JP2012012619A - コバルト粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄膜を構成する物質の相互拡散に起因する汚染物質の抑制及びパーティクルや異常放電現象が生じないスパッタリングターゲット等に有効であるコバルト粉末とその製造方法を提供すること。
【解決手段】Sが100ppm以下、Na、K、Caがそれぞれ20ppm以下、Oが5000ppm以下、Cが100ppm以下であるコバルト粉末。コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトを沈殿させ、これを分取及び還元してコバルト粉末とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、コバルト粉末及びその製造方法であり、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、硫黄、酸素、炭素のガス成分(ガス化する成分を含む。)等の不純物が少なく、粒径の細かいコバルト粉末、磁性材を製造するためのスパッタリングターゲットに有用であるコバルト粉末及びその製造方法に関する。
近年、半導体の飛躍的な進歩に端を発して様々な電子機器が生まれ、さらにその性能の向上と新しい機器の開発が日々刻々なされている。
このような中で、電子、デバイス機器がより微小化し、かつ集積度が高まる方向にある。これら多くの製造工程の中で多数の薄膜が形成されるが、コバルトは強磁性体として良く知られた材料である。そして、その特異な金属的性質からコバルト膜、コバルト合金膜、コバルト酸化膜、他の金属元素又は酸化物との混合物膜、コバルトシリサイド膜などとして、多くの電子機器薄膜の形成に利用されている。特に、金属及び酸化物系の磁性材ターゲットに用いられている。
このようなコバルト、コバルト合金及びコバルト酸化物を利用した薄膜は、コバルトターゲットをアルゴン中でスパッタすることにより形成される。
スパッタリング法による薄膜の形成方法は、陰極に設置したターゲットに、Arなどの正イオンを物理的に衝突させてターゲットを構成する金属原子をその衝突エネルギーで放出させる手法であり、コバルト若しくはその合金又はコバルトシリサイド等のターゲットを使用し、アルゴンガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成するものである。
一方、このようなコバルト(合金、化合物を含む)の薄膜を形成する場合に、注意を要することは、半導体デバイスに有害な金属不純物が極めて少ない、すなわちそれ自体が極めて高い純度を必要とすることである。すなわち、スパッタリング後に形成される電極又は配線等が信頼性のある半導体動作性能を保証するためには、次のことが必要である。
(1)Na、K等のアルカリ金属元素、Ca等のアルカリ土類金属元素
(2)C、O等のガス成分
(3)硫黄
等の不純物をできるだけ含まないようにすることである。
Na、K等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属は、ゲート絶縁膜中を容易に移動し、MOS−LSI界面特性の劣化の原因となり、また、C、O等のガス成分は、後述するように、スパッタリングの際のパーティクル発生の原因となるため好ましくない不純物である。
磁性材用コバルトターゲット、特に金属コバルト+酸化物系ターゲットには、粒径の細かいコバルト粉末が必要である。また、このコバルト粉末にNa、K、Ca、Sなどの不純物が含まれると、ターゲットのスパッタ特性やスパッタ膜の特性に悪影響を与えるため、これらの不純物を出来るだけ低い濃度とすることが必要である。
一方、コバルト粉末の製造方法には、(1)溶液を中和して水酸化物を得、これを還元する方法、(2)溶液をpH調整しながら炭酸ガスを通じることにより炭酸コバルトを得、これを還元する方法などが知られている。
これらの方法で、溶液のpH調整のためにNaOH、KOH、Ca(OH)を用いると、これら元素が不純物として高濃度に混入することが避けられない。そのためアンモニア等が用いられるが、アンモニアを用いる場合はコバルトとアンミン錯体を形成して再溶解するために、収率が悪いという問題があった。
半導体装置等に使用される薄膜は一層薄くかつ短小化される方向にあり、相互間の距離が極めて小さく集積密度が向上しているために、薄膜を構成する物質あるいはその薄膜に含まれる不純物が隣接する薄膜に拡散するという問題が発生する。これにより、自膜及び隣接膜の構成物質のバランスが崩れ、本来所有していなければならない膜の機能が低下するという大きな問題が起こる。
このような薄膜の製造工程において、数百度に加熱される場合があり、また半導体装置を組み込んだ電子機器の使用中にも温度が上昇する。このような温度上昇は前記物質(不純物)の拡散をさらに促進し、拡散による電子機器の機能低下に大きな問題を生ずることとなる。
