JP2012004131A - リチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円形度が0.85以上である天然黒鉛に対して、高分子材料を溶媒に溶解し、黒鉛に添着させた後、乾燥させ、高分子材料を天然黒鉛に添着することを特徴とする黒鉛粒子の製造方法。
【選択図】なし
Description
その負極活物質としては、最初はリチウム金属を用いることが試みられたが、充放電を繰り返すうちにデンドライト状のリチウムが析出してセパレータを貫通し、正極にまで達し、短絡を起こす可能性があることが判明した。そのため、現在では、充放電過程において、リチウムイオンを層間に出入りさせ、リチウム金属の析出を防止できる炭素材料を負極活物質として使用することが注目されている。
一方、非水系電解液の溶媒としては、高誘電率溶媒であるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどで代表される環状カーボネート類や、低粘度溶媒であるジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類が、単独又は混合して用いられている。特に高誘電率溶媒と低粘度溶媒とを混合して用いることが多く、電解質として、例えばLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2などが単独で、又は2種以上組合せて用いられる。
また、特許文献2には、負極用黒鉛粒子がリン状または、リン片状の天然黒鉛粒子からなる塊状黒鉛粒子群で構成され、塊状黒鉛粒子群がレーザー光回折法による累積50%径(D50径)、窒素ガス吸着法による比表面積、静置法による見掛け密度及びタップ法による見掛け密度が特定の範囲にあり、タップ法による見掛け密度と静置法による見掛け密度が特定の割合にあり、さらに、ラマン分光分析の1350cm−1付近に現れるDピークと1580cm−1付近に現れるGピークの面積強度比(ID/IG)が特定の範囲にある非水系二次電池の負極用黒鉛粒子を用いることで、充電時に黒鉛表面でプロピレンカーボネートやγ―ブチロラクトンが分解し充放電効率が低下するのを抑制することが記載されている。又、該特許文献2には、かかる黒鉛粒子群にC6H10O5を基本構造から誘導される界面活性剤を0.1〜5重量%吸着または被覆することで不可逆容量を低減することが記載されている。
(1)負極における負極材料が、負極活物質である黒鉛に一種以上の高分子材料が添着されてなり、かつ円形度が0.85以上である負極材料(A)を含み、
(2)非水電解液中にプロピレンカーボネート及び不飽和結合を有するカーボネートを含有する、
ことを特徴とするリチウム二次電池、に存する。
[リチウム二次電池]
本発明のリチウム二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウム二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質及びこれを溶解する非水溶媒を備える。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
(活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物などの遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物、NiPS3、FePS3等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe2、NbSe3などの遷移金属のセレン化合物、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2などの遷移金属の複合酸化物、LiCoS2、LiNiS2などの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
正極活物質を結着するバインダとしては、公知のものを任意に選択して用いることができる。例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン等の不飽和結合を有さない樹脂などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、不飽和結合を有さない樹脂である。正極活物質を結着する樹脂として不飽和結合を有する樹脂を用いると酸化反応時に分解される恐れがある。これらの樹脂の重量平均分子量は通常1万以上、好ましくは10万以上、また、通常300万以下、好ましくは100万以下の範囲である。
正極は、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。溶剤としては、N−メチルピロリドンや水などが挙げられる。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、SUSなどが挙げられ、集電体の厚さは、通常5μm以上、好ましくは9μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
負極は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、活物質層が、負極材料と、通常バインダを含有するが、本発明のリチウム二次電池は、負極における負極材料が下記に記載の本発明の負極材料(A)を含む。
(負極材料)
本発明の負極材料(A)は、リチウム二次電池の負極活物質として利用されるリチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛であって、その黒鉛は、一種類以上の高分子材料が添着されたものであり、高分子材料が添着された状態の黒鉛の円形度が0.85以上である。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでも良いが、原料価格、黒鉛表面特性の点で天然黒鉛が好ましい。
