図1及び図2は本発明の実施例1になるカッタ70を備えたサーマルプリンタ10を示す。図3(A)、(B)、(C)はサーマルプリンタ10を概略的に示す。サーマルプリンタ10は、ラインプリンティングタイプであり、且つ、クラムシェルタイプである。図4(A)、(B)はサーマルラインプリンタ10が組み込んである携帯端末機器20を示し、図5は携帯端末機器20内にサーマルラインプリンタ10が組み込んである状態を示す。X1−X2はサーマルプリンタ10の幅方向、Y1−Y2は長手方向、Z1−Z2は高さ方向である。
[サーマルプリンタ10の全体的構成及び動作]
サーマルプリンタ10は、図6に示す第1モジュール30に図8に示す第2モジュール50が分離可能に結合された構成であり、第2モジュール50が第1モジュール30に結合された状態でカッタ70が形成される構成であり、マイクロコンピュータよりなる制御回路140によって印刷及び切断が制御される構成である。カッタ70は用紙の送り方向上、印刷が行われる個所よりも下流側に配置される。
第1モジュール30は、図6に示すように、第1支持部材31に、固定刃部材120、サーマルヘッド32が固定してあるサーマルヘッド支持部材33、ヘッド圧付勢板ばね部材34、第1、第2のパルスモータ35、36、第1、第2のギヤ列37、38、プラテンローラロック部材41、42、フォトインタラプタ130等が取り付けてある構成である。
固定刃部材120は、平面板状であり、刃部120aを有し、図7に示すように、X1、X2側の凸部120b、120c及びY2側の辺に沿う凸部120d、120eを支持部材121の穴部121a〜121dに係合されて支持部材121に取り付けられており、支持部材121が第1支持部材31上にねじ止めしてある。支持部材121は薄い金属板のプレス成形品であり、Z1方向に切り起こして形成してある板ばね部121e、121f、121g及び支え片121h、121iを有する。固定刃部材120は、支え片121h、121iに支持されており、且つ、板ばね部121e、121f、121gによってZ1方向に付勢されており、図11に示すように、凸部120d、120eが穴部121c、121dに係合してある部位を中心に刃部120a側がZ1方向に押し上げられる。固定刃部材120は、板ばね部121e、121f、121gを撓ませつつZ2方向に沈み込むように変位されると撓まされた板ばね部121e、121f、121gのばね力によって固定刃部材120にはZ1方向の刃圧Fが発生する。
サーマルヘッド支持部材33は、第1支持部材31の幅に対応する大きさであり、図3(A)に示すように、Z2端部を支持部31aに支持されて狭い角度範囲内で回動可能に支持してあり、垂直面に対してY1方向に角度α傾斜している。サーマルヘッド支持部材33のY1側の面にサーマルヘッド32が固定してあり、板ばね部材34によってY1方向に押されている。
第1のパルスモータ35はプラテン回転用であり、このスピンドルのギヤは第1のギヤ列37と噛み合っている。第2のパルスモータ36は可動刃移動用であり、図9に示すように、このスピンドルのギヤ36aは第2のギヤ列38と噛み合っている。39は第1のギヤ列37の出力側の小径ギヤであり、40は第2のギヤ列38の出力側の小径ギヤである。第1のパルスモータ35及び第2のパルスモータ36は供給されるパルス数に応じた角度回動される。特に多数枚のチケット等を発行する一連の印刷動作においては、第2のパルスモータ36には後述するように情況に応じて異なるパルス数の信号が供給されて、一連の印刷動作の途中において、三点残しパーシャルカット、二点残しパーシャルカット、一点残しパーシャルカットが行われ、最後に最大のパルス数の信号が供給されてフルカットが行われる。
プラテンロック部材41、42はX1、X2側に配置してあり、プラテンロック部材41には操作レバー43が付いている。
フォトインタラプタ130は、受光部と発光部が対向する構造であり、通常は受光部は光を受光しておりオンであり、後述するラック56の一部である遮光板部56aが受光部と発光部との間に進入すると遮光されてオフとなる。フォトインタラプタ130は、可動刃部材71がY1方向に後退していることを検知する。
第2モジュール50は、図8及び図9に示すように、略U字形状の第2支持部材51に、プラテンローラ52、可動刃部材71、ギヤ列54等が取り付けてある構成である。図9は第2モジュール50を分解して示し、各部材の形状は概略的に示す。ギヤ列54及び後述するラック56、57等が、可動刃部材71を往復スライドさせる機構200を構成する。
