JP7057912B2 - タンパク質の分離精製方法および装置 - Google Patents

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本発明は、バイオ医薬品の製造技術分野に関する。
米国FDAは2004年に医薬品の品質管理をより理想的にするためGuidance for Industry PATを公表し、リアルタイムな計測により、医薬品の製造工程の設計、分析、管理を行い、最終的に製品の品質を保証するシステムを推奨した。低分子医薬品と比べ製造工程の難易度が高いバイオ医薬品の分野ではとりわけ、生産工程におけるリアルタイムの品質管理が重要だとされている(非特許文献1、非特許文献2)。
より高い純度のバイオ医薬品用タンパク質の精製のため、複数の液体クロマトグラフィーを直列につないで効率的な精製を行う方法や(特許文献1)種々のカラムクロマトグラフィー等を組み合わせたタンパク質の精製方法が技術常識として知られているが、工程中のタンパク質を簡便に検出する方法として、高速液体クロマトグラフィーによるタンパク質等ポリマーの精製工程の過程で特定の溶媒を加えその濁度から精製工程中のタンパク質の濃度を検出する方法も知られている(特許文献2)。
抗体のイムノグロブリン量の測定方法としてモノリスシリカ担体を有するカラムを用いた測定方法が知られている(特許文献3)。
Guidancefor Industry PAT―A Framework for Innovative Pharmaceutical Development,Manufacturing,and Quality Assurance(ガイダンス フォー インダストリー パット-ア フレームワーク フォー イノべィティブ ファーマセウティカル デベロップメント、マニュファクチャーリング、アンド クオリティー アシュアランス)2004年、U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration(ユー. エス. デパートメント オブ ヘルス アンド アドミシストレーション)刊 岡村元義、「バイオ医薬品製造におけるPATとRTR」、Pharm Tech Japan(ファーム テク ジャパン)、日本国、株式会社じほう、2015年8月、31巻、17~24頁
特許第5464428号公報 特表平9-510290号公報 特許第5550109号公報
従来の医薬品の定量方法は質量分析法等大型機器と測定技術を要する方法が中心で最終製品の定量には使用できても、工程中の医薬品の定量には不向きであった。また、高速液体クロマトグラフィーを用いたバイオ医薬品の定量方法も測定結果が出るまでに1時間程度を要するため、PATのリアルタイムの結果測定には向いていなかった。更に定量目的のタンパク質を溶媒により白濁させる方法は、不要な溶媒を加えるため適用工程に限度がありタンパク質の特異性も低いため定量性に問題があった。
発明者らは、鋭意検討を行った結果、モノリスシリカ担体を有するカラムを検出用のカラムとして用いることにより、精製工程中、目的とするタンパク質を迅速かつ精度よく定量できることを確認し、この測定方法を応用すればPATに準拠したバイオ医薬品の生産
やバイオ医薬品の生産に用いる製造装置ができることを発案した。
本発明は、
(1)対象タンパク質の精製工程における対象タンパク質濃度の測定方法において、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度の測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質の濃度測定により行うことを特徴とする測定方法、
(2)精製工程が精製用クロマトグラフィーであることを特徴とする(1)記載の測定方法、
(3)培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度測定が、1分間以内に行われることを特徴とする(1)または(2)記載の測定方法、
(4)対象タンパク質の濃度測定が低圧条件下で行われることを特徴とする(1)~(3)いずれかに記載の測定方法、
(5)対象タンパク質が、抗体であることを特徴とする(1)~(4)いずれかに記載の測定方法、
(6)対象タンパク質の分離精製工程において、各工程の通過液をサンプリングし、各サンプルにおける対象タンパク質の濃度測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質の濃度を経時的に測定し、モニターすることを特徴とする対象タンパク質の製造方法、
(7)精製用クロマトグラフィーの注入液およびカラム通過液中の対象タンパク質のモニター結果の相違から、精製用クロマトグラフィーに充填された担体への対象タンパク質の吸着量を測定することを特徴とする(6)記載の対象タンパク質の製造方法、
(8)対象タンパク質が抗体であることを特徴とする(6)または(7)記載の製造方法、
(9)対象タンパク質の精製工程における対象タンパク質濃度の測定装置において、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質の濃度測定により行うことを特徴とする測定装置、
(10)精製工程が精製用クロマトグラフィーを用いる工程であることを特徴とする(9)記載の測定装置
(11)送液部、サンプル注入部および検出部から構成されることを特徴とする(9)または(10)記載の測定装置、
(12)送液部は対象タンパク質の精製プラント上の培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液を移送する主配管上に設けられた分岐バルブにより分岐した配管と、接続可能な形状を持ち、ポンプにより培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液をサンプル注入部に吐出することを特徴とする(11)記載の測定装置、
(13)サンプル注入部が注入切り替えバルブを介して検出用カラムまたは排出口に接続する機能を持つことを特徴とする(11)または(12)記載の測定装置、
(14)検出部が、検出用カラムを通過した液を検出セルに導き、光源から導かれた波長280nmの光を検出セルに照射し、検出セルを透過した光を検出することにより、吸光度をオンラインでモニターする機能を持つことを特徴とする(11)~(13)いずれかに記載の測定装置、
(15)検出部がモノリスシリカ担体を有する検出用カラムを含むことを特徴とする(11)~(14)いずれかに記載の測定装置、
(16)送液部、サンプル検出部および検出部の各構成要素に対して通信を行い、動作の状態に対応する命令の送信、応答を取得する制御部を有することを特徴とする(11)~(15)いずれかに記載の測定装置、および
(17)精製用クロマトグラフィーを用いた対象タンパク質の分離精製装置において、培養液または精製用クロマトグラフィーで得られる多様な混合溶液の流路に(10)~(16)いずれかに記載のタンパク質濃度の測定装置を接続することにより、精製工程中の対象タンパク質の濃度をモニターすることを特徴とする分離精製装置、に関する。
本発明により、バイオ医薬品の製造工程においてリアルタイムに目的とするバイオ医薬品の計測が可能になり、PATに準拠した理想的なバイオ医薬品の品質管理、生産管理が
可能になるとともに、計測データをバイオ医薬品の製造工程の操作に反映させて、より高い生産効率でバイオ医薬品を製造することができる。
タンパク質濃度測定装置 タンパク質濃度測定装置を装着した精製プラント タンパク質濃度測定装置を装着したHPLC タンパク質濃度測定装置による抗体濃度の応答特性図 図4の部分拡大図 タンパク質濃度測定装置を用いたアフィニティークロマトグラフィー精製工程における対象タンパク質の濃度推移のモニター結果 タンパク質濃度測定装置を用いてモニターした異なる流量のアフィニティークロマトグラフィー精製工程における対象タンパク質の漏出特性の対比 タンパク質濃度測定装置を用いたイオン交換クロマトグラフィー精製工程における対象タンパク質の濃度推移のモニター結果 タンパク質濃度測定装置を用いてモニターした異なるpH条件のイオン交換クロマトグラフィー精製工程における対象タンパク質の吸脱着特性の対比 図9の結果から導いた動的結合容量(DBC)のpH依存性