円形度=(相当円の周囲長)/(粒子投影面積を持つ円の周囲長)
円形度の値としては、例えば、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックスインダストリアル社製FPIA)を用い、測定対象(ここでは黒鉛、又は高分子材料が添着された黒鉛である負極材料)0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2体積%水溶液(約50ml)に混合し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が10〜40μmの範囲の粒子について測定した値を用いることができる。
Hgポロシオメトリーの装置及び手順の具体例としては、下記に示す装置及び手順が挙げられる。
尚、上記黒鉛の円形度は、黒鉛が凝集している場合には、二次粒子の円形度を意味する。
本発明では、負極材料として高分子材料が添着された黒鉛を用いる。高分子材料の種類は特に制限されないが、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の体積比で混合した溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液(以下適宜「基準電解液(B)」という。)に対する溶解性を指標として、下記手法に従って基準電解液(B)に対し溶解しやすい高分子材料(C−1)(以下、適宜「高分子材料(C−1)」という。)と基準電解液(B)に対して溶解しにくい高分子材料(C−2)(以下、適宜「高分子材料(C−2)」という。)に分けられる。本発明の高分子材料が添着された黒鉛は、1種以上の高分子材料(C−1)および/または1種以上の高分子材料(C−2)のどちらか一種以上が添着されている黒鉛である。
又、極板強度が高く、浸液性が良好で、初期不可逆容量が小さく、高い電流密度充放電特性に優れ、サイクル維持率が高い点からは、2種以上の高分子材料、特に1種以上の高分子材料(C−1)及び1種以上の高分子材料(C−2)が黒鉛に添着されていることが好ましい。
本発明の負極材料(A)を製造する方法は特に制限されず、黒鉛に高分子材料を添着させることができれば良い。但し、高分子材料が添着された黒鉛の円形度が本発明の範囲を満足するためには、原料の黒鉛として前記に記載の好ましい円形度の黒鉛を使用するのが製造上好ましい。又、異なる溶解性の二種の高分子を添着する場合、上述した構造を有する負極材料を少ない工程で効率よく確実に製造するためには、黒鉛に対して、まず1種類以上の高分子材料(C−1)を先に添着させ(第1添着工程)、その後で、高分子材料(C−2)を添着させる(第2添着工程)という、少なくとも二段階の工程からなる方法が好ましい。なお、第1添着工程と第2添着工程とは明確に分かれた工程である必要はなく、連続的に実施される工程であっても構わない。
(i)黒鉛と高分子材料(C−1)又は(C−2)とを粒子状態で単に混合する手法。
(ii)黒鉛と高分子材料(C−1)又は(C−2)とを混合するとともに、機械的な衝撃によって添着又は融着させる手法。
(iii)高分子材料(C−1)又は(C−2)を溶媒に膨潤,分散,溶解し、これを黒鉛に添着させた後、乾燥させる手法。
これら(i)〜(iii)の手法は、何れか一種を単独で実施しても良く、二種以上を適宜組み合わせて実施しても良い。
上記の如き黒鉛に高分子材料が添着された本発明の負極材料(A)は、その円形度が0.85以上であり、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上であり、通常0.99以下、好ましくは0.97以下、より好ましくは0.95以下である。
下限を下回ると扁平に近い形となるため、低温放電効率が低下してしまうので好ましくない。また、大きすぎると粒子間の接触抵抗が増大し、充放電サイクル特性が低下してしまう傾向にある。
尚、高分子材料が添着された本発明の負極材料(A)の円形度は、負極材料が凝集している場合には、高分子材料が添着された二次粒子の状態での円形度を意味する。
本発明の負極材料(A)には、上記の黒鉛、高分子材料の他に、架橋材を使用しても良い。特に黒鉛に高分子材料(C−2)が添着している場合には、架橋材により、高分子材料(C−2)の側鎖及び主鎖の一部の官能基を結合させることで、高分子材料(C−2)のネットワーク構造を発達させ、添着後に分子量を変化させることが可能となる。この効果によって耐電解液性を向上させる作用を発現し、初回充放電効率を向上させるはたらきがある。架橋材の種類は特に制限されず、併用する高分子材料(C−2)の種類に応じて適切なものを選択すれば良い。具体的に、高分子材料(C−2)としてポリビニルアルコールを用いる場合、好ましい架橋材の例としては、グリオキサザール、Ti,Zrなどの有機金属錯体及びこの誘導体が挙げられる。但し、使用できる架橋材の種類はこれに限定されるものではなく、例えば、高分子材料(C−2)の有する官能基の種類によっては、更に他の架橋材の使用も可能となる。なお、架橋材は何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
尚、黒鉛に高分子材料を添着した段階で、BET法にて測定した比表面積の減少が見られることが好ましい。具体的には、高分子材料の添着前における黒鉛のBET比表面積と比較して、高分子材料の添着後におけるBET比表面積が、通常10%以上、中でも25%以上減少することが好ましい。なお、高分子材料の添着前における黒鉛のBET法による比表面積の絶対値は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、また、通常20m2/g以下、好ましくは10m2/g以下の範囲である。又、高分子材料添着後の黒鉛のBET法による比表面積の絶対値は、通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下の範囲である。