第2支持部材51は、天板部51aと、この両側のフランジ部51b、51cを有し、略U字形状である。プラテンローラ52は、両側に突き出ている軸部52a、52bを、第2支持部材51に形成してある軸受部51d、51eに支持されている。軸部52bにギヤ55が固定してある。可動刃部材71は、平面板状であり、Y1方向側が谷のV字形状の刃部72を有し、X1側にラック56、X2側にラック57が固定してある。可動刃部材71は、ラック56、57をフランジ部51b、51cに形成してあるガイド部51f、51gに支持されており、Y1−Y2方向に移動可能である。可動刃部材71と固定刃部材120とがカッタ70を構成する。カッタ70は、三点残しパーシャルカット、二点残しパーシャルカット、一点残しパーシャルカットが可能である構成であり、そのために可動刃部材71は三つの切欠部73、74、75を有しており、その形状については後述する。可動刃部材71は、ギヤ列54は、軸部52aに支持してあるギヤ58と、ギヤ58と噛み合ってフランジ部51b上の軸59に支持されているギヤ60と、ギヤ60と噛み合っているピニオン61と、別のピニオン62とを有する。ピニオン61、62は、両側のフランジ部51b、51c間に横架してある軸部材63の両端に固定してあり、夫々ラック56、57と噛み合っている。ギヤ60とフランジ部51bとの間には、復帰用のばね64が軸59に支持されて設けてある。復帰用のばね64によって、可動刃部材71はY1方向に移動しており第2支持部材51の内部に引き込まれている。
上記のサーマルラインプリンタ10は、携帯端末機器20に図4(A)、(B)及び図5に示すように、組み込んである。携帯端末機器20は、シャーシ21と、シャーシ21を覆うケーシング22と、Y1側の軸23に支持してある開閉蓋24と、Y1側のロール紙収容部25と、ケーシング22上の操作ボタン26とを有する。第1モジュール30は、ケーシング22上、ロール紙収容部25に臨む位置に固定してある。第2モジュール50は、開閉蓋24の先端の下面に固定してある。
図4(B)及び図5中二点鎖線に示すように、開閉蓋24を開いて、感熱紙ロール80をロール収容部25内に収め、開閉蓋24を閉じると、第2モジュール50が第1モジュール30と結合されて、図4(A)及び図5図に示すようになる。即ち、プラテンローラ52の軸部52a、52bがプラテンローラロック部材41、42に係合されてロックされ、プラテンローラ52が用紙81をサーマルヘッド32に押し付けられ、用紙81の先端が出口27から外に出ている。また、可動刃部材71の刃部72が固定刃部33bに対向して、カッタ70が形成される。更には、ギヤ55が小径ギヤ39と噛み合い、ギヤ58が小径ギヤ40と噛み合う。
制御回路140がサーマルヘッド32及び第1、第2のパルスモータ35、36の駆動を制御する。
印刷指令によって、サーマルヘッド32が駆動されて発熱されると共にモータ35が駆動されて第1のギヤ列37及びギヤ55を介してプラテンローラ52が回転され、印刷された用紙部分82がカッタ70を通過して出口27から送り出される。サーマルヘッド32で発生した熱は、サーマルヘッド支持部材33を通して放熱される。印刷が終了すると切断指令によって、モータ36が駆動されて第2のギヤ列38、ギヤ列54、ピニオン61、62を介してラック56、57が駆動され、可動刃部材71がX1−X2の両側を同時に駆動されて且つX1−X2の両側をガイド部51f、51gによって案内されてY2方向にスライドし、その後にモータ36が逆方向に駆動されて可動刃部材71がY1方向にスライド復帰されて、印刷された用紙部分82が切断される。
なお、操作レバー43を操作するとプラテンローラ52の軸部52a、52bに対するロックが解除され、開閉蓋24が開かれ、感熱紙ロールが補給される。
なお、上記のカッタ70の構造は、サーマルラインプリンタ以外のプリンタにも適用可能であり、且つ、上記のようにプリンタと一体的に設けてある構成に限らず、独立した装置としてのカッタにも適用可能である。
[カッタ70の構成及び動作]
次に、カッタ70の構成について説明する。