本発明において、対象タンパク質とは、精製操作により高純度が要求されるタンパク質ならどのようなものでも良いが、好ましくは高速、高純度で分離でき結合特性に優れたアフィニティークロマトグラフィーで分離できるタンパク質が好ましい。タンパク質の例としてはアミラーゼ、セルラーゼ、DNAポリメラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、シトクロームcオキシターゼ、フォスファターゼ、ペプチダーゼ等の酵素タンパク質、各種インターロイキン受容体等の受容体タンパク質、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン等のホルモンタンパク質、フィブリノーゲン、プロトロンビン、アルブミン、プロテアーゼインヒビター、ヘモグロビン等の血漿タンパク質、抗体、サイトカイン等の免疫タンパク質等が挙げられるが、バイオ医薬品に用いられる前記受容体タンパク質、前記ホルモンタンパク質、前記免疫タンパク質であることが好ましく、とりわけ抗体であることが好ましい。
本発明における対象タンパク質の精製工程とは、対象タンパク質を夾雑物のある状態から純度を高めるための操作手法であればどのようなものでも良いが、例えば対象タンパク質を生産する細胞の培養液等原料からの対象タンパク質の精製、採取に用いる除細胞後、清澄化終了後の溶液から対象タンパク質を回収する回収工程、中間または最終精製工程等が挙げられる。また、精製工程は培養液原料からの対象タンパク質の精製に限られず粗精製物からの精製工程も含まれる。
清澄化工程に用いる手段としては、硫安沈殿、TCA沈殿、アセトン沈殿、TCA/アセトン沈殿、硫酸アンモニウム含有メタノール沈殿等各種方法により生じた対象タンパク質の沈殿を遠心分離機等により分離採取し、再度緩衝液等に溶解して濃縮する工程、限外ろ過膜等、フィルター用の膜を用いて不純物と分離する限外ろ過工程等が挙げられる。
対象タンパク質を回収する回収工程に用いる手段としては、対象タンパク質を特異的に補足できる手段であればどのようなものでも良いが、対象タンパク質と特異的に結合する
リガンドを用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いることが好ましい。具体的にはイムノグロブリンとの結合を利用したプロテインA、プロテインG、プロテインL、レクチン等をリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー、ヘパリンをリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー、グルタチオンをリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィーが挙げられるが、これらのリガンドを改変したアフィニティークロマトグラフィーでもよい。
対象タンパク質の中間または最終精製工程に用いられる手段としては、タンパク質の精製手段であればどのような手段でも良いが前記アフィニティークロマトグラフィーのほかにイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。イオン交換クロマトグラフィーとして具体的には、官能基にクオタナリーアンモニウム(Q)、
ジエチルアミノエチル(DEAE),ジエチルアミノプロピル(ANX)等を持つ陰イオン交換クロマトグラフィー、官能基にスルフォプロピル(SP)、メチルスルフォネート(S),カルボキシメチル(CM)を持つ陽イオン交換クロマトグラフィー等があげられる。ゲルろ過クロマトグラフィーとしては具体的にはスーパーデックス、セファクリル、セファデックス等の樹脂を用いたクロマトグラフィーが挙げられる。
なお本発明が分析対象とする精製工程においては、通常用いるカラムクロマトグラフィーだけではなく、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速、高分離能精製システム(FPLC)を用いるシステムでも良く、その担体はHPLCを用いた分離精製に適合できるものであればよい。
本発明において、対象タンパク質の濃度を検出する段階は、使用可能であれば前記のように各工程中どのような段階でも良いが、各工程の制御に工程終了後の対象タンパク質の濃度情報が必要な工程としては精製用クロマトグラフィーを用いる工程であることが好ましい。
本発明におけるタンパク質濃度の測定方法としては、対象タンパク質の精製工程で用いる対象タンパク質の測定方法であるため、迅速かつ簡便に行える方法が好ましく、通常タンパク質の定量に用いられる分光光度法を用いることが好ましいが、とりわけ好ましくは280nm付近に吸収のあるトリプトファン、チロシン、フェニルアラニンの吸光度を分光光度計により測定し、定量を行う紫外(UV)吸収法を用いることが好ましい。
本発明における培養液とは、対象タンパク質を細胞を用いて液体培地中で生産した際に生じる培養液であればどのようなものでも良く、通常細胞培養に用いられる培地に、必要により添加物や、培養液中の対象タンパク質の品質が保たれる範囲で溶媒等が含有されていても良い。本発明に用いる対象タンパク質を生産する細胞は、対象タンパク質を生産する細胞であれば、動物細胞、微生物細胞、植物細胞等どのような細胞でも良い。動物細胞としては、CHO細胞等のハムスター由来の細胞、マウスハイブリドーマ、NS0細胞、Sp2/0細胞等マウス由来の細胞、ラットーマウス ハイブリドーマ細胞等が挙げられ、微生物細胞としては大腸菌細胞、枯草菌細胞、酵母等が挙げられ、植物細胞としては、トウモロコシ由来の細胞、イネ由来の細胞、タバコ由来の細胞等が挙げられる。これらの細胞は野生株、変異株、遺伝子組換え細胞等どのようなものであっても良い。
本発明における、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムとは、精製工程中の対象タンパク質の濃度を測定するために、精製工程にてタンパク質精製のために用いられるカラムとは別に、上記精製工程を接続する主配管から分岐した配管と結合する接続されるカラムであって、精製工程中の対象タンパク質の濃度の測定を目的とするカラムであればどのようなものでも良いが、より迅速かつ正確な対象タンパク質の定量を行うためには、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCという)をシステムとして用いることが好ましく、このためカラム自体も市販のHPLC装置に装着できるHPLC用カラムであれば用いることができるが、特に測定装置としての小型化が必要なため、容量が20~500μL,好ましくは100~300μL,とりわけ好ましくは150~250μLのものが用いられる。なお、このような小型カラムであってもHPLCに使用するため5MPa程度の耐圧性が必要とされる。
本発明に用いるモノリスシリカ担体は、直径100nm~10000nmのマクロ孔と三次元ネットワーク状骨格の共連続構造を有するシリカゲルであり、その骨格には直径2nm~200nmのメソ孔が存在する。このモノリスシリカ担体は、反応溶液について相分離を伴うゾル-ゲル転移を起こさせることにより製造することができる。水ガラスやケイ酸塩水溶液のpHを変化させることによるゾル-ゲル転移を利用して無機系多孔質担体を製造することもできる。
