JP2012001462A - 抗体精製用カラム - Google Patents

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Abstract

【課題】効率よく抗体精製が行える、簡便に製造可能なカラムを提供する。
【解決手段】抗体結合能を有するタンパク質(例えばプロテインA)が固定化された無機モノリス、エポキシ基を導入した無機モノリスに、前記タンパク質溶液を接液することにより、当該タンパク質がアミノ基またはチオール基を介して固定化する無機モノリスの製造方法、前記無機モノリスからなる吸着体および前記吸着体を備えた、高線速において高吸着能を有する、抗体精製用アフィニティークロマトグラフ。
【選択図】図1

Description

本発明は、抗体精製用カラムに関する。
アフィニティークロマトグラフィー用吸着体(adsorbent)は、効率良く目的物を精製、または不要物濃度を低減できることから、抗体医薬品精製用の吸着体として利用されてきている。
アフィニティークロマトグラフィー用吸着体としては、抗体結合能を有するタンパク質(以下、抗体結合性タンパク質という)、例えば、Staphylococcus aureus由来プロテインA、もしくはその配列を改変したタンパク質をリガンドとし、これを球状の多孔質担体(ビーズ)の表面に固定化(化学的に修飾)した充填材があり、これをカラム内に均一に充填して使用される。多孔質担体としては、シリカゲル、アガロースゲル、セルロースゲル等が知られている。
抗体医薬品市場は近年大きく成長しており、これに伴って、抗体医薬品精製の処理能力の向上が求められている。高線速でも高い抗体結合能を示すカラムがあれば、精製時間を短縮でき、精製処理能力を格段に向上させることができる。しかしながら、従来の粒子充填カラムには、高線速にすると抗体結合能が低下する、或いは、高線速で圧密化を起こすという欠点があった。
これに対し、無機モノリス(またはシリカモノリス)と呼ばれる、マイクロメーターサイズの連続細孔とナノメーターサイズのメソ孔を有する無機系多孔質連続体は、低負荷圧で高分離能のカラムの作製が可能であり、上記欠点を補いうる多孔質担体として注目される。無機モノリスに抗体結合性タンパク質を固定化した例としては、特許文献1が知られている。
実用新案登録第3149787号
特許文献1には、抗体結合性タンパク質を固定化する方法として、無機モノリスにアミノ基を導入し、これにタンパク質を結合させる方法が記載されている。しかし、タンパク質を結合させるための詳細な記載はない。実施例には、例えば、無機モノリスにアミノ基を導入したのち、これをプロテインAの緩衝液に浸漬してプロテインAを固定化する、一見簡便な方法が記載されている。しかし、実際のところは、当該方法ではタンパク質の固定化は困難であって、更なる操作が必要である。
例えば、アミノ基に対してプロテインA(リガンド)を固定化するには、通常、プロテインAのアスパラギン酸残基もしくはグルタミン酸残基のカルボキシ基、あるいは、カルボキシ末端を利用して、アミノ基とアミド結合を形成させる。しかし、このアミド結合形成反応には、活性化剤もしくは脱水縮合剤を使用するなど、アミド結合の形成を促進する何らかの工程を設けることが当業者の一般常識である。
従って、特許文献1に記載された方法で固定化反応を進行させるためには、通常、カルボキシ基が活性化された特別なプロテインA誘導体を使用しなければならない。更には、カルボキシ基が活性化されたプロテインA誘導体を使用する場合(或いは、カルボキシ基を活性化して固定化反応を行う場合)であって、活性なアミノ基を有するリジン残基が含まれていた場合、リガンド同士でアミド結合を形成する副反応が起こる。従って、特許文献1の方法は、抗体結合性タンパク質のうち、例えば、一般的なリジン残基を含む種、或いは、システイン残基(アミノ基と同様に活性なチオール基が存在する)を含む種に対しては、適切ではない。プロテインAをはじめとする抗体結合性タンパク質は非常に高価であるため、このようなタンパク質同士の副反応は、製造者にとって大変なデメリットである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率よく抗体精製が行える、簡便に製造可能なカラム、および、その利用技術を提供することである。
本発明者らは、効率よく抗体精製が行える、簡便に製造可能なカラムについて鋭意検討した。その結果、例えば、エポキシ基を導入した無機モノリスにタンパク質の溶液を接液することにより、タンパク質同士の副反応も無く、容易にタンパク質を固定化できることを見出した。すなわち、本発明は、以下のものを包含する。
本発明は、抗体結合能を有するタンパク質が、当該タンパク質のアミノ基またはチオール基を介して固定化された無機モノリスに関する。無機モノリスは、下記式1及び/又は式2で表される基を有するのが好ましい。
−CH(OH)−CH−NH−X ・・・(1)
−CH(OH)−CH−S−X ・・・(2)
(式中、Xは抗体結合能を有するタンパク質を示す)
また前記タンパク質はリジン残基及び/またはシステイン残基(特にリジン残基)を含むことが好ましく、更には、プロテインAであることが好ましい。
本発明の他の態様としては、前記無機モノリスから構成されるアフィニティークロマトグラフィー用吸着体がある。
本発明のその他の態様としては、前記吸着体を備えたアフィニティークロマトグラフがある。