また、スパッタリング膜の形成に際して、コバルト(合金・化合物)ターゲットに不純物が存在すると、これらに起因してスパッタチャンバ内に浮遊する粗大化した粒子が基板上に付着して薄膜回路を短絡させるといったように、薄膜の突起物の原因となるパーティクルの発生量が増し、またガス成分である酸素、炭素、水素、窒素等が多量に存在すると、スパッタリング中にガスによる突発が原因と考えられる異常放電を起こし、均一な膜が形成されないという問題が発生する。
このようなことから、不純物となるアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、硫黄、さらに酸素等のガス成分が低減された高純度のコバルトの製造が望まれる。さらにはFe及びNi等の遷移金属元素、放射性元素も同様に減少させることが望まれていた。
しかしながら、一方では粒径の細かいコバルト粉末が必要であるが、上記のような不純物を低減しようとした場合には、製造条件に制限があり、製造コストの増大を招くという問題を生じた。
先行技術文献を見ると、下記特許文献1には、硬質金属およびダイヤモンド工具の製造に用いるコバルト粉末及びその製造方法が記載されている。この文献1に記載されている結晶粒径は0.7〜1.1μm、不純物濃度がNa<50ppm、Ca<30ppm、S<30ppmであり、粒径とNa,Ca,S含有量については、本願発明の目的に合っているが、酸素と炭素の含有量が異常に多く、特許文献1の実施例によれば最低でも、合計で0.8wt%含む。これは硬質金属及びダイヤモンド工具の製造に用いるコバルト粉末であるが故に許される不純物と考えられるが、本願発明の目的には適合しない。
下記特許文献2には、電解を用いてコバルトの微粉末を製造する方法に関し、コバルトの水溶液系を電解液とし、交流による電解をすることで微粉を製造することが記載され、実施例では1μm以下の微粉を得ているが、製造工程が煩雑であるという点と不純物レベルの問題が存在し、これも本願発明の目的には適合しない。
下記特許文献3には、コバルトのシュウ酸塩を焙焼後、気相中に分散させた状態で水素還元してCo粉を得る方法が記載されているが、コバルトのシュウ酸塩ありきの焙焼技術に関する発明であって、肝心の製造法については、製造工程と不純物レベルの問題については記載がなく、これも本願発明の目的には適合しない。
下記特許文献4には、シュウ酸塩の難溶性を利用してCoの回収を行う方法が記載されており、二次電池廃材から油を含む液でコバルトを抽出した後、水系の液で逆抽出し、この液に対してシュウ酸を用いることが記載されている。
しかし、後述する本願発明のように硫酸に富む液からSの少ないコバルトを回収する手法とは目的が異なる。
下記特許文献5には、シュウ酸コバルトの難溶性を利用してコバルトの除去を行う方法が記載されている。コバルトを含有するシクロヘキサンから水相へコバルトを抽出後、シュウ酸を加えてコバルトを除去するというものであるが、前記文献4と同様に、本願発明とは目的が異なる。
下記特許文献6には、純度の悪いコバルト金属から高純度の硫酸コバルトを製造する方法及びこの水溶液を用いた水酸化物の製造方法が記載されている。
高純度硫酸コバルト溶液の製造に関しては、酸化とpH調整によりFeとSiを、硫化によりNiを除くとしている。水酸化物の製造方法は、得られた高純度の硫酸コバルト溶液にNaOHを加えて水酸化コバルトを沈殿させるものである。Naの含有の問題が存在し、これも本願発明の目的には適合しない。
特開平9−125109号公報 特開平11−61210号公報 特開2004−99979号公報 特開平09−111360号公報 特開平09−313951号公報 特開2006−8463号公報
本発明は、上記の諸問題点の解決、特にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、硫黄及び酸素、炭素等のガス成分を極力低減させたコバルト粉末であり、かつ微細な粉末を安定してかつ容易に製造できる方法を開発し、薄膜を構成する物質の相互拡散に起因する汚染物質の抑制及びパーティクルや異常放電現象が生じないスパッタリングターゲット等に有効であるコバルト粉末を低コストで提供することを目的としたものである。
具体的には、Na、K、Caなどの不純物の混入を避けつつ、同時に収率が高いコバルト粉末の製造方法であって、さらに微細な粉末を収率よく得ることを目的とする。
上記問題点を解決するための技術的な手段は、高純度の硫酸コバルトを原料とし、これとシュウ酸と反応させて、微細なシュウ酸コバルトを製造することであり、これを利用して目的とする不純物を低減させ、微細なコバルト粉末を得ることができるとの知見を得た。なお、以下に記載する本願発明の%、ppm等の単位は、全て質量(mass)の表示である。
この知見に基づき、本発明は