より具体的には、モノリスシリカ担体は、水溶性有機高分子、及び熱分解性低分子化合物を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を加えて加水分解反応を起こさせ、続いて生成物が固化した後に湿潤状態のゲルを加熱して熱分解性低分子化合物を熱分解させ、それを乾燥し加熱して製造することができる。ここで用いる水溶性有機高分子としては、適当な濃度の水溶液を構成できる水溶性有機高分子であって、加水分解性の官能基を有する金属化合物によって生成するアルコールを含む反応系中に均一に溶解し得るものであればよい。好ましい水溶性有機高分子の例としては、高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であって水溶液中でポリカチオンを生ずるポリアリルアミン及びポリエチレンイミン、並びに中性高分子であって主鎖にエーテル結合を有するポリエチレンオキシド、側鎖にカルボニル基を有するポリビニルピロリドン等が挙げられる。水溶性有機高分子の添加量は、限定するものではないが、反応溶液10g当たり0.2~1.4gが好ましい。なお、水溶性有機高分子に代えてホルムアミド、多価アルコール、及び/又は界面活性剤を用いてもよい。その場合多価アルコールとしてはグリセリンが、界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
熱分解性低分子化合物は、熱分解後に溶媒を塩基性にする化合物であればよい。熱分解性低分子化合物の具体例としては、尿素、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等の有機アミド類(アミド系化合物)等が挙げられる。無機系多孔質担体の製造においては加熱後の溶媒のpH値が重要であり、この熱分解により反応溶液が塩基性になることが必要である。反応溶液中に共存させるこのような熱分解性低分子化合物の量は、化合物の種類にもよるが、例えば尿素の場合には、反応溶液10gに対し、0.05~0.8g、好ましくは0.1~0.7gが好ましい。
また、熱分解によって、フッ化水素酸のようにシリカを溶解する性質のある化合物を生じる化合物も、同様に利用できる。
加水分解性の官能基を有する金属化合物としては、金属アルコキシド、錯体、金属塩、有機修飾金属アルコキシド、有機架橋金属アルコキシド、及びこれらの部分加水分解生成物、並びにそれらのオリゴマーを用いることができる。加水分解性の官能基は例えば、メトキシ基、エトキシ基、又はプロポキシ基等の炭素数の少ないものが好ましい。その金属としては、例えばSi、Ti、Zr、Al等を使用できる。オリゴマーについてはアルコールに均一に溶解分散できるものであればよく、具体的には例えば10量体程度まで使用できる。加水分解性の官能基を有する金属化合物の具体例としては、限定するものではないが、例えばテトラメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。シリカを主成分とした無機系多孔質担体を製造するためには、加水分解性の官能基を有する金属化合物として、Si(ケイ素)を含む化合物を使用することが好ましい。そのようなSi(ケイ素)を含む化合物としては、ゾル-ゲル反応においてゲル形成を起こす、シリカの前駆体化合物が好ましい。酸性水溶液としては、任意の酸希釈水溶液、例えば塩酸、硝酸等の鉱酸(好ましくは0.001モル濃度以上の水溶液)や、酢酸、ギ酸等の有機酸(好ましくは0.01モル濃度以上の水溶液)を好適に使用することができる。
本発明で用いるモノリスシリカ担体の製造においては、例えば、水溶性有機高分子及び熱分解性低分子化合物を酸性水溶液に溶かし、さらに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行うことにより、溶媒リッチ相と骨格相とに分離したゲルを生成させることができる。相分離及びゲル化は、通常は、溶液を室温40~80℃で0.5~5時間保存することにより生じさせることができる。相分離及びゲル化工程においては、当初透明な溶液が白濁してシリカ相等の無機相と水相との相分離を生じついにゲル化する過程を経る。この相分離及びゲル化工程では水溶性有機高分子は分散状態にありその沈殿は実質的に生じない。このようにして生成したゲルが固化したら、適当な熟成時間を経た後、湿潤状態のゲルを加熱する。ゲルの加熱により、反応溶液に予め溶解させておいたアミド系化合物等の熱分解性低分子化合物が熱分解し、骨格相の内壁面に接触している溶媒のpHが上昇する。加熱温度は、例えば尿素の場合には40~200℃であってよく、その結果、加熱後の反応溶液のpH値が6.0~12.0となることが好ましい。pH値が上昇した結果、反応溶液がその内壁面を浸食し、内壁面の凹凸状態を変化させることによって細孔径が徐々に拡大することになる。シリカを主成分とするゲルの場合には、酸性又は中性領域においては変化の度合は非常に小さいが、熱分解が盛んになり水溶液の塩基性が増すにつれて、細孔を構成する部分が溶解し、より平坦な部分に再析出することによって、平均細孔径を拡張する反応が顕著に起こるようになる。巨大空孔を持たず3次元的に束縛された細孔のみを持つゲルでは、平衡条件としては溶解し得る部分でも、溶出物質が外部の溶液にまで拡散できないために、元の細孔構造が相当な割合で残る。これに対して巨大空孔となる溶媒リッチ相を持つゲルにおいては、2次元的にしか束縛されていない細孔が多く、外部の水溶液との物質のやり取りが十分頻繁に起こるため、大きい細孔の発達に並行して小さい細孔は消滅し、全体の細孔径分布は顕著に広がることがない。なお、加熱過程においては、ゲルを密閉条件下に置き、熱分解生成物の蒸気圧が飽和して溶媒のpHが速やかに定常値をとるようにすることが好ましい。溶解・再析出反応が定常状態に達し、これに対応した細孔構造を生成させるために要する上記の加熱処理時間は、巨大空孔の大きさや試料の体積によって変化する。従って、それぞれの処理条件において実質的に細孔構造が変化しなくなる最短処理時間を決定して用いることが好ましい。
加熱処理後のゲルは、反応溶液である溶媒を乾燥処理により気化(揮発)させることによって乾燥ゲルとなる。この乾燥ゲル中には、出発溶液中の共存物質(水溶性有機高分子及び熱分解性低分子化合物等)が残存する可能性がある。そこで、適当な温度でさらに熱処理を行い、有機物等を熱分解することによって目的の無機系多孔質担体をより高純度で得ることができる。なお、乾燥処理は、30~80℃で数時間~数十時間放置することにより行えばよい。また熱処理は、200~800℃程度でゲルを加熱することによって行うことができる。
以上のようにして、マイクロメーターサイズの連続細孔とナノメーターサイズのメゾ孔を有する棒状のモノリス型シリカ(モノリスシリカ)である。モノリスシリカを検出用カラムの担体として使用した場合、装置内に接続する濃度分析用カラム従来のもの樹脂ビーズ等の担体に比べて動的結合特性に優れるため、従来の担体を用いたカラムよりも大流量で試料溶液を流して吸着させることができる。その結果として、適切に液交換を行うことができれば、より短時間で1つの分析を完了することができることになる。例えば、滞留時間1分で30mgの動的結合容量を持つ従来カラムと、滞留時間12秒で30mgの動的結合容量を持つ同じ形状のモノリスシリカカラムで考えると、30mgの試料が入った液をカラムに吸着させて分析するには、従来カラムの流速を1とした場合、モノリスシリカは5倍の流速で試料溶液を流して処理することができ、適切に液交換を行うことで、分析時間を5分の1に短縮することができる。このため、モノリスシリカカラムを用いた場合、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度の測定を2分~15秒、好ましくは1分以内に行うことができる。
本発明では、溶液中の対象タンパク質を担体に吸着させるため、前記アフィニティークロマトグラフィーの原理に従い加工した担体の表面に対象タンパク質と結合するリガンドを固定化させる。使用するリガンドの種類は前記と同義である。シリカモノリスに対するリガンドの結合方法は、溶液中の抗体を担体に吸着させるため、無機系多孔質担体、好ましくは円盤状または円柱状等に加工した無機系多孔質担体の表面に抗体結合性タンパク質又は抗体結合性ペプチドを固定化することにより行う。この固定化のためには、無機系多孔質担体の表面にまずアミノ基を導入する修飾を施し、次いでこのアミノ基に抗体結合性タンパク質をアミド結合により結合することが好ましい。なお2~10個のアミノ酸がペプチド結合したものを「ペプチド」と呼び、11個以上のアミノ酸がペプチド結合したものを「タンパク質」と呼ぶ。該結合方法の詳細は、本発明者らの発明を記載した特許文献3に詳細に記載されている。