上述した本発明の負極材料(A)は、何れか一種を単独で、又は二種以上を任意の組成及び組み合わせで併用して、リチウム二次電池の負極材料として好適に使用することができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した本発明の負極材料(A)の一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上の負極材料(E)と混合し、これをリチウム二次電池の負極材料として用いても良い。
上述の負極材料(A)に負極材料(E)を混合する場合、負極材料(A)と負極材料(E)の総量に対する負極材料(E)の混合割合は、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下の範囲である。負極材料(E)の混合割合が多すぎると、負極材料(A)の特性が現れ難い傾向がある。
バインダとしては、通常、分子内にオレフィン性不飽和結合を有するものを用いる。その種類は特に制限されないが、具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などが挙げられる。このようなオレフィン性不飽和結合を有するバインダを用いることにより、活物質層の電解液に対する膨潤性を低減することができる。中でも入手の容易性から、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダに対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、通常150重量%以下、好ましくは120重量%以下の範囲である。オレフィン性不飽和結合を有さないバインダを併用することにより、塗布性を向上することができるが、併用量が多すぎると活物質層の強度が低下する。
本発明の負極は、上述の本発明の負極材料(A)とバインダ及び必要に応じて用いられる負極材料(E)とを分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布することにより形成される。分散媒としては、アルコールなどの有機溶媒や、水を用いることができる。このスラリーには更に、所望により導電剤を加えてもよい。導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、平均粒径1μm以下のCu、Ni又はこれらの合金からなる微粉末などが挙げられる。導電剤の添加量は、本発明の負極材料に対して通常10重量%以下程度である。
スラリーを集電体上に塗布した後、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
本発明のリチウム二次電池用負極の浸液性の上限は、通常25秒以下、好ましくは22秒以下、より好ましくは20秒以下である。
この上限を上回るとリチウムイオン二次電池の製造工程で注液の段階が律速となり、多くの設備投資や、製造上の時間的損失が生じるという問題がある。
ただし、ここで述べた浸液性は、本明細書の実施例中に記載の評価法により測定される。
電解質としては、通常リチウム塩が使用され、この用途に用い得ることが知られている公知のリチウム塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiClO4、LiBrO4、LiClO4などの過ハロゲン酸塩、LiPF6、LiBF4、LiAsF6などの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiC4F9SO3などのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CF3SO2)2NLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常0.5M以上、2.0M以下の範囲である。
本発明に係る非水系電解液はプロピレンカーボネート及び不飽和結合を有するカーボネートを含有することを特徴としている。
不飽和結合を有するカーボネートとしては、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等の環状カーボネート、またはアリルメチルカーボネート化合物、ビニルメチルカーボネート、ジアリルカーボネート等の鎖状カーボネートが挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、サイクル特性向上の点から、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
不飽和結合を有するカーボネートは、負極の表面に安定な保護被膜を形成するため、電池のサイクル特性を向上させることができ、又、上記本発明の負極材料を含む電池において、電解液がプロピレンカーボネートと共に不飽和結合を有するカーボネートを有することにより、初期不可逆容量及び低温放電効率が良好となる。
非水電解液に対するプロピレンカーボネートの含有率は、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上が望ましく、通常95体積%以下、好ましくは70体積%以下、より好ましくは50体積%以下が望ましい。少なすぎるとプロピレンカーボネートを含有することによる低温での高電流密度充放電特性の向上効果が小さくなってしまう。多すぎるとプロピレンカーボネートの分解が無視できなくなり、不可逆容量の増加が問題となってくる。