1)Sが100ppm以下、Na、K、Caがそれぞれ20ppm以下、Oが5000ppm以下、Cが100ppm以下であることを特徴とするコバルト粉末
2)Sが40ppm以下であることを特徴とする上記1)記載のコバルト粉末
3)平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあることを特徴とする上記1)又は2)記載のコバルト粉末
4)磁性材ターゲットの製造に用いることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載のコバルト粉末、を提供する。
本発明はまた、
5)コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元してコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法
6)コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元して上記1)〜3)のいずれか一項に記載のコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法
7)コバルト塩が硫酸コバルトであることを特徴とする上記5)又は6)記載のコバルト粉末の製造方法
8)硫酸コバルト水溶液にシュウ酸を反応させる際に、液温を35°C以上、80度以下に保持した状態でシュウ酸を添加し反応させて、シュウ酸コバルトを得ることを特徴とする上記5)〜7)のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法
9)反応させるときの液温を60°C以上、80°C以下に保持することを特徴とする上記8)記載のコバルト粉末の製造方法
10)硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lであることを特徴とする上記5)〜9)のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法、を提供する。
上記の通り、本発明は、特にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、硫黄及び酸素、炭素等のガス成分を極力低減させたコバルト粉末であり、かつ微細な粉末を安定してかつ容易に製造できる方法であり、薄膜を構成する物質の相互拡散に起因する汚染物質の抑制及びパーティクルや異常放電現象が生じないスパッタリングターゲットの製造に有効である微細な粉末を収率よく得ることができるという著しい効果を有する。
また、本発明のコバルト粉末を用いて製造したターゲットにより成膜したスパッタリング膜は、ゲート絶縁膜中を移動しMOS−LSI界面特性の劣化の原因となるNa、K等のアルカリ金属元素、Ca等のアルカリ土類金属元素、および硫黄が減少し、素子のソフトエラーがなくなり、界面接合部のトラブルが減少し、薄膜を構成する物質あるいはその薄膜に含まれる不純物が隣接する薄膜に拡散するという問題がなくなるので、自膜及び隣接膜の構成物質のバランスを崩すことがなく、本来所有する膜の機能が低下するという問題もなくなる効果を有する。スパッタリング後に形成される電極又は配線等が信頼性のある半導体動作性を十分に保証することができるという優れた効果を有する。
さらに、このスパッタリング膜の形成に際して、コバルト(合金・化合物)ターゲット中の不純物が減少、特にガス成分である酸素、炭素が減少しているので、スパッタチャンバ内に浮遊する粗大化した粒子が基板上に付着して薄膜回路を短絡させるようなことがなくなり、また薄膜の突起物の原因となるパーティクルの発生量も減少する。さらにスパッタリング中に、ガスによる突発が原因と考えられる異常放電を起こすこともなくなり、コバルト成膜の電気抵抗も小さいという著しい特徴を有する。
本発明で使用するコバルト粉末の原料は、コバルト塩水溶液であり、特に硫酸コバルトを使用する。原料としては高純度の硫酸コバルト水溶液が廃液として発生しているため、これを利用するのが望ましい。コバルトを硫酸に溶解することによっても得ることができ、原料がコバルト塩水溶液(硫酸コバルト)であれば、特に制限はない。
加温しつつコバルト塩(硫酸コバルト)とシュウ酸とを反応させてシュウ酸コバルトを得ること、これを還元し、粉砕してコバルト粉末とすることにより、不純物濃度が少なく、粒径の小さいコバルト粉末を得ることができる。
具体的には、濃度1g/L〜飽和濃度の範囲の硫酸コバルト水溶液を用意する。硫酸コバルト水溶液を35°C〜80°C、好ましくは60°C〜80°Cの範囲に加熱して攪拌しつつ、シュウ酸2水和物の粉末を加え、シュウ酸コバルトを沈殿、乾燥させ、シュウ酸コバルト2水和物を得る。
還元方法としては、シュウ酸コバルト粉末を焙焼して得た酸化物粉末を、たとえば気相中に分散させた状態で加熱して水素還元し、そのまま単分散の微細金属粒子を得ることができる。