図3(A)、(B)、(C)及び図10、図11に示すように、可動刃部材71が固定刃部材120に対向する。可動刃部材71の刃部72は図3(B)に示すようにY1方向側が谷のV字形状であるため、可動刃部材71がY2方向にスライド移動されるときに、可動刃部材71の刃部72は刃部120aとの接触は、接触個所が二個所で、夫々が点接触の状態となり、且つこの点接触の個所に所定の刃圧が作用するようになり、更に、この点接触の位置がX1−X2の両側から中心の方向に向かって移動するようになる。よって、用紙はせん断力を良好に作用されて円滑に切断される。
ここで、刃圧の発生について説明する。図11に示すように、可動刃部材71はX1−X2の両側を天板部51aによって案内されてZ1方向への変位を制限されている。よって、可動刃部材71の刃部72が刃部120aをZ2方向に押し付けると共にY2方向に擦る。これによって、固定刃部材120にはZ2方向及びY2方向に力が作用され、固定刃部材120は板ばね部121e、121f、121gを撓ませてZ2方向に僅かに変位され、固定刃部材120には、板ばね部121e、121f、121gのばね力によってZ1方向の刃圧Fが発生する。
また、可動刃部材71は、図12(A)及び図13に示すように、一対の斜辺S1、S2よりなるV字形状の刃部72を有し、且つ、このV字形状の底の部分に第3の切欠部75を有し、且つ、斜辺S1の途中に第1の切欠部73を有し、斜辺S2の途中に第2の切欠部74を有する。第3の切欠部75は、略円形であり、第1、第2の切欠部73、74は、Y1−Y2方向に長い長円形である。
図13に示すように、第1の切欠部73は、X1−X2方向の幅がW1−1である入り口部73aと、Y1方向の端であって最奥に位置する最奥縁部73bと、最奥縁部73bと入り口部73aとの間の縁部73c、73dとよりなる。縁部73c、73dは、入り口部73aよりY1方向に変位するにつれてX1−X2方向に拡がる形状となっている。即ち、縁部73c、73dの間の幅W2−1は、入り口部73aの幅W1−1よりも広く、W2−1>W1−1である。
第2の切欠部74は、上記の第1の切欠部73と同じく、幅がW1−2である入り口部74aと、最奥縁部74bと、その間の幅がW2−2である縁部74c、74dとを有する。また、W2−2>W1−2である。
第3の切欠部75は、幅がW1−3である入り口部75aと、最奥縁部75bと、その間の幅がW2−3である縁部75c、75dとを有する。また、W2−3>W1−3である。
Y1−Y2方向についてみる。YP2は最奥縁部73bの位置、YP3は最奥縁部74bの位置、YP4は最奥縁部75bの位置、YP1は第3の切欠部75の入り口部75aより若干Y1側の位置である。YP1が最もY2側に位置し、YP2はYP1よりもY1側に位置し、YP3はYP2よりもY1側に位置し、YP4はYP3よりもY1側に位置している。YP1、YP2、YP3、YP4は、Y1方向に順次並んでいる。即ち、第1、第2、第3の切欠部73、74、75は、その最奥縁部73b〜75bの位置がY1−Y2方向上ずれている。
なお、YQ1〜YQ4は、可動刃部材71を基準としてみた場合の固定刃部材120の刃部120aの位置を示す。YQ2はYP2とYP3との間、YQ3はYP3とYP4との間、YQ4はYP4よりY1側に位置している。YQ1はYP1よりY2側に位置している。
刃部72について説明する。刃部72は、第1の切欠部73よりX1側の部分の刃部72−1と、第1の切欠部73と第3の切欠部75との間の部分の刃部72−2と、第2の切欠部74と第3の切欠部75との間の部分の刃部72−3と、第2の切欠部74よりX2側の部分の刃部72−4とよりなる。刃部72−1と刃部72−4とは、図12(D)、(G)に示すように、垂直面72−1a、72−4aを有する形状である。刃部72−2と刃部72−3とは、図12(E)、(F)に示すように、Z1側にY2方向に突き出る傾斜面72−2a、72−3aを有する。この傾斜面72−2aによって、刃部72−2は、楔形状であると共に、図12(B)に示すように、刃部72−2は、X1側の端、即ち、刃部72−2のうち入り口部73aに臨む部分に、Y2方向に尖った尖状部72−2bを有する。傾斜面72−3aによって、刃部72−3は、楔形状であると共に、図12(C)に示すように、刃部72−3は、X2側の端、即ち、刃部72−3のうち入り口部73aに臨む部分に、Y2方向に尖った尖状部72−3bを有する。尖状部72−2b、72−3bは、後述するように、用紙を突き刺して用紙の切断を再度開始する機能を有する場所であり、用紙の切断の再開が円滑に開始される。