本発明のモノリスシリカ担体を有する検出用カラムからの溶出液中の対象タンパク質の濃度の測定は以下のように行うことができる。モノリスシリカ担体を有する検出用カラムに吸着洗浄溶液をアプライ(添加)して通液させ(初期化工程)、その後当該カラムに培養液または精製工程中の対象タンパク質を含む溶液をアプライして通液させて、目的の対象タンパク質分子を担体に吸着結合させる(吸着工程)。予め担体表面には対象タンパク質との結合活性を持つリガンドが固定されており、この吸着工程において、対象タンパク質はリガンドと結合することで担体表面に捕捉される。次いで、そのカラムに吸着洗浄溶液をアプライし通液させることで非特異的に結合した分子を洗い出し(洗浄工程)、次いで溶出溶液をアプライし通液させることで対象タンパク質を溶出する(溶出工程)。さらに再生溶液をカラムにアプライし通液させることによりカラムの再生を行うと共に残存付着物を除去する(再生工程)。
初期化工程および洗浄工程に用いる吸着洗浄溶液としては、pH6~pH8、好ましくはpH7.0~pH7.4,濃度10~500mM、好ましくは濃度30mM~100mMの塩化ナトリウム含有リン酸塩緩衝液、塩化ナトリウム含有リン酸ナトリウム緩衝液、塩化ナトリウム含有リン酸カリウム緩衝液、塩化ナトリウム含有トリス-塩酸緩衝液、塩化ナトリウム含有ホウ酸ナトリウム緩衝液等の塩化ナトリウム含有緩衝液を用いることが好ましく、これらは0.3M~1.5M 好ましくは0.5~1MのNaClを含有していてもよい。例えば0.5M~1.5M NaCl含有50mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
溶出工程に用いる溶出溶液としては、pH3.5付近に調製された緩衝液を用いることが好ましく、その濃度は0.05M~1.0M、好ましくは0.05M~0.5Mであることが好ましい。具体的には酢酸緩衝液(pH3.5~5)、ギ酸緩衝液(pH3~4.5)、グリシン塩酸緩衝液(pH2.5~4)等が挙げられるが、とりわけ0.1M グリシン塩酸緩衝液(pH3.3~3.8)を用いることが好ましい。
再生工程に用いる再生溶液としては、pH2.0~2.8,濃度0.05M~1.0Mの溶液を用いることが好ましい。再生溶液のとりわけ好ましい例として、0.02M クエン酸溶液(pH2.25)もしくは0.1M グリシン-塩酸緩衝液(pH2.5)が挙げられる。
好ましい一実施形態では、吸着洗浄溶液としてリン酸塩緩衝液(例えばリン酸ナトリウム緩衝液)を、再生溶液としてグリシン-塩酸緩衝液を用いることができる。カラムより溶出された溶出液中の対象タンパク質の濃度は、溶出液の流路上に位置し、溶出液中の対象タンパク質の濃度を280nm付近の紫外線吸収により測定するUVモニターにより測定する。対象タンパク質はトリプトファン、チロシンに代表される構成アミノ酸の特性により280nm付近の紫外線吸収にピークを持ち、濃度依存性の特有の吸光度を持つため、溶出画分のピーク面積から対象タンパク質の濃度を算出することができる。
前記対象タンパク質の精製工程における対象タンパク質濃度の測定方法において、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度の測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質の濃度測定により行うことを特徴とする測定方法を適用し、対象タンパク質の精製工程のモニターとして用いると、対象タンパク質の各精製工程における所在が明確に把握されるため、対象タンパク質の製造方法の合理的な管理が可能になる。
抗体医薬品等バイオ医薬品の製造プロセスでは1L以上の大きなカラムを使用して対象タンパク質の精製が行われる。一般に用いられる吸着タイプのクロマトグラフィーでは、溶液中の対象タンパク質を精製用クロマトグラフィーのカラムに注入してゆき、精製用クロマトグラフィーのカラムに結合した対象タンパク質の量がカラムの結合容量を超えて漏出してくる直前まで添加することが行われる。即ち、精製用クロマトグラフィーのカラムを効率よく使用することで生産コストを最適化している。具体的には、分離条件におけるプロセス用カラムの結合容量を、スケールダウンした系で予め明らかにしておき、実際に試料溶液を注入する際には、試料溶液の対象タンパク質濃度から推定される試料溶液の量に任意の安全係数を掛けた量の対象タンパク質を注入することが行われる。このような注入工程において本装置は、試料注入過程の精製用クロマトグラフィーカラムから得られる通過液を間欠的にサンプリングし、対象タンパク質の濃度を分析し、当該カラム通過液中に対象タンパク質の不在や漏出を確認することができる。精製用クロマトグラフィーカラムの通過液中の対象タンパク質の濃度と、精製用クロマトグラフィーカラムへ対象タンパク質を注入する前の濃度との比較をもって、精製用クロマトグラフィーカラムへの対象タンパク質の吸着をタイムリーに確認できる。仮に何らかの障害により対象タンパク質が想定よりも早い段階で漏出するような事態が発生した場合には、本装置により対象タンパク質濃度の上昇としてモニターされる。つまりモニター結果の相違により、適当なプログラムと組み合わせることで、検出濃度に閾値を設けて通報することや、自動で送液を停止したり、次の工程に移行するような適用形態も容易に考えられる。また、試料注入後の非特異的吸着物の除去工程においても同様に対象タンパク質の漏出を確認できる。対象タンパク質の精製を連続精製プロセスにおいて行う場合は、連続的に注入された試料溶液が、連続的、或いは、間欠的に繰り返し分離された後、溶出画分として抽出される。このような手法を適用する場合は精製プロセス全体を通して安定して分離されていることが重要である。本発明はこのような連続プロセスにおいても間欠的にサンプリングした試料に含まれる対象タンパク質濃度を継時的にモニターすることで、濃度の均一性をタイムリーに評価することができる。
以上、対象タンパク質の分離精製工程において、各工程の通過液をサンプリングし、各サンプルにおける対象タンパク質の濃度測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラム溶出液の濃度測定により経時的に測定し、モニターすることを採りいれることにより、生産能率、生産管理、品質管理の点で優れた対象タンパク質の製造方法が提供される。
本発明の対象タンパク質の精製工程における対象タンパク質濃度の測定装置において、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質の濃度の測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質濃度の測定により行うことを特徴とするタンパク質濃度の測定装置を図1に示す。
本発明の測定装置は、送液部、サンプル注入部および検出部から構成されるが、送液部は対象タンパク質の精製プラントにおいて培養物または精製工程の溶出物(a)を移送する主配管(b)上に設けられた分岐バルブ(c)により分岐した配管と、接続可能な形状を持ち、ポンプ(1)により、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液(a)をサンプル注入部に吐出する。使用するポンプはHPLCのインジェクションポンプとして用いられるものであればどのようなものでも良いが、好ましくはポンプにシリンジが設置されており、シリンジにはチェックバルブ付き丁字継手が接続されているポンプを用いることが好ましい。インジェクションポンプの往復運動はシリンジのプランジャーを動かし、注射筒内に液体を吸引、または、吐出する。シリンジ出口における液体の流れは、丁字に分岐された吸引側から吐出側へ一方向に制限されている。