本発明の更に他の態様としては、上記吸着体を用いた精製方法がある。この精製方法においては、前記吸着体に抗体含有液を接液して、当該抗体を前記タンパク質に結合させた後、水溶性の有機溶媒と水を含むpH=4〜9の溶液で洗浄を行うことが好ましい。
本発明の別の態様としては、抗体結合能を有するタンパク質が固定化した無機モノリスの製造方法であって、表面にエポキシ基が導入された無機モノリスに、タンパク質溶液を接液して固定化することを特徴とする製造方法がある。前記タンパク質溶液のpHは7〜11が好ましく、緩衝液を用いるのが好ましい。前記タンパク質はリジン残基を含むことが好ましく、更には、プロテインAであることが好ましい。
本発明のさらに別の態様としては、水溶性の有機溶媒と水を含む溶液に接液した後、タンパク質の固定化を行う方法がある。
無機モノリスに、抗体結合能に優れた各種タンパク質(例えばプロテインA)が固定化された本発明にかかるタンパク質固定化無機モノリスにおいては、高線速でも良好な抗体結合能を得ることができる。このため、効率よく精製が行え、アフィニティークロマトグラフィーや抗体精製に好適に使用することができる。
また、表面にエポキシ基が導入された無機モノリスに、タンパク質溶液を接液して固定化する本発明の製造方法によれば、無機モノリスに、例えば、リジン残基(或いはシステイン残基)が存在したとしても、副反応無く固定化することが可能となる。
更には、固定化反応の前に無機モノリスを、水溶性の有機溶媒と水を含む溶液に接液することによって、無機モノリスへのタンパク質の固定化収率を高位安定化することができる。
また、中間洗浄を実施することで、特に、水溶性の有機溶媒と水を含むpHが4〜9の溶液で中間洗浄を実施することで、抗体の精製純度を高めることができる。
実施例3に係るタンパク質固定化無機モノリス、及び、市販品アフィニティークロマトグラフィー用吸着体(ビーズ)の動的結合容量(dBC)を線速度に対して表した図である。 実施例4に係る、タンパク質固定化無機モノリスの非特異吸着レベルを表すUVピーク高さと中間洗浄条件の相関を示す図である。
以下に、本発明にかかる、抗体結合能を有するタンパク質が、当該タンパク質のアミノ基またはチオール基を介して固定化された無機モノリスについて説明する。
本発明における抗体結合能を有するタンパク質とは、精製しようとする抗体に対して結合能力を有するタンパク質であればよく、そのような能力を有する限りにおいては特に制限されるものではない。
ここで、本発明において、抗体とは、抗原と呼ばれる物質に特異的に結合する機能、および、他の生体分子や細胞と協同して抗原を有する因子を無毒化・除去する機能を有するものを意味する。なお、抗体という名は、このような抗原に結合するという機能を重視した名前であり、物質としては免疫グロブリン(Ig)と呼ばれている。
抗体としては、例えば、一般的に、市販の、抗体医薬と呼ばれる抗体が挙げられる。そのような抗体は、モノクローナル抗体と呼ばれる、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた単一種の分子が中心であり、免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれるクラスに所属する分子がほとんどであるが、本発明においてはこれらに限定されるものではなく、以下のような抗体誘導体も含まれる。例えば、抗体医薬として市販されているIgGの分子構造として、完全にヒト由来のIgGに一致するものもあるが、ヒト由来IgGの一部のドメインを他生物種のIgGのドメインに置き換えて融合させたキメラ型IgGや、アミノ酸変異や糖鎖改変を施して安定性や機能を改良した改変型IgGも含まれる。さらに、免疫グロブリンの一部を断片化・再構築するなどの分子改変を施した低分子化抗体(部分抗体、ドメイン抗体)も含まれる。低分子化抗体としては、例えば、抗体を単純に断片化したFab、F(ab')、および、断片化して再構築した、scFv、diabody、triabody、minibodyが挙げられる。さらに、他生物種の特殊な免疫グロブリン構造を利用した、ラクダ由来VHH抗体、サメ由来V−NAR抗体などあるが、本明細書においては、これらの誘導体もすべて含まれるものとする。
本発明において、タンパク質とは、ペプチド構造を有するあらゆる分子を含むものであって、天然型タンパク質だけでなく、天然型タンパク質の部分的断片や天然型の配列を人為的に改変した変異体を含むものとする。例えば、抗体結合ドメイン及びその変異体を含むもの、融合タンパク質等であってもよい。また、菌体抽出物もしくは培養上清より、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー及び膜分離技術を用いた分子量分画、分画沈殿法等の手法から選択される精製法を組合せ、および/または繰り返すことにより製造された、タンパク質を用いることもできる。
抗体結合性タンパク質としては、具体的には、特許文献1に挙げられたタンパク質、例えば、Staphylcoccus aureus由来のプロテインA、Streptococcus sp. Group C/G由来のプロテインG、Peptostreptococcus magnus由来のプロテインL、group A Streptococcus由来のプロテインH、Haemophilus influenzae由来のプロテインD、Streptococcus AP4由来のプロテインArp、group C Streptococcus由来のStreptococcal FcRc等が知られている。