この還元方法は既に知られている技術であり、本発明のシュウ酸コバルトの還元方法には制限はないが、シュウ酸コバルトを一旦焙焼して酸化物を経由し、還元雰囲気で加熱処理することで金属に還元し、それをボールミルなどで粉砕することが、量産性等を考慮すると好ましい。
いずれにしても、本発明のシュウ酸コバルト粉末を中間原料とすることにより、粒径が細かく、かつ粒径分布が狭いコバルト粉末を得ることができる。
シュウ酸コバルトの還元は、例えば以下の手順で行う。大気中で350°C〜1000°Cで焙焼し、酸化コバルトとし、粉砕して酸化コバルト粉末とする。このとき、高温になると酸化コバルト粒子が成長して粗大化し、目的の粒径を満たすことが難しくなるため、できれば350°C〜500°C程度が好ましい。この酸化コバルト粉末を水素雰囲気で500〜800°Cで2時間〜24時間還元する。あるいは、シュウ酸コバルトをそのまま水素雰囲気で、500〜800°Cで2時間〜24時間還元してもよい。
ここで、硫酸コバルト水溶液の濃度が低い場合は収率が低くなり、濃度が高い場合は温度変化などによって飽和溶解度を超えて硫酸コバルト自体の沈殿が発生しやすくなる。したがって、好ましくはコバルト濃度が10g/L〜110g/L、より好ましくは50〜110g/Lの範囲で行うのが望ましい。
なお、焙焼温度、水素還元温度が高いほど、処理時間が長いほど、Sなどの不純物が抜けやすく、かつ結晶性が高くなって粉砕しやすい。逆に粒径分布は広くなる傾向がある。
上記の条件でシュウ酸コバルトを生成させることにより、シュウ酸コバルトの粒径を細かくできるため、シュウ酸コバルト粉を還元することにより、結果として得られるコバルト粉末の粒径が細かく、かつ粒径分布が狭い粉末を得ることができる。
上記の工程を採用することにより、微細なコバルト粉末を得ることができ、これをまとめると、次のようになる。
(1)シュウ酸塩としてコバルトを沈殿させることで、粒径の細かい塩が得られる。これを(いったん酸化物を経由する場合を含め)水素還元し、粉砕することで粒径の細かいコバルト粉とすることができる。シュウ酸コバルト塩が細かいため、酸化後の粉砕及び還元後の粉砕がより簡単なものとなる。
(2)シュウ酸塩としてコバルトを沈殿させることで、中和剤を用いたpH調整をしなくてもコバルトを回収することが可能である。また、シュウ酸塩は不純物の巻き込みも少ないため、溶液成分からの不純物残留も少ない。さらに、加熱しながらの反応により、不純物の巻き込みをより低減できる。
(3)シュウ酸塩としてコバルトを沈殿させることで、シュウ酸コバルトは難溶性のため、水酸化物と比べてコバルト回収率が良い。
以上の操作により製造した高純度コバルト粉を、焼結してスパッタリング用ターゲットとする。このようにして製造したコバルトターゲット中には、不純物含有量が少なく、半導体製造用又は磁性材のターゲットとして、好ましい材料が得られる。すなわち、Na、K等のアルカリ金属元素及びCa等のアルカリ土類金属元素がそれぞれ20ppm以下、硫黄(S)が100ppm、好ましくは40ppm以下、酸素(O)が5000ppm以下、炭素(C)が100ppm以下であるコバルト粉末を得ることができる。
また、平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあるコバルト粉末を得ることが可能となる。
このコバルト粉から製造したターゲットを用いてスパッタリング成膜したコバルト膜は、ゲート絶縁膜中を移動しMOS−LSI界面特性の劣化の原因となるNa、K等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属が減少し、界面接合部のトラブルが減少する。
さらに、薄膜を構成する物質あるいはその薄膜に含まれる不純物が隣接する薄膜に拡散するという問題がなくなり、自膜及び隣接膜の構成物質のバランスを崩すことがなく、本来所有する膜の機能が低下するという問題もなくなる。
したがって、スパッタリング後に形成される磁性材、電極又は配線等が信頼性のある半導体動作性を十分に保証することができる。
さらに、このスパッタリング膜の形成に際して、コバルト(合金・化合物)ターゲット中の不純物、特にガス成分である酸素、炭素等が減少しているので、スパッタチャンバ内に浮遊する粗大化した粒子が基板上に付着して薄膜回路を短絡させるようなことがなくなり、また薄膜の突起物の原因となるパーティクルの発生量が減少し、さらにスパッタリング中に、ガスによる突発が原因と考えられる異常放電を起こすこともなくなる。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで1例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に含まれる本実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