サンプル注入部は注入切り替えバルブ(2)を介して検出用カラム(3)または排出口(4)に接続している。切り替えバルブ(2)は、HPLCで用いられる六方バルブであればどのようなものでも良いが、六方バルブには測定試料を保持するためのサンプルループ(5)が接続されていることが好ましい。六方バルブは、分岐バルブ(b)との接続を目的とした配管(6)、検出用カラムと繋ぐ配管(7)、排出口(4)と繋ぐ配管(8)およびサンプルループ(5)以外に、吸着洗浄溶液、溶出溶液および再生溶液の流路となる配管(9)とも接続可能な状態である。前記配管(9)はプランジャーポンプとも呼ばれるポンプ(10)を介して切り替えバルブ(11)と連結される。(10)のプランジャーポンプは通常HPLCに用いるものであれば良く、切り替えバルブ(11)も通常HPLCに用いる四方バルブであればどのようなものでも良い。切り替えバルブ(11)は吸着洗浄溶液を入れる供給容器(12)、溶出溶液を入れる供給容器(13)、再生溶液を入れた供給容器(14)を結ぶ各配管と接続可能である。
検出部は、配管を介して切り替えバルブと繋がる検出用カラム(3)と、検出用カラムから流出する溶液中の対象タンパク質を測定するため当該カラムと配管により繋がるUV検出器(15)から構成されるが、当該検出器はフローセルとUVモニターから構成される。
本発明における検出用カラム(3)はモノリスシリカ担体が充填されていることを特徴とするカラムであって、市販のHPLC装置に装着できるHPLC用カラムであれることが好ましい。特に測定装置としての小型化が必要なため、容量が20~500μL,好ましくは100~300μL,とりわけ好ましくは150~250μLのものが用いられる。なお、このような小型カラムであってもHPLCに使用するため5MPa程度の耐圧性が必要とされる。本発明のカラムに充填されるモノリスシリカ担体は、直径100nm~10000nmのマクロ孔と三次元ネットワーク状骨格の共連続構造を有するシリカゲルであり、その骨格には直径2nm~200nmのメソ孔が存在する。
本発明におけるUVモニター(15)は、検出用カラムを通過した液をUVモニターの検出セルに導く配管と結合され、光源から導かれたタンパク質の特異的な吸収波長、好ましくは280nm付近の波長、とりわけ好ましくは波長280nmの光を検出セルに照射し、検出セルを透過した光を検出する機能を有するUVモニターから構成される。なお、UVモニターは、吸光度をオンラインでモニターする機能を持つ。
本発明の測定装置は、送液部、サンプル検出部および検出部の各構成要素に対して通信を行い、動作の状態に対応する命令の送信、応答を取得する制御部を有していてもよい。
また、上記装置はインジェクションポンプを取り外せば、配管(6)にサンプル注入口を設けることにより手動でのサンプルの注入が可能になり、インジェクションポンプを主配管部分に取り付けることにより、培養物または精製工程上の溶出物中の対象タンパク質の測定を行うこともできる。
本発明の測定装置は次のように動作して、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液の対象タンパク質の濃度を測定することができる。
精製プラント中の主配管(b)に設けられた分岐バルブ(c)を分枝方向に切り替え、インジェクションポンプ(1)によりサンプルループ(5)に培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液(以下、試料溶液という)を充填する。四方バルブ(11)を吸着洗浄溶液の供給容器(12)との接続に切り替え、プランジャーポンプ(10)で検出用カラム(3)に吸着洗浄溶液を送液し、検出用カラム(3)を平衡化する。六方バルブ(2)をインジェクトに切り替え、プランジャーポンプ(10)でサンプルループ(5)を介して試料溶液をカラムに注入し、目的タンパク質をカラムに吸着させる。六方バルブ(2)をロードに切り替え、サンプルループ(5)の流路を切り離す。プランジャーポンプ(10)で検出用カラム(3)に吸着洗浄溶液を送液し、非特異的吸着物を除去する。四方バルブ(11)を溶出溶液の供給容器(13)と接続するように切り替え、プランジャーポンプ(10)で検出用カラム(3)に溶出溶液を送液し、対象タンパク質を溶出する。更に四方バルブ(11)を再生溶液の供給容器(14)との接続に切り替え、プランジャーポンプ(10)でカラムに再生溶液を送液し、残存付着物を除去する。検出用カラム(3)から溶出された溶出液中の対象タンパク質の吸光度はUVモニター(15)により測定され、分析プログラムにより、溶出画分のピーク面積を目的タンパク質濃度に換算される。
本発明は、精製用クロマトグラフィーを用いた対象タンパク質の分離精製装置において、培養液または精製用クロマトグラフィーで得られる多様な混合溶液の流路にモノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質濃度を測定することを特徴とする測定装置を接続することにより、精製工程中の対象タンパク質の濃度をモニターすることを特徴とする分離精製装置に関する。
分離精製装置とは、培養液から対象タンパク質を分離精製するためにタンパク質の各種精製装置を単独または組合せた精製プラントを言う。精製プラントを構成する各種精製装置とは、対象タンパク質を夾雑物のある状態から純度を高めるための装置であればどのようなものでも良いが、少なくとも一つのクロマトグラフィー装置を用いることを特徴とする。
クロマトグラフィー装置としては、アフィニティークロマトグラフィー装置、イオン交換クロマトグラフィー装置、ゲルろ過クロマトグラフィー装置等が挙げられる。
アフィニティークロマトグラフィー装置としては、イムノグロブリンとの結合を利用したプロテインA、プロテインG、プロテインL、レクチン等をリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー装置、ヘパリンをリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー、グルタチオンをリガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー装置、またはこれらのリガンドの改変体を用いたアフィニティークロマトグラフィー装置が挙げられる。
イオン交換クロマトグラフィー装置としては、官能基にクオタナリーアンモニウム(Q)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジエチルアミノプロピル(ANX)等を持つ陰イオン交換クロマトグラフィー装置、官能基にスルフォプロピル(SP)、メチルスルフォネート(S)、カルボキシメチル(CM)を持つ陽イオン交換クロマトグラフィー装置等があげられる。
ゲルろ過クロマトグラフィー装置としては具体的にはスーパーデックス、セファクリル、セファデックス等の樹脂を用いたクロマトグラフィー装置が挙げられる。
なお本発明が濃度分析の対象とする精製装置は、通常用いるカラムクロマトグラフィーだけではなく、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置、高速、高分離能精製システム(FPLC)装置でも良い。
なおクロマトグラフィー装置以外に、例えば対象タンパク質を生産する細胞の培養液等原料からの対象タンパク質の精製、採取に用いる遠心分離装置、限外ろ過装置等も精製プラントを構成する精製装置である。
精製プラントの規模はその大きさを問わず、バイオ医薬品製造のための工場プラント、製造試験のための中間プラント、研究室用の小型精製装置等どのようなものでも良い。
また、培養液からの精製を目的とするものだけではなく、精製の中間工程に用いる装置も含まれる。