次に、カッタ70が動作して用紙を切断する動作が進行する状態について説明する。
図14(A)、(B)は動作開始前の状態を示す。図15乃至図21は可動刃部材71のY2方向にスライドした位置とそのときの用紙の切断状態とを対応させて示す。図15(A)乃至図21(A)は可動刃部材71の固定刃部材120の刃部120aに対する位置を示し、図15(B)乃至図21(B)は用紙に対する切断の進行状態を示す。可動刃部材71はYR0−1、YR0−2、YR0−1、YR0−3、YR1、YR2、YR3を経て、YR4まで移動される。なお、指令に応じて、YR1、YR2、或いはYR3が可動刃部材71の最終位置とされる。YR1、YR2、YR3と、YR4は、前記YQ1〜YQ4に対応する位置である。
図14(A)、(B)は動作開始前の状態であり、可動刃部材71はYR0−0に位置しており、用紙81は切りこまれていない。
可動刃部材71がY2方向に移動を開始すると、刃部72−1及び72−4とが固定刃部材120の刃部120aと重なって、用紙81がX1側とX2側から切断が開始される。可動刃部材71が図15(A)に示すようにYR0−1まで移動した状態では、用紙82は図15(B)に示す切断状態となる。86は切断部分である。
可動刃部材71が図16(A)に示すようにYR0−2まで移動した状態では、第1の切欠部73の入り口部73a及び第2の切欠部74の入り口部74aが刃部120aと重なって、用紙81の切断が中断され、用紙81には、図16(B)に示すように、第1及び第2の切り残し部83、84が形成され始める。第1の切欠部73の部分については、図22(B)に拡大して示す状態となる。
可動刃部材71が図17(A)に示すようにYR0−3まで移動した状態では、刃部72−2及び72−3が刃部120aと重なり始めて、用紙の切断が再開され、図17(B)に示すように、第1及び第2の切り残し部83、84が形成され、且つ、第1の切り残し部83のX2側の端から及び第2の切り残し部84のX1側の端から用紙の切断が再開される。第1の切欠部73の部分については、図22(C)に示す状態となる。
ここで、用紙の切断の再開は、用紙の端ではない部分、即ち、用紙の面から開始されることになるけれども、尖状部72−2b、72−3bが用紙を突き刺すことによって、用紙の切断の再開は円滑に開始される。なお、カッタ70が長い期間使用されたのちにおいても、用紙の切断の再開は円滑に開始される。また、再開された用紙の切断も、図15(A)に示す場合と同じく、刃圧が作用している点接触の個所が移動することによってせん断力によって行われる。よって、紙の切り粉が発生し難く、衛生的であり、例えば厨房等での使用に適する。
可動刃部材71が図18(A)に示すようにYR1まで移動した状態では、刃部72−2及び72−3が刃部120aを通過し、第3の切欠部75が刃部120aと重なって、用紙81には、図18(B)に示すように、第3の切り残し部85が形成される。用紙81は、幅方向上中央に、第3の切り残し部85、両側に、第1及び第2の切り残し部83、84が形成されている状態で切断された状態、即ち、三点残しパーシャルカット状態となる。第1の切欠部73の部分については、図22(D)に示す状態となる。
可動刃部材71が図19(A)に示すようにYR2まで移動した状態では、図22(E)、(F)に併せて示すように、第1の切欠部73の全体が刃部120a上に到り、第1の切欠部73の最奥縁部73bが可動刃と機能して第1の切り残し部83を切断し、用紙81は、図19(B)に示すように、第3の切り残し部85と第2の切り残し部84が形成されている状態で切断された状態、即ち、二点残しパーシャルカット状態となる。
可動刃部材71が図20(A)に示すようにYR3まで移動した状態では、第2の切欠部74の全体が刃部120a上に到り、第2の切欠部74の最奥縁部74bが可動刃と機能して第2の切り残し部84を切断し、用紙81は、図20(B)に示すように、第3の切り残し部85だけが形成されている状態で切断された状態、即ち、一点残しパーシャルカット状態となる。
可動刃部材71が図21(A)に示すように最終のYR4まで移動した状態では、第3の切欠部75の全体が固定刃部33b上に到り、第3の切欠部75の最奥縁部75bが可動刃と機能して第3の切り残し部85を切断し、用紙81は、図21(B)に示すように、フルカット状態となり、印刷された用紙部分82が切断される。