(実施例1)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を35°Cに加熱して攪拌しつつ、シュウ酸2水和物粉末を加え、シュウ酸コバルト沈殿を得た。これを乾燥させて得られたシュウ酸コバルト2水和物の、Coの含有量と不純物濃度の分析結果は表1の通りである。また、このときのコバルトの回収率は91.0%であった。
この実施例1では、表1に示すように、Co32%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量は、30ppmであり、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
なお、本実施例1ではコバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果が得られた。
Figure 2012012619
得られたシュウ酸コバルト2水和物を大気中500°Cで焙焼し、酸化コバルトを得た。この酸化コバルトをボールミルで2時間粉砕し、酸化コバルト粉末とし、これを650°C、水素雰囲気でコバルト金属まで還元し、さらにボールミルで2時間粉砕してコバルト粉末とした。得られたコバルト粉末の不純物濃度分析結果は表2の通りである。
また、コバルト粉末の平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあった。
表2に示すように、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量は、90ppmであり、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
Figure 2012012619
(実施例2)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を60°Cに加熱して攪拌しつつ、シュウ酸2水和物粉末を加え、シュウ酸コバルト沈殿を得た。これを乾燥させて得られたシュウ酸コバルト2水和物のCoの含有量と不純物濃度分析結果は表1の通りである。また、このときのコバルト回収率は90.3%であった。
この実施例2では、表1に示すように、Co31.9%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量も、10ppm未満であった。いずれも、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
なお、本実施例2ではコバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果が得られた。
得られたシュウ酸コバルト2水和物を大気中500°Cで焙焼し、酸化コバルトを得た。この酸化コバルトをボールミルで2時間粉砕し、酸化コバルト粉末とし、これを650°C、水素雰囲気でコバルト金属まで還元し、さらにボールミルで2時間粉砕してコバルト粉末とした。得られたコバルト粉末の不純物濃度分析結果は表2の通りである。また、コバルト粉末の平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあった。
表2に示すように、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量は、60ppmであり、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
(実施例3)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を80°Cに加熱して攪拌しつつ、シュウ酸2水和物粉末を加え、シュウ酸コバルト沈殿を得た。これを乾燥させて得られたシュウ酸コバルト2水和物の不純物濃度分析結果は、表1のとおりである。また、このときのコバルト回収率は89.8%であった。
この実施例3では、表1に示すように、Co32.0%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量も、10ppm未満であった。いずれも、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
なお、本実施例3ではコバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果が得られた。
得られたシュウ酸コバルト2水和物を大気中500°Cで焙焼し、酸化コバルトを得た。この酸化コバルトをボールミルで2時間粉砕し、酸化コバルト粉末とし、これを650°C、水素雰囲気でコバルト金属まで還元し、さらにボールミルで2時間粉砕してコバルト粉末とした。得られたコバルト粉末の不純物濃度分析結果は表2の通りである。
