以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体BFと、その車体BFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体BFに独立に懸架する懸架装置4,14と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が全て同じ幅に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図5参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4,14は、路面から車輪2を介して車体BFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、懸架装置4が左右の前輪2FL,2FRを、懸架装置14が左右の後輪2RL,2RRを、それぞれ車体BFに懸架する。なお、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2から図4を参照して、懸架装置14の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置14の斜視図である。なお、懸架装置14の構成は左右共通であるので、以下においては右の後輪2RRを懸架する懸架装置14についてのみ説明し、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14についての説明を省略する。
図2に示すように、懸架装置14は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造として構成され、車輪2(右の後輪2RR)を回転可能に保持するキャリア部材41と、そのキャリア部材41を車体BFに上下動可能に連結すると共に互いに所定間隔を隔てて上下に配置されるアッパーアーム42及びロアアーム43と、ロアアーム43及びアッパーブラケットUBの間に介装され緩衝装置として機能するコイルスプリングCS及びショックアブソーバSAと、キャリア部材41の上下動を許容しつつ前後方向の変位を規制するトレーリングアーム44と、アッパーアーム42及び車体BFとの間に介装されるキャンバ角調整装置45とを主に備えて構成される。なお、ロアアーム43は2本が配設されている。
このように、本実施の形態では、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により車輪2を懸架するので、車輪2が車体BFに対して上下動し、懸架装置14が伸縮(以下「サスストローク)と称す)する際のキャンバ角の変化を最小限に抑制することができる。キャンバ角調整装置45がアッパーアーム42に連結されるので、ロアアーム43に連結される場合と比較して、車輪2の接地面側を支点として車輪2のキャンバ角を調整する動作を行うことができるので、かかるキャンバ角を調整するための駆動力を低減することができる。同様に、車体BFの上方側に配設することができるので、その分、路面から跳ね飛ばされた石などを衝突しにくくして、キャンバ角調整装置45が破損することを抑制できる。
図3を参照して、キャンバ角調整装置45の詳細構成を説明する。図3(a)は、キャンバ角調整装置45の上面模式図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置45の断面模式図である。なお、図3(a)では、一部の構成を部分的に断面視した状態が図示されている。
キャンバ角調整装置45は、車輪2(右の後輪2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、回転駆動力を発生するRRモータ91RRと、そのRRモータ91RRから入力される回転を減速して出力する減速装置92と、その減速装置92から出力される回転駆動力により回転駆動されるクランク部材93と、そのクランク部材93の位相を検出するRRポジションセンサ94RRとを主に備えて構成される。
RRモータ91RRは、DCモータにより構成され、そのRRモータ91RRの回転駆動力は、減速装置92により減速された後、クランク部材93に付与される。クランク部材93は、RRモータ91RRの軸回転運動をアッパーアーム42の往復運動に変換するクランク機構として構成される部位であり、所定間隔を隔てて対向配置される一対のホイール部材93aと、それら一対のホイール部材93aの対向面間を連結するクランクピン93bとを備える。
ホイール部材93aは、軸心O1を有する円盤状に形成され、減速装置92から付与される回転駆動力により軸心O1を回転中心として回転可能な状態で車体BF(図2参照)に配設される。クランクピン93bは、アッパーアーム42の一端側に設けられた連結部42aが回転可能に連結される軸状部材であり、ホイール部材93aの軸心O1に対して偏心して配設されている。
即ち、クランクピン93bの軸心O2は、ホイール部材93aの軸心O1に対して、距離Erだけ偏心して位置する。よって、ホイール部材93aが軸心O1を中心として回転されると、クランクピン93bは、ホイール部材93aの軸心O1を中心とし距離Erを回転半径とする回転軌跡TRに沿って移動される。これにより、クランク部材93が回転されると、クランクピン93bに連結されたアッパーアーム42が車体BF(図2参照)に近接または離間する方向(図3上下方向)へ往復運動される。
RRポジションセンサ94RRは、ホイール部材93aの中央に軸心O1と同軸に連結されるポジション軸94aと、そのポジション軸94aに配設されポジション軸94aの回転角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器(図示せず)とを備える。よって、クランク部材93が回転された場合には、可変抵抗器の抵抗値に基づいて、クランク部材93の回転角(即ち、クランクピン93bの位相)を検出できる。
図4(a)は、第1状態における懸架装置14の正面模式図であり、図4(b)は、第2状態における懸架装置14の正面模式図である。上述したように、アッパーアーム42は、一端側に設けられた連結部42a(図3参照)がクランク軸93bを介してホイール部材93aの軸心O1から偏心した位置(軸心O2)に回転可能に連結される一方、他端側(図4左側)がキャリア部材41の上端側(図4上側)に回転可能に連結される。
よって、RRモータ91RRから付与される回転駆動力によりクランク部材93のホイール部材93aが軸心O1を回転中心として回転されると、クランクピン93bが回転軌跡TRに沿って移動され(図3(b)参照)、アッパーアーム42が往復移動される。これにより、アッパーアーム42を介して、キャリア部材41の上端側(図4上側)が車体BFに対して近接または離間されることで、キャリア部材41に保持される車輪2のキャンバ角が調整される。
ここで、アッパーアーム42の他端側(図4左側)をキャリア部材41の上端側に回転可能に連結する際の回転中心を軸心O3と定義する。本実施の形態では、各軸心O1,O2,O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図4左から右に向かう方向)において、軸心O3、軸心O2、軸心O1の順に一直線上に並んで位置する第1状態(図4(a)に示す状態)と、軸心O3、軸心O1、軸心O2の順に一直線上に並んで位置する第2状態(図4(b)に示す状態)とのいずれか一方の状態となるように、車輪2のキャンバ角を調整する。
なお、本実施の形態では、図4(b)に示す第2状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車体BF側に傾いた状態)の所定角度(本実施の形態では−3°、以下「第2キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、図4(a)に示す第1状態では、車輪2へのキャンバ角の付与が解除され、そのキャンバ角が0°(以下「第1キャンバ角」と称す)に調整される。
この場合、第1状態および第2状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とを直角とすることができるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aが回転しないようにすることができる。よって、車輪2のキャンバ角を所定角度(第1キャンバ角または第2キャンバ角)に機械的に維持することができるので、第1状態または第2状態においてRRモータ91RRの駆動力を解除しておくことができる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRRモータ91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
なお、請求項1記載の「所定のキャンバ角」としては、本実施の形態では、第1キャンバ角および第2キャンバ角が該当する。また、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、キャンバ角調整装置45が省略され、アッパーアーム42の一端側が車体BFに回転可能に連結されている点)と、操舵機能を有して構成される点を除き、その他の構成は懸架装置14と同一の構成であるので、その説明を省略する。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態、或いは、サスストロークセンサ装置83の検出結果に応じてキャンバ角調整装置45(図3参照)を作動制御する。
次いで、図5を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図5は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図5に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図7から図10、図13及び図14に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73d、第1輪ホイールずれフラグ73f1及び第2輪ホイールずれフラグ73f2が設けられている。
キャンバフラグ73aは、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバが付与された場合)にオンに切り替えられ、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された場合)にオフに切り替えられる。
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図7参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
走行状態フラグ73bは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図8参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
偏摩耗荷重フラグ73dは、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるか否かを示すフラグであり、後述する偏摩耗荷重判断処理(図9参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、この偏摩耗荷重フラグ73dがオンである場合に、車輪2の接地荷重がタイヤに偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であると判断する。