上記の尖状部72−2b、72−3bが存在することによって、三点残しパーシャルカットが可能であるカッタ70は長い寿命を有する。
ここで、マイコンのプログラムを適宜設定することによって、第2のパルスモータ36の駆動を自由に制御して、可動刃部材71がYR1まで移動して復帰するように、或いは、YR2まで移動して復帰するように、或いは、YR3まで移動して復帰するようにすることが可能である。
可動刃部材71がYR1まで移動して復帰した場合には、用紙81は、図18(B)に示すように、三点残しパーシャルカット状態となる。可動刃部材71がYR2まで移動して復帰した場合には、用紙81は、図19(B)に示すように、二点残しパーシャルカット状態となる。可動刃部材71がYR3まで移動して復帰した場合には、用紙81は、図20(B)に示すように、一点残しパーシャルカット状態となる。印刷された用紙部分82を引きちぎるように引くことによって、印刷された用紙部分82は用紙81から切り離される。
なお、三点残しパーシャルカット或いは二点残しパーシャルカットの場合には、印刷された用紙部分82の用紙81に対する連結が、用紙81の幅方向上離れている個所であって、且つ、複数個所であるため、強い風が当っても、印刷された用紙部分82が回転して裏返しとなることは起きない。よって、携帯端末機器20は例えば扇風機の強い風が当っている情況で厨房等で使用されて、注文のメニューの内容を印刷する場合に好適である。一点残しパーシャルカットの場合には、強い風が当った場合に、印刷された用紙部分が切り残し部を中心に回転して裏返しとなってしまって、調理人が注文のメニューを読めなくなってしまう虞れがあるけれども、三点残しパーシャルカット或いは二点残しパーシャルカットの場合には、このようなことが起きないからである。
次に、第1の切欠部73と形成された第1の切り残し部83との関係について説明する。
図22(B)乃至(D)に示すように、第1の切欠部73は形成された第1の切り残し部83に対してY2方向に移動され、第1の切り残し部83は第1の切欠部73の内部に入り込んでくる状態となる。
図13及び図22(A)に示すように、第1の切欠部73は、縁部73c、73dは、入り口部73aよりY1方向に変位するにつれてX1−X2方向に拡がる形状となっている。
このため、縁部73cは形成された第1の切り残し部83のX1側の縁83aからX1側に離れ、縁部73dは第1の切り残し部83のX2側の縁83bからX2側に離れ、縁部73c、73dは第1の切り残し部83と擦れず、第1の切り残し部83には、Y2方向の力は作用しない。よって、用紙81にはこれをねじるような無用な力は発生しない。
このことは、第2の切欠部74と形成された第2の切り残し部84との関係についても同じであり、第2の切り残し部84にもY2方向の力は作用しない。また、第3の切欠部75と形成された第3の切り残し部85との関係についても同じであり、第3の切り残し部85にもY2方向の力は作用しない。
よって、用紙81のカットは、用紙81にこれをねじるような無用な力を作用させないで行われる。
また、第1の切欠部73は最奥縁部73b、縁部73c、73d、最奥縁部73bが屈曲点を有しない湾曲している形状であるので、カット時に第1の切欠部73の縁部が固定刃部33bと接触する点の移動は円滑に行われ、第1の切欠部73の縁部が固定刃部33bにかみこむロックは起きない。第2の切欠部74、第4の切欠部75についても、同様に、縁部が固定刃部33bと接触する点の移動は円滑に行われ、第2、3の切欠部74、75の縁部が固定刃部33bにかみこむロックは起きない。
[可動刃部材71の変形例]
次に、可動刃部材71の変形例について説明する。
図23及び図24は第1の変形例になる可動刃部材71Aを示す。各図中、図12、図13に示す構成部分と対応する構成部分には同じ符号を付す。可動刃部材71Aは、第1の切欠部73A、第2の切欠部74A、第3の切欠部75Aを有する。第1の切欠部73Aは、スリット90とこの奥の舌状刃部91とよりなる。第2の切欠部74Aは、スリット100とこの奥の舌状刃部101とよりなる。第3の切欠部75Aは、スリット110とこの奥の舌状刃部111とよりなる。第1、第2の切欠部73A、74Aの入り口に臨む部分のうち、可動刃部材71Aの中央側には、尖状部72A−2b、72A−3bが形成してある。また、スリット90、100、110は、奥側の幅が入り口の幅より若干広いテーパ状となっている。舌状刃部91、101、111は、前記の最奥縁部73b、74b、75bに相当し、最奥縁部73b、74b、75bと対応する配置で配置してある。舌状刃部91、101、111は図23(D)、(E)、(F)に示すように、Z2方向にβ傾斜しており、且つ、そのY2側の縁91a、101a、111aはY1側に若干傾斜している。よって、舌状刃部91、101、111と固定刃部とは、接触が点接触であって、この点接触の場所が移動するようになり、各切り残し部83、84、85はその幅方向上一側から切断が開始されて切断される。