また、コバルト粉末の平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあった。
表2に示すように、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であり、硫黄(S)の含有量は、32ppmであり、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られた。
(比較例1)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を室温で攪拌しつつ、シュウ酸2水和物粉末を加え、シュウ酸コバルト沈殿を得た。これを乾燥させて得られたシュウ酸コバルト2水和物の不純物濃度分析結果は表1のとおりである。このときのコバルト回収率は91.6%であった。
表1に示すように、Co32.4%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であったが、硫黄(S)の含有量は、310ppmと増加した。いずれも、本願発明の目的を達成することはできなかった。
なお、本比較例1では濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液の濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果となった。
得られたシュウ酸コバルト2水和物を大気中500°Cで焙焼し、酸化コバルトを得た。この酸化コバルトをボールミルで2時間粉砕し、酸化コバルト粉末とし、これを650°C、水素雰囲気でコバルト金属まで還元し、さらにボールミルで2時間粉砕してコバルト粉末とした。得られたコバルト粉末の不純物濃度分析結果は表2の通りである。
表2に示すように、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であったが、硫黄(S)の含有量は、1000ppmであり、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られなかった。
また、Sはコバルトが粉砕できそうな温度(700°C)で水素還元しても除去しきれなかった。
(比較例2)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液をアンモニア水でpH=8に中和して水酸化コバルトを得た。水酸化コバルトの不純物濃度分析結果は表1の通りである。このときのコバルト回収率は60.5%であった。
表1に示すように、Co59.8%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であったが、硫黄(S)の含有量は、55000ppmと著しく増加した。いずれも、本願発明の目的を達成することはできなかった。
なお、本比較例2ではコバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果となった。
得られた水酸化コバルトを大気中500°Cで焙焼し、酸化コバルトを得た。この酸化コバルトをボールミルで2時間粉砕し、酸化コバルト粉末とし、これを650°C、水素雰囲気でコバルト金属まで還元し、さらにボールミルで2時間粉砕してコバルト粉末とした。得られたコバルト粉末の不純物濃度分析結果は表2の通りである。
表2に示すように、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であったが、硫黄(S)の含有量は、33000ppmと著しく増大し、本願発明の目的を達成するための十分な低減効果が得られなかった。
また、Sはコバルトが粉砕できそうな温度(700°C)で水素還元しても除去しきれなかった。
次に、実施例1、実施例2、比較例1のコバルト粉と高純度の白金粉、クロム粉、二酸化珪素粉を用いて、さらに1100°C、1.5hrでホットプレスし、コバルト−クロム−白金−二酸化珪素系磁性材ターゲットとした。
混合比は、52.26wt.%Co‐8.21wt.%Cr‐33.18wt.%Pt‐6.35wt.%SiOである。これらのターゲットを使用してスパッタリングによる成膜のパーティクルの発生個数を比較した。
このとき、パーティクルの発生個数が、比較例1では100ケ/ウエハーで、著しく多いのに対し、実施例1及び実施例2ではそれぞれ8ケ/ウエハー、10ケ/ウエハーであり、いずれも低く本発明の方が優れていた。
このように本発明の純度が向上したことにより、電気抵抗が減少し、またスパッタリング時のパーティクルの発生個数も著しく減少しているのが分かる。