本件発明の測定装置は図1に示したように精製プラント中の培養物または精製工程の溶出物を移送する配管に設けられた分岐バルブと直接接続することができるが、抗体等を精製するプラントでは抗体の劣化を防ぐために溶出液の中和等が行われている。このような
特殊な精製プラントに本発明のタンパク質濃度測定装置(21)が装着された例を図2に示した。
図2は細胞培養液(d)を、連続精製装置(22)を直列的に接続した精製プラントで、精製し、対象タンパク質の最終精製品(e)を得るまでの装置配列を示したものである。
精製プラントへ流入した細胞培養液(d)は、分岐バルブ(23)に接続したタンパク質濃度測定装置(21)により、その培養液中の対象タンパク質の濃度が計測される。更に細胞培養液は第一の連続精製装置(22)を通り精製されるが、その溶出液は分岐バルブ(23)を通って回収プール(25)で貯留される。分岐バルブ(23)は中和溶液または希釈溶液の供給容器(24)と連結しており、同バルブを介して中和溶液または希釈溶液が吐出され回収プール(25)の溶出液と混合される。回収プール(25)は、タンパク質濃度測定装置(21)と接続されており、溶出溶液中の対象タンパク質の濃度はリアルタイムで測定される。回収プールで希釈又は中和等の操作がなされた対象タンパク質を含む溶液は前記第一の連続精製装置(22)と同様の操作を第二連続精製装置(22)、第三連続精製装置(22)で行うことにより、高度に精製され、最後にウイルス除去操作(26)を受けて医薬品に使用し得る高純度の精製標品となる。
このようにタンパク質濃度測定装置を精製プラントに組み込んだ結果、精製プラントにおける各精製工程の対象タンパク質の濃度を測定することができる。
図3は本発明のタンパク質濃度測定装置(f)を用いて対象タンパク質の精製を行う精製用HPLC装置(g)のモニター制御を行う場合の配置図である。精製用HPLC装置(g)において、精製の対象となる細胞培養液あるいは前工程からの溶出液は、試料注入口(31)からサンプルポンプ(32)により分岐バルブ(33)を介して精製用カラム(34)に充填される。精製用カラム(34)に関しては、吸着液の供給容器(36)、洗浄液の供給容器(37)、溶出液の供給容器(38)、再生溶液の供給容器(39)と切り替えバルブ(35)、分岐バルブ(33)を介して接続されており、必要により吸着溶液、洗浄溶液、溶出溶液、再生溶液がシステムポンプ(40)により精製用カラム(34)に充填される。このシステムにおいて精製工程中のカラムを通過した液体は精製用HPLC装置(g)のフローセル(41)に送られ、その液体の吸光度がUVモニター(42)により測定される。フローセルを通過した液体は、必要に応じてフラクションコレクター(43)により採取することもできるが、更に別の精製工程で精製を行う場合は、当該工程に接続させればよい。精製用HPLC装置(g)における精製工程中のカラム通過液に含まれる対象タンパク質の濃度をモニターする場合は、UVフローセル(41)の通過液を配管でタンパク質濃度測定装置(f)の切り替えバルブ(51)と接続して間欠的に切り替え、必要によりサンプルループ(52)を介して検出用カラム(53)に充填する。検出用カラムは切り替えバルブ(51)と切り替えバルブ(54)を介して、洗浄液の供給容器(55)および溶出液の供給容器(56)、また、必要に応じて再生溶液(61)と接続されており、ポンプ(57)により検出用カラム(53)の洗浄、溶出等を行うことができる。検出用カラム(53)からの溶出液はフローセル(58)を通り、UVモニター(59)により対象タンパク質の濃度が測定される。
以下に、本発明の実施例を記載する。
実施例1(検出用カラムの作製)
検出用カラムは次のようにして製造した。まず、水溶性高分子であるポリエチレンオキシド(アルドリッチ製 商品番号85,645-2)0.90g及び尿素0.90gを0.01規定酢酸水溶液10gに溶解し、この溶液にテトラメトキシシラン4mlを攪拌下で加えて、加水分解反応を行った。数分間攪拌した後、得られた透明溶液を内径6mmのガラスチューブ内に注入し30℃の恒温漕中に保持したところ約30分後に固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、密閉条件下で140℃に20時間保った。この処理の後、ゲルを40℃で3日間乾燥し、100℃/hの昇温速度で600℃まで加熱し、直径4.8mmの棒状の無機系多孔質担体を得た。
得られた無機系多孔質担体中には中心孔径2μm程度の揃った貫通孔が3次元網目状(三次元ネットワーク状)に絡み合った構造で存在していることが確かめられた。そして、その貫通孔の内壁に直径60nm程度の細孔が多数存在していることが、窒素吸着測定によって確かめられた。このような棒状の無機系多孔質担体として得られるモノリス型(連続多孔質体である一体型)シリカゲル(モノリスシリカ又はモノリス型シリカとも呼ぶ)を厚さ11.0mmに切断することにより、体積200μLの円柱状の無機系多孔質担体を得た。
この円柱状の無機系多孔質担体に以下の方法でプロテインA変異体を固定化した。まず、アミノプロピルトリエトキシシランをトルエン溶媒で20%の濃度に希釈した溶液に円柱状の無機系多孔質担体を浸漬し、6時間加熱還流して反応させることにより円柱状の無機系多孔質担体の表面にアミノ基を導入した。次に、この無機系多孔質担体を、収縮前の内径5.5mmのTEFLON製熱収縮チューブの中に入れ、その両端の開口部にPEEK製カラムエンドを差し込み、カラムエンドの端面と無機系多孔質担体の端面を密着させた状態で150℃で30分間処理して熱収縮チューブを収縮させることにより、無機系多孔質担体の円筒外周をシールした。更に、カラムエンドと熱収縮チューブを包み込む形で外周をエポキシ樹脂で固めることにより、HPLCで使用できるカラムを作製した。このようにしてアミノ基修飾カラムを複数作製し、そのうち3本を抜き取り、加圧送液による破壊検査によって10MPaまでの耐圧性を確認した。次に、公知の方法(特許文献3)により、予めアミノ基と結合するように活性化されたプロテインA変異体2.4mgを含む20mMのホウ酸緩衝液(pH8.5)1.6mLを調製し、これをアミノ基修飾カラムに通液することにより、担体表面のアミノ基とプロテインA変異体を共有結合させた。その後、カラムを洗浄し、残存アミノ基のエンドキャッピングを行った後、20%エタノール溶液に置換した。
以上のようにして得られたカラムが、モノリスシリカ担体にプロテインA変異体を固定化した検出用カラムである。
実施例2(タンパク質濃度測定装置の作製)
図1に示したように、前記検出用カラム(3)の先端を六方バルブ(C75H-1696EMH、Valco Instruments Co. Inc.)(2)および後端をUVモニター(MU701、ジーエルサイエンス株式会社)(15)と結ぶ形で配管を接続し、六方バルブ(2)は他に試料を保持するためのサンプルループ(5)を接続し、また、プランジャーポンプ(MU7710、ジーエルサイエンス株式会社)(10)、精製プラント等外部と接続するための配管(6)と接続した。更にプランジャーポンプ(10)にはポンプ製造元からオプションとして販売されている低圧グラジエントユニット(低圧グラジエントユニット、ジーエルサイエンス株式会社)、即ち、四液切り替えバルブ(11)と接続し、四液切り替えバルブ(11)は吸着洗浄溶液を入れる供給容器(12)、溶出溶液を入れる供給容器(13)、再生溶液を入れる供給容器(14)と接続し、タンパク質濃度測定装置を完成した。
実施例3(測定方法)
抗体サンプル溶液として、ヒトイムノグロブリンとして販売されているポリクローナル抗体(「IgG from human serum Technical grade」、Sigma社)を、吸着洗浄溶液として用いる1MのNaClを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、1倍、1.5倍、3倍、5倍、7.5倍、10倍、15倍、25倍、50倍の各倍率に調製した。次に、分光光度計(U-2900、株式会社日立ハイテクサイエンス)を用いてこれら希釈系列の抗体濃度を決定した。抗体濃度の定量にあたっては280nmの吸光度を測定し、光路長1cm、濃度1g/Lにおける抗体の吸光係数を14として用いた。その結果、前記希釈系列の濃度は、10.9g/L、7.25g/L、3.59g/L、2.21g/L、1.44g/L、1.09g/L、0.71g/L、0.43g/L、0.21g/Lであり、これら各濃度の抗体溶液を注入試料として用いた。
