないマグネトロンスパッタリング用ターゲットについても、同様の測定を行った。ここで、マグネトロンスパッタリング用ターゲット10を試験体とし、磁性体13を配置しないマグネトロンスパッタリング用ターゲットを比較検体とする。
図4は、比較検体のマグネトロンスパッタリング用ターゲットの構造、及びそれをマグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に適用した状態を模式的に示す断面図である。図2と同じものには同じ番号を付し、説明を省略する。比較検体のマグネトロンスパッタリング用ターゲット10aは、ターゲット11a及びバッキングプレート12aによって構成される。なお、ターゲット11aはターゲット11と同じものであり、バッキングプレート12aはバッキングプレート12と同じものである。
この測定によって、以下のような結果が得られた。
図5は、エロージョン進行に伴う試験体の磁束密度分布の変化を示した図である。
水平軸は、原点を点P1(図1参照)とし、点P1からターゲット11の長手方向に従ってターゲット11の内側へと向かう方向を負としたときの、ターゲット11上の位置X1を示す。なお、水平軸上の区間S1(X1が−40mmから−50mmまでの区間)は、磁性体13が存在する位置を示している。また垂直軸は、図2に示すように、ターゲット11表面上に生じる磁束密度B1のターゲット11に対する水平方向成分B1//を示す(角θ1は、磁束密度B1とその水平方向成分B1//のなす角である)。グラフは、ターゲット11の表面から測ったエロージョンの深さが、それぞれ0mm,1.5mm,2.5mmのときの、ターゲット11表面上の磁束密度分布の変化を示している。
図5は、エロージョン進行に伴う試験体の磁束密度分布の変化を示した図である。
水平軸は、原点を点P1(図1参照)とし、点P1からターゲット11の長手方向に従ってターゲット11の内側へと向かう方向を負としたときの、ターゲット11上の位置X1を示す。なお、水平軸上の区間S1(X1が−40mmから−50mmまでの区間)は、磁性体13が存在する位置を示している。また垂直軸は、図2に示すように、ターゲット11表面上に生じる磁束密度B1のターゲット11に対する水平方向成分B1//を示す(角θ1は、磁束密度B1とその水平方向成分B1//のなす角である)。グラフは、ターゲット11の表面から測ったエロージョンの深さが、それぞれ0mm,1.5mm,2.5mmのときの、ターゲット11表面上の磁束密度分布の変化を示している。
図6は、エロージョン進行に伴う比較検体の磁束密度分布の変化を示した図である。水平軸は、点P1を原点として、上記と同様の方向を負としたときのターゲット11a上の位置X2を示す。なお、水平軸上の区間S2(X2が−40mmから−50mmまでの区間)は、ターゲット11a上で、図5の区間S1と同一の位置を示している。また垂直軸は、図4に示すように、ターゲット11a表面上に生じる磁束密度B2のターゲット11aに対する水平方向成分B2//を示す(角θ2は、磁束密度B2とその水平方向成分B2//のなす角である)。グラフは、ターゲット11aの表面から測ったエロージョンの深さが、それぞれ0mm,1.5mm,2.5mmのときの、ターゲット11a表面上の磁束密度分布の変化を示している。
図5及び図6より、磁性体13を配置していないマグネトロンスパッタリング用ターゲット10a(比較検体)では、エロージョンの進行に伴って、区間S2の磁束密度の水平方向成分B2//が急激に増加しているが、磁性体13を配置したマグネトロンスパッタリング用ターゲット10(試験体)では、エロージョンが進行しても、区間S1の磁束密度の水平方向成分B1//の増加が抑制されていることが分かる。
この結果、試験体では急峻なエロージョン形状が改善され、比較検体のターゲット11aの利用効率は6%であったのに対し、試験体のターゲット11の利用効率は40%にまで向上した。
以上述べたように、バッキングプレート12上に、磁性体13を上記のように配置したことで、ターゲット11の利用効率を大幅に改善することができる。
また、高価なターゲット11を長期に渡って使用することが可能となり、コストの低減を図ることが可能となる。
また、高価なターゲット11を長期に渡って使用することが可能となり、コストの低減を図ることが可能となる。
さらに、ターゲット11上の磁束密度分布は、エロージョンの進行に関わらずほぼ一定であるため、プラズマはターゲット11使用初期から交換直前に渡って安定である。従って、膜質変動の少ない安定な薄膜を形成することが可能であり、歩留まりの高い製品を製造することが可能となる。
なお、上記の説明では磁性体13をNi製としたが、他の強磁性体を用いることもできる。その場合は、使用する強磁性体の透磁率に応じて厚さを調整する。
また、上記の説明ではターゲット11をNi製としたが、Coなど他の磁性体ターゲットに適用することもできる。
また、上記の説明ではターゲット11をNi製としたが、Coなど他の磁性体ターゲットに適用することもできる。
10 マグネトロンスパッタリング用ターゲット
11 ターゲット
12 バッキングプレート
13 磁性体
20 マグネット
21a 第1の永久磁石
21b 第2の永久磁石
11 ターゲット
12 バッキングプレート
13 磁性体
20 マグネット
21a 第1の永久磁石
21b 第2の永久磁石
Claims (3)
- マグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に使用するマグネトロンスパッタリング用ターゲットにおいて、
ターゲットを支持するバッキングプレート上に、前記マグネットを構成する第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で、かつ上方で、前記マグネットが移動する方向と平行に配置された磁性体を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。 - 前記磁性体は、前記バッキングプレートの上面に接するように配置されていることを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
- マグネットを移動させてスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置において、
ターゲットを支持するバッキングプレート上に、前記マグネットを構成する第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で、かつ上方で、前記マグネットが移動する方向と平行に配置された磁性体を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットを有するマグネトロンスパッタリング装置。
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-
2003
- 2003-08-21 JP JP2003296985A patent/JP2005068468A/ja active Pending
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