第1輪ホイールずれフラグ73f1は、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)側のホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態から、外力の作用により回転された(ずれた)場合に、その回転量(ずれ量)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「ホイールずれ閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するホイールずれ量判断処理(図16参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
第2輪ホイールずれフラグ73f2は、第1輪ホイールずれフラグ73f1に対応するフラグであり、左の後輪2RLを対象とする点を除き、基準とするホイール部材93aの状態や使用する閾値は同一であるので、その説明は省略する。
なお、両ホイールずれフラグ73f1,73f2は、対応するホイール部材93aの回転量(ずれ量)がホイールずれ閾値以上となった場合にオンに切り替えられ、回転量(ずれ量)がホイールずれ閾値に達していない場合にオフに切り替えられる。CPU71は、各ホイールずれフラグ73f1,73f2がオンである場合に、図14に示す補正処理において、対応するキャンバ角調整装置45の作動角(クランク部材93の位相、図3参照)を補正する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置45は、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置14のクランク部材93(図3参照)へ回転駆動力を付与するRLモータ91RL及びRRモータ91RRと、それら各モータ91RL,91RRの回転駆動力により回転されたクランク部材93の位相をそれぞれ検出するRLポジションセンサ94RL及びRRポジションセンサ94RRと、それら各ポジションセンサ94RL,94RRの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)と、CPU71からの指示に基づいて各モータ91RL,91RRをそれぞれ駆動制御する駆動制御回路とを主に備えている。
ここで、図6を参照して、駆動制御回路について説明する。図6(a)は、RRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路の模式図であり、図6(b)は正回転回路が形成された状態を、図6(c)は逆回転回路が形成された状態を、図6(d)は短絡回路が形成された状態を、それぞれ示す駆動制御回路の模式図である。
なお、RLモータ91RL及びRRモータRRを駆動制御する駆動制御回路は互いに同一の構成であるので、以下においてはRRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路についてのみ説明し、RLモータ91RLを駆動制御する駆動制御回路についての説明を省略する。また、図6では、抵抗の図示が省略されている。
図6(a)に示すように、駆動制御回路は、RRモータ91RRへ所定の電圧を印加する電源PWと、4個のスイッチSW1〜SW4とを備え、RRモータ91RRの両端子を短絡する短絡回路を形成している。即ち、駆動制御回路は、電源PWの出力端子が、スイッチSW1の一端と、スイッチSW2の一端とに接続され、スイッチSW1の他端は、RRモータ91RRの両端子の一方と、スイッチSW3の一端とに接続され、スイッチSW2の他端は、RRモータ91RRの両端子の他方と、スイッチSW4の他端とに接続されている。また、スイッチSW4の他端は、スイッチSW3の他端と、電源PWのグランド端子に接続されている。
この駆動制御回路によれば、図6(b)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW4を閉じ、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3を開くことで、正回転回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRに正回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを正回転させることができる。一方、図6(c)に示すように、スイッチSW2及びスイッチSW3を閉じ、かつ、スイッチSW1及びスイッチSW4を開くことで、逆回転回路を形成して、RRモータ91RRへ印加される電圧極性を反転させることができる。これにより、RRモータ91RRに逆回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを逆回転させることができる。
一方、図6(d)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW2を開き、かつ、スイッチSW3及びスイッチSW4を閉じることで、RRモータ91RRの両端子が短絡された短絡回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRが外力により回転された場合には、RRモータ91RRにより発電された電流を短絡回路に流し、その発電電流によりRRモータ91RRの回転に制動をかけることができる。
なお、本実施の形態では、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整され、キャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態となった場合に、上述した短絡回路が形成される。また、キャンバ角調整装置45の作動による補正時(図14のS85及びS86参照)に短絡回路の形成が解除され、その補正動作の終了に伴い、短絡回路が形成される。これにより、アッパーアーム42からクランク部材93(即ち、クランクピン93bを介してホイール部材93a)へ力が加わり、ホイール部材93aが回転される場合に、そのホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。よって、例えば、車輪2が段差を乗り越えた場合など、キャリア部材41の上下動として比較的短時間に大きな変位(即ち、懸架装置14のサスペンションストローク)が入力され、後述する補正処理(図14参照)による各モータ91RL,91RRの作動が間に合わないような場合に、ホイール部材93aに短絡回路による制動をかけることができ、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角から変化することを抑制することができる。
なお、各モータ91RL,91RRは、電動のサーボモータとして構成される。即ち、キャンバ角調整装置45は、各ポジションセンサ94RL,94RRにより検出した各モータ91RL,91RRの状態(位相)をフィードバックし、現在位置と目標位置との差分を減少させることで、各モータ91RL,91RRの位置制御を行う。
また、駆動制御回路は、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの回転軸を電気的にロック(規制)するサーボロック回路を備えており、RLモータ91RL及びRRモータ91RRのサーボロックをオンすることで、各ホイール部材93aの回転をそれぞれ独立して規制可能に構成されている。
図5に戻って説明する。加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
ヨーレートセンサ装置81は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサ81aと、そのヨーレートセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ロール角センサ装置82は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサ82aと、そのロール角センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、ヨーレートセンサ81a及びロール角センサ82aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
サスストロークセンサ装置83は、左右の後輪2RL,2RRを車体BFに懸架する各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置14の伸縮量をそれぞれ検出する合計2個のRLサスストロークセンサ83RL及びRRサスストロークセンサ83RRと、それら各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
本実施の形態では、各サスストロークセンサ83RL,83RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サスストロークセンサ83RL,83RRは、各懸架装置14のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
なお、CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を取得することもできる。即ち、車輪2の接地荷重と懸架装置4の伸縮量とは比例関係を有しているので、懸架装置4の伸縮量をXとし、懸架装置4の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
接地荷重センサ装置84は、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計2個のRL,RR接地荷重センサ84RL,84RRと、それら各接地荷重センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ84RL,84RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ84RL,84RRは、各懸架装置14のショックアブソーバSA(図2参照)にそれぞれ配設されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置85は、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計2個のRL,RRサイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
図5に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
次いで、図7を参照して、状態量判断処理について説明する。図7は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図8を参照して、走行状態判断処理について説明する。図8は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。