本発明の非水電解液は、プロピレンカーボネート及び不飽和結合を有するカーボネート以外に、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択し併用しても良い。併用してもよい溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類(但し、プロピレンカーボネートを除く);1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
又、併用しても良い上記溶媒の非水電解液に対する含有割合(体積%)は、通常、95.5%以下、好ましくは90%以下であり、通常4.5%以上である。多すぎると低温高電流密度充放電特性が低下する問題があり、少なすぎると併用する効果がほとんど認められないこととなる。
特許文献1記載のとおり、負極活物質表面に樹脂を添着することで、炭素負極と非水電解質層との濡れ性(浸液性)が向上すること、プロピレンカーボネートの分解が抑制されることが知られているが、実製造ラインにおいてまだ、この浸液性では十分とはいえない。一方、電解液中にプロピレンカーボネートに代えてビニレンカーボネートを加えることでも浸液性の向上を図ることが可能であるが、この場合も、未だ十分な浸液性とはいえない。これに対して、その理由の詳細は不明なるも、黒鉛を活物質とする場合には、樹脂添着により円形度を0.85以上とし、かつ非水電解液中に、プロピレンカーボネートとビニレンカーボネートの如き不飽和カーボネートを含むことにより、浸液性が相乗的に良好となり、かつ、プロピレンカーボネートの分解を抑制し、低温放電効率を維持しつつ、初期不可逆容量の増大が抑制されたリチウム二次電池となる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
(負極材料)
高分子材料(C−1)としてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製BSH6)1gを、純水199gに加えて溶解させた。この溶液中に、天然黒鉛として比表面積5.8m2/g、平均粒径23μm、円形度(0.93)の球形化天然黒鉛粒子200gを加え、容積0.75Lのステンレス容器中で、ホモディスパーザーを用いて2時間、攪拌・混合した。得られた混合物を、1.5cmの高さとなるようにステンレスバットに入れ、N2ガス中、110℃で10時間乾燥した。これを篩い、高分子材料1層添着負極活物質粒子とした。これを、実施例1の負極材料とした。
得られた負極材料について、以下の手順により、BET法による比表面積を測定した。これらの結果を表2に示す。
BET比表面積は、自動表面積測定装置(AMS8000:大倉理研社製)を用いて、BET1点法(窒素ガス吸着)にて測定した。試料(負極材料)を、0.8g前後の値となるよう正確に秤量し、専用セルに入れて装置に装着した。100℃に加熱、測定用ガス(窒素30%、ヘリウムバランス)をフローさせて30分間前処理を行った。前処理終了後、セルを液体窒素温度まで冷却し、上記ガスを飽和吸着させ、その後室温まで試料を加熱してTCDにて脱離したガス量を計測した。得られたガス量と測定後のサンプル重量から、BET1点法を用いて比表面積を算出した。
上記負極材料と、バインダとして、カルボキシメチルセルロースの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースの濃度1重量%)10g、及び、不飽和度75%のスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50重量%、スチレン−ブタジエンゴムの分子量12万)0.2gとを、ハイスピードミキサーを用いて混合し、スラリーとした。このスラリーを銅箔(集電体)上にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。これをロールプレスにより線密度20〜300kg/cmでプレスすることにより、活物質層を形成した。乾燥後の活物質層の重量は10mg/cm2、密度は1.6g/ml、平均電極厚みは68μmであった。以上の手順により作製された負極(リチウム二次電池用負極)を、実施例の負極とする。
上述の(負極の作製)で作製したリチウム二次電池用塗工電極を直径12.5mmの円盤状に打抜き、110℃で減圧乾燥して、測定用サンプルを作製した。このサンプルを水平になるように固定し、この上にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネートの体積比が50:45:5である電解液をマイクロシリンジにて5μl滴下した。滴下から液滴の消失までの時間を目視にて測定し、この時間の短さにより浸液性の良否を評価した。結果を表2に示す。
負極材料100重量部に、スチレン−ブタジエンゴムの50%水分散液2重量部、及びカルボキシメチルセルロースの1%水溶液100重量部を加えて混練し、スラリーとした。銅箔上にこのスラリーをドクターブレード法で塗布した。110℃で乾燥した後、ロールプレスにより、負極層の厚さが65μm、密度が1.63g/mlとなるように圧密化した。これを直径12.5mmの円盤状に打抜き、190℃で減圧乾燥して負極とした。この負極と、リチウム金属板(対極 0.5mm厚 14φ)とを、プロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネートの2:3:5(体積%である)の混合物に、これに対して1重量%のビニレンカーボネート及び0.8MのLiPF6を混合した電解液を含浸させたセパレータを介して重ねて、充放電試験用の半電池を作製した。この半電池に0.2mAの電流で0.01V(Li/Li+)まで充電(=負極へのリチウムイオンのインターカレーション)を行ない、更にこの電圧で負極層1g当りの電流容量が350mAhrとなるまで充電した。次いで、0.4mAの電流で1.5Vまで放電し、充電量と0.8Vまでの放電量の差を初期不可逆容量(mAh/g)とした。