本発明においては、抗体結合性タンパク質として、目的とする抗体結合性を有するタンパク質である限りにおいては、特に限定するものではなく、後述するとおり、アミノ基またはチオール基をその構造に含むものであれば良い。なお、通常、タンパク質はN末端にアミノ基を有し、N末端のアミノ基も本発明に使用できるが、N末端のアミノ基は通常反応性が低く、より活性なリジン残基のアミノ基の方が本発明の反応により適していることから、リジン残基を持つタンパク質を使用することが好ましい。また、システイン残基を有するタンパク質も、システイン残基中の活性なチオール基を介して固定化を実施できるため、リジン残基を有するタンパク質に次いで好ましい。また、例えば、特許第4179517号のように、タンパク質の抗体結合面のリジン残基(或いはシステイン残基)を減らし、非抗体結合面のリジン残基(或いはシステイン残基)が効率良く担体に結合するように改変したタンパク質を用いることもできる。
これらのタンパク質の中でも、プロテインAとプロテインGは、免疫グロブリンG(IgG)を特異的に吸着、溶出できるタンパク質として汎用的に使用されていることから、プロテインAまたはプロテインGをリガンドとすることが、より好ましい。プロテインAおよびプロテインGは抗体の抗原結合部位ではなくFc部分と特異的に結合するため、抗原特異性とは無関係にいろいろな抗体を結合できる。中でも、プロテインAは抗体精製における第一選択肢として最も汎用的に使用されていることから、プロテインAをリガンドとすることが最も好ましい。中でも、国際公開特許公報WO2006/004067や米国特許公報US5151350に記載されている方法で得られたプロテインAであることが好ましい。
本発明における無機モノリスとは、直径100nm〜10000nmのマクロ孔と骨格が共連続構造を形成し、骨格に直径2nm〜200nmのメソ孔が存在する、シリカを主成分とする無機系多孔質連続体である。なお、本発明においては、例えば、有機無機ハイブリッド系のもの(例えば、特開2005−290032に記載)も使用することができる。
無機モノリスは、シリカを主成分とする反応溶液を、相分離を伴うゾル−ゲル転移を起こさせることにより得られる。例えば、特許第3397255号や特開2002−362918に記載の方法により、製造することが可能である。
本発明のタンパク質固定化無機モノリスにおいては、抗体結合性タンパク質と無機モノリスを、タンパク質のアミノ基またはチオール基を介して化学的に結合させる。
タンパク質のアミノ基またはチオール基を介して抗体結合性タンパク質を無機モノリスに固定化する方法論としては、例えば以下の方法がある。
(方法1)無機モノリスにエポキシ基を導入し、エポキシ基に対し、タンパク質のアミノ基またはチオール基を付加反応させてタンパク質を固定化する。
(方法2)無機モノリスに脱離基を導入し、タンパク質のアミノ基またはチオール基による求核置換反応を行い、タンパク質を固定化する。脱離基としては、トシルオキシ基(p−トルエンスルホニルオキシ基)やトレシルオキシ基などのスルホニルオキシ基や、塩素原子や臭素原子などのハロゲン原子が例示される。
(方法3)無機モノリスにアルデヒド(ホルミル基)を導入し、タンパク質のアミノ基を利用して還元的アミノ化反応(イミンを形成後還元しアミンとする)を行い、タンパク質を固定化する。
(方法4)無機モノリスに、チオール基を導入し、タンパク質のチオール基とジスルフィド結合を形成し、タンパク質を固定化する。
この内、方法1と方法2は、タンパク質のアミノ基またはチオール基のどちらでも利用できることから、タンパク質の選択範囲が広くなり汎用性の面で好ましい。中でも方法1は、エポキシ基導入の容易さ、固定化反応の容易さから見て、最も簡便であり、好ましい。
無機モノリスにエポキシ基を導入する方法は限定されないが、例えば、(方法1)無機モノリスの表面をエポキシ系シランカップリング剤で処理する方法や、(方法2)無機モノリスの表面にエポキシ系ポリマーをコーティングする方法などを用いることができる。方法2は、コーティングを実施する前に無機モノリスの表面を、アミノ基を有するシランカップリング剤で処理しておくことで、シランカップリング剤を介してエポキシ系ポリマーと無機モノリスを化学的に結合する形態を取ることもできる。
この内、方法1は、エポキシ系シランカップリング剤を用いてワンステップで導入できるように、処理方法が簡便であるためエポキシ導入法として好ましい。
エポキシ系シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。
エポキシ系シランカップリング剤処理としては、当業者に周知の方法を使用することができる。例えば、エポキシ系シランカップリング剤を有機溶媒に溶解した液を無機モノリスに接液し、加熱することにより、エポキシ基を導入できる。好ましい有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどが例示される。また、有機溶媒中に触媒として塩基を添加して反応を行うこともできる。好ましい塩基の例としては、3級アミンや含窒素複素環化合物が挙げられ、3級アミンとしてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどが例示され、含窒素複素環化合物としてはピリジン、ピコリン、3,5−ジエチルピリジンなどが例示される。