その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図7に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図9を参照して、偏摩耗荷重判断処理について説明する。図9は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する(S21)。なお、S21の処理では、サスストロークセンサ装置83により各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出された各懸架装置14の伸縮量と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置14の内の少なくとも1の懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量(即ち、ROM72に記憶されている閾値)より大きいと判断される場合には(S21:No)、その伸縮量の大きい懸架装置14に対応する車輪2(左右の後輪2RL,2RR)の接地荷重が所定の接地荷重より大きく、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S21の処理の結果、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であると判断される場合には(S21:Yes)、車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S22)。その結果、車両1の前後Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S23)。その結果、車両1の横Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する(S24)。その結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレートより大きいと判断される場合には(S24:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する(S25)。その結果、車両1のロール角が所定のロール角より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定のロール角以下であると判断される場合には(S25:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、接地荷重センサ装置84により検出された左右の後輪2RL,2RRの接地荷重と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと判断される場合には(S26:No)、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S26の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の荷重以下であると判断される場合には(S26:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する(S27)。なお、S27の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置85により検出された左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代より大きいと判断される場合には(S27:No)、その潰れ代の大きい車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S27の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であると判断される場合には(S27:Yes)、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の速度以下であるか否かを判断する(S31)。その結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の加速度以下であるか否かを判断する(S32)。その結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗フラグ73dをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図10を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図10は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S47)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、S49の処理を実行する。
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S47及びS48の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S50)、キャンバフラグ73aをオフして(S51)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
一方、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S50及びS51の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S53)、キャンバフラグ73aをオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S53及びS54の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
このように、キャンバ制御処理を実行することで、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。即ち、車輪2の接地荷重が大きいほどタイヤの摩耗が進行し易いので、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができる。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両1の走行安定性を確保することができる。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができる。
また、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
次いで、図11及び図12を参照して、キャリア部材41の上下動(即ち、懸架装置14の伸縮)に対するキャンバ角調整装置45の状態変化について説明する。なお、図11及び図12では、キャリア部材41がバウンド方向へ変位して、懸架装置14が短縮される場合を説明するが、キャリア部材41がリバウンド方向へ変位して、懸架装置14が伸長される場合も考え方は短縮される場合と同様であるので、その説明は省略する。
図11(a)は、第1状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図であり、図11(b)は、第2状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図である。なお、図11では、懸架装置14が短縮される前の状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)が実線により、懸架装置14が短縮された状態(例えば、段差の通過などでキャリア部材41をバウンド方向へ移動させる変位が懸架装置14に入力された状態)が破線により、それぞれ図示されている。
また、図12(a)及び図12(b)は、それぞれ図11(a)及び図11(b)の部分拡大図である。但し、図12(a)及び図12(b)では、懸架装置14が短縮された図11(a)及び図11(b)に対応する状態(即ち、ホイール部材93aが外力の作用により回転される(回転位置がずれる)前の状態)が実線により、その状態から外力の作用により回転された(回転位置がずれた)後の状態が破線により、それぞれ図示されている。即ち、図11(a)及び図11(b)の破線で図示される状態が、図12(a)及び図12(b)では実線で図示されている。
図11(a)に示すように、第1状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角(=0°)に調整された状態、図4(a)参照)では、ホイール部材93aの軸心O1、クランクピン93b及びアッパーアーム42の連結軸となる軸心02、及び、アッパーアーム42及びキャリア部材41の連結軸となる軸心O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図11(a)左から右に向かう方向)において、軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並んで位置する。
よって、上述したように、第1状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とが直角となるため、例えば、路面からの外力が車輪2に作用するによって、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aの回転が規制される。従って、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とできる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
この場合、キャリア部材41をバウンド方向(図11(a)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、図11(a)に破線で示すように、かかるキャリア部材41の変位に伴い、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転される。これにより、図12(a)に実線で示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並ばなくなり、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。
よって、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなる。そのため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生して、ホイール部材93aが回転し、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化してしまう。
即ち、図12(a)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(a)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(a)時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(a)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(a)反時計回りに回転される。その結果、図12(a)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
そこで、本実施の形態では、外力の作用によりホイール部材93aの回転位置がずれた場合には、ホイール部材93aを、図12(a)に矢印で示すように、外力の作用によりずれた方向とは逆方向へ回転させ、初期位置(即ち、第1状態となる位置)へ戻す補正処理を実行する。これにより、ホイール部材93aを機械的な摩擦力による回転規制を利用し易い位置に配置して、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。また、かかる初期位置(第1状態となる位置)へのホイール部材93aの回転は、特に、懸架装置14が伸縮されていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とを直角に近づける方向への回転であるため、その回転に必要なRL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を小さくすることができ、この点からも、消費エネルギーの低減を図ることができる。