また、可動刃部材71Aのうちスリット90のX2側の部分92、即ち、スリット90より可動刃部材71Aの中心側の部分は、図23(B)に示すように、可動刃部材71Aのうちスリット100のX1側の部分102、即ち、スリット100より可動刃部材71Aの中心側の部分は、図23(C)に示すように、共にZ1方向にγ傾斜している。よって、可動刃部材71AがY2方向にスライドされる途中において、刃部72A−2及び72A−3の端部は固定刃部材の刃部上に円滑に乗りあがり、固定刃部材の刃部と点接触している可動刃部材の刃部が刃部72A−1から刃部72A−2へ移り変わる動作、及び、刃部72A−4から刃部72A−3へ移り変わる動作は食い込んだロックを起こさずに円滑に行われる。
図25(A)は第2の変形例になる可動刃部材71Bを示す。可動刃部材71Bは、可動刃部材71Aとは、部分92、102の形状が相違する。部分92、102は、図25(B)、(C)に示すように、そのZ2側の面が傾斜面93、103としてある。この構成によって、刃部72B−1から刃部72B−2へ移り変わる動作、及び、刃部72B−4から刃部72B−3へ移り変わる動作はロックを起こさずに円滑に行われる。
図26は第3の変形例になる可動刃部材71Cを示す。可動刃部材71Cは、可動刃部材71Aとは切欠部の数を異にし、5つの切欠部を有する構成である。切欠部の番号は、形成された切り残し部が切断される順に付す。V字形状の底の部分に、即ち、中央部に、第5の切欠部75Cを有し、且つ、斜辺S1の途中に第1の切欠部73C−1、第3の切欠部73C−2を有し、斜辺S2の途中に第2の切欠部74C−1、第4の切欠部74C−2を有する。第1、第2の切欠部73C−1、74C−1は第5の切欠部75Cの両側に位置し、第3、第4の切欠部73C−2、74C−2は夫々第1、第2の切欠部73C−1、74C−1よりも外側に位置している。YP10は第5の切欠部75Cの入り口部の位置、YP11は第1の切欠部73C−1の最奥部の位置、YP12は第2の切欠部74C−1の最奥部の位置、YP13は第3の切欠部73C−2の最奥部の位置、YP14は第4の切欠部74C−2の最奥部の位置、YP15は第5の切欠部75Cの最奥部の位置であり、Y2側からY1方向に順次並んでいる。YQ10〜YQ15は、可動刃部材71Cを基準としてみた場合の刃部120aの位置を示し、夫々YP10〜YP15よりも若干Y1側に位置している。
可動刃部材71CがY2方向にスライドされて、固定刃部材120の刃部120aの可動刃部材71Cに対する相対的な位置が移動して、YQ10に到ると、用紙81は、幅方向上両側から符号86で示す部分が切断され、図27(A)、(B)、(C)に示す状態を経て、図27(D)に示すように、第1乃至第5の切り残し部83−1、84−1、83−2、84−2、85が形成された五点残しパーシャルカット状態となる。
可動刃部材71が更にスライドして刃部120aの可動刃部材71に対する相対的な位置がYQ11に到ると、第1の切欠部73C−1の最奥縁部が第1の切り残し部83−1を切断して、用紙81は、図27(E)に示す四点残しパーシャルカット状態となる。
YQ12に到ると、第2の切欠部74C−1の最奥縁部が第2の切り残し部84−1を切断して、用紙81は、図27(F)に示す三点残しパーシャルカット状態となる。YQ13に到ると、第3の切欠部73C−2の最奥縁部が第3の切り残し部83−2を切断して、用紙81は、図27(G)に示す二点残しパーシャルカット状態となる。YQ14に到ると、第4の切欠部74C−2の最奥縁部が第4の切り残し部84−2を切断して、用紙81は、図27(H)に示すように第5の切り残し部83−1だけでつながっている一点残しパーシャルカット状態となる。YQ15に到ると、第5の切欠部75Cの最奥縁部が第5の切り残し部85を切断して、フルカット状態となる。