0.2mAの電流で0.005Vまで充電し、更に0.005Vで電流が0.02mAとなるまで充電した後、0.215mAで1.0Vまで放電した。この時の放電量を0.2C放電容量とした。引き続き0.2mAの電流で0.005Vまで充電し、更に0.005Vで電流が0.02mAとなるまで充電後、0.86mAで、1.0Vまで放電した。このときの放電量を0.5C放電容量とした。高電流密度放電効率は、次の式から算出した。
低温高電流密度放電効率(%)=0.5C放電容量/0.2C放電容量
実施例1において、球形化された天然黒鉛に対して高分子材料を添着せずに、そのまま負極活物質として用いた以外同様にしての負極活物質の作成を行った。尚、浸液速度測定用電解液には、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートの体積比が50:50である電解液を用いた。又、実施例1において電解液に対してビニレンカーボネートを添加しない以外は、同様の手順によって負極およびリチウム二次電池を作成した。評価結果を表2に示す。
この表2の示すとおり、本発明の樹脂添着を実施していないこと及びビニレンカーボネートを使用していないため、電極内への電解液の浸液性が不十分であるという問題がある。
実施例1において、球形化された天然黒鉛に対して高分子材料を添着せずに、そのまま負極活物質として用いた以外は、同様の手順によって負極およびリチウム二次電池を作成した。尚、浸液速度測定用電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネートの体積比が50:45:5である電解液を用いた。
評価結果を表2に示す。
この表2の示すとおり、負極材料の黒鉛が樹脂添着されていないため、プロピレンカーボネート分解に起因する初期不可逆容量の問題と電極内への電解液の浸液性が不十分であるという問題がある。
実施例1の浸液速度測定用電解液には、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートの比が50:50である電解液を用いた。実施例1において電解液にビニレンカーボネートを添加しない以外は、同様の手順によって負極およびリチウム二次電池を作成した。評価結果を表2に示す。
この表2の示すとおり、非水電解液がビニレンカーボネートを含有していないため、プロピレンカーボネート分解に起因する初期不可逆容量の問題と電極内への電解液の浸液性が不十分であるという問題がある。
円形度0.93の球形化天然黒鉛粒子に代えてリン片状黒鉛(円形度0.82)を用いた以外は、実施例1と同様の手順によって負極およびリチウム二次電池を作成した。評価結果を表2に示す。
この表2の示すとおり、負極材料が球形化されていないため、プロピレンカーボネート分解に起因する初期不可逆容量の問題がある。
実施例1において、浸液速度測定用電解液には、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートの体積比が55:45である電解液を用いた以外は、同様の手順によって負極およびリチウム二次電池を作成した。評価結果を表2に示す。
この表2の示すとおり、本発明のビニレンカーボネートの代わりにプロピレンカーボネートが加算されているため、電極内への電解液の浸液性の不十分であるという問題がある。
Claims (8)
- 円形度が0.85以上である天然黒鉛に対して、高分子材料を溶媒に溶解し、黒鉛に添着させた後、乾燥させ、高分子材料を天然黒鉛に添着することを特徴とする黒鉛粒子の製造方法。
- 上記円形度が0.85以上である天然黒鉛が球形化を施したものである請求項1に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 天然黒鉛のBET比表面積が3.5m2/g以上8m2/g以下である請求項1又は請求項2に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 上記高分子材料が、対象となる高分子材料を良溶媒に溶解させた後に、剥離可能な基盤上に乾燥後の厚さが約100μmとなるようキャストし、不活性ガス下で乾燥した後、直径12.5mmに打ち抜いて得られたサンプルを、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した溶媒に1MのLiPF6を溶解させた基準電解液(B)に浸して、常温・常圧条件下、Arガス雰囲気下の密閉容器中で静置し、1日後のサンプルの面積に対する90日後のサンプルの面積の減少率が3%以上である高分子材料を1種以上含むものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 上記高分子材料が添着された天然黒鉛の円形度が0.85以上である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 黒鉛粒子が、非水電解液中に不飽和結合を有するカーボネートを含有する電解液を備えるリチウム二次電池用である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 更に、非水電解液中にプロピレンカーボネートを含有する請求項6に記載の黒鉛粒子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の黒鉛粒子の製造方法で得られた黒鉛粒子を用いた負極、正極、電解質、及び、非水電解液を備えることを特徴とするリチウム二次電池。
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