一方、第2状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角(=−3°)に調整された状態、図4(b)参照)では、図11(b)に示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並んで位置するため、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転を規制でき、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に機械的に維持できる。
この場合も、キャリア部材41をバウンド方向(図11(b)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、第1状態の場合と同様に、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転され、図12(b)に実線で示すように、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。そのため、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなり、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角から変化する。
即ち、図12(b)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(b)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(b)反時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(b)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(b)時計回りに回転される。その結果、図12(b)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
本実施の形態では、この場合も、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aを、図12(b)に矢印で示すように、外力の作用によりずれた方向とは逆方向へ回転させ、初期位置(即ち、第2状態となる位置)へ戻す補正処理を実行し、ホイール部材93aの回転を規制しつつ、消費エネルギーの低減を図る。
なお、請求項1記載の「第1回転位置」とは、本実施の形態では、第1状態または第2状態となる初期位置が該当する。
図13は、ホイールずれ量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、外力の作用によるホイール部材93aの回転量(ずれ量)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
CPU71は、ホイールずれ量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値s(図示せず)にs=1を書き込み(S71)、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量を取得する(S72)。ここで、ホイールずれ量とは、ホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態を初期位置とし、外力の作用によりホイール部材93aが回転された(ずれた)場合の初期位置からの回転量である。なお、ホイールずれ量判断処理では、説明の便宜上、第1輪(s=1)を右の後輪2RRと、第2輪(s=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が、ホイールずれ閾値以上であるかを判断する(S73)。ここで、「ホイールずれ閾値」とは、懸架装置14がサスストロークしていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用していない通常走行状態)において、ホイール部材93aに対して、所定の大きさの外力(基準外力)をアッパーアーム42から入力した場合に、ホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できるホイール部材93aのホイールずれ量の限界値である。
よって、ホイール部材93aのホイールずれ量がホイールずれ閾値に達していない状態であれば、車輪2に基準外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。なお、ホイールずれ閾値は、実車を用いた試験(車輪2に基準外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のホイールずれ量を求める試験)により測定値として求められており、ROM72に事前に記憶されている。
S73の処理において、第s輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上であると判断された場合には(S73:Yes)、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値を超えているということなので、第s輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73f1又は第2輪ホイールずれフラグ73f2の内の第s輪に対応するフラグ)をオンし(S74)、S76の処理へ移行する。
一方、S73の処理において、第s輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上ではない(即ち、ホイールずれ閾値に達していない)と判断される場合(S73:No)には、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値に達していないということなので、第s輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73f1又は第2輪ホイールずれフラグ73f2の内の第s輪に対応するフラグ)をオフした後(S75)、S76の処理へ移行する。
S76の処理では、RAM73に設けられた値sが2に達したか否かを判断する(S76)。その結果、値sが2に達していない(即ち、s=1である)場合には(S76:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S72〜S75が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値sにs=s+1を書き込んだ後(S77)、S72の処理へ移行する。一方、値sが2に達している(即ち、s=2である)場合には(S76:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S72〜S75の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
図14は、補正処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量に応じて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正する処理である。
CPU71は、補正処理に関し、まず、RAM73に設けられた値t(図示せず)にt=1を書き込む(S81)。なお、補正処理では、説明の便宜上、第1輪(t=1)を右の後輪2RRと、第2輪(t=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
S81の処理の後は、次いで、キャンバ角の設定動作中であるかを判断する(S82)。即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する、或いはその逆に、左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)するために、キャンバ角調整機構45の各モータ91RL,91RRを回転駆動させ、その駆動力によりホイール部材93aを回転させている状態であるかを判断する(S82)。
S82の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S82:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が終了しており、ホイール部材93aは既に停止されている(即ち、第1状態または第2状態に設定されている)ので、次いで、第t輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73f1又は第2輪ホイールずれフラグ73f2の内の第t輪に対応するフラグ)がオンであるかを判断する(S83)。
S83の処理の結果、第t輪ホイールずれフラグがオンであると判断される場合には(S83:Yes)、外力の作用によりホイール部材93aが回転され(回転位置がずれ)、そのホイール部材93aの回転位置を補正する必要があるということである。よって、この場合には(S83:Yes)、ホイール部材93aを第1状態か第2状態のいずれの状態へ補正するかを決定するべく(図12参照)、キャンバフラグ73aがオンであるかを判断する(S84)。
S84の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S84:Yes)、外力の作用によりホイール部材93aの回転(回転位置のずれ)が発生する前においては、車輪2のキャンバ角は第2キャンバ角に調整されており、ホイール部材93aは第2状態にあったということなので、第t輪に対応するホイール部材93aを図12(b)に矢印で示すように初期位置(即ち、第2状態となる位置)に補正して(S85)、S87の処理へ移行する。
一方、S84の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンではない、即ち、オフであると判断される場合には(S84:No)、外力の作用によりホイール部材93aの回転(回転位置のずれ)が発生する前においては、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に調整されており、ホイール部材93aは第1状態にあったということなので、第t輪に対応するホイール部材93aを図12(a)に矢印で示すように初期位置(即ち、第1状態となる位置)に補正して(S86)、S87の処理へ移行する。
これにより、ホイール部材93aを、機械的な摩擦力によって回転を規制し易い初期位置(即ち、第1状態または第2状態となる位置)に位置させる(戻す)ことができる。即ち、ホイール部材93aの回転位置が初期位置に戻ることで、機械的な摩擦力による回転規制を再度利用することができるので、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除することができ、その結果、消費エネルギーの低減を図ることができる。