検出用カラムにおける分析は6mL/minの送液条件で実施され、カラムに注入する試料、または、溶液を順次切り替えることにより、試料中の抗体を担体上のプロテインAに捕捉させ、洗浄し、溶出させた。即ち、予め吸着洗浄溶液で平衡化されたカラムに対して、50μLのサンプルループ内に充填された試料を2.4mLの吸着洗浄溶液を通液して押し流すことにより、抗体を吸着させると共に、吸着しない成分を洗い落とし(吸着洗浄工程)、続いて1.8mLの溶出溶液を通液することにより、リガンドに結合した抗体を遊離させ(溶出工程)、次に1.2mLの再生溶液を通液することにより、検出用カラムへの残存吸着物を遊離させ(再生工程)、更に、0.6mLの吸着洗浄溶液を通液することにより、抗体と結合できる状態へとカラムを再平衡化すること(再平衡化工程)により実施され、試料注入から再平衡化までの一連の分析は1分間で実施された。また、一連の分析工程を各濃度の抗体試料溶液について順次実施した。
このようにして一連の分析工程を実施することによりタンパク質濃度測定装置のUVモニターで得られた吸光度の推移を示すデータ(クロマトグラム)のうち、試料溶液から分離され検出用カラムに吸着した抗体が、検出用カラムから遊離する溶出工程に対応して出現するクロマトグラムのピークについて、数値積分を演算することにより、精製されて遊離した抗体量の指標となるピーク面積値を得た。また、各濃度の抗体試料溶液について順次実施した。
これらの手順により得られた結果をまとめ、横軸に分光光度計から明らかにした抗体試料溶液の抗体濃度と量、縦軸に本装置で分析したピーク面積値として図4および図5にその応答特性を示した。なお、図の上部の横軸には使用したサンプルループ容量50μLで注入抗体濃度を乗じ、注入抗体量(重量)として示した。ここで図中の凡例について、ELは溶出画分のピーク面積を示し、FTは試料注入時の素通り画分のピーク面積を示す。また、FT+ELはそれらピーク面積の和を示す。この図により、注入抗体濃度4g/L、即ち、注入抗体量にして200μgを超えた領域では溶出ピーク面積の線形性が崩れ始めていることが示された。一方で、これ以下の濃度領域では線形性が成り立つことが示唆され、図5に4g/L以下の領域を拡大すると、決定係数R二乗が0.9999であり、非常に良好な線形相関であることが示され、200μgまでの注入抗体量に対して定量法として信頼できることを示した。本試験においては操作の迅速性を確保するために、容量200μLのカラムに対して6mL/minの流量で送液したが、圧力は1~2MPaと低かった。測定に要した時間は僅か1分であり、これは従来のプロテインA結合アガロースを使用したHPLCに比べて格段に短い時間で目的タンパク質を定量できることが示された。
実施例4(精製工程モニタリングのための装置構成)
図3に示したように、精製工程をモニターするために本発明のタンパク質濃度測定装置を精製用HPLC装置に接続した。具体的には本装置で抗体濃度を測定する対象として、市販の精製用HPLC(AKTA pure 25 M2、GEヘルスケア・ジャパン株式会社)(g)を用いた。精製用HPLCで精製対象とする試料注入口(31)から注入した精製用試料を分離精製するために、精製用HPLC(g)で精製対象とする試料注入口(31)から注入した精製用試料を送液するためのサンプルポンプ(32)と、吸着液(36)、洗浄液(37)、溶出液(38)、再生液(39)の各溶液を送液するためのシステムポンプ(40)を、分岐バルブ(33)を介して精製用カラム(34)の先端と接続した。また、精製用カラム(34)の後端を、精製用カラム(34)から流れ出てくる液体の吸光度を検出するためのUVモニター(42)に電気的に接続されたフローセル(41)と接続した。このように構成された精製用HPLC(g)に対して、精製用HPLC(g)のフローセルを通過した液体をタンパク質濃度測定装置(f)の切り替えバルブ(51)に接続することにより、実施例2で作製したタンパク質濃度測定装置{図3、(51)~(61)}(f)と接続した。サンプルループ(52)への液体の充填は精製用HPLC(g)の液体の流れを利用し、切り替えバルブ(51)で流路を切り替えることにより行った。
実施例5(アフィニティー精製のモニタリング試験)
前記実施例4で図3に示した装置系を使用し、精製用HPLC(g)を用いて試料溶液に含まれる抗体をプロテインAカラムによって分離精製し、その過程でカラム通過液を間欠的にタンパク質濃度測定装置(f)でサンプリングし、その抗体濃度の推移をモニターした。具体的には、精製用HPLC(g)で精製対象となる精製用試料(31)としてモノクローナル抗体を発現させたCHO細胞培養上清を用いた。また、精製用HPLC(g)に接続する精製用カラム(34)として市販のプロテインAカラム(HiTrap rProtein A FF 1mL、GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を用いた。精製用HPLC(g)における分離精製は0.5mL/minの流量で行い、吸着液(36)として150mMのNaClを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、洗浄液(37)として1MのNaClを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、溶出液(38)として0.1Mグリシン-塩酸緩衝液(pH3.5)、再生液(39)として0.1Mグリシン-塩酸緩衝液(pH2.5)を使用し、10mLの吸着液(36)で精製用カラム(34)を平衡化した後、60mLの精製用試料(31)を通液し、次に15mLの吸着液(36)を通液し、次に5mLの洗浄液(37)を通液し、次に5mLの溶出液(38)を通液し、最後に5mLの再生液(39)を通液することにより分離精製を行った。精製用カラム(34)を流れ出た液体は精製用HPLC(g)のUVモニター(42)で吸光度を測定されるとともに、タンパク質濃度測定装置(f)の切り替えバルブ(51)により、サンプルループ(52)を介して間欠的に検出用カラム(53)に注入され、実施例3に示した検出用カラムにおける分析手順により1分間で分離精製され、溶出画分の吸光度に対応するクロマトグラムを分析して試料の抗体濃度を測定した。
その結果を図6に示した。図中hで示された実線は精製用HPLC(g)のUVモニター(42)で検出した精製用カラム(34)出口での吸光度、iはタンパク質濃度測定装置(f)で断続的に検出用カラム(53)を用いて測定した分析対象の抗体の濃度である。図6によれば、過剰量のサンプルアプライにより既に大量の抗体が漏出していること、溶出段階では吸着した全ての抗体が吸着されず、再生処理液の中に抗体が存在することが確認され、実生産段階での精製カラムに対するアプライ量の限界と溶出条件に更に検討が必要なことが、モニタリング結果から示された。また、精製用HPLC(g)の流量を1mL/minおよび0.5mL/minの条件で比較検討し、試料注入時における抗体の漏出挙動を比較した。図7では流量1mL/minの条件における吸光度をj、流量0.5mL/minの条件における吸光度をk、流量1mL/minの条件における分析対象の抗体濃度をL、流量0.5mL/minの条件における分析対象の抗体濃度をmで表す。図7に示すように、試料を注入する際の流量によって精製カラムから抗体が漏出し始める位置に違いがあること(動的結合容量)が確認することができ、精製カラムに抗体を効率よく捕捉させるための条件を決定する工程開発において活用できることが示された。
実施例6(イオン交換クロマトグラフィーのモニタリング試験)