第1乃至第5の切り残し部83−1、84−1、83−2、84−2、85の切断の順序は、中央の切り残し部85に近い部分から、左右交互に切断され、用紙81の幅方向上両側の切り残し部が切断された後に、最後に中央の切り残し部85が切断される。即ち、複数の切り残し部は中央に近い切り残し部から、左右バランス良く切除され、よって、切り離される用紙82が帯状の用紙81の中心線に関してねじれるように回転する現象は起きず、切り残し部の切断は円滑に行われる。
次に、サーマルプリンタ10及びカッタ70の具体的な使用例について説明する。制御回路140には、使用例に応じた所定のプログラムがプログラミングしてあり、サーマルプリンタ10及びカッタ70は所定のプログラムに応じて動作する。
[クレジット決済の印刷の場合]
サーマルプリンタ10及びカッタ70は、制御回路140によって制御されつつ、(1)顧客控えの印刷、(2)第1のパーシャルカット、(3)店舗控えの印刷、(4)第2のパーシャルカット、(5)ジャーナル記録、(6)第3のパーシャルカットよりなる一連の動作を、一つのまとまった動作として行う。
第1のパーシャルカット及び第2のパーシャルカットは三点残しパーシャルカットを行い、第3のパーシャルカットは一点残しパーシャルカットを行う。
図28は上記の動作によって形成された、一組の三連印刷部200を示す。
201は顧客控え、202は店舗控え、203はジャーナル記録である。210は三点残しパーシャルカット部、211は三点残しパーシャルカット部、212は一点残しパーシャルカット部である。三連印刷部200が形成された後に、オペレータは手動操作で、三連印刷部200を用紙81から切り取る。
ここで、ジャーナル記録203と用紙81との間のパーシャルカット部も三点残しである場合には、3箇所のパーシャルカット部のつなぎ強度が等しいため、顧客控え201を引っ張った場合に、切断される個所がジャーナル記録203と用紙81との間となる保証はなく、店舗控え202とジャーナル記録203との間が切断されてしまうことも起こる。よって、オペレータは必ずジャーナル記録203をつまむ操作をする必要があり、面倒である。
しかし、前記のように、最後の部分を一点残しパーシャルカット部212とした場合には、一点残しパーシャルカット部212のつなぎ強度は三点残しパーシャルカット210、211のつなぎ強度よりも弱いため、オペレータが三連印刷部200のうちのどこをつまんでも必ず一点残しパーシャルカット部212の個所で切断され、三連印刷部200は用紙81から切り取られ、操作性がよい。
[レシートとクーポンの連続印刷の場合]
サーマルプリンタ10及びカッタ70は、制御回路140によって制御されつつ、(1)レシートの印刷、(2)第1のパーシャルカット、(3)クーポンの印刷、(4)第2のパーシャルカットよりなる一連の動作を、一つのまとまった動作として行う。
第1のパーシャルカットは三点残しパーシャルカットを行い、第2のパーシャルカットは一点残しパーシャルカットを行う。
図29は上記の動作によって形成された、一組の二連印刷部220を示す。221はレシート、202はクーポンである。230は三点残しパーシャルカット部、231は一点残しパーシャルカット部である。二連印刷部220が形成された後に、オペレータは手動操作で、二連印刷部220を用紙81から切り取る。
[団体チケット発行の場合]
図4(A)、(B)に示す携帯端末機器20を団体チケット発行機として使用する場合には、制御回路140は、図30に示す動作を行う。
先ず、携帯端末機器20の操作ボタン26の操作によって特定された、一人分のチケットの枚数n、団体を構成する人数mの関する情報を取り込む(ST1)。
次いで、Mを1にセットし(ST2)、Nを1にセットする(ST3)。
次いで印刷を指令する(ST4)。
次いで、N=nであるか否かを判断し(ST5)、判断結果がNOである場合には、切断1を指令し(ST6)、続いて、Nに1を加算し(ST7)、再度印刷を指令する(ST4)。
ST5の判断結果がYESである場合には、M=mであるか否かを判断する(ST8)。
ST8の判断結果がNOである場合には、切断2を指令し(ST9)、続いて、Mに1を加算し(ST10)、再度Nを1にセットする(ST3)。
ST8の判断結果がYESである場合には、切断3を指令する(ST11)。