また、このように、初期位置(第1状態または第2状態となる位置)へのホイール部材93aの回転は、特に、懸架装置14が伸縮されていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とを直角に近づける方向への回転であるため、その回転に必要なRL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を小さくすることができ、この点からも、消費エネルギーの低減を図ることができる。
なお、この場合の補正の方法として、次の方法も考えられる。即ち、キャリア部材41の上下動に伴うアッパーアーム42の変位(軸心O2を回転中心とする回転)に追従させ、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置するようにホイール部材93aを回転させる補正によっても、機械的な摩擦力によりホイール部材93aの回転を規制することができる。しかしながら、この補正の方法では、アッパーアーム42の変位に追従させてホイール部材93aを回転させる必要があるため、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動に高応答性が要求されると共にその駆動時間も長くなり、消費エネルギーの増加を招く。
これに対し、本実施の形態では、アッパーアーム42の変位にホイール部材93aの回転を追従させる必要がないので、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動に対する応答性の要求を低くしつつ、その駆動時間も短縮することができ、その分、消費エネルギーの低減を図ることができる。
ここで、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する状態から、外力の作用によりホイール部材93aが回転され(回転位置がずれ)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しない状態になると(図12参照)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角ではなくなるが、そのホイール部材93aのホイールずれ量が比較的小さな場合には、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度の変化量は比較的小さいため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ加わる力の内、ホイール部材93aを回転させる力成分も比較的小さくなる。そのため、ホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができる。よって、このような場合にも、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動して、ホイール部材93aの回転位置を初期位置へ戻す補正を行うことは、かかるRLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことになる。
そこで、本実施の形態では、外力の作用によるホイール部材93aのホイールずれ量の値がホイールずれ閾値以上であると判断された場合に(S84:Yes)、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動して、ホイール部材93aの回転位置を初期位置へ戻す補正を行うので(S85又はS86)、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
S87の処理では、RAM73に設けられた値tが2に達したか否かを判断する(S87)。その結果、値tが2に達していない(即ち、t=1である)場合には(S87:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S82〜S86が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値tにt=t+1を書き込んだ後(S88)、S82の処理へ移行する。一方、値tが2に達している(即ち、t=2である)場合には(S87:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S82〜S86の実行が完了しているということであるので、この補正処理を終了する。
次いで、図15及び図16を参照して、第2実施の形態について説明する。なお、第2実施の形態では、第1実施の形態における車両1を車両用制御装置200により制御する場合を例に説明する。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図15は、第2実施の形態における車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、ドアロック装置86と、開閉センサ装置87と、常動センサ装置88とを備える。
ドアロック装置86は、電子キー(請求項5又は6に記載の「端末装置」に該当、図示せず)との無線通信によるIDコードの照合に基づき、車両1のサイドドア等の各ドア(図示せず)の施錠および解錠を行う装置であり、電子キーへリクエスト信号を送信する送信部86aと、電子キーから送信されたアンサー信号としてのIDコード信号を受信する受信部86bと、ドアの施錠および解錠を行うロック部86cと、これらを制御する制御回路とを備える。
ドアロック装置86の送信部86aからはリクエスト信号が間欠的に送信されており、リクエスト信号の到達範囲内に電子キーが入り込み、リクエスト信号を受信すると、電子キーから自身のIDコードに応じたIDコード信号が送信される。このIDコード信号がドアロック装置86の受信部86bに受信されると、そのIDコード信号からIDコードが取り出され、ドアロック装置86が携帯するIDコードと照合される。照合の結果、IDコードが一致すれば、電子キーが認証される。
ここで、ドアロック装置86の送信部86aは、リクエスト信号の到達範囲を車外とする車外用アンテナと、リクエスト信号の到達範囲を車室内とする車室内用アンテナとを備え(いずれも図示せず)、使用するアンテナを車両状態に応じて切り替える。
即ち、車両1の車室内に電子キーの所持者がいない状態でドアが施錠されている場合には、車外用アンテナからリクエスト信号を送信する。この場合に、電子キーが認証されると、車外の所定位置に電子キーの所持者がいるということなので、ロック部86cにより各ドアの解錠が行われる。この解錠により、電子キーの所持者は、サイドドアを開扉して車室内に搭乗できる。
電子キーの所持者が車室内に搭乗して閉扉すると(或いは、搭乗せずに閉扉すると)、ドアロック装置86は、閉扉を検出した時点で、車外用アンテナから車室内用アンテナへの切り替えを行い、車室内用アンテナからリクエスト信号を間欠的に送信する。この場合に、電子キーが認証されれば、車両1の車室内に電子キーがあると判断して、キー位置がオンに操作されると、停止状態にある車輪駆動装置3が始動され動作可能状態となる。
電子キーの所持者が車外へ出て閉扉すると(或いは、車外へ出ずに閉扉すると)、ドアロック装置86は、閉扉を検出した時点で、車室内用アンテナから車外用アンテナへの切り替えを行い、車外用アンテナからリクエスト信号を間欠的に送信する。この場合に、電子キーが認証されれば、車両1の車外に電子キーがあると判断して、各ドアの施錠が行われる。
開閉センサ装置87は、車両1の各ドアの開閉状態を検出すると共に、その開閉状態をCPU71に出力するための装置であり、サイドドアセンサ87aと、トランクセンサドアセンサ87bと、ボンネットセンサ87cと、そられ各センサ87a〜87cの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。CPU71は、各センサ87a〜87cの検出結果に基づいて、各ドアの開閉状態(開扉されているか閉扉されているか)を取得することができる。
常動センサ装置88は、車輪2にキャンバ角の変化が生じたかを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。なお、この常動センサ88については、第3実施の形態および第4実施の形態において、説明する。
なお、本実施の形態では、車輪駆動装置3の始動を指示するスタートボタンが押下されていない(即ち、キー位置がオフである)場合、車輌用制御装置200、ドアロック装置86及び常動センサ装置88のみに電力が常時電源から供給され、キャンバ角調整装置45を含むその他の構成には、電力が供給されない。一方、スタートボタンが押下されている(即ち、キー位置がオンである)場合、その他の構成にも(即ち、全ての構成に)電力が供給される。
次いで、図16を参照して、第2実施の形態における待機時処理について説明する。図16は、待機時処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、キャンバ角調整装置45の電源がオフされている場合に、例えば、車両1への荷物の積載、人間の搭乗、或いは、各ドアの開閉などの動作に伴う外力により、車輪2のキャンバ角が変化することを抑制する処理である。
CPU71は、待機時処理に関し、キー位置はオンかを判断する(S201)。なお、キー位置がオンにあるとは、車輪駆動装置3の始動を指示するスタートボタンが押下された状態にあることを意味する。
但し、キー位置として、車輪駆動装置3の停止を指示すると共にキーが挿抜可能となるオフ位置と、車輪駆動装置3は始動されていないが、所定の構成(例えば、カーオーディオなど)にはACC電源から電力を供給するACC位置と、車輪駆動装置3の始動を指示するIG−ON位置との3位置を設ける場合には、キー位置がIG−ON位置にある場合に、キー位置はオンであると判断される。
S201の処理において、キー位置はオンであると判断される場合には(S201:Yes)、上述したように、車両1の全ての構成に電力が供給されており、よって、キャンバ角調整装置45にも電力は供給されているので、S202以降の処理をスキップして、この待機時処理を終了する。なお、この場合は、上述したように、図7から図10、図13及び図14の処理により、ホイール部材93aを初期位置へ戻す補正が行われる。
一方、S201の処理において、キー位置がオンではないと判断される場合には(S201:No)、スタートボタンが押下されておらず、上述したように、車輌用制御装置200、ドアロック装置86及び常動センサ装置88のみに電力が常時電源から供給されており、キャンバ角調整装置45を含むその他の構成には、電力が供給されていない。
よって、例えば、車両1への荷物の積載、人間の搭乗、或いは、各ドアの開閉などの動作に伴う外力が車両1に作用して、ホイール部材93aのずれが生じた場合でも、かかるホイール部材93aを初期位置へ戻す補正を行うことができない。この場合、車両1は、上述したように、軸心O2と他端連結軸O3を結ぶ直線上に軸心O1を位置させる(いわゆるクランク機構の死点を利用する)ことで、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持する構造である(図11及び図12参照)。そのため、車両1へ外力が作用した場合に、ホイール部材93aが第1回転位置からずれると共に、そのずれが所定量を超えると、車輪2のキャンバ角の急激な変化を招く恐れがある。
そこで、S201の処理において、キー位置がオンではないと判断される場合には(S201:No)、次いで、電子キーからのIDコードを認証したか(即ち、電子キーを認証したか)を判断し(S202)、車両1に外力が作用する可能性があるかを確認する。