導入しようとするエポキシの量によって好ましい反応温度は異なるが、通常70℃以上の高温が好ましく、エポキシ導入量を上げたい場合は、オートクレーブなどを用いて100℃以上の高温反応を行うこともできる。例えば、5%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、0.5%のトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒を使用した場合は、反応温度90℃、反応20時間で、4μmol/ゲルmL程度のエポキシ基を無機モノリスに導入できる。
ところで、シランカップリング剤を無機素材と反応させる場合、無機素材表面に未反応のシラノールが残存することがある。本発明ではシラノールの残存を防ぐために、エポキシ系シランカップリング剤処理に続けて、エンドキャッピング処理を追加することができる。なお、エンドキャッピングとは、残存未反応基(無機モノリスの場合には、シラノール基)を、適切な試薬による反応によって不活性化する処理を意味する。エンドキャッピング処理は、一般に有機シランを用いて実施される。通常、トリメチルシリル基(CHSi−を生成し得る化合物を用いて実施される。そのような化合物の例としては、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどが挙げられる。エンドキャッピング処理としては、当業者に周知の方法を使用することができる。例えば、エポキシ系シランカップリング剤の反応と同様の条件により、反応を実施できる。本発明のタンパク質固定化無機モノリスに本エンドキャッピング処理を施すことにより、抗体精製時の、残存シラノールに由来する非特異的吸着を低減することができる。
上述したように、抗体結合性タンパク質は、アミノ基またはチオール基を有していればよく、抗体結合性タンパク質は、タンパク質のアミノ基及び/またはチオール基を介して無機モノリスに化学結合する。エポキシ基を導入したモノリスにこれらのタンパク質が化学結合する場合、タンパク質固定化無機モノリスは、下記式1及び/または式2で表される基を有する。
−CH(OH)−CH−NH−X ・・・(1)
−CH(OH)−CH−S−X ・・・(2)
上記式1および2中、Xは抗体結合能を有するタンパク質を表す。
次に、エポキシ基を導入した無機モノリスとタンパク質の固定化方法について説明する。
固定化方法は非常に簡単であり、エポキシ基導入無機モノリスとタンパク質溶液とを接液するだけで良い。活性化剤の使用や、活性化されたタンパク質誘導体の調製は必要としない。本発明の固定化方法は、特殊なタンパク質誘導体を使用する特許文献1の製造方法に比べ、多様なタンパク質に適用でき、より簡易であって、コストを著しく改善することができる。
上記タンパク質溶液の好ましい溶媒は水である。タンパク質とエポキシ基との反応を効率良く行うためには、タンパク質溶液のpHはアルカリ側であることが好ましく、タンパク質を緩衝液に溶解し使用することが簡便で好ましい。緩衝液の好ましいpHは例えば7以上であり、好ましくは7〜11であり、さらに好ましくは8〜10、最も好ましくは9〜10である。例えば、pH=9.3の緩衝液に、リジン残基を含むプロテインAを2〜5mg/mL濃度となるように添加してタンパク質溶液を調製した場合、反応温度30℃にて、20時間前後で固定化反応は完結する。緩衝液の種類に制限は特に無く、例えば、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、りん酸緩衝液などを使用することができる。本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や添加剤を添加・共存しても差し支えない。
モノリスとタンパク質溶液との接液方法の形態に制限は無く、例えば、事前にモノリスを容器内に固定しておき、タンパク質の溶液を通液する形態を取れば、操作を容易に行うことができる。また、本形態では、後述する様なエポキシ基の不活性化や不要物の洗浄を効率良く行うことができるため、有利である。
容器としては、カラム容器を使用すると、そのままモノリス吸着体を内包したカラムを作製することができるため、固定化反応の前(好ましくはエポキシ基の導入後、或いは、エンドキャップ後)に、無機モノリスをカラムに充填し固定するのが好ましい。カラムにモノリスを固定する方法に制限は無く、当業者に公知の方法を使用することができる。例えば、モノリスを熱収縮チューブなどで包んだ後カラム容器に固定することができる。カラムへの試剤の通液は、シリンジやポンプなどの送液手段を用いて、分割または連続して実施することができる。
本発明においては、固定化反応時にカラムから流出する反応溶液には活性化剤などの不要物が入っていないため、反応溶液中の抗体結合性タンパク質は通常安定である。従って、本発明では固定化反応時にカラムから流出した反応溶液を再び反応に再利用することもできる。抗体結合性タンパク質のほとんどは高価であるため、このように反応溶液を再利用できる点は、産業上特に好ましい。
エポキシ基を導入した無機モノリスと、タンパク質溶液とを接液する前に、モノリスを、有機溶媒と水を含む溶液に接液してコンディショニングすると、タンパク質の固定化収率を高位安定化することができるため、好ましい。好ましい有機溶媒は水溶性の有機溶媒であり、アルコール系溶媒、ポリエチレングリコール系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドなどのアミド系溶媒、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒などが例示される。中でも、アルコール系溶媒とニトリル系溶媒を好適に用いることができる。好ましいアルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、好ましいニトリル系溶媒の例としてはアセトニトリルが挙げられる。