上記の通り、本発明は、特にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、硫黄及び酸素、炭素等のガス成分を極力低減させたコバルト粉末であり、かつ微細な粉末を安定してかつ容易に製造できる方法であり、薄膜を構成する物質の相互拡散に起因する汚染物質の抑制及びパーティクルや異常放電現象が生じないスパッタリングターゲットの製造に有効である微細な粉末を収率よく得ることできるという著しい効果を有するので、特に磁性材ターゲット用コバルト粉末として有用である。
本発明はまた、
5)コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元してコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法
6)コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元して上記1)〜3)のいずれか一項に記載のコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法
7)コバルト塩が硫酸コバルトであることを特徴とする上記5)又は6)記載のコバルト粉末の製造方法
8)硫酸コバルト水溶液にシュウ酸を反応させる際に、液温を35°C以上、80°C以下に保持した状態でシュウ酸を添加し反応させて、シュウ酸コバルトを得ることを特徴とする上記5)〜7)のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法
9)反応させるときの液温を60°C以上、80°C以下に保持することを特徴とする上記8)記載のコバルト粉末の製造方法
10)硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lであることを特徴とする上記5)〜9)のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法、を提供する。
(比較例1)
コバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を室温で攪拌しつつ、シュウ酸2水和物粉末を加え、シュウ酸コバルト沈殿を得た。これを乾燥させて得られたシュウ酸コバルト2水和物の不純物濃度分析結果は表1のとおりである。このときのコバルト回収率は91.6%であった。
表1に示すように、Co32.4%、Na、K、Caはいずれも10ppm未満であったが、硫黄(S)の含有量は、310ppmと増加した。いずれも、本願発明の目的を達成することはできなかった。
なお、本比較例1ではコバルト濃度100g/Lの硫酸コバルト水溶液を用いたが、硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lの範囲にある場合にも、同等の結果となった。

Claims (10)

  1. Sが100ppm以下、Na、K、Caがそれぞれ20ppm以下、Oが5000ppm以下、Cが100ppm以下であることを特徴とするコバルト粉末。
  2. Sが40ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のコバルト粉末。
  3. 平均粒径が1μm以上、5μm以下であって、粒径の90%以上が0.3μmから10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載のコバルト粉末。
  4. 磁性材ターゲットの製造に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコバルト粉末。
  5. コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元してコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法。
  6. コバルト塩水溶液に、シュウ酸を反応させてシュウ酸コバルトとして沈殿させ、これを分取及び還元して請求項1〜3のいずれか一項に記載のコバルト粉末とすることを特徴とするコバルト粉末の製造方法。
  7. コバルト塩が硫酸コバルトであることを特徴とする請求項5又は6記載のコバルト粉末の製造方法。
  8. 硫酸コバルト水溶液にシュウ酸を反応させる際に、液温を35°C以上、80度以下に保持した状態でシュウ酸を添加し反応させて、シュウ酸コバルトを得ることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法。
  9. 反応させるときの液温を60°C以上、80°C以下に保持することを特徴とする請求項8記載のコバルト粉末の製造方法。
  10. 硫酸コバルト水溶液のコバルト濃度が10g/L〜110g/Lであることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載のコバルト粉末の製造方法。
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