即ち、キー位置がオフである場合に(スタートボタンが押下されていない場合、S201:No)、電子キーからのIDコードを認証したということは(S202:Yes)、車両1の車外に電子キーの所持者がいるか、或いは、車室内に電子キーの所持者がいるということであり、電子キーの所持者あるいは他の者の乗り降り、トランクや車室内への荷物の積み降ろし、或いは、トランクドアやボンネットの開閉などに伴い、車両1に外力が作用する可能性が高い。
よって、この場合には(S202:Yes)、キャンバ角調整装置45の電源をオンして(S203)、車輪2のキャンバ角を調整可能な状態とした後、S204以降の処理へ移行して、ホイール部材93aを初期位置(第1回転位置)へ戻す処理を実行する。
一方、S202の処理において、電子キーからのIDコードが認証されない場合には(S202:No)、車両1の車外に電子キーの所持者がおらず、車室内にも電子キーの所持者がいないということであり、電子キーの所持者あるいは他の者の乗り降り、トランクや車室内への荷物の積み降ろし、或いは、トランクドアやボンネットの開閉などに伴い、車両1に外力が作用する可能性は低い。よって、この場合には(S202:No)、S203以降の処理をスキップして、この待機時処理を終了する。
S204以降の処理では、まず、RAM73に設けられた値p(図示せず)にp=1を書き込んだ後(S204)、第p輪を懸架する懸架装置14のホイール部材93aがずれていないかを判断する(S205)。なお、待機時処理では、説明の便宜上、第1輪(p=1)を右の後輪2RRと、第2輪(p=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
S205の処理において、第p輪のホイール部材93aがずれていると判断される場合には(S205:Yes)、車両1に外力が作用しており、このまま放置していると、ホイール部材93aのずれ量が所定量を超えて、車輪2のキャンバ角が急激に変化する恐れがあるということなので、第p輪に対応するホイール部材93aを第1状態の初期位置(即ち、第1回転位置)に補正して(S206)、S207の処理へ移行する。
一方、S205の処理において、第p輪のホイール部材93aがずれていないと判断される場合には(S205:No)、車両1に外力が作用されておらず、車輪2のキャンバ角が急激に変化する恐れはないということなので、S206の処理をスキップして、S207の処理へ移行する。
なお、車両用制御装置200は、スタートボタンがオフされ(即ち、キー位置がオフに操作され)、車輪駆動装置3を停止する際には、車輪2のキャンバ角を第1状態に調整した上で、キャンバ角調整装置45の電源をオフする。これにより、車両1は、車輪2のキャンバ角が0°となる状態で停車されるので、3°のネガティブキャンバが付与された状態で停車される場合と比較して、停車期間が長期間となる場合でも、車輪2への負担を軽減して、そのプロファイルが変形することを抑制することができる。
また、S205の処理において、ホイール部材93aがずれていると判断するための条件として、ホイールずれ量が第1実施の形態において説明したホイールずれ閾値(図13参照)以上となることを条件とすることが好ましい。ホイールずれ量がホイールずれ閾値に達していなければ、機械的な摩擦力によりホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができるので、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができるからである。
S207の処理では、RAM73に設けられた値pが2に達したか否かを判断する(S207)。その結果、値pが2に達していない(即ち、p=1である)場合には(S207:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S205,S206が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値pにp=p+1を書き込んだ後(S208)、S205の処理へ移行する。一方、値pが2に達している(即ち、p=2である)場合には(S207:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S205,s206の実行が完了しているということであるので、この待機時処理を終了する。
以上のように、本実施の形態では、キャンバ角調整装置45の電源がオフされている状態でも、電子キーの所持者が車両1に接近した場合には、キャンバ角調整装置45の電源をオンして、ホイール部材93aのずれを補正するための補正動作を実行可能な状態とするので、車両1へ外力が作用して、ホイール部材93aが第1回転位置からずれたとしても、ホイール部材93aのずれを補正して、初期位置へ戻すことができる。その結果、ホイール部材93aのずれが所定量を超えて、車輪2のキャンバ角が急激に変化することを抑制することができる。
また、このように、電子キーからのIDコードを認証した時点で、キャンバ角調整装置45の電源がオンされ、ホイール部材93aのずれを補正するための補正動作が実行可能な状態となるので、車両1へ外力が作用する前(例えば、車両1のトランクへ荷物が積載される前)に、事前に、補正動作を実行可能な状態としておくことができる。よって、ホイール部材93aのずれが所定量を超えて、車輪2のキャンバ角が急激に変化することをより確実に抑制できる。
次いで、図17から図20を参照して、第3実施の形態について説明する。なお、第3実施の形態では、第1実施の形態における車両1を車両用制御装置200により制御する場合を例に説明する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図17は、第3実施の形態におけるキャンバ角調整装置345の上面模式図である。また、図18は、図17のXVIII−XVIII線におけるキャンバ角調整装置345の断面模式図である。なお、図17では、一部の構成を部分的に断面視した状態が図示されている。また、図18に示す状態は、第1状態に対応する。
ここで、キャンバ角調整装置345は、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置45に対し、常動センサ装置88を備える点を除き、その他の構成は同一であるので、その説明を省略する。
常動センサ装置88は、ホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態から、所定量だけ回転されたか(ずれたか)を検出するためのセンサ装置であり、かかる検出をキャンバ角調整装置45の電源がオフされている場合でも実行可能となるように機械式のセンサ装置として構成されている。
図17及び図18に示すように、常動センサ装置88は、アーム側端子311と、ホイール側端子312,313とを備える。アーム側端子311は、断面円形の端子であり、アッパーアーム42の連結部42aの側面に突設されている。よって、ホイール部材93aの回転に伴い、アッパーアーム42の連結部42aがクランクピン93bの軸心O2を中心として回転されると、アーム側端子311は、軸心O2を中心とする回転軌跡TR2に沿って移動される。
ホイール側端子312,313は、軸心O1,O2方向視における形状が、軸心O2を中心とする円環形状の一部(軸心O2を挟んで対向する2か所)を分断して成る形状に形成された端子であり、ホイール部材93aの側面に突設されている。これらホイール側端子312,313は、アーム側端子311の回転軌跡TR2に沿って配設されると共に、アーム側端子311と接触可能な突設高さに形成されている。
よって、ホイール部材93aの回転に伴い、アッパーアーム42の連結部42aがクランクピン93bの軸心O2を中心として回転されると、アーム側端子311がホイール側端子312に接触される接触状態と、アーム側端子311がホイール側端子313に接触される接触状態と、アーム側端子311がホイール側端子312,313のいずれにも接触されない非接触状態との3種類の状態が形成される。
ここで、図18に示す状態は、第1状態(キャンバ角が0°に調整された状態、図4(a)参照)に対応し、この第1状態では、各端子311〜313が非接触状態となる。第1状態からホイール部材93aが軸心O1を中心として一方向(例えば、図18時計回り)へ回転されると、アーム側端子311がホイール側端子312に接触される一方、他方向(図18反時計回り)へ回転されると、アーム側端子311がホイール側端子313に接触される。本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が−0.5°となった場合に、アーム側端子311がホイール側端子312,313に接触されるように、ホイール側端子312,313の端部位置(即ち、円環形状からその一部を分断する範囲)が設定されている。
また、本実施の形態では、第2状態(キャンバ角が−3°に調整された状態、図4(b)参照)においても、各端子311〜313が非接触状態となり、第2状態からホイール部材93aが軸心O1を中心として一方向または他方向へ回転されると、アーム側端子311がホイール側端子312又はホイール側端子313に接触される。本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が−2.5°となった場合に、アーム側端子311がホイール側端子312,313に接触されるように、ホイール側端子312,313の端部位置が設定されている。
図19は、車輪2のキャンバ角が第1状態から変化した状態を示す車両1の正面模式図である。なお、図19では、第1状態における車輪2の位置が破線を用いて模式的に図示されると共に、クランク部材93の一部が断面視されつつ部分的に拡大して図示されている。
図19に示すように、車輪2のキャンバ角が0°に調整された第1状態において、車両1への荷物の積載などの動作に伴い、キャンバ角調整装置345に外力が作用され、ホイール部材93aが軸心O1を中心として例えば図19時計回りに回転されると、クランクピン93bが回転軌跡TRに沿って移動されると共に、アッパーアーム42に設けられたアーム側端子311が回転軌跡TR2に沿って移動され、車輪2のキャンバ角が−0.5°に達すると、アーム側端子311がホイール側端子312に接触される。
また、外力の作用により、ホイール部材93aが反時計回りに回転された場合も、車輪2のキャンバ角が−0.5°に達すると、アーム側端子311がホイール側端子313に接触される。よって、これら各端子311〜313の抵抗値の変化を監視することで、ホイール部材93aが回転された(ずれた)こと、即ち、車輪2のキャンバ角が変化したことを取得することができる。
次いで、図20を参照して、第3実施の形態における待機時処理について説明する。図20は、待機時処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、キャンバ角調整装置45の電源がオフされている場合に、例えば、車両1への荷物の積載、人間の搭乗、或いは、各ドアの開閉などの動作に伴う外力により、車輪2のキャンバ角が変化することを抑制する処理である。
CPU71は、待機時処理に関し、キー位置はオンかを判断する(S301)。なお、キー位置がオンであるかの判断方法は、上述した第2実施の形態の場合(S201)と同様であるので、その説明は省略する。
S301の処理において、キー位置はオンであると判断される場合には(S301:Yes)、上述したように、車両1の全ての構成に電力が供給されており、よって、キャンバ角調整装置45にも電力は供給されているので、S302以降の処理をスキップして、この待機時処理を終了する。なお、この場合は、上述したように、図7から図10、図13及び図14の処理により、ホイール部材93aを初期位置へ戻す補正が行われる。