有機溶媒の濃度に制限は無いが、例えば、40v/v(有機溶媒量/(有機溶媒+水の量))%程度以上、好ましくは50〜90v/v%程度、さらに好ましくは60〜80v/v%程度が使用できる。これらの溶媒は単独、または、複数を使用することができ、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や、塩などの添加剤を添加・共存しても差し支えない。なお、これらの有機溶媒は、固定化反応の際にタンパク質溶液に添加されていても良い。
本コンディショニングは、前述の様にモノリスをカラムに固定した後上記溶液を通液する接液方法を用いて行うのが最も操作上簡便である。
固定化反応後に未反応のエポキシ基が残存する場合には、固定化反応に引き続き、残存エポキシ基を開環するエポキシ基の不活性化工程を設けることができる。
エポキシ基の開環には、水和反応やアミン化合物の付加反応などを用いることができる。好ましいアミン化合物の例としてはエタノールアミンなどが挙げられる。エタノールアミンを用いてエポキシ基の不活性化を行う場合は、通常、エタノールアミンを水または緩衝液に溶解して使用できる。
エタノールアミンの付加反応は通常pH7以上のアルカリ側で進行するが、無機モノリスのpH耐性を考慮すると緩衝液を用いて溶液のpHを調整することが好ましい。エタノールアミン溶液の好ましいpHは7〜11程度、より好ましいpHは8〜10程度、最も好ましいpHは9〜10程度である。
緩衝液の種類に制限は特に無く、例えば、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、りん酸緩衝液などを使用することができる。
反応時間としては、例えば、pH9.5の0.8〜1.0mol/Lエタノールアミン溶液を使用した場合、反応温度30℃では、反応時間を2時間以上、好ましくは2〜4時間とするのが適当である。
本不活性化処理についても、前述の様に、事前にカラムに固定されたモノリスに、エタノールアミン溶液を通液する接液方法が適しており、この接液方法は、引き続き、反応で余分となったエタノールアミンを適切な溶媒で洗浄するのにも適している。
固定化反応や残存エポキシ基の開環反応後には、通常、タンパク質固定化無機モノリス中に、未反応のタンパク質や試剤など夾雑物が残留する。タンパク質固定化無機モノリスをアフィニティークロマトグラフィー用の吸着体として使用するためには、これらの夾雑物は少ないほど良い。
夾雑物を除去するためには、タンパク質固定化無機モノリスを、通常、複数の適切な溶媒で洗浄する。前述の様にモノリスがカラムに固定されていれば、順々に適切な洗浄溶媒を通液すればよい。
抗体精製においては、こうした夾雑物の内でも、リガンドとしたタンパク質の量が特に重要視され、精製された抗体の溶出画分中に、リガンドタンパク質がどの程度リークするが問題となることがある。こうしたタンパク質のリークを低減するためには、洗浄液として、酸性やアルカリ性の液、高濃度の塩を含む液、有機溶媒を含む液、界面活性剤を含む液を、単独或いは複数使用するのが効果的である。洗浄の効率化のため、これらの液は組み合わせて使用することもでき、例えば、酸性やアルカリ性の洗浄液に有機溶媒や界面活性剤を添加した液を使用することもできる。本発明の無機モノリスの場合は、酸性やアルカリ性の液、有機溶媒を含む液、界面活性剤を含む液を使用するのがより効果的であり、中でも、有機溶媒の入った酸性やアルカリ性の液、或いは、界面活性剤の入った酸性やアルカリ性の液を使用すると更に効果がある。なお、これらの液での洗浄の順番は、特に問うものではない。
好ましい有機溶媒は水溶性の有機溶媒であり、アルコール系溶媒、ポリエチレングリコール系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドなどのアミド系溶媒、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒などを好適に用いることができる。中でもアルコール系溶媒が好ましく、好ましいアルコールは、水酸基数が1〜3、炭素数が1〜8のアルコールであり、より好ましくは水酸基数が1〜3、炭素数が3〜6のアルコールである。具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられ、中でもより好ましい例としては、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。中でもヘキシレングリコールが最も好ましい。好ましい有機溶媒の濃度は5〜30%、更に好ましくは10〜20%である。これらの溶媒は単独、或いは、複数を使用することができ、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や添加剤を添加・共存しても差し支えない。
界面活性剤は、親水基と親油基を有する両親媒性物質の名称で、大きく分けて陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤の4つがあり、何れの界面活性剤も使用することができる。中でも、非イオン界面活性剤が好ましい。
陰イオン界面活性剤の例としては、石鹸などの脂肪酸の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩などが挙げられる。
陽イオン界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系などが挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられ、例えばTween(登録商標)、Triton(登録商標) X、Pluronic(登録商標)などの商品名で販売されている。これらの中でも、製品安全性に優れた、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、より好ましく使用できる。中でも、ポリソルベートと呼ばれる、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標)20やTween(登録商標)80など)が最も好ましい。界面活性剤濃度は0.01〜5%程度が好ましく、0.1〜1%がより好ましく、0.3〜0.7%がさらに好ましい。これらの界面活性剤は単独、或いは、複数を使用することができ、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の添加剤を添加・共存しても差し支えない。
好ましい酸性洗浄液のpHは2〜4であり、好ましいアルカリ性洗浄液のpHは8〜10である。
本発明によって得られる、抗体結合能を有するタンパク質を固定化した無機モノリスは、アフィニティークロマトグラフィー用吸着体として好適に使用できる。吸着体の大きさに制限は無く、形状も、棒状、ディスク状、円柱状や、中空構造を持つ筒状など、所望の形に加工したものを使用することができる。
上記のアフィニティークロマトグラフィー用吸着体は、混合物から抗体を分離するためのシステム、すなわち、アフィニティークロマトグラフに用いることができる。このシステムは、吸着体を内包する1つ以上のカラムを含めた、吸着体の収容に適したハウジングを更に含んでいてもよい。
カラムは、金属またはプラスチックを含めた任意の適切な材料で構成することができる。このシステムは、混合物の流れを吸着体にわたって促進するために、1つ以上のポンプ(送液装置)を備えることができる。このシステムは、高圧液体クロマトグラフィーシステム(HPLC)、中圧液体クロマトグラフィーシステム(MPLC)または低圧液体クロマトグラフィーシステム(LPLC)の形をとることができる。中でも、高線速に対応したHPLCがより適している。このシステムは、吸着体からの溶出物質の量を検出するための1つ以上の手段を含むことができる。検出器は、多波長検出または単一波長検出を利用する、光をベースとする検出器であり得る。適切な検出器には、可視波長の光を検出することができる分光光度計、紫外線吸収検出器、蛍光検出器が含まれる。このシステムは、吸着体からの溶出物質のクロマトグラムを提供するための1つ以上のプリンタを備えることもできる。システムは、例えば、溶出画分の吸光度または蛍光などのデータを記録するために、1台以上のパーソナルコンピューターを備えることもできる。加えてコンピューターは、溶出画分中の抗体の濃度を算出するために適切なソフトウエアを装備することができる。吸着体に試料を加え、1種以上の適切な緩衝液で吸着体を洗浄し、場合により適切な溶出緩衝液で標的分子を吸着体から溶出させるように、コンピューターを使用してアフィニティークロマトグラフィーを実行するプロセスを自動化することもできる。このシステムは、例えば、使用後の吸着体を再生するために適切な洗浄液で洗浄を実施するよう、コンピューター制御の自動化洗浄段階を提供することもできる。
上記のような無機モノリスからなる吸着体や、当該吸着体を含む装置を用いることにより、抗体を含む混合物から抗体を精製することが可能である。精製の際は、抗体が本発明で得られる吸着体(前記抗体結合能を有するタンパク質)に選択的に結合するような条件下で、抗体を含む混合物に接触させることにより行うことができる。
抗体を吸着体に結合させる際は、例えば、抗体を含む混合物を、中性条件(例えば、pH6〜8)で接液すればよい。
抗体を結合させた吸着体に対しては、1回以上の洗浄処理を行ってもよい(以下、中間洗浄と呼ぶ)。この段階における洗浄は、例えば、吸着体に非特異的に吸着した宿主細胞由来タンパク質HCPを溶出する効果があり、抗体を回収する溶出画分中へのHCP混入を低減し、抗体純度を高めることができる。無機モノリスをはじめとするシリカ系の吸着体では、アガロースやセルロースのゲルに比べて、HCPの非特異的吸着が多いとされており、本発明の吸着体を用いて抗体精製を実施する場合は、上述のような中間洗浄を設けることが推奨される。本吸着体の使用において、HCPを効果的に低減させるためには、中間洗浄段階で、水または緩衝液に、塩または有機溶媒または界面活性剤を添加した溶液を用いて洗浄することが効果的であり、これら添加剤は単独で、或いは、複数を組み合わせて使用することができる。中でも有機溶媒を添加することが好ましい。
好ましい有機溶媒は水溶性の有機溶媒であり、アルコール系溶媒、ポリエチレングリコール系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドなどのアミド系溶媒、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒などを好適に用いることができる。中でもアルコール系溶媒とテトラヒドロフランが好ましい。
好ましいアルコールは、水酸基数が1〜3、炭素数が1〜8のアルコールであり、より好ましくは水酸基数が1〜3、炭素数が3〜6のアルコールである。具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられ、中でもより好ましい例としては、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。中でもヘキシレングリコールが最も好ましい。