ここで、切断1(ST6)においては、パルスモータ36に、可動刃部材71が図18(A)に示すようにYR1まで移動される分の個数のパルスが供給される。切断2(ST9)は、パルスモータ36に、可動刃部材71が図20(A)に示すようにYR3まで移動される分の個数のパルスが供給される。切断3(ST11)は、パルスモータ36に、可動刃部材71が図21(A)に示すようにYR4まで移動される分の個数のパルスが供給される。
4人分の団体チケットを発行する場合、即ち、n=1、m=4である場合には、サーマルプリンタ10及びカッタ70は、制御回路140によって制御されつつ、(1)第1番目の人用のチケットの印刷、(2)第1のパーシャルカット、(3)第2番目の人用のチケットの印刷、(4)第2のパーシャルカット、(5)第3番目の人用のチケットの印刷、(6)第3のパーシャルカット、(7)第4番目の人用のチケットの印刷、(8)フルカットよりなる一連の動作を、一つのまとまった動作として行う。
図31は上記の動作によって形成された、一組の四連印刷部よりなる4人分の団体チケット240を示す。241は第1番目の人用のチケット、242は第2番目の人用のチケット、243は第3番目の人用のチケット、244は第4番目の人用のチケットである。250、251、252は三点残しパーシャルカット部、253はフルカット部である。団体チケット240は別の団体チケットと連ならないようにするためにフルカットされて自動で用紙81から切り離される。
1人につき2枚綴りのチケットよりなる4人分の団体チケットを発行する場合、即ち、n=2、m=4である場合には、サーマルプリンタ10及びカッタ70は、制御回路140によって制御されつつ、以下の(1)〜(15)の一連の動作を、一つのまとまった動作として行う。図32はこの動作によって形成された、一組の八連印刷部よりなる4人分の団体チケット260を示す。
動作(1)は第1番目の人用の第1番目のチケットの印刷であり、チケット271が形成される。動作(2)は第1のパーシャルカットであり、三点残しパーシャルカット部280が形成される。動作(3)は第1番目の人用の第2番目のチケットの印刷であり、チケット271が形成される。動作(4)は第2のパーシャルカットであり、一点残しパーシャルカット部281が形成される。動作(5)は第2番目の人用の第1番目のチケットの印刷であり、チケット273が形成される。動作(6)は第3のパーシャルカットであり、三点残しパーシャルカット部282が形成される。動作(7)は第2番目の人用の第2番目のチケットの印刷であり、チケット274が形成される。動作(8)は第4のパーシャルカットであり、一点残しパーシャルカット部283が形成される。動作(9)は第3番目の人用の第1番目のチケットの印刷であり、チケット275が形成される。動作(10)第5のパーシャルカットであり、三点残しパーシャルカット部284が形成される。動作(11)は第3番目の人用の第2番目のチケットの印刷であり、チケット276が形成される。動作(12)は第6のパーシャルカットであり、一点残しパーシャルカット部285が形成される。動作(13)は第4番目の人用の第1番目のチケットの印刷であり、チケット277が形成される。動作(14)は第7のパーシャルカットであり、三点残しパーシャルカット部286が形成される。動作(15)は第4番目の人用の第2番目のチケットの印刷であり、チケット278が形成される。最後の動作(16)はフルカットであり、フルカット287が形成され、一組の八連印刷部よりなる4人分の団体チケット260は自動で用紙81から切り離される。
4人分の団体チケット260は第1番目の人の2枚綴りのチケット261と、第2番目の人の2枚綴りのチケット262と、第3番目の人の2枚綴りのチケット263と、第4番目の人の2枚綴りのチケット264とよりなる。各番目の人の2枚綴りのチケットは三点残しパーシャルカット部でつながっているのに対して、各番目の人の2枚綴りのチケット261〜264の間は、一点残しパーシャルカット部281、283、285であるため、2枚綴りのチケット261〜264を各人に分ける切り離し操作は容易である。
なお、図26に示す可動刃部材71Cを備えた構成である場合には、切断1を図27(D)に示す五点残しパーシャルカット、切断2を図27(F)に示す三点残しパーシャルカット、切断3を図27(I)に示すフルカット状態とすることも可能である。