一方、S301の処理において、キー位置がオンではないと判断される場合には(S301:No)、スタートボタンが押下されておらず、上述したように、車輌用制御装置200、ドアロック装置86及び常動センサ装置88のみに電力が常時電源から供給されており、キャンバ角調整装置45を含むその他の構成には、電力が供給されていないため、例えば、車両1への荷物の積載、人間の搭乗、或いは、各ドアの開閉などの動作に伴う外力が車両1に作用すると、ホイール部材93aのずれが生じる。
そこで、第3実施の形態では、常動センサ装置88によりホイール部材93aのずれが検出されたかを判断する(S302)。ホイール部材93aのずれ(所定量以上の回転)は、上述したように、車輪2のキャンバ角が−0.5°に達し、常動センサ装置88のアーム側端子311がホイール側端子312,313のいずれか一方に接触することで検出される。
S302の処理における判断の結果、ホイール部材93aのずれが検出されていないと判断される場合には(S302:No)、車両1に外力が作用していないか、車両1に外力が作用しているが、その外力の作用によるホイール部材93aの第1回転位置からのずれ(回転量)は未だ小さく、よって、この段階においては、車輪2のキャンバ角が急激に変化する可能性が低いと考えられる。よって、この場合には(S302:No)、S303以降の処理をスキップして、この待機時処理を終了する。
一方、S302の処理における判断の結果、ホイール部材93aのずれが検出されたと判断される場合には(S302:Yes)、車両1に外力が作用した結果、ホイール部材93aの第1回転位置からのずれ(回転量)が大きくなっており、そのずれが所定量を超えると、車輪2のキャンバ角の急激な変化を招く恐れがある。
よって、この場合には(S302:Yes)、キャンバ角調整装置345の電源をオンして(S303)、車輪2のキャンバ角を調整可能な状態とした後、S304以降の処理へ移行して、ホイール部材93aを初期位置(本実施の形態では第1回転位置)へ戻す処理を実行する。
S304以降の処理では、まず、RAM73に設けられた値q(図示せず)にq=1を書き込んだ後(S304)、第q輪に対応するホイール部材93aを第1状態の初期位置(即ち、第1回転位置)に補正して(S305)、S306の処理へ移行する。なお、待機時処理では、説明の便宜上、第1輪(q=1)を右の後輪2RRと、第2輪(q=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
なお、上述した第2実施の形態の場合と同様に、車両用制御装置200は、スタートボタンがオフされ(即ち、キー位置がオフに操作され)、車輪駆動装置3を停止する際には、車輪2のキャンバ角を第1状態に調整した上で、キャンバ角調整装置345の電源をオフする。
S306の処理では、RAM73に設けられた値qが2に達したか否かを判断する(S306)。その結果、値qが2に達していない(即ち、q=1である)場合には(S306:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S306,S307が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値qにq=q+1を書き込んだ後(S307)、S305の処理へ移行する。一方、値qが2に達している(即ち、q=2である)場合には(S306:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する処理S305の実行が完了しているということであるので、この待機時処理を終了する。
以上のように、本実施の形態では、キャンバ角調整装置45の電源がオフされている状態でも、車両1へ外力が作用して、ホイール部材93aの第1回転位置からのずれが発生した場合には、キャンバ角調整装置45の電源をオンして、ホイール部材93aのずれを補正するための補正動作を実行可能な状態とする。よって、ホイール部材93aのずれが大きくなる前に、ホイール部材93aのずれを補正して、初期位置(第1回転位置)へ戻すことができる。従って、ホイール部材93aのずれ(回転量)が所定量を超えて、車輪2のキャンバ角が急激に変化することを抑制することができる。
また、このように、車輪2のキャンバ角の変化(ホイール部材93aのずれ)を検出した場合、即ち、車両1へ外力が作用し、かつ、その作用によりホイール部材93aのずれが実際に発生した場合に、キャンバ角調整装置345による補正動作を実行可能な状態とするので、車両1に外力が作用されていない、或いは、車両1に外力が作用されていたとしても、ホイール部材93aを所定量以上だけ回転させるような大きさの外力ではないにも関わらず、キャンバ角調整装置345の電源が不必要にオンされる(休止状態が解除される)ことを抑制することができる。よって、無駄なエネルギーが消費されることを低減して、その分、消費エネルギーの抑制を図ることができる。
なお、本実施の形態では、常動センサ装置88を、クランク部材93のクランクピン93bとアッパーアーム42の連結部42aとの間の相対回転を検出するセンサ(アーム側端子311及びホイール側端子312,313)により構成したので、車輪2のキャンバ角が−0.5°となった状態を比較的容易に検出することができる。
即ち、第1状態(キャンバ角が0°)から第2状態(キャンバ角が−3°)までの3°のキャンバ角の範囲において、0.5°の車輪2のキャンバ角の変化(第1状態におけるキャンバ角が0°の状態からキャンバ角が−0.5°に変化した状態)を検出する必要があるところ、キャンバ角の変化(0.5°)に伴う車輪2の変位を直線方向で検出する方法(例えば、第4実施の形態の方法)では、変位量が極めて小さいため、高精度のセンサ装置が必要になる。
これに対し、ホイール部材93aに対する連結部42aの変位を回転方向で検出する本実施の形態における方法であれば、第1状態(キャンバ角が0°)から第2状態(キャンバ角が−3°)までの3°のキャンバ角は、クランクピン93b周りの180°に対応し、キャンバ角の0.5°の変化は、クランクピン93b周りの略30°に対応するので、その変位量が比較的大きくなり、その検出を容易とすることができる。
また、本実施の形態における常動センサ装置88は、ホイール側端子312,313が、円環形状の一部(第1状態または第2状態から0.5°のキャンバ角の変化分に対応する領域)のみを分断して成る形状に形成され、その分断した部分を除く領域は連続して形成されている。よって、車輪2のキャンバ角が第1状態または第2状態から0.5°だけ変化した時点だけでなく、その後にキャンバ角の変化が継続しても、アーム側端子311とホイール側端子312,313との接触状態を維持することができる。即ち、車輪2のキャンバ角が変化している(即ち、ホイール部材93aのずれが増加している)にも関わらず、アーム側端子311とホイール側端子312,313とが非接触状態となることを回避できる。
次いで、図21及び図22を参照して、第4実施の形態について説明する。なお、第4実施の形態では、車両401を車両用制御装置200により制御する場合を例に説明する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
ここで、車両401は、第1実施の形態における車両1に対し、懸架装置414が第1実施の形態における懸架装置14と異なる点を除き、その他の構成は同一であるので、その説明を省略する。但し、懸架装置414と懸架装置14とは、各構成要素の寸法や形状、容量などが異なるが、車輪2のキャンバ角を調整する構造およびその車輪2のキャンバ角がクランク機構を利用して保持される構造の構成およびその作用は同一である。
図21は、第4実施の形態における懸架装置414の斜視図である。なお、懸架装置414の構成は左右共通であるので、以下においては右の後輪2RRを懸架する懸架装置414についてのみ説明し、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14についての説明を省略する。
図21に示すように、懸架装置414は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造として構成され、車輪2(右の後輪2RR)を回転可能に保持するキャリア部材441と、そのキャリア部材441を車体BFに上下動可能に連結すると共に互いに所定間隔を隔てて上下に配置されるアッパーアーム442及びロアアーム443と、アッパーアーム442及び車体BFとの間に介装されるキャンバ角調整装置445とを主に備えて構成される。ここで、ロアアーム443は2本が配設されている。また、図21では、緩衝装置として機能するコイルスプリング及びショックアブソーバの図示が省略されている。
なお、図21に図示されるキャンバ角調整装置445のRRモータ491RR、減速装置492及びホイール部材493aは、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置45のRRモータ91RR、減速装置92及びホイール部材93aにそれぞれ対応する。
図21に示すように、第4実施の形態における常動センサ装置88は、ロアアーム443に装着される本体部411と、その本体部411に保持される被当接部412とを備え、被当接部412の直線方向変位に伴ってオン・オフが切り替えられるプッシュオン式のセンサ装置として構成される。
被当接部412は、本体部411からキャリア部材441へ向けて突出されると共に、キャリア部材441へ近接する方向および離間する方向(即ち、図21の矢印R−L方向)へ変位可能な状態で本体部411に保持される。
本体部411内には、被当接部412をキャリア部材441側へ向けて付勢する付勢部材(例えば、コイルスプリング)が設けられており、かかる付勢部材の付勢力により被当接部412が初期位置に保持されている。キャリア部材441が被当接部412側へ向けて傾動されると、被当接部412が初期位置から押し戻され、その押し戻し量が所定量に達すると、内部接点端子が接触されオン状態が形成される。一方、キャリア部材441が被当接部441から離間する側へ向けて傾動されると、被当接部412が付勢部材の付勢力により初期位置へ復帰され、内部接点端子が非接触状態となりオフ状態が形成される。
図22(a)は、第1状態における懸架装置414の正面図であり、図22(b)は、第2状態における懸架装置414の正面図である。
図22(a)に示すように、第1状態(キャンバ角が0°に調整された状態、図4(a)参照)では、初期位置に位置する被当接部411は、キャリア部材441との間に隙間を有しており、よって、常動センサ装置88はオフされた状態(内部接点端子が非接触となる状態)となる。
この第1状態から、図22(b)へ示す第2状態(キャンバ角が−3°に調整された状態、図4(b)参照)へ遷移すると、その遷移過程において、被当接部411とキャリア部材441との当接が発生し、被当接部411が初期位置から押し戻されると共にその押し戻し量が所定量に達すると、常動センサ装置88がオンされた状態(内部接点端子が接触した状態)となる。
なお、本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が−0.5°となった場合に、常動センサ装置88がオンされた状態となるように、内部接点端子が構成されている。また、車輪2のキャンバ角が−0.5°に達した後は、第2状態となるまでの間(即ち、車輪2のキャンバ角が−0.5°から−3°に調整されている間)、常動センサ装置88は、内部接点端子が接触状態とされ、オンされた状態を維持する。