前記実施例4で図3に示した装置系を使用し、精製用HPLC(g)を用いて試料溶液に含まれる抗体をカチオン交換カラムによって分離精製し、その過程でカラム通過液を間欠的にタンパク質濃度測定装置(f)でサンプリングし、その抗体濃度の推移をモニターした。具体的には、精製用HPLC(g)で精製対象となる精製用試料(31)としてモノクローナル抗体を発現させたCHO細胞培養上清を吸着液(36)で5倍希釈した後、少量の塩酸を加えて吸着液(36)と同じpHに調製し、0.2μmのフィルターで濾過して用いた。また、精製用HPLC(g)に接続する精製用カラム(34)として市販のカチオン交換カラム(HiTrap SP FF 1mL、GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を用いた。精製用HPLC(g)における分離精製は1.0mL/minの流量で行い、吸着液(36)として20mMクエン酸緩衝液(pH5.5)、洗浄液(37)として20mM酢酸緩衝液(pH5.0)、溶出液(38)として1MのNaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH5.0)を使用した。なお、再生液(39)は使用しなかった。10mLの吸着液(36)で精製用カラム(34)を平衡化した後、300mLの精製用試料(31)を通液し、次に15mLの吸着液(36)を通液し、次に5mLの洗浄液(37)を通液し、次に洗浄液(37)と溶出液(38)を混合しながら30mLかけて通液することにより溶出液(38)の濃度を0%から30%までリニアに増加させた。更に、その濃度を維持したまま5mL通液し、最後に溶出液(38)の濃度100%で12mLを通液することにより分離精製を行った。実施例5と同様に、精製用カラム(34)を流れ出た液体は精製用HPLC(g)のUVモニター(42)で吸光度を測定されるとともに、タンパク質濃度測定装置(f)の切り替えバルブ(51)により、サンプルループ(52)を介して間欠的に検出用カラム(53)に注入され、実施例3に示した検出用カラムにおける分析手順により1分間で分離精製され、溶出画分の吸光度に対応するクロマトグラムを分析して試料の抗体濃度を測定した。
その結果を図8に示した。図中hで示された実線は精製用HPLC(g)のUVモニター(42)で検出した精製用カラム(34)出口での吸光度、iはタンパク質濃度測定装置(f)で断続的に検出用カラム(53)を用いて測定した分析対象の抗体の濃度である。図8によれば、累積通液量40mL付近から樹脂に結合せずに漏出してくる抗体の存在を確認できることがわかり、その結果、予め分析した注入試料中の抗体濃度が0.25g/Lであったことから、動的結合容量(DBC)は担体1mLあたり10mgであることが確認された。また、精製用HPLC(g)の吸着液(36)のpHを5.0および6.0に変更し、精製試料(31)のpHを同様に変更して分離精製を行い、その過程をタンパク質濃度測定装置(f)でモニターしたところ、DBCはpHを5.0では担体1mLあたり50mg、pHを6.0では担体1mLあたり0mgであった(図9、および図10)。このようにモノリスシリカ担体を充填した検出用カラムをタンパク質濃度測定装置を用いて精製工程のモニタリングを行うと、容易にカチオン交換カラムのDBCのpH依存性が確認され、精製条件の検討にも有用であることが理解された。
本発明は、バイオ医薬品の製造技術として利用可能である。
a:精製プラントにおける培養物または精製工程の溶出物、b:培養物または精製工程の溶出物を移送する主配管、c:主配管上の分岐バルブ、d:細胞培養液、e:対象タンパク質の最終精製品、f:タンパク質濃度測定装置、g:精製用HPLC装置、h:精製用HPLC装置内のUVモニターで検出した精製用カラム出口での吸光度、i:検出用カラムを用いて測定した分析対象の抗体の濃度、j:流量1mL/minの条件における吸光度、k:流量 0.5mL/minの条件における吸光度、L:流量1mL/minの条件における分析対象の抗体濃度、m:流量0.5mL/minの条件における分析対象の抗体濃度、EL:溶出画分のピーク面積、FT:試料注入時の素通り画分のピーク面積、EL+FT:ピーク面積の和、x :濃度、y: 測定値に対する回帰式、R:決定係数、1:ポンプ、2:切り替えバルブ、3:検出用カラム、4:排出口、5:サンプルループ、6:配管、7:配管、8:配管、9:配管、10:ポンプ、11:切り替えバルブ、12:供給容器、13:供給容器、14:供給容器、15:UVモニター、21:タンパク質濃度測定装置、22:連続精製装置、23:分岐バルブ、24:供給容器、25:回収プール、26:ウイルス除去装置、31:試料注入口、32:ポンプ、33:分岐バルブ、34:精製用カラム、35:切り替えバルブ、36:供給容器、37:供給容器、38:供給容器、39:供給容器、40:ポンプ、41:フローセル、42:UVモニター、43:フラクションコレクター、44:排出口、51:切り替えバルブ、52:サンプルループ、53:検出用カラム、54:切り替えバルブ、55:供給容器、56:供給容器、57:ポンプ、58:フローセル、59:UVモニター、60:排出口、61:供給容器

Claims (9)

  1. 対象タンパク質の分離精製工程において、各工程の通過液をサンプリングし、各サンプルにおける対象タンパク質の濃度測定を、モノリスシリカ担体を有する検出用カラムを用いて分離精製することで得られる対象タンパク質の濃度を経時的に測定し、モニターすることを特徴とする対象タンパク質の製造方法において、精製用クロマトグラフィーの注入液およびカラム通過液中の対象タンパク質のモニター結果の相違から、精製用クロマトグラフィーに充填された担体への対象タンパク質の吸着量を測定することを特徴とする対象タンパク質の製造方法。
  2. 対象タンパク質が抗体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 対象タンパク質の精製工程における対象タンパク質濃度の測定方法において、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質を、精製工程の混合溶液の流路から分岐接続されたカラムであってモノリスシリカ担体を有し高速液体クロマトグラフィーに装着された検出用カラムを、滞留時間12秒以下の条件を用いて分離精製することで、得られる対象タンパク質の濃度測定を行うことを特徴とする測定方法。
  4. 滞留時間12秒以下の条件が流量6mL/minで得られる請求項3記載の測定方法。
  5. 対象タンパク質が抗体であることを特徴とする請求項3または4記載の測定方法。
  6. 容量が20~500μLの検出用カラムを用いることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項記載の測定方法。
  7. バイオ医薬品の製造工程において、リアルタイムに対象タンパク質の濃度を測定する装置であって、培養液または精製過程で得られる多様な混合溶液に含まれる対象タンパク質を分離するための精製工程の混合溶液の流路から分岐接続された流量6mL/minにおける滞留時間が12秒以下であるモノリスシリカ担体を有し高速液体クロマトグラフィーに装着された検出用カラムと対象タンパク質の濃度を測定するために検出用カラムと接続した検出セルを持つUVモニターから構成されることを特徴とする測定装置。
  8. 容量が20~500μLの検出用カラムを用いることを特徴とする請求項7記載の測定装置
  9. 精製用クロマトグラフィーを用いた対象タンパク質の分離精製装置において、培養液または精製用クロマトグラフィーで得られる多様な混合溶液の流路に請求項7または8記載のタンパク質濃度の測定装置を接続することにより、精製工程中の対象タンパク質の濃度をモニターすることを特徴とする分離精製装置。
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