好ましい有機溶媒の濃度は5〜30%、更に好ましくは10〜20%である。これらの溶媒は単独、或いは、複数を使用することができ、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や添加剤を添加・共存しても差し支えない。
溶液の好ましいpHは、例えば4〜9程度であり、好ましくは5〜8程度、さらに好ましくはpH5〜6程度である。pHを制御するために、緩衝液を使用するのが簡便であり好ましい。
吸着体に結合させた抗体は、溶出緩衝液を用いることにより、吸着体から溶出させることができる。溶出緩衝液としては、例えば、抗体を含む混合物と接触させた時とは異なるpH、または、より高濃度の塩を使用すればよい。好ましくは、抗体含有液を吸着体に接液する時より、酸性のpH(例えばpH2〜6)が使用される。
抗体を溶出させた後、吸着体への残留物を取り除くために、抗体の溶出後に追加の洗浄段階を行ってもよい。溶出後の洗浄段階には、酸性pHまたはアルカリpHの洗浄液を使用することができ、必要により、尿素水溶液、グアニジン塩酸塩水溶液などによる定置(CIP)洗浄を追加することもできる。
本発明にかかる吸着体は、高線速でも高い抗体結合能を示すため、精製を効率良く行うことができる。精製を効率良く行うため、通液は、線速200cm/h以上で行うのが好ましい。好ましい精製の線速の下限は300cm/h以上、より好ましくは400cm/h以上、さらに好ましくは500cm/h以上、特に好ましくは600cm/h以上、最も好ましくは700cm/h以上であり、線速が高いほど本発明の効果がより良く発揮される。また、精製の精度や精製装置の耐久性の観点から、本発明の精製用吸着体を用いた精製は、線速10000cm/h以下で行うことが好ましい。より好ましい精製の線速の上限は5000cm/h以下、より好ましくは4000cm/h以下、さらに好ましくは3000cm/h以下である。本吸着体は、高線速としても抗体結合能が低下しにくく、例えば800cm/h程度の高線速において、球状の充填剤よりも高い吸着能を有することから、精製の速度およびコストを格段に改善することができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の実施態様はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。
(実施例1)
(エポキシ基導入モノリスカラムの作製)
実用新案登録第3149787号実施例1に従い、無機モノリスを以下のようにして作製した。
水溶性高分子であるポリエチレンオキシド(アルドリッチ製 商品番号85,645-2)0.90gおよび尿素0.90gを0.01規定酢酸水溶液10gに溶解し、この溶液にテトラメトキシシラン4mLを撹拌しながら加えて、加水分解反応を行った。数分間撹拌を行ったのち、得られた透明溶液を内径4.5ミリメートルのガラスチューブ内に注入し、40℃の恒温漕中に保持したところ約30分後に固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、密閉条件下で120℃に1時間保った。この後、ゲルを40℃で3日間乾燥し、100℃/hの昇温速度で800℃まで加熱し、直径3.4mm×長さ3cmの棒状の無機モノリスを得た。
その後、この無機モノリスに対して、5%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、0.5%のトリエチルアミン、およびN,N−ジメチルホルムアミド溶媒を、温度90℃、20時間接液させ、その後、トリメチルクロロシランを用いてエンドキャップ処理して残存シラノールをトリメチルシリル化することにより、エポキシ基導入モノリスカラムを作製した。
(プロテインAの固定化反応)
このエポキシ基導入モノリスカラムに対して、pH9.3の0.5Mクエン酸緩衝液に対して、プロテインA(国際公開特許公報WO2006/004067に記載されたリジン残基を含むものを使用)を5mg/mL濃度となるように溶解した液1mLを、シリンジを用いて通液し、30℃で20時間反応を実施した。その際、カラムから排出された反応液を回収し、反応30分、1、2、3、4、18時間目にシリンジで再びカラムに通液した。次いで、カラムにpH9.3の0.5Mクエン酸緩衝液、20%EtOH水溶液を通液してカラム内に残ったプロテインAを洗浄後、0.9Mのエタノールアミンを含むpH=9.5のクエン酸緩衝液を3時間かけて通液し、残存エポキシ基の不活性化を実施した。次いで、水、10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS緩衝液)(pH7.4)、20%EtOH水溶液による洗浄を実施し、プロテインA固定化無機モノリスカラムを得た。
(実施例2)
(有機溶媒を含む水溶液によるコンディショニングの効果)
プロテインAの固定化反応の前に、60%アセトニトリル水溶液を流速0.5mL/分で1時間通液する以外は、実施例1と同様の方法によりプロテインA固定化無機モノリスカラムを製造した。実施例1の方法で作製したカラムと、実施例2の方法で作製したカラムの固定化量を表1に比較する。なお、固定化は、各2回ずつ実施した。
Figure 2012001462