図22(a)に示すように、車輪2のキャンバ角が0°に調整された第1状態において、車両1への荷物の積載などの動作に伴う外力により、車輪2のキャンバ角が変化されると、キャリア部材441により被当接部412を初期位置から本体部411側へ向けて押し戻し、車輪2のキャンバ角が−0.5°に達すると、内部接点端子が接触状態となり、常動センサ装置88がオンされる。よって、常動センサ装置88のオン・オフ状態(即ち、内部接点端子の接触・非接触状態に伴う抵抗値の変化)を監視することで、車輪2のキャンバ角が所定角度まで変化したこと(ホイール部材493aが所定量だけ回転された(ずれた)こと)を取得することができる。
よって、常動センサ装置88を、上述した第3実施の形態におけるアーム側端子311及びホイール側端子312,313から構成する形態に代えて、本実施の形態のように本体部411及び被当接部412から構成した場合にも、上述した待機時処理(図20参照)を実行することで、第3実施の形態の場合と同様に、ホイール部材493aのずれ(回転量)が所定量を超えて、車輪2のキャンバ角が急激に変化することを抑制することができる。
なお、図9に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角設定手段としてはS43,S47,S50及びS53の処理が、図13に示すフローチャート(ホイールずれ量判断処理)において、請求項1の回転判断手段としてはS73の処理が、請求項2の回転量取得手段としてはS72の処理が、回転閾値判断手段としてはS73の処理が、図14に示すフローチャート(補正処理)において、請求項1の補正手段としてはS85及びS86の処理が、図16に示すフローチャート(待機時処理)において、請求項5又は6に記載の第1補正再開手段としてはS203の処理が、図20に示すフローチャート(待機時処理)において、請求項7記載の第2補正再開手段としてはS303の処理が、それぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。また、同様に、第3及び第4実施の形態において一例として0.5°を例示した常動センサ装置88がオンされるキャンバ角の値も任意に設定することができる。
上記各実施の形態では、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45,345,445により調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに替えて又はこれに加えて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整することは当然可能である。
上記各実施の形態では、第1状態および第2状態のいずれにおいても、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1状態または第2状態の一方のみにおいて、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置し、第1状態または第2状態の他方においては、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しないように制御することは当然可能である。
上記各実施の形態では、キャンバ角調整機構45が、アッパーアーム42と車体BFとの間に介装される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ロアアーム43と車体BFとの間にキャンバ角調整機構45を介装しても良い。
上記各実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定された後は、補正処理により補正が行われるまでの期間、ホイール部材93a,493aへのRL,RRモータ91RL,91RRからの駆動力が解除される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる期間においても、ホイール部材93aへRL,RRモータ91RL,91RRから駆動力が連続的または断続的に付与されるようにしても良い。例えば、かかる期間において、RL,RRモータ91RL,91RRをサーボロック状態としても良い。
上記第2実施の形態では、電子キーからのIDコードを認証した際に(図16、S202:Yes)、キャンバ角調整装置45の電源をオンして(S203)、車輪2のキャンバ角を調整可能な状態とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、電子キーからのIDコードを認証し、かつ、各ドアの開扉を検出した際に、キャンバ角調整装置45の電源をオンするように構成しても良い。なお、各ドアの開扉の検出は、開閉ドアセンサ装置87(図15参照)により行う。
即ち、図16のフローチャート(待機時処理)において、S202の処理をYesで分岐した後に各ドアの開扉を検出したかを判断する処理を追加し、この追加した処理をYes(開扉を検出した場合)で分岐した場合にはS203の処理へ移行する一方、No(開扉を検出していない場合)で分岐した場合にはS203以降の処理をスキップして待機時処理を収容するように構成しても良い。
これにより、キャンバ角調整装置45の電源をオンする処理(S203)を実行する必要があるか否かの判断制度を高め、かかる処理が不必要に実行されることを抑制することができる。即ち、電子キーからのIDコードを認証した場合には、車両1の車外または車室内に電子キーの所持者がいるということであるが、その電子キーの所持者あるいは他の者の乗り降りやトランクや車室内への荷物の積み降ろしが必ずしも行われるとは限らない。一方で、各ドアの開扉が検出された場合には、その各ドアの開扉に伴って、人の乗り降りや荷物の積み降ろし、或いは、ドアの閉扉が行われる可能性が高いといえる。よって、各ドアの開扉の検出をさらに条件として追加することで、キャンバ角調整装置45の電源をオンする処理(S203)を実行要否の判断制度を高め、かかる処理の無駄な実行を抑制することができる。
上記第2実施の形態では、ドアの施錠および解錠に電子キーを用いる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の装置を用いることは当然可能である。
他の装置としては、例えば、施錠を指示するための第1の操作子(例えば、ボタン)と、解錠を指示するための第2の操作子(例えば、ボタン)とを備え、第1の操作子が操作された場合には、施錠を指示する施錠信号を送信する一方、第2の操作子が操作された場合には、解錠を指示する解錠信号を送信するリモコン装置が例示される。なお、施錠信号および解錠信号にはリモコン装置に固有のIDコードを示すIDコード信号が含まれている。
施錠信号がドアロック装置86の受信部86bに受信されると、IDコードが取り出され、ドアロック装置86が携帯するIDコードと照合される。照合の結果、IDコードが一致すれば、リモコン装置が認証され、各ドアの施錠が行われる。同様に、施錠信号がドアロック装置86の受信部86bに受信され、IDコードの一致により、リモコン装置が認証されると、各ドアの解錠が行われる。
この場合、図16のフローチャート(待機時処理)におけるS202の処理では、「リモコン装置から解錠信号を受信し、IDコードを認証したか(即ち、リモコン装置を認証したか)」を判断し、判断の結果、S202の処理をYes(リモコン装置を認証した)で分岐した場合には、S203の処理へ移行する一方、S202の処理をNo(リモコン装置を認証してない)で分岐した場合にはS203以降の処理をスキップして待機時処理を収容するように構成する。
或いは、S202の処理において、リモコン装置から解錠信号を受信し、IDコードを認証した(即ち、リモコン装置を認証した)結果、「ドアロック装置86にドア(少なくとも1のドアまたは全てのドア)が解錠されたか」を判断し、判断の結果、S202の処理をYes(ドアが解錠された)で分岐した場合には、S203の処理へ移行する一方、S202の処理をNo(ドアが解錠されていない)で分岐した場合にはS203以降の処理をスキップして待機時処理を収容するように構成する。
これらのように構成した場合にも、上記第2実施の形態の場合を同様の効果を奏することができる。なお、これら各場合には、「リモコン装置」が請求項5又は6に記載の「端末装置」に該当する。また、これら各場合のように、ドアロック装置86とリモコン装置との間の通信は、一方向であっても良い。即ち、請求項5又は6における「端末装置との間で行われる通信」とは、双方向に限定されるものではない。
上記第3実施の形態および第4実施の形態では、ホイール部材93a,493aが第1回転位置からずれたことを常動センサ装置88が検出し(S302:Yes)、車輪2のキャンバ角が実際に変化した場合に、キャンバ角調整装置345,445の電源をオンする(S303)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、常動センサ88に代えて、開閉センサ装置88(図16参照)を使用しても良い。
具体的には、図20のフローチャート(待機時処理)において、S302の処理に代えて、開閉センサ装置87によりサイドドア、トランクドア又はボンネットドアのいずれかの開扉が検出されたかを判断する処理を新たに設け、この処理を、Yes(開扉を検出した場合)で分岐した場合にはS303の処理へ移行する一方、No(開扉を検出していない場合)で分岐した場合にはS303以降の処理をスキップして待機時処理を収容するように構成しても良い。外力の作用により車輪2のキャンバ角が実際に変化される前に事前にキャンバ角調整装置345,445の電源をオンしておくことができるので、応答性を高めることができる。また、各ドアの開扉の検出は、その後に、人の乗り降りや荷物の積み降ろし、或いは、ドアの閉扉が行われる可能性が高いので、キャンバ角調整装置345,445の電源をオンする処理(S303)を実行要否の判断制度を高め、かかる処理の無駄な実行を抑制することができる。
上記第3実施の形態および第4実施の形態では、ホイール部材93a,493aのズレが検出されると(S302:Yes)、かかるホイール部材93a,493aが第1状態の初期位置に位置するように補正する場合(S305)を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ホイール部材93a,493aを一定量だけ回転させるようにしても良い。
即ち、ホイール部材93a,493aのズレが検出された場合に、かかるホイール部材93a,493aを第1状態の初期位置へ位置させるために必要な回転量(回転角)は、作用される外力の状態(例えば、外力の絶対値やその変化の仕方など)によって異なるところ、その必要とされる回転量によらず、常に一定の回転量だけホイール部材93a,493aを第1状態の初期位置へ向けて回転させる。これにより、必要とされる回転量の算出が不要となるので、応答性を高めることができる。
上記第2実施の形態から第4実施の形態では、スタートボタンがオフされ(即ち、キー位置がオフに操作され)、車輪駆動装置3を停止する際に、車輪2のキャンバ角を第1状態に調整した上で、キャンバ角調整装置45,345,445の電源をオフする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車輪2のキャンバ角を第2状態に調整した上で、キャンバ角調整装置45,345,445の電源をオフするように構成しても良い。なお、この場合には、第2状態の初期位置へホイール部材93a,393a,493aを回転させて補正する。
上記各実施の形態のいずれかの一部または全部を他の実施の形態の一部または全部と組み合わせても良い。また、上記各実施の形態のうちの一部の構成を省略しても良い。例えば、上記第2実施の形態においては、車両用制御装置200から常動センサ装置88を省略しても良く、上記第3実施の形態および第4実施の形態では、車両用制御装置200からドアロック装置86を省略しても良い。