表1から、有機溶媒を含む水溶液によるコンディショニングを行うことにより、プロテインAの固定化量が高位安定化することがわかる。
(実施例3)
(dBC測定)
実施例2と同様にして作製したプロテインA固定化無機モノリスカラム(内径3.4mm×長さ3cm)のヒト免疫グロブリン(IgG)の動的結合容量(dBC)を測定した。測定は、カラムをPBS緩衝液(pH7.4)で平衡化させた後、PBS緩衝液を用いて1g/L濃度に調整したIgG溶液をカラムにロードすることにより行った。なお、dBCは、10%破過点、即ち、「カラムから流出する液のIgG濃度が、供給したサンプルのIgG濃度の10%に達した時点」までに、カラムに添加されたIgGの量を用いて算出した。図1に、線速度とdBCの関係を表したグラフを示す(線速度は、130、330、530、800cm/h)。また、市販の標準:Mabselect Xtra(GE Healthcare社登録商標)及びProSep Ultra Plus(Millipore社登録商標)の線速度とdBCの関係を表したグラフも併せて示す(線速度は、Mabselect Xtra:94、330、500cm/h、ProSep Ultra Plus:110、330、530、800cm/h)。
この結果から、プロテインA固定化無機モノリスは、高線速においてもdBCが低下せず、高い結合容量を維持していることがわかる。
(実施例4)
(HCPレベル測定)
モデルとして、ウシ血清培地より調製した、IgGなどのヒト抗体を含まないCHO培養上清を用いた。CHO培養上清には宿主細胞由来タンパク質(HCP)が多く含まれており、紫外線(UV)検出器に通液すると280nmにてピーク高さが1530mAUのUV吸収が観測された。
実施例2と同様にして作製したプロテインA固定化無機モノリスカラム(内径3.4mm×長さ3cm)に対して、PBS緩衝液(pH 7.4)を10カラム容量(CV)通液させることにより平衡化させた後、カラムに80CVのCHO培養上清をロードした。ついでカラムを2CVのPBS緩衝液(pH7.4)を流して洗浄した。なお、この時点でカラムには一定量のHCPが非特異吸着している。
次に、表2に示す各中間洗浄溶媒を12CV流すことにより洗浄した。中間洗浄溶媒の洗浄効果が高ければ、この洗浄によりカラム内のHCPが低減することとなる。
Figure 2012001462
ついで、15CVの35mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)をカラムに流して洗浄した。この際、カラムから流出する液(以下、溶出画分と呼ぶ)のUV(280nm)をUV検出器によりモニターした。この緩衝液は抗体の溶出に一般的に使用される緩衝液であり、この緩衝液を用いた洗浄により、カラム内に残存するHCPは流出する。
図2は、UV検出器により観測されたUVピークの高さを表したものである。
図2は、中間洗浄溶媒の種類によって、溶出画分中のHCPの量が変化することを示しており、これにより、適切な溶媒を用いて中間洗浄を行うことで、HCPの非特異的結合が低減されることがわかる。図2は、水溶性の有機溶媒と水を含む溶液を中間洗浄溶媒として使用することにより、良好な結果が得られることを示している。

Claims (14)

  1. 抗体結合能を有するタンパク質が、当該タンパク質のアミノ基またはチオール基を介して固定化された無機モノリス
  2. 下記式1及び/又は式2で表される基を有する請求項1に記載の無機モノリス
    −CH(OH)−CH−NH−X ・・・(1)
    −CH(OH)−CH−S−X ・・・(2)
    (式中、Xは抗体結合能を有するタンパク質を示す)
  3. 前記タンパク質がリジン残基またはシステイン残基を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無機モノリス
  4. 前記タンパク質がプロテインAである請求項1〜3の何れかに記載の無機モノリス
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の無機モノリスから構成されるアフィニティークロマトグラフィー用吸着体
  6. 請求項5の吸着体を備えたアフィニティークロマトグラフ
  7. 請求項5の吸着体を用いて精製を行うことを特徴とする抗体の精製方法
  8. 前記吸着体に抗体含有液を接液して、当該抗体を前記タンパク質に結合させた後、水溶性の有機溶媒と水を含むpH=4〜9の溶液で洗浄を行う請求項7に記載の精製方法
  9. 表面にエポキシ基が導入された無機モノリスに、抗体結合能を有するタンパク質溶液を接液して固定化を行うことを特徴とする、抗体結合能を有するタンパク質が固定化された無機モノリスの製造方法
  10. 前記タンパク質が、リジン残基またはシステイン残基を含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法
  11. 前記タンパク質が、プロテインAである請求項9または10に記載の製造方法
  12. 前記タンパク質を溶解する溶液が、pHが7〜11の緩衝液である請求項9〜12の何れかに記載の製造方法
  13. タンパク質溶液を無機モノリスに接液する前に、水溶性の有機溶媒と水を含む溶液に接液する、請求項9〜12の何れかに記載の製造方法
  14. 無機モノリスを、水溶性の有機溶媒と水を含む溶液に接液した後、タンパク質の固定化を行う、タンパク質の固定化収率を高位安定